概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 水添スチレン系熱可塑性エラストマー |
| 略記号 | SEBS |
| IUPAC | 明確な単一IUPAC名は定義しにくい。一般にはポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-ブチレン)-block-ポリスチレン系ブロック共重合体である。 |
| 英語名 | Styrene-Ethylene/Butylene-Styrene Block Copolymer / Hydrogenated Styrenic Block Copolymer |
| 日本語名 | 水添スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、水添SBS、スチレン系TPE |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー |
| プラスチック分類 | 熱可塑性エラストマーであり、一般的なプラスチック分類では汎用TPEに分類される。エンプラやスーパーエンプラではない。 |
| 化学式または代表構造 | PS-b-PEB-b-PS と表されることが多い。PSはポリスチレンブロック、PEBは水添ポリブタジエン由来のエチレン・ブチレン系ゴムブロックである。 |
| CAS No. | 66070-58-4 がSEBS系ブロック共重合体の代表的なCAS No.として用いられる場合がある。ただし、グレード、変性品、コンパウンドでは異なる場合がある。 |
| 構造・主成分 | 両端に硬質のポリスチレンブロック、中間に軟質のエチレン・ブチレン系ゴムブロックを持つトリブロック共重合体である。 |
| 主な用途 | 自動車内装材、グリップ材、シール材、チューブ、医療用部材、食品接触部材、電線被覆、軟質樹脂改質材、粘着剤、オイルゲル、軟質コンパウンドなどである。 |
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)は、SBSのブタジエン部分を水素添加して二重結合を低減したスチレン系熱可塑性エラストマーである。ゴムのような柔軟性と弾性を持ちながら、加硫を必要とせず、射出成形、押出成形、コンパウンド加工により熱可塑性樹脂と同様に加工できる点が特徴である。
SEBSは、SBSに比べて耐候性、耐熱老化性、耐酸化性、耐オゾン性に優れる傾向がある。ポリプロピレン、ポリエチレン、オイル、粘着付与樹脂、各種添加剤との配合により、硬度、弾性、粘着性、透明性、耐薬品性、成形性を広い範囲で調整できる。
一方で、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、一部の脂肪族炭化水素、オイル類には膨潤しやすい場合がある。また、単体ポリマーとしての物性よりも、実用上はコンパウンド設計、オイル量、スチレン含有率、分子量、架橋・変性の有無、配合樹脂により性能が大きく変化する材料である。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 柔軟性、弾性、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温柔軟性、電気絶縁性、加工性に優れる。加硫工程が不要でリサイクル性にも配慮しやすい。 |
| 短所 | 高温下での圧縮永久ひずみ、耐油性、耐燃料性、耐芳香族溶剤性、耐塩素系溶剤性には注意が必要である。硬質エンプラほどの剛性や耐熱性はない。 |
| 外観 | 原料ポリマーは白色から淡黄色のペレットまたはクラム状である。コンパウンド品は透明、半透明、乳白色、黒色、着色品などがある。 |
| 耐熱性 | 一般に連続使用温度は約60〜100℃程度が目安である。高耐熱グレードや配合設計により、短時間では100℃を超える用途に使われる場合もある。 |
| 耐薬品性 | 水、酸、アルカリ、低級アルコールには比較的安定な場合が多い。一方、トルエン、キシレン、ガソリン、鉱物油、塩素系溶剤などでは膨潤、軟化、抽出が起こる場合がある。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー加工、Tダイ押出、異形押出、二色成形、インサート成形などに適する。PPやPEとのアロイ・コンパウンドにも使われる。 |
| 分類上の注意 | SEBSは熱可塑性エラストマーであり、熱硬化性ゴムではない。SBS、SIS、SEPS、SEEPSなどのスチレン系TPEとは近縁であるが、水添構造、耐候性、相溶性、耐油性が異なる。 |
