概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系 |
| 略記号 | s-1,2-PB、SPB、1,2-PBD。RBはENEOSマテリアル株式会社の代表的な製品系列名であり、一般名称又は国際的に統一された略号ではない。 |
| IUPAC | poly(1-vinylethylene) のシンジオタクチック立体規則性を有するものとして表される。原料基準では syndiotactic 1,2-poly(1,3-butadiene) とも表記される。 |
| 英語名 | Syndiotactic 1,2-Polybutadiene、Syndiotactic 1,2-Poly(1,3-butadiene) |
| 日本語名・別名 | シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、シンジオタクチックポリブタジエン、低結晶性1,2-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー |
| 分類 | ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、低結晶性ジエン系熱可塑性樹脂、反応性熱可塑性エラストマー |
| プラスチック分類 | 実務上は熱可塑性エラストマーに分類する。汎用プラスチックとして整理される場合もあるが、一般的なPE、PP、PS等とは物性及び劣化機構が異なる。 |
| 化学式又は代表構造 | 分子式の繰返し表現は(C4H6)n。代表的な1,2付加構造単位は[-CH2-CH(-CH=CH2)-]nである。 |
| CAS No. | 31567-90-5がシンジオタクチックポリブタジエンの代表的な登録番号として使用される。9003-17-2はポリブタジエン一般に広く使用される登録番号であり、ミクロ構造を一意に限定しない。 |
| 構造・主成分 | 1,3-ブタジエンの1,2付加単位を90%以上含む代表グレードがあり、主鎖に対して側鎖ビニル基が交互方向に配置するシンジオタクチック配列を形成する。低結晶性の結晶相が物理架橋点として働き、非晶相が柔軟性を担う。 |
| 代表的な分子量・結晶化度 | 公開されている代表的な商業グレードでは、平均分子量はおおむね100,000~200,000、結晶化度は15~35%である。測定法及びグレードにより変動する。 |
| 主な用途 | フィルム、医療用を含むチューブ、溶融袋、履物底及び発泡体、工業用成形品、制振材、ゴム及び熱可塑性エラストマーの改質材、架橋助剤、反応性改質材 |
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系は、1,3-ブタジエンを立体特異的に1,2付加重合して得られる半結晶性ポリマーである。一般的な高シス-1,4-ポリブタジエンゴムが主鎖中に二重結合を持つのに対し、本材料は主鎖が炭素-炭素単結合で構成され、各繰返し単位に側鎖ビニル基を持つ。シンジオタクチック配列による結晶相が可逆的な物理架橋点となるため、常温ではゴム状又は軟質樹脂状の挙動を示し、融点以上では溶融加工できる。
代表的な商業グレードは、1,2結合量、立体規則性及び結晶化度の調整によって融点が約71~126℃の範囲に設定されている。密度は約0.901~0.914g/cm3と低く、柔軟性、透明性、低温ヒートシール性、引裂き抵抗、流動性及び架橋反応性を組み合わせられる点が特徴である。一方、側鎖ビニル基を多く含むため、熱、酸素、紫外線、オゾン及び強い酸化剤による劣化、並びに炭化水素系及びハロゲン化炭化水素系溶剤による膨潤又は溶解に注意を要する。
未架橋品は熱可塑性材料として再溶融できるが、硫黄、過酸化物、紫外線又は放射線等で架橋した製品は再溶融できない。材料比較では、未架橋の低結晶性商業グレード、架橋ゴム配合物、高結晶性SPB繊維及び液状1,2-ポリブタジエンを混同してはならない。
特徴
| 評価項目 | 代表的な特徴 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 長所 | 低密度、柔軟性、透明性、低温ヒートシール性、引裂き抵抗、低吸水性、溶融流動性及び架橋反応性を併せ持つ。結晶化度の調整により、軟質から高硬度まで設計できる。 | 長所はグレード、冷却速度、延伸、配合及び架橋状態により変化する。高融点化すると一般に硬さ及び耐熱性は向上するが、低温柔軟性は低下する。 |
| 短所 | 未架橋品は高温でクリープしやすく、融点付近で急激に剛性が低下する。不飽和側鎖により熱酸化、紫外線及びオゾン劣化を受ける場合がある。非極性溶剤及びハロゲン化溶剤に弱い。 | 長期屋外、高温連続荷重、燃料又は油への浸漬、真空又は低アウトガス用途では、安定剤、架橋及び実部品試験を含む評価が必要である。 |
| 外観 | 自然色は乳白色から半透明又は透明であり、ペレットとして供給される代表グレードがある。急冷及び薄肉化により透明性を得やすい。 | 結晶化、厚肉化、充填材、架橋、熱履歴及び酸化劣化により白濁又は黄変し得る。 |
| 耐熱性 | 融点は代表的な現行グレードで約71~126℃である。架橋により高温での形状保持性、圧縮永久ひずみ及び耐熱老化性を改善できる。 | 融点、ビカット軟化温度、連続使用温度及び架橋品の耐熱温度を同一視しない。未架橋品は融点より十分低い温度でも長時間荷重で変形し得る。 |
| 耐薬品性 | 水、希薄な塩酸、希薄な硫酸、希薄な水酸化ナトリウム、メタノール及びアセトンには比較的安定とする公開知見がある。 | 芳香族炭化水素、脂肪族又は環状炭化水素、ハロゲン化炭化水素及びTHF等では膨潤又は溶解しやすい。濃硫酸、硝酸、次亜塩素酸塩等の酸化性薬品では硬化、亀裂又は鎖切断に注意する。 |
| 加工性 | 射出、押出、インフレーション、Tダイ、カレンダー、発泡及び加硫成形に適用できる。一般的な樹脂加工機又はゴム加工設備を使用できる。 | 低融点かつ反応性が高いため、局所過熱、長時間滞留及びデッドスポットを避ける。樹脂温度が約190℃以上になるとゲル化リスクが増すとの技術知見がある。 |
| 低温特性 | 代表的な低融点グレードは比較的良好な低温柔軟性を示す。歴史的な公開資料ではぜい化温度が約-40~-32℃のグレード例がある。 | 高結晶化度又は高融点グレードほど低温で硬化しやすい。実使用温度、衝撃速度及び成形履歴を合わせて確認する。 |
| 分類上の注意 | ホモポリマーでありながら、結晶相をハードセグメント、非晶相をソフトセグメントとしてTPE挙動を示す点が一般的なブロック共重合型TPEと異なる。 | 高シスBR、液状ポリブタジエン、高融点SPB短繊維、SBR及びSBSとは別材料である。RB等の製品名だけでミクロ構造及び架橋状態を判断しない。 |
長所
- 密度が低く、軟質PVC等と比較して軽量化しやすい。
- 可塑剤を多量に添加しなくても柔軟性を得られる代表グレードがあり、可塑剤移行リスクを抑えられる。
- 結晶相による物理架橋と側鎖ビニル基による化学架橋の両方を利用できる。
- フィルムでは柔軟性、光沢、突刺し抵抗、自己粘着性及びガス透過性を活用できる。
- ゴム、EVA、ポリオレフィン系又はスチレン系材料の加工性、表面性、硬さ及び反応性を調整する改質材として使用できる。
短所
- 未架橋状態では耐熱変形性及び高温クリープ性が加硫ゴムより劣る。
- 不飽和結合を多く含むため、無安定状態では熱、光、酸素及びオゾンによる架橋又は鎖切断が生じ得る。
- トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、クロロホルム、塩素系洗浄剤等には不適となる場合が多い。
- 専業的な材料であり、汎用ポリオレフィン又は一般的なSBCと比較して供給者及びグレード選択肢が限られる。
- 熱可塑成形、架橋成形、発泡成形及びゴム配合で最適条件が大きく異なる。
構造式
1,3-ブタジエンが1,2付加重合すると、主鎖は-CH2-CH-で構成され、各メチン炭素にビニル基-CH=CH2が側鎖として残る。シンジオタクチック構造では、側鎖ビニル基の立体配置が主鎖に対して交互に配列し、結晶化可能な連鎖を形成する。
| 構造要素 | 化学的意味 | 物性への主な影響 |
|---|---|---|
| 1,2付加主鎖 | ブタジエンの一方の二重結合が重合に使われ、炭素-炭素単結合の主鎖を形成する。 | 主鎖中の二重結合が少なくなり、側鎖ビニル基の立体配置及び結晶化が物性を支配する。 |
| 側鎖ビニル基 | 各1,2付加単位に反応性の高い炭素-炭素二重結合が残る。 | 硫黄加硫、過酸化物架橋、光架橋、グラフト及び酸化反応を利用できる一方、熱酸化及びオゾン劣化の起点となる。 |
| シンジオタクチック配列 | 側鎖の立体配置が主鎖に対して交互となる立体規則性を持つ。 | 結晶化可能な連鎖を形成し、融点、硬度、弾性率、耐摩耗性及び形状保持性を発現する。 |
| 結晶相と非晶相 | 結晶相が物理架橋点、非晶相が柔軟な連続相として働く。 | 未架橋でもTPE挙動を示す。融点を超えると結晶相が融解し、流動可能となる。 |
| 共重合体・変性系 | 商業材料は基本的にホモポリマーであるが、ブレンド、グラフト、エポキシ化、架橋、油展又は充填材配合による変性系がある。 | 耐油性、極性、接着性、剛性、発泡性及び耐熱性を調整できるが、標準未充填グレードの物性値とは別管理が必要である。 |
種類・代表グレード
代表的な商業グレードでは、1,2結合量及び結晶化度を変えることにより融点、硬さ、流動性及び用途が調整される。以下のRB系列の数値は、ENEOSマテリアル株式会社が公開する現行資料の代表値である。機械物性、法規適合及び成形条件は、購入時点の個別グレード資料を確認する必要がある。
| 代表グレード | 1,2結合量 | MFR | 融点 | 密度 | 主な特徴 | 代表用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| RB 810 | 90 | 3 | 71 | 0.901 | 低融点で柔軟性及び低温シール性を重視するグレードである。 | 医療用チューブ、フィルム、溶融袋、柔軟成形品 |
