ポリアミドイミド

概要

項目 内容
材料名 ポリアミドイミド
略記号 PAI
IUPAC Polyamide-imide。単一の化学構造を示す名称ではなく、主鎖中にアミド結合とイミド結合を持つ高分子群の総称であるため、厳密な名称は構成モノマーおよび繰返し単位により異なる。
英語名 Polyamide-imide / Polyamideimide
日本語名・別名 ポリアミドイミド、アミドイミド樹脂、ポリイミドアミド、PAI樹脂
分類 芳香族ポリアミドイミド、芳香族イミド系高分子、高耐熱樹脂
プラスチック分類 スーパーエンジニアリング・プラスチック
化学式・代表構造 −[Ar−CO−NH−Ar−N(CO)−Ar−CO]−n。Arは芳香族基を表す。実際の繰返し単位は原料および製法により異なる。
CAS No. 26658-56-8が代表的な番号として使用される場合がある。ただし、PAIは高分子群であり、構造、溶液組成、末端基および製品形態により異なる番号が使用される場合がある。
構造・主成分 芳香族主鎖中にアミド結合と五員環状のイミド構造を持つ。芳香族環およびイミド環による剛直性と、アミド結合による分子間相互作用を併せ持つ。
主な用途 高温軸受、ブッシュ、シールリング、ギア、スラストワッシャー、コンプレッサー部品、航空宇宙部品、半導体装置部品、電気絶縁部品、電線エナメル、耐熱塗料、フッ素樹脂塗料用バインダーなど。
供給形態 ペレット、粉末、板、丸棒、チューブ、圧縮成形素材、ワニス、溶液、コーティング用バインダーなど。
相対価格帯 極めて高価格

ポリアミドイミド(PAI)は、アミド結合とイミド結合を同一主鎖中に持つ芳香族系のスーパーエンジニアリング・プラスチックである。一般に、溶融成形可能な高耐熱樹脂として射出成形、押出成形、圧縮成形および切削加工に使用されるほか、溶剤可溶型のPAIは耐熱塗料、電気絶縁ワニス、電線エナメルおよびフッ素樹脂コーティング用バインダーとして使用される。

PAIは、高温下での機械強度、剛性、圧縮強さ、耐クリープ性、耐疲労性および耐摩耗性に優れる。未強化グレードのほか、ガラス繊維強化、炭素繊維強化、PTFE・グラファイト・炭素繊維配合の摺動グレードなどがあり、高温構造部品、精密部品および無潤滑摺動部品に使用される。

一方で、材料価格が高く、成形前乾燥、高温成形、滞留時間、金型温度および成形後の段階的な後硬化管理が重要である。アミド結合を含むため吸水性があり、吸湿による寸法変化、弾性率低下および電気特性変化に注意する必要がある。実使用では、グレード、強化材、含水状態、温度、湿度、薬品濃度、荷重、応力、摺動条件、接触時間、試験片形状および成形条件を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 高温下の引張強さ、曲げ強さ、剛性および圧縮強さに優れる。
  • 耐クリープ性および耐疲労性に優れ、高温で長時間荷重を受ける部品に適する。
  • 摺動グレードは低摩擦性、耐摩耗性および高い限界PV値を示す場合がある。
  • 荷重たわみ温度が高く、高温下で寸法と機械特性を維持しやすい。
  • 本質的難燃性が高く、UL 94 V-0などを取得した個別グレードが存在する。
  • 未強化グレードは高い電気絶縁性を示す。
  • 油、潤滑油、脂肪族炭化水素および多くの燃料に比較的良好な耐性を示す。
  • GF、CF、PTFE、グラファイトなどの配合により、剛性、熱膨張、導電性および摺動性を調整できる。
短所
  • 材料価格が極めて高く、加工費および後硬化費用も高くなりやすい。
  • 成形温度が高く、一般的なエンジニアリング・プラスチックより加工設備および金型に高い耐熱性が必要である。
  • 溶融粘度が高く、薄肉、長流動および複雑形状では充填不足が生じる場合がある。
  • 吸水および吸湿により寸法、弾性率、絶縁抵抗および誘電特性が変化する。
  • 乾燥不足や長時間滞留により、シルバーストリーク、ガス焼け、ボイド、変色および分解が生じる場合がある。
  • 強酸、強アルカリ、熱水、蒸気、アミンおよび一部の強極性溶剤では劣化または膨潤する場合がある。
  • GF・CF強化グレードでは繊維配向による異方性、反り、ウェルド強度低下および工具摩耗に注意が必要である。
項目 内容
外観 未着色品は一般に黄褐色、琥珀色、褐色または濃褐色であり、不透明である。GF強化品は褐色系、CF強化品および摺動グレードは黒色系が多い。
耐熱性 ガラス転移温度は代表的に約275〜285℃である。連続使用温度はグレード、荷重および評価基準により約240〜260℃が目安である。
耐薬品性 油、燃料、脂肪族炭化水素および一部のアルコールに比較的良好である。強酸、強アルカリ、酸化剤、アミン、NMP、DMAc、DMF、高温水および蒸気では注意が必要である。
加工性 射出成形、押出成形、圧縮成形および切削加工が可能である。ただし、十分な乾燥、高温金型、短い滞留時間および段階的な後硬化が重要となる。
分類上の注意 PAI成形材料は一般に熱可塑性樹脂として扱われるが、ワニスおよびコーティング用PAIは溶液塗布後の加熱によってイミド化または硬化が進む場合がある。

構造式

PAIは単一構造の高分子ではなく、使用する芳香族ジアミン、トリメリット酸誘導体、芳香族ジイソシアネートおよび反応経路により繰返し単位が異なる。以下は、アミド結合とイミド環を同一主鎖中に持つことを示す代表構造概念図である。

ポリアミドイミド(PAI)の代表構造概念 −[ Ar CO−NH Ar N imide O O Ar ]− n Ar:芳香族基 CO−NH:アミド結合 五員環:イミド構造 代表構造概念であり、芳香族基、結合位置および繰返し単位は製法・グレードにより異なる
項目 構造・内容
代表的な構造単位 −[Ar−CO−NH−Ar−N(CO)−Ar−CO]−n
主要結合 芳香族環、アミド結合、イミド結合
代表原料 芳香族ジアミン、トリメリット酸無水物クロリド、トリメリット酸無水物、芳香族ジイソシアネートなど。
分子構造上の特徴 剛直な芳香族環とイミド環により高い耐熱性と剛性を示し、アミド結合による分子間相互作用が機械強度に寄与する。
共重合・変性 芳香族基、エーテル結合、アミド結合比率、末端基および分子量を調整したグレードがある。GF、CF、PTFE、グラファイトおよび無機フィラーによる複合化も行われる。
結晶性 一般的な成形用PAIは非晶性樹脂として扱われる。明確な結晶融点よりもガラス転移温度、荷重たわみ温度および熱分解温度が重要である。

