概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | セルロースアセテート |
| 略記号 | CA |
| IUPAC | Cellulose acetate、または acetylated cellulose と表記されることが多い。置換度により厳密な表記は異なる。 |
| 英語名 | Cellulose Acetate |
| 日本語名 | セルロースアセテート、酢酸セルロース、アセチルセルロース、アセテート樹脂 |
| 分類 | セルロース系樹脂、半合成樹脂、バイオマス由来熱可塑性樹脂 |
| プラスチック分類 | 一般に汎用プラスチックからエンジニアリング用途の中間的な材料として扱われる。高耐熱・高強度エンプラではない。 |
| 化学式または代表構造 | セルロースの水酸基の一部をアセチル基で置換した構造である。代表構造は [C6H7O2(OH)3-x(OCOCH3)x]n で表される。 |
| CAS No. | 9004-35-7 がセルロースアセテートとして一般に用いられる。セルローストリアセテートは 9012-09-3 として扱われる場合がある。 |
| 構造・主成分 | 木材パルプ、綿リンターなどに由来するセルロースを酢酸化したセルロースエステルである。成形材料では可塑剤、安定剤、着色剤などを配合することが多い。 |
| 主な用途 | 眼鏡フレーム、筆記具、工具柄、装飾部品、フィルム、シート、繊維、タバコフィルター、塗料・インキ用樹脂、分離膜など。 |
セルロースアセテートは、天然高分子であるセルロースの水酸基をアセチル化して得られるセルロース系熱可塑性樹脂である。石油系樹脂とは異なり、木材パルプや綿リンターなどの再生可能資源を主原料とするため、バイオマス由来樹脂として扱われることが多い。
一般に透明性、光沢、着色性、手触り、切削加工性に優れ、眼鏡フレームや装飾部品など外観品質を重視する用途に用いられる。一方で、吸水性が比較的大きく、寸法変化、加水分解、可塑剤移行、応力割れに注意が必要である。
セルロースアセテートは置換度、分子量、可塑剤の種類、添加剤、成形条件により物性が大きく変化する。耐薬品性や耐熱性を判断する場合は、グレード、温度、薬品濃度、荷重、応力、接触時間を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 透明性、光沢、着色性、意匠性、切削加工性、寸法安定性、帯電しにくさ、手触り、自然由来原料を用いる点に特徴がある。 |
| 短所 | 吸水による寸法変化、湿熱下での加水分解、強アルカリによるけん化、ケトン・エステル・塩素系溶剤への溶解または膨潤、可塑剤移行に注意が必要である。 |
| 外観 | 無色透明から半透明で、グレードにより高光沢の成形品が得られる。着色、マーブル調、べっ甲調などの意匠表現にも適する。 |
| 耐熱性 | 耐熱性は中程度である。荷重たわみ温度は可塑剤量により大きく変化し、一般成形グレードでは高温荷重用途には注意を要する。 |
| 耐薬品性 | 油類、脂肪族炭化水素、一部の弱酸には比較的安定である。一方、強アルカリ、アセトン、MEK、酢酸エチル、塩化メチレンなどには弱い。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、シート成形、切削加工、研磨加工に対応する。吸湿しやすいため、成形前乾燥と成形時の熱劣化管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートは近縁材料であるが、溶解性、柔軟性、耐薬品性、加工性が異なる。 |
構造式
化学式の表記
セルロースアセテートは置換度により組成が変化するため、単一の化学式で表しにくい。代表的には次のように表記できる。
| 項目 | 表記 |
|---|---|
| セルロース単位 | [C6H10O5]n |
| セルロースアセテート代表構造 | [C6H7O2(OH)3-x(OCOCH3)x]n |
| セルローストリアセテート代表単位 | [C12H16O8]n |
| 置換度 | x は一般にアセチル置換度を示す。二酢酸セルロースではおおむね 2.0〜2.6、三酢酸セルロースではおおむね 2.7〜3.0 程度である。 |
代表的な構造単位
セルロースアセテートは、β-1,4-グリコシド結合で連結した無水グルコース単位を骨格とし、各グルコース単位に存在する水酸基の一部がアセチル基に置換された構造である。
モノマーまたは構成単位
主な構成単位は無水グルコース単位であり、反応原料としてはセルロース、無水酢酸、酢酸が用いられる。硫酸などの酸触媒を用いてアセチル化し、その後、目的の置換度に調整する。