| 難燃性 | 未難燃グレードでは一般に燃えやすく、UL94 HB相当となる場合が多い。難燃用途ではリン系、窒素系、無機系難燃剤を配合した難燃グレードが用いられる。 |
| 法規制 | RoHS、REACH、食品衛生、FDA、医療用途への適合可否はグレードごとに確認が必要である。医療・食品接触用途では抽出物、溶出物、添加剤、オイル種の確認が重要である。 |
構造式
SEBSは明確な単一化学式で表しにくいブロック共重合体である。代表構造は、硬質のポリスチレンブロックと、軟質のエチレン・ブチレン系ブロックからなる三元ブロック構造として表される。
| 項目 | 構造の表記例 |
|---|---|
| 代表的なブロック構造 | PS-b-PEB-b-PS |
| ポリスチレンブロック | [-CH2-CH(C6H5)-]m |
| エチレン・ブチレン系ブロック | [-CH2-CH2-]x[-CH2-CH(CH2CH3)-]y |
| 全体の模式構造 | [-CH2-CH(C6H5)-]m – b – [水添ブタジエン由来ゴムブロック]n – b – [-CH2-CH(C6H5)-]m |
| モノマーまたは構成単位 | スチレン、ブタジエンを主原料とし、SBS重合後にブタジエン由来の不飽和結合を水素添加してSEBSとする。 |
| 変性グレード | 無水マレイン酸変性SEBS、アミン変性SEBS、官能基変性SEBS、オイル充填グレード、PPコンパウンドグレード、難燃グレードなどがある。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用SEBS | 標準的なスチレン含有率、分子量のSEBS | 柔軟性、弾性、成形性、耐候性のバランスが良い | 耐油性、耐燃料性、高温圧縮永久ひずみに注意が必要 | グリップ、キャップ、シール、軟質成形品 |
| 高スチレンSEBS | ポリスチレンブロック比率が高いグレード | 剛性、耐熱変形性、凝集力を高めやすい | 柔軟性、低温弾性が低下する場合がある | 粘着剤、改質材、硬めのTPEコンパウンド |
| 低硬度SEBSコンパウンド | SEBSにオイル、PP、添加剤などを配合した軟質グレード | 低硬度、触感、低温柔軟性に優れる | オイルブリード、耐油性、圧縮永久ひずみに注意が必要 | ソフトグリップ、パッキン、医療用軟質部材 |
| 耐熱SEBSコンパウンド | 高分子量SEBS、PP、耐熱安定剤などを配合 | 熱老化、寸法安定性、成形品強度を改善しやすい | 硬度が高くなり、低温柔軟性が低下する場合がある | 自動車内装、電装周辺部材、工業部品 |
| 難燃SEBS | 難燃剤を配合したSEBS系TPE | 電線、電子機器周辺で使いやすい | 柔軟性、透明性、機械強度が低下する場合がある | 電線被覆、ケーブル、電気電子部品 |
| GF強化SEBS系コンパウンド | SEBS、PPなどにガラス繊維を配合した複合材 | 剛性、寸法安定性、耐熱変形性を高めやすい | エラストマー性、伸び、触感は低下する | 機構部品、ブラケット、半硬質部材 |
| 摺動SEBS | シリコーン、PTFE、ワックスなどの摺動改質剤を配合 | 摩擦低減、きしみ音低減、触感改善が可能 | 接着性、印刷性、二次加工性に注意が必要 | グリップ、スライド部、内装部材 |
| 食品接触・医療用SEBS | 規制適合を考慮した原料、添加剤、オイルを使用 | 軟質PVC代替として使いやすい | 適合規格、滅菌方法、抽出物の個別確認が必要 | チューブ、栓、パッキン、医療用軟質部材、食品用部材 |
| 変性SEBS | 無水マレイン酸などの官能基を導入したSEBS | PA、PBT、PET、金属、フィラーとの相溶性・接着性を改善しやすい | 吸湿、反応性、熱安定性に注意が必要 | 相溶化剤、接着改質材、複合材改質 |
成形加工
| 成形加工法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | グリップ、キャップ、パッキン、二色成形品に適する。流動性、離型性、ゲート白化、収縮に注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | チューブ、シート、フィルム、異形押出、電線被覆に適する。メルトテンションはグレードにより異なる。 |
| ブロー成形 | ○ | 高溶融張力グレードやコンパウンド設計により可能である。薄肉品ではドローダウンに注意する。 |