種類

種類の名称 主成分または特徴 長所 短所 主な用途
非強化・標準グレード PAI樹脂を主体とする未充填グレード。 高強度、高靭性、電気絶縁性および切削加工性に優れる。 吸水、成形難度、後硬化および価格に注意が必要である。 精密機械部品、電気絶縁部品、シール、治具
一般射出成形グレード 射出成形用に流動性および硬化挙動を調整したグレード。 複雑形状および量産部品を成形できる。 高温金型、乾燥、滞留管理および後硬化が必要である。 コネクタ、ソケット、ギア、構造部品
押出・切削素材グレード 板、丸棒、チューブなどの素材形状向けグレード。 少量多品種および高精度切削部品に適する。 素材内部の残留応力、吸湿および加工熱に注意する。 軸受、ブッシュ、シール、試作部品
耐熱グレード 高温機械特性および後硬化状態を重視したグレード。 高温下の強度、剛性および耐クリープ性に優れる。 加工条件および後硬化条件の影響が大きい。 航空宇宙部品、コンプレッサー部品、高温治具
難燃グレード 本質的難燃性を利用し、個別にUL認証などを取得したグレード。 高温絶縁部品および電子部品に適する。 UL 94等級は厚さ、色、添加剤および認証番号ごとに確認が必要である。 コネクタ、ソケット、スイッチ、リレー
GF強化グレード 一般にガラス繊維を約30質量%配合した代表グレードがある。 剛性、寸法安定性、低熱膨張性および耐クリープ性が向上する。 異方性、繊維浮き、工具摩耗およびウェルド強度低下が生じやすい。 精密構造部品、絶縁部品、ブラケット、ハウジング
CF強化グレード 一般に炭素繊維を約30質量%配合した代表グレードがある。 高剛性、低線膨張、耐摩耗性および静電気対策に有利である。 導電性、異方性、相手材攻撃性および高価格に注意する。 半導体治具、高荷重部品、高精度摺動部品
摺動・低摩擦グレード PTFE、グラファイト、CFなどを複合配合したグレード。 摩擦係数、摩耗量および限界PV値を改善できる。 標準グレードより引張強さ、伸びまたは絶縁性が低下する場合がある。 軸受、ブッシュ、シールリング、スラストワッシャー
導電・帯電防止グレード CF、カーボンブラックまたは導電性フィラーを配合する。 静電気拡散、帯電防止および高温寸法安定性に対応できる。 電気絶縁用途には使用できず、抵抗値は湿度および配向に依存する。 半導体搬送部品、検査治具、真空装置部品
食品接触用途向けグレード 食品接触規制への適合性を個別に確認したグレード。 高温、油および摩耗が関係する食品機械部品に適用できる場合がある。 すべてのPAIが食品接触用途に適するわけではない。 食品機械用ブッシュ、摺動部品、搬送部品
医療用途向けグレード 生体適合性、変更管理または滅菌耐性を個別に確認したグレード。 高温滅菌および高強度部品に使用できる場合がある。 ISO 10993、USP Class VIなどは個別グレードの証明が必要である。 医療機器部品、滅菌治具、分析装置部品
ワニス・コーティング用PAI NMPなどの強極性溶剤に溶解または分散した樹脂。 耐熱性、密着性、耐摩耗性および電気絶縁性を塗膜へ付与できる。 溶剤規制、残留溶剤、乾燥、焼付温度および作業環境に注意する。 電線エナメル、フッ素樹脂塗料、耐熱塗料、絶縁ワニス

成形加工

以下の適性は材料群としての一般的な傾向であり、成形方法に対応する専用グレードの有無を確認する必要がある。

加工方法 適性 評価理由 主な注意点
射出成形 射出成形用グレードがあり、複雑形状の量産が可能である。 乾燥、高温シリンダー、高温金型、短い滞留時間および後硬化が重要である。
押出成形 専用グレードでは板、丸棒、チューブなどを成形できる。 高溶融粘度、熱履歴、ダイスウェル、ボイドおよび内部応力を管理する。
ブロー成形 × 一般的な加工方法ではない。 材料価格、高温加工およびパリソン制御の難しさから通常は採用されない。
インフレーション成形 × 一般的なPAIフィルム製法ではない。 加工温度およびバブル安定性の点で不向きである。
Tダイフィルム成形 特殊グレードまたは特殊工程で可能な場合がある。 一般的な高耐熱フィルム用途ではPIなどが選択される場合が多い。
真空成形 × 高Tgであり、一般的な熱成形には適さない。 成形温度域が高く、シート供給も限定的である。
圧空成形 × 一般的な熱成形用途には適さない。 高Tg、材料価格およびシートの入手性が制約となる。
圧縮成形 厚肉素材、板材、丸棒および切削素材の製造に用いられる。 加圧、加熱、ボイド、内部応力、後硬化および冷却条件を管理する。
トランスファー成形 特殊な材料形態および用途で検討される場合がある。 一般的なPAI成形法ではなく、材料供給元との確認が必要である。
回転成形 × 一般的ではない。 溶融挙動、加工温度および材料価格の点で不向きである。
発泡成形 × 一般的な市販発泡グレードは限定的である。 高温下の発泡剤制御およびセル安定化が難しい。
3Dプリント 研究・特殊用途で検討されるが、一般的な熱溶解積層材料ではない。 高い加工温度、層間接着、反り、乾燥および後硬化が課題となる。
切削加工 板、丸棒および圧縮成形素材から高精度部品を加工できる。 吸湿、加工熱、工具摩耗、バリ、残留応力および加工後寸法変化を確認する。
溶着 熱可塑性であるが、高Tgおよび高い加工温度により一般的な溶着は難しい。 熱板、超音波およびレーザー溶着は形状とグレードごとに実証が必要である。
接着 適切な表面処理と耐熱接着剤により接合できる。 洗浄、粗化、プラズマ処理、プライマーおよび使用温度を確認する。
塗装 表面処理およびプライマーにより対応できる。 表面汚染、離型剤、吸湿、焼付温度および密着性を確認する。
印刷 表面処理および耐熱インキにより可能な場合がある。 インキ密着、熱履歴および薬品耐性を実部品で確認する。
めっき エッチング、触媒化および無電解めっき工程により可能な場合がある。 密着性、熱膨張差、薬液耐性および吸湿の影響を確認する。
蒸着 真空蒸着、スパッタリングなどを適用できる場合がある。 アウトガス、表面清浄度、密着性および熱サイクルを確認する。
レーザーマーキング 顔料およびレーザー条件を選定することで対応できる場合がある。 炭化、発泡、文字コントラストおよび強度低下を確認する。
インサート成形 高温耐熱部品および金属一体部品に使用できる。 金属との熱膨張差、予熱、角部応力、圧入応力および後硬化を確認する。
代表的な成形条件

以下はPAI射出成形材料の一般的な目安であり、特定グレードの保証条件ではない。実際にはメーカーの加工ガイドを優先する。

成形項目 単位 代表範囲 注意点
予備乾燥の要否 必要 開封後も吸湿するため、乾燥後は乾燥ホッパーで管理する。
推奨乾燥温度 150〜180 グレードおよびメーカーにより異なる。
推奨乾燥時間 h 4〜8 吸湿量、ペレット層厚および乾燥機性能により延長が必要な場合がある。
許容含水率 % グレード依存 メーカー加工仕様に従い、水分計で確認することが望ましい。
ホッパードライヤー 推奨 乾燥後の再吸湿を防止する。
シリンダー温度・供給部 315〜340 ホッパー側でのブリッジおよび過熱を避ける。
シリンダー温度・圧縮部 330〜355 せん断発熱を含む実樹脂温度を確認する。
シリンダー温度・計量部 340〜370 長時間滞留および局所過熱を避ける。
ノズル温度 335〜365 ノズル詰まり、糸引きおよびコールドスラッグを確認する。
樹脂温度 340〜370 実測値を確認し、分解温度へ近づけない。
金型温度 180〜220 金型温度が低いと充填不良、残留応力および表面不良が増える場合がある。
射出圧力 MPa 70〜140 部品形状、ゲート、肉厚および流動長により調整する。
保圧 MPa 35〜100 過大な保圧は残留応力、バリおよび離型不良の原因となる。
背圧 MPa 低〜中 過度なせん断発熱および滞留を避ける。
スクリュー回転数 rpm 低〜中 可塑化時間とせん断発熱を見ながら設定する。
滞留時間 min 最小限 長時間滞留は熱分解、変色および黒点の原因となる。
成形収縮率・流動方向 % 0.2〜0.8 未強化、GF、CF、摺動グレードで異なる。
成形収縮率・流動直角方向 % 0.4〜1.0 繊維強化品では流動方向との差を金型設計へ反映する。
推奨肉厚 mm 1.0〜4.0 厚肉ではボイドと冷却時間に注意する。
抜き勾配 ° 形状依存 高剛性材料であるため、十分な抜き勾配とエジェクタ面積を確保する。
後硬化の要否 多くの用途で推奨 耐熱性、寸法安定性、耐薬品性およびアウトガス特性を高めるため段階昇温を行う場合がある。
後硬化温度 200〜260 急加熱すると内部応力、膨れ、割れおよび変形が生じる場合がある。
後硬化時間 h 数時間〜数十時間 肉厚、グレードおよび要求性能により段階的な温度保持を行う。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は非強化・無充填の成形用PAIを基準とした代表値または代表範囲である。個別のメーカーグレード、成形方法、後硬化条件、試験規格および含水状態により値は変動する。