共重合体や変性グレード
セルロースエステル系には、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテートなどがある。これらは同じセルロース系材料であるが、置換基と置換度により耐薬品性、柔軟性、溶解性、成形性が異なる。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| セルロースジアセテート | 置換度が比較的低いセルロースアセテート | 成形性、溶剤溶解性、透明性、着色性に優れる | 吸水、湿熱、アルカリ、ケトン系溶剤に注意が必要 | 成形材料、フィルム、繊維、塗料・インキ用樹脂 |
| セルローストリアセテート | 置換度が高い三酢酸セルロース | 耐熱性、耐湿性、透明性、寸法安定性が比較的良い | 溶剤選定が限られ、成形条件の管理が必要 | 光学フィルム、液晶関連フィルム、繊維 |
| 可塑化セルロースアセテート | 可塑剤を配合して成形加工性を高めたグレード | 射出成形性、靭性、意匠性に優れる | 可塑剤移行、耐熱低下、寸法変化に注意 | 眼鏡フレーム、筆記具、工具柄、装飾部品 |
| 透明グレード | 透明性と外観を重視した成形材料 | 光沢、透明性、発色性が良い | 耐衝撃性はPCほど高くない | 雑貨、意匠部品、表示部品、ハンドル類 |
| 耐熱グレード | 可塑剤量や分子量を調整した高耐熱寄りのグレード | 通常グレードより荷重下での変形が小さい | 流動性が低くなる場合がある | 機構部品、耐熱性を求める成形品 |
| 難燃グレード | 難燃性を調整したグレード | セルロース系としては比較的燃え広がりにくい設計が可能 | 添加剤により透明性や機械特性が変化する | 電気・電子周辺部品、装飾部品 |
| 食品接触対応グレード | 食品接触用途を想定した配合管理品 | 用途により食品関連部材に適用しやすい | 法規制適合はグレードごとに確認が必要 | 食品関連治具、ハンドル、包装関連部材 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 代表的な加工方法である。成形前乾燥、滞留時間、熱劣化、可塑剤揮発に注意する。 |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、棒材、チューブなどに用いられる。グレードにより流動性と熱安定性の確認が必要である。 |
| ブロー成形 | △ | 一般的なボトル用途では主流ではない。溶融強度や成形安定性に制約がある。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材や特殊形状で検討される場合があるが、一般成形では射出・押出が多い。 |
| 真空成形 | ○ | シート成形品に適用できる。加熱温度、吸湿、白化、寸法変化に注意する。 |
| 切削加工 | ◎ | 切削性、研磨性、意匠仕上げ性が良い。眼鏡フレームや装飾部品で多用される。 |
| 接着・溶剤接合 | ○ | 溶剤や接着剤で接合可能な場合がある。ただし溶剤割れ、白化、寸法変化に注意する。 |
| 溶着 | △ | 超音波溶着などはグレードと形状により可否が分かれる。事前評価が必要である。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 70〜85℃ | 吸湿しやすいため、成形前乾燥が重要である。過乾燥や高温乾燥による変色にも注意する。 |
| 乾燥時間 | 2〜4時間 | ペレットの吸湿状態、乾燥機、グレードにより調整する。 |
| シリンダー温度 | 170〜220℃ | 可塑剤量、流動性、分子量により異なる。高温滞留では変色や分解に注意する。 |
| 金型温度 | 40〜80℃ | 外観、光沢、寸法安定性、離型性に影響する。 |
| 成形収縮率 | 0.3〜0.8% | 肉厚、流動方向、可塑剤、充填材、成形条件により変化する。 |
| 注意点 | 吸湿、熱劣化、ガス、銀条、変色 | 乾燥不足ではシルバー、気泡、物性低下が発生しやすい。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | セルロースアセテート 一般成形グレード | セルロースアセテート 耐熱・高剛性寄り | セルロースアセテート 可塑化・高靭性寄り | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.27〜1.34 | 1.30〜1.36 | 1.25〜1.32 | 可塑剤、添加剤、充填材により変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 30〜60 | 45〜75 | 25〜50 | 代表値であり、湿度や可塑剤量の影響を受ける。 |
