概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ジアリルカーボネート樹脂 |
| 略記号 | PDAC、DAC樹脂 |
| IUPAC | 狭義のモノマーは bis(prop-2-en-1-yl) carbonate、硬化物は crosslinked poly(diallyl carbonate) と表記される。三次元架橋体であるため、単一の直鎖高分子名だけでは表しにくい。 |
| 英語名 | Diallyl Carbonate Resin、Poly(diallyl carbonate)、Crosslinked Diallyl Carbonate Resin |
| 日本語名 | ジアリルカーボネート樹脂、炭酸ジアリル樹脂、DAC樹脂、アリルカーボネート系熱硬化性樹脂 |
| 分類 | 二官能性アリルモノマーのラジカル架橋重合体、アリルカーボネート系熱硬化性樹脂 |
| プラスチック分類 | 熱硬化性プラスチック。汎用熱硬化性樹脂と特殊機能性樹脂の中間に位置付けられるが、一般的なエンジニアリングプラスチックの大量流通材ではない。 |
| 化学式または代表構造 | モノマー:CH2=CH-CH2-O-C(=O)-O-CH2-CH=CH2、分子式 C7H10O3。硬化物は両端アリル基が反応した三次元架橋網目である。 |
| CAS No. | 15022-08-9(ジアリルカーボネートモノマー)。硬化樹脂は架橋状態、共重合成分及び配合により単一CASで扱えない場合がある。 |
| 構造・主成分 | 炭酸エステル基の両側にアリル基を持つDACを、有機過酸化物などでラジカル硬化した架橋体である。実用配合ではプレポリマー、共重合モノマー、無機充填材、ガラス繊維、顔料、難燃剤、離型剤などを含む場合がある。 |
| 主な用途 | 透明注型材、研究用硬化物、電気絶縁・含浸・封止配合、低圧成形材料、共重合原料、特殊コーティング及び反応性樹脂原料。 |
| 分類上の重要事項 | ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(ADC)由来のPADC及びCR-39とは別材料である。名称が近いため、DAC、ADC、PADC、CR-39を技術文書で区別する必要がある。 |
ジアリルカーボネート樹脂は、ジアリルカーボネート(DAC)の二つのアリル基をラジカル反応させ、三次元架橋網目を形成した熱硬化性樹脂である。液状モノマー又はプレポリマーを型、繊維、紙、コイル又はインサートへ供給して硬化できるため、注型、含浸及び低圧成形に適する。一方、硬化後は不溶・不融となり、熱可塑性樹脂のように再溶融して射出、押出又は熱成形することはできない。
工業材料としては、狭義のDAC単独硬化物よりも、他のアリル系モノマー、無機充填材又は強化材を含む配合系として扱われる場合がある。公開された標準物性はDAP樹脂、エポキシ樹脂又はADC/PADC系より少なく、材料群として一つの数値に固定することは適切でない。本ページの数値は、非強化・無充填又は透明硬化配合の参考範囲を中心とし、信頼度C又はDの値をメーカー保証値として使用しない。
特に、ADCを硬化したPADC及びCR-39は、眼鏡レンズ用途で確立した別系統のアリルカーボネート材料である。屈折率、アッベ数、機械特性、耐薬品性及びメーカー情報を狭義PDACへ転用すると、材料比較データの整合性を損なうため注意が必要である。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 二官能性アリル基により不溶・不融の架橋体を形成できる。透明性、耐候性、電気絶縁性、耐湿性及び寸法安定性を設計しやすく、低粘度モノマーとして注型・含浸へ適用しやすい。 |
| 短所 | 硬化反応がアクリレートより遅い場合があり、開始剤、酸素、温度履歴及び肉厚の管理を要する。硬化収縮、残留応力、気泡、黄変、未反応モノマー及び脆性が問題となり得る。 |
| 外観 | モノマーは無色から淡黄色の透明液体である。非充填硬化物は透明から半透明となるが、純度、開始剤、共重合成分、硬化度及び熱履歴により色調・ヘーズが変化する。 |
| 耐熱性 | 架橋密度と後硬化により中程度から良好な耐熱性を得られる。ただしDAC単独硬化物の公開データは限定的であり、Tg、HDT及び連続使用温度は配合ごとに確認する必要がある。 |
| 耐薬品性 | 常温の水、希酸、塩水及び油類には比較的安定な配合がある。一方、強アルカリ、高温水、ケトン、エステル、芳香族及び塩素系溶剤では、加水分解、膨潤、抽出、白化又は応力割れに注意する。 |
| 加工性 | 液状注型、含浸、低圧成形、圧縮成形及びトランスファー成形へ展開できる。硬化後は再溶融しないため、一般的な射出、押出、ブロー及び熱成形には適さない。 |
| 分類上の注意 | ビスフェノールA系ポリカーボネートとは、原料、主鎖構造、架橋性、成形方法及びリサイクル性が異なる。また、光学レンズで著名なADC/PADC系の代表物性を、狭義のPDACへそのまま転用してはならない。 |
構造式

代表的な構造単位
モノマーの代表構造は CH2=CH-CH2-O-C(=O)-O-CH2-CH=CH2 である。両端のC=C結合がラジカル反応し、分岐、環化及び分子間架橋を含む不規則な三次元網目を形成する。このため、一般的な線状熱可塑性樹脂のような単純な繰返し単位だけで硬化物全体を表現することはできない。
モノマー又は構成単位
| 構造要素 | 代表構造・役割 | 材料特性への影響 |
|---|---|---|
| アリル基 | CH2=CH-CH2-。分子中に2個存在し、ラジカル付加反応の反応点となる。 | 架橋形成に寄与する。反応速度、酸素阻害、環化反応及び残存二重結合量が硬化度と物性を左右する。 |
| 炭酸エステル基 | -O-C(=O)-O-。モノマー中央の極性官能基である。 | 極性、透明性及び表面処理適性に寄与する一方、強アルカリ及び高温水中では加水分解に注意する。 |
| 三次元架橋 | 複数分子のアリル基が連結した不規則網目である。 | 不溶・不融性、耐溶剤性、寸法安定性を与える。架橋密度が高すぎると脆性、収縮及び内部応力が増加し得る。 |
| 共重合・変性 | DAP、ADC、アクリレート、チオール、ウレタン系又は他の多官能モノマーとの組合せが考えられる。 | 硬化速度、Tg、屈折率、靱性、収縮、耐薬品性及び接着性を調整できるが、純PDACとは別配合として管理する。 |
共重合又は変性グレードでは、他のアリル系モノマー、アクリレート、チオール、ウレタン成分又は無機フィラーにより、硬化速度、Tg、靱性、屈折率、収縮、耐薬品性及び接着性が変化する。純PDAC、共重合PDAC、ADC/PADC及びDAPを同一材料として扱わないことが重要である。
種類
| 種類・代表グレード | 主成分又は改質方法 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準硬化配合 | DAC主体、有機過酸化物、必要に応じ安定剤 | 透明性、電気絶縁性、低粘度注型性 | 硬化収縮、脆性、残留モノマー | 透明注型、試験片、研究用途 |
