ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマー

材料名ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマー
略記号共重合ポリエステル、Co-polyester、PETG、PCTG、PCTAなど
英語名Diol Aromatic Dicarboxylic Acid Ester Copolymer / Copolyester
分類熱可塑性ポリエステル、非晶性〜低結晶性エンジニアリングプラスチック
構造・主成分エチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分と、テレフタル酸・イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸成分からなる共重合ポリエステルである。
主な用途透明成形品、医療・包装容器、化粧品容器、家電部品、フィルム、シート、押出品、3Dプリンターフィラメント

概要

ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマーは、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸成分を主原料とする共重合ポリエステルである。代表例として、PETG、PCTG、PCTAなどがあり、透明性、耐衝撃性、成形加工性、寸法安定性に優れる材料である。

一般的なポリエチレンテレフタレートより結晶化しにくく、透明性を保ちやすい。射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形に適し、透明樹脂としてポリカーボネートアクリル樹脂塩化ビニル樹脂などと比較されることが多い。

特徴

  • 透明性が高く、非晶性または低結晶性のグレードでは白化しにくい。
  • 耐衝撃性が良く、透明容器、医療部品、化粧品容器などに使いやすい。
  • 射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形などの加工に対応する。
  • 耐薬品性は水、アルコール、弱酸に対して比較的良好である。
  • 強アルカリ、高温水、ケトン系、芳香族溶剤、塩素系溶剤には注意が必要である。
  • グレード、共重合成分、結晶化度、添加剤により物性が大きく変化する。
  • 実使用では温度、応力、薬品濃度、接触時間を含めて評価する必要がある。
長所
  • 高透明で外観性が良い。
  • 耐衝撃性が高く、割れにくい。
  • 成形加工性が良く、複雑形状にも対応しやすい。
  • 印刷、接着、二次加工が比較的容易である。
  • BPAを含まない透明樹脂として採用されることがある。
短所
  • 耐熱性はPC、PPS、PEEKなどより低い。
  • アルカリ条件では加水分解に注意が必要である。
  • ケトン系、芳香族系、塩素系溶剤では膨潤、白化、応力クラックが起こる場合がある。
  • 高温多湿環境では物性低下を確認する必要がある。
成形加工

ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマーは、熱可塑性樹脂として射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形に適する。吸湿により加水分解や外観不良が生じる場合があるため、成形前乾燥が重要である。

加工方法適正主な製品例
射出成形透明部品、医療部品、化粧品容器、家電部品
押出成形シート、フィルム、チューブ、板材
ブロー成形透明ボトル、容器、包装材
真空成形・圧空成形トレー、カバー、パッケージ部材
切削加工試作部品、治具、透明カバー

構造式

代表的な構造は、芳香族ジカルボン酸単位とジオール単位がエステル結合で連結したポリエステル骨格である。

HO-R-OH + HOOC-Ar-COOH → [-O-R-O-CO-Ar-CO-]n + 2nH2O

ここで、Rはエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、その他ジオール成分を示し、Arはテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸成分を示す。PETGではPET骨格にCHDMなどを共重合することで結晶化を抑え、透明性と耐衝撃性を高める。

種類

PETG
名称PETG、グリコール変性PET
構成PET骨格にCHDMなどのジオール成分を共重合した非晶性ポリエステルである。
特徴透明性、耐衝撃性、成形加工性が良い。3Dプリンターフィラメントにも使用される。
主な用途透明容器、シート、医療部品、ディスプレイ部材、3Dプリンター材料
PCTG
名称PCTG、シクロヘキサンジメタノール系共重合ポリエステル
構成テレフタル酸とCHDMを主成分とし、他成分で共重合したポリエステルである。
特徴PETGより耐熱性、耐薬品性、靭性を高めたグレードが多い。
主な用途医療容器、化粧品容器、透明成形品、耐薬品容器
PCTA
名称PCTA、高耐熱共重合ポリエステル
構成芳香族ジカルボン酸とCHDMなどを主体とし、耐熱性を高めた共重合ポリエステルである。
特徴透明性と耐熱性のバランスが良く、耐薬品性も比較的良い。
主な用途高級化粧品容器、医療部品、透明耐熱部材
GF強化グレード
名称ガラス繊維強化共重合ポリエステル
構成共重合ポリエステルにガラス繊維を配合した強化グレードである。
特徴剛性、寸法安定性、荷重たわみ温度が向上するが、透明性は低下する。
主な用途構造部品、電気電子部品、機械部品