非強化・標準PAIの物理的性質
項目 単位 代表値 代表範囲 試験規格・条件 備考
密度 g/cm3 1.41 1.39〜1.43 ASTM D792またはISO 1183、23℃ 非強化・標準グレード。乾燥状態。
比重 無次元 1.41 1.39〜1.43 ASTM D792、23℃ 密度とほぼ同じ数値で表される。
かさ密度 g/cm3 データなし データなし ペレット形状依存 樹脂密度と混同しない。
吸水率・24時間 % 0.33 0.25〜0.50 ASTM D570、23℃水中、24h 後硬化、試験片厚さおよびグレードにより変動する。
平衡吸水率 % 1.5 1.0〜2.5 23℃・50%RH、長時間調節の代表範囲 肉厚および調節時間に依存する。
飽和吸水率 % データなし グレード依存 長期水中浸漬 吸湿平衡と水中飽和を区別する。
成形収縮率・流動方向 % 0.5 0.3〜0.8 射出成形、成形条件依存 後硬化による追加寸法変化を確認する。
成形収縮率・流動直角方向 % 0.7 0.4〜1.0 射出成形、成形条件依存 ゲートおよび肉厚の影響を受ける。
線膨張係数・流動方向 10−5/K 3.0 2.5〜3.5 ASTM E831または同等法 温度範囲および成形方向を確認する。
線膨張係数・流動直角方向 10−5/K 3.5 3.0〜4.5 ASTM E831または同等法 成形履歴および分子配向に依存する。
ポアソン比 無次元 データなし 一般化困難 温度・含水状態依存 解析には個別グレードの実測値を使用する。
硬度 ロックウェル M105 M100〜M110 ASTM D785 尺度を省略して比較しない。
水蒸気透過度 データなし グレード依存 温度・湿度・厚さを要指定 一般的なバリア材料としての比較値は限定的である。
酸素透過度 データなし グレード依存 温度・湿度・厚さを要指定 一般的なフィルム用途は限定的である。
屈折率 無次元 データなし データなし 不透明材料であり、一般設計値として扱われない。
光線透過率 % 該当なし 該当なし 一般的な不透明成形品 透明用途には適さない。
ヘーズ % 該当なし 該当なし 不透明成形品 透明材料の評価項目としては適用しにくい。
色調・外観 不透明 黄褐色〜濃褐色 自然色成形品 強化材および着色により変化する。
非強化・標準PAIの機械的性質
項目 単位 代表値 代表範囲 試験規格・条件 備考
引張強さ・破断 MPa 185 160〜200 ASTM D638、23℃、乾燥状態 資料により最大引張強さとして記載される。
引張強さ・降伏 MPa データなし グレード依存 ASTM D638またはISO 527 明確な降伏点を示さない場合がある。
引張弾性率 GPa 4.8 4.2〜5.3 ASTM D638またはISO 527、23℃ 吸湿により低下する場合がある。
引張破断伸び % 8 5〜15 ASTM D638、23℃、乾燥状態 成形条件、後硬化および試験片形状により差がある。
引張降伏伸び % データなし 一般化困難 降伏点の定義が資料間で異なる。
曲げ強さ MPa 230 200〜260 ASTM D790、23℃ 後硬化および吸湿状態に依存する。
曲げ弾性率 GPa 5.0 4.5〜5.5 ASTM D790、23℃ 引張弾性率と同一値として扱わない。
曲げひずみ % データなし グレード依存 ASTM D790 破壊せず試験終了となる場合がある。
圧縮強さ MPa 220 180〜260 ASTM D695、23℃ 降伏、所定ひずみまたは破壊の定義を確認する。
圧縮弾性率 GPa 4.5 4.0〜5.2 ASTM D695、23℃ 長時間荷重ではクリープ評価が必要である。
圧縮降伏応力 MPa データなし グレード依存 ASTM D695 圧縮強さとの定義差を確認する。
せん断強さ MPa 100 85〜115 ASTM D732または同等法 試験方式により値が異なる。
せん断弾性率 GPa データなし 一般化困難 CAE解析には個別グレードの温度依存値を使用する。
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き J/m 140 100〜160 ASTM D256、23℃ ISO方式のkJ/m2と直接比較しない。
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き kJ/m2 データなし データなし ISO 180 ASTM値から単純換算していない。
シャルピー衝撃強さ・ノッチ付き kJ/m2 データなし グレード依存 ISO 179 試験片形状とノッチ条件を確認する。
疲労強度 MPa データなし 条件依存 温度、応力比、周波数および繰返し回数を要指定 短時間引張強さから推定しない。
引張クリープ弾性率 MPa データなし 条件依存 温度、応力、時間を要指定 高温長期設計では個別クリープ曲線を使用する。
強化・摺動PAIの代表物性比較
項目 単位 非強化PAI GF30%強化PAI CF30%強化PAI 摺動PAI
密度 g/cm3 1.39〜1.43 1.55〜1.65 1.45〜1.55 1.45〜1.60
引張強さ MPa 160〜200 180〜230 180〜240 75〜150
引張弾性率 GPa 4.2〜5.3 8〜12 15〜25 6〜10
引張破断伸び % 5〜15 2〜5 1〜3 1〜4
曲げ強さ MPa 200〜260 250〜330 260〜360 120〜220
曲げ弾性率 GPa 4.5〜5.5 9〜13 16〜25 6〜10
HDT・1.80MPa 270〜280 275〜285 275〜285 270〜280
線膨張係数・流動方向 10−5/K 2.5〜3.5 1.2〜2.0 0.5〜1.2 1.2〜2.5
吸水率・24時間 % 0.25〜0.50 0.20〜0.40 0.15〜0.35 0.15〜0.45
主な特徴 高強度、高靭性、絶縁性 高剛性、寸法安定性 高剛性、低熱膨張 低摩擦、耐摩耗、高PV

強化グレードの範囲には、GF約30質量%またはCF約30質量%の代表的なグレードに近い値が含まれるが、個別グレードの保証値ではない。強化材含有率、繊維長、配向、成形方法および後硬化条件が不明な値を標準PAIの値として使用してはならない。