| 伸び | % | 10〜60 | 5〜30 | 30〜100 | 可塑化グレードでは伸びが大きくなる。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 1.5〜3.5 | 2.5〜4.5 | 1.0〜2.5 | 吸湿により弾性率が低下する場合がある。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 3〜15 | 2〜10 | 5〜25 | ノッチ有無、試験法、グレードにより大きく変化する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 55〜85 | 80〜110 | 45〜75 | 荷重、可塑剤、熱履歴により変化する。 |
| 融点またはガラス転移温度 | ℃ | Tg 130〜190 | Tg 150〜200 | Tg 80〜150 | 明確な融点を示さず、置換度と可塑剤によりTgが変化する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60〜80 | 70〜90 | 50〜70 | 荷重、湿度、薬品接触、要求寿命により安全側で設計する。 |
| 吸水率 | % | 1.5〜3.5 | 1.0〜3.0 | 2.0〜5.0 | 23℃水中24時間の目安。寸法変化に注意する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1012〜1015 | 1012〜1015 | 1011〜1014 | 湿度により低下することがある。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当が多い | HB〜難燃グレード | HB相当が多い | 難燃表示はグレードごとの認証確認が必要である。 |
| 酸素指数 | % | 18〜21程度 | グレードにより異なる | グレードにより異なる | セルロース系のため燃焼時の炭化挙動を示す場合がある。 |
耐薬品性
セルロースアセテートの耐薬品性は、置換度、可塑剤、結晶性、成形残留応力、薬品濃度、温度、接触時間により変化する。特にケトン、エステル、塩素系溶剤、強アルカリでは、溶解、膨潤、白化、応力割れ、けん化が起こる場合がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 希酸には比較的安定な場合があるが、濃酸、高温、長時間では加水分解や劣化に注意する。 |
| 強酸類 | 濃硫酸、濃硝酸 | × | 分解、変色、強度低下のおそれがある。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、水酸化カリウム | × | アセチル基のけん化により劣化しやすい。低濃度でも長時間接触は避ける。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | △ | 短時間では使用できる場合があるが、膨潤、白化、可塑剤抽出に注意する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | △ | 薬品により膨潤性が異なる。SP値、極性、水素結合性を確認する必要がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン | △ | 短時間では大きな変化が少ない場合もあるが、膨潤や応力割れに注意する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的安定な場合が多い。ただし添加剤や可塑剤の抽出に注意する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン | × | 溶解または著しい膨潤を起こしやすい。接着・溶剤処理では応力割れに注意する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | × | 溶解、膨潤、白化が起こりやすい。 |
| 塩素系溶剤 | 塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解性が高いものがあり、使用は避ける。 |
