概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | エチレンプロピレンゴム |
| 略記号 | EPM、EPR |
| IUPAC | poly(ethene-co-prop-1-ene)(共重合組成・配列が一定でないため、材料群として一義的な単一名称に限定しにくい) |
| 英語名 | Ethylene Propylene Rubber、Ethylene-Propylene Copolymer、Ethylene-Propylene Copolymer Rubber |
| 日本語名・別名 | エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、EPR |
| 分類 | 合成ゴム、非ジエン系ゴム、飽和炭化水素系エラストマー |
| プラスチック分類 | 一般的な熱可塑性プラスチック、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックには分類しない。通常は架橋して使用する熱硬化性エラストマーである |
| 代表構造 | -[CH2-CH2]m-[CH2-CH(CH3)]n- |
| 代表CAS No. | 9010-79-1(エチレン・プロピレン共重合体の代表例。製品SDSで確認が必要) |
| 構造・主成分 | エチレン単位とプロピレン単位を主鎖に含む飽和共重合体。EPDMと異なり、通常は第三成分の非共役ジエンを含まない |
| 主な架橋方式 | 有機過酸化物架橋、放射線架橋。特殊な官能化又は共架橋系を除き、硫黄加硫は適用しにくい |
| 主な用途 | 耐熱電線・ケーブル、電気絶縁部品、耐候シール、ホース、ベルト、ガスケット、Oリング、ゴムロール、樹脂改質、ブレンド改質、発泡体 |
エチレンプロピレンゴムは、エチレンとプロピレンを配位重合して得る飽和炭化水素系の合成ゴムである。主鎖に炭素-炭素二重結合をほとんど持たないため、一般に耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性及び電気絶縁性に優れる。密度が比較的低く、低温でも柔軟性を維持しやすいことも特徴である。
一方、鉱油、燃料油、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素に対しては膨潤しやすく、耐油ゴムとしては適さない。極性溶媒や水系薬品には比較的良好な場合が多いが、配合、架橋密度、温度、応力及び接触時間により挙動が変化するため、実部品では実液浸漬試験と物性保持率の確認が必要である。
EPMは第三成分のジエンを含むエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)と区別される。EPDMは側鎖の不飽和部位を利用した硫黄加硫が可能であるのに対し、EPMは通常、有機過酸化物によって架橋する。したがって、EPMは高温下の圧縮永久ひずみ、電気特性、低抽出性などを重視する用途で選択されることがある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 主鎖が飽和しており、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、耐水性、耐蒸気性及び電気絶縁性に優れる。低密度で低温柔軟性も比較的良好である。 |
| 短所 | 鉱油、潤滑油、ガソリン、軽油、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素で膨潤しやすい。未処理表面は接着しにくく、EPMは硫黄加硫を適用しにくい。 |
| 外観 | 原料ポリマーは白色から淡黄色のベール、ペレット又はクラム状が一般的である。配合ゴムはカーボンブラック、無機充填材、顔料等により黒色又は各種色調となる。 |
| 耐熱性 | 標準的な過酸化物架橋配合では、連続使用温度の目安は約110~150℃である。高耐熱配合では上限が高くなる場合があるが、圧縮永久ひずみ、酸素濃度、負荷及び寿命基準で確認する。 |
| 低温性 | ガラス転移温度は一般に約-60~-40℃である。エチレン含有率、結晶性、可塑剤及び充填材により低温柔軟性が変化する。 |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ、アルコール、グリコール、ケトン及び一部のリン酸エステル系作動油に比較的良好である。炭化水素油及びハロゲン化溶剤には不適又は要注意である。 |
| 加工性 | 混練、押出、カレンダー、圧縮成形、トランスファー成形、ゴム射出成形、発泡成形に適用できる。過酸化物架橋ではスコーチ防止、酸素阻害、金属イオン及び共架橋剤の影響に注意する。 |
| 分類上の注意 | EPMは熱可塑性エラストマーのTPOや、ジエンを含むEPDMとは異なる。市販資料ではEPR、EP rubber又はEP(D)Mとして一括表記される場合があるため、ジエン含有の有無を確認する。 |
長所
- 耐オゾン性及び耐候性が非常に良好であり、屋外暴露で主鎖切断を受けにくい。
- 耐熱老化性が天然ゴム、SBR及び一般的なジエン系ゴムより良好である。
- 水、温水、蒸気、アルコール及びグリコール系液体に比較的良好である。
- 体積抵抗率が高く、誘電特性が安定しやすいため電線・ケーブル用途に適する。
- 比重が低く、同じ体積のゴム製品では重量及び配合コストを抑えやすい。
- 過酸化物架橋では耐熱性、圧縮永久ひずみ及び低抽出性を高めやすい。
短所
- 非極性炭化水素系であるため、鉱油、燃料、芳香族溶剤及び脂肪族溶剤で著しく膨潤する場合がある。
- 表面エネルギーが低く、未処理では接着、塗装及び印刷が難しい。
- EPMは主鎖及び側鎖に硫黄架橋用の二重結合を持たないため、一般的な硫黄加硫を適用しにくい。
- 高エチレン組成では結晶性が増して加工時のグリーン強度は向上する一方、低温柔軟性及び圧縮永久ひずみが悪化することがある。
- 難燃性は材料固有では高くなく、電気用途では難燃剤、充填材及びUL認証グレードの個別確認が必要である。
構造式
EPMはエチレンとプロピレンのランダム又は統計的共重合体であり、代表構造は以下のように表せる。実際の配列、エチレン含有率、分子量分布及び長鎖分岐はグレードにより異なる。
モノマー又は構成単位はエチレン及びプロピレンである。共重合組成は製品により異なるが、一般にエチレン含有率が高くなると結晶性、グリーン強度、押出形状保持性及び引張特性が高くなる傾向がある。一方、低温柔軟性、混練性及び圧縮永久ひずみは必ずしも同じ方向に改善しない。
EPMは非共役ジエンを含まないため、EPDMのように残存二重結合を利用した硫黄加硫は一般的でない。有機過酸化物とTAIC、TAC、TMPTMA等の共架橋剤を組み合わせ、炭素-炭素架橋を形成する配合が代表的である。
種類
| 代表グレード区分 | 主な改質方法・特徴 | 長所・物性への影響 | 短所・注意点 | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準EPM | 中程度のエチレン含有率及びムーニー粘度 | 耐候性、電気特性、低密度のバランスが良い | 耐油性及び接着性が低い | 電線、ホース、シール、一般工業用品 |
| 低エチレンEPM | エチレン含有率が比較的低い | 低温柔軟性、混練性、充填性を調整しやすい | グリーン強度及び押出形状保持性が低くなる場合がある | 柔軟シール、低温用途、ブレンド |
| 高エチレンEPM | エチレン含有率が比較的高く結晶性を持ちやすい | グリーン強度、引張特性、押出性が良好 | 低温柔軟性や圧縮永久ひずみに注意 | 押出品、電線、ベルト、成形品 |
| 低ムーニー・高流動 | 低分子量又は低粘度設計 | 混練、射出、充填材分散、流動性に優れる | 生ゴム強度及び機械強度が低くなる場合がある | 射出成形、樹脂改質、高充填配合 |
| 高ムーニー・高粘度 | 高分子量設計 | 機械強度、押出安定性、耐クリープ性を高めやすい | 混練負荷、発熱及び成形圧力が増える | 押出ホース、ベルト、動的用途 |
| 油展EPM | パラフィン系プロセス油等を含む | 混練性、低温性及び高充填性を調整しやすい | 抽出、ブリード、食品・医療適合性に注意 | ホース、発泡品、高充填コンパウンド |
| 過酸化物架橋グレード | 過酸化物架橋に適した分子設計・純度 | 耐熱性、圧縮永久ひずみ、電気特性を高めやすい | 酸素阻害、金属接触、架橋剤分散に注意 | 高温シール、電線、絶縁部品 |
| 難燃・電気絶縁配合 | ATH、MDH、難燃剤、電気用充填材を配合 | 難燃性、低発煙性、絶縁性を設計可能 | 比重、硬さ、伸び、加工性が変化 | ケーブル被覆、絶縁部品 |
| 導電・帯電防止配合 | 導電性カーボン等を配合 | 静電気拡散又は導電性を付与 | 絶縁性を失い、機械特性や表面性が変化 | 導電シール、帯電防止部品 |