| RB 820 | 92 | 3 | 95 | 0.906 | 柔軟性、硬さ及び耐熱性のバランスを取った中融点グレードである。 | 医療用チューブ、フィルム、溶融袋、工業用品 |
| RB 830 | 93 | 3 | 112 | 0.909 | 高融点化により硬さ及び形状保持性を高めたグレードである。 | 履物底、発泡体、工業用品、改質材 |
| RB 840 | 94 | 9 | 126 | 0.914 | 高融点かつ高流動であり、高硬度成形及び配合加工に適する。 | 履物底、工業用品、ゴム改質、加工性改良 |
MFRの単位はg/10min、測定条件は150℃・21.2N、融点の単位は℃、密度の単位はg/cm3である。上表は代表値であり、規格値又は保証値として使用しない。
| グレード区分 | 主な改質方法又は構成 | 物性への主な影響 | 主用途 | 公開状況 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準グレード | 1,2結合量及び結晶化度を制御した未充填ペレット | 低密度、柔軟性、透明性、熱可塑性及び架橋反応性を発現する。 | フィルム、チューブ、履物、工業用品 | RB 810~840が代表例 |
| フィルム・押出グレード | 低融点又は中融点グレードを中心に、必要に応じて酸化防止剤及び滑剤を配合する。 | 溶融張力、透明性、ヒートシール性及び突刺し抵抗を調整する。 | ストレッチフィルム、ラミネート、溶融袋 | 個別配合及び加工条件依存 |
| 発泡・履物グレード | 高融点グレード、発泡剤、架橋剤、充填材及び着色剤を配合する。 | セル安定性、硬度、反発性、圧縮永久ひずみ及び耐摩耗性を調整する。 | ミッドソール、アウトソール、スポンジ | コンパウンド設計依存 |
| 架橋グレード | 硫黄、過酸化物、光開始剤又は放射線により側鎖ビニル基を架橋する。 | 耐熱変形性、弾性回復、耐溶剤性及び圧縮永久ひずみを改善する。 | 高硬度ゴム、シール、工業部品、発泡体 | 架橋系及び架橋密度依存 |
| ゴム改質・反応助剤 | NR、SBR、BR、EPDM等へブレンドし、硫黄又は過酸化物系で共架橋する。 | 硬さ、グリーン強度、流動性、表面性、耐摩耗性及び架橋効率を調整する。 | タイヤ、ベルト、ホース、工業ゴム | 配合比及び相溶性依存 |
| GF・CF強化グレード | ガラス繊維又は炭素繊維を配合した一般化可能な標準商業グレードは、公開資料上で確認が限定的である。 | 剛性及び寸法安定性は向上し得るが、柔軟性、透明性及び伸びは低下する。 | 特殊複合材 | データなし。標準値へ混在させない。 |
| 難燃・導電・摺動グレード | 難燃剤、導電性充填材又は固体潤滑剤を配合する。 | 燃焼性、電気抵抗又は摩擦特性を調整できるが、機械特性及び加工性とのトレードオフがある。 | 特殊工業部品 | コンパウンダー個別仕様 |
| 食品・医療用途向け | 抽出物、添加剤、滅菌方法及び接触条件を管理した個別グレード又は配合物 | 低可塑剤性、透明性及び柔軟性を活用できる。 | チューブ、包装、医療部材 | 用途別証明書の確認が必要 |
成形加工
加工方法別の適性
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 低融点、高流動であり、軟質成形品、履物底及び発泡成形に適する。 | 最高シリンダー温度は一般に170℃以下を目安とし、長時間滞留、デッドスポット及び樹脂温度190℃以上を避ける。 |
| 押出成形 | ◎ | フィルム、シート、チューブ、ホース及び異形押出に適用できる。 | ダイ出口樹脂温度は一般に140~160℃が歴史的な推奨範囲であり、170℃以上では熱安定性に注意する。 |
| ブロー成形 | ○ | 低融点グレード及びブレンド設計により中空成形へ適用できる。 | 単独材では溶融張力及びパリソン安定性が不足する場合がある。グレード、肉厚及びブロー比を確認する。 |
| インフレーション成形 | ◎ | 柔軟、透明、自己粘着性及び突刺し抵抗を持つフィルムを得やすい。 | 自然冷却だけでは不足しやすく、冷却風量、ブロー比、ダイギャップ及び結晶化速度を管理する。 |
| Tダイフィルム成形 | ◎ | シート、ラミネート及びヒートシール層に適用できる。 | ネックイン、ロール粘着、冷却速度及び巻取りブロッキングを評価する。 |
| 真空成形 | △ | シート化した材料で適用可能であるが、低軟化温度及び弾性回復の影響を受ける。 | 加熱窓が狭く、ドローダウン、肉厚偏差及び離型変形に注意する。 |
| 圧空成形 | △ | 薄肉シートでは可能である。 | 金型温度、冷却及び残留ひずみによる収縮を確認する。 |
| 圧縮成形 | ○ | シート作製、評価試験片及び架橋配合物の成形に利用できる。 | 未架橋品と架橋品で温度、圧力及び保持時間が異なる。架橋品ではスコーチ安全性を確認する。 |
| トランスファー成形 | ○ | 架橋ゴム配合物及び複雑形状に適用可能である。 | 流動中の早期架橋、バリ及び金型内滞留を管理する。 |
| 回転成形 | △ | 粉末化及び溶融融着条件を確立できれば適用余地がある。 | 一般的な標準用途ではなく、粉体流動性、酸化及びサイクル時間の検証が必要である。 |
| 発泡成形 | ◎ | 化学発泡剤と架橋反応を組み合わせ、均一な微細セル及び高反発発泡体を設計できる。 | 発泡速度と架橋速度の一致、収縮、セル破れ、残留発泡剤及びVOCを確認する。 |
| 3Dプリント | △ | 熱可塑性であるため原理上可能である。 | 市販フィラメント及び標準条件が限定的であり、ブロッキング、供給安定性及び熱劣化が課題となる。 |
| 切削加工 | △ | 高硬度又は架橋品では加工可能である。 | 軟質未架橋品はたわみ、発熱、バリ及び寸法戻りが生じやすい。低温固定又は治具を検討する。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、熱風及び条件により超音波溶着が可能である。 | 低融点のため過熱変形しやすい。結晶化度及び界面汚染が強度に影響する。 |
| 接着 | ○ | 適切なプライマー及び接着剤を用いることで履物等に実用される。 | 低極性表面であるため、無処理接着は不安定になり得る。表面処理、プライマー及び実接着強度を確認する。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 顔料着色及び塗装が可能であり、歴史的資料ではアクリル系塗料の適用例がある。 | 添加剤ブリード、表面エネルギー及び変形追従性を確認する。 |
| めっき・蒸着 | △ | 表面処理及び下地層を設ければ適用余地がある。 | 柔軟性、熱膨張差、ガス放出及び密着耐久性が課題となる。 |
| レーザーマーキング | △ | 吸収剤又は顔料を配合した材料で適用可能である。 | 標準自然色材ではコントラストが不足する場合がある。局所熱劣化及び発煙を評価する。 |
| インサート成形 | ○ | 低圧・低温で流動しやすく、金属又は樹脂部品への被覆成形に適する場合がある。 | インサート表面処理、熱膨張差、界面接着及び残留応力を確認する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 代表値又は範囲 | 対象・条件 | データ区分 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要 | 未開封・清浄な標準ペレット | 公開技術資料 | 低吸水性である。ただし、結露、表面水分、再生材及び吸湿性添加剤を含むコンパウンドでは個別確認する。 |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | データなし | 材料群一般 | 個別グレード依存 | 不要な高温乾燥は酸化及びブロッキングを促進し得る。供給者指定を優先する。 |
| 許容含水率 | % | データなし | 材料群一般 | 個別グレード依存 | 吸湿加水分解型樹脂ではないが、外部水分はシルバー及びボイドの原因となる。 |
| シリンダー最高温度 | ℃ | 170以下 | 射出成形の一般目安 | 歴史的公開技術資料 | 現行グレードの融点に応じて設定する。必要以上の高温化を避ける。 |
| 樹脂温度上限の注意域 | ℃ | 190以上 | 長時間滞留又は局所過熱 | 歴史的公開技術資料 | ゲル化、架橋、黒点及び粘度上昇のリスクが増す。 |
| 押出ダイ出口樹脂温度 | ℃ | 140~160 | インフレーション押出の一般目安 | 歴史的公開技術資料 | 170℃以上では熱安定性に注意する。低融点グレードではより低温で加工できる場合がある。 |
| 金型温度 | ℃ | 10~30 | 射出成形の一般目安 | 歴史的公開技術資料 | 透明性を高める場合は急冷を検討する。高い結晶化度又は寸法安定性を狙う場合は最適化する。 |
| 射出圧力 | MPa | データなし | 形状・機械依存 | 個別成形条件 | 高流動であるため、必要最小限から調整する。バリ及び過充填に注意する。 |
| 保圧 | MPa | データなし | 形状・ゲート依存 | 個別成形条件 | 低弾性材料では過大保圧による残留応力及び離型変形を避ける。 |
| スクリューL/D | 無次元 | 20~30 | 単軸押出機 | 歴史的公開技術資料 | メータリングタイプの例である。 |
| スクリュー圧縮比 | 無次元 | 2~4 | 単軸押出機 | 歴史的公開技術資料 | 過度なせん断発熱を避け、安定吐出を確認する。 |
| インフレーションダイギャップ | mm | 0.5~1.0 | 代表的なフィルム設備 | 歴史的公開技術資料 | 製品厚さ、ブロー比及びグレードにより最適化する。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.3~0.9 | 歴史的なRB 810~840の代表範囲 | 歴史的公開技術資料 | 現行グレード、肉厚、ゲート及び冷却条件で再確認する。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | データなし | 材料群一般 | 個別成形条件 | フィルム延伸又は流動配向による異方性を実測する。 |