| プレポリマー・低圧成形配合 | DACを部分重合し粘度と反応性を調整 | 流動性と硬化性を両立しやすい | 保管安定性とゲル化管理が必要 | 低圧成形、含浸、封止 |
| 耐熱配合 | 高架橋性共重合成分、シリカ等 | Tg、HDT、寸法安定性を高めやすい | 脆化、粘度上昇、透明性低下 | 電気絶縁、耐熱注型 |
| 難燃配合 | リン系等の難燃剤、無機充填材 | 燃焼性を改善できる | 色調、電気特性、機械強度への影響 | 電気・電子部品 |
| GF強化配合 | ガラス繊維。含有率は一般化困難 | 剛性、強度、成形収縮を改善 | 異方性、繊維浮き、透明性消失 | 絶縁成形部品 |
| 無機フィラー充填 | シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等 | CTE、収縮、熱伝導、寸法精度を調整 | 比重と粘度が上昇し、工具摩耗が増える | 封止、絶縁、精密成形 |
| 摺動・低摩擦配合 | PTFE、固体潤滑材等を配合する可能性 | 摩擦・摩耗を改善できる | 標準化された商用PDACデータは乏しい | 特殊摺動部材 |
| 導電・帯電防止配合 | カーボン系又は導電フィラー | 表面抵抗を調整できる | 透明性と絶縁性を失う | 静電気対策部材 |
| 食品・医療用途向け | 適合原料及び管理された個別グレード | 規制適合設計が可能な場合がある | 材料名だけでは適合を判断できない | 限定用途、証明書確認が前提 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | × | 硬化後は溶融しない。 | 一般的な熱可塑性射出成形には不適である。BMC等の熱硬化射出は個別配合で評価する。 |
| 押出成形 | × | 溶融押出用熱可塑樹脂ではない。 | 連続押出材が必要な場合はPC、PMMA、COC等を検討する。 |
| ブロー成形 | × | 溶融パリソンを形成できない。 | 中空品は注型、積層又は別材料で設計する。 |
| インフレーション成形 | × | 溶融フィルム形成ができない。 | 適用外である。 |
| Tダイフィルム成形 | × | 通常の溶融フィルム成形には不適である。 | 硬化膜を形成する特殊塗工は別評価である。 |
| 真空・圧空成形 | × | 架橋硬化後の再加熱成形はできない。 | 未硬化シート状配合がある場合のみ個別検討する。 |
| 注型成形 | ◎ | 低粘度液状モノマーを型内硬化できる。 | ろ過、脱泡、段階昇温、発熱、収縮及び残留応力を管理する。 |
| 圧縮成形 | ○ | プレポリマー又は充填材配合で適用できる。 | 金型温度、流動、硬化時間、バリ及び離型を最適化する。 |
| トランスファー成形 | ○ | 低粘度反応性配合を金型へ移送できる。 | スコーチ、ボイド、未充填及び金型汚染に注意する。 |
| 含浸・積層 | ◎ | 繊維、紙、布、コイル等へ含浸しやすい。 | 含浸性、揮発分、ゲルタイム及び硬化収縮を確認する。 |
| 3Dプリント | △ | 専用光硬化配合への展開余地はある。 | 標準DAC樹脂を一般的な光造形樹脂として扱わない。 |
| 切削・研削 | ○ | 硬化物は機械加工できる。 | 欠け、クラック、発熱、粉じん及び残留応力に注意する。 |
| 接着 | △ | 表面処理と接着剤選定により可能である。 | 研磨、脱脂、プラズマ、プライマー及び熱膨張差を確認する。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 表面清浄化と前処理により適用できる。 | 離型剤、未反応成分及び表面エネルギーの影響を確認する。 |
| めっき・蒸着 | △ | 下地処理を行えば適用可能性がある。 | 粗化、触媒化、膜応力、熱履歴及び密着耐久を評価する。 |
| レーザーマーキング | △ | 吸収剤又は着色材で対応できる場合がある。 | 焦げ、発泡、クラック、黄変及びガス発生を確認する。 |
| インサート成形 | ○ | 低圧熱硬化成形で金属部品を封止できる。 | 金属表面処理、熱膨張差、収縮応力及び電食に注意する。 |
評価は一般的なDAC系熱硬化配合を対象とした一次選定である。実際の適性は、モノマー純度、プレポリマー化度、開始剤、充填材、粘度、製品肉厚、型材、硬化設備、後硬化及び要求品質により変化する。
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 一般的な目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | ペレット乾燥は該当なし | 液状モノマー又はプレポリマーの水分、異物、溶存ガス及び容器清浄度を管理する。 |
| モノマー水分 | ppm | 個別仕様 | 光学又は高絶縁用途では低水分化が重要である。供給者規格を優先する。 |
| ろ過精度 | µm | 0.2~10 | 用途要求に応じる。粘度とフィルター差圧を確認する。 |
| 開始剤濃度 | 質量% | 0.5~5 | 開始剤種、純度、半減期、肉厚、型材及び昇温条件で調整する。 |
| 初期硬化温度 | ℃ | 40~70 | 急激な発熱と気泡を抑えるため低温から開始する設計が多い。 |
| 最高硬化温度 | ℃ | 80~120 | 配合、開始剤及び製品厚さにより異なる。 |
| 硬化時間 | h | 5~30 | 厚肉品では段階昇温と長時間硬化が必要になる場合がある。 |
| 後硬化温度 | ℃ | 80~140 | 残留モノマー低減、Tg及び寸法安定性向上に有効な場合がある。 |
| 後硬化時間 | h | 1~8 | 黄変、反り、内部応力及び型離れを確認する。 |
| 注型圧力 | MPa | 常圧~低圧 | 真空注型又は低圧注入を用いる場合がある。漏れと型締めを管理する。 |
| 成形収縮率 | % | 3~10 | 非充填硬化配合の参考範囲。体積収縮と線収縮を区別し、実測する。 |
| 推奨肉厚 | mm | グレード依存 | 厚肉ほど発熱、気泡、温度勾配及び内部応力が増加する。 |
| アニール | - | 必要に応じ実施 | 残留応力低減に有効であるが、変形、黄変及び寸法変化を確認する。 |
上表は材料群としての一般的な目安であり、特定メーカー又は特定グレードの成形条件ではない。有機過酸化物は分解温度、保管温度、混合手順及び消防・労働安全上の管理が必要である。厚肉品では反応発熱と熱伝導の差により局所過熱、気泡、収縮割れ及び黄変が発生しやすいため、実成形品で温度履歴を測定することが望ましい。
代表的な物性値又は機械的性質
以下の数値は、非強化・無充填又は透明硬化配合を想定した代表値及び代表範囲である。DAC単独硬化物の体系的な公開データは限られるため、比較機能へ登録する場合は信頼度を保持し、信頼度Cの値を確定値として扱わない。信頼度D又はデータなしの項目を推定で補完しない。
物理・光学特性