| 水・温水 | 水、温水、湿熱環境 | △ | 吸水による寸法変化、強度低下、長期湿熱での加水分解に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、植物油、潤滑油 | ○ | 比較的安定な場合が多いが、添加剤や高温油では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、アルコール混合燃料 | △ | 燃料成分、芳香族分、アルコール分により膨潤や抽出が起こる場合がある。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| セルロースアセテートの代表的なSP値 | おおむね 21〜24 MPa1/2 程度 |
| 代表値 | 22.5 MPa1/2 を目安として扱うことが多い。 |
| 注意点 | 置換度、可塑剤、含水率、分子量により溶解性が変化する。SP値だけで耐薬品性を判断することはできない。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下はセルロースアセテートのSP値を 22.5 MPa1/2 とした場合の目安である。実際の耐薬品性は、Hansen溶解度パラメータ、水素結合性、酸・アルカリ反応性、可塑剤抽出、結晶性、残留応力にも左右される。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | SP値差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| アセトン | 19.9 | 2.6 | × | 代表的な溶剤であり、溶解・膨潤しやすい。 |
| MEK | 19.0 | 3.5 | × | 膨潤、白化、応力割れに注意する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 3.9 | × | エステル系溶剤であり、溶解・膨潤しやすい。 |
| 塩化メチレン | 20.2 | 2.3 | × | 溶解性が高く、接触は避ける。 |
| クロロホルム | 18.7 | 3.8 | × | 溶解・膨潤しやすい。 |
| エタノール | 26.0 | 3.5 | △ | 短時間では使用できる場合があるが、白化や可塑剤抽出に注意する。 |
| IPA | 23.5 | 1.0 | △ | SP値差は小さいが、単独で直ちに溶解するとは限らない。長時間接触は確認が必要である。 |
| トルエン | 18.2 | 4.3 | △ | 膨潤や応力割れに注意する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 7.6 | ○ | 比較的安定な場合が多い。 |
| 水 | 47.9 | 25.4 | △ | SP値上は離れているが、吸水と加水分解を考慮する必要がある。 |
| グリセリン | 33.8 | 11.3 | ○ | 短時間では比較的安定な場合があるが、温度と含水に注意する。 |
| 鉱物油 | 15〜17 | 5.5〜7.5 | ○ | 油種、添加剤、温度により確認が必要である。 |
製法
原料
主原料は木材パルプまたは綿リンター由来のセルロースである。アセチル化剤として無水酢酸、溶媒または反応媒体として酢酸、触媒として硫酸などが用いられる。
重合方法または反応方法
セルロースアセテートは通常の付加重合や縮合重合で作られる樹脂ではなく、天然高分子セルロースの水酸基を化学修飾するエステル化反応により製造される。まずセルロースを膨潤・活性化し、無水酢酸でアセチル化する。その後、加水分解により目的の置換度に調整し、洗浄、中和、乾燥を行う。
代表的な反応式
セルロースの水酸基を Cell-OH と表すと、基本反応は次のように示される。
| 反応 | 代表式 |
|---|---|
| アセチル化 | Cell-OH + (CH3CO)2O → Cell-OCOCH3 + CH3COOH |
| 部分加水分解 | Cell-OCOCH3 + H2O → Cell-OH + CH3COOH |
| 全体の考え方 | セルロース骨格の水酸基の一部をアセチル基に置換し、置換度を制御することで性質を調整する。 |
ペレット化やコンパウンド
成形材料として用いる場合は、セルロースアセテート粉末に可塑剤、安定剤、滑剤、着色剤、難燃剤などを配合し、混練・押出によりペレット化する。可塑剤の種類と量は、流動性、耐熱性、硬さ、靭性、耐薬品性、可塑剤移行に大きく影響する。
添加剤、充填材、強化材