| 滞留時間 | min | 最短化 | 全溶融加工 | 実務推奨 | 長時間停止時はポリエチレン等の供給者推奨材でパージし、加熱を停止する。設備内に放置しない。 |
| アニール | - | 通常は個別判断 | 寸法安定性又は結晶化制御 | 形状・用途依存 | 透明性を優先する急冷品では、後加熱により白濁又は収縮が生じる場合がある。 |
成形条件は、RB 810~840の融点差が大きいため一律に設定できない。開始条件は融点より十分高く、かつ170℃を超えない範囲を基本とし、樹脂温度、吐出安定性、外観、ゲル、臭気及び機械物性を確認しながら調整する。架橋剤又は発泡剤を含む配合では、熱可塑成形の条件をそのまま適用せず、スコーチ時間、架橋曲線及び発泡分解温度を優先する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 適用上の特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 熱板溶着・熱風溶着 | ◎ | 未架橋品は低温で融着しやすい。 | 過熱による変形、酸化及びビードのはみ出しを管理する。 |
| 超音波溶着 | ○ | 高硬度、薄肉又はインサート形状で適用可能である。 | 軟質材では振動減衰が大きく、エネルギーダイレクター設計が必要である。 |
| 振動溶着 | △ | 比較的大型部品へ適用余地がある。 | 軟質材の変形、摩耗粉及び外観を評価する。 |
| レーザー溶着 | △ | 透過材と吸収材の組合せを設計できれば適用可能である。 | 結晶化度、着色剤及び界面温度管理が必要である。 |
| 高周波溶着 | × | 低極性で誘電損失が小さく、一般に高周波加熱しにくい。 | 極性改質又は別接合法を検討する。 |
| 溶剤接着 | △ | 溶解性の高い芳香族又はハロゲン化溶剤で界面を軟化できる。 | 安全性、VOC、残留溶剤、応力亀裂及び寸法変化のリスクが大きい。 |
| 接着剤接合 | ○ | 専用プライマーとウレタン系又はゴム系接着剤等の組合せで実用可能である。 | 表面汚染、添加剤ブリード、柔軟性差及び耐熱水性を実試験する。 |
| 機械締結 | ○ | 座金、クランプ及びインサートを用いて固定できる。 | クリープ、応力緩和、締付け過多及び切欠き破壊を考慮する。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ◎ | 表面エネルギーを上げ、印刷及び接着を改善できる。 | 処理効果の経時後退、過処理による脆化及び低分子酸化物を確認する。 |
| フレーム処理 | ○ | 短時間の表面酸化により濡れ性を改善できる。 | 不飽和材料であり、焦げ、収縮及び着火を避ける厳密な条件管理が必要である。 |
| プライマー処理 | ◎ | 低極性表面と接着剤の界面相互作用を補える。 | 用途薬品、温度及び可撓性に適合するプライマーを選定する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下の比較用代表グレードはRB 820とする。現行公開資料で確認できる代表値と、1984年に公表された同名グレードの歴史的評価値を分けて記載する。現行RB 820の融点は95℃と公表されている一方、歴史的資料の同名グレードは融点80℃であり、処方、測定法又は製品仕様が同一とは限らない。歴史的機械物性を現行品の保証値として使用してはならない。
比較機能用の主要物性データ
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 試験条件・規格 | 材料状態・グレード | 信頼度 | 出典区分 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.906 | 0.901 | 0.914 | 現行公開代表値 | RB 820代表、RB 810~840範囲 | A | メーカー |
| 比重 | 無次元 | 0.906 | 0.901 | 0.914 | 23℃付近の密度から実用上同等として扱う目安 | RB 820代表 | B | 換算 |
| 1,2結合量 | % | 92 | 90 | 94 | 現行公開代表値 | RB 820代表、RB 810~840範囲 | A | メーカー |
| 結晶化度 | % | データなし | 15 | 35 | 測定法不明の材料系列代表範囲 | 低結晶性商業グレード | A | メーカー |
| 平均分子量 | g/mol | データなし | 100000 | 200000 | 平均分子量の種類及び測定法は公開ページで特定されていない。 | 低結晶性商業グレード | B | メーカー |
| MFR | g/10min | 3 | 3 | 9 | 150℃、21.2N | RB 820代表、RB 810~840範囲 | A | メーカー |
| 融点 | ℃ | 95 | 71 | 126 | 現行公開代表値、測定規格は公開ページで特定されていない。 | RB 820代表、RB 810~840範囲 | A | メーカー |
| ガラス転移温度 | ℃ | データなし | -30 | -25 | 二次資料におけるRB 810及びRB 820の参考範囲 | 未架橋、試験法不明 | C | 二次資料 |
| 引張強さ・破断 | MPa | データなし | 6.5 | 10.5 | 二次資料におけるRB 810及びRB 820、試験規格不明 | 未架橋、成形状態不明 | C | 二次資料 |
| 引張破断伸び | % | データなし | 700 | 750 | 二次資料におけるRB 810及びRB 820、試験規格不明 | 未架橋、成形状態不明 | C | 二次資料 |
| 300%引張応力 | MPa | データなし | 3.9 | 7.8 | 公開特許に記載されたRB 810~830の換算値 | 未架橋、詳細条件不明 | C | 特許 |
| 引張弾性率 | GPa | データなし | データなし | データなし | 一般化可能な現行値を確認できない。 | - | 0 | データなし |
| 曲げ弾性率 | GPa | データなし | データなし | データなし | 現行グレードの一般化可能な値を確認できない。 | - | 0 | データなし |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m2 | データなし | データなし | データなし | 歴史的資料ではASTM D256Bで「破壊せず」のグレード例があるが、数値化しない。 | 未架橋歴史的グレード | C | 学協会資料 |
| 荷重たわみ温度・0.45MPa | ℃ | データなし | データなし | データなし | 軟質TPEであり、一般化可能な現行値を確認できない。 | - | 0 | データなし |
| 荷重たわみ温度・1.80MPa | ℃ | データなし | データなし | データなし | 軟質TPEであり、一般化可能な現行値を確認できない。 | - | 0 | データなし |
| 連続使用温度 | ℃ | データなし | データなし | データなし | 未架橋、架橋及び荷重条件で大きく異なる。 | 用途別評価が必要 | 0 | 一般化困難 |
| 吸水率・24時間 | % | データなし | データなし | データなし | 低吸水性で予備乾燥不要とする公開技術知見はあるが、数値を確認できない。 | 未充填標準グレード | C | 定性資料 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 2×1017 | データなし | データなし | JIS K6911、20℃、60%RH、歴史的RB 820 | プレスシート、厚さ2mm | B | 学協会資料 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 46 | データなし | データなし | JIS C2111、25℃、40%RH、歴史的RB 820 | プレスシート、厚さ1mm | B | 学協会資料 |
| 比誘電率・1MHz | 無次元 | 2.6 | データなし | データなし | JIS K6911、20℃、60%RH、歴史的RB 820 | プレスシート、厚さ2mm | B | 学協会資料 |
| 誘電正接・1MHz | 無次元 | 0.0045 | データなし | データなし | JIS K6911、20℃、60%RH、歴史的RB 820 | プレスシート、厚さ2mm | B | 学協会資料 |
歴史的RB 820の参考機械物性
次表は1984年に日本ゴム協会誌へ掲載されたRB 820の値である。現行品の保証値ではなく、同名グレードの仕様変遷があるため比較機能の確定値には使用しない。
| 項目 | 単位 | 参考値 | 試験規格 | 材料状態 | 注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| ビカット軟化温度 | ℃ | 52 | ASTM D1525 | 未架橋歴史的RB 820 | 現行RB 820の融点95℃とは別指標であり、仕様差も含む。 |
| 融点 | ℃ | 80 | DSC法 | 未架橋歴史的RB 820 | 現行メーカー公表値95℃と一致しないため、現行値を優先する。 |
| ぜい化温度 | ℃ | -37 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | 低温衝撃設計では現行品を実測する。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 49 | ASTM D790 | 未架橋歴史的RB 820 | 現行比較値としては使用しない。 |
| 300%引張応力 | MPa | 6 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | 引張弾性率ではない。 |