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.28 | 1.20~1.35 | 23℃、規格不明 | 硬化物、非強化 | DAC単独硬化物の公開値が少なく配合依存である。 | C |
| 比重 | 無次元 | 1.28 | 1.20~1.35 | 23℃ | 硬化物、非強化 | 密度と同等の参考範囲である。 | C |
| 吸水率・24時間 | % | 0.3 | 0.1~0.6 | ASTM D570相当、23℃水中 | 成形直後又は乾燥 | 厚さ、硬化度及び抽出成分に依存する。 | C |
| 平衡吸水率 | % | データなし | データなし | - | - | 配合別測定を推奨する。 | - |
| 成形収縮率 | % | 6 | 3~10 | 硬化前後、条件不明 | 非充填注型 | 体積収縮か線収縮かを必ず区別する。 | C |
| 線膨張係数 | 10-5/K | 7 | 5~9 | Tg未満 | 乾燥、非強化 | 充填材、架橋密度及び測定方向に依存する。 | C |
| 屈折率 | 無次元 | 1.50 | 1.47~1.52 | 589 nm付近、23℃ | 透明硬化物 | ADC/PADCの確立値とは区別する。 | C |
| 可視光線透過率 | % | 89 | 85~92 | 厚さ2~3 mmの目安 | 無色透明配合 | 純度、厚さ、気泡、色及び表面状態に依存する。 | C |
| ヘーズ | % | データなし | データなし | - | - | 光学用途では実測が必要である。 | - |
| 硬度 | ロックウェルM | 90 | M80~M100 | ASTM D785相当、23℃ | 硬化物 | 表面状態、厚さ及び硬化度に依存する。 | C |
機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ・降伏 | MPa | データなし | データなし | - | - | 脆性硬化物では明瞭な降伏を示さない場合がある。 | - |
| 引張強さ・破断 | MPa | 52 | 35~70 | ASTM D638又はISO 527相当、23℃ | 乾燥、非強化 | 配合、硬化度及び試験片形状に依存する。 | C |
| 引張弾性率 | GPa | 2.7 | 2.0~3.5 | ISO 527相当、23℃ | 乾燥、非強化 | 短時間値であり、設計許容応力へ直接使用しない。 | C |
| 引張破断伸び | % | 3 | 1~5 | ISO 527相当、23℃ | 乾燥、非強化 | 架橋密度が高いほど低下しやすい。 | C |
| 曲げ強さ | MPa | 85 | 60~110 | ISO 178相当、23℃ | 乾燥、非強化 | 表面傷、ノッチ及び硬化むらの影響を受ける。 | C |
| 曲げ弾性率 | GPa | 3.0 | 2.2~3.8 | ISO 178相当、23℃ | 乾燥、非強化 | 引張弾性率と同一値として扱わない。 | C |
| 圧縮強さ | MPa | データなし | データなし | - | - | 個別配合で確認する。 | - |
| アイゾット衝撃・ノッチ付き | kJ/m² | 3 | 1~5 | ISO 180相当、23℃ | 乾燥、非強化 | ASTMのJ/m値と単純比較しない。 | C |
| シャルピー衝撃・ノッチ付き | kJ/m² | データなし | データなし | - | - | 試験片形状と規格を指定して測定する。 | - |
| 疲労強度 | MPa | データなし | データなし | - | - | 繰返し荷重部品では実部品又はS-N試験が必要である。 | - |
| クリープ強度 | MPa | データなし | データなし | 温度・時間未設定 | - | 長期荷重設計では必ず実測する。 | - |
熱的・電気的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格・条件 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | 110 | 80~140 | DSC又はDMA | 組成、硬化度、残存モノマー及び測定法で幅が大きい。 | C |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 架橋熱硬化性 | 再溶融せず、加熱により軟化・分解する。 | A |
| 熱分解開始温度 | ℃ | データなし | データなし | 雰囲気・昇温速度未設定 | Tg又はHDTと混同しない。 | - |
| HDT・0.45 MPa | ℃ | 100 | 70~130 | ISO 75相当 | 配合及び後硬化依存である。 | C |
| HDT・1.80 MPa | ℃ | 82 | 55~110 | ISO 75相当 | 荷重条件を明記して比較する。 | C |
| 連続使用温度 | ℃ | 80 | 60~100 | 一般的目安 | 色調、電気、機械又は寸法の許容変化で異なる。 | C |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 120 | 100~140 | 短時間、低荷重 | 時間、荷重及び後硬化度を確認する。 | C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.21 | 0.18~0.25 | 23℃、非充填 | 無機充填で上昇する。 | C |
| 比熱 | J/(g・K) | データなし | データなし | - | 熱解析には配合別測定が必要である。 | - |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1015 | 1×1014~1×1016 | ASTM D257相当、23℃、乾燥 | 吸湿と温度上昇で低下し得る。 | C |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 18 | 12~25 | IEC 60243相当、23℃ | 厚さ、電極及び昇圧速度に依存する。 | C |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 3.8 | 3.2~4.5 | 1 kHz、23℃、乾燥 | 周波数、温度、吸湿及び充填材に依存する。 | C |
| 誘電正接・1 kHz | 無次元 | 0.03 | 0.01~0.05 | 1 kHz、23℃、乾燥 | 周波数を指定して比較する。 | C |
| CTI | V | データなし | データなし | IEC 60112 | 認証グレードごとに確認する。 | - |
強化・充填グレードの扱い
| グレード区分 | 強化材・含有率 | 物性傾向 | 比較用数値の扱い | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準 | なし | 透明性、絶縁性及び注型性を基準とする。 | 上記代表範囲を参考にする。 | 公開値は限定的であり、メーカー保証値ではない。 |