一般に透明性や外観を重視する用途では無機充填材を多量に入れないことが多い。特殊用途では難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐候安定剤、滑剤、顔料などを配合する場合がある。GF強化やCF強化は代表的な主流用途ではないが、研究開発や特殊コンパウンドとして検討されることがある。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装意匠部品、ノブ、ハンドル、装飾部材 | 光沢、着色性、触感、意匠性に優れる | 高温車内、紫外線、可塑剤移行、湿熱に注意する。 |
| 電気・電子 | 表示部品、装飾カバー、絶縁部材、フィルム用途 | 透明性、絶縁性、加工性がある | 高湿度下での電気特性低下、難燃認証、アウトガス確認が必要である。 |
| 機械部品 | 工具柄、つまみ、治具、軽負荷部品 | 切削性、手触り、外観、適度な強度がある | 高荷重ギア、軸受、摺動部材には一般に不向きである。 |
| 医療 | フィルター、膜、検査関連部材、透明部品 | セルロース系材料として膜用途に実績がある | 医療規格、生体適合性、滅菌方法、抽出物をグレードごとに確認する。 |
| 食品機械 | ハンドル、カバー、治具、表示窓 | 透明性、加工性、外観に優れる | 食品接触適合、アルカリ洗浄剤、熱水、油脂、消毒用アルコールへの耐性確認が必要である。 |
| 建築・設備 | 意匠パネル、装飾材、表示板 | 光沢、着色、加工性、天然素材感を出しやすい | 屋外耐候、吸水、熱変形、難燃要求に注意する。 |
| 生活用品 | 眼鏡フレーム、櫛、筆記具、玩具、雑貨 | 色柄表現、手触り、切削・研磨仕上げ性が良い | アルコール、化粧品、整髪料、汗、温水による白化や変形に注意する。 |
| フィルム・シート | 光学フィルム、保護フィルム、包装、印刷基材 | 透明性、寸法安定性、印刷性に優れるグレードがある | 吸湿、カール、溶剤、熱収縮を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| セルロースアセテートブチレート | セルロースエステル系で、柔軟性、耐候性、溶剤溶解性に特徴がある。 | CAより柔軟で、塗料・インキ・フィルム用途に使いやすい場合がある。 |
| セルロースアセテートプロピオネート | CAとCABの中間的な性質を持つセルロースエステルである。 | CAより柔軟性や溶剤適性を調整しやすい場合がある。 |
| ポリカーボネート | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるエンプラである。 | PCはCAより耐衝撃性と耐熱性に優れるが、CAは意匠性、切削性、天然素材感で選ばれる。 |
| アクリル樹脂 | 透明性、耐候性、表面硬度に優れる。 | PMMAは透明性と耐候性に優れるが、CAは着色柄、手触り、切削仕上げで特徴がある。 |
| ポリスチレン | 透明性、成形性、低コスト性に優れる汎用樹脂である。 | PSは量産成形性とコストで有利だが、CAは意匠性と質感で優れる場合がある。 |
| ABS樹脂 | 成形性、耐衝撃性、外観バランスに優れる。 | ABSは機械部品や筐体に使いやすいが、CAほどの透明性やセルロース系の質感は得にくい。 |
| ポリアミド | 耐摩耗性、機械強度、耐油性に優れるエンプラである。 | PAは機械部品向きであるが、CAは透明・意匠用途向きである。どちらも吸水による寸法変化に注意する。 |
| ポリ乳酸 | バイオマス由来の熱可塑性樹脂で、生分解性を持つグレードがある。 | PLAは成形品・包装用途で使われるが、CAはセルロース由来の透明性、切削性、意匠性で差別化される。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 株式会社ダイセル | セルロースアセテート、セルローストリアセテート、CAFBLO などの代表例 | セルロースアセテート、セルロース誘導体、光学フィルム関連材料などを扱う日本の主要メーカーである。 |
| ダイセルミライズ株式会社 | Acety などの代表例 | セルロースアセテート樹脂の成形材料、シート、関連製品を扱う。 |
| Eastman Chemical Company | Tenite、Eastman Cellulose Esters などの代表例 | セルロースエステル系樹脂、フィルム・シート、成形材料、塗料・インキ用樹脂を扱う米国メーカーである。 |
| Celanese Corporation | セルロースアセテート関連製品の代表例 | アセチル系化学品、セルロースアセテート、フィルター用途関連材料などを扱うメーカーである。 |