| 圧縮成形 | ○ | 試験片、シート、厚物部材、ラボ成形で用いられる。量産では射出・押出が中心である。 |
| 真空成形 | △ | シート化したグレードでは可能な場合があるが、弾性回復や形状保持性に注意が必要である。 |
| カレンダー加工 | ○ | 軟質シート、フィルムで使われる場合がある。配合設計とロール温度管理が重要である。 |
| 二色成形・インサート成形 | ◎ | PP、PE、PS、ABSなどとの組み合わせで使用される。密着性は相手材、変性の有無、金型温度に依存する。 |
| 切削加工 | △ | 軟質グレードでは変形、バリ、寸法ばらつきが出やすい。硬質コンパウンドや板材では条件により可能である。 |
| 接着・印刷 | △ | 表面エネルギーが低く、接着・印刷には表面処理、プライマー、適合インキの確認が必要である。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常不要〜60℃、2〜4時間 | 吸湿は小さいが、着色材、難燃剤、変性品、保管状態により予備乾燥が有効な場合がある。 |
| シリンダー温度 | 160〜230℃ | 硬度、MFR、配合樹脂により異なる。高温滞留では熱劣化や臭気に注意する。 |
| 金型温度 | 20〜60℃ | 外観、収縮、ヒケ、密着性を見て調整する。二色成形では相手材温度も重要である。 |
| 押出温度 | 150〜220℃ | チューブ、シート、電線被覆では溶融粘度と冷却条件を調整する。 |
| 成形収縮率 | 1.0〜3.0%程度 | 軟質グレード、オイル量、流動方向、肉厚、金型温度で変化する。GF強化品では低くなる。 |
| 再生材使用 | 条件により可能 | 熱履歴、異物、オイル揮発、硬度変化、色調変化を確認する必要がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | SEBS汎用軟質 | SEBS硬質コンパウンド | GF強化SEBS系 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.88〜0.95 | 0.90〜1.05 | 1.05〜1.25 | オイル、PP、フィラー、難燃剤の配合で変化する。 |
| 硬度 | Shore A / D | A 5〜A 80 | A 80〜D 50 | D 40〜D 65 | SEBS単体よりもコンパウンド品として調整される。 |
| 引張強さ | MPa | 3〜15 | 8〜25 | 20〜60 | 硬度、スチレン量、配合樹脂、充填材で大きく変わる。 |
| 伸び | % | 300〜900 | 100〜600 | 20〜150 | 低硬度品ほど伸びが大きい傾向がある。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 5〜100 | 100〜800 | 1000〜4000 | GF強化、PP配合により剛性を上げられる。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 破壊せず〜高い | 10〜80 | 5〜30 | 軟質グレードではノッチ付きでも破壊しにくい場合がある。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 40〜70 | 60〜100 | 90〜140 | 荷重条件、硬度、PP配合、GF量で変化する。 |
| 融点またはガラス転移温度 | ℃ | Tg 約-50〜-60、PS相Tg 約90〜105 | 同左 | 配合樹脂に依存 | SEBSはブロック共重合体であり、明確な単一融点ではなく相構造で理解する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60〜90 | 80〜100 | 90〜120 | 熱老化、荷重、圧縮、薬品接触条件により低下する。 |
| 吸水率 | % | 0.01〜0.10 | 0.01〜0.20 | 0.05〜0.30 | PA、PBT、PET、PUに比べると一般に低吸水である。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 1010〜1015 | カーボン、帯電防止剤、難燃剤の配合で低下する。 |
| 酸素指数 | % | 17〜20 | 17〜22 | 配合により変化 | 未難燃品は燃えやすい。難燃グレードは個別確認が必要である。 |
| UL94 | 等級 | HB相当が多い | HB〜V-0 | HB〜V-0 | 難燃剤配合、厚み、色、添加剤で判定が変化する。 |
