| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | スチレン系熱可塑性エラストマー |
| 略記号 | TPS、TPE-S、SBC |
| IUPAC | ポリスチレンブロックとポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン・ブチレン、エチレン・プロピレンなどのゴム状ブロックからなるブロック共重合体の総称であり、単一のIUPAC名で表しにくい材料群である。 |
| 英語名 | Styrenic Thermoplastic Elastomer、Thermoplastic Styrenic Elastomer、Styrenic Block Copolymer |
| 日本語名 | スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系TPE |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー |
| プラスチック分類 | エラストマー、熱可塑性エラストマー、汎用TPE |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:PS-b-PB-b-PS、PS-b-PI-b-PS、PS-b-PEB-b-PS、PS-b-PEP-b-PS |
| CAS No. | 材料群であり単一のCAS No.では管理されない。代表例としてSBSは9003-55-8、SISは25038-32-8、SEBSは66070-58-4などが用いられる場合がある。 |
| 構造・主成分 | 硬質相であるポリスチレンブロックと、軟質相であるポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンなどのゴム状ブロックから構成される。 |
| 主な用途 | 自動車内装材、グリップ、チューブ、シール材、靴底、医療用部材、フィルム改質材、接着剤、アスファルト改質材、樹脂改質材など。 |
概要
スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリスチレンを硬質ブロック、ゴム状ポリマーを軟質ブロックとして組み合わせたブロック共重合体を主体とする熱可塑性エラストマーである。常温ではゴム弾性を示し、加熱すると熱可塑性樹脂のように流動して成形加工できることが特徴である。
一般に、加硫ゴムのような架橋工程を必要とせず、射出成形、押出成形、ブロー成形などに対応しやすい。軟質PVCの代替、ゴム部品の成形合理化、ポリオレフィンやポリスチレンの改質などに用いられることが多い。
一方で、耐熱性、耐油性、耐溶剤性は種類や配合により大きく異なる。SBSやSISは二重結合を含むため耐候性や耐酸化性に注意が必要であり、SEBS、SEPS、SEEPSなどの水添グレードは耐候性、耐熱老化性、耐薬品性が改善される傾向がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 柔軟性、ゴム弾性、低温特性、成形加工性、着色性、リサイクル性に優れる。加硫工程を省略できるため、量産成形に適する。 |
| 短所 | 耐熱性は加硫ゴムや一部のエンジニアリングエラストマーより低い。芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、油類、可塑剤などにより膨潤する場合がある。 |
| 外観 | ペレットは透明から半透明、乳白色、不透明までグレードにより異なる。成形品は軟質でゴム状の外観を示すものが多い。 |
| 耐熱性 | 一般に連続使用温度は約60~100℃程度である。水添系や高スチレンタイプ、耐熱改良グレードではこれより高い温度域で使用される場合がある。 |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ、低級アルコールには比較的安定な場合が多い。炭化水素系溶剤、芳香族溶剤、鉱物油、可塑剤には膨潤しやすい傾向がある。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー加工、フィルム加工、コンパウンド加工に適用される。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、オイル、充填材との配合設計が行われる。 |
| 分類上の注意 | TPSは熱可塑性エラストマーの一群であり、SBS、SIS、SEBS、SEPS、SEEPSなどを含む。軟質PVC、TPU、TPO、TPV、加硫ゴムとは分類・耐熱性・耐油性・成形性が異なる。 |
構造式
スチレン系熱可塑性エラストマーは、一般にポリスチレンブロックを硬質相、ジエン系または水添ジエン系ポリマーブロックを軟質相とするブロック共重合体である。画像タグは使用せず、代表構造をテキストで示す。
| 項目 | 代表構造 |
|---|---|
| SBS | [-CH2-CH(C6H5)-]m-b-[-CH2-CH=CH-CH2-]n-b-[-CH2-CH(C6H5)-]m |
| SIS | PS-b-PI-b-PS |
| SEBS | PS-b-PEB-b-PS |
| SEPS | PS-b-PEP-b-PS |
| SEEPS | PS-b-PEEP-b-PS |
代表的な構造単位
- 硬質ブロック:ポリスチレンブロック
- 軟質ブロック:ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンなど
- 物理架橋点:ポリスチレンブロックのミクロドメイン