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位PETGPCTGPCTAGF強化
比重1.25〜1.281.18〜1.241.20〜1.271.35〜1.55
引張強さMPa45〜5545〜6050〜6570〜120
引張伸び%80〜250100〜30060〜2002〜5
曲げ強さMPa70〜8570〜9580〜100120〜180
曲げ弾性率GPa2.0〜2.31.8〜2.32.0〜2.65.0〜8.5
アイゾット衝撃強さJ/m80〜ノーブレーク100〜ノーブレーク80〜ノーブレーク50〜120
荷重たわみ温度65〜7570〜8585〜105100〜140
ガラス転移温度75〜8580〜9085〜11080〜110
成形収縮率%0.2〜0.60.2〜0.60.2〜0.70.1〜0.4
透明性透明透明透明不透明

耐薬品性

ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマーは、水、アルコール、弱酸、油脂に対して比較的安定である。一方で、強アルカリ、高温水、ケトン系溶剤、芳香族溶剤、塩素系溶剤では膨潤、白化、クラック、加水分解が起こる場合がある。

薬品・溶剤耐性備考
常温では比較的安定である。高温水では加水分解に注意する。
弱酸常温・低濃度では比較的良好である。
強酸濃度、温度、接触時間により劣化する場合がある。
アルカリ△〜×ポリエステル結合が加水分解を受けやすい。
アルコールメタノール、エタノール、IPAには比較的良好である。
ケトン△〜×アセトン、MEKでは膨潤、白化、応力クラックに注意する。
芳香族溶剤△〜×トルエン、キシレンでは膨潤やクラックの可能性がある。
塩素系溶剤×ジクロロメタン、クロロホルムなどには不適である。
油・グリース一般的な潤滑油、鉱物油には比較的良好である。

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマーのSP値は、共重合成分、結晶化度、添加剤、充填材により変動する。下表は代表的な目安である。

項目SP値(δ)MPa1/2備考
PETG 標準グレード20.5〜21.5透明性と耐衝撃性が良い。ケトン系、芳香族系溶剤には注意する。
PCTG 標準グレード20.0〜21.2PETGより靭性、耐薬品性を高めたグレードが多い。
PCTA 高耐熱グレード20.5〜22.0耐熱性と透明性のバランスが良い。高温薬品環境では確認が必要である。
GF強化共重合ポリエステル20.5〜22.0剛性と寸法安定性が向上する。耐溶剤性は樹脂相に依存する。
耐薬品改質グレード20.0〜21.8洗剤、アルコール、油脂への耐性を高めたグレードである。
溶解性の目安
SP値差溶解性の目安
0〜2溶解、膨潤、白化、応力クラックが起こりやすい。
2〜5膨潤、軟化、物性低下に注意が必要である。
5以上溶解しにくい傾向であるが、温度、応力、濃度により劣化する場合がある。
SP値から見た耐溶剤性
SP値から見た耐溶剤性
薬品・溶剤SP値(δ)MPa1/2SP値差評価備考
47.9約26.9常温では比較的安定である。高温水では加水分解に注意する。
メタノール29.7約8.7短時間接触では比較的良好である。
エタノール26.0約5.0消毒用途では応力クラックを確認する必要がある。
IPA(イソプロパノール)23.5約2.5○〜△常温短時間では使用可能な場合が多いが、応力負荷時は注意する。
アセトン20.0約1.0×SP値が近く、膨潤、白化、クラックが起こりやすい。
MEK(メチルエチルケトン)19.0約2.0×溶剤割れ、軟化に注意する。不適である。
酢酸エチル18.6約2.4△〜×膨潤、白化、応力クラックが発生する場合がある。
トルエン18.2約2.8△〜×長期接触や応力負荷ではクラックに注意する。
キシレン18.0約3.0△〜×芳香族溶剤であり、膨潤や白化の可能性がある。
ヘキサン14.9約6.1短時間では比較的良好であるが、添加剤抽出に注意する。
ガソリン14〜16約5〜7△〜○成分により膨潤や抽出が起こる場合がある。
DMF24.8約3.8△〜×強極性溶剤であり、長期接触では注意する。
DMSO26.7約5.7SP値差はあるが、極性が高く高温では注意が必要である。
ジクロロメタン20.2約0.8×SP値が近く、溶解・膨潤しやすい。不適である。
水酸化ナトリウム水溶液47付近約26△〜×SP値差は大きいが、アルカリ加水分解により劣化する。