| Rotuba | セルロースアセテートシート、ロッドなどの代表例 | 眼鏡フレーム、装飾材、シート・ロッド用途のセルロースアセテート材料を扱うメーカーとして知られる。 |
代表グレード
| グレード分類 | 特徴 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用グレード | 透明性、成形性、着色性のバランスを重視 | 雑貨、筆記具、ハンドル、装飾部品 | 吸湿と成形前乾燥に注意する。 |
| 耐熱グレード | HDTや剛性を高めた設計 | 機構部品、耐熱性を求める外観部品 | 流動性や脆さが変化する場合がある。 |
| 難燃グレード | 難燃剤や配合設計により燃焼性を調整 | 電気・電子周辺部品、装飾カバー | UL94などの認証はグレード単位で確認する。 |
| 高透明グレード | 透明性、光沢、外観を重視 | 表示部品、意匠部品、眼鏡フレーム | 溶剤、アルコール、応力割れに注意する。 |
| 食品接触対応グレード | 食品接触用途を想定した配合管理 | 食品関連部品、治具、ハンドル | 食品衛生法、FDA、EU規制などを個別に確認する。 |
| 摺動グレード | 潤滑性を調整した特殊グレード | 軽負荷摺動部品、操作部品 | 高荷重・連続摺動ではPOM、PA、PTFEなどと比較する。 |
法規制・安全性
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、特定臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など | 樹脂そのものだけでなく、可塑剤、顔料、難燃剤、安定剤を含めて確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録状況 | 輸出先、用途、配合添加剤により確認項目が変わる。 |
| 食品衛生 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験 | 食品接触用途ではグレード単位の適合資料が必要である。 |
| FDA | 食品接触用途の適合性 | 米国向け用途では該当条項と使用条件を確認する。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌適性、抽出物、トレーサビリティ | 一般工業グレードを医療用途へそのまま転用しない。 |
| 難燃規格 | UL94、酸素指数、電気用品関連規格 | 成形品厚み、色、添加剤により認証範囲が変わる。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 選定ポイント | 代替候補 |
|---|---|---|---|
| ギア | △ | 軽負荷であれば検討可能であるが、吸湿と摩耗を確認する。 | POM、PA |
| 軸受 | △ | 高荷重・連続摺動には一般に不向きである。 | PTFE、POM、PA |
| チューブ | △ | 溶剤、湿度、柔軟性、抽出物を確認する。 | PE、PP、PU |
| 筐体 | ○ | 意匠性重視の筐体に適する。耐衝撃と耐熱は確認が必要である。 | ABS、PC、PMMA |
| フィルム | ◎ | 透明性、光学特性、寸法安定性を重視する用途で用いられる。 | PET、PC、TAC |
| コネクタ | △ | 耐熱性、難燃性、寸法安定性、吸湿を確認する。 | PBT、PPS、PA |
| 眼鏡フレーム | ◎ | 色柄、切削性、研磨性、装着感に優れる。 | CP、TR系ナイロン、チタン、ステンレス |
| 食品機械部品 | △ | 洗浄剤、アルカリ、熱水、油脂、食品接触規制を確認する。 | PP、PE、POM、PA、PPS |
注意点
- 吸水率が比較的大きく、寸法変化、反り、電気特性低下が発生する場合がある。
- 高温高湿環境では加水分解による強度低下や外観変化に注意する。
- 強アルカリではアセチル基のけん化が起こり、劣化する場合がある。
- アセトン、MEK、酢酸エチル、塩化メチレンなどの溶剤では溶解・膨潤しやすい。
- 残留応力がある成形品では、アルコール、溶剤、油剤、化粧品、洗浄剤により応力割れが起こることがある。
- 可塑化グレードでは、可塑剤移行、べたつき、耐熱低下、抽出物に注意する。
- 成形時の乾燥不足では、シルバー、気泡、外観不良、物性低下が発生しやすい。
- 高温滞留では変色、分解ガス、アウトガスが発生する場合がある。
- 食品、医療、電気電子用途では、グレードごとの法規制適合、添加剤、抽出物、難燃認証を確認する必要がある。
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