エチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂

概要

項目内容
材料名エチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂
略記号EMMA
IUPAC2-Propenoic acid, 2-methyl-, methyl ester, polymer with ethene
英語名Ethylene Methyl Methacrylate Copolymer / Ethylene-Methyl Methacrylate Copolymer
日本語名エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-MMA共重合体、EMMA樹脂
分類極性ポリオレフィン系共重合体、熱可塑性樹脂
プラスチック分類一般プラスチック、特殊ポリオレフィン、軟質エチレン系共重合樹脂
化学式又は代表構造-[CH2-CH2]m-[CH2-C(CH3)(COOCH3)]n
CAS No.25101-13-7
構造・主成分エチレン単位とメタクリル酸メチル(MMA)単位からなるランダム共重合体である。MMA含有量及び分子量により、柔軟性、透明性、融解温度、剛性、接着性、フィラー受容性及び流動性が変化する。
主な用途フィルム、押出ラミネート、電線被覆、樹脂改質、フィラー高充填コンパウンド、ホットメルト接着剤、柔軟成形品

エチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂(EMMA)は、エチレンとメタクリル酸メチル(MMA)を高圧ラジカル共重合して得られる極性ポリオレフィンである。ポリエチレン主鎖にメタクリレートエステル側鎖を導入することで、LDPEに近い加工性を保ちながら、柔軟性、透明性、低温特性、極性、接着性及びフィラー受容性を付与できる。

国内では住友化学のアクリフトが代表例であり、MMA含有量5.8~32質量%、MFR 0.25~450 g/10minの広いグレード展開が公開されている。フィルム、押出ラミネート、電線被覆、樹脂改質及びホットメルト接着剤など、分子量とMMA含有量を使い分ける用途設計が中心である。

EMMAは高柔軟・高伸び材料である一方、剛性、耐熱荷重、耐溶剤、耐燃料及び長期クリープは限定的である。実使用では、グレード、MMA含有量、MFR、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、成形履歴及び法規制を確認する必要がある。

特徴

項目内容
長所高い柔軟性、低温特性、透明性、極性基材への親和性、フィラー受容性、低臭気及び高温加工時の熱安定性を得やすい。EVAと比較して酢酸を発生しないため、加工設備及び金属に対する腐食リスクを抑えやすい。
短所剛性、荷重下耐熱性、耐クリープ性及び耐摩耗性は硬質エンプラより低い。芳香族炭化水素、塩素系溶剤、エステル、ケトン及び燃料では膨潤・軟化しやすい。
外観一般に乳白色ペレットであり、薄肉フィルムでは透明又は半透明となる。透明性はMMA含有量、結晶性、厚さ、添加剤及び成形履歴に依存する。
耐熱性軟質エチレン系共重合体としては熱安定性が良いが、融解温度は概ね60~110℃、ビカット軟化温度はグレードにより25℃未満~85℃程度であり、荷重下の高温構造用途には適さない。
耐薬品性水、塩水、希酸、希アルカリ及び一部アルコールには比較的安定である。一方、炭化水素、燃料、ケトン、エステル及びハロゲン化溶剤では膨潤、軟化、抽出及び応力割れに注意が必要である。
加工性LDPEに近い押出・フィルム加工が可能である。MFRが広く設定され、フィルム、ラミネート、電線被覆、ホットメルト用途に対応する。高MMA・高MFRグレードでは粘着、ブロッキング及び熱履歴に注意する。
分類上の注意EMMAはエチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)ではなく、酸基を持たないメタクリル酸メチルエステル共重合体である。また、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)とも側鎖のメチル置換位置が異なる。

構造式

エチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂 EMMAの代表構造式

項目内容
代表的な構造単位エチレン単位:-CH2-CH2-、MMA単位:-CH2-C(CH3)(COOCH3)-
モノマーエチレン CH2=CH2、メタクリル酸メチル CH2=C(CH3)COOCH3
共重合形態一般に統計的又はランダム状の共重合体であり、m、n、配列及び分岐構造は反応条件とグレードにより異なる。
組成の影響MMA含有量が増えると一般に密度、極性、柔軟性、透明性、接着性及びフィラー親和性が増し、結晶性、融点、剛性及び耐溶剤性は低下する傾向がある。
名称上の注意EMMAはエチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)とは異なる。

