| 材料名 | ポリアミドイミド |
|---|---|
| 略記号 | PAI |
| 英語名 | Polyamide-imide |
| 分類 | スーパーエンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、イミド系樹脂 |
| 基本構造 | アミド結合とイミド結合を持つ芳香族高分子 |
| 主な種類 | 射出成形PAI、圧縮成形PAI、摺動PAI、GF/CF強化PAI、ワニス用PAI |
| 主な用途 | 高温軸受、シールリング、半導体治具、航空宇宙部品、コンプレッサー部品、電気絶縁部品 |
ポリアミドイミド(PAI)は、スーパーエンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、イミド系樹脂に分類される材料である。 アミド結合とイミド結合を持つ芳香族高分子を基本構造または代表構造とし、高温軸受、シールリング、半導体治具、航空宇宙部品、コンプレッサー部品、電気絶縁部品などに使用される。
SP値は比較的高く、極性溶媒との相互作用を受けやすい一方、結晶性が低く剛直な分子構造のため実用上は高い耐溶剤性を示す。
特徴
- アミド結合とイミド結合を併せ持つ高耐熱性樹脂である
- 高温下での機械強度、耐摩耗性、寸法安定性に優れる
- 超低温から 260℃ まで使用可能
- 優れた機械強度
- 加工が容易
- 難燃性、低発煙性
- 高い疲労強度
- 高い衝撃強度
- 耐クリープ性が良い
- 高い耐摩耗性
- 常温下では脂肪族・芳香族炭化水素、塩素化・フッ化炭化水素、およびほとんどの酸のいずれからも侵されない。
- 飽和水蒸気や強塩基、および高温条件の酸類から悪影響を受ける。
- 低膨張率
- 優れた熱安定性
- 航空機・自動車オイル等への耐性が良い。
- 高価な材料である
- 脆弱性をなくし、強度を高めるため、結晶化に時間がかかる。
- 航空宇宙、半導体、機械部品、摺動部品に使用される
- 吸水や成形後硬化条件に注意が必要である
- Solvay社「 トーロン」の名前で普及しており、各種グレードが有り。
- 高い衝撃強さと優れた機械的強度、さらに高温環境下でもこれらの特性を劣化することなく保持する特性を持つ。
- 室温におけるトーロン 4203L の引張強さと曲げ強さは、ポリカーボネートとナイロンの約 2 倍に達する。
- 260℃の高温でもトーロン 4203L は、他のエンジニアリングポリマーの室温での値に匹敵する引張強さと曲げ強さを維持する。
- これらの優れた物理特性は高温条件下に長期間置いたあとでも変化しない。
長所
- 耐熱性が非常に高い
- 高温強度が高い
- 耐摩耗性が良い
- 寸法安定性が高い
- 耐クリープ性が良い
短所
- 価格が高い
- 成形加工が難しい
- 吸水の影響がある
- 強アルカリや強酸には注意が必要である
- 後硬化が必要な場合がある
成形加工
ポリアミドイミドの加工性は、樹脂の種類、分子量、充填材、硬化系、添加剤、成形温度により大きく変化する。 成形時には乾燥、熱分解、残留応力、結晶化、硬化条件、離型性を確認する必要がある。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 成形材料グレードで対応する。複雑形状部品、機構部品、電気電子部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、棒材、板材に使用する |
| 圧縮成形 | △〜○ | 熱硬化性樹脂や高耐熱材、切削素材で使用する |
| 注型・含浸 | △〜○ | 熱硬化性樹脂、塗料、ワニス、複合材料で使用する |
| 切削加工 | ○ | 板材、丸棒、精密部品、治具に使用する |
| 接着・塗装 | △ | 材料の表面性により表面処理や専用接着剤が必要である |
構造式
ポリアミドイミドの構造は、材料分類、重合方法、共重合成分、充填材の有無により変化する。 構造中の極性基、芳香環、フッ素原子、シロキサン結合、イミド結合、エステル結合などが、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、電気特性に影響する。
種類
射出成形PAI
| 名称 | 射出成形PAI |
|---|---|
| 構成 | ポリアミドイミドの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | ポリアミドイミドの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 高温軸受、シールリング、半導体治具、航空宇宙部品、コンプレッサー部品、電気絶縁部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
圧縮成形PAI
| 名称 | 圧縮成形PAI |
|---|---|
| 構成 | ポリアミドイミドの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | ポリアミドイミドの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 高温軸受、シールリング、半導体治具、航空宇宙部品、コンプレッサー部品、電気絶縁部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
摺動PAI
| 名称 | 摺動PAI |
|---|---|