| 発泡グレード | 発泡剤、気泡核剤、架橋系を最適化 | 軽量、断熱、シール性、緩衝性 | 気泡均一性、収縮、臭気、永久ひずみに注意 | スポンジ、ウェザーストリップ、断熱材 |
| 食品接触・医療用途向け | 抽出物、添加剤、顔料及び製造管理を限定 | 低抽出、清浄性、規制適合を設計可能 | 適合は特定グレード及び用途条件に限定 | 食品機械シール、医療部品、チューブ |
| 繊維・無機充填複合配合 | 短繊維、シリカ、タルク、クレー等を配合 | 剛性、寸法安定性、耐摩耗性を調整 | 伸び、疲労、シール性、分散性に注意 | ベルト、ロール、成形部品 |
EPMでは、GF強化及びCF強化は熱可塑性樹脂のような標準ペレットグレードとして一般化しにくい。短繊維補強ゴム、織布積層、コード補強又は樹脂との複合化として設計されるため、繊維種、繊維長、表面処理、配向及び含有率を個別に確認する。
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | ゴム射出成形に適用可能。過酸化物架橋ではスコーチ余裕、金型温度、滞留時間及び酸素阻害を管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | ホース、電線、異形押出に適する。ダイスウェル、押出肌、形状保持性及び連続加硫条件を確認する。 |
| ブロー成形 | × | 一般的な熱可塑性ブロー成形には不適。未加硫ゴムの特殊中空成形を除き、標準加工法ではない。 |
| インフレーション成形 | × | 熱可塑性フィルムのインフレーション成形には通常不適。 |
| Tダイフィルム成形 | △ | 未架橋シート押出又はキャリア樹脂とのブレンドでは可能。単独EPMの一般的なフィルム成形法ではない。 |
| 真空成形 | × | 架橋ゴムは熱可塑再軟化しないため不適。 |
| 圧空成形 | × | 一般的な熱可塑シート成形には不適。 |
| 圧縮成形 | ◎ | シール、ガスケット、厚肉品に適する。温度分布、エア抜き、加硫時間及び離型を管理する。 |
| トランスファー成形 | ◎ | 複雑形状、インサート及び精密ゴム部品に適する。流動性とスコーチ安定性の両立が必要である。 |
| 回転成形 | × | 一般的な粉末回転成形には不適。 |
| 発泡成形 | ○ | スポンジ、シール材に適する。架橋速度と発泡速度の整合、セル径及び収縮を管理する。 |
| 3Dプリント | △ | 未加硫ゴム押出又は液状配合の特殊装置では可能だが、標準フィラメント方式には不適。 |
| 切削加工 | △ | 硬質配合又は低温固定で可能。軟質ゴムは変形しやすく、研削又は打抜きが適する。 |
| 溶着 | × | 架橋後は熱融着できない。未架橋段階での共加硫又は接着剤接合を用いる。 |
| 接着 | △ | 表面処理、プライマー及びEPM対応接着剤が必要。低表面エネルギーとブルームに注意する。 |
| 塗装・印刷 | △ | コロナ、プラズマ、フレーム処理又はプライマーが必要。可塑剤、ワックス及び老化防止剤の移行を確認する。 |
| めっき | × | 通常は不適。導電下地及び特殊前処理を用いる特殊用途に限定される。 |
| 蒸着 | △ | プラズマ処理及びバリア層を用いる特殊用途で可能。曲げ追従性及び密着耐久性を確認する。 |
| レーザーマーキング | △ | 顔料及びレーザー添加剤を含む配合で可能。焦げ、発煙及びコントラストを確認する。 |
| 二次成形・インサート成形 | ○ | 金属・樹脂との一体成形が可能。接着処理、熱膨張差及びインサート周辺応力を管理する。 |
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 熱板溶着・超音波溶着・振動溶着 | × | 架橋後は溶融しないため、熱可塑性樹脂のような溶着はできない。 |
| レーザー溶着・高周波溶着 | × | 単独EPMは吸収・誘電加熱条件を満たしにくく、架橋後は再溶融しない。 |
| 熱風溶着・溶剤接着 | × | 熱風溶着は不適。溶剤で表面を溶かして接合する方法も安定しにくい。 |
| 接着剤接合 | △ | 塩素化ポリオレフィン系、反応性プライマー、ゴム用接着剤等を選定し、表面清浄化と活性化を行う。 |
| 機械締結 | ○ | 座金、フランジ、圧縮量及びクリープを考慮すれば有効。局所切込みと過圧縮を避ける。 |
| インサート・タッピングねじ | △ | インサート成形は可能。ねじ直接締結は緩みや引抜きに注意し、金属カラー等を併用する。 |
| コロナ・プラズマ・フレーム処理 | ○ | 表面極性を一時的に高め、接着及び印刷を改善できる。経時減衰するため処理後速やかに接合する。 |
| プライマー処理 | ◎ | 基材、接着剤及び加硫条件に適合する専用プライマーを用いると密着性を高めやすい。 |
代表的な成形・加硫条件
| 項目 | 単位 | 代表値・範囲 | 条件 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 予備乾燥の要否 | - | 通常不要 | - | 吸湿性は低い。ただし水分、結露、保管汚染及び充填材の吸湿は除去する。 |
| 保管温度 | ℃ | 15~35 | 一般保管 | 直射日光、オゾン源、高温及び長期圧縮を避ける。 |
| 混練温度・マスターバッチ | ℃ | 80~120 | 密閉混練機 | 配合、油展量及び充填材により調整する。過度な発熱と酸化を避ける。 |
| 最終混練温度 | ℃ | 60~100 | 架橋剤添加工程 | 有機過酸化物の分解開始温度より十分低く管理する。 |
| ロール温度 | ℃ | 30~70 | オープンロール | 粘着、バギング及び分散状態により前後ロール温度を調整する。 |
| 押出ヘッド・ダイ温度 | ℃ | 50~100 | 未加硫押出 | スコーチ安全性、表面肌及びダイスウェルを確認する。 |
| 射出シリンダー温度 | ℃ | 50~90 | ゴム射出成形 | 滞留時のスコーチを避ける。熱可塑性樹脂の温度条件とは異なる。 |
| 金型温度 | ℃ | 160~190 | 過酸化物架橋の一般目安 | 肉厚、過酸化物半減期及び後加硫の有無で設定する。 |
| 一次加硫時間 | min | 2~20 | 金型内 | 肉厚及び温度依存。レオメータでt90及び安全余裕を確認する。 |
| 射出圧力 | MPa | 50~150 | ゴム射出成形の機械設定目安 | 流路、粘度及び製品形状による。樹脂圧力の実測値とは一致しない場合がある。 |
| 保圧 | MPa | 20~100 | 目安 | バリ、ボイド及び収縮を見ながら調整する。 |
| 背圧 | MPa | 2~10 | 目安 | 混合均一性と発熱を両立する。 |
| スクリュー回転数 | rpm | 20~80 | 目安 | せん断発熱と滞留を抑える。 |
| 後加硫温度 | ℃ | 150~200 | 必要な配合のみ | 残留過酸化物及び揮発分を低減し、圧縮永久ひずみを安定化する。 |
| 後加硫時間 | h | 2~8 | 必要な配合のみ | 部品厚さ及び要求抽出性で設定する。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.5~4.0 | 架橋成形品の代表範囲 | 配合、硬さ、金型温度、加硫度及び後加硫で変化する。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.5~4.5 | 架橋成形品の代表範囲 | 押出配向又は繊維補強配合では異方性が大きくなる。 |
| 推奨肉厚 | mm | 1~20 | 一般成形品の目安 | 厚肉では加硫不足、温度勾配及びボイドに注意する。 |
| 抜き勾配 | ° | 0.5~3 | 形状・硬さ依存 | 軟質、深形状及び表面粗さが大きい場合は増やす。 |
| アニール | - | 通常該当なし | - | 熱可塑性樹脂のアニールではなく、必要に応じて後加硫を行う。 |
上記は材料群としての一般的な目安であり、特定グレードの絶対条件ではない。実際にはムーニー粘度、エチレン含有率、油展量、充填材、過酸化物種類、共架橋剤、製品肉厚、成形機及び要求加硫度に合わせて、加硫レオメータ及び実成形で設定する。
代表的な物性値又は機械的性質
EPMは原料ポリマー単体で最終製品に使用することが少なく、充填材、軟化剤、架橋剤及び共架橋剤を含む架橋配合物の物性幅が大きい。以下は非強化・標準的な過酸化物架橋配合を中心とした代表範囲であり、比較機能に使用する場合は、原料ポリマーと架橋配合物を別データとして管理する必要がある。
原料ポリマーの代表特性
| 項目 | 単位 | 代表値・範囲 | 材料状態・条件 | 試験規格 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.86~0.90 | 23℃、未架橋原料 | ASTM D792又は同等 | エチレン含有率と結晶性で変化 | B |