| GF強化 | GF含有率は一般化困難 | 引張・曲げ弾性率、強度、HDT及び寸法安定性が上がる傾向である。 | 標準材の数値と混在させない。 | 異方性、繊維浮き、透明性消失及び界面劣化に注意する。 |
| CF強化 | CF含有率は一般化困難 | 高剛性、導電性及び低CTE化が可能である。 | 公開された代表物性が不足しておりデータなしとする。 | 電気絶縁用途には不適となる場合がある。 |
| 無機充填 | シリカ、アルミナ等、配合依存 | 収縮とCTEを低下させ、熱伝導、硬度又は難燃性を調整できる。 | フィラー種と質量%を別フィールドで管理する。 | 粘度、脆性、比重、加工性及び工具摩耗が変化する。 |
難燃性
| 項目 | 単位 | 代表値・状況 | 備考 |
|---|---|---|---|
| UL 94燃焼性 | 等級 | グレード依存 | 材料群全体の等級として断定しない。厚さ、色、難燃剤及び製造拠点を確認する。 |
| 試験片厚さ | mm | 個別認証値 | 認証厚さが異なる値を流用しない。 |
| 限界酸素指数・LOI | % | データなし | 未難燃配合を難燃材料として扱わない。 |
| ハロゲン含有 | - | DAC骨格自体は非ハロゲン | 難燃剤、顔料、離型剤及びコーティングを含む最終製品で確認する。 |
| 燃焼時の主な生成物 | - | CO、CO2、未完全燃焼有機物 | 火災時は換気し、煙及び分解ガスを吸入しない。 |
連続使用温度、HDT、Tg及び短時間耐熱温度は意味が異なる。短時間物性値を長期荷重部品の設計許容応力として使用せず、温度、湿度、薬品、応力、時間及び安全率を含むクリープ・疲労評価を行う必要がある。
耐薬品性
以下は非強化硬化物を対象とした一次スクリーニングである。評価条件が異なるデータを単純比較せず、実際のグレード、硬化度、残留モノマー、充填材、温度、濃度、接触時間、浸漬又は拭取り、応力及び試験片厚さに合わせて確認する。
| 薬品名 | 濃度 | 条件 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水 | 23℃、24~168 h浸漬 | 無応力 | ○ | わずかな吸水、長期で寸法・電気特性変化 | 高温・長期は個別試験する。 |
| 温水 | - | 60~80℃、168 h | 無応力 | △ | 吸水、白化、加水分解、残留応力緩和 | 硬化度と表面処理の影響が大きい。 |
| 熱水・水蒸気 | - | 100℃以上 | 無応力 | × | 加水分解、クラック、寸法変化 | 長期用途は原則避け、実試験する。 |
| 塩酸 | 10% | 23℃、24 h | 無応力 | ○ | 長期で表面変化又は強度低下の可能性 | 高温・高濃度は評価を下げる。 |
| 硫酸 | 10% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 変色、脆化又は加水分解 | 濃硫酸及び高温は不適側である。 |
| 硝酸 | 10% | 23℃、短時間 | 無応力 | △ | 酸化、黄変、表面侵食 | 濃硝酸は原則不適とする。 |
| 酢酸 | 10% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 膨潤、加水分解 | 濃度と温度依存性を確認する。 |
| 水酸化ナトリウム | 1% | 23℃、短時間 | 無応力 | △ | 炭酸エステル結合の加水分解 | 洗浄後の外観・質量・強度を確認する。 |
| NaOH/KOH | 10~30% | 60~80℃、浸漬 | 無応力 | × | 著しい加水分解、侵食、質量減少 | 強アルカリ・高温の組合せを避ける。 |
| アンモニア水 | 5~10% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 表面変化又は加水分解の可能性 | 濃度、温度及び残留応力を確認する。 |
| メタノール | 100% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 膨潤、抽出又は白化 | 長期接触と応力下を試験する。 |
| エタノール | 70~100% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 膨潤、低分子抽出 | 拭取りと浸漬を区別する。 |
| IPA | 70~100% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 膨潤、表面変化、応力割れ | 洗浄用途では繰返し試験を行う。 |
| グリセリン | 100% | 23℃、168 h | 無応力 | ○ | 軽微な吸収の可能性 | 高温では再評価する。 |
| MMB・グリコールエーテル | 100% | 23℃、短時間 | 無応力 | △ | 膨潤、抽出、白化 | 実薬品浸漬試験を推奨する。 |
| トルエン・キシレン | 100% | 23℃、1~24 h | 無応力 | △ | 膨潤、軟化、クラック | 応力下及び長期接触を避ける。 |
| ヘキサン・ヘプタン | 100% | 23℃、24~168 h | 無応力 | ○ | 低分子抽出又は軽微な膨潤 | 長期及び高温では確認する。 |
| アセトン | 100% | 23℃、短時間~24 h | 無応力 | × | 膨潤、軟化、白化、クラック | 洗浄溶剤として原則使用しない。 |
| MEK | 100% | 23℃、短時間~24 h | 無応力 | × | 著しい膨潤、軟化 | 不適側である。 |
| 酢酸エチル・酢酸ブチル | 100% | 23℃、短時間~24 h | 無応力 | × | 膨潤、抽出、表面曇り | 長期接触を避ける。 |
| THF・ジオキサン | 100% | 23℃、短時間 | 無応力 | × | 強い膨潤又は軟化 | 原則不適である。 |
| ジクロロメタン・クロロホルム | 100% | 23℃、短時間 | 無応力 | × | 強膨潤、白化、亀裂 | 原則不適である。 |
| 鉱油・潤滑油 | 市販品 | 23℃、168 h | 無応力 | ○ | 添加剤抽出又はわずかな膨潤 | 油種、添加剤及び高温を確認する。 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 芳香族分、酸素含有成分による膨潤 | 燃料組成依存性が大きい。 |
| 軽油・灯油 | 市販品 | 23℃、168 h | 無応力 | ○ | 長期で低分子抽出の可能性 | 高温及びバイオ成分混合を確認する。 |
| ブレーキ液 | グリコール系 | 23℃、168 h | 無応力 | △ | 吸収、膨潤又は添加剤影響 | DOT種別と温度を確認する。 |
| 冷却液 | EG水溶液50% | 23~80℃ | 無応力 | △ | 高温で吸水・加水分解 | 防錆剤及び高温耐久を確認する。 |
| 次亜塩素酸Na | 500 ppm | 23℃、24 h | 無応力 | ○ | 長期で酸化、黄変 | 高濃度、高温及び繰返し洗浄は再評価する。 |