| 構成 | ポリアミドイミドの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | ポリアミドイミドの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 高温軸受、シールリング、半導体治具、航空宇宙部品、コンプレッサー部品、電気絶縁部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
GF/CF強化PAI
| 名称 | GF/CF強化PAI |
|---|---|
| 構成 | ポリアミドイミドの用途別または改質グレードである |
| 特徴 | ポリアミドイミドの基本特性を用途に合わせて調整したグレードである |
| 主な用途 | 高温軸受、シールリング、半導体治具、航空宇宙部品、コンプレッサー部品、電気絶縁部品 |
特徴
- 用途に応じて物性を調整したグレードである
- 標準品と比較して耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性のいずれかを改善する
- 実使用条件ではメーカーグレードごとのデータ確認が必要である
代表的な物性値又は機械的性質
高強度ポリアミド(Solvay社製トーロン ポリアミドイミド)
| 特徴 | 単位 | 高強度 | 30% ガラス 繊維混合 | 30%炭素 繊維混合 |
|---|---|---|---|---|
| 比重 | 1.42 | 1.61 | 1.48 | |
| 引張強さ | MPa | 152 | 221 | 221 |
| 引張係数 | GPa | 4.5 | 14.5 | 16.5 |
| 引張伸び | % | 7.6 | 2.3 | 1.5 |
| 曲げ強度 | MPa | 241 | 333 | 350 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 5 | 11.7 | 16.5 |
| 圧縮強さ | MPa | 221 | 264 | 254 |
| 剪断強さ | MPa | 128 | 139 | 119 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 144 | 80 | 48 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチなし) | J/m | 1070 | 530 | 320 |
| 荷重たわみ温度 (1.82MPa) | ℃ | 278 | 282 | 282 |
| 線膨張係数 | ppm/℃ | 31 | 16 | 9 |
| 体積固有抵抗 | Ω・cm | 2.00E+17 | 2.00E+17 | |
| 吸水率 | %、24時間 | 0.33 | 0.24 | 0.26 |
耐摩耗性ポリアミドイミド(Solvay社製トーロン ポリアミドイミド)
| 特徴 | 単位 | 4275 | 4301 | 4435 | 4630 | 4645 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ | MPa | 117 | 113 | 94 | 81 | 114 |
| 引張係数 | GPa | 8.8 | 6.8 | 14.5 | 7.4 | 18.6 |
| 引張伸び | % | 2.6 | 3.3 | 1 | 1.9 | 0.8 |
| 曲げ強度 | MPa | 208 | 215 | 152 | 131 | 154 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 7.3 | 6.9 | 14.8 | 6.8 | 12.4 |
| 圧縮強さ | MPa | 123 | 166 | 138 | 99 | 157 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 85 | 64 | 43 | 48 | 37 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチなし) | J/m | 270 | 430 | 210 | 160 | 110 |
| 荷重たわみ温度 (1.82MPa) | ℃ | 280 | 279 | 278 | 280 | 281 |
| 線膨張係数 | ppm/℃ | 25 | 25 | 14 | 16 | 9 |
耐薬品性
ポリアミドイミドの耐薬品性は、樹脂構造、温度、濃度、接触時間、応力状態、グレード、充填材により変化する。 下表は一般的な目安であり、薬液タンク、配管、洗浄治具、食品・医療用途では実使用条件で確認する必要がある。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 材料種により吸水、加水分解、白化に注意が必要である |
| 弱酸 | ○ | 多くの場合で短期使用は可能である |
| 強酸 | △〜× | 樹脂構造により劣化、分解、膨潤が起こる |
| 弱アルカリ | ○〜△ | 材料により安定性が異なる |
| 強アルカリ | △〜× | エステル、イミド、アミド、カーボネート系では注意が必要である |
| アルコール | ○〜△ | 応力下ではクラックや膨潤に注意する |
| アセトン | △〜× | 非晶性樹脂や極性樹脂では膨潤・溶解しやすい |
| MEK | △〜× | 溶剤種、温度、応力条件で影響が大きい |
| トルエン | △ | 芳香族溶剤に弱い材料では膨潤・クラックが起こる |
| 塩素系溶剤 | △〜× | 多くの樹脂で膨潤・溶解・クラックに注意が必要である |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリオレフィン系、ポリアミド系などでは比較的良い場合がある |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
