アクリル樹脂

概要

材料名アクリル樹脂
略記号PMMA
英語名Polymethyl Methacrylate、Methacrylate Resin、Acrylate Resin
日本語名アクリル樹脂、メタクリル樹脂
分類汎用プラスチック、熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、アクリル系樹脂、透明樹脂
化学式(C5H8O2)n
構成単位−CH2−C(CH3)(COOCH3)−
主な種類押出板、キャスト板、射出成形グレード、耐衝撃PMMA、耐熱PMMA、光学グレードPMMA

アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルを主成分として重合して得られる透明性に優れた熱可塑性樹脂である。 代表的な材料はポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、透明プラスチックの中でも特に光学特性、耐候性、表面硬度に優れる。

既存アクリル樹脂ページでも、アクリル樹脂は光学的特性が良く、可視光線をほとんど透過するほど透明性が高く、耐候性、着色性、機械的強度、硬度に優れる材料として整理されている。 一方で、強い衝撃では割れやすく、強アルカリやケトン、エステル、芳香族炭化水素などの有機溶剤には注意が必要である。

ポリカーボネート(PC)と比較すると、PMMAは透明性、耐候性、表面硬度に優れるが、耐衝撃性ではPCが有利である。 ポリスチレン(PS)と比較すると、PMMAは耐候性、透明性、表面硬度に優れる。

特徴

  • 光学的特性が非常に良い
  • 可視光線をほとんど透過するほど透明性が高い
  • 耐候性に優れる
  • 着色が自由に行える
  • 機械的強度が高い
  • 硬度が高く、傷が付きにくい
  • 表面光沢が良い
  • 寸法安定性が良い
  • 電気絶縁性が良い
  • 耐衝撃性は若干低く、強い衝撃を受けると割れやすい
  • 荷重たわみ温度は高くない
  • 弱酸、強酸、弱アルカリ、無機塩類に対しては比較的安定である
  • 強アルカリには侵されやすい
  • ケトン、エステル、芳香族炭化水素などの有機溶剤には溶解しやすい
  • アルコール、エーテル、ガソリンには比較的溶解しにくい
長所
  • 透明性が極めて高い
  • 耐候性に優れる
  • 表面硬度が高い
  • 光沢が良い
  • 着色性が良い
  • 寸法安定性が良い
  • 機械的強度が比較的高い
  • 切削、接着、曲げ加工、研磨加工に対応しやすい
  • 屋外透明部材に適する
短所
  • 耐衝撃性は高くない
  • 強い衝撃で割れやすい
  • 荷重たわみ温度が低い
  • 強アルカリに弱い
  • アセトン、MEK、酢酸エチル、トルエンなどの溶剤に弱い
  • 応力がかかった状態では溶剤クラックが起こりやすい
  • 摩擦や擦れにより表面傷が発生する場合がある
  • 燃焼性があり、難燃性が必要な用途では難燃グレードが必要である
成形加工

アクリル樹脂は、射出成形、押出成形、注型重合、切削加工、熱曲げ加工、接着加工などに対応する。 透明外観が重視されるため、成形時にはシルバー、気泡、ウェルド、内部応力、表面傷の管理が重要である。

加工方法適性主な製品例
射出成形レンズ、透明カバー、表示部品、照明部品、容器
押出成形押出板、シート、パイプ、異形材
注型重合キャスト板、厚板、水槽、看板、光学部材
真空成形透明カバー、ディスプレイ部材、包装カバー
熱曲げ加工看板、ケース、ディスプレイ台、カバー
切削加工透明板加工品、治具、光学部品、試作品
接着加工ケース、展示什器、板材組立品
研磨加工端面仕上げ、透明板、光学部材

構造式

アクリル化学式

アクリル樹脂の代表であるPMMAは、メタクリル酸メチルを重合した高分子である。 主鎖にメチル基とメタクリル酸エステル基を持つため、剛性、透明性、表面硬度、耐候性に優れる。

PMMAは非晶性樹脂であり、結晶による光散乱が少ないため高い透明性を示す。 また、芳香環を持たないため紫外線による黄変が比較的少なく、屋外透明部材として使いやすい。