| 引張強さ | MPa | 10 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | 降伏又は破断の区分は原表記に従う。 |
| 引張破断伸び | % | 700 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | 試験片形状及び速度は原資料を確認する。 |
| 硬さ | JIS A | 91 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | ショアDでは40の記載がある。 |
| 引裂強さ・B型 | kN/m | 58 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | フィルムの引裂き値とは試験法が異なる。 |
| 反発弾性 | % | 48 | JIS K6301 | 未架橋歴史的RB 820 | 温度及び試験方法依存である。 |
| 圧縮永久ひずみ | % | 39 | JIS K6301 | 30℃、22h、未架橋歴史的RB 820 | シール用途では架橋配合物を個別評価する。 |
| ウィリアムス摩耗 | cm3/(kW・h) | 190 | ASTM D394 | 未架橋歴史的RB 820 | 相手材及び条件が異なる摩耗値と直接比較しない。 |
フィルムの参考物性
| 項目 | 単位 | 歴史的RB 820 | 歴史的RB 830 | 試験条件 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| フィルム厚さ | µm | 50 | 50 | インフレーション、ブロー比2.5 | 歴史的公開値である。 |
| 引張強さ・縦 | MPa | 20 | 24 | JIS Z1702 | 延伸配向及び厚さの影響を受ける。 |
| 引張強さ・横 | MPa | 20 | 23 | JIS Z1702 | バルク成形品の引張強さと比較しない。 |
| 伸び・縦 | % | 500 | 510 | JIS Z1702 | 加工方向依存である。 |
| 伸び・横 | % | 570 | 600 | JIS Z1702 | 加工方向依存である。 |
| 引裂強さ・縦 | kN/m | 78 | 147 | JIS Z1702に準拠 | 試験片形状を合わせて比較する。 |
| 引裂強さ・横 | kN/m | 98 | 157 | JIS Z1702に準拠 | 試験片形状を合わせて比較する。 |
| 平行光線透過率 | % | 92 | 92 | JIS K6714 | 透明性は冷却速度及び結晶化に依存する。 |
| 曇り価 | % | 1 | 1 | 歴史的公開値 | 現行グレード及び厚さで再確認する。 |
熱的性質
| 項目 | 単位 | 代表値又は範囲 | 対象・条件 | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | 約-30~-25 | RB 810~820の二次資料参考値 | 低温柔軟性の目安であり、ぜい化温度とは一致しない。 |
| 融点 | ℃ | 71~126 | 現行RB 810~840 | 結晶相が融解して熱可塑流動を開始する主要指標である。 |
| 結晶化温度 | ℃ | データなし | 冷却速度及びグレード依存 | 透明性、収縮及びサイクル時間に影響するためDSC測定を推奨する。 |
| 熱分解開始温度 | ℃ | データなし | 雰囲気、加熱速度及び添加剤依存 | 成形中のゲル化は熱分解開始温度より低温でも進行し得る。 |
| ビカット軟化温度 | ℃ | データなし | 現行グレード一般 | 歴史的グレードでは39~90℃の例があるが、現行値へ転用しない。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 一般化困難 | 未架橋又は架橋、荷重、寿命依存 | 融点より低く設定し、クリープ、熱酸化及び強度保持率で決定する。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | データなし | 未充填標準グレード | 熱設計では実測値を使用する。 |
| 比熱 | J/(g・K) | データなし | 温度及び結晶化度依存 | 冷却解析ではDSC又はメーカー値を使用する。 |
| 線膨張係数 | 10-5/K | データなし | 流動方向及び直角方向 | 金属インサート及び多層構造では実測する。 |
燃焼性・難燃性
| 項目 | 代表情報 | 材料上の傾向 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| UL 94 | 材料群としてデータなし | 炭化水素系の基材であり、標準未難燃グレードは自己消火性を前提としない。 | 認定はグレード、色、厚さ及び製造拠点単位で確認する。 |
| 限界酸素指数・LOI | データなし | 一般に難燃性は低いと考える。 | 推定値を登録せず、要求用途では実測する。 |
| ハロゲン含有 | 基材構造には含まない | 炭素及び水素を主成分とする。 | 難燃剤、顔料、安定剤及び加工助剤を含むコンパウンドは別途確認する。 |
| 燃焼時の主な発生物 | CO2、CO、炭化水素煙 | 不完全燃焼では一酸化炭素、すす及び刺激性分解物が生じ得る。 | 加工時及び火災時の局所排気、避難及びSDS確認が必要である。 |
| 難燃グレード | 一般化可能な標準品データなし | 難燃剤配合により改質可能である。 | 柔軟性、透明性、架橋性及び電気特性への影響を確認する。 |
電気的性質
| 項目 | 単位 | 歴史的RB 820参考値 | 試験条件 | データ信頼度 | 注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 2×1017 | JIS K6911、20℃、60%RH | B | 現行品、添加剤及び吸湿条件で確認する。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 46 | JIS C2111、25℃、40%RH、厚さ1mm | B | 厚さ及び電極形状依存である。 |
| 比誘電率・60Hz | 無次元 | 2.6 | JIS K6911、20℃、60%RH | B | 周波数を付けずに比較しない。 |
| 比誘電率・1MHz | 無次元 | 2.6 | JIS K6911、20℃、60%RH | B | 現行品で再確認する。 |
| 誘電正接・60Hz | 無次元 | 0.0025 | JIS K6911、20℃、60%RH | B | 原資料の2.5×10-3を小数化した。 |
| 誘電正接・1MHz | 無次元 | 0.0045 | JIS K6911、20℃、60%RH | B | 原資料の4.5×10-3を小数化した。 |
| CTI | V | データなし | - | 0 | 電気部品用途では認定グレードを確認する。 |
耐候性・環境耐久性
| 項目 | 概略評価 | 主な劣化機構 | 設計上の対応 |
|---|---|---|---|
| 紫外線耐候性 | △ | 側鎖ビニル基の酸化、架橋及び鎖切断により黄変、硬化、亀裂又は強度低下が生じる。 | 光安定剤、酸化防止剤、顔料又は遮光層を用い、キセノンアーク試験を行う。 |
| 耐オゾン性 | △ | 未架橋基材は不飽和側鎖を多く含むため、オゾン反応を受け得る。 | 架橋配合及び保護剤により改善できる場合があるが、静的及び動的オゾン試験で確認する。 |
| 熱老化性 | △ | 酸化架橋による硬化、ゲル化又は鎖切断による強度低下が起こり得る。 | 温度、酸素濃度及び時間を合わせた熱老化試験を行う。 |
| 湿熱・加水分解性 | ◎ | エステル、アミド又はカーボネート結合を持たず、加水分解自体は起こりにくい。 | 高温水中では酸化、添加剤抽出、界面劣化及び応力緩和を別途評価する。 |
| 耐蒸気・耐熱水性 | △ | 加水分解よりも、融点への接近、結晶再編成、酸化及び変形が問題となる。 | グレードの融点より十分低い温度でも荷重変形を測定する。 |
| 耐放射線性 | △ | 放射線で架橋しやすいが、線量増加により脆化、黄変又は物性変化が生じる。 | 医療滅菌では線量、酸素雰囲気、保管期間及び抽出物を確認する。 |
耐薬品性
未架橋のシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンは低極性の炭化水素系ポリマーである。希薄な酸、アルカリ、水及び低級アルコールには比較的安定である一方、芳香族炭化水素、脂肪族又は環状炭化水素、ハロゲン化炭化水素及び一部エーテルに膨潤又は溶解しやすい。架橋により溶解は抑えられても、膨潤、抽出、硬度変化及び強度低下は生じ得る。
| 薬品分類 | 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水・水道水 | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 影響は小さい。 | 添加剤抽出及び微生物付着は別途確認する。 |
| 温水 | 温水 | 100% | 60~80℃ | 長時間 | 無 | ○ | 軟化、結晶再編成、応力緩和 | 融点の低いRB 810では特に寸法変化を確認する。 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | 100% | 100℃以上 | 繰返し | 無 | △ | 熱変形、酸化、硬さ変化 | 低融点グレードには不適となる可能性が高い。 |
| 無機酸 | 塩酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 一般に影響は小さい。 | 高温、高濃度及び応力下では確認する。 |
| 無機酸 | 硫酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 一般に影響は小さい。 | 濃硫酸では硬化、酸化又は炭化に注意する。 |