種類・代表グレード

種類・グレード区分主成分又は特徴長所短所主な用途
低MMA・高強度グレードMMA約5~10質量%、低~中MFRPEに近い強度、良好な低温性、低腐食性極性・柔軟性は高MMA品より小さいフィルム、押出成形、樹脂改質
中MMA・フィルムグレードMMA約10~20質量%、MFR約2~20柔軟性、透明性、シール性、低臭気耐溶剤性、耐クリープに制約フィルム、シルク調フィルム、押出ラミネート
高MMA・柔軟グレードMMA約20~25質量%高柔軟性、相溶化、フィラー受容性融点・ビカット・剛性が低下樹脂改質、柔軟コンパウンド
電線被覆グレード高分子量・低MFR、機械強度重視押出安定性、柔軟性、低温特性高温荷重、難燃性は専用設計が必要電線・ケーブル被覆
ホットメルトグレードMMA約28~32質量%、非常に高いMFR低溶融粘度、接着性、低臭気耐熱クリープ、耐溶剤性、ブロッキングホットメルト接着剤、接着改質
難燃・高充填コンパウンド難燃剤又は無機フィラーを高充填フィラー分散性、柔軟性、加工性比重上昇、伸び・透明性低下、規制確認電線、建材、機能性コンパウンド
食品接触・医療管理グレード用途別に原料・添加剤・変更管理を限定低臭気、低抽出を狙える材料群全体の適合ではなく個別証明が必要包装、医療補助部材

成形加工

加工方法適性理由・主な注意点
射出成形高MFRグレードで可能である。軟質で離型・変形に注意する。
押出成形フィルム、シート、被覆、プロファイルに適する。LDPE系設備との親和性が高い。
ブロー成形高溶融強度グレードが必要であり、一般グレードでは肉厚安定性を確認する。
インフレーション成形フィルム用途の主要加工法である。ブロッキング、ネックイン、冷却条件を管理する。
Tダイフィルム成形透明・柔軟フィルム、ラミネート基材に適する。
真空成形・圧空成形シート化できるが、低剛性、熱たわみ及び寸法変化に注意する。
圧縮成形試験片、シート、特殊成形に可能であるが量産の主流ではない。
回転成形専用粉末及び溶融・焼結設計が必要である。
発泡成形架橋・発泡剤・セル制御により可能である。
3Dプリント一般的な市販フィラメントは少なく、専用配合と供給安定性が必要である。
切削加工軟質で発熱、変形、バリが出やすい。低速・鋭利工具・支持治具が必要である。
溶着熱板、熱風、高周波等が可能な場合がある。厚さ、極性及び添加剤で条件が変わる。
接着PEより接着しやすいが、基材と接着剤によりコロナ・プラズマ処理が有効である。
印刷・塗装表面処理で改善する。滑剤、ブリード、表面エネルギーを確認する。
成形条件の一般的な目安
項目代表値又は範囲単位注意点
予備乾燥通常不要低吸水材料であるが、結露、保管不良、再生材、吸湿添加剤を含む場合は乾燥する。
推奨乾燥温度40~60必要時の一般的目安。ホットメルト・高MMA品はブロッキングを避ける。
推奨乾燥時間2~4h乾燥機、ペレット温度及び含水状態により調整する。
シリンダー温度・供給部140~170低MFR品では高め、高MFR品では低めから設定する。
シリンダー温度・圧縮部160~200熱履歴と混練を管理する。
シリンダー温度・計量部170~220グレード及び加工法に依存する一般目安。
ノズル・ダイ温度170~220滞留、焦げ、低分子揮発、糸引きを確認する。
樹脂温度170~230住友化学公表品は190℃MFR測定例。実加工は個別資料を優先。
金型温度20~50離型、表面、収縮及びサイクルを調整する。
成形収縮率1.5~3.0%形状、MMA含有量、冷却、流動方向及び充填材に依存する参考範囲。
滞留時間短く管理長時間滞留、局所過熱、酸化による臭気・変色・ゲルを避ける。
パージLDPE又は指定材高MMA・接着グレードは残留しやすいため十分に置換する。

成形条件は材料群の一般的な目安であり、特定グレードの保証条件ではない。メーカー技術資料、成形機、スクリュー形状、ダイ形状、製品肉厚、再生材比率及び要求外観に合わせて調整する。