種類

押出PMMA板
名称押出PMMA板
構成PMMAを押出成形して得られる板材
特徴厚み精度が良く、量産性に優れる
主な用途看板、ディスプレイ、カバー、ケース、加工板
特徴
  • 厚み精度が良い
  • コストを抑えやすい
  • 熱成形しやすい
  • 内部応力が残りやすく、溶剤クラックに注意が必要である
キャストPMMA板
名称キャストPMMA板
構成モノマーを注型重合して得られる板材
特徴光学性、耐溶剤性、加工性に優れる
主な用途水槽、厚板、看板、光学部材、展示什器
特徴
  • 透明性が高い
  • 厚板成形に適する
  • 内部応力が比較的小さい
  • 押出板より溶剤クラックに強い傾向がある
射出成形PMMA
名称射出成形PMMA
構成射出成形用に流動性を調整したPMMAグレード
特徴高透明性と量産成形性を両立する
主な用途レンズ、導光板、照明カバー、車載ランプレンズ、透明部品
特徴
  • 量産成形に適する
  • 透明性と光沢性が高い
  • 光学部品に多用される
  • 成形時の残留応力管理が重要である
耐衝撃PMMA
名称耐衝撃PMMA
構成ゴム成分や改質成分を配合して耐衝撃性を高めたPMMA
特徴通常PMMAより割れにくい
主な用途車載部品、保護カバー、照明部品、屋外部品
特徴
  • 通常PMMAより耐衝撃性が高い
  • 透明性は若干低下する場合がある
  • 屋外透明部品に使いやすい
  • PCほどの耐衝撃性はない
耐熱PMMA
名称耐熱PMMA
構成共重合や分子設計により耐熱性を向上したPMMA
特徴荷重たわみ温度、寸法安定性を改善する
主な用途車載光学部品、照明部品、ディスプレイ部材、レンズ
特徴
  • 標準PMMAより耐熱性が高い
  • 光学特性を維持しやすい
  • 高温環境の透明部品に適する
  • 成形条件の管理が重要である
光学グレードPMMA
名称光学グレードPMMA
構成光学用途向けに不純物、異物、複屈折、黄変を抑えたPMMA
特徴高透過率、低ヘイズ、良好な光学安定性を持つ
主な用途導光板、レンズ、ディスプレイ部材、光学カバー
特徴
  • 光線透過率が高い
  • ヘイズが低い
  • 導光性に優れる
  • 異物管理と成形時の応力管理が重要である

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位標準PMMA耐衝撃PMMA耐熱PMMA光学PMMA
比重なし1.17〜1.201.15〜1.201.17〜1.201.17〜1.20
光線透過率%約92約88〜92約90〜92約92以上
引張強さMPa60〜8045〜7060〜8560〜80
引張弾性率GPa2.8〜3.32.0〜3.03.0〜3.52.8〜3.3
曲げ強さMPa90〜12070〜110100〜13090〜120
アイゾット衝撃強さJ/m15〜3040〜10015〜4015〜30
ロックウェル硬さなしM90〜M100M70〜M95M90〜M105M90〜M100
ガラス転移温度約100〜110約90〜105約110〜120約100〜110
荷重たわみ温度約85〜100約75〜95約100〜115約85〜100
成形収縮率%0.2〜0.80.3〜0.80.2〜0.70.2〜0.6
吸水率%0.2〜0.40.2〜0.40.2〜0.40.2〜0.4

耐薬品性

アクリル樹脂は、弱酸、強酸、弱アルカリ、無機塩類に対しては比較的安定である。 一方で、強アルカリには侵されやすく、ケトン、エステル、芳香族炭化水素などの有機溶剤には溶解しやすい。

薬品・溶剤耐性備考
短期使用では比較的安定である
弱酸比較的安定である
強酸多くの場合で比較的安定であるが、条件確認が必要である
弱アルカリ比較的安定である
強アルカリ×侵されやすく、白化、クラック、劣化に注意が必要である
無機塩類比較的安定である
アルコール○〜△短期では比較的安定だが、応力下ではクラックに注意が必要である
エーテル○〜△条件により影響を受ける場合がある
ガソリン○〜△比較的溶解しにくいが、長時間接触では確認が必要である
アセトン×溶解・白化・クラックが起こりやすい
MEK×溶解しやすい
酢酸エチル×溶解しやすい
トルエン×膨潤または溶解しやすい
キシレン×膨潤または溶解しやすい
塩素系溶剤×膨潤、クラック、溶解に注意が必要である

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

アクリル樹脂はエステル基を持つ極性ポリマーであり、SP値が近いケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤に溶解または膨潤しやすい。 一方、水や無機塩類には溶解しにくい。