熱的性質
項目 単位 代表値 代表範囲 試験規格・条件 備考
ガラス転移温度 280 275〜285 DSC、DMAまたはTMA 測定法により値が異なる。
融点 該当なし 該当なし 非晶性PAI 明確な結晶融点を持たない。
結晶化温度 該当なし 該当なし 非晶性PAI 一般的なPAIでは比較項目として扱わない。
熱分解開始温度 400 380〜450 TGA、雰囲気・昇温速度依存 成形可能温度および連続使用温度とは異なる。
荷重たわみ温度・0.45MPa データなし グレード依存 ASTM D648またはISO 75 1.80MPa条件との混同を避ける。
荷重たわみ温度・1.80MPa 278 270〜285 ASTM D648またはISO 75 試験片、後硬化およびグレードに依存する。
ビカット軟化温度 データなし 一般化困難 ASTM D1525またはISO 306 高Tg材料ではHDTが使用される場合が多い。
連続使用温度 250 240〜260 空気中、低〜中荷重の一般的目安 熱老化、強度保持率、電気特性および規格により異なる。
短時間耐熱温度 275 260〜300 短時間、無荷重または低荷重 時間、荷重、酸素および寸法要求に依存する。
低温使用限界 −150 −200〜−100 低荷重の一般的目安 衝撃、熱サイクルおよび相手材との熱膨張差を確認する。
熱伝導率 W/(m・K) 0.26 0.22〜0.35 23℃、非強化グレード CF、グラファイト配合品では高くなる。
比熱 J/(g・K) 1.1 0.9〜1.3 23℃付近 温度依存性がある。
熱拡散率 mm2/s データなし グレード依存 熱伝導解析では個別測定を推奨する。
RTI Electrical データなし 認証グレード依存 UL認証 材料群全体の値として一般化しない。
RTI Mechanical with Impact データなし 認証グレード依存 UL認証 個別グレード、色および厚さを確認する。
RTI Mechanical without Impact データなし 認証グレード依存 UL認証 連続使用温度と同義ではない。
燃焼性・難燃性
項目 単位 代表値・評価 試験規格・条件 備考
UL 94燃焼性 V-0取得グレードあり 厚さ、色および個別グレード依存 PAI材料群全体がV-0であるとは断定できない。
UL 94試験片厚さ mm データなし UL Yellow Cardを確認 認証グレードごとに確認する。
限界酸素指数・LOI % 約40以上 ASTM D2863またはISO 4589 代表的な目安であり、グレード差がある。
GWIT データなし IEC 60695 個別の電気用途グレードで確認する。
GWFI データなし IEC 60695 個別認証を確認する。
自然発火温度 データなし 試験法依存 粉末、成形品および雰囲気により異なる。
引火点 該当なし 固体成形材料 PAI溶液は使用溶剤の引火点を確認する。
ハロゲン含有 基本骨格は非ハロゲン 組成確認 PTFE配合摺動グレードおよび添加剤は別途確認する。
燃焼時発生ガス CO、CO2、窒素含有分解ガスなど 燃焼条件依存 不完全燃焼では有害ガスが発生し得るため換気が必要である。
電気的性質
項目 単位 代表値 代表範囲 試験規格・条件 備考
体積抵抗率 Ω・cm 1×1016 1×1015〜1×1017 ASTM D257、乾燥状態 吸湿により低下する。CF・カーボン配合品には適用しない。
表面抵抗率 Ω 1×1015 1×1014〜1×1017 ASTM D257、乾燥状態 湿度および表面汚染の影響が大きい。
絶縁破壊強さ kV/mm 20 15〜25 ASTM D149、試験片厚さ依存 厚さ、電極、昇圧速度および吸湿状態を確認する。
比誘電率・1kHz 無次元 4.2 3.9〜4.5 ASTM D150、23℃、乾燥状態 吸湿により上昇する場合がある。
比誘電率・1MHz 無次元 4.0 3.7〜4.3 ASTM D150、23℃、乾燥状態 周波数を付けずに比較しない。
誘電正接・1kHz 無次元 0.02 0.01〜0.03 ASTM D150、23℃、乾燥状態 吸湿および温度により増加する場合がある。
誘電正接・1MHz 無次元 0.03 0.02〜0.04 ASTM D150、23℃、乾燥状態 グレードおよび測定法に依存する。
耐アーク性 s データなし グレード依存 ASTM D495 個別電気グレードで確認する。
CTI V データなし 認証グレード依存 IEC 60112 UL PLC区分を個別確認する。
耐摩耗・摺動特性
項目 単位 代表範囲 主な試験条件 注意点
動摩擦係数 無次元 0.15〜0.40 摺動グレード、鋼相手材、無潤滑の代表範囲 相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度および湿度に依存する。
静摩擦係数 無次元 データなし 条件依存 始動回数および表面状態を含む実部品試験を推奨する。
比摩耗量 mm3/(N・m) データなし グレード・試験法依存 条件が異なる値を単純比較しない。
摩耗量 mm3 データなし 荷重、速度、距離、温度を要指定 試験条件を伴わない摩耗量は比較できない。
限界PV値 MPa・m/s データなし 摺動グレード、温度・相手材依存 メーカーのPV線図および実機温度上昇を確認する。

耐薬品性

以下は後硬化された成形用PAIについて、常温付近、低〜中濃度、無応力または低応力、短時間から中期間の接触を想定した一般的な目安である。

薬品分類 代表薬品 濃度 温度 接触条件 評価 主な劣化形態 備考
純水、水道水 23℃ 浸漬 吸水、寸法変化 長期浸漬では吸水平衡後の物性を確認する。
温水 温水 60〜90℃ 浸漬 吸水、加水分解、強度低下 温度と時間の影響が大きい。
熱水・蒸気 沸騰水、水蒸気 100℃以上 長時間・反復 加水分解、膨潤、脆化 オートクレーブ反復回数を確認する。
無機酸 希塩酸 約10%以下 23℃ 短〜中期浸漬 変色、強度低下 高濃度および高温では評価を下げる。
無機酸 希硫酸 約10%以下 23℃ 短〜中期浸漬 変色、加水分解 濃硫酸および高温条件には適さない。
酸化性酸 濃硝酸、濃硫酸 高濃度 23℃以上 浸漬 × 酸化分解、脆化、変色 強い酸化作用を持つ条件は避ける。
有機酸 酢酸、クエン酸 低〜中濃度 23℃ 浸漬 膨潤、強度低下 高濃度酢酸および高温では確認が必要である。
弱アルカリ 炭酸ナトリウム、希アンモニア水 低濃度 23℃ 短時間接触 加水分解、応力割れ アミン系アルカリは強く相互作用する場合がある。
強アルカリ NaOH、KOH 高濃度 23℃以上 浸漬 × 加水分解、脆化、割れ 高温アルカリは特に避ける。
低級アルコール メタノール、エタノール、IPA 100%または水溶液 23℃ 短〜中期浸漬 吸収、膨潤、寸法変化 水との混合比および応力下で確認する。
多価アルコール グリセリン、エチレングリコール 100%または水溶液 23〜80℃ 浸漬 吸水、膨潤 冷却液では添加剤を含めて評価する。
高級アルコール ブタノール、MMB 100% 23℃ 浸漬 膨潤 混合溶剤中のケトン、エステル成分に注意する。
ケトン アセトン、MEK、MIBK 100% 23℃ 浸漬 膨潤、軟化、応力割れ 短時間洗浄でも応力部品では確認する。
環状ケトン シクロヘキサノン 100% 23℃ 浸漬 膨潤、軟化 高温および長時間接触を避ける。
エステル 酢酸エチル、酢酸ブチル、DBE 100% 23℃ 浸漬 膨潤、抽出、軟化 高沸点溶剤は長時間接触に注意する。
エーテル THF、ジエチルエーテル 100% 23℃ 浸漬 膨潤、応力割れ THFは極性が高く、長期浸漬を避ける。
芳香族炭化水素 トルエン、キシレン 100% 23℃ 浸漬 軽度膨潤 高温および混合溶剤では確認が必要である。
脂肪族炭化水素 ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン 100% 23℃ 浸漬 影響小 長期高温および添加剤を含む燃料は別途評価する。
ハロゲン化炭化水素 ジクロロメタン、クロロホルム 100% 23℃ 浸漬 膨潤、抽出、応力割れ 拡散性が高く、薄肉部品では注意する。
強極性溶剤 NMP、DMAc、DMF、DMSO 100% 23℃以上 浸漬 × 著しい膨潤、軟化、溶解 PAIワニスの溶媒として使用されるものがある。
燃料 ガソリン、軽油、ジェット燃料 市販組成 23〜100℃ 浸漬 膨潤、添加剤抽出 アルコール混合燃料および酸化劣化燃料を確認する。
潤滑油 鉱物油、合成油、シリコーン油 23〜150℃ 浸漬・摺動 影響小 極圧剤、酸化生成物および高温条件を確認する。
作動油 鉱物油系、リン酸エステル系 23〜120℃ 浸漬 膨潤、軟化 リン酸エステル系は個別評価が必要である。
ブレーキ液 グリコールエーテル系 市販組成 23〜120℃ 浸漬 膨潤、吸収、強度低下 水分含有量および高温条件を確認する。
冷却液 エチレングリコール水溶液 約50% 80〜120℃ 長期浸漬 吸水、加水分解 高温長期耐久試験が必要である。
界面活性剤 中性洗剤、非イオン界面活性剤 使用濃度 23〜80℃ 洗浄 吸水、添加剤抽出 アルカリビルダーを含む洗浄剤は別途確認する。
酸化剤 過酸化水素 低濃度 23℃ 短時間接触 酸化、変色、脆化 濃度、温度および金属イオンの存在に依存する。
次亜塩素酸塩 次亜塩素酸ナトリウム 100〜1000ppm 23℃ 短時間洗浄 酸化、変色、表面劣化 高濃度、低pHおよび高温では劣化が進みやすい。
塩水 塩化ナトリウム水溶液 3〜10% 23℃ 浸漬 吸水、寸法変化 金属インサートとの電食および腐食を確認する。
海水 天然海水・人工海水 約3.5% 23℃ 長期浸漬 吸水、寸法変化 温度、応力および生物付着を考慮する。
食品油 植物油、動物油 23〜150℃ 浸漬 影響小 酸化劣化油、洗浄薬品および食品接触規制を確認する。
SP値(溶解度パラメータ)