| 無機酸 | 硫酸 | 50%以上 | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 硬化、酸化、変色 | 濃度上昇により挙動が変わるため、希酸の評価を外挿しない。 |
| 酸化性酸 | 硝酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 酸化、鎖切断、硬化、亀裂 | 不飽和側鎖の酸化リスクが高い。 |
| 有機酸 | 酢酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 軽微な膨潤の可能性 | 氷酢酸及び高温では別途評価する。 |
| 強アルカリ | 水酸化ナトリウム | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 加水分解は起こりにくい。 | 高温及び酸化剤共存を確認する。 |
| 強アルカリ | 水酸化カリウム | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 一般に影響は小さい。 | 高温濃厚液では実試験する。 |
| 弱アルカリ | アンモニア水 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 一般に影響は小さい。 | 添加剤又は接着界面への影響を確認する。 |
| 低級アルコール | メタノール | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 溶解しにくい。 | 公開技術資料で不溶とされる。抽出及び長期寸法変化は確認する。 |
| 低級アルコール | エタノール | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 軽微な膨潤又は添加剤抽出 | 変性アルコールの共溶剤に注意する。 |
| 低級アルコール | イソプロピルアルコール | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 軽微な膨潤の可能性 | 高温洗浄及び応力下で確認する。 |
| 多価アルコール | グリセリン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 影響は小さいと推定される。 | 水分、温度及び添加剤を含む実液で確認する。 |
| 高沸点アルコール | 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB) | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | - | データ不足 | エーテル結合を持つため、SP値だけでなく実浸漬試験を行う。 |
| ケトン | アセトン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 長期では膨潤又は抽出の可能性 | 公開技術資料で不溶とされるが、SP値判定は注意域である。 |
| ケトン | メチルエチルケトン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | △ | 膨潤、軟化、添加剤抽出 | アセトンの結果をそのまま外挿しない。 |
| エステル | 酢酸エチル | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | △ | 膨潤、軟化 | SP値が近く、長時間接触に注意する。 |
| エーテル | テトラヒドロフラン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 著しい膨潤又は溶解 | 未架橋1,2-PBの溶剤として使用される例がある。 |
| 芳香族炭化水素 | トルエン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 著しい膨潤又は溶解 | 未架橋品には不適である。 |
| 芳香族炭化水素 | キシレン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 著しい膨潤又は溶解 | 架橋品でも体積膨潤を確認する。 |
| 脂肪族炭化水素 | n-ヘキサン・n-ヘプタン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 膨潤、軟化、抽出 | 低極性ポリマーとの相互作用が強い。 |
| 環状炭化水素 | シクロヘキサン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 溶解又は著しい膨潤 | 公開溶解性データで溶剤として挙げられる。 |
| ハロゲン化炭化水素 | ジクロロメタン | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 膨潤、溶解 | SP値差だけでは危険性を過小評価する場合がある。 |
| ハロゲン化炭化水素 | クロロホルム | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 溶解 | 未架橋品には不適である。 |
| 燃料 | ガソリン | 市販燃料 | 23℃ | 浸漬 | 無 | × | 著しい膨潤、軟化、抽出 | エタノール含有燃料でも炭化水素成分が支配的となる。 |
| 燃料 | 軽油 | 市販燃料 | 23℃ | 浸漬 | 無 | △ | 膨潤、硬度低下 | 架橋密度及び芳香族分に依存する。 |
| 潤滑油 | 鉱物油 | 100% | 23~80℃ | 長時間 | 無 | △ | 膨潤、抽出、硬度変化 | 油種、粘度、温度及び架橋状態で評価する。 |
| 冷却液 | エチレングリコール水溶液 | 50% | 80℃ | 長時間 | 無 | ○ | 熱軟化、添加剤抽出 | 防錆剤及び高温酸化を含む実液で確認する。 |
| ブレーキ液 | グリコールエーテル系 | 市販液 | 23~100℃ | 長時間 | 有 | △ | 膨潤、軟化、応力緩和 | 安全部品には材料群の概略評価を使用せず、規格試験を行う。 |
| 界面活性剤 | 中性洗剤水溶液 | 1~5% | 40℃ | 繰返し洗浄 | 無 | ○ | 添加剤抽出、表面変化 | 香料、溶剤及び酸化剤を含む製品は実液で確認する。 |
| 酸化剤 | 次亜塩素酸ナトリウム | 0.1% | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 酸化、硬化、変色 | 有効塩素濃度、pH、温度及び接触回数を管理する。 |
| 酸化剤 | 過酸化水素 | 3% | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 酸化、架橋又は鎖切断 | 高濃度及び金属イオン共存では不適となり得る。 |
| 塩水 | 塩化ナトリウム水溶液 | 3.5% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 影響は小さい。 | 金属インサートの腐食及び界面剥離は別途確認する。 |
| 食品油 | 植物油 | 100% | 23~100℃ | 長時間 | 無 | △ | 膨潤、油吸収、硬度低下 | 高温調理油及び酸化油では劣化が促進される。 |
評価基準は、◎:一般的な条件で影響が小さい、○:概ね使用可能であるが条件確認が必要、△:膨潤、軟化、強度低下、変色又は応力割れ等に注意、×:溶解、著しい膨潤、酸化又は亀裂の可能性が高い、-:データ不足又は評価困難、である。実使用ではグレード、架橋状態、温度、濃度、荷重、応力、時間、薬品純度及び添加剤を合わせて確認する。
SP値(溶解度パラメータ)
| 対象 | SP値 δ | 単位 | データ信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系 | 16.6~17.3 | MPa1/2 | C | ポリブタジエンの溶解性及び公開参考値からみた目安であり、結晶化度、温度及び架橋状態を含まない。 |
| 比較計算用代表値 | 17.0 | MPa1/2 | D | 一次スクリーニング用の便宜値であり、確定値又は保証値ではない。 |
SP値が近い溶剤ほど非晶相へ浸透しやすい傾向があるが、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系では結晶相、分子量、架橋密度、添加剤、温度及び反応性が耐薬品性を大きく左右する。酸化性薬品、濃酸、紫外線及びオゾンの影響はSP値では評価できない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤、軟化又は溶解しやすい。 | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する。 | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定である。 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい。 | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品・溶剤 | SP値 δ | 単位 | SP値差 | SP判定 | 実務上の補正 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | MPa1/2 | 30.9 | ◎ | 常温水では良好である。熱水では融点、酸化及び寸法変化を別途評価する。 |
| グリセリン | 36.1 | MPa1/2 | 19.1 | ◎ | 高温、水分及び添加剤を含む実液で確認する。 |
| メタノール | 29.7 | MPa1/2 | 12.7 | ◎ | 公開技術資料で不溶とされ、SP判定と整合する。 |
| エタノール | 26.0 | MPa1/2 | 9.0 | ◎ | 変性剤又は混合溶剤が含まれる場合は評価が変わる。 |