※上表は共重合ポリエステルのSP値中央値21.0MPa1/2を基準としてSP値差を算出した目安である。

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

特にアセトン、MEK、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、強アルカリ、高温水には注意が必要である。SP値が近い溶剤では膨潤や白化が起こりやすく、SP値差が大きくても加水分解性の薬品では劣化する場合がある。

製法

ジオール芳香族ジカルボン酸系エステル・コポリマーは、芳香族ジカルボン酸またはそのジメチルエステルと、複数のジオール成分をエステル化またはエステル交換し、続いて重縮合することで製造される。

n HO-R-OH + n HOOC-Ar-COOH → [-O-R-O-CO-Ar-CO-]n + 2n H2O

また、ジメチルテレフタレートを用いる場合は、エステル交換反応によりメタノールを除去し、その後、減圧下で重縮合して高分子量化する。

n HO-R-OH + n CH3OOC-Ar-COOCH3 → [-O-R-O-CO-Ar-CO-]n + 2n CH3OH

詳細な利用用途

  • 透明容器:化粧品容器、食品容器、日用品容器
  • 医療用途:医療機器部品、検査容器、透明カバー
  • 包装用途:ブリスター包装、透明シート、トレー
  • 家電・雑貨:透明カバー、ディスプレイ部材、ケース類
  • 工業用途:保護カバー、表示窓、治具、試作部品
  • 3Dプリンター:PETGフィラメント、透明・耐衝撃造形材
  • フィルム・シート:成形用シート、ラミネート材、印刷基材

関連材料との比較

比較材料特徴共重合ポリエステルとの違い
PET結晶性ポリエステルで、耐熱性、機械特性、ガスバリア性が良い。共重合ポリエステルは結晶化しにくく、透明成形品にしやすい。
PC耐衝撃性と耐熱性に優れる透明樹脂である。共重合ポリエステルは耐熱性では劣るが、成形加工性と薬品適性で有利な場合がある。
PMMA透明性、耐候性、表面硬度に優れる。共重合ポリエステルは耐衝撃性が高く、割れにくい。
PVC透明性、耐薬品性、柔軟性の調整に優れる。共重合ポリエステルは非塩素系材料として選定される場合がある。
PBT結晶性ポリエステルで、電気電子部品や機械部品に多い。共重合ポリエステルは透明性と靭性に優れるが、耐熱性と剛性ではPBTが有利である。
PLA植物由来原料を利用するポリエステル系樹脂である。共重合ポリエステルは耐衝撃性、耐熱性、成形安定性で有利な場合が多い。

代表的なメーカー

メーカー代表ブランド・材料例特徴
Eastman ChemicalEastar、Tritan、Spectar透明共重合ポリエステル、PCTG、PCTA系材料で知られる。
SK ChemicalsSKYGREEN、ECOZENPETG、PCTG、バイオ系共重合ポリエステルを展開する。
三菱ケミカルポリエステル系樹脂、シート・フィルム材料透明シート、フィルム、成形材料用途に関連材料を展開する。
帝人ポリエステル系材料、フィルム材料ポリエステル系フィルム、機能材料分野で使用される。
東レポリエステル系樹脂、フィルム材料PET、PBT、ポリエステルフィルムなど関連材料を展開する。
樹脂コンパウンドメーカー各社耐薬品、耐衝撃、難燃、GF強化グレード用途に応じて透明性、耐薬品性、剛性、難燃性を調整したグレードを供給する。

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