耐薬品性
SEBSは水、酸、アルカリ、低級アルコールに対して比較的安定な場合が多い。一方で、ポリスチレン相およびエチレン・ブチレン相と親和性がある炭化水素系溶剤、芳香族溶剤、鉱物油、燃料、塩素系溶剤では膨潤、軟化、重量増加、オイル抽出、物性低下が起こる場合がある。実使用ではグレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○ | 常温・低濃度では比較的安定な場合が多い。濃酸、酸化性酸、高温では確認が必要である。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、炭酸ナトリウム | ○ | 一般に加水分解を受けにくいが、添加剤や配合樹脂の影響を確認する。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。抽出物、白化、硬度変化は確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 薬品の極性、温度、配合オイルとの相互作用により膨潤する場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | 膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。長時間接触用途には一般に不向きである。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | △〜× | ゴムブロックと親和性があり膨潤しやすい。短時間接触でも寸法変化に注意する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △ | 極性は高いが、グレードにより膨潤、白化、物性低下が起こる場合がある。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | △〜× | 膨潤や軟化を生じる場合がある。粘着剤、塗料溶剤との接触では注意する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解、膨潤、抽出が起こりやすい。一般に長期接触には不適である。 |
| 水・温水 | 水、温水、湿熱 | ◎〜○ | 吸水率は低い。ただし高温水、蒸気、添加剤溶出、滅菌条件は個別評価が必要である。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、植物油 | △〜× | 鉱物油では膨潤しやすい。植物油では条件により比較的安定な場合もあるが確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、灯油、軽油 | × | 膨潤、軟化、寸法変化が大きくなりやすい。燃料系シールには一般に不向きである。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、アルカリ洗剤 | ○〜△ | 界面活性剤、溶剤、アルカリ、温度の組み合わせで抽出や膨潤が起こる場合がある。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| SEBSの代表的なSP値 | 約16.5〜18.0 MPa1/2 |
| 目安値 | 代表値として約17.0 MPa1/2を用いることが多い。 |
| 注意点 | SEBSはポリスチレン相とエチレン・ブチレン相を持つ相分離型ブロック共重合体であるため、単一のSP値だけでは耐薬品性を判断できない。 |
| 評価上の注意 | 溶剤接触では、SP値差だけでなく、溶剤分子サイズ、芳香族性、極性、温度、応力、添加剤、オイル量、スチレン含有率を考慮する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下はSEBSの代表SP値を17.0 MPa1/2とした場合の概算である。SEBSは炭化水素性のゴム相を含むため、SP値差が大きくても炭化水素油や燃料で膨潤することがある。実際の耐薬品性は浸漬試験、重量変化、硬度変化、引張物性、外観変化で確認する必要がある。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | SEBSとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 30.9 | ◎ | SP値差は大きく、吸水も小さい。 |