- ゴム弾性相:軟質ブロックにより形成される柔軟相
モノマーまたは構成単位
| 構成単位 | 内容 |
|---|---|
| スチレン | 硬質ブロックを形成し、強度、成形性、熱軟化挙動に影響する。 |
| ブタジエン | SBSの軟質ブロックを形成する。柔軟性、反発弾性、低温特性に寄与するが、二重結合により酸化劣化に注意が必要である。 |
| イソプレン | SISの軟質ブロックを形成する。粘着性や柔軟性に寄与し、粘着剤用途で用いられることが多い。 |
| 水添ジエンブロック | SEBS、SEPS、SEEPSなどで用いられる。二重結合を低減することで耐候性、耐熱老化性、耐薬品性が改善される。 |
共重合体や変性グレード
TPSはブロック構造、スチレン含有量、分子量、軟質ブロックの種類、水添の有無、オイルやポリオレフィンとの配合により性質が大きく変化する。SBS、SISは粘着剤、樹脂改質、アスファルト改質などに多く使用され、SEBS、SEPS、SEEPSは耐候性や耐熱老化性が求められる成形品、医療用部材、軟質部品に使用される。
マレイン酸変性SEBSなどの官能基変性グレードは、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ガラス繊維、無機充填材などとの相容化や接着性改善を目的として使用される。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| SBS | スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体 | 弾性、加工性、改質効果、粘着性に優れる。 | 二重結合を含むため耐候性、耐熱老化性に注意が必要である。 | 靴底、接着剤、アスファルト改質、HIPS改質、シート、フィルム |
| SIS | スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体 | 粘着性、柔軟性、低温特性に優れる。 | 耐熱性、耐候性、耐油性は限定的である。 | 粘着剤、ホットメルト接着剤、衛生材料、包装材料 |
| SEBS | SBSを水素添加した構造 | 耐候性、耐熱老化性、耐薬品性がSBSより良好である。 | 芳香族溶剤、油類、炭化水素系溶剤では膨潤しやすい場合がある。 | 自動車内装材、グリップ、医療用チューブ、シール材、軟質成形品 |
| SEPS | SISを水素添加した構造 | 柔軟性、透明性、低温特性、耐候性に優れる。 | 耐熱性や耐油性は配合に依存する。 | 医療用部材、透明軟質成形品、ゲル材料、フィルム改質材 |
| SEEPS | 水添スチレン・エチレン・エチレンプロピレン・スチレン系ブロック共重合体 | 柔軟性、耐候性、低温特性、ゲル化性に優れる。 | 高温下の圧縮永久ひずみや油膨潤に注意が必要である。 | ゲル、医療用材料、軟質部材、シール材、衝撃吸収材 |
| 官能基変性SEBS | マレイン酸変性などの極性官能基を導入したグレード | 他樹脂や充填材との相容性、接着性を改善しやすい。 | 吸湿、熱安定性、反応性による加工条件管理が必要である。 | 相容化剤、樹脂改質材、複合材、接着性改良材料 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | グリップ、キャップ、シール部品、二色成形品などに広く用いられる。成形温度はグレードや配合により調整する。 |
| 押出成形 | ◎ | チューブ、ホース、シート、フィルム、異形押出品に適する。 |
| ブロー成形 | ○ | 柔軟容器や中空成形品に適用される場合がある。溶融張力や配合設計の確認が必要である。 |
| 圧縮成形 | △ | 試験片作製や一部のシート成形に用いられるが、量産では射出成形や押出成形が一般的である。 |
| 真空成形 | △ | シート成形グレードでは可能な場合がある。厚み保持性、加熱温度、冷却条件の確認が必要である。 |
| カレンダー加工 | ○ | 軟質シート、フィルム、レザー調材料などに適用される場合がある。 |
| ホットメルト加工 | ◎ | SIS、SBSを中心に粘着剤、接着剤で多用される。 |
| 切削加工 | △ | 柔軟で弾性があるため寸法精度を出しにくい。試作や厚肉材では刃物、固定方法、冷却条件を調整する。 |
| 溶着 | ○ | 熱溶着、高周波以外の熱板・超音波・インパルス溶着などが検討される。配合や相手材により適性が変わる。 |
| 二色成形・インサート成形 | ◎ | PP、PE、PS、ABSなどとの複合成形に用いられる。接着性は配合、極性、表面処理に依存する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下の値は代表値または目安であり、TPSの種類、スチレン含有量、オイル量、充填材、硬度、成形条件により大きく変化する。実使用では、グレード、温度、荷重、応力、使用時間、薬品接触条件を確認する必要がある。
| 項目 | SBS系 | SEBS系 | 充填材配合SEBS系 | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | 0.93~0.98 | 0.88~0.95 | 0.95~1.20 | g/cm3 | オイル、PP、無機充填材の配合で変化する。 |
| 硬度 | A 30~D 40 | A 5~D 50 | A 40~D 60 | Shore | 軟質ゲルから硬質グレードまで幅が広い。 |
| 引張強さ | 5~25 | 3~30 | 5~25 | MPa | 硬度、スチレン含有量、配合により変化する。 |