| 比重 | 無次元 | 0.86~0.90 | 23℃、未架橋原料 | 代表値、規格不明 | 密度とほぼ同じ数値 | B |
| エチレン含有率 | 質量% | 45~75 | 製品設計範囲 | 分析法依存 | 個別グレードでは範囲外もある | B |
| 非共役ジエン含有率 | 質量% | 該当なし | EPM | - | ジエンを含むものはEPDMに分類する | A |
| ムーニー粘度 ML(1+4) 100℃ | MU | 15~80 | 未架橋原料 | ASTM D1646又はISO 289 | 低粘度から高粘度までグレード幅がある | A |
| ガラス転移温度 | ℃ | -60~-40 | 未架橋、DSC又はDMA | 測定法依存 | エチレン含有率、配列及び結晶性で変化 | B |
| 融点 | ℃ | 一般化困難 | 未架橋 | DSC | ランダム性が高いEPMは明確な単一融点を示さない場合がある。高エチレン品では結晶融解ピークを示す | B |
| 24時間吸水率 | % | 0.01~0.20 | 23℃水中、代表参考 | 規格不明 | 配合剤を含まない原料の一般的傾向。比較値としてはC評価 | C |
| かさ密度 | g/cm³ | データなし | ベール又はペレット | - | 供給形態で大きく異なる | 0 |
標準的な過酸化物架橋配合の機械的・物理的性質
| 項目 | 単位 | 代表値・範囲 | 材料状態・条件 | 試験規格 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.00~1.35 | 23℃、架橋配合 | ASTM D792又はISO 2781 | 充填材・軟化剤量で変化 | B |
| 比重 | 無次元 | 1.00~1.35 | 23℃、架橋配合 | 代表範囲 | 難燃配合・高充填配合では高くなる | B |
| 硬度 | ショアA | 40~90 | 23℃、架橋配合 | ISO 48-4又はASTM D2240 | シール用途では50~80が多い | B |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 明確な降伏点を示さないため通常は破断強さで評価する | A |
| 引張強さ・破断 | MPa | 7~20 | 23℃、標準状態調節後 | ISO 37又はASTM D412 | 配合、硬さ、試験片形状で変化 | B |
| 引張弾性率 | GPa | 一般化困難 | 23℃ | - | 非線形材料のため小ひずみ、接線又は割線条件を明記する必要がある | A |
| 100%引張応力 | MPa | 1.5~6.0 | 23℃、標準状態調節後 | ISO 37又はASTM D412 | 硬さ及び架橋密度の比較に有効 | B |
| 300%引張応力 | MPa | 3~12 | 23℃、300%到達配合 | ISO 37又はASTM D412 | 高硬度品では300%に達する前に破断する場合がある | B |
| 引張破断伸び | % | 200~700 | 23℃、標準状態調節後 | ISO 37又はASTM D412 | 高充填・高硬度品では低くなる | B |
| 曲げ強さ | MPa | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 一般的な曲げ試験の比較対象ではない | A |
| 曲げ弾性率 | GPa | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 圧縮、引張、DMA又は硬さで評価する | A |
| 圧縮強さ | MPa | 一般化困難 | 圧縮ひずみ指定が必要 | - | ゴムは圧縮応力-ひずみ曲線で評価する | A |
| 圧縮永久ひずみ 100℃×22~24h | % | 8~40 | 25%圧縮、過酸化物架橋 | ISO 815-1又はASTM D395 | 硬さ、試験片、後加硫、測定法で変化 | B |
| 圧縮永久ひずみ 150℃×70h | % | 12~50 | 25%圧縮、高耐熱配合 | ISO 815-1又はASTM D395 | 高温シールでは最重要項目の一つ | B |
| 引裂強さ | kN/m | 15~60 | 23℃、架橋配合 | ISO 34-1又はASTM D624 | 試験片形状で数値差が大きい | B |
| 反発弾性 | % | 30~70 | 23℃ | ISO 4662又はASTM D7121等 | 硬さ、充填材及び温度依存 | C |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 硬質樹脂用指標であり、低温衝撃又は反発弾性を使用する | A |
| シャルピー衝撃強さ | kJ/m² | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 標準比較項目ではない | A |
| 動摩擦係数 | 無次元 | データなし | 相手材・荷重・速度依存 | - | 一般化できない。摺動配合ごとに測定する | 0 |
| 比摩耗量 | mm³/(N・m) | データなし | 相手材・潤滑条件依存 | - | 摩耗用途では実条件で試験する | 0 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.5~4.0 | 架橋成形品 | 金型・加硫条件依存 | 短繊維補強では異方性が生じる | C |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.5~4.5 | 架橋成形品 | 金型・加硫条件依存 | 押出配向及び繊維配向で変化 | C |
| 線膨張係数 | 10-5/K | 12~22 | 23~80℃、架橋配合 | TMA又は代表値 | 充填材で低下する | C |
| ポアソン比 | 無次元 | 0.48~0.50 | 小ひずみ、ほぼ非圧縮性 | 代表値 | 大変形解析では超弾性モデルを用いる | B |
熱的性質・電気的性質・難燃性
| 項目 | 単位 | 代表値・範囲 | 材料状態・条件 | 試験規格 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | -60~-40 | EPM、配合依存 | DSC又はDMA | 低温柔軟性の目安 | B |
| 融点 | ℃ | 一般化困難 | ランダム共重合体 | DSC | 明確な単一融点を持たない場合が多い | B |
| 結晶化温度 | ℃ | 一般化困難 | 高エチレン品のみ顕著 | DSC | 組成・熱履歴依存 | C |
| 熱分解開始温度 | ℃ | 250~350 | 不活性又は空気中 | TGA、条件依存 | 配合剤及び雰囲気で大きく変化 | C |
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 硬質熱可塑性樹脂用指標 | A |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 同上 | A |
| ビカット軟化温度 | ℃ | 該当なし | 架橋エラストマー | - | 再軟化しないため適用しない | A |
| 連続使用温度 | ℃ | 110~150 | 空気中、標準~耐熱配合 | 長期熱老化基準依存 | 圧縮永久ひずみ及び寿命基準で確認 | B |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 140~180 | 数時間以内の目安 | 配合・負荷依存 | 無荷重でも熱酸化と架橋進行に注意 | C |
| 低温使用限界 | ℃ | -60~-35 | 柔軟性基準依存 | TR試験又は脆化試験 | 高エチレン・高充填品では上限側 | B |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.20~0.36 | 23℃、一般配合 | ASTM E1530等 | カーボン・無機充填材で増加 | C |
| 比熱 | J/(g・K) | 1.7~2.3 | 23℃付近 | DSC又は代表値 | 配合剤で変化 | C |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1013~1×1016 | 23℃、絶縁配合 | IEC 60093又はASTM D257 | 導電配合を除く | A |