PAIのHildebrand SP値(δ)は単一の確定値として一般化しにくいが、代表的な推算範囲として約24〜28MPa1/2程度、比較用代表値として26MPa1/2を用いることができる。

この値は推算方法、繰返し単位、分子量、末端基、後硬化、吸湿状態および測定法により変動する。SP値だけでPAIの耐薬品性を判断してはならない。PAIでは、水素結合、溶剤の拡散性、ガラス転移温度、後硬化度、加水分解、酸化、酸・塩基反応および環境応力割れが重要となる。

溶解性の目安
SP値差 溶解・膨潤の目安 判定
0〜2 膨潤・軟化しやすい ×
2〜5 条件により膨潤する
5〜8 短時間接触では比較的安定
8以上 溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性

以下はPAIの比較用SP値を26MPa1/2として計算した一次スクリーニングである。評価はSP値差だけでなく、既知の極性、溶解性、加水分解性およびPAIワニス溶媒としての使用実績を考慮して補正している。

薬品名 SP値 MPa1/2 PAIとの差 評価 実務上の注意
n-ヘプタン 15.3 10.7 低極性炭化水素であり、一般に膨潤しにくい。
イソオクタン 14.1 11.9 燃料用途ではアルコール、芳香族成分および添加剤を含めて評価する。
トルエン 18.2 7.8 高温および長時間浸漬では質量変化と寸法変化を確認する。
キシレン 18.0 8.0 混合溶剤ではケトン、エステルおよび強極性成分の影響を確認する。
酢酸エチル 18.6 7.4 SP値差だけでは良好側であるが、エステル系溶剤として膨潤確認が必要である。
MEK 19.0 7.0 応力下および長時間浸漬では膨潤・軟化に注意する。
アセトン 20.0 6.0 短時間洗浄でも残留応力が高い部品では確認試験を行う。
ジクロロメタン 20.2 5.8 拡散性が高く、薄肉部品および応力部では注意する。
IPA 23.5 2.5 常温短時間では使用できる場合があるが、吸湿および応力との複合影響を確認する。
NMP 23.0 3.0 × PAIワニスの代表的溶媒であり、著しい膨潤または軟化のおそれがある。
DMAc 22.8 3.2 × 高い溶解力を持つ強極性溶剤である。
DMF 24.8 1.2 × SP値が近く、強い溶媒和作用により膨潤・軟化しやすい。
エタノール 26.0 0.0 SP値差だけでは不利であるが、常温短時間に耐える場合がある。
47.9 21.9 SP値差は大きいが、吸水および高温での加水分解があるため◎とは評価しない。

評価基準:◎は一般的な条件で影響が小さい、○は概ね使用可能であるが条件確認が必要、△は膨潤、軟化、強度低下、変色または応力割れに注意、×は溶解、著しい膨潤、分解または割れの可能性が高いことを示す。

製法

PAIは、芳香族ジアミンとトリメリット酸無水物クロリドなどを反応させる酸クロリド法、またはトリメリット酸無水物と芳香族ジイソシアネートを反応させるイソシアネート法などにより製造される。

ポリアミドイミド(PAI)の代表的製造工程 芳香族ジアミン H₂N−Ar−NH₂ トリメリット酸無水物 クロリド等 酸無水物+酸クロリド基 溶液重合 NMP、DMAc等 アミド結合形成 分子量・末端基制御 イミド化 環化反応 水分・副生成物除去 イミド化度調整 PAI 樹脂 溶液 ワニス・塗料 塗布・乾燥・焼付 電線・コーティング 脱揮・粉末化 溶媒・副生成物除去 粉末または樹脂固形物 コンパウンド・造粒 GF・CF・PTFE・黒鉛等 ペレット化 成形・後硬化 射出・押出・圧縮成形 段階昇温・寸法安定化 実際の工程、溶媒、温度および副生成物は原料経路と製品グレードにより異なる
代表的な反応式

芳香族ジアミンとトリメリット酸無水物クロリドを用いる代表反応概念:

n H2N−Ar−NH2 + n ClCO−Ar−(CO)2O → −[Ar−NH−CO−Ar−N(CO)2]−n + n HCl

トリメリット酸無水物と芳香族ジイソシアネートを用いる代表反応概念:

n OCN−Ar−NCO + n HOOC−Ar−(CO)2O → PAI + CO2

上記は構造形成を示す概念式である。実際の反応では中間体形成、アミド化、イミド化、脱炭酸、脱水および末端基反応などが関与する。

ペレット化・コンパウンド
  • 重合後の樹脂溶液から溶媒および副生成物を除去し、粉末または樹脂固形物を得る。
  • 射出・押出成形用では、造粒およびペレット化を行う。
  • GF、CF、PTFE、グラファイト、炭素粉、無機フィラー、顔料および熱安定剤を配合する場合がある。
  • 残留溶媒および揮発分は、半導体、真空、航空宇宙および電気用途のアウトガスへ影響する。