接合・表面処理適性
方法適性要点
熱板・熱風溶着溶融温度が比較的低く、同種材及びPE系材料との接合に適する。
超音波溶着軟質で振動減衰が大きく、エネルギーダイレクター設計が重要である。
高周波溶着極性を持つためPEより適用しやすいグレードがある。周波数、厚さ及び発熱を確認する。
レーザー溶着透過・吸収材の組合せと顔料設計が必要である。
接着剤接合ウレタン、アクリル、ホットメルト等を検討できる。表面処理と可塑成分移行を確認する。
コロナ・プラズマ処理濡れ性、印刷性及び接着性を改善できる。処理後の経時低下を考慮する。
機械締結クリープ及び締結部の座屈に注意し、座金、低締付トルク及び広い面圧分散を用いる。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は非強化・無充填EMMAの公開グレード群を中心に整理した代表範囲である。単一グレードの保証値ではない。ホットメルト用の極端な高MFR品を含むため、比較機能ではグレード区分を併記する必要がある。

項目単位代表値下限値上限値試験規格材料状態・条件備考
密度g/cm³0.920.95JIS K 711225℃、非強化MMA含有量の増加に伴い上昇する傾向。信頼度A
比重無次元0.920.95代表値23℃、非強化密度とほぼ同じ数値。
吸水率・24時間%データなしデータなし23℃水中一般に低吸水であるが、共通化可能な公開値は限定的。
MFRg/10min0.25450JIS K 7210-1190℃、21.2 Nグレード設計幅が非常に広い。
引張強さ・破断MPa225JIS K 7113標準状態、非強化ホットメルト用高MFR品を含む範囲。用途比較ではグレード区分が必要。
引張破断伸び%320750JIS K 7113標準状態、非強化一般グレード・フィルムグレードは700%以上の例が多い。
曲げ剛性率MPa688ASTM D74723℃、非強化曲げ弾性率とは試験法が異なるため混同しない。
デュロメーター硬さShore A65100JIS K 721523℃高硬度品ではShore Dを併記する。
デュロメーター硬さShore D1748JIS K 721523℃MMA含有量及び結晶性で変化する。
ビカット軟化温度25未満85JIS K 7206荷重条件は原資料参照ホットメルト品は25℃未満。
融解温度63110JIS K 7121DSC、グレード依存二峰性を示すグレード例がある。
脆化温度-75未満-46JIS K 7216非強化一般・フィルム・電線被覆グレードは-75℃未満の例。
環境応力亀裂抵抗h1未満300超ASTM D169310% Igepal CO-630、定ひずみMMA含有量、分子量及び流動性で大きく変化する。
体積抵抗率Ω・cmデータなしデータなし乾燥状態非充填材は一般に絶縁性を示すが、公表共通値は確認困難。
UL 94燃焼性等級HB相当傾向専用難燃品UL 94厚さ・色・添加剤依存材料群全体の認証等級ではない。個別UL Yellow Cardを確認する。
比較用評価スコア
評価項目スコア評価理由
引張強度2軟質材料であり、硬質汎用樹脂及びエンプラより低い。
剛性1曲げ剛性率6~88 MPa程度で、柔軟性を重視する。
衝撃強度5低温でも脆化しにくく、高い伸びを保持しやすい。
耐熱性2加工熱安定性は良いが、軟化温度と荷重下耐熱は高くない。
低温特性5一般グレードでは脆化温度-75℃未満の例がある。
耐薬品性3水・希酸・希アルカリには比較的良いが、有機溶剤・燃料で膨潤する。
耐候性3安定剤、顔料及び厚さに依存し、屋外では耐候グレードが必要である。
耐加水分解性4主鎖はポリオレフィンであるが、高温強アルカリではエステル基のけん化に注意する。
寸法安定性2熱膨張、収縮及びクリープが大きい。
低吸水性5一般に低吸水であり、吸湿寸法変化は小さい。
摺動性2軟質で摩擦・摩耗・発熱が大きくなり得る。
電気絶縁性4非充填材は一般に良好だが、難燃剤・導電フィラーで変化する。
難燃性1基材単独は燃焼しやすく、難燃用途は専用コンパウンドが必要である。
透明性4薄肉で高い透明性を得やすいが、PMMAほどの光学剛性はない。
成形加工性5LDPEに近い設備・条件で押出、フィルム、ラミネート加工しやすい。
接着性4PEより極性が高く、ラミネート・改質・ホットメルト用途に有利である。
リサイクル性4熱可塑性で再溶融できるが、多層・架橋・高充填では制約がある。
価格優位性3PEより高価であるが、高機能エラストマーより低い場合がある。