| 表面抵抗率 | Ω | データなし | 湿度・表面汚染依存 | - | 個別配合で測定する | 0 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20~60 | 試験片厚さ・電極依存 | IEC 60243又はASTM D149 | 三井EPT資料の一般範囲を含む | A |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 2.8~4.0 | 23℃、絶縁配合 | IEC 60250等 | 充填材・湿度で変化 | A |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | データなし | 23℃ | - | 個別グレードで確認 | 0 |
| 誘電正接・1 kHz | 無次元 | 0.001~0.05 | 23℃、絶縁配合 | IEC 60250等 | 配合剤及び周波数依存 | B |
| 誘電正接・1 MHz | 無次元 | データなし | 23℃ | - | 個別グレードで確認 | 0 |
| 耐トラッキング性・CTI | V | グレード依存 | 絶縁配合 | IEC 60112 | 顔料・難燃剤・汚染で変化 | C |
| UL 94燃焼性 | 等級 | グレード依存 | 試験片厚さ・色依存 | UL 94 | 材料群全体の認証ではない。HB~V-0等の認定配合があり得る | A |
| 限界酸素指数・LOI | % | 18~30超 | 無難燃~難燃配合 | ISO 4589 | 一般EPMは自己消火性が高くない | C |
| GWIT・GWFI | ℃ | データなし | 特定電気グレード | IEC 60695 | 認証資料で確認 | 0 |
| RTI Electrical | ℃ | グレード依存 | UL認定配合 | UL 746B | 材料名のみでは断定不可 | A |
改質・補強配合の物性傾向
| 配合区分 | 代表添加量 | 主な改善項目 | 主なトレードオフ | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| カーボンブラック高補強 | 30~100 phr程度 | 引張強さ、耐摩耗性、導電性、耐候性を高めやすい | 伸び、絶縁性、低温性、比重及び発熱が変化 | 黒色シール、ベルト、ロール |
| シリカ補強 | 20~80 phr程度 | 着色性、補強性、電気特性を調整可能 | 分散、シラン反応、水分及び粘度上昇に注意 | 着色製品、電気部品、ホース |
| ATH・MDH高充填 | 80~200 phr程度 | 難燃性、低発煙性、絶縁性を付与 | 密度増加、伸び低下、混練負荷、吸湿に注意 | 難燃ケーブル、絶縁成形品 |
| 短繊維補強 | 5~30質量%程度 | 剛性、耐クリープ、寸法安定性、耐摩耗性を改善 | 異方性、表面粗さ、伸び・疲労低下、シール性低下 | ベルト、ロール、構造ゴム部品 |
| 導電カーボン | 配合設計依存 | 体積抵抗率を静電気拡散域又は導電域へ低下 | 機械特性、加工性、表面汚染、発熱に注意 | 帯電防止シール、導電部品 |
| 発泡配合 | 発泡倍率1.2~10倍程度 | 軽量、断熱、緩衝、低締付力を実現 | セル構造、吸水、圧縮永久ひずみ、寸法収縮に注意 | スポンジシール、ウェザーストリップ |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア(0~5) | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 標準配合で中程度。補強材と架橋系により高められる。 |
| 剛性 | 2 | 軟質エラストマーであり、高剛性用途には適さない。 |
| 衝撃強度 | 4 | 大変形を許容し、低温を除けば衝撃吸収性が高い。 |
| 耐熱性 | 4 | 一般ゴムの中では良好。高温では圧縮永久ひずみと熱酸化を確認する。 |
| 低温特性 | 4 | Tgが低く柔軟性が良いが、高エチレン及び高充填配合では低下する。 |
| 耐薬品性 | 3 | 水系・極性液体には良好だが、油・燃料・炭化水素溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 5 | 飽和主鎖により耐オゾン・耐候性が非常に良い。 |
| 耐加水分解性 | 5 | エステル、アミド等の加水分解性結合を主鎖に持たない。 |
| 寸法安定性 | 2 | 温度膨張、圧縮永久ひずみ及びクリープを考慮する必要がある。 |
| 低吸水性 | 5 | 炭化水素系で吸水が小さい。 |
| 摺動性 | 2 | 無改質では摩擦が高く、摺動専用配合が必要。 |
| 耐摩耗性 | 3 | 補強配合で改善できるが、NRや一部ウレタンほど高くない場合がある。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 高い体積抵抗率と安定した誘電特性を持つ。 |
| 難燃性 | 2 | 無難燃配合では燃焼し得る。難燃剤配合と認証確認が必要。 |
| 透明性 | 1 | 一般配合は不透明であり、透明用途には適しにくい。 |
| 成形加工性 | 4 | ゴム加工設備で混練、押出、圧縮、射出に対応しやすい。 |
| 切削加工性 | 2 | 軟質品は変形しやすく、打抜き・研削が中心となる。 |
| 接着性 | 1 | 低表面エネルギーで未処理接着性が低い。 |
| リサイクル性 | 1 | 架橋後は再溶融できず、マテリアルリサイクルが難しい。 |
| 価格優位性 | 4 | 特殊ゴムより比較的低価格で、低比重のため体積コストも有利になりやすい。 |
耐薬品性
以下は一般的な過酸化物架橋EPM配合を20~25℃、無応力で浸漬又は接触させた場合の概略評価である。実際の耐薬品性は、薬品濃度、温度、接触時間、架橋密度、充填材、軟化剤、残留応力、圧縮状態及び抽出許容基準により変化する。特にシール用途では、体積変化だけでなく硬さ、引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみ及び漏れを確認する。
| 分類・薬品 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水・上水 | 23℃ | 168h浸漬、無応力 | ◎ | 一般に影響が小さい | 長期では添加剤抽出と微生物汚染を確認 |
| 温水 | 80~100℃ | 80~100℃ | 168h~1000h | ○ | 熱老化、架橋進行、圧縮永久ひずみ | 配合と寿命基準で確認 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | 120~150℃ | 間欠又は連続 | ○ | 高温圧縮永久ひずみ、酸化、抽出 | 高圧蒸気は専用配合で確認 |
| 塩水・海水 | 3~5% NaCl又は海水 | 23~60℃ | 168h以上 | ◎ | 一般に影響が小さい | 金属インサートの腐食に注意 |
| 塩酸 | 10~30% | 23℃ | 168h、無応力 | ◎ | 一般に影響が小さい | 高温・濃酸では配合剤や金属を確認 |
| 硫酸 | 10~50% | 23℃ | 168h、無応力 | ○ | 高濃度・高温で酸化、硬化又は物性低下 | 濃硫酸及び高温は個別試験 |
| 硝酸 | 5~20% | 23℃ | 短時間~168h | △ | 酸化、硬化、亀裂、変色 | 濃度・温度上昇で急速に悪化 |
| 酢酸 | 10~50% | 23℃ | 168h | ○ | 配合剤抽出、膨潤 | 氷酢酸・高温は△~×になり得る |
| 水酸化ナトリウム | 10~50% | 23℃ | 168h | ◎ | 一般に影響が小さい | 高温濃アルカリでは充填材・接着界面を確認 |
| 水酸化カリウム | 10~30% | 23℃ | 168h | ◎ | 一般に影響が小さい | 高温では圧縮永久ひずみを確認 |
| アンモニア水 | 10~25% | 23℃ | 168h | ◎ | 一般に影響が小さい | 臭気透過と金属腐食を確認 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 100~1000ppm有効塩素 | 23℃ | 反復接触 | ○ | 酸化、表面白化、硬化 | pH、遊離塩素、温度、紫外線を確認 |
| 過酸化水素 | 3~10% | 23℃ | 短時間~168h | ○ | 酸化、硬化、変色 | 高濃度・高温では△ |
| エタノール | 95%以下 | 23℃ | 168h | ◎ | 一般に膨潤が小さい | 変性アルコール中の共溶剤に注意 |
| IPA | 99%以下 | 23℃ | 168h | ◎ | 一般に膨潤が小さい | 応力下、加熱及び混合溶剤は確認 |
| メタノール | 99%以下 | 23℃ | 168h | ◎ | 一般に膨潤が小さい | 透過性と抽出を確認 |
| グリセリン | 85~100% | 23~80℃ | 168h | ◎ | 一般に影響が小さい | 高温・水混合比で確認 |