| 過酸化水素 | 3% | 23℃、24 h | 無応力 | △ | 酸化、黄変又は表面変化 | 濃度と温度上昇で劣化が増える。 |
| 中性洗剤 | 使用濃度 | 23~40℃、洗浄 | 無応力 | ○ | 界面活性剤による抽出又は白化の可能性 | 溶剤、研磨材又は強アルカリを含む製品は別評価する。 |
| 塩水・海水 | 3.5% NaCl相当 | 23℃、168 h | 無応力 | ○ | 吸水、金属界面劣化 | 複合部品では金属腐食と界面接着を確認する。 |
| 食品油 | 植物油・動物油 | 23~60℃ | 無応力 | ○ | 添加剤抽出又は着色 | 食品接触規制と高温洗浄を確認する。 |
評価基準:◎は一般的な条件で影響が小さい、○は概ね使用可能であるが条件確認が必要、△は膨潤、軟化、強度低下、変色又は応力割れに注意、×は溶解、著しい膨潤、分解又は割れが生じる可能性が高いことを示す。詳しい材料横断比較はプラスチックの耐薬品性一覧表を参照する。
SP値(溶解度パラメータ)
DACモノマー及びPDAC硬化物について、広く合意された単一のSP値は確認しにくい。一次スクリーニングでは、モノマー又は低架橋状態を18.5~19.5 MPa1/2、硬化物の見かけ値を19~21 MPa1/2程度の参考範囲として扱う場合がある。これは構造類似性を含む推定値であり、データ信頼度Dであるため、ACFの確定比較値として登録しないことが望ましい。
SP値差は熱力学的な親和性の目安にすぎず、架橋体の不溶性、拡散速度、加水分解、酸化、環境応力割れ、残留モノマー及び添加剤抽出を評価できない。最終判断には実薬品試験が必要である。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい。架橋体は完全溶解せず、著しい膨潤又は応力割れとして現れる場合がある。 | × |
| 2~5 | 条件により膨潤、抽出、白化又は応力割れを生じる。 | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定な場合がある。 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい傾向であるが、加水分解、酸化及び反応性薬品は別評価を要する。 | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表はPDAC硬化物の参考SP値を20 MPa1/2として算出した一次的な目安である。架橋度が高い硬化物は完全溶解しなくても、膨潤、軟化、白化又は割れとして劣化する場合がある。
| 溶剤 | SP値 δ(MPa1/2) | PDACとの差の目安 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約28 | ◎ | SP差は大きいが、高温水及び強アルカリ水溶液では加水分解を別途評価する。 |
| メタノール | 29.7 | 約10 | ◎ | SPだけでは良好側となるが、極性相互作用、抽出及び長期膨潤を確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 約6~7 | ○ | 長期、応力下及び繰返し洗浄では実試験する。 |
| IPA | 23.5 | 約3~4 | △ | 膨潤、表面変化及び応力割れに注意する。 |
| アセトン | 19.9 | 約0~1 | × | 非常に近く、膨潤・軟化リスクが高い。 |
| MEK | 19.0 | 約0~2 | × | 不適側である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約1~2 | × | 膨潤、抽出及び曇りに注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 約1~3 | △ | 芳香族溶剤であり、架橋度と接触時間に依存する。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 約5~6 | ○ | 長期では低分子抽出と膨潤を確認する。 |
SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。特に強アルカリ、高温水、酸化剤及び反応性薬品は、SP値差が大きくても化学反応により劣化する可能性がある。
製法
原料及び代表反応
代表的な非ホスゲン法は、炭酸ジメチルとアリルアルコールのエステル交換である。副生するメタノールを除去して平衡を生成物側へ移動し、精製によりDACモノマーを得る。
(CH3O)2CO + 2 CH2=CH-CH2OH → CH2=CH-CH2-O-CO-O-CH2-CH=CH2 + 2 CH3OH
従来のホスゲン法は、2 CH2=CH-CH2OH + COCl2 → CH2=CH-CH2-O-CO-O-CH2-CH=CH2 + 2 HCl と表せるが、ホスゲンの高い毒性、腐食性及び設備管理を要する。工業的には原料、安全性、触媒回収、副生成物及び精製コストを含めて製法を選択する。
重合・硬化
精製したDACへ有機過酸化物等のラジカル開始剤を配合し、ろ過、脱泡、注型又は含浸後に段階加熱する。開始剤分解で生成したラジカルがアリル基へ付加し、分岐及び架橋を形成する。厚肉品では反応発熱と収縮を均一化するため、低温域から高温域へ緩やかに昇温し、必要に応じ後硬化を行う。
| 工程 | 内容 | 管理上の要点 |
|---|---|---|
| 原料 | DACモノマー、開始剤、共重合成分、安定剤、充填材、強化材、顔料、難燃剤、離型剤など。 | 名称類似のADC、ジアリルジカーボネート及びDAPとの取り違えを避ける。SDS、CAS、純度及び水分を確認する。 |
| モノマー製造 | 代表的には炭酸ジメチルとアリルアルコールのエステル交換によりDACを得る。ホスゲン法、アリルハライドと炭酸塩を用いる方法などもある。 | 触媒残渣、副生メタノール、水分、色度、未反応原料及び阻害剤を管理する。 |
| プレポリマー化 | 部分重合により粘度、流動性、ゲルタイム及び成形性を調整する場合がある。 | 暴走重合、保管中ゲル化、酸素影響及びロット間粘度差を管理する。 |
| 配合 | 有機過酸化物などの開始剤を溶解し、必要に応じ改質成分を加える。 | 開始剤の安全温度、半減期、混合均一性、異物、気泡及び金属汚染を確認する。 |
| 成形・硬化 | 注型、含浸、圧縮又はトランスファー成形後、段階昇温して架橋する。 | 局所過熱、急速ゲル化、ボイド、収縮、残留応力及び未硬化を防ぐ。 |
| 後硬化 | 必要に応じ80~140℃程度で後硬化又はアニールする。 | Tg、残留モノマー、色差、寸法及び脆性を確認し、過剰加熱を避ける。 |
| ペレット化・コンパウンド | 一般的な熱可塑性ペレット化は行わない。プレポリマー粉末、顆粒、ペースト、BMC状、含浸基材等で供給される可能性がある。 | 供給形態と成形法を対応させる。硬化済み粉砕物は再溶融できない。 |