| エタノール | 26.0 | 9.0 | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 6.5 | ○ | 消毒用途では抽出、白化、応力状態を確認する。 |
| アセトン | 20.0 | 3.0 | △ | 膨潤、軟化、表面変化が起こる場合がある。 |
| MEK | 19.0 | 2.0 | △〜× | 塗料・接着剤溶剤との接触では注意が必要である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 1.6 | × | 膨潤、軟化が起こりやすい。 |
| トルエン | 18.2 | 1.2 | × | ポリスチレン相との親和性が高く、膨潤・溶解しやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 1.0 | × | 芳香族溶剤であり、長時間接触には不向きである。 |
| ヘキサン | 14.9 | 2.1 | △〜× | SP値差だけではなく、ゴム相との親和性により膨潤しやすい。 |
| ミネラルオイル | 約15〜17 | 0〜2 | △〜× | SEBSの可塑化に使われることがあり、外部油との接触では膨潤に注意する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 3.2 | × | 塩素系溶剤であり、溶解・膨潤しやすい。 |
| グリセリン | 33.8 | 16.8 | ○ | SP値差は大きいが、温度、添加剤、界面活性剤との併用条件を確認する。 |
製法
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | スチレン、ブタジエン、水素、溶媒、重合開始剤、触媒などを用いる。用途により安定剤、オイル、PP、PE、難燃剤、フィラー、着色剤を配合する。 |
| 重合方法 | 一般にアニオン重合などにより、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)を合成する。 |
| 水素添加 | SBS中のブタジエン由来の炭素-炭素二重結合を選択的に水素添加し、エチレン・ブチレン系ゴムブロックへ変換する。 |
| ペレット化 | 重合体を回収し、必要に応じて安定剤を添加してペレット、クラム、粉体などに加工する。 |
| コンパウンド | SEBSにプロセスオイル、PP、PE、粘着付与樹脂、無機充填材、難燃剤、摺動剤、着色剤などを溶融混練して用途別グレードにする。 |
| 添加剤・充填材 | 酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコーン、PTFE、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維などが使われる場合がある。 |
代表的な反応式・工程式
n C6H5CH=CH2 + m CH2=CH-CH=CH2 + n C6H5CH=CH2 → PS-b-PB-b-PS
PS-b-PB-b-PS + H2 → PS-b-PEB-b-PS
ここで、PSはポリスチレンブロック、PBはポリブタジエンブロック、PEBは水素添加により形成されるポリ(エチレン-co-ブチレン)相を示す。実際の工業製法では分子量、スチレン含有率、水添率、ブロック配列、分岐構造を制御することで、硬度、流動性、弾性、耐熱性、相溶性を調整する。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装表皮、グリップ、カップホルダー、シール、ダクト、制振部材 | 耐候性、柔軟性、低温特性、触感に優れる | 耐熱老化、フォギング、臭気、圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 電気・電子 | 電線被覆、コネクタ周辺軟質部、ケーブルブーツ、保護カバー | 電気絶縁性、柔軟性、成形性が良い | 難燃性、耐熱性、ブリード、UL規格を確認する。 |
| 機械部品 | 防振材、緩衝材、パッキン、ローラー、カバー | 弾性、耐衝撃性、低温柔軟性を利用できる | 油、グリース、荷重下でのクリープ、圧縮永久ひずみに注意する。 |
| 医療 | チューブ、栓、バッグ部材、軟質部品、PVC代替材料 | 柔軟性、透明性、低溶出設計が可能 | FDA、USP、生物学的安全性、滅菌方法、抽出物の確認が必要である。 |
| 食品機械・食品接触 | パッキン、ホース、グリップ、容器周辺部材 | 低吸水、柔軟性、成形性を利用できる | 食品衛生法、FDA、洗剤、油脂、温水、蒸気との接触確認が必要である。 |