耐薬品性

以下は非強化EMMAの一般的な傾向である。実際の耐薬品性はMMA含有量、分子量、結晶性、添加剤、温度、濃度、接触時間、浸漬又は飛沫、残留応力及び荷重により大きく変化する。

薬品名濃度温度接触条件評価主な劣化形態備考
100%23℃長期浸漬、無応力影響は一般に小さい添加剤抽出、白化、寸法変化を長期確認する。
温水100%60~80℃長期浸漬軟化、クリープ融点・軟化温度に近づくほど荷重変形が増える。
塩水・海水3.5%前後23℃長期浸漬影響は小さい金属との複合部品では界面腐食を確認する。
塩酸10%以下23℃短~中期浸漬表面変化、添加剤抽出高温・高濃度では実液評価が必要。
硫酸10%以下23℃短期浸漬酸化・脆化の可能性濃硫酸、高温では不適となり得る。
酢酸10%以下23℃短期接触膨潤、臭気吸着濃度・温度上昇で評価を厳しくする。
水酸化ナトリウム10%以下23℃短~中期浸漬エステル基のけん化は高温・高濃度で注意強アルカリ熱水は避ける。
エタノール100%23℃短期接触軽微な膨潤、添加剤抽出長期・応力下は確認する。
IPA100%23℃短期接触軽微な膨潤高温及び残留応力下で確認する。
グリセリン100%23℃長期接触影響は比較的小さい高温では軟化を確認する。
MMB100%23℃短期接触膨潤・軟化実液浸漬と寸法・質量変化を測定する。
ヘキサン100%23℃短期接触膨潤、強度低下長期燃料接触には専用材料を選定する。
トルエン100%23℃短期接触×著しい膨潤・軟化応力下では割れ・変形が進みやすい。
アセトン100%23℃短期接触膨潤、白化、表面軟化MMA含有量の高いグレードほど相互作用が強まる可能性。
酢酸エチル100%23℃短期接触×膨潤・溶解傾向接着剤溶剤との接触を避ける。
ジクロロメタン100%23℃短期接触×急速な膨潤・軟化換気・安全面も含め使用回避が基本。
ガソリン市販燃料23℃浸漬×膨潤、透過、物性低下燃料系恒久部品には不向き。
鉱物油・潤滑油100%23℃長期接触油種により膨潤高温油、添加剤入り油は実液確認する。
次亜塩素酸Na200~1000 ppm23℃短期~反復酸化、変色高濃度、高温、紫外線併用で劣化加速。
SP値(溶解度パラメータ)

EMMAのSP値はMMA含有量により変動し、代表的には約18~20 MPa1/2程度と推定される。比較用の暫定代表値として18.9 MPa1/2を用いるが、これは特定グレードの実測保証値ではなく、PE成分とPMMA成分の組成依存性を考慮した参考値である。

SP値だけでは耐薬品性を決定できない。結晶性、分子サイズ、拡散速度、温度、応力、酸化、けん化、添加剤抽出及び相分離を併せて評価する必要がある。

溶解性の目安
SP値差 Δδ溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい×
2~5条件により膨潤する
5~8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤SP値 MPa1/2EMMAとの差評価注意点
n-ヘキサン14.9約4.0非極性成分との親和性があり膨潤に注意。
トルエン18.2約0.7×SP値が近く、芳香族溶剤として強い膨潤が予想される。
酢酸エチル18.6約0.3×エステル基との相互作用もあり不適となりやすい。
アセトン19.9約1.0×~△短時間でも軟化又は白化を確認する。
メタノール29.7約10.8◎~○SP差は大きいが小分子・極性・添加剤抽出を別途考慮。
エタノール26.0約7.1短時間では比較的安定な傾向。
IPA23.5約4.6△~○温度・時間・応力により評価が変わる。
47.9約29.0SP差は大きく、低吸水傾向。ただし熱水軟化は別問題。