| エチレングリコール | 50~100% | 23~120℃ | 168h以上 | ◎ | 一般に影響が小さい | 冷却液添加剤と高温酸化物を確認 |
| プロピレングリコール | 50~100% | 23~100℃ | 168h以上 | ◎ | 一般に影響が小さい | 食品・医療では抽出物を確認 |
| MMB(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール) | 原液 | 23℃ | 168h | △ | 膨潤又は軟化の可能性 | 公開データが限定的。実液試験を推奨 |
| アセトン | 原液 | 23℃ | 168h | ○ | 軽度膨潤又は添加剤抽出の可能性 | 三井EPT資料では良好例があるが、配合差を確認 |
| MEK | 原液 | 23℃ | 168h | ○ | 軽度膨潤・抽出の可能性 | 高温、応力、長期では△になり得る |
| MIBK | 原液 | 23℃ | 168h | △ | 膨潤・軟化の可能性 | 分子サイズと配合油の抽出に注意 |
| 酢酸エチル | 原液 | 23℃ | 168h | △ | 膨潤、軟化、抽出 | 短時間接触でも実測確認 |
| 酢酸ブチル | 原液 | 23℃ | 168h | △ | 膨潤、軟化、抽出 | 塗料溶剤混合物では悪化し得る |
| ジエチルエーテル | 原液 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤又は可塑化の可能性 | 引火性も高く使用回避 |
| トルエン | 原液 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤、軟化、強度低下 | 芳香族炭化水素は不適 |
| キシレン | 原液 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤、軟化、強度低下 | 混合キシレンも同様に不適 |
| ヘキサン | 原液 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤、抽出 | 非極性脂肪族溶剤は不適 |
| ヘプタン | 原液 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤、抽出 | 燃料模擬液にも使用されるため注意 |
| シクロヘキサン | 原液 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤、軟化 | SP値が近く相互作用が強い |
| ジクロロメタン | 原液 | 23℃ | 短時間 | × | 膨潤、軟化、抽出 | 塩素系溶剤は原則不適 |
| トリクロロエチレン | 原液 | 23℃ | 短時間 | × | 著しい膨潤、劣化 | 洗浄用途では別材料を検討 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃ | 短時間~168h | × | 著しい膨潤、軟化、抽出 | 燃料系シールにはNBR、FKM等を検討 |
| 軽油 | 市販燃料 | 23~80℃ | 168h | × | 膨潤、軟化、機械強度低下 | 温度上昇で悪化 |
| 鉱油・エンジン油 | 市販油 | 23~150℃ | 168h以上 | × | 膨潤、抽出、強度低下 | 油接触用途には原則不適 |
| シリコーンオイル | 代表粘度 | 23~150℃ | 168h以上 | ◎ | 一般に膨潤が小さい | 低分子シロキサンや添加剤を確認 |
| リン酸エステル系作動油 | 市販品 | 23~100℃ | 168h以上 | ○ | 配合により軽度膨潤又は抽出 | 難燃作動油の添加剤を実液確認 |
| グリコール系ブレーキ液 | DOT 3/4等 | 23~120℃ | 168h以上 | ◎ | 一般に良好 | 実液添加剤と高温圧縮を確認 |
| 植物油・食品油 | 菜種油等 | 23~100℃ | 168h以上 | △ | 油種により膨潤、軟化、酸化物の影響 | 長期高温では専用配合試験 |
| 中性洗剤・界面活性剤 | 使用濃度 | 23~80℃ | 反復接触 | ◎ | 一般に影響が小さい | 香料、溶剤、酸化剤及び高pH添加物を確認 |
| 強アルカリ洗浄剤 | pH 12~14 | 23~80℃ | 反復接触 | ○ | 添加剤抽出、表面変化、接着界面劣化 | 高温・長時間は実液試験 |
評価基準:◎は一般的な条件で影響が小さい、○は概ね使用可能であるが条件確認が必要、△は膨潤、軟化、強度低下、変色又は抽出に注意、×は著しい膨潤、溶解的挙動、強度低下又は機能喪失の可能性が高いことを示す。
環境応力及びシール状態での注意
EPMは硬質非晶性樹脂のような典型的な環境応力割れよりも、薬液膨潤、圧縮永久ひずみ、界面剥離、添加剤抽出及び機械的拘束による亀裂が問題になりやすい。引張状態、鋭いノッチ、過大圧縮、金属インサート端部、繰返し変形及び高温薬液が重なると、無応力浸漬で良好な薬品でも寿命が低下する。
SP値(溶解度パラメータ)
EPMの代表的なHildebrand溶解度パラメータは、約16.0~16.5 MPa1/2である。比較計算では16.5 MPa1/2を代表値として扱えるが、エチレン含有率、結晶性、架橋、充填材及び軟化剤により見かけの相互作用は変化する。
SP値が近い薬品はポリマーへ浸透し、膨潤又は軟化しやすい傾向がある。ただし、架橋ゴムは熱力学的に完全溶解せず、平衡膨潤として現れることが多い。また、水素結合、極性、分子体積、結晶性、拡散速度、化学反応、酸化、温度及び応力の影響を受けるため、SP値だけで耐薬品性を決定してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 |δsolvent-δEPM| | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤・液体 | SP値 MPa1/2 | EPMとの差 | SP値による評価 | 実務上の解釈 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 31.4 | ◎ | SP差は大きい。実用耐水性も一般に良好。 |
| メタノール | 29.7 | 13.2 | ◎ | SP差が大きく、一般に膨潤は小さい。 |
| エタノール | 26.0 | 9.5 | ◎ | 一般に良好。変性剤を確認する。 |
| IPA | 23.5 | 7.0 | ○ | SP差上は比較的安定。実用評価は◎となる場合が多い。 |
| グリセリン | 36.2 | 19.7 | ◎ | SP差が大きく、一般に良好。 |
| アセトン | 20.0 | 3.5 | △ | SP差だけでは膨潤注意だが、実配合では比較的良好な例がある。 |
| MEK | 19.0 | 2.5 | △ | 境界域。架橋密度と抽出に注意。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 2.1 | △ | 膨潤注意。 |
| THF | 18.5 | 2.0 | × | 強い相互作用域。 |
| トルエン | 18.2 | 1.7 | × | 著しい膨潤が想定される。 |
| キシレン | 18.0 | 1.5 | × | 著しい膨潤が想定される。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 0.3 | × | EPMと非常に近く、強い膨潤域。 |
| ヘプタン | 15.3 | 1.2 | × | 非極性でEPMに近く、膨潤しやすい。 |
| ヘキサン | 14.9 | 1.6 | × | 非極性で著しい膨潤が想定される。 |
| 鉱油 | 15~17 | 0~1.5 | × | 組成範囲がEPMに近く、耐油性が低い。 |
| ガソリン | 約14~16 | 0.5~2.5 | × | 混合物であり、芳香族分を含むと膨潤が大きい。 |
SP値差の評価は、非反応性の単一溶剤に対する一次スクリーニングである。混合溶剤、水溶液、界面活性剤、燃料、潤滑油及び市販洗浄剤では、成分ごとの拡散、添加剤抽出、酸化及び温度依存性があるため、実液試験を優先する。
製法
EPMは、精製したエチレン及びプロピレンを、遷移金属系触媒又はメタロセン系触媒等の配位触媒を用いて共重合して製造する。代表的には溶液法又はスラリー法が用いられ、重合後に触媒を失活し、未反応モノマー及び溶媒を回収した後、脱揮、乾燥、ペレット化又はベール化する。
基本反応は、エチレン及びプロピレンの配位共重合である。化学量論的な単一繰返し単位を持つホモポリマーではないため、反応式は代表的な統計共重合体として示している。実際には触媒、反応器構成、溶媒、モノマー分圧、水素濃度及び滞留時間によって、組成分布、分子量、分子量分布、長鎖分岐及び結晶性を制御する。