材料SP値(δ)特徴
アクリル樹脂(PMMA)約18.6〜19.4 MPa1/2エステル基を持ち、ケトン・エステル・芳香族溶媒に影響を受けやすい
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶媒SP値挙動備考
アセトン約19.9 MPa1/2×(溶解・白化)PMMAに強く影響する代表溶媒である
MEK約19.0 MPa1/2×(溶解)強溶媒である
酢酸エチル約18.6 MPa1/2×(溶解)接着や溶剤加工で使用される場合がある
トルエン約18.2 MPa1/2△〜×(膨潤・溶解)長時間接触で影響が大きい
THF約18.5 MPa1/2×(溶解)強溶媒である
エタノール約26.0 MPa1/2○〜△(条件付き)単独では比較的安定だが、応力下では注意が必要である
約47.9 MPa1/2○(安定)溶解しない
実務上の注意
  • PMMAはアセトン、MEK、酢酸エチル、THFに弱い
  • 透明部品ではわずかな溶剤接触でも白化やクラックが目立ちやすい
  • 応力が残った成形品ではアルコールでもクラックが発生する場合がある
  • 接着加工では専用接着剤や溶剤の選定が重要である
  • 屋外用途では耐候性は高いが、薬品接触条件は別途確認が必要である

製法

アクリル樹脂は、主にメタクリル酸メチル(MMA)を重合して製造される。 製品形態により、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、注型重合などが用いられる。 板材ではキャスト法、成形材料ではペレット化された射出成形グレードが使用される。

PMMA製造1
アセトンシアンヒドリン法

PMMA製造2

エスカンビア法

製法特徴主な製品形態
塊状重合高透明性のPMMAを得やすいキャスト板、光学部材
懸濁重合粒状樹脂を得やすく、成形材料に適するペレット、射出成形材料
乳化重合アクリルエマルションを得る塗料、コーティング、接着剤
注型重合型内で重合して厚板や大型透明部材を得るキャスト板、水槽、看板、光学板
共重合耐熱性、耐衝撃性、流動性などを調整する耐熱PMMA、耐衝撃PMMA、特殊グレード

詳細な利用用途

光学・表示用途
  • 導光板
  • レンズ
  • 液晶ディスプレイ部材
  • 照明カバー
  • 表示窓
  • 透明パネル
建材・屋外用途
  • 看板
  • 屋外サイン
  • 採光板
  • カーポート屋根材
  • 防音壁
  • 透明フェンス
車両・輸送用途
  • 車載ランプレンズ
  • メーターカバー
  • 内装透明部品
  • 航空機窓材
  • 船舶窓材
生活用品・雑貨用途
  • 透明ケース
  • 化粧品容器
  • ディスプレイ台
  • 収納用品
  • 文具
  • 装飾品
工業用途
  • 透明治具
  • 観察窓
  • 保護カバー
  • 水槽
  • 実験器具
  • 加工板材
塗料・コーティング用途
  • アクリル塗料
  • 透明コーティング
  • 保護膜
  • 屋外塗装用樹脂
  • 粘着剤・接着剤用樹脂

関連材料との比較

比較材料PMMAとの違い選定ポイント
PCPCは耐衝撃性が非常に高い。PMMAは透明性、耐候性、表面硬度に優れる耐衝撃性ならPC、高透明・耐候性ならPMMA
PSPSは安価で成形性が良い。PMMAは透明性、耐候性、硬度に優れる低コストならPS、光学品質ならPMMA
ASASは透明性と耐薬品性のバランスが良い。PMMAは透明性と耐候性に優れる透明容器ならAS、屋外透明部品ならPMMA
ABSABSは耐衝撃性と外観性に優れる。PMMAは透明性と耐候性に優れる筐体ならABS、透明外装ならPMMA
PETPETは耐薬品性とガスバリア性に優れる。PMMAは光学特性と耐候性に優れる容器・バリア性ならPET、透明光学部品ならPMMA
PVCPVCは難燃性と耐薬品性に優れる。PMMAは透明性、耐候性、光沢に優れる難燃・建材ならPVC、高透明部品ならPMMA
COCCOCは低吸水・低複屈折に優れる。PMMAは耐候性と汎用性に優れる精密光学ならCOC、屋外透明部品ならPMMA

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
三菱ケミカルアクリペット、アクリライトPMMA成形材料、アクリル板
住友化学スミペックスPMMA板材、成形材料
クラレパラペットPMMA成形材料
旭化成デルペットPMMA成形材料
RöhmPLEXIGLAS世界的なアクリル樹脂ブランド
TrinseoALTUGLASPMMA、アクリル板、成形材料
PlaskoliteOPTIXアクリルシート、透明樹脂板
Chi MeiACRYREXPMMA成形材料
LG MMALUCRYLPMMA成形材料、MMA系材料
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