評価基準は◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。SP差が大きくても、低分子溶剤による添加剤抽出、界面への浸透、残留応力下のクレージング又は高温軟化が生じ得るため、実液試験を優先する。

製法

エチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂 EMMAの製造工程

工程内容管理上の要点
原料エチレン、メタクリル酸メチル、ラジカル開始剤及び必要により連鎖移動剤を用いる。MMAの純度、禁止剤、酸素、水分及び不純物を管理する。
高圧供給・混合エチレンを高圧圧縮し、MMAと所定比率で供給する。圧力、温度、流量及び組成がMMA含有量、分子量、分岐及び反応安定性に影響する。
ラジカル共重合管型又は槽型反応器で高圧ラジカル共重合する。局所過熱、暴走、壁面付着及び分子量分布を制御する。
分離・回収未反応エチレン及びMMAを分離・回収し、溶融ポリマーを得る。残留モノマー、臭気、VOC及び回収系の安全性を管理する。
安定化・コンパウンド酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃剤又はフィラーを必要に応じて配合する。添加剤は透明性、接着性、食品接触、電気特性及びリサイクル性に影響する。
造粒・品質管理押出造粒し、MMA含有量、MFR、密度、強度、融解温度、臭気及び異物を確認する。高MFR品はペレットブロッキング、移送及び保管温度に注意する。

代表反応式は、m CH2=CH2 + n CH2=C(CH3)COOCH3 → -[CH2-CH2]m-[CH2-C(CH3)(COOCH3)]n-で表される。実際の重合配列はランダム状であり、反応条件、転化率及び原料供給方式により変化する。