| 工程 | 主な内容 | 管理上の要点 |
|---|---|---|
| 原料 | 高純度エチレン、プロピレン、溶媒、水素、触媒成分 | 水分、酸素、硫黄化合物等の触媒毒を低減する。 |
| 重合 | 溶液法又はスラリー法による配位共重合 | E/P比、温度、圧力、水素及び触媒で組成と分子量を調整する。 |
| 失活・分離 | 触媒失活、未反応モノマー回収、溶媒回収 | 残留触媒、灰分、揮発分及び臭気を管理する。 |
| 仕上げ | 脱揮、洗浄、乾燥、ペレット化又はベール化 | 原料ポリマーのムーニー粘度、組成、揮発分及び外観を検査する。 |
| コンパウンド | カーボンブラック、シリカ、クレー、ATH、MDH、軟化剤、老化防止剤、加工助剤を混練 | 電気絶縁用途ではイオン性不純物と導電性汚染を抑える。 |
| 架橋系添加 | 有機過酸化物、共架橋剤、必要に応じてスコーチ防止剤 | 最終混練温度を低くし、均一分散と保管安定性を確保する。 |
| 成形・架橋 | 圧縮、トランスファー、射出、押出連続加硫等 | 温度、時間、圧力及び酸素接触を管理する。 |
| 後処理 | 後加硫、洗浄、トリミング、表面処理 | 抽出物、臭気、圧縮永久ひずみ及び接着性を調整する。 |
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 採用理由 | 選定上の注意 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 冷却水ホース、ヒーターホース、ウェザーストリップ、ブーツ、グロメット、電装シール | 耐候性、耐熱水性、低温性及び電気絶縁性 | 燃料、エンジン油、ATF及び鉱油が直接接触する部位には原則不適。自動車用EPMはEPDMより採用例が限定される。 |
| 電線・ケーブル | 絶縁層、シース、コネクタシール、高電圧絶縁部品 | 高い体積抵抗率、耐熱性、耐オゾン性、過酸化物架橋適性 | 難燃性、イオン性不純物、架橋残渣、抽出、電気トリー及びUL・IEC認証を確認する。 |
| 機械部品 | ガスケット、Oリング、ダイヤフラム、ロール、ブーツ、カップリング | 水、蒸気、希酸、希アルカリ及び屋外環境への適性 | 油潤滑部、燃料部及び芳香族溶剤接触部では材料変更を検討する。 |
| 建築・設備 | 目地材、屋外シール、防水部材、配管シール、空調設備部品 | 耐候性、耐オゾン性、耐水性、広い温度範囲 | 接着面の前処理、難燃性、圧縮永久ひずみ及び可塑剤移行を確認する。 |
| 食品機械 | 温水・洗剤用ガスケット、バルブシート、ポンプシール | 耐水・耐アルカリ・耐グリコール性、低吸水性 | 食品接触適合は特定配合のみ。油脂、高温蒸気、次亜塩素酸及び抽出物を実液確認する。 |
| 医療・分析 | チューブ、シール、ストッパー、電気絶縁部品 | 低抽出配合、耐水性、過酸化物架橋による清浄化設計が可能 | USP Class VI、ISO 10993、滅菌耐久性、粒子、溶出及びバイオバーデンは個別グレードで確認する。 |
| 家電・電気電子 | 防水シール、絶縁キャップ、電源部品、耐熱パッキン | 電気絶縁性、耐熱性、耐候性 | 難燃グレード、CTI、RTI、ハロゲンフリー要件、接着及びアウトガスを確認する。 |
| 化学設備 | 水系薬液用シール、ダイヤフラム、ライニング補助材 | 希酸、希アルカリ、アルコール及び一部極性溶剤に良好 | 濃酸、酸化剤、ハロゲン化溶剤、炭化水素及び温度上昇時は浸漬試験を行う。 |
| 樹脂改質 | ポリオレフィン系樹脂の耐衝撃改質、相容化ブレンド、TPO原料 | 低温衝撃性、柔軟性、耐候性を付与 | 相容性、分散径、架橋の有無、流動性及びリサイクル性を確認する。 |
| 発泡・緩衝 | スポンジシール、断熱材、緩衝材、ウェザーストリップ | 軽量、耐候性、柔軟性、セル構造設計 | 吸水、セル破壊、収縮、臭気、圧縮永久ひずみ及び難燃性を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| ギア | × | 軟質で歯面剛性が不足する。弾性カップリング又は緩衝部には使用可能。 |
| 軸受・ブッシュ | △ | 無改質では摩擦・摩耗が大きい。低摩擦配合と実機摩耗試験が必要。 |
| ローラー | ○ | 耐候・耐水ロールに適する。油、溶剤及び発熱条件を確認する。 |
| 摺動板 | △ | 低摩擦添加剤又は複合化が必要。 |
| ねじ・ボルト・ナット | × | 構造締結材としての剛性が不足する。シール座金用途は可能。 |
| ポンプ・バルブ部品 | ○ | 水系、グリコール系、希酸・希アルカリに適する。油・燃料は不可。 |
| シール・ガスケット・Oリング | ◎ | 主要用途。圧縮永久ひずみと接触液を確認する。 |
| チューブ・ホース | ◎ | 水、蒸気、冷却液、空気及び屋外用途に適する。炭化水素油は不可。 |
| 配管・タンク | △ | 単独構造材ではなくライニング、ホース又はシール用途。 |
| フィルム・シート | ○ | 未架橋シート、カレンダーシート、ライニング材として使用可能。 |
| ボトル・容器 | × | 一般的な中空容器の主構造材には不適。 |
| 電気コネクタ・ソケット | ○ | 防水シール及び絶縁部に適する。寸法精度と難燃認証を確認する。 |
| 絶縁部品 | ◎ | 高い電気絶縁性と耐熱・耐候性を活用できる。 |
| 電子部品筐体・一般筐体 | △ | 軟質カバーには適するが、剛性筐体には不適。 |
| 透明カバー・レンズ | × | 一般配合は不透明で、光学用途に適さない。 |
| 自動車内装 | ○ | シール、マット、グロメットに適する。VOC、臭気、難燃性を確認する。 |
| 自動車外装 | ◎ | 耐候シール、ウェザーストリップに適する。 |
| エンジンルーム部品 | ○ | 熱水・空気系に適する。油・燃料の飛沫又は浸漬条件は材料変更を検討する。 |
| 燃料系部品 | × | 燃料で膨潤するため原則不適。 |
| 食品機械部品 | ○ | 適合配合を選択し、油脂、洗浄剤及び溶出を確認する。 |
| 医療機器部品 | ○ | 医療適合グレードに限定。滅菌、溶出、粒子を確認する。 |
| 滅菌部品 | △ | 蒸気、EtO、電子線等で挙動が異なる。繰返し耐久試験が必要。 |
| 半導体製造装置部品 | △ | 水系・電気用途では可能。アウトガス、金属イオン及び薬液純度を確認する。 |
| 真空装置部品 | △ | 低アウトガス専用配合に限定。一般配合は軟化剤及び架橋残渣に注意。 |
| 建築部材・屋外部品 | ◎ | 耐候性と耐オゾン性を活用できる。難燃、接着及び圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 接着剤・塗料・コーティング | △ | EPM自体は低極性で、溶解・分散と密着が難しい。変性EPM又はプライマー用途に限定。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 短繊維補強ゴム又はTPOブレンドに利用できるが、高剛性FRPマトリックスではない。 |
用途別評価はEPM材料群の一般的傾向である。実使用ではグレード、架橋方式、温度、薬品、湿度、荷重、応力、変形量、寿命、製品形状、成形条件及び法規制を確認する。
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 一般的な挙動 | 設計・評価上の注意 |
|---|---|---|
| 成形収縮 | 架橋反応、熱収縮、充填材及び離型後収縮により約1.5~4.5%の範囲となる場合がある。 | 金型補正は試作配合と実成形で決定する。 |
| 異方性・反り | 押出配向、短繊維、カレンダー方向、インサート拘束で異方性が生じる。 | MD・TD方向の収縮と物性を分けて測定する。 |
| 肉厚依存性 | 厚肉では中心部の加硫不足、温度勾配、ボイド及び後収縮が生じやすい。 | 熱伝導解析、段階加硫、後加硫及び断面物性を確認する。 |
| 吸湿寸法変化 | EPM自体の吸水は小さいが、親水性充填材及び界面で変化する。 | 吸水後の質量、寸法、電気特性及び接着を測定する。 |
| 熱膨張 | 金属・硬質樹脂より線膨張係数が大きい。 | 温度範囲、拘束、溝設計及び熱サイクルを考慮する。 |
| クリープ・応力緩和 | 一定圧縮又は引張で応力が低下する。温度上昇で加速する。 | 短時間引張強さを設計許容応力に使わず、長期圧縮・クリープ試験を行う。 |
| ウェルド・接合界面 | ゴム射出の合流部、インサート界面及び共加硫界面が弱点となる。 | 流動解析、ベント、表面処理及び剥離試験を実施する。 |
| ノッチ・応力集中 | 切欠き、バリ根元、鋭角、金属端部から疲労亀裂が進展し得る。 | 十分なR、面取り、均一圧縮及び引裂試験を採用する。 |