詳細な利用用途

分野 代表用途 選定理由 主な注意点
自動車 トランスミッション部品、スラストワッシャー、シールリング、ブッシュ、燃料系部品 高温強度、耐摩耗性、耐油性および耐クリープ性に優れる。 アルコール混合燃料、添加剤、高温油および繰返し荷重を確認する。
電気・電子 高温コネクタ、バーンインソケット、スイッチ、リレー、絶縁スペーサー 耐熱性、難燃性、絶縁性および寸法安定性に優れる。 吸湿後の絶縁特性、リフロー条件、CTIおよびUL認証を確認する。
半導体 ウェハ搬送部品、テストソケット、治具、真空チャンバー内部部品 高温寸法安定性、耐摩耗性および切削精度に優れる。 アウトガス、イオン汚染、摩耗粉、導電性および薬液耐性を確認する。
機械部品 軸受、ギア、ローラー、シール、バルブシート、摩耗板 高荷重、高温および無潤滑条件に対応しやすい。 PV値、相手材粗さ、摩擦熱、クリープおよび芯ずれを確認する。
航空宇宙 高温構造部品、耐熱治具、摺動部品、軽量金属代替部品 高比強度、耐熱性、難燃性および寸法安定性に優れる。 発煙・毒性、アウトガス、トレーサビリティおよび航空規格を確認する。
医療 手術器具部品、滅菌治具、分析装置部品 高強度、高温耐性および寸法安定性に優れる。 生体適合性、溶出、滅菌回数、薬液および個別医療グレードを確認する。
食品機械 高温ブッシュ、搬送部品、シール、摺動ガイド 耐熱性、耐摩耗性および油への耐性に優れる。 食品接触規制、熱水、蒸気、アルカリ洗浄剤および次亜塩素酸塩を確認する。
建築・設備 高温設備用スペーサー、絶縁部品、摩耗部品 高温強度と電気絶縁性を両立しやすい。 屋外耐候性、吸水、コストおよび長期クリープを確認する。
塗料・コーティング フッ素樹脂塗料バインダー、耐熱塗料、耐摩耗塗膜 密着性、耐熱性、機械強度および耐摩耗性を付与できる。 溶剤規制、焼付温度、残留溶剤、基材密着および塗膜柔軟性を確認する。
電線・絶縁 電線エナメル、モーター巻線、耐熱絶縁ワニス 高温電気絶縁性、耐摩耗性および導体密着性に優れる。 塗膜厚、ピンホール、焼付条件、可とう性および部分放電を確認する。
用途別選定
用途 適性 選定理由 注意点
ギア 高温強度、耐摩耗性および耐クリープ性に優れる。 歯元応力、潤滑、相手歯車、騒音および長期疲労を確認する。
軸受・ブッシュ 摺動グレードは高温・高荷重条件に適する。 PV値、軸粗さ、クリアランス、温度上昇および摩耗粉を確認する。
ローラー・摺動板 耐摩耗性および高温寸法安定性に優れる。 相手材攻撃性、偏荷重および表面仕上げを確認する。
ねじ・ボルト・ナット 高温絶縁締結部品として使用できる。 締付トルク、応力緩和、ねじ谷応力および再使用回数を確認する。
ポンプ・バルブ部品 高温強度、耐摩耗性および耐油性に優れる。 薬液、温度、圧力、キャビテーションおよびシール面を確認する。
シール 高温、高圧および摺動条件に対応しやすい。 密封圧、クリープ、相手材、潤滑および漏れ量を確認する。
ガスケット・Oリング 高剛性であり、バックアップリングには適する。 ゴム状弾性がないため、柔軟な主シール材としては通常不向きである。
チューブ・配管 高温および高強度用途に使用できる場合がある。 押出性、曲げ、継手応力、薬液およびコストを確認する。
タンク・大型容器 × 材料性能は高いが、大型成形とコストの点で不利である。 PEEK、PPS、フッ素樹脂または金属ライニングを検討する。
フィルム・シート 特殊な耐熱シート用途には可能性がある。 一般的な高耐熱フィルムではPIが選ばれやすい。
ボトル・一般容器 × ブロー成形性およびコストの点で不向きである。 用途に応じてPE、PP、PET、PFAなどを検討する。
電気コネクタ・ソケット 高温強度、絶縁性、難燃性および寸法安定性に優れる。 吸湿、薄肉流動、ウェルド、端子圧入およびUL認証を確認する。
電子部品筐体 極めて高い耐熱性が必要な小型筐体に適する。 一般筐体には過剰性能となり、コストが高い。
透明カバー・レンズ × 一般に不透明である。 PC、PMMA、透明PEIなどを検討する。
自動車エンジンルーム部品 高温、油、燃料および機械荷重に対応しやすい。 冷却液、燃料組成、振動および熱サイクルを確認する。
食品機械部品 高温摺動および耐油用途に適する。 食品接触適合、洗浄剤、蒸気および溶出試験が必要である。
医療機器・滅菌部品 高温強度と寸法安定性に優れる。 医療グレード、生体適合性および反復滅菌耐久性を確認する。
半導体製造装置部品 高温、精度、耐摩耗および切削性に優れる。 アウトガス、イオン汚染、薬液および発塵を確認する。
真空装置部品 高温強度と寸法安定性に優れる。 後硬化、吸湿、真空ベークおよびTML・CVCMを確認する。
屋外部品 熱的・機械的性能は高い。 無安定グレードでは紫外線による変色および表面劣化を確認する。
接着剤 特殊耐熱接着用途で使用される場合がある。 硬化収縮、基材密着、溶剤および脆さを確認する。
塗料・コーティング 耐熱塗膜、耐摩耗塗膜およびフッ素樹脂バインダーに適する。 溶剤、焼付、基材耐熱性および残留溶剤を確認する。
複合材料マトリックス 高耐熱マトリックスとして使用できる。 含浸、溶剤除去、界面接着およびボイドを確認する。

関連材料との比較

比較材料 強度・剛性 耐熱性 耐衝撃性 耐薬品性 吸水性 成形性 価格帯 PAIとの主な違い
ポリイミド(PI) 非常に高い 非常に高い グレード依存 高い 中〜高 低い〜中 極めて高価格 PIはフィルム、絶縁および極限耐熱用途に優れる。PAIは溶融成形性、高温機械強度および摺動部品への適用で有利な場合がある。
ポリエーテルイミド(PEI) 高い 高い 高い 高い 高価格 PEIは射出成形性、透明性およびコストで有利である。PAIは高温強度、耐摩耗性および耐クリープ性で優れる。
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) 非常に高い 非常に高い 高い 非常に高い 低い 極めて高価格 PEEKは耐薬品性、耐加水分解性、耐疲労性および成形安定性で有利である。PAIは高温剛性、圧縮強さおよび摺動性で優れる場合がある。
ポリフェニレンサルファイド(PPS) 高い 高い 低〜中 非常に高い 非常に低い 高い 比較的高価格 PPSは耐薬品性、低吸水、量産成形性および価格で有利である。PAIは高温機械強度、耐摩耗性および耐クリープ性で優れる。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 低い 非常に高い 最高水準 非常に低い 低い 高価格 PTFEは耐薬品性、低摩擦性および非粘着性で優れる。PAIは強度、剛性、耐クリープ性および高荷重摺動で有利である。
液晶ポリマー(LCP) 高い 高い 高い 非常に低い 非常に高い 高価格 LCPは薄肉流動性、低吸水、低熱膨張およびリフロー対応に優れる。PAIは靭性、高温摺動および高荷重部品で有利である。
ポリスルホン(PSU) 中〜高 高い 高い 高い 高価格 PSUは透明性、耐熱水性、靭性および成形性で有利である。PAIはさらに高い耐熱性、強度および耐摩耗性を持つ。
比較用評価スコア

以下は非強化・標準PAIを材料群として評価した概略スコアである。5は非常に優れる、4は優れる、3は標準的、2はやや劣る、1は劣る、0は評価不能またはデータなしを示す。

評価項目 スコア 評価理由
引張強度 5 未強化熱可塑性樹脂として極めて高い引張強さを示す。
剛性 5 未強化でも高く、GF・CF強化でさらに向上する。
衝撃強度 4 高剛性材料として比較的良好であるが、ノッチおよび低温条件に注意する。
耐熱性 5 Tg、HDTおよび連続使用温度が非常に高い。
低温特性 4 低温まで使用できるが、衝撃および熱サイクルを個別確認する。
耐薬品性 4 油、燃料および炭化水素に良好であるが、強極性溶剤、強酸、強アルカリおよび熱水には制約がある。
耐候性 3 一定の耐候性を持つが、無安定グレードの長期屋外使用には確認が必要である。
耐加水分解性 3 常温水には使用できる場合があるが、高温水および蒸気の長期使用に注意する。
寸法安定性 4 耐クリープ性と低熱膨張性に優れるが、吸湿による寸法変化がある。
低吸水性 2 PEEK、PPS、LCPおよびフッ素樹脂より吸水しやすい。
摺動性 5 摺動グレードは高温・高荷重条件で優れた性能を示す。
耐摩耗性 5 高温摺動部品の代表的な高性能材料である。
電気絶縁性 4 乾燥状態では高いが、吸湿による変化に注意する。
難燃性 5 本質的難燃性が高く、V-0取得グレードが存在する。
透明性 1 一般に不透明であり、光学用途には適さない。
成形加工性 2 高温成形、乾燥、高温金型および後硬化が必要である。
切削加工性 4 素材形状から高精度加工できるが、吸湿、残留応力および工具摩耗に注意する。
接着性 3 表面処理と耐熱接着剤により接合できる。
リサイクル性 2 熱可塑性であるが、高温再加工、熱履歴、充填材および品質保証が制約となる。
価格優位性 1 極めて高価格であり、性能が必要な限定用途向けである。