| 伸び | 300~900 | 300~1000 | 150~700 | % | 軟質グレードほど高伸びを示す傾向がある。 |
| 曲げ弾性率 | 5~300 | 3~500 | 50~1000 | MPa | 軟質グレードでは測定が困難な場合がある。 |
| アイゾット衝撃強さ | 破壊せず~高値 | 破壊せず~高値 | 高値 | J/m | エラストマーであり、ノッチ付きでも破壊しにくい場合が多い。 |
| 荷重たわみ温度 | 40~80 | 50~100 | 60~120 | ℃ | 荷重、硬度、配合により大きく異なる。 |
| 融点またはガラス転移温度 | PS相:約90~105、ゴム相:約-90~-50 | PS相:約90~105、ゴム相:約-70~-40 | 配合に依存 | ℃ | 明確な融点よりも軟化挙動で評価されることが多い。 |
| 連続使用温度 | 60~80 | 70~100 | 80~110 | ℃ | 長時間使用では圧縮永久ひずみ、熱老化、応力緩和を確認する。 |
| 吸水率 | 0.01~0.10 | 0.01~0.10 | 0.05~0.30 | % | 非極性材料であり吸水は少ないが、充填材や変性グレードで増える場合がある。 |
| 体積抵抗率 | 1013~1016 | 1013~1016 | 1010~1015 | Ω・cm | 帯電防止剤、導電材配合により大きく変化する。 |
| 耐候性 | △ | ○ | ○ | 評価 | SBS、SISは二重結合を含むため、水添系より劣化しやすい。 |
| 耐油性 | △~× | △ | △~○ | 評価 | 鉱物油、燃料油、可塑剤には膨潤しやすい。使用条件で確認する。 |
耐薬品性
TPSは非極性のゴム状ブロックとポリスチレンブロックを含むため、水、低級アルコール、希酸、希アルカリには比較的安定な場合が多い。一方で、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素系溶剤、油類には膨潤・軟化しやすい。評価は代表的な目安であり、実使用では濃度、温度、浸漬時間、応力、グレード、配合を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○ | 希薄条件では比較的安定な場合が多い。濃酸、高温条件では確認が必要である。 |
| 酸化性酸 | 濃硝酸、クロム酸、濃硫酸 | × | 酸化劣化、分解、変色の可能性がある。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | ○ | 希薄条件では比較的安定な場合が多い。高温・高濃度では確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ブタノール、MMB | ○~△ | 種類、温度、配合により膨潤や軟化が発生する場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | ポリスチレン相とSP値が近く、膨潤・溶解・軟化しやすい。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン | △~× | ゴム状ブロックが膨潤しやすい。長時間接触には不向きな場合が多い。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △~× | 配合により膨潤・白化・軟化が起こる場合がある。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | △~× | 溶解・膨潤が生じやすい。接着剤や塗料溶剤との接触に注意する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 強い膨潤、溶解、物性低下が起こりやすい。 |
| 水・温水 | 水、温水 | ○ | 吸水は少ないが、熱水、蒸気、長時間使用では劣化や添加剤溶出を確認する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、植物油、可塑剤 | △~× | 膨潤、軟化、重量増加が起こる場合が多い。耐油用途ではTPU、TPV、NBR、FKMなどとの比較が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、灯油、軽油 | × | 膨潤しやすく、燃料接触部材には一般に不向きである。 |
SP値(溶解度パラメータ)
TPSの代表的なSP値は、構成ブロックと配合により異なるが、目安として約16~19 MPa1/2程度で扱われることが多い。ポリスチレン相は約18.5~19.0 MPa1/2、ポリブタジエン相や水添ゴム相は約16~17 MPa1/2付近の目安で考えられる。
SP値は溶解・膨潤の傾向を推定するための指標であるが、耐薬品性を単独で判断することはできない。結晶性、架橋の有無、相分離構造、添加剤、充填材、温度、薬品濃度、浸漬時間、応力、成形品の厚みも影響する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0 ~ 2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2 ~ 5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5 ~ 8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表はTPSの代表SP値を17.5 MPa1/2と仮定した場合の目安である。SBS、SIS、SEBS、SEPS、SEEPS、オイル配合品、PP配合品では結果が異なるため、実際には対象グレードで確認する必要がある。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | TPSとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 30.4 | ◎ | SP値差は大きいが、熱水や添加剤溶出は別途確認する。 |