| ねじ締結・圧入 | 局部圧縮、緩み、切込み及びコールドフローに注意する。 | カラー、座金、圧縮ストッパー及びトルク管理を用いる。 |
| 安全率 | 温度、時間、薬液、繰返し、製造ばらつきを含める必要がある。 | 実部品試験と寿命モデルに基づき設定する。 |
品質・成形不良
| 不良 | 主な原因 | 外観・性能への影響 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| スコーチ・早期架橋 | 混練温度過高、長時間滞留、過酸化物選定不適 | 粘度上昇、流動不足、表面荒れ、廃棄増加 | 最終混練温度低下、冷却、滞留短縮、半減期適合の過酸化物選定 |
| 加硫不足 | 金型温度不足、時間不足、架橋剤不足、酸素阻害 | 低硬度、粘着、圧縮永久ひずみ悪化、強度不足 | レオメータ管理、温度校正、肉厚補正、後加硫 |
| 過加硫・熱劣化 | 高温長時間、過酸化物過多、過度な後加硫 | 硬化、脆化、伸び低下、変色、臭気 | 加硫条件最適化、抗酸化剤、酸素曝露低減 |
| ガス焼け・ボイド | 揮発分、水分、空気巻込み、ベント不足 | 気泡、膨れ、焦げ、内部空洞 | 材料乾燥、真空混練、ベント改善、段階加圧 |
| 黒点・異物 | 設備残渣、焦げ、異種ゴム、充填材凝集 | 外観不良、電気特性低下、亀裂起点 | 設備清掃、専用ライン、フィルター、原料管理 |
| フローマーク・ジェッティング | 高粘度、金型温度不足、ゲート不適 | 表面模様、局部配向、ウェルド不良 | 温度・速度・ゲート形状の調整、真空引き |
| ウェルドライン | 多点ゲート、流動先端冷却、空気残留 | 強度低下、漏れ経路、外観不良 | ゲート統合、ベント、流動温度最適化、試験位置管理 |
| ヒケ・後収縮 | 保圧不足、厚肉、加硫収縮、離型時高温 | 寸法不足、面凹み、シール圧低下 | 保圧、金型補正、冷却、後加硫条件の固定 |
| 反り | 不均一収縮、繊維配向、インサート拘束 | 寸法不良、組付け不良、シール面浮き | 肉厚均一化、ゲート最適化、MD/TD収縮測定 |
| 離型不良 | 金型粗さ、離型剤不足、アンダーカット、加硫不足 | 変形、裂け、表面欠陥 | 抜き勾配、表面処理、離型剤、加硫度最適化 |
| バリ | 型締不足、低粘度、型摩耗、過大圧力 | 後処理増加、シール面不良 | 型締、流動性、金型クリアランス及び射出条件管理 |
| プレートアウト・ブルーム | 過剰なワックス、架橋助剤、軟化剤、低相溶添加剤 | 表面白化、接着・印刷不良、汚染 | 添加量適正化、相溶性改善、後加硫、洗浄 |
| ダイスウェル・メルトフラクチャー | 高弾性、高せん断、高ムーニー、ダイ設計不適 | 寸法過大、表面荒れ、押出不安定 | 温度、速度、ダイランド、加工助剤及び粘度グレードを調整 |
| 金型腐食 | 酸性残渣、難燃剤、洗浄不足、水分 | 金型錆、転写欠陥、金属汚染 | 耐食材、表面処理、清掃、防錆及び配合見直し |
注意点・劣化及び故障モード
| 劣化現象 | 主な原因・発生条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 酸素、高温、金属触媒、長時間 | 硬化、伸び低下、亀裂、圧縮永久ひずみ増加 | 耐熱配合、酸化防止剤、温度低減、金属接触管理 | 熱老化後の引張・伸び・硬度・圧縮永久ひずみ |
| 紫外線・耐候劣化 | 紫外線、熱、酸素、顔料不足 | 表面白化、色差、微細亀裂、強度低下 | カーボンブラック、UV安定剤、耐候顔料 | キセノンアーク又はサンシャインウェザーメーター |
| 膨潤・軟化 | 油、燃料、芳香族・脂肪族溶剤 | 体積増加、硬度低下、強度低下、シールはみ出し | 接触液に適した材料へ変更、架橋密度最適化 | 実液浸漬、体積・質量・硬度・引張保持率 |
| 添加剤抽出 | アルコール、ケトン、洗浄剤、温水 | 質量減少、硬化、表面変化、汚染 | 低抽出配合、適合添加剤、後加硫・洗浄 | 抽出物、GC-MS、TOC、質量変化 |
| 圧縮永久ひずみ | 高温、長時間圧縮、架橋不足、油膨潤 | シール荷重低下、漏れ、復元不良 | 過酸化物架橋、後加硫、圧縮率適正化 | ISO 815-1又はASTM D395、実溝試験 |
| 疲労亀裂 | 繰返し変形、ノッチ、オゾン、熱 | 表面亀裂、破断、漏れ | R付与、低ひずみ設計、耐疲労配合 | デマチャ屈曲、実部品繰返し試験 |
| 接着界面剥離 | 表面汚染、低表面エネルギー、熱膨張差 | インサート剥離、漏れ、浮き | プラズマ・プライマー、共加硫接着、界面設計 | 剥離・引張接着、熱水・熱サイクル後接着 |
| ブルーム・ブリード | 添加剤過剰、相溶性不足、温度変化 | 白化、べたつき、接着不良、周辺汚染 | 添加量・分子量・相溶性見直し | 高温保管、低温保管、表面分析 |
| アウトガス | 軟化剤、未反応架橋剤、低分子量成分 | 真空汚染、光学曇り、臭気、電気接点障害 | 低揮発配合、後加硫、真空ベーク | TML/CVCM、GC-MS、フォギング試験 |
| 金属腐食・電食 | イオン性残渣、酸性成分、水分、異種金属 | 錆、接触抵抗上昇、剥離 | 低イオン配合、防錆、絶縁設計 | 抽出液イオン分析、湿熱通電試験 |
| 滅菌劣化 | 蒸気、電子線、γ線、EtO、薬液 | 硬化、変色、伸び低下、抽出物増加 | 滅菌法別の専用配合、線量・回数管理 | 繰返し滅菌後の物性・溶出・外観 |
| 食品・薬液への溶出 | 配合剤、架橋残渣、顔料、洗浄不足 | 臭味、汚染、規制不適合 | 食品・医療適合配合、後加硫・洗浄 | 総溶出、個別移行、抽出物・浸出物試験 |
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実液、実濃度、使用温度で24時間、168時間、500時間又は想定寿命に応じて実施し、質量、体積、硬度、引張強さ、伸び及び外観を測定する。
- 圧縮状態薬液試験:実際の溝、圧縮率及び締結条件で薬液に曝露し、シール荷重、漏れ、永久ひずみ及び亀裂を確認する。
- 熱老化・熱水・蒸気試験:連続使用温度及び上限温度で、空気、温水又は蒸気条件を分けて評価する。
- 紫外線促進耐候試験:屋外品ではキセノンアーク又はサンシャインウェザーメーターを用い、色差、亀裂、硬度及び物性保持率を確認する。
- クリープ・応力緩和試験:実圧縮率、温度及び時間でシール荷重保持率を測定する。
- 疲労試験:実ひずみ、周波数、温度及び薬液雰囲気で繰返し回数を設定する。
- 接着性試験:未処理、表面処理、プライマー及び接着剤条件を比較し、熱水・熱サイクル後の剥離強度を測定する。
- 電気絶縁試験:体積抵抗率、絶縁破壊強さ、誘電率、誘電正接及び耐トラッキング性を、乾燥・吸湿・熱老化後で比較する。
- 難燃性試験:要求規格、試験片厚さ、色及び配合に合わせてUL 94、LOI、グローワイヤ等を実施する。
- アウトガス・溶出試験:真空、光学、食品又は医療用途ではTML/CVCM、GC-MS、TOC、イオン、フォギング及び個別移行を確認する。
- 実成形試験及び実部品耐久試験:量産設備、実金型、実公差及び組付け条件で、成形収縮、後収縮、バリ、ウェルド、寸法及び寿命を確認する。
法規制・認証
| 法規制・認証 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | 一般に対応可能 | EPM自体よりも顔料、難燃剤、加硫助剤、金属不純物が適合性を左右する。個別グレードの証明書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 一般に対応可能 | 登録、制限物質及びSVHC含有は製品・添加剤・製造拠点ごとに確認する。 |
| ELV | 適合グレードが存在 | 自動車用途では重金属、難燃剤、着色剤及び再生材を含めて確認する。 |
| PFAS関連規制 | EPM骨格は通常PFASではない | フッ素系加工助剤、離型剤、コーティング又は接着剤を使用する場合はサプライチェーン確認が必要である。 |
| TSCA | 米国向けは個別確認 | ポリマー免除、インベントリ収載及び添加剤規制をメーカー資料で確認する。 |
| California Proposition 65 | 個別配合で確認 | カーボンブラック、架橋副生成物、顔料、可塑剤等の該当性を評価する。 |
| EU食品接触規則 | 適合グレードが存在し得る | ゴム製品は用途、抽出条件及び各国規則も関係する。配合証明と移行試験が必要である。 |
| FDA食品接触 | 適合配合が存在し得る | 21 CFRの該当条項、使用温度、食品種及び抽出限度を個別確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 個別配合で確認 | 器具・容器包装の材質区分、添加剤、使用温度及び溶出試験を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療用特定グレードのみ | 材料名だけで生体適合性を断定できない。最終製品、滅菌後及び接触期間で評価する。 |