代表的なメーカー

メーカー 代表製品・ブランド 概要
Syensqo Torlon® PAI、Torlon® AI 成形用PAI、GF・CF強化、摺動グレードおよびコーティング・バインダー用途向けPAIを展開する代表的メーカーである。
Mitsubishi Chemical Advanced Materials Duratron® PAI PAIの板、丸棒、チューブおよび切削素材を展開する。未強化、摺動およびCF強化などの代表グレードがある。
Ensinger TECAPAI PAIの切削用板材、丸棒および高機能素材を展開する。グレードおよび供給地域は個別確認が必要である。
Drake Plastics Torlon® PAI stock shapes Torlon® PAIの板、丸棒、チューブ、ニアネット形状および加工部品を扱う代表的な素材メーカーである。
Röchling Industrial SUSTAPAI 高機能プラスチック切削素材の一部としてPAI素材を展開する。ブランド名、グレードおよび地域別供給状況は最新資料で確認する。

接合・表面処理適性

方法 適性 概要 注意点
熱板溶着 高温設備を使用すれば適用できる場合がある。 熱分解、変形、溶着時間および治具温度を管理する。
超音波溶着 小型部品で検討できる場合がある。 高剛性によるエネルギー集中、クラックおよびホーン設計を確認する。
振動溶着 接合面積が大きい部品で検討できる。 高Tg、高摩擦熱およびバリ発生を確認する。
レーザー溶着 透過材と吸収材の組合せが成立する場合に限られる。 一般的なPAIは不透明であり、光学特性の調整が必要である。
高周波溶着 × 一般的な方法ではない。 材料形態および誘電損失条件から通常は選定されにくい。
熱風溶着 特殊形状で検討される場合がある。 局所過熱、熱分解および接合強度のばらつきに注意する。
溶剤接着 強極性溶剤で表面を膨潤させる方法が考えられる。 寸法変化、残留溶剤、応力割れおよび作業安全性の問題がある。
接着剤接合 エポキシ、ポリイミド系などの耐熱接着剤を使用できる。 脱脂、粗化、プラズマ処理、プライマーおよび熱膨張差を確認する。
機械締結 ねじ、ボルト、リベットおよびクランプで接合できる。 座面圧、応力集中、クリープ、端部距離および締付トルクを管理する。
インサート・タッピング 金属インサートおよびタッピングねじを使用できる。 下穴、肉厚、温度、圧入応力および熱サイクルを確認する。
プラズマ処理 接着、塗装および印刷前の表面活性化に有効である。 処理後の経時低下および過処理による表面損傷を確認する。
コロナ処理 薄物や表面処理用途で使用できる場合がある。 立体部品では均一処理が難しい。
フレーム処理 表面活性化に使用できる場合がある。 熱劣化、変色および局所過熱を避ける。
プライマー処理 接着剤および塗料との密着性改善に有効である。 使用温度、溶剤、硬化条件および長期耐久性を確認する。

寸法精度・設計特性

  • PAIは高温下の耐クリープ性に優れるが、短時間の引張強さをそのまま設計許容応力として使用してはならない。
  • 長時間荷重部品では、使用温度、応力、時間および吸湿状態に対応したクリープデータを使用する。
  • 未強化PAIでも吸湿による寸法変化があるため、精密部品では絶乾状態、標準状態および使用湿度で寸法を確認する。
  • GF・CF強化品は流動方向と流動直角方向で収縮率、弾性率および線膨張係数が異なる。
  • 肉厚急変、鋭角、ノッチ、ウェルド、金属インサート端部および圧入部では応力集中を避ける。
  • 後硬化前後で寸法が変化するため、最終仕上げ加工の工程順序を検討する。
  • ねじ締結では金属と同じ締付トルクを使用せず、座面圧、ねじ谷応力および高温応力緩和を考慮する。

品質・成形不良

不良 材料側の要因 成形条件側の要因 主な対策
シルバーストリーク 吸湿、残留溶剤、揮発分 乾燥不足、過度なせん断、滞留 乾燥条件、水分、ホッパー管理および樹脂温度を確認する。
加水分解 吸湿、残留水分 高温での湿潤状態、乾燥不足 十分な乾燥、再吸湿防止および滞留時間短縮を行う。
ガス焼け 熱分解、揮発分 高速射出、ベント不足、長時間滞留 ベント改善、射出速度調整、樹脂温度低減および滞留短縮を行う。
黒点・変色 劣化樹脂、異物、炭化物 局所過熱、長時間滞留、清掃不足 シリンダー清掃、デッドスポット対策、温度管理および適切なパージを行う。
充填不足 高溶融粘度 金型温度不足、樹脂温度不足、ゲート不足 金型温度、樹脂温度、射出圧力、ゲートおよび肉厚を見直す。
フローマーク・ジェッティング 高粘度、急冷 ゲート位置不適、射出速度不適 ゲート形状、金型温度および多段射出を最適化する。
ウェルドライン 高粘度、繊維配向 低金型温度、ベント不足、流動末端 金型温度、ゲート位置、ベントおよび局部肉厚を改善する。
ヒケ・ボイド 揮発分、厚肉 保圧不足、冷却不均一、乾燥不足 乾燥、肉厚、保圧、ゲートシール時間および後硬化昇温を見直す。
反り 繊維配向、収縮異方性 冷却不均一、ゲート偏り、保圧不均一 ゲート、肉厚、冷却、繊維配向および後硬化治具を最適化する。
離型不良 高剛性、表面摩擦 抜き勾配不足、過大保圧、金型表面不良 抜き勾配、磨き、エジェクタ配置および保圧を調整する。
バリ 高い成形圧力 型締不足、金型摩耗、過大保圧 型締力、金型合わせ面、射出圧力および保圧を確認する。
繊維浮き GF・CF配合 低金型温度、高せん断、流動不良 金型温度、射出速度、ゲートおよび表面処理を調整する。
層間剥離 異物、混合不良、吸湿 低金型温度、樹脂温度不適、汚染 材料管理、乾燥、パージおよび成形温度を確認する。
プレートアウト 添加剤、低分子成分 金型温度不適、長時間連続成形 材料ロット、金型清掃、温度条件および添加剤処方を確認する。
金型腐食 分解生成物、残留酸性成分 高温滞留、ベント不良 耐食鋼、表面処理、ベントおよび停機時清掃を検討する。
ダイスウェル・メルトフラクチャー 高溶融粘度、弾性回復 高せん断速度、ダイ設計不適 押出速度、温度、ダイランドおよび流路形状を最適化する。