詳細な利用用途
| 分野 | 具体的用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 電気・電子 | 端子板、コイルボビン、スイッチ内部材、封止、含浸絶縁、低圧成形部品 | 絶縁性、耐湿性、寸法安定性及び低圧硬化性 | UL、CTI、耐アーク、吸湿後絶縁、難燃性及びアウトガスを個別確認する。 |
| 光学・透明部材 | 透明注型板、窓、フィルター、研究用光学試験片 | 透明性、型面転写性及び硬質表面 | 光学用途ではADC/PADC系の方が確立している。ヘーズ、複屈折、黄変、収縮及び気泡を確認する。 |
| 機械部品 | 精密注型部品、絶縁スペーサー、治具 | 硬質、寸法安定、電気絶縁 | 衝撃、ノッチ、疲労、摩耗及び長期クリープのデータ不足に注意する。 |
| 自動車 | 電装絶縁、封止、センサー周辺の特殊配合 | 耐湿、絶縁及び低圧成形の可能性 | 熱サイクル、振動、難燃、VOC、耐油及び自動車規格を確認する。 |
| 医療・分析 | 研究用透明部材、センサー支持材、限定的な検出用途 | 透明性、硬化形状自由度 | 生体適合、抽出物、滅菌及び薬機関連要求を個別確認する。 |
| 食品機械 | 観察部材又は絶縁部材の限定用途 | 透明性又は絶縁性 | 食品接触適合、熱水、アルカリ洗浄、次亜塩素酸及び溶出を確認する。 |
| 建築・設備 | 透明小型部材、電気設備用絶縁部品 | 耐候性、耐湿性、電気絶縁 | 屋外UV、難燃、熱膨張、衝撃及び供給性を検討する。 |
| 塗料・コーティング | 反応性モノマー、架橋成分、特殊硬化膜 | 多官能アリル基、低粘度及び架橋性 | 酸素阻害、硬化速度、残留モノマー、密着性及び黄変を評価する。 |
| 複合材料 | 繊維又は多孔質基材への含浸マトリックス | 含浸性、架橋性、電気絶縁 | 界面接着、ボイド、硬化収縮及び脆性を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・ブッシュ | × | 標準PDACは摺動材料として確立していない。 | POM、PA、PEEK、PTFE系を優先検討する。 |
| ポンプ・バルブ部品 | △ | 絶縁又は透明小部品として可能性がある。 | 圧力、薬品、温度、衝撃及び長期浸漬を実機評価する。 |
| シール・Oリング | × | 硬質架橋樹脂であり弾性シール材ではない。 | エラストマーを選定する。 |
| チューブ・ホース・配管 | × | 押出及び溶融溶着ができない。 | 連続配管用途は熱可塑性樹脂を選定する。 |
| タンク | △ | 小型注型又はライニングの可能性はある。 | 大型化、収縮、クラック、薬液耐性及び補強設計が必要である。 |
| フィルム・シート | △ | 硬化膜又は注型シートは可能である。 | 一般押出フィルムではない。厚さ均一性と脆性に注意する。 |
| 電気コネクタ・ソケット | ○ | 絶縁性と寸法安定性を活用できる。 | 量産性、難燃、CTI、端子保持力及び供給グレードを確認する。 |
| 一般筐体 | △ | 硬質成形は可能である。 | 大型量産、耐衝撃、ねじ締結及びリサイクル性では熱可塑性樹脂が有利である。 |
| 透明カバー・レンズ | △ | 透明注型が可能である。 | 実用光学ではADC/PADC、PMMA、PC、COCとの比較が必要である。 |
| 自動車電装部品 | △ | 絶縁及び封止用途に可能性がある。 | 自動車規格、熱サイクル、振動、難燃及びVOCを確認する。 |
| 食品機械部品 | △ | 限定的な透明又は絶縁部材に使用余地がある。 | 食品接触証明、洗浄薬品、熱水及び溶出試験が必要である。 |
| 医療機器部品 | △ | 透明小部品又は研究用途に可能性がある。 | ISO 10993、滅菌、抽出物及びトレーサビリティを確認する。 |
| 接着剤・塗料・コーティング | ○ | 反応性架橋モノマーとして利用余地がある。 | 硬化速度、酸素阻害、密着、収縮、残留モノマー及び安全性を評価する。 |
| 複合材料マトリックス | ○ | 低粘度含浸と架橋性を利用できる。 | 脆性、界面接着、硬化収縮、発熱及び複合材物性を確認する。 |
用途適性は材料群としての一般的な評価である。実使用では、グレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、法規制、成形条件、部品形状及び安全率を確認する必要がある。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | ジアリルカーボネート樹脂との違い |
|---|---|---|
| ジアリルカーボネート(DAC) | 本材料の狭義のモノマーである。 | DACは硬化前の低分子液体、PDACは架橋硬化後の樹脂である。 |
| ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(ADC) | ジエチレングリコール骨格を持つ二官能性アリルカーボネートである。 | ADC硬化物はPADC又はCR-39系光学材料として確立している。DACとは分子式、柔軟性及び実用物性が異なる。 |
| CR-39 | PPGの商標として著名なADC系光学モノマー又は硬化レンズ材料である。 | 高アッベ数の眼鏡レンズ用途に実績がある。狭義PDACの代表物性として転用しない。 |
| ジアリルフタレート樹脂(DAP) | 芳香族フタレート骨格を持つアリル系熱硬化樹脂である。 | DAPは電気絶縁成形材料として商業実績と物性データが多い。PDACはより単純なカーボネート骨格である。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明、高耐衝撃、射出・押出可能な熱可塑性エンプラである。 | PCは量産性と耐衝撃性に優れる。PDACは液状注型・含浸と熱硬化架橋を特徴とする。 |
| アクリル樹脂(PMMA) | 高透明、高光沢、耐候性に優れる熱可塑性樹脂である。 | PMMAは板、押出、射出及び熱成形に適する。PDACは型内硬化と含浸に向く。 |
| エポキシ樹脂 | 接着、封止、複合材料、塗料及び電気絶縁に広く使用される。 | エポキシは接着性と配合自由度、供給性に優れる。PDACはアリル架橋、低粘度及び耐候性で比較される。 |
| 不飽和ポリエステル樹脂(UP) | 低粘度熱硬化樹脂としてFRP、注型及び大型成形に広い実績がある。 | UPは供給性と大型複合材で有利である。PDACは特殊反応性及び電気・透明用途で検討される。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東京化成工業株式会社 | Diallyl Carbonate、製品コードA3773 | DACモノマーの試薬供給例である。純度、包装、SDS及び用途制限を確認する。工業用PDAC成形材料ブランドを意味しない。 |
| Merck / Sigma-Aldrich | Diallyl carbonate、製品番号281239 | DACモノマーの試薬供給例である。研究用途向け供給であり、成形材料の保証物性とは異なる。 |