| 建築・設備 | シール材、目地材、保護材、滑り止め、緩衝材 | 耐候性、柔軟性、低温特性がある | 屋外長期使用では紫外線、熱、汚染、可塑剤移行を確認する。 |
| 日用品 | 歯ブラシグリップ、工具グリップ、スポーツ用品、玩具、ケース | ソフトタッチ、着色性、二色成形性が良い | 皮脂、化粧品、アルコール、摩耗、べたつきの確認が必要である。 |
| フィルム・シート | 弾性フィルム、保護フィルム、滑り止めシート、粘着層 | 柔軟性、伸縮性、粘着付与設計が可能 | ブロッキング、寸法安定性、耐溶剤性に注意する。 |
| 樹脂改質 | PP、PE、PS、PA、PBT、PET、ABSの耐衝撃改質、相溶化 | 柔軟性付与、衝撃改良、相溶化に有効 | 変性SEBSの選定、分散性、成形条件、物性バランスを確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| SBS樹脂 | スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体 | SEBSはSBSを水素添加した材料であり、SBSより耐候性、耐熱老化性、耐オゾン性に優れる傾向がある。 |
| SIS樹脂 | スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体 | SISは粘着剤用途に多い。SEBSは水添構造により耐候性、耐熱老化性を高めやすい。 |
| SEPS樹脂 | スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン系ブロック共重合体 | SEPSはSEBSに近い水添スチレン系TPEであるが、中間ブロック構造が異なり、柔軟性や相溶性が異なる。 |
| 熱可塑性ポリウレタン(TPU) | 耐摩耗性、機械強度、耐油性に優れるTPE | TPUはSEBSより耐摩耗性、耐油性に優れる場合が多いが、吸湿、加水分解、加工温度管理に注意が必要である。 |
| オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO) | PP、EPDMなどを主体とするTPE | TPOは自動車用途に多い。SEBSはより柔軟な低硬度設計や透明性設計がしやすい場合がある。 |
| 動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV) | PP中に架橋ゴムを分散させたTPE | TPVはSEBSより高温圧縮永久ひずみや耐油性に優れる場合がある。SEBSは触感、透明性、成形自由度で有利な場合がある。 |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 可塑剤により軟質化できる汎用樹脂 | SEBSは軟質PVC代替として使われる。ハロゲンフリー化、低温柔軟性、低比重化で有利な場合がある。 |
| EPDMゴム | 耐候性、耐オゾン性に優れる加硫ゴム | EPDMは加硫ゴムで高温圧縮永久ひずみに強い場合がある。SEBSは熱可塑性で成形加工性、リサイクル性に優れる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Kraton Corporation | KRATON Gシリーズ | スチレン系ブロック共重合体の主要メーカーであり、SEBSを含む水添SBCを展開している。 |
| クラレ | SEPTON、HYBRAR | 水添スチレン系熱可塑性エラストマーを展開する日本メーカーである。医療、粘着、改質、軟質材料用途で用いられる。 |
| 旭化成 | TUFTEC、S.O.E. | SEBS、SBSなどのスチレン系熱可塑性エラストマーを展開している。樹脂改質、軟質材料、相溶化用途で使われる。 |
| LCY Chemical | Globalprene SEBS | スチレン系熱可塑性エラストマーを展開するメーカーであり、SEBS、SBS、SISなどを扱う。 |
| TSRC Corporation | Taipol SEBS | スチレン系ブロック共重合体を展開するメーカーで、SEBS系グレードを供給している。 |
| Dynasol Group | Calprene、Solpreneなど | スチレン系ブロック共重合体を扱うメーカーであり、用途により水添SBC系材料が用いられる。 |
| Eni Versalis | Europrene SOLなど | 合成ゴム、スチレン系ブロック共重合体を扱うメーカーである。対象グレードは用途ごとに確認が必要である。 |