| イソプロピルアルコール | 23.5 | MPa1/2 | 6.5 | ○ | 長期浸漬、高温及び応力下では実試験する。 |
| アセトン | 20.3 | MPa1/2 | 3.3 | △ | SP値は注意域であるが、公開技術資料では不溶とされる。質量変化及び膨潤率で確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | MPa1/2 | 3.2 | △ | 実際にはハロゲン化炭化水素へ可溶となり得るため、実務評価は×である。 |
| メチルエチルケトン | 19.0 | MPa1/2 | 2.0 | × | 境界値であり、グレード、温度及び架橋状態を実測する。 |
| クロロホルム | 19.0 | MPa1/2 | 2.0 | × | 公開溶解性データで溶剤として挙げられ、実務上不適である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | MPa1/2 | 1.6 | × | 膨潤及び軟化を想定し、長時間接触を避ける。 |
| テトラヒドロフラン | 18.5 | MPa1/2 | 1.5 | × | 未架橋品の溶剤となり得る。 |
| トルエン | 18.2 | MPa1/2 | 1.2 | × | 著しい膨潤又は溶解が予想される。 |
| キシレン | 18.0 | MPa1/2 | 1.0 | × | 未架橋品には不適である。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | MPa1/2 | 0.2 | × | 公開溶解性データで溶剤として挙げられる。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | MPa1/2 | 2.1 | △ | 非極性溶剤であり、SP差が境界でも実際には大きく膨潤し得る。 |
上表は材料の代表SP値を17.0MPa1/2として計算した一次スクリーニングである。評価基準は、◎:非常に良好、○:概ね良好、△:注意が必要、×:不適である。SP値は溶解又は物理膨潤の傾向を示すにとどまり、酸化、架橋、結晶化、拡散速度、混合溶剤効果、応力、添加剤抽出及び温度を表さない。
環境応力割れ・応力下薬品接触
本材料は非晶性硬質樹脂に典型的なESCとは挙動が異なるが、未架橋品では溶剤膨潤と荷重が重なると、クリープ、局所軟化、界面剥離及び亀裂が促進される。特に金属インサート、圧入部、ねじ締結部、薄肉ウェルド部及び延伸フィルムでは、無応力浸漬だけで安全性を判断しない。
- 実部品から切り出した試験片又は同等の成形履歴を持つ試験片を使用する。
- 設計ひずみ又は使用応力を負荷し、薬品濃度、温度及び時間を合わせる。
- 質量変化、体積変化、硬度、引張強さ、伸び、外観、亀裂及び回復後物性を測定する。
- 架橋品では溶解の有無だけでなく、平衡膨潤率及び架橋密度変化を確認する。
製法
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系は、精製した1,3-ブタジエンを不活性炭化水素溶媒中で立体特異性触媒により溶液重合して製造する。歴史的な商業技術では有機アルミニウム-水-コバルト化合物系触媒が知られている。研究及び特許ではコバルト、鉄その他の遷移金属錯体と有機アルミニウム又はアルミノキサンを組み合わせる系も報告されている。実際の触媒組成及び運転条件は製造者の独自技術である。
代表反応式は、n CH2=CH-CH=CH2 → [-CH2-CH(-CH=CH2)-]nである。1,2結合量、シンジオタクチック性、分子量及び結晶化度は、触媒組成、Al/遷移金属比、溶媒、モノマー濃度、重合温度及び滞留時間等で制御される。
| 製造段階 | 主な管理項目 | 製品特性への影響 |
|---|---|---|
| 原料精製 | 水分、酸素、硫黄化合物、極性不純物及び重合阻害物質 | 触媒活性、分子量分布、ゲル及び色調を安定化する。 |
| 触媒設計 | 遷移金属種、助触媒、触媒比及び添加順序 | 1,2結合量、シンジオタクチック性、結晶化度及び融点を支配する。 |
| 溶液重合 | モノマー濃度、温度、圧力、撹拌、滞留時間及び熱除去 | 分子量、分子量分布、反応率及び立体規則性を調整する。 |
| 停止・精製 | 触媒失活、洗浄、金属残渣及び揮発分 | 色、臭気、熱安定性、電気特性及び医療・食品用途の抽出物に影響する。 |
| 脱揮・ペレット化 | 樹脂温度、滞留時間、酸素暴露、ストランド冷却及び切断 | ゲル、黄変、ブロッキング、ペレット形状及び残留溶媒を左右する。 |
| コンパウンド | 酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、発泡剤、充填材、油及び顔料 | 耐候性、架橋性、硬度、発泡性、摩耗、難燃性及び法規適合性を調整する。 |
詳細な利用用途
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系は、低密度、柔軟性、透明性、電気絶縁性、耐摩耗性及び熱可塑加工性を組み合わせた材料である。特にチューブ、フィルム、履物部材、改質材及び架橋可能な成形材料に適性を示す。一方、耐熱性、耐候性、耐油性及び難燃性はグレード又は配合に大きく依存するため、用途決定前に実部品で確認する必要がある。
用途分野別の代表例
| 用途分野 | 代表用途 | 採用理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 医療・ヘルスケア | 柔軟チューブ、輸液関連チューブ、弾性フィルム、試験用部材 | 透明性、柔軟性、無可塑剤設計の可能性、熱可塑加工性及び低密度を利用できる。 | 医療用途への適合は個別グレードの生物学的安全性、抽出物、滅菌耐久性及び製造履歴を確認する。材料名だけでUSP Class VI又はISO 10993適合を断定できない。 |
| 履物 | 靴底、ミッドソール、透明又は半透明ソール、発泡ソール、補強部材 | 耐摩耗性、弾性、着色性、軽量性及び架橋・発泡配合への適性を利用できる。 | 屋外耐候性、黄変、圧縮永久ひずみ、濡れ面の滑り及び低温屈曲を実配合で確認する。 |
| フィルム・シート | 透明フィルム、弾性フィルム、包装用改質フィルム、ラミネート中間層 | 透明性、ヒートシール性、柔軟性、引裂き特性及び低密度を生かせる。 | 酸素・水蒸気バリア性は高バリア樹脂ほど高くない。ブロッキング、ゲル、ダイライン及び熱酸化を管理する。 |
| 電気・電子 | 絶縁フィルム、柔軟絶縁部材、ケーブル用改質材、封止・緩衝部材 | 高い体積抵抗率、低い比誘電率、柔軟性及び成形性を利用できる。 | 一般グレードは自己消火性を期待できない。UL認証、難燃剤、厚さ、発煙性、耐トラッキング性及び長期RTIを個別確認する。 |
| 自動車 | 緩衝材、内装用改質材、薄膜部材、シール補助材、制振配合材 | 柔軟性、軽量性、耐摩耗性及び他樹脂・ゴムへの改質効果を利用できる。 | 高温部、燃料接触部、エンジン油接触部及び屋外露出部では単独使用を慎重に判断する。VOC、フォギング及び臭気も確認する。 |
| 工業用品 | ローラー被覆、緩衝部品、低荷重摺動部材、ホース、保護カバー | 耐摩耗性、弾性回復、成形性及び架橋可能性を組み合わせられる。 | クリープ、圧縮永久ひずみ、油による膨潤、摩擦発熱及び摩耗粉の発生を実条件で確認する。 |
| 樹脂・ゴム改質 | PP、PE、EVA、ゴム及び接着剤の耐衝撃・柔軟化改質、架橋助剤系 | 結晶性TPEとしての分散相形成、末端ではなく側鎖に残るビニル基の反応性及び相溶化設計の自由度を利用できる。 | 相溶性、分散径、架橋選択性、粘度比、黄変及び再溶融性を評価する。SP値だけで相溶性を確定しない。 |
| 接着剤・コーティング | 反応性改質剤、ホットメルト改質、柔軟化成分、架橋性バインダー成分 | 側鎖ビニル基を利用した酸化、グラフト、架橋及び表面改質が可能である。 | 未変性材料は低極性であり、高極性基材への接着性は限定的である。プライマー、グラフト変性又は共架橋設計が必要となる場合が多い。 |
用途別選定の目安
以下は材料群としての概略評価であり、特定グレードの最高性能を示すものではない。実使用ではグレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、法規制、試験片形状及び成形条件を確認する。
| 用途 | 適性 | 評価理由 | 選定上の注意 |
|---|---|---|---|
| ギア | △ | 静音性及び弾性は有利であるが、剛性、寸法安定性及び高温クリープはPOM、PA又はPBTより不利である。 | 低荷重・低温・低速用途に限定し、歯元疲労、摩耗、温度上昇及び永久変形を確認する。 |
| 軸受・ブッシュ・ローラー | ○ | 耐摩耗性、弾性及び振動吸収性を利用できる。 | 荷重、速度、相手材、粗さ、潤滑、温度及び摩擦発熱に強く依存する。限界PV値は一般化困難である。 |
| 摺動板 | △ | 柔軟な接触面及び耐摩耗性は得られるが、高荷重で変形しやすい。 | 寸法精度を要求する場合は硬質グレード、架橋材又は補強材を検討する。 |
| ねじ・ボルト・ナット | × | 一般グレードは締結部材に必要な剛性、クリープ耐性及びねじ山保持力が不足しやすい。 | 金属又は高剛性エンプラを優先する。緩衝ワッシャー又は脱落防止部材には利用可能性がある。 |
| ポンプ・バルブ部品 | △ | 水系及び一部薬液では柔軟部材として使える可能性がある。 | 芳香族溶剤、塩素系溶剤、燃料、油、圧力、温度及び長期クリープを確認する。 |
| シール・ガスケット・Oリング | △ | 柔軟性及び低吸水性を備えるが、圧縮永久ひずみ、耐熱性及び耐油性は専用ゴムに及ばない場合がある。 | 静的低圧シールを中心に実圧縮率で評価する。動的シール、高温油、燃料及び長期圧縮には専用エラストマーを比較する。 |
| チューブ・ホース | ◎ | 柔軟性、透明性、押出性及び無可塑剤設計の可能性が主要な長所である。 | 耐薬品性、キンク、内圧、透過性、抽出物、滅菌条件及び接続部の保持力を確認する。 |