詳細な利用用途

用途適性選定理由注意点
フィルム・包装柔軟性、透明性、低温性、ヒートシール性を利用できる。ブロッキング、滑り、食品接触適合、溶出及び多層剥離を確認する。
押出ラミネート紙、アルミ箔、樹脂フィルムへの接着・被覆に適する。基材表面処理、ネックイン、熱収縮、臭気及び長期接着を確認する。
電線・ケーブル被覆柔軟性、低温性及び電気絶縁性を利用できる。難燃、耐油、耐熱、耐摩耗及び規格は専用グレードで評価する。
樹脂改質・相溶化PE、フィラー、極性樹脂との界面を調整できる。相溶性、相分離、機械物性及び再加工時の熱履歴を確認する。
ホットメルト接着剤高MFR、高MMA品は低粘度と接着性を持つ。耐熱クリープ、オープンタイム、臭気、溶出及び基材適合を確認する。
自動車内装柔軟表皮、制振、改質及び接着層に使用可能である。VOC、フォギング、耐候、耐熱、難燃及び臭気規格を確認する。
自動車燃料系×柔軟性はあるが燃料で膨潤・透過しやすい。恒久燃料接触にはフッ素樹脂、PA系バリア等を検討する。
電気・電子筐体柔軟カバー、グロメット、封止補助材には可能である。剛性、難燃、CTI、熱変形及び寸法安定性に制約がある。
機械部品・ギア×低剛性・高クリープで精密荷重部品には不向きである。POM、PA、PBT等を優先する。
食品機械部品適合グレードで柔軟カバー、シール補助材に検討できる。食品衛生法、洗浄薬品、油、温水、摩耗及び溶出を確認する。
医療機器部品医療管理グレードで柔軟部材・接着層に可能性がある。ISO 10993、USP Class VI、滅菌、抽出物、変更管理を個別確認する。
建築・設備防水、柔軟シート、電線、接着・改質用途に適する。屋外耐候、難燃、熱収縮、施工温度及び長期クリープを確認する。
寸法精度・設計上の注意
設計項目実務上の注意
成形収縮・反り軟質・半結晶性材料で収縮が比較的大きい。肉厚差、冷却差、流動配向及び多層構成で反りが生じる。
熱膨張金属、ガラス及び硬質樹脂との熱膨張差が大きい。接着層・封止層では熱サイクルによる界面応力を確認する。
クリープ常温でも荷重時間と温度により変形が進行する。短時間引張強さを設計許容応力として使用しない。
締結・圧入局部面圧で座屈・応力緩和が起こる。広い座面、低締付トルク、インサート又は機械的抜け止めを検討する。
ウェルド・ノッチ高い延性を持つが、低温、溶剤、酸化劣化及び表面傷で破壊起点となる。実部品で確認する。
品質・成形不良
不良主な原因主な対策
ブロッキング高MMA、高温保管、過度な平滑面、アンチブロッキング不足保管温度管理、巻取張力低減、アンチブロッキング剤及び表面粗さ調整
ゲル・黒点長時間滞留、局所過熱、酸化、異物、パージ不足温度低減、デッドスポット除去、滞留短縮、適切なパージと濾過
変色・臭気過熱、酸化、残留モノマー、添加剤分解樹脂温度・滞留管理、換気、乾燥保管、安定剤・原料管理
フィッシュアイ未溶融物、ゲル、異物、相溶不良メッシュ交換、混練改善、原料清浄化、温度プロファイル調整
ネックイン・厚みむら溶融張力不足、ダイ温度・引取条件不均一低MFR又は高溶融強度グレード、ダイギャップ、冷却及び引取速度調整
接着不足基材汚染、表面エネルギー不足、温度不足、過剰滑剤コロナ処理、基材清掃、溶融温度・圧力・ニップ条件最適化
反り・収縮冷却不均一、残留応力、肉厚差均一冷却、金型温度・保圧調整、形状及び肉厚の均一化
注意点・劣化故障モード
劣化現象主な原因発生しやすい条件影響予防策推奨確認試験
熱酸化劣化酸素、熱、長時間滞留高温加工、屋外高温、薄肉黄変、臭気、ゲル、強度低下安定剤、滞留短縮、温度管理熱老化、MFR、色差、引張保持率
膨潤・軟化溶剤・燃料の吸収芳香族、エステル、塩素系溶剤、燃料寸法増加、剛性低下、接着剥離耐薬品グレード又はバリア層の選定実液浸漬、質量・体積・引張変化
環境応力割れ薬品と残留・外部応力曲げ、圧入、溶着端部、界面活性剤亀裂、白化、破断応力低減、R形状、成形条件改善応力負荷下ESC試験
クリープ破壊低弾性率、温度、長期荷重締結、吊下げ、シール圧縮変形、緩み、漏れ面圧分散、安全率、補強材温度別クリープ試験
紫外線劣化UV、酸素、熱屋外、透明・無着色品黄変、表面亀裂、脆化UV安定剤、顔料、遮光層キセノンアーク促進耐候
添加剤ブリード・抽出滑剤、低分子添加剤、溶剤・油高温、長期接触、食品・医療用途接着・印刷低下、汚染、溶出低抽出処方、用途適合グレード抽出物・溶出、表面分析
アウトガス残留モノマー、低分子、添加剤高温、真空、密閉電子部品曇り、汚染、臭気低VOCグレード、真空乾燥TDS、GC-MS、TML/CVCM
推奨確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実液濃度、23℃及び最高使用温度、24時間・168時間・1000時間を基準に、質量、寸法、硬さ、引張及び外観を評価する。
  • 環境応力割れ試験:実部品相当の残留応力又は曲げひずみを与え、洗浄剤、油、燃料及び界面活性剤への反復接触を確認する。
  • 熱老化・高温高湿・熱サイクル試験:接着層、多層フィルム、金属複合部品では界面剥離、収縮及びクリープを確認する。
  • 実成形試験:ブロッキング、ネックイン、厚みむら、臭気、ゲル、ダイ付着及びパージ性を量産設備で確認する。
  • 食品・医療・電子用途:用途別の溶出、抽出物、アウトガス、滅菌耐久及び規制証明を個別グレードで確認する。