| メタノール | 29.7 | 12.2 | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 |
| エタノール | 26.0 | 8.5 | ○ | 低級アルコールには比較的安定な傾向である。 |
| IPA | 23.5 | 6.0 | ○ | 長時間浸漬や高温では確認する。 |
| アセトン | 20.1 | 2.6 | △ | 配合により膨潤・軟化する場合がある。 |
| MEK | 19.0 | 1.5 | × | 膨潤、軟化に注意が必要である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 1.1 | × | 溶解・膨潤しやすい。 |
| トルエン | 18.2 | 0.7 | × | 芳香族溶剤であり、TPSを強く膨潤・溶解させやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 0.5 | × | ポリスチレン相との親和性が高い。 |
| ヘキサン | 14.9 | 2.6 | △~× | SP値差だけでは良好に見える場合があるが、ゴム相が膨潤しやすい。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 0.7 | × | ゴム相を膨潤させやすい。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 2.7 | × | 塩素系溶剤であり、溶解・膨潤しやすい。 |
| グリセリン | 33.8 | 16.3 | ○ | 高粘度であり、実使用では温度と接触時間を確認する。 |
| 鉱物油 | 約15~17 | 0.5~2.5 | △~× | 膨潤しやすい。オイル配合TPSとの相溶性が高い場合がある。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値差が大きくても、薬品の浸透性、分子サイズ、温度、応力、添加剤抽出、相分離構造により実際の耐薬品性は変化する。
製法
原料
- スチレン
- ブタジエン
- イソプレン
- 水素添加用水素
- 重合開始剤、有機リチウム系開始剤など
- プロセスオイル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、充填材、安定剤など
重合方法
SBS、SISなどのスチレン系ブロック共重合体は、一般にリビングアニオン重合により製造される。スチレンブロック、ジエン系ブロック、スチレンブロックを順次重合することで、A-B-A型のブロック構造を形成する。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 開始反応 | 有機リチウム開始剤によりスチレンを重合し、ポリスチレンリビング鎖を形成する。 |
| 軟質ブロック形成 | ブタジエンまたはイソプレンを添加し、ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックを形成する。 |
| 末端スチレンブロック形成 | 再度スチレンを添加し、PS-b-PB-b-PSまたはPS-b-PI-b-PSのようなトリブロック共重合体を得る。 |
| 水素添加 | SBSやSISの二重結合を水素添加することで、SEBS、SEPS、SEEPSなどの水添TPSを得る。 |
| 脱溶媒・造粒 | 未反応成分や溶媒を除去し、ペレットまたはクラム状に加工する。 |
代表的な反応式や工程
代表的なSBSの生成は、以下のように表すことができる。
n CH2=CH-C6H5 + m CH2=CH-CH=CH2 + n CH2=CH-C6H5 → PS-b-PB-b-PS
水添SEBSの生成は、以下のように表すことができる。
PS-b-PB-b-PS + H2 → PS-b-PEB-b-PS
ここでPSはポリスチレンブロック、PBはポリブタジエンブロック、PEBは水添ポリブタジエンに相当するエチレン・ブチレンブロックを示す。
ペレット化やコンパウンド
TPSは単独ポリマーとして供給されるほか、プロセスオイル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、軟化剤、無機充填材、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤などを配合したコンパウンドとして使用される。最終物性はポリマーそのものよりも配合設計の影響を強く受ける場合が多い。
添加剤、充填材、強化材
- プロセスオイル:柔軟性、流動性、低硬度化を目的として使用される。
- ポリプロピレン:耐熱性、成形性、剛性の調整に使用される。
- 無機充填材:コスト調整、剛性付与、寸法安定性改善に使用される。
- 酸化防止剤:熱老化、加工時劣化の抑制に使用される。
- 紫外線吸収剤・HALS:屋外用途や自動車用途で耐候性改善に使用される。