SP値は、約25〜30 MPa1/2が目安である。 SP値が近い溶剤では膨潤や溶解が起こりやすいが、結晶性、架橋構造、水素結合、分子量、充填材、温度の影響も大きいため、SP値は一次判断として扱う必要がある。
| 項目 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| PAI(標準グレード) | 24.0~25.5 | 高極性樹脂であり、耐熱性・耐摩耗性に優れる。一般有機溶剤への耐性は高い。 |
| PAI GF30(ガラス繊維30%) | 23.5~24.5 | GF添加により寸法安定性・耐薬品性が向上する。 |
| PAI CF30(炭素繊維30%) | 23.0~24.0 | CF添加により耐摩耗性・耐クリープ性が向上する。 |
| PAI 摺動グレード(PTFE・黒鉛充填) | 22.5~23.5 | PTFE添加により非極性側へやや低下し、摺動特性が向上する。 |
| PAI 高強度グレード | 24.5~25.5 | 未充填高強度タイプであり、高温下でも機械特性保持率が高い。 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
PAIは高SP値のスーパーエンプラであり、アルコール類・脂肪族炭化水素・油類に対して高い耐性を示す。一方で、強極性溶媒や強酸・強アルカリには注意が必要である。
| 溶剤名 | SP値(δ) MPa1/2 | 耐性評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | 常温では安定である。 |
| メタノール | 29.7 | ○ | 長期浸漬では吸収膨潤に注意が必要である。 |
| エタノール | 26.0 | △ | 短期使用では安定性が高い。 |
| IPA(イソプロピルアルコール) | 23.5 | △ | SP値が近いため高温・長期接触では注意が必要である。 |
| アセトン | 20.3 | △ | 応力下ではクラック発生の可能性がある。 |
| MEK(メチルエチルケトン) | 19.3 | △ | 高温環境では膨潤の可能性がある。 |
| トルエン | 18.2 | ○ | 芳香族炭化水素には比較的安定である。 |
| キシレン | 18.0 | ○ | 耐油性・耐燃料性は比較的良好である。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | ◎ | 脂肪族炭化水素には高い耐性を示す。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | △ | 長時間接触では表面劣化に注意が必要である。 |
| NMP | 23.0 | × | PAIに対して非常に強い溶解性を持つ代表溶媒である。 |
| DMF | 24.8 | × | SP値が極めて近く、溶解・膨潤を起こしやすい。 |
| DMSO | 26.7 | × | 高極性溶媒であり、PAIを侵す可能性が高い。 |
| 濃硫酸 | ― | × | 化学分解を引き起こすため不適である。 |
| 水酸化ナトリウム水溶液 | ― | △ | 高温・高濃度条件では加水分解の可能性がある。 |
※耐溶剤性評価は、PAIのSP値中央値(約24 MPa1/2)を基準として、溶剤とのSP値差、および実際の化学的侵食傾向を併せて評価した目安である。
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
※特にDMF、NMP、DMSOなどの高極性アミド系・含硫黄系溶媒は、PAIを膨潤または溶解させるため注意が必要である。また高温下ではアルコール類やケトン類でも応力割れを生じる場合がある。
実務上の注意
- SP値は溶解性の目安であり、耐久性そのものではない
- 結晶性樹脂や熱硬化性樹脂では、SP値が近くても溶解しにくい場合がある
- 非晶性樹脂では、応力クラックが耐薬品性の主要問題になりやすい
- 実使用では温度、濃度、接触時間、応力、成形残留応力を確認する必要がある
製法
ポリアミドイミドは、対応するモノマーの重合、重縮合、付加反応、共重合、架橋反応、コンパウンドなどにより製造される。 実用材料では、添加剤、充填材、安定剤、難燃剤、可塑剤、強化繊維などを配合して性能を調整する。
| 製法 | 特徴 | 主な製品形態 |
|---|---|---|
| 重合・重縮合 | 基本ポリマーを合成する | ベース樹脂 |
| 共重合・変性 | 耐熱性、柔軟性、耐薬品性、成形性を調整する | 改質グレード |
| コンパウンド | ガラス繊維、難燃剤、安定剤、潤滑剤などを配合する | 成形材料 |
| 成形・硬化 | 熱可塑性樹脂は溶融成形、熱硬化性樹脂は加熱硬化する | 最終成形品 |
詳細な利用用途
電気・電子用途
- コネクタ
- スイッチ部品
- 絶縁部品
- 筐体
- 高周波部品
自動車・輸送用途
- 内外装部品
- 機構部品
- 耐熱部品
- 摺動部品
- 燃料・配管関連部品
工業用途
- ギア
- 治具
- ライニング
- シール材
- 機械カバー
包装・生活用品用途
- フィルム
- 容器
- シート
- 日用品
- 保護部材
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| 代表メーカー | Solvay、Ensinger、Drake Plastics、東レ、三菱ケミカル系素材メーカー | 材料・グレードにより供給状況が異なる |
| 国内外コンパウンダー | 各種改質グレード | GF強化、難燃、摺動、耐候グレード |
| 成形材料メーカー | 用途別グレード | メーカー物性表で確認が必要である |