| 配管・タンク | × | 大型構造物に必要な剛性、長期内圧特性及び高温寸法安定性が不足しやすい。 | ライニング、柔軟継手又は小型低圧部材としての利用に限定する。 |
| フィルム・シート | ◎ | 透明性、柔軟性、引裂き特性及びヒートシール性に優れるグレードがある。 | 膜厚、配向、ブロー比、ゲル、ブロッキング、バリア性及び熱収縮を確認する。 |
| ボトル・容器 | △ | 柔軟容器又はスクイズ用途には利用可能性があるが、剛性容器には不向きである。 | ブロー成形適性、内容物透過、シール性、食品接触適合及び落下強度を確認する。 |
| 電気コネクタ・ソケット | × | 絶縁性は良好であるが、端子保持に必要な耐熱剛性及び寸法精度が不足しやすい。 | 柔軟ブーツ、ストレインリリーフ又は緩衝部材として検討する。 |
| 絶縁部品・ケーブル補助部材 | ○ | 高体積抵抗率、低誘電率及び柔軟性を利用できる。 | 難燃性、耐熱老化、耐候性、耐トラッキング性及び規格認証を個別確認する。 |
| 電子部品筐体・一般筐体 | × | 一般グレードは剛性、耐熱性及び難燃性が筐体用途に不足しやすい。 | 緩衝カバー、グリップ又はオーバーモールド部材としての使用が中心となる。 |
| 透明カバー | ○ | 薄肉では高い透明性を得られるが、PMMA又はPCほど高剛性ではない。 | 傷、黄変、熱変形及び厚肉時の白濁を確認する。 |
| レンズ | × | 柔軟性及び屈折率管理の点から精密光学レンズには一般に適さない。 | 透明保護膜又は光学部材の柔軟層として検討する。 |
| 自動車内装 | ○ | 柔軟性、触感、制振性及び軽量性を改質用途で利用できる。 | VOC、臭気、フォギング、耐光性、熱老化及び難燃規格を確認する。 |
| 自動車外装・屋外部品 | △ | 未安定化材料はジエン系主鎖及び側鎖二重結合のため紫外線・オゾン劣化を受けやすい。 | 耐候安定剤、顔料、表面保護及び促進耐候試験が必要である。 |
| エンジンルーム部品 | × | 高温、油、酸化及び長期圧縮の複合条件に対する余裕が小さい。 | シリコーンゴム、FKM、耐熱TPE又はPA系材料を比較する。 |
| 燃料系部品 | × | 炭化水素燃料による膨潤及び透過が問題となりやすい。 | 燃料組成、エタノール含有率、温度、圧力及び抽出を実液で確認する。 |
| 食品機械部品 | △ | 低吸水性及び柔軟性は有利である。 | 食品接触適合グレード、洗浄剤、油脂、熱水、蒸気、摩耗粉及び抽出物を確認する。 |
| 医療機器部品 | ○ | 医療用チューブ等に適したグレードが存在する。 | 生体適合性、滅菌法、薬液、抽出物、粒子、トレーサビリティ及び変更管理を個別確認する。 |
| 滅菌部品 | △ | 滅菌法によっては使用できる可能性があるが、二重結合の酸化及び熱変形に注意を要する。 | EO、電子線、γ線、蒸気及び過酸化水素プラズマを別々に評価する。 |
| 半導体製造装置・真空装置 | × | 一般グレードではアウトガス、粒子、耐プラズマ性及び超高純度管理の公開データが不足する。 | 限定的な緩衝材用途でもTML、CVCM、金属残渣及び抽出物を測定する。 |
| 建築部材 | △ | 室内の緩衝材、目地補助材又は防振材には利用可能性がある。 | 屋外耐候、難燃、煙、長期クリープ及び建築関連規格を確認する。 |
| 接着剤・塗料・コーティング | △ | 反応性改質材又は柔軟化成分として利用できる。 | 低極性であるため単独の接着性は限定的である。グラフト、酸化、プライマー及び架橋を検討する。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 柔軟マトリックス又は耐衝撃改質相として利用可能である。 | 繊維濡れ、界面接着、剛性、熱変形及び架橋後の再加工性を確認する。 |
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 一般的傾向 | 設計上の注意 | 推奨確認 |
|---|---|---|---|
| 成形収縮 | 柔軟グレードでは比較的大きく、硬質・高結晶グレードでは小さくなる傾向がある。流動方向と直角方向で差が生じる。 | 金型寸法はグレード、肉厚、ゲート、保圧、金型温度及び配向を反映して補正する。 | 実金型又は相似金型で24時間後及び熱処理後の寸法を測定する。 |
| 異方性・反り | フィルム、押出品及び長流動成形品では分子配向により異方性が生じる。 | 肉厚差、偏肉、急冷、片側ゲート及び過大配向を避ける。 | MD・TD又は流動・直角方向の収縮、引張及び熱収縮を別々に測定する。 |
| 吸湿寸法変化 | 吸水率はPA系より低く、吸湿による寸法変化は比較的小さい。 | 添加剤、充填材、表面処理又は多層構成によって変わる。 | 23℃水中、温水及び高湿度条件で質量・寸法変化を確認する。 |
| 温度による寸法変化 | 弾性率が低く、融点付近で急速に形状保持性を失う。 | 連続使用温度は融点又はVicat温度より十分低く設定する。拘束応力も考慮する。 | DMA、TMA、HDT及び実荷重下の熱変形試験を行う。 |
| クリープ | 熱可塑性エラストマーであり、長期静荷重では時間依存変形が生じる。 | 短時間引張強さを設計許容応力として直接使用しない。温度が上がるほど許容応力を下げる。 | 使用温度、応力及び目標寿命を模擬した引張又は圧縮クリープ試験を行う。 |
| ウェルド強度 | 流動端の温度低下、汚染、酸化又は早期結晶化により低下する場合がある。 | ゲート位置、ベント、樹脂温度、射出速度及び金型温度を最適化する。 | 実形状のウェルド部で引張、屈曲又は内圧試験を行う。 |
| ノッチ・応力集中 | 柔軟性により衝撃には比較的強いが、切欠き部では疲労き裂及び酸化劣化が進み得る。 | 鋭角、傷、バリ、急激な肉厚変化及び局部締付けを避ける。 | 切欠き付き疲労、屈曲及び薬品併用試験を行う。 |
| インサート周辺 | 金属との熱膨張差及び局部拘束により、冷却後の残留応力又は剥離が生じる。 | インサート予熱、丸み、ローレット形状及び肉厚を調整する。 | 温度サイクル、引抜き及び薬品接触後の保持力を確認する。 |
| ねじ締結・圧入 | 柔軟性のため初期なじみは良いが、長期に締付け力が低下する可能性がある。 | 過大トルク、鋭いねじ山及び高い圧入代を避け、金属カラー又は広い座面を用いる。 | 締付け後の応力緩和、温度サイクル及び繰返し脱着を評価する。 |
| 安全率 | 温度、時間、薬品、繰返し荷重及び成形履歴の影響が大きい。 | 初期物性だけでなく、寿命末期の保持率に基づいて設定する。 | 実部品耐久試験と統計的ばらつきを用いて設計許容値を決定する。 |
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の主因 | 成形条件側の主因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| ゲル・フィッシュアイ | 酸化、局部架橋、長期保管劣化、異物又は不溶分 | 高温滞留、デッドスポット、停止再起動時の残留樹脂 | 樹脂温度と滞留時間を下げ、設備を清掃し、適切なスクリーンを用いる。長時間停止前にパージする。 |
| 黒点・変色 | 酸化防止剤不足、汚染又は過去材料の残留 | 局部過熱、過大せん断、長時間滞留、酸素巻込み | 温度計を校正し、ヒーター異常とデッドスポットを点検する。低温側から条件を最適化する。 |
| シルバーストリーク・気泡 | 水分、残留揮発分、表面付着水又は低分子成分 | 急減圧、過大背圧、空気巻込み又はベント不足 | 通常は強制乾燥不要であるが、結露又は吸湿した副原料を除去し、ベントと供給状態を改善する。 |
| フローマーク・ジェッティング | 高弾性、結晶化速度及び粘度の温度依存性 | 小ゲート、低金型温度、不適切な射出速度又は直接噴流 | ゲート位置・断面を改善し、初期射出速度と金型温度を調整する。 |
| ウェルドライン | 流動端の冷却、表面酸化又は異物 | 低樹脂温度、低射出速度、ベント不足又は多点ゲート | 流動会合位置を非重要部へ移し、ベント、温度及び充填速度を最適化する。 |
| ヒケ・ボイド | 比較的大きい体積収縮、柔軟性及び結晶化収縮 | 厚肉、保圧不足、ゲート早期凍結又は冷却不足 | 均一肉厚、リブ設計、適切な保圧、ゲート寸法及び冷却時間を採用する。 |
| 反り | 配向、結晶化及び方向別収縮差 | 偏肉、非対称冷却、片側ゲート又は過大射出速度 | 金型温度を均一化し、ゲートと製品形状を見直し、過度な配向を抑える。 |
| 離型不良・変形 | 低弾性率、粘着性又は低融点 | 抜き勾配不足、冷却不足、過大保圧又は粗い金型面 | 冷却時間、抜き勾配、離型機構及び金型表面を改善する。離型剤は後工程への影響を確認する。 |
| バリ | 低粘度グレード又は高温での粘度低下 | 過大射出圧力、型締不足、金型摩耗又は高樹脂温度 | 型締力、パーティング面、射出圧力及び温度を見直す。 |
| ブロッキング | 低融点、表面粘着、低分子成分又は軟質グレード | 巻取り温度過高、過大巻取り圧、保管温度過高 | 十分に冷却し、巻取り張力、アンチブロッキング剤及び保管条件を最適化する。 |
| ダイライン・メルトフラクチャー | 高分子量、ゲル、異物又は狭い加工窓 | ダイ汚れ、過大せん断、低ダイ温度又は不適切なランド | ダイを清掃し、押出量、温度、ダイギャップ、スクリュー及び濾過を調整する。 |
| プレートアウト | 滑剤、酸化防止剤、顔料又は低分子成分の移行 | 高温滞留、過大添加又は不十分な混練 | 添加剤の相溶性と添加量を見直し、設備清掃周期を設定する。 |
劣化・故障モードと注意点
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 主鎖及び側鎖の炭素−炭素二重結合の酸化、過酸化物生成及び連鎖切断・架橋 | 高温、空気、金属イオン、長時間滞留、薄肉 | 黄変、硬化、脆化、ゲル、伸び低下及び臭気 | 酸化防止剤、金属不活性化剤、低温短時間加工及び遮酸素設計 | 空気中80~100℃の熱老化、引張保持率、ゲル分、色差及びFT-IR |