- 相容化剤:他樹脂との複合化や接着性改善を目的として使用される。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装表皮、グリップ、マット、シール材、カップホルダー、ダクト、制振材 | 柔軟性、触感、成形性、軽量性、着色性に優れる。 | 耐熱性、耐候性、フォギング、オイル接触、圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 電気・電子 | ケーブル被覆、コネクタカバー、保護カバー、スイッチ部材、緩衝部材 | 柔軟性、電気絶縁性、成形性、耐衝撃性を付与しやすい。 | 難燃性、耐熱性、ブリード、長期絶縁性を確認する。 |
| 機械部品 | 緩衝材、防振材、パッキン、グロメット、ローラー、カバー | ゴム弾性と熱可塑性成形性を併せ持つ。 | 耐油性、摩耗性、荷重下の永久変形を確認する。 |
| 医療 | チューブ、バッグ、栓体、軟質部材、医療用フィルム | 柔軟性、透明性、低溶出設計、PVC代替用途で使用される。 | 医療規格、滅菌方法、抽出物、薬液適合性を確認する。 |
| 食品機械・食品包装 | 軟質パッキン、包装フィルム、キャップライナー、グリップ部材 | 柔軟性、低温特性、ヒートシール性、加工性を付与できる。 | 食品衛生規格、油脂接触、添加剤移行を確認する。 |
| 建築・設備 | 防水シート、目地材、シール材、制振材、滑り止め材 | 柔軟性、施工性、低温特性に優れる。 | 屋外耐候性、熱老化、可塑剤や油との接触を確認する。 |
| 靴・スポーツ用品 | 靴底、グリップ、プロテクター、衝撃吸収材、トレーニング用品 | 反発弾性、柔軟性、軽量性、着色性に優れる。 | 摩耗性、耐候性、耐汗性、圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 接着剤・粘着剤 | ホットメルト接着剤、粘着テープ、ラベル、衛生材料用接着剤 | SBS、SISは粘着付与樹脂やオイルとの配合で粘着特性を設計しやすい。 | 耐熱保持力、耐候性、移行、被着体との相性を確認する。 |
| 土木・道路 | アスファルト改質材、防水材、舗装材 | SBSなどにより柔軟性、耐わだち掘れ性、低温ひび割れ性を改善しやすい。 | 熱劣化、分散性、長期耐久性、施工温度を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| 熱可塑性ポリウレタン | 耐摩耗性、機械強度、耐油性に優れる熱可塑性エラストマーである。 | TPSより耐摩耗性や耐油性に優れる傾向があるが、加水分解や成形温度管理に注意が必要である。 |
| オレフィン系熱可塑性エラストマー | PPやEPDMを主体とする非極性TPEであり、軽量で耐薬品性に優れる。 | TPSより耐油性は限定的な場合があるが、ポリオレフィン系材料との相性が良い。 |
| 熱可塑性加硫ゴム | 動的架橋EPDMとPPを主体とするTPEで、耐熱性や圧縮永久ひずみに優れる。 | TPSより高温下のゴム弾性保持に優れる場合が多いが、透明性や低硬度化ではTPSが有利な場合がある。 |
| 軟質ポリ塩化ビニル | 可塑剤により柔軟化した汎用軟質材料で、加工性とコストに優れる。 | TPSは非塩素系材料として軟質PVC代替に使われることがある。可塑剤移行や規制対応ではTPSが選ばれる場合がある。 |
| ニトリルゴム | 耐油性に優れる加硫ゴムであり、シール材やホースに多用される。 | TPSは熱可塑成形が容易であるが、耐油性ではNBRが優れる場合が多い。 |
| エチレンプロピレンゴム | 耐候性、耐オゾン性、耐水性に優れる加硫ゴムである。 | TPSは成形加工性に優れるが、屋外長期耐久や圧縮永久ひずみではEPDMやTPVが適する場合がある。 |
| シリコーンゴム | 耐熱性、耐寒性、電気特性に優れる加硫ゴムである。 | TPSより使用温度範囲が広いが、コストや量産成形性ではTPSが有利な場合がある。 |
| ポリスチレン | 透明性、剛性、成形性に優れる汎用プラスチックである。 | TPSはポリスチレンブロックを含むが、ゴム状ブロックにより柔軟性と弾性を示す点が異なる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| クラレ | SEPTON、HYBRAR | 水添スチレン系ブロック共重合体やスチレン系エラストマーを展開する代表的メーカーである。 |
| 旭化成 | タフテック、アサプレン | 水添SBCやSBS系材料を展開し、樹脂改質、粘接着、成形材料用途に使用される。 |
| ENEOSマテリアル | JSR TR、DYNARON | SBS、SIS、水添系スチレンブロック共重合体などの代表例がある。 |
| Kraton Corporation | Kraton | スチレン系ブロック共重合体の代表的メーカーであり、接着剤、改質材、成形材料などに使用される。 |
| Dynasol Group | Calprene、Solprene | SBS、SIS、SEBSなどのスチレン系ブロック共重合体を展開するメーカーである。 |
| LCY Chemical | Globalprene | SBS、SIS、SEBSなどのスチレン系ブロック共重合体を展開するメーカーである。 |
| TSRC Corporation | Taipol | スチレン系ブロック共重合体を含む合成ゴム・TPE材料を展開するメーカーである。 |
| Sinopec | 代表例:SBS、SEBS系グレード | 石油化学系メーカーとしてスチレン系ブロック共重合体を展開している。 |
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