| UL認証 | 認定配合・厚さ・色に限定 | UL 94、RTI、電気特性及びファイル番号を個別に確認する。 |
| IEC関連規格 | 用途別に適合確認 | 電線、絶縁、グローワイヤ、CTI等は完成品規格と材料試験を組み合わせる。 |
| 自動車材料規格 | メーカー・OEM規格に適合する配合が存在 | 耐熱、耐候、臭気、フォギング、燃焼、薬液及び圧縮永久ひずみを確認する。 |
| 鉄道・建築燃焼規格 | 難燃配合で個別対応 | 発煙、毒性、炎伝播及び完成品構成を含めて評価する。 |
| ハロゲンフリー | 設計可能 | EPM骨格はハロゲンを含まないが、難燃剤、顔料及び加工助剤を確認する。 |
| ISCC PLUS等 | マスバランス品が存在する可能性 | 認証はメーカー、製造拠点、製品及び供給時期に限定される。証明書とチェーン・オブ・カストディを確認する。 |
規制適合は、メーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、接触条件、使用温度及び最終製品構成によって異なる。「材料群として一般に対応可能」「適合グレードが存在する」「個別グレードの証明書確認が必要」を区別し、最新の適合証明書、SDS、食品接触宣言、ULファイル及び医療評価資料を確認する。
環境・リサイクル性
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 熱可塑性/熱硬化性 | 架橋前は可塑性を持つが、通常は架橋して熱硬化性エラストマーとして使用する。 |
| マテリアルリサイクル | 架橋後は再溶融できない。粉砕ゴム、再生ゴム又は微粉末として限定的に再利用できる。 |
| ケミカルリサイクル | 熱分解油化、脱架橋等の研究・実用例があるが、品質、エネルギー及び経済性の制約がある。 |
| サーマルリサイクル | 炭化水素系で発熱量を有する。燃焼設備、難燃剤、充填材及び排ガス管理を確認する。 |
| 再生材利用 | 粉砕材又は再生ゴムを配合できるが、引張、伸び、圧縮永久ひずみ、表面性及び臭気が低下し得る。 |
| 識別表示 | 架橋ゴムは熱可塑性樹脂の樹脂識別コードの対象外となる場合が多い。材質表示としてEPMを明記する。 |
| バイオベース材 | バイオ由来エチレン等を利用したマスバランス又はバイオ属性製品が供給される可能性がある。個別認証を確認する。 |
| 生分解性・コンポスト適合 | 一般的なEPMは生分解性又はコンポスト適合材料ではない。 |
| 焼却時の注意 | EPM骨格は主に炭素と水素であるが、実配合には硫黄、窒素、リン、ハロゲン、金属及び無機充填材が含まれ得る。 |
| LCA上の特徴 | 低密度、長寿命及び耐候性は使用段階の交換頻度低減に寄与し得る。一方、架橋品の循環利用は難しい。 |
価格・供給性
| 項目 | 評価・供給形態 | 内容 |
|---|---|---|
| 相対価格 | 比較的低価格~中価格 | EPDMと同程度又はグレードにより差がある。特殊医療、難燃、低アウトガス配合は高くなる。 |
| 汎用的な流通性 | ○ | EPDMよりEPM単独銘柄の選択肢は少ないが、主要メーカーから供給されている。 |
| 国内入手性 | ○ | 国内メーカー又は輸入商社経由で入手可能。少量在庫は銘柄により限定される。 |
| 少量購入 | △ | 原料ポリマーはベール又は業務用ロットが中心。試作用はコンパウンダー、商社又は販売代理店へ相談する。 |
| 供給形態 | ベール、ペレット、クラム、油展品、配合済みコンパウンド | メーカー及びグレードで異なる。 |
| 加工素材形状 | シート、丸紐、押出形材、ホース、チューブ、スポンジ、成形品 | EPM単独表示よりEPゴム又はEPDMとの一括表記が多いため材質証明を確認する。 |
| 特注色・特注配合 | 対応可能 | 色、硬度、難燃、導電、食品、医療、低アウトガス等は最小ロットと納期を確認する。 |
| 価格変動要因 | 原料モノマー、エネルギー、カーボンブラック、過酸化物、物流、購入量 | 実価格は市況、地域、契約、色及び品質保証で変動する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | EPMとの違い |
|---|---|---|
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | EPMに非共役ジエンを導入したゴム | 硫黄加硫が可能で、グレードと用途が広い。EPMは過酸化物架橋を主体とし、電気特性、耐熱性及び低抽出性を重視する用途で選ばれる。 |
| ニトリルゴム(NBR) | 耐油性に優れる極性ゴム | NBRは鉱油・燃料に強いが、耐候・耐オゾン性はEPMより低い。 |
| クロロプレンゴム(CR) | 耐候性、難燃性、接着性のバランスが良い | CRは耐油性と接着性がEPMより良い場合があるが、低温性、電気絶縁性及び比重ではEPMが有利になりやすい。 |
| シリコーンゴム(VMQ) | 広い温度範囲と低温柔軟性 | VMQは高温・低温範囲がさらに広いが、引裂・摩耗・ガス透過及び価格でEPMが有利な場合がある。 |
| フッ素ゴム(FKM) | 高温、油、燃料、薬品に優れる | FKMは油・燃料耐性が大幅に高いが、低温性、蒸気耐性、価格及び電気用途ではEPMが有利な場合がある。 |
| 天然ゴム(NR) | 高強度、高反発、耐疲労性 | NRは動的特性と耐摩耗性に優れるが、耐候・耐オゾン・耐熱性はEPMより劣る。 |
| スチレンブタジエンゴム(SBR) | 汎用性と耐摩耗性、価格優位性 | SBRはタイヤ等に広く使用されるが、耐候・耐オゾン・耐熱水性ではEPMが優れる。 |
| 熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO) | 再溶融成形可能なオレフィン系柔軟材料 | TPOは射出成形とリサイクル性に優れる。架橋EPMは耐熱圧縮永久ひずみ及びゴム弾性に優れる場合がある。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三井化学株式会社 | 三井EPT(EPM/EPDM)、EPM代表例:EPT 0045 | 日本の主要EPゴムメーカー。EPT 0045はジエンを含まない低ムーニーEPMの代表例で、電線、耐熱ベルト、樹脂改質等に用いられる。現行供給及び仕様は最新資料で確認する。 |
| ENEOSマテリアル株式会社 | EPTシリーズ(EPM/EPDM) | EPゴム製品群を展開する国内メーカー。公開グレード構成は更新されるため、EPM銘柄、用途、製造拠点及び供給可否をメーカーへ確認する。 |
| ExxonMobil Product Solutions | Vistalon EPM/EPDM、EPM例:Vistalon 703、706、722、785 | EPM及びEPDMを含むVistalon製品群を展開する。分子量、エチレン含有率及び供給地域はグレードごとに異なる。 |
| Versalis S.p.A. | Dutral COシリーズ、代表例:Dutral CO 054 | EPM/EPR共重合体を含むDutral製品群を展開する。現行グレード、規制適合及び日本国内での入手性は販売窓口へ確認する。 |
メーカー名及びブランドは実在する代表例であるが、事業移管、製造拠点、地域別販売、銘柄統廃合及び供給条件は変更される場合がある。採用時には最新の製品データシート、SDS、規制適合証明書及び供給可否を確認する。
関連キーワード
EPM | EPR | EPDM | 合成ゴム | 非ジエン系ゴム | TPO | 熱可塑性エラストマー | NBR | CR | シリコーンゴム | フッ素ゴム | エラストマーの耐薬品性 | 溶解度パラメータ(SP値) | 過酸化物架橋 | 配位重合 | 圧縮永久ひずみ | 耐オゾン性 | 電線・ケーブル | シール・ガスケット
材料選定時の最終確認
EPMは、耐候性、耐オゾン性、電気絶縁性、耐水性及び耐熱性を重視し、鉱油、燃料又は炭化水素溶剤へ接触しない用途に適する。一方、材料名だけでは最終性能を決定できず、エチレン含有率、分子量、架橋方式、架橋密度、充填材、軟化剤、難燃剤、硬度、後加硫及び成形履歴により物性が大きく変化する。
採用前には、グレード、薬品濃度、温度、接触時間、荷重、応力、圧縮率、湿度、試験片形状、成形条件及び要求寿命を明確にし、実液浸漬、圧縮永久ひずみ、熱老化、耐候、電気、難燃、接着、溶出、アウトガス及び実部品耐久試験を必要に応じて実施する。短時間の引張強さや無応力浸漬結果を、そのまま長期設計許容値として使用してはならない。