| PPG Industries, Inc. | PPG CR-39 monomer | 関連するADC系光学モノマーの主要企業である。ただしCR-39は狭義のDAC樹脂ではない。 |
| Mitsui Chemicals, Inc. / ACOMON AG | RAV 7 | 関連するADC系低屈折率光学モノマーの代表例である。狭義PDACのメーカー欄と混同しない。 |
狭義のPDAC成形材料について、公開情報から広く流通する専用ブランドを十分に確認できないため、架空のメーカー又は製品名は記載していない。DACモノマーの試薬供給者と、関連するADC/PADC系光学材料メーカーを明確に分けている。量産採用時は供給形態、年間供給量、変更管理、品質保証範囲及び用途制限を個別に確認する。
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 一般的傾向 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| 成形収縮 | 非充填注型では比較的大きい可能性がある。 | 金型補正だけでなく、硬化度、肉厚、温度勾配及び後硬化による寸法変化を実測する。 |
| 異方性 | 非強化注型品では小さいが、GF又は充填材配合で増加する。 | 流動方向と直角方向の収縮、弾性率及び強度を分けて評価する。 |
| 反り | 硬化温度差、片面冷却、充填偏り及び残留応力で発生する。 | 対称肉厚、緩やかな昇温・冷却、均一型温及びアニールを検討する。 |
| クリープ | 架橋体でもTg付近及び長期荷重で変形する。 | 短時間強度を設計許容応力へ直接使用せず、温度・時間依存クリープ試験を行う。 |
| ノッチ感受性 | 硬質架橋体は傷、穴端及び鋭角で脆性破壊しやすい。 | R付与、角部肉厚確保、切削傷低減及び締結応力管理を行う。 |
| インサート・圧入 | 硬化収縮と熱膨張差により周辺クラックが生じ得る。 | 金属表面処理、ローレット形状、予熱、圧入代及び締付けトルクを最適化する。 |
| 設計許容応力 | 材料群の一般値だけでは設定できない。 | 実グレード、温度、湿度、薬品、寿命、繰返し荷重及び安全率を含めて決定する。 |
品質・成形不良
| 不良現象 | 主な原因 | 材料側要因 | 成形条件側要因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|---|
| 気泡・ボイド | 溶存ガス、揮発分、漏れ、急速発熱 | 水分、低沸点不純物、開始剤分解ガス | 脱泡不足、急昇温、型締め不良 | 原料乾燥・精製、真空脱泡、緩慢昇温、型シール改善 |
| 未硬化・べたつき | 開始剤不足、酸素阻害、低温 | 阻害剤過多、開始剤劣化、配合不均一 | 硬化温度不足、時間不足、空気接触 | 開始剤管理、窒素置換、温度履歴確認、後硬化 |
| 黄変・変色 | 過熱、開始剤残渣、金属汚染 | 低純度モノマー、不適切な添加剤 | 局所過熱、長時間高温 | 高純度原料、低着色開始剤、金属汚染防止、温度最適化 |
| クラック・割れ | 硬化収縮、残留応力、ノッチ | 高架橋密度、低靱性、充填偏り | 急冷、片面加熱、離型時衝撃 | 段階硬化、緩慢冷却、R設計、アニール、靱性改良 |
| 反り | 温度・収縮の不均一 | 配合分離、繊維配向 | 型温差、偏肉、冷却差 | 配合均一化、対称設計、型温均一化、治具アニール |
| 白化・ヘーズ | 微小ボイド、相分離、吸水、溶剤膨潤 | 共重合成分の相溶性不足、充填材凝集 | 急速ゲル化、混入気泡、薬品接触 | 配合相溶性確認、ろ過・脱泡、硬化速度調整、耐薬品試験 |
| 金型汚染・離型不良 | 析出、残留モノマー、離型剤不適 | 低分子成分、添加剤ブリード | 過硬化、型表面粗れ、清掃不足 | 離型剤最適化、型清掃、後硬化条件調整、表面処理 |
| 繊維浮き・層間剥離 | 濡れ不足、界面接着不足 | サイジング不適合、粘度過高 | 充填不良、硬化収縮、急加熱 | 界面処理、粘度調整、真空含浸、段階硬化 |
注意点・劣化・故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化・黄変 | 熱、酸素、開始剤残渣、金属汚染 | 高温長時間、UV併用 | 黄変、透過率低下、脆化 | 温度制限、安定化、後硬化最適化 | 熱老化、色差、透過率、曲げ強度 |
| 加水分解 | 炭酸エステル結合への水又はOH–攻撃 | 強アルカリ、高温水、蒸気 | 質量減少、表面侵食、白化、強度低下 | 強アルカリ回避、温度低下、接触時間短縮 | 実液浸漬、質量、表面粗さ、IR、強度保持率 |
| 溶剤膨潤 | 相溶性の高い溶剤の吸収 | ケトン、エステル、芳香族、塩素系 | 膨潤、軟化、曇り、クラック | 溶剤選定、応力除去、短時間洗浄 | 重量・寸法・硬度・透過率、応力下浸漬 |
| 環境応力割れ | 残留又は外部応力と薬品の複合作用 | 穴端、締結、切削傷、溶剤接触 | クレージング、突然破壊 | R設計、アニール、締付け制限、薬品変更 | 定ひずみESC、実部品薬品負荷試験 |
| クリープ破壊 | 長期荷重、Tg接近 | 高温、持続荷重、薄肉 | 変形、締結力低下、破断 | 許容応力低減、肉厚増加、温度制限 | クリープ、応力緩和、長期実部品試験 |
| 疲労破壊 | 繰返し荷重、ノッチ、界面欠陥 | 振動、曲げ、温度サイクル | 微小亀裂、強度低下 | 応力集中低減、表面傷防止 | S-N疲労、振動、温度サイクル |
| アウトガス | 残留モノマー、開始剤分解物、低分子添加剤 | 真空、高温、密閉系 | 汚染、臭気、光学曇り、接点障害 | 十分な硬化・真空ベーク、低揮発原料 | TML/CVCM又は用途相当アウトガス試験 |
| 添加剤ブリード・抽出 | 相溶性不足、低分子移行 | 高温、溶剤、長期保存 | 表面べたつき、接着不良、外観変化 | 高相溶性添加剤、配合量最適化 | 抽出、表面分析、接着耐久、溶出 |
| 金属腐食・電食 | 残留酸・塩基、イオン性不純物、水分 | 高湿、電圧印加、異種金属 | 端子腐食、絶縁低下 | イオン管理、金属前処理、防湿設計 | 高温高湿バイアス、イオン抽出、腐食試験 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的状況 | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | 適合設計は可能である。 | モノマー、開始剤、充填材、顔料、難燃剤、金属部品及び製造拠点ごとの証明書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 個別確認が必要である。 | 最新候補リスト、残留モノマー、添加剤及び輸入者義務を確認する。 |
| PFAS関連 | DAC骨格自体は通常フッ素を含まない。 | 離型剤、濡れ剤、防汚コート及び加工助剤を含む最終配合を確認する。 |