| 紫外線劣化 | 光酸化及び二重結合部のラジカル反応 | 屋外、紫外線、酸素、薄肉、無着色 | 黄変、白化、表面亀裂、べたつき又は硬化 | 紫外線吸収剤、HALS、カーボンブラック、塗装又は被覆 | キセノンアーク又はサンシャインウェザーメーター、色差、光沢及び伸び保持率 |
| オゾン劣化 | 残存二重結合へのオゾン付加・切断 | オゾン雰囲気、引張ひずみ、屋外又は電気機器周辺 | 応力方向と直角の亀裂、強度低下 | オゾン劣化防止剤、被覆、低ひずみ設計又は耐オゾン材料との比較 | 規定ひずみ下のオゾン暴露試験及び顕微鏡観察 |
| 膨潤・溶解 | 芳香族炭化水素、塩素系溶剤及び近接SP溶剤の浸透 | 高温、長時間、薄肉、応力下、混合溶剤 | 質量増加、軟化、寸法増大、強度低下又は溶解 | 溶剤選定、接触時間短縮、バリア層又は耐溶剤材料への変更 | 実薬品浸漬、質量・体積変化、硬度、引張及び乾燥後回復率 |
| 環境応力割れ | 残留応力と溶剤・界面活性剤・酸化剤の複合作用 | 急角部、圧入、曲げ、溶着部、温度上昇 | 微細亀裂、白化、破断又は漏れ | 残留応力低減、丸み付与、薬品変更及び必要に応じたアニール | 定ひずみ又は定荷重下の実薬品暴露試験 |
| クリープ・応力緩和 | 非晶相の分子運動及び結晶物理架橋点の時間依存変形 | 高温、持続荷重、締結、圧縮シール | 永久変形、締付け力低下、漏れ又は寸法不良 | 応力低減、断面増加、硬質グレード、架橋又は機械的拘束 | 使用温度・荷重で1000時間以上を含むクリープ又は圧縮永久ひずみ試験 |
| 疲労破壊 | 繰返し屈曲、応力集中、発熱及び酸化の複合作用 | ローラー、ヒンジ、脈動チューブ、振動部 | 亀裂、発熱、剛性変化及び最終破断 | 応力集中低減、温度管理、適切な硬度及び十分な曲げ半径 | 実周波数、振幅、温度及び媒体を用いた繰返し疲労試験 |
| 摩耗・摩耗粉 | 凝着、アブレシブ摩耗、疲労摩耗又は摩擦発熱 | 高荷重、高速、粗い相手材、無潤滑 | 寸法減少、表面粗化、粒子汚染及び温度上昇 | 相手材仕上げ、潤滑、荷重速度低減、摺動改質 | 相手材・荷重・速度・温度を規定した摩耗量及び摩擦係数測定 |
| 添加剤ブリード・抽出 | 低分子添加剤の相溶性不足又は薬液への移行 | 高温、長時間、食品油、溶剤、表面接触 | べたつき、曇り、析出、臭気、性能低下及び移行物 | 高分子量添加剤、添加量最適化、抽出試験及び適合グレード選定 | 溶出・抽出試験、GC-MS、LC-MS、重量減少及び表面分析 |
| アウトガス | 残留モノマー、溶媒、低分子量成分又は分解生成物 | 真空、高温、長時間、電子・光学用途 | 汚染、曇り、臭気、接点障害又は質量減少 | 低揮発グレード、予備加熱、脱揮及び清浄保管 | TML、CVCM、ヘッドスペースGC-MS又は用途別アウトガス試験 |
| 滅菌・放射線劣化 | 熱、酸化剤、電子線又はγ線による連鎖切断・架橋 | 反復蒸気滅菌、高線量照射、過酸化水素系滅菌 | 黄変、硬化、脆化、伸び低下又は抽出物増加 | 滅菌法と線量の最適化、安定化配合及び単回使用設計 | 予定回数後の引張、透明性、抽出物、無菌性及び寸法試験 |
| 食品・薬液への溶出 | 添加剤、触媒残渣、オリゴマー又は分解物の移行 | 油脂、高温、長時間接触、酸・アルカリ又はアルコール | 臭味、汚染、規格不適合又は性能変化 | 用途適合グレード選定、接触条件制限及び証明書確認 | 法規に対応した食品擬似溶媒又は実薬液での総移行・特定移行試験 |
推奨確認試験
| 試験 | 推奨する確認条件の例 | 主な判定項目 |
|---|---|---|
| 実薬品浸漬試験 | 実使用濃度で23℃・7日を初期スクリーニングとし、必要に応じて使用上限温度、30日以上及び乾燥回復後まで評価する。 | 質量、体積、硬度、引張、伸び、外観、抽出及び復元性 |
| 環境応力割れ試験 | 実部品又は短冊を使用応力相当で曲げ又は定荷重保持し、薬品に暴露する。 | 亀裂発生時間、白化、破断及び残留強度 |
| 熱老化試験 | 想定使用温度及びそれより10~20℃高い温度で段階評価し、100、500及び1000時間などで測定する。 | 引張・伸び保持率、硬度、色差、質量及びゲル分 |
| 紫外線・オゾン試験 | 屋外用途ではキセノンアークと規定ひずみ下オゾン暴露を組み合わせる。 | 亀裂、色差、光沢、表面粘着及び伸び保持率 |
| クリープ・圧縮永久ひずみ | 実使用温度、圧縮率又は引張応力で長期評価し、除荷後回復も測定する。 | 変形量、応力緩和、漏れ及び回復率 |
| 摩耗・摩擦試験 | 実相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度、媒体及び潤滑条件を再現する。 | 摩擦係数、摩耗量、温度上昇、表面損傷及び摩耗粉 |
| 成形・溶着試験 | 量産機、実金型、実滞留時間及び再生材比率で成形し、溶着条件も振る。 | 外観、寸法、ゲル、ウェルド強度、シール強度及び工程安定性 |
| 滅菌・溶出試験 | 予定する滅菌法と最大回数、実接触媒体及び最大温度・時間で評価する。 | 生物学的安全性、抽出物、透明性、強度、臭気及び寸法 |
| アウトガス試験 | 真空又は密閉条件で実使用温度より高い温度を含めて評価する。 | TML、CVCM、揮発成分同定、光学面汚染及び臭気 |
| 実部品耐久試験 | 温度、湿度、薬品、荷重、振動、繰返し回数及び保管を組み合わせ、寿命末期まで確認する。 | 機能、漏れ、破断、変形、外観及び安全率 |
法規制・認証
法規制及び認証は材料群全体ではなく、メーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、使用温度及び接触条件ごとに確認する必要がある。以下は確認すべき代表項目であり、適合を保証する一覧ではない。
| 規制・認証 | 材料群としての扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | 適合グレードが存在し得る | 重金属、臭素系難燃剤、フタル酸エステル、顔料及び再生材を含む個別グレードの適合宣言を確認する。 |
| REACH・SVHC | 個別確認 | ポリマー本体だけでなく、モノマー残留、触媒残渣、安定剤、可塑剤及び候補物質リスト更新時点を確認する。 |
| ELV | 自動車用途グレードで個別確認 | 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム及び適用除外を含むサプライヤー証明を確認する。 |
| PFAS関連規制 | 基材ポリマーはフッ素を含まない | 離型剤、加工助剤、表面処理剤又は配合添加剤にPFASが含まれないことを個別に確認する。 |
| TSCA・Proposition 65 | 販売地域別に個別確認 | 米国在庫収載、警告対象物質、残留モノマー、添加剤及び用途制限を確認する。 |
| EU食品接触規則 | 食品接触適合グレードのみ対象 | 適合宣言、使用温度、食品区分、接触時間、総移行量、特定移行量及び多層材の機能性バリアを確認する。 |
| FDA食品接触用途 | 適合グレードが存在する場合に限る | 該当規則、用途、温度、食品種、添加剤及び製造条件をメーカー文書で確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 個別グレードで確認 | 基ポリマー、添加剤、使用制限、接触条件及び事業者間情報伝達文書を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 材料名だけでは適合しない | 医療用グレードの試験範囲、滅菌後データ、抽出条件、変更管理及び最終医療機器での評価を確認する。 |
| UL認証・RTI | 認証グレードのみ対象 | UL 94等級、試験片厚さ、色、RTI、HAI、HWI、CTI及びファイル番号を確認する。 |
| ハロゲンフリー | 基材構造は炭素・水素主体 | 難燃剤、顔料、添加剤及び不純物を含む製品全体の規格定義と分析基準を確認する。 |
| 自動車・鉄道・航空宇宙規格 | 一般材料として一律適合しない | 燃焼、煙、毒性、VOC、フォギング、耐候、熱老化及びトレーサビリティを用途規格ごとに確認する。 |
環境・リサイクル性
| 項目 | 一般的評価 | 説明・注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性・熱硬化性 | 未架橋品は熱可塑性 | 結晶相が物理架橋点として働き、加熱溶融できる。過酸化物等で化学架橋した材料は再溶融できない。 |
| マテリアルリサイクル | 未架橋・単一材料では可能 | 熱履歴により酸化、ゲル化、MFR変化、黄変及び伸び低下が生じ得るため、再生回数と混合率を管理する。 |
| ケミカルリサイクル | 一般的な商業ルートは限定的 | 熱分解、油化又は原料化の技術対象になり得るが、汎用的な回収インフラは地域依存である。 |
| サーマルリサイクル | 炭化水素系材料として可能 | 燃焼時は主に二酸化炭素、水、一酸化炭素、すす及び不完全燃焼生成物が生じ得る。適切な燃焼設備を用いる。 |
| 再生材使用 | 用途限定で可能 | 医療、食品、電気認証、透明及び高信頼用途では履歴管理と汚染管理が重要である。 |
| 識別表示 | 専用の国際的樹脂識別コードは一般的でない | 製品設計ではTPE又はOTHER区分だけに頼らず、材質名、グレード及び架橋有無を表示することが望ましい。 |
| バイオベース | 一般品は化石資源由来 | バイオ由来ブタジエンを用いる可能性はあるが、商業グレードの原料由来と認証を個別確認する。 |
| 生分解性・コンポスト性 | 一般に生分解性材料ではない | バイオベースであることと生分解性は別概念である。環境中への流出を前提にしない。 |
| ハロゲン・窒素・硫黄 | 基材ポリマーは通常含まない | 添加剤、顔料、難燃剤、触媒残渣及び他材料とのブレンドによって変わる。 |
| LCA上の特徴 | 軽量化と無加硫