注意点・劣化および故障モード

劣化現象 主な原因 発生しやすい条件 外観・性能への影響 予防策 推奨確認試験
熱酸化劣化 酸素存在下の長期高温 連続高温、薄肉、高表面積 変色、脆化、強度低下、質量減少 使用温度低減、酸素遮断、十分な後硬化 熱老化試験、質量変化、引張保持率
吸湿 極性基への水分吸着 高湿度、水中浸漬、薄肉 寸法変化、弾性率低下、絶縁性低下 乾燥保管、防湿包装、使用状態での寸法設計 吸水試験、寸法変化、電気特性測定
加水分解 水と高温による結合切断 熱水、蒸気、酸、アルカリ 強度低下、脆化、割れ、表面荒れ 温度低減、接触時間短縮、代替材料検討 熱水浸漬、蒸気反復、引張保持率
膨潤・軟化 強極性溶剤の吸収 NMP、DMAc、DMF、ケトン、エステル 質量増加、寸法変化、硬度低下 溶剤変更、接触時間短縮、表面保護 実薬品浸漬、質量・寸法・硬度測定
環境応力割れ 残留応力と薬品の複合作用 圧入、ねじ締結、鋭角、溶剤洗浄 微細クラック、急速破壊、漏れ 応力低減、角R、アニール、薬品変更 定ひずみESC試験、実部品薬品試験
クリープ破壊 長時間の静的荷重 高温、応力集中、高締付荷重 永久変形、締結力低下、破断 設計応力低減、形状改善、強化グレード 温度別クリープ試験、応力緩和試験
疲労破壊 繰返し応力、振動、熱サイクル ギア、バルブ、振動部品 亀裂進展、歯欠け、破断 応力集中低減、表面傷防止、安全率設定 S-N試験、実部品耐久試験
摩耗粉発生 相手材との摩擦、表面粗さ 無潤滑、高速、高荷重、芯ずれ 寸法減少、発塵、相手材損傷 摺動グレード、潤滑、相手材仕上げ改善 摩耗試験、摩擦係数、発塵評価
アウトガス 残留溶剤、水分、低分子成分 真空、高温、後硬化不足 真空汚染、膜付着、質量減少 十分な後硬化、真空ベーク、低アウトガスグレード TML、CVCM、GC-MS、真空アウトガス試験
紫外線劣化 紫外線と酸素 屋外、強い紫外線、高温 変色、光沢低下、表面脆化 耐候グレード、黒色化、塗装、遮光 キセノンアーク、UV促進耐候試験
放射線劣化 高線量放射線による架橋・分解 電子線、γ線、原子力用途 脆化、変色、弾性率変化 線量管理、実照射評価、代替材料検討 照射後引張、色差、質量変化
金属腐食・電食 吸湿、塩分、導電フィラー、異種金属 海水、塩水、金属インサート 金属腐食、接触抵抗増加、界面剥離 絶縁設計、シール、防食処理、材料組合せ確認 塩水噴霧、電食試験、界面観察
トラッキング 表面汚染、湿気、電界 高湿度、導電性汚染物、沿面距離不足 炭化導電路、絶縁破壊 沿面距離確保、表面清浄、CTI確認 耐トラッキング試験、湿熱通電試験
食品・薬液への溶出 残留溶剤、添加剤、低分子成分 高温接触、油脂、強溶剤 汚染、臭気、規制不適合 適合グレード、十分な後硬化、洗浄 総移行量、特定移行量、溶出試験
滅菌劣化 蒸気、薬液、放射線の反復 オートクレーブ、過酸化水素、γ線 変色、強度低下、寸法変化 滅菌方式選定、反復回数管理 滅菌反復後の物性・寸法試験
推奨確認試験
  • 実使用薬品の濃度、温度および接触時間を再現した実薬品浸漬試験。
  • 圧入、ねじ締結、曲げまたは定ひずみを付与した環境応力割れ試験。
  • 23℃・50%RH、高温高湿および水中浸漬後の寸法変化、弾性率および絶縁抵抗測定。
  • 使用上限温度および想定寿命を含む熱老化試験。
  • 熱水、沸騰水および蒸気滅菌条件を含む加水分解試験。
  • 実使用温度、応力および時間による引張・圧縮クリープ試験。
  • 相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度および潤滑条件を合わせた摩耗試験。
  • 高温・低温を含むヒートサイクル試験および熱衝撃試験。
  • 真空用途ではTML、CVCM、GC-MSなどによるアウトガス試験。
  • 電気用途では吸湿前後の絶縁破壊、体積抵抗率、誘電率、誘電正接および耐トラッキング試験。
  • 食品・医療用途では溶出、生体適合性、洗浄および滅菌耐久試験。
  • 量産前に実機、実金型および実部品形状を用いた成形試験。

法規制・認証

法規制・認証 一般的な位置付け 確認事項
RoHS 対応可能なグレードが存在する 樹脂本体だけでなく、顔料、充填材、潤滑材および不純物を含む個別グレードの証明書を確認する。
REACH・SVHC 個別確認 最新版候補リスト、残留モノマー、溶剤および添加剤を確認する。
ELV 自動車用途グレードで個別確認 鉛、水銀、カドミウム、六価クロムおよび添加剤を確認する。
PFAS関連規制 グレード依存 PAI基本骨格はフッ素を必須としないが、PTFE配合摺動グレードおよびフッ素系添加剤は規制動向の影響を受ける可能性がある。
TSCA 米国向け製品で個別確認 化学物質インベントリー、用途制限および輸入条件を確認する。
Proposition 65 個別確認 残留溶剤、添加剤および加工時発生物を含めて確認する。
FDA食品接触 適合グレードが存在する場合がある 食品種、温度、接触時間、繰返し使用および着色を含む個別適合書を確認する。
EU食品接触規則 個別確認 ポジティブリスト、総移行量、特定移行量および添加剤を確認する。
日本の食品衛生法 個別確認 ポジティブリスト制度、使用温度、食品接触条件および製品証明を確認する。
USP Class VI 医療グレードで取得例がある場合がある すべてのPAIに適用される認証ではない。グレード、色および製造拠点を確認する。
ISO 10993 医療用途グレードで個別評価 接触部位、接触時間、滅菌方法および抽出条件を確認する。
UL認証 認証グレードが存在する UL 94、RTI、CTI、厚さ、色、ファイル番号および製造拠点を確認する。
IEC関連規格 電気用途で個別確認 グローワイヤ、CTI、絶縁破壊および用途規格を確認する。
自動車材料規格 個別仕様対応 OEM規格、燃料、油、熱老化、低温および耐久条件を確認する。
鉄道車両用燃焼規格 個別確認 燃焼、発煙、毒性および用途別規格を確認する。
航空宇宙用途規格 個別仕様対応 難燃、発煙、毒性、アウトガス、ロット管理およびトレーサビリティを確認する。
ハロゲンフリー 標準PAIでは対応可能な場合がある PTFE配合、難燃剤、顔料および規格上のしきい値を確認する。
バイオマス・ISCC PLUS 一般的な市販品では限定的 個別メーカーの原料由来、マスバランス認証および供給状況を確認する。

環境・リサイクル性

項目 内容
樹脂分類 成形用PAIは一般に熱可塑性樹脂として扱われる。コーティング用PAIは塗布後の後硬化により再溶融性が低下する場合がある。
マテリアルリサイクル 理論上は再溶融できるが、高温加工、熱履歴、分子量低下、残留溶剤、異物および充填材の影響が大きい。
再生材利用 工程内端材を限定的に再利用できる場合があるが、混合率、乾燥、熱履歴、機械特性および認証への影響を確認する。
ケミカルリサイクル 一般的な商業プロセスは限定的である。
サーマルリサイクル 窒素を含むため、適切な高温燃焼および排ガス処理設備が必要である。PTFE配合品はフッ素含有物として別途管理が必要である。
識別表示 PAIまたは材料名を個別表示する。
バイオベース 一般的な市販PAIは石油化学由来である。
生分解性 一般に生分解性材料ではない。
コンポスト適合性 一般に適合しない。
ライフサイクル上の特徴 製造時のエネルギー負荷と材料単価は高いが、金属代替、軽量化、長寿命化、無潤滑化および部品交換周期延長により環境負荷を低減できる場合がある。

価格・供給性

項目 評価・内容
相対価格帯 極めて高価格
汎用的な流通性 低い。汎用樹脂や一般エンジニアリング・プラスチックと比較してメーカーおよび流通在庫が限定される。
国内入手性 専門商社、切削素材メーカーおよび高機能樹脂加工会社を通じて入手できるが、形状とグレードにより納期が長い場合がある。
少量購入 板、丸棒および切削端材は比較的少量購入しやすい場合がある。成形用ペレットは最小購入量が大きくなる場合がある。
供給形態 ペレット、粉末、板、丸棒、チューブ、圧縮成形素材、ワニス、溶液および加工部品。
特注色 自然色、褐色または黒色が中心であり、特注色は高温安定性、最小購入量および物性への影響を確認する。
価格変動要因 樹脂グレード、GF・CF・PTFE含有、素材形状、寸法、後硬化、加工量、歩留まり、購入量、為替および地域。

関連キーワード

ポリアミドイミド  PAI  Polyamide-imide  ポリイミドアミド  スーパーエンジニアリング・プラスチック  ポリイミド  ポリエーテルイミド  ポリエーテルエーテルケトン  ポリフェニレンサルファイド  ポリテトラフルオロエチレン  液晶ポリマー  ポリスルホン  芳香族ジアミン  トリメリット酸無水物  GF強化PAI  CF強化PAI  摺動グレード  高温軸受  耐摩耗材料  耐熱塗料  電線エナメル  射出成形  圧縮成形  切削加工  環境応力割れ  加水分解  アウトガス  耐薬品性  SP値  UL 94  RoHS  REACH

タイトルとURLをコピーしました