| TSCA・国内化審法 | 物質及び用途ごとに確認する。 | モノマー登録状況、輸出入、年間数量及び用途制限を確認する。 |
| 食品接触 | 材料群として一律適合ではない。 | 日本の食品衛生法ポジティブリスト、FDA、EU食品接触規則、使用温度及び食品種別を個別確認する。 |
| 医療用途 | 特定グレード又は完成品評価が必要である。 | ISO 10993、USP Class VI、抽出物・溶出物、滅菌法及び接触部位を確認する。 |
| UL・IEC | グレード、色及び厚さ依存である。 | UL Yellow Card、UL 94、CTI、RTI及びIEC要求を個別確認する。 |
| 自動車・鉄道・航空 | 材料名だけでは適合しない。 | OEM規格、VOC、燃焼、耐候、耐薬品、トレーサビリティ及び変更管理を確認する。 |
規制適合はメーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、使用温度及び接触条件により異なる。「一般に対応可能」「適合グレードが存在する」「個別グレードの証明書確認が必要」を区別し、材料名だけで適合を断定しない。
環境・リサイクル性
| 項目 | 評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 熱可塑性/熱硬化性 | 熱硬化性 | 硬化後は再溶融しない。 |
| マテリアルリサイクル | 低い | 粉砕充填材としての利用余地はあるが、同等品質の樹脂へ溶融再生できない。 |
| ケミカルリサイクル | 研究・個別検討 | 加溶媒分解、熱分解又はモノマー回収は技術・経済性の検討が必要である。 |
| サーマルリサイクル | 条件付き | 炭素、水素、酸素を主成分とするが、添加剤、難燃剤、顔料及び有害ガス管理が必要である。 |
| 再生材利用 | 限定的 | 硬化粉砕物をフィラーとして利用する場合、強度、界面、色、異物及びトレーサビリティを確認する。 |
| 生分解性 | 一般にない | バイオベースと生分解性を混同しない。 |
| バイオベース性 | 個別組成 | アリルアルコール及びカーボネート原料の由来により変わる。 |
| 識別表示 | 専用の汎用樹脂コードは限定的 | 複合材、熱硬化性樹脂又は社内材質コードで管理する場合がある。 |
価格・供給性
| 項目 | 相対評価・傾向 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相対価格 | 比較的高価格~高価格 | 汎用熱可塑性樹脂より高く、試薬グレードは特に高価である。購入量、純度及び供給形態で大きく変わる。 |
| 汎用的な流通性 | 低い | 狭義PDACの工業成形材料はDAP、エポキシ、UP又はADC系ほど一般流通していない。 |
| 国内入手性 | 研究用モノマーは入手可能 | 試薬供給例はあるが、量産成形材料の供給は個別照会となる可能性が高い。 |
| 少量購入 | モノマー試薬は比較的可能 | 用途制限、保管温度、危険物・消防法、輸送及び廃棄を確認する。 |
| 供給形態 | 液状モノマー、プレポリマー、受託配合の可能性 | 一般的な熱可塑性ペレットや押出板材としての入手は期待しにくい。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 硬質熱硬化性樹脂として標準的な参考範囲であるが、公開データは限定的である。 |
| 剛性 | 3 | 非強化で約2~4 GPaの参考範囲である。 |
| 衝撃強度 | 2 | 架橋硬化物でありノッチと表面傷に注意する。 |
| 耐熱性 | 3 | 配合と後硬化により中程度から良好である。 |
| 低温特性 | 2 | 脆性と熱応力を確認する必要がある。 |
| 耐薬品性 | 3 | 水、希酸、油には比較的良好だが、強アルカリと一部有機溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 4 | アリル系架橋樹脂として比較的良好な傾向がある。 |
| 耐加水分解性 | 2 | 炭酸エステルを持ち、強アルカリ、高温水及び蒸気に注意する。 |
| 寸法安定性 | 4 | 架橋体であるが、硬化収縮と残留応力管理が必要である。 |
| 低吸水性 | 3 | 比較的低吸水が期待されるが、公開値は限定的である。 |
| 摺動性 | 1 | 標準材は摺動用途に適さない。 |
| 耐摩耗性 | 2 | 硬質であるが、摩耗条件の体系データが不足する。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 乾燥状態で高い体積抵抗率が期待される。 |
| 難燃性 | 1 | 未難燃標準材の等級は保証できない。 |
| 透明性 | 4 | 非充填高純度配合では高透明化が可能である。 |
| 成形加工性 | 2 | 注型・含浸には適するが、射出・押出には不適である。 |
| 切削加工性 | 3 | 加工可能だが欠けとクラックに注意する。 |
| 接着性 | 2 | 表面処理と接着剤最適化が必要である。 |
| リサイクル性 | 1 | 再溶融できない。 |
| 価格優位性 | 1 | 供給性が低く、汎用材より高コストになりやすい。 |
スコアは5が非常に優れる、4が優れる、3が標準的、2がやや劣る、1が劣る、0が評価不能又はデータなしを示す。材料全体の一般傾向であり、特定グレードの最高性能を基準としていない。
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実液濃度、実温度及び予定接触時間で、重量、寸法、硬度、外観、色差、透過率、ヘーズ及び強度保持率を確認する。
- 環境応力割れ試験:切削穴、ノッチ又は締結部を含む実部品へ設計ひずみを与え、IPA、ケトン、芳香族溶剤、洗浄剤及び強アルカリとの複合影響を評価する。
- 高温高湿・熱水試験:85℃・85%RH、温水又は用途相当条件で、吸水、寸法、絶縁、白化、界面剥離及びクラックを確認する。
- 熱老化・温度サイクル試験:連続使用温度候補及び上限温度で、色差、強度、Tg、寸法、接着及びインサート周辺応力を確認する。
- クリープ・疲労試験:予定温度、荷重、応力比、繰返し回数及び寿命で実施し、短時間引張強度だけで長期設計しない。
- 電気特性試験:乾燥及び吸湿後の体積抵抗率、絶縁破壊、誘電率、誘電正接、CTI及び高温高湿バイアスを確認する。
- 難燃性試験:実厚さ、実色及び実配合でUL 94、LOI又は用途規格を確認する。
- 実成形試験:最大肉厚及び最小肉厚の実形状で温度履歴、発熱、収縮、気泡、反り、黄変、残留モノマー及び内部応力を測定する。
- 接着・表面処理試験:前処理、プライマー、接着剤、塗装、めっき又は蒸着の初期密着と、熱水、高湿、薬品及び温度サイクル後の耐久性を確認する。
- 真空・医療・食品用途:アウトガス、抽出物、溶出、臭気、滅菌耐久、生体適合及び食品接触適合を完成品条件で確認する。
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