関連材料との比較

比較材料特徴EMMAとの違い
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)柔軟性、透明性、発泡性、ヒートシール性及び広い用途実績を持つ。EMMAは高温加工時に酢酸を発生せず、低腐食・低臭気・熱安定性で有利な場合がある。EVAは供給性、発泡及び接着剤用途が広い。
エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)柔軟性、耐熱分解性、フィラー受容性に優れる極性ポリオレフィン。EMMAはα-メチル置換により側鎖構造と立体障害が異なり、剛性、透明性、融点及び相溶性のバランスが異なる。
エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)カルボキシ基による金属・極性基材への高い接着性を持つ。EAAは酸性官能基を持つため接着性が高いが、腐食・イオン反応に注意する。EMMAは非酸性で低腐食である。
アイオノマー酸共重合体を金属イオンで中和し、強靭性、耐摩耗、透明性を高めた材料。アイオノマーはイオン架橋による高強度・高反発を示す。EMMAはより柔軟で低温加工・ホットメルトに適する。
ポリエチレン(PE)低価格、低吸水、耐薬品性、電気絶縁性及び流通性に優れる。EMMAはPEより極性、接着性、透明性及びフィラー受容性に優れるが、耐溶剤、剛性及び価格ではPEが有利である。
アクリル樹脂(PMMA)高透明、高剛性、耐候性に優れる硬質非晶性樹脂。EMMAはPMMAより大幅に柔軟で低温衝撃性と押出加工性に優れる。PMMAは光学透明性、硬度及び寸法安定性に優れる。
熱可塑性エラストマー(TPE)ゴム弾性と熱可塑加工性を両立する材料群。TPEは圧縮永久ひずみ、耐油、耐摩耗で有利な種類がある。EMMAはフィルム、ラミネート、相溶化及び高充填用途に強い。
ポリプロピレン(PP)低密度、高剛性、高融点及び耐薬品性に優れる。EMMAは低温柔軟性と接着性に優れる。PPは耐熱、剛性、耐クリープ及び低コストで有利である。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
住友化学株式会社アクリフト、ACRYFTエチレン・メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)として世界で初めて商業生産したと公表する代表メーカーである。一般、フィルム、ラミネート、電線被覆及びホットメルト接着剤用のグレードを展開する。

EMMAは一般的なEMA、EEA又はEVAと混同されやすく、メーカー名・ブランド名だけで化学組成を判断しない。調達時はSDS、技術資料及びCAS No.を確認する。

法規制・認証
項目一般的な扱い確認事項
RoHS・REACH対応可能なグレードが存在する。添加剤、色、難燃剤、SVHC、製造拠点及び最新版証明書を確認する。
日本の食品衛生法・ポジティブリスト食品接触用途向けグレードで適合可能性がある。使用温度、食品区分、接触時間、添加剤及び多層構成を含め個別確認する。
FDA・EU食品接触適合グレードが存在する場合がある。21 CFR又はEU規則の適用条項、使用条件及び移行試験を確認する。
UL 94・電気規格難燃コンパウンド又は認証グレードで対応する。厚さ、色、難燃剤、Yellow Card、RTI、CTI及びGWFIを個別確認する。
医療・ISO 10993・USP Class VI材料群全体の適合ではない。医療管理グレード、変更管理、滅菌法、抽出物及び生体適合性データを確認する。
PFAS関連規制EMMA主鎖自体はフッ素を含まない。加工助剤、難燃剤、表面処理剤及び添加剤由来の意図的PFAS含有を個別確認する。
環境・リサイクル性及び供給性
項目評価概要
熱可塑性該当再溶融・再成形が可能である。
マテリアルリサイクル単一材・清浄スクラップでは可能であるが、MFR上昇、臭気、ゲル及び異物を管理する。
多層材リサイクル異種樹脂、アルミ、紙及び接着層を含むと分離が困難である。
生分解性なし通常のEMMAは生分解性樹脂ではない。
バイオベースグレード依存バイオ由来原料又はマスバランス認証品の有無はメーカー確認が必要である。
価格区分中価格~比較的高価格PEより高価であり、MMA含有量、MFR、用途認証及び購入量で変動する。
国内入手性代表メーカーから供給されるが、一般PEほど流通在庫は広くない。
供給形態ペレットフィルム、シート、コンパウンド又はホットメルト原料として流通する。

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エチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂  EMMA  Ethylene Methyl Methacrylate Copolymer  メタクリル酸メチル  エチレン  EVA  EEA  EAA  アイオノマー  ポリエチレン  アクリル樹脂  熱可塑性エラストマー  特殊ポリオレフィン  押出ラミネート  インフレーション成形  ホットメルト接着剤  電線被覆  フィラー高充填  SP値  耐薬品性  環境応力割れ  UL 94

実使用では、使用グレード、MMA含有量、MFR、温度、濃度、荷重、応力、湿度、接触時間、試験片形状、成形条件及び法規制を確認し、実液・実部品による検証を行う必要がある。

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