代表グレード
| グレード分類 | 概要 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用 | 標準的な硬度、流動性、弾性を持つSEBSコンパウンド | 一般成形品、グリップ、カバー | 耐油性、耐熱性は用途条件で確認する。 |
| 耐熱 | 高分子量SEBS、PP、耐熱安定剤などを配合 | 自動車内装、電気部品、工業部品 | 高温荷重下ではクリープ、圧縮永久ひずみに注意する。 |
| 難燃 | 難燃剤を配合し、UL94 V-0などを狙うグレード | 電線、ケーブル、電子機器部材 | 難燃剤により柔軟性、透明性、耐ブリード性が変化する。 |
| GF強化 | ガラス繊維を配合した半硬質・高剛性グレード | 構造補助部品、ブラケット、機構部品 | エラストマー性は低下する。反り、繊維露出に注意する。 |
| 摺動 | 摺動改質剤を配合した低摩擦グレード | スライド部、グリップ、消音部材 | 接着、塗装、印刷には表面処理が必要な場合がある。 |
| 食品接触 | 食品接触用途を想定した原料・添加剤設計 | 食品用パッキン、チューブ、容器周辺部材 | 食品衛生法、FDA、EU規制、溶出試験をグレードごとに確認する。 |
| 医療用 | 医療用途に必要な低溶出、透明性、滅菌適性を考慮したグレード | 医療チューブ、栓、バッグ、軟質部材 | 生物学的安全性、滅菌劣化、薬液接触を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨される特性 | 候補グレード | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| ギア | 耐摩耗性、寸法安定性、剛性 | GF強化、摺動改質グレード | SEBS単体では剛性不足となる場合が多く、POM、PA、PBTとの比較が必要である。 |
| 軸受 | 低摩擦、耐摩耗、耐熱 | 摺動SEBS、硬質コンパウンド | 高荷重・連続摺動ではPTFE、POM、PA系材料を検討する。 |
| チューブ | 柔軟性、透明性、低溶出、耐薬品性 | 医療用、食品接触、低硬度グレード | 薬液、滅菌、曲げ疲労、抽出物を確認する。 |
| 筐体 | 耐衝撃性、触感、耐候性 | 硬質SEBS、PPアロイ、二色成形用グレード | 剛性、傷付き、難燃性、寸法安定性を確認する。 |
| フィルム | 伸縮性、柔軟性、透明性、シール性 | 押出用SEBS、粘着付与グレード | ブロッキング、熱収縮、溶剤残留、粘着移行に注意する。 |
| コネクタ | 電気絶縁性、難燃性、寸法安定性 | 難燃SEBS、硬質コンパウンド | 高温環境ではPBT、PA、LCPなどとの比較が必要である。 |
| グリップ | ソフトタッチ、滑り止め、耐汗性、着色性 | 低硬度SEBS、二色成形用グレード | 皮脂、アルコール、化粧品、摩耗、べたつきを確認する。 |
注意点
| 注意項目 | 内容 | 対策・確認方法 |
|---|---|---|
| 加水分解 | SEBS自体はPA、PET、PBT、PUに比べて加水分解を受けにくい。 | ただし、配合樹脂、難燃剤、変性基、添加剤は湿熱で劣化する場合があるため確認する。 |
| 応力割れ | SEBSは柔軟で応力割れは比較的起こりにくいが、硬質配合や二色成形部では応力集中が問題となる場合がある。 | 肉厚、ゲート位置、成形残留応力、溶剤接触を確認する。 |
| 吸湿 | 吸水率は低いが、変性SEBS、難燃グレード、フィラー配合品では水分影響が出る場合がある。 | 外観不良、発泡、銀条が出る場合は乾燥条件を見直す。 |
| 熱劣化 | 高温滞留、せん断発熱、酸化により黄変、臭気、ゲル化、物性低下が起こる場合がある。 | 成形温度、滞留時間、パージ、酸化防止剤を管理する。 |
| アウトガス | オイル、低分子成分、添加剤由来の揮発・ブリードが問題となる場合がある。 | 自動車内装、電子部品、医療用途ではフォギング、VOC、抽出物を確認する。 |
| オイルブリード | 低硬度グレードではプロセスオイルを多く含む場合があり、表面べたつきや移行が起こることがある。 | 相手材、包装材、塗装面、粘着面との接触試験を行う。 |
| 耐油・耐燃料 | 鉱物油、燃料、芳香族成分で膨潤しやすい。 | 燃料シールや油中使用ではTPU、TPV、NBR、FKMなどとの比較が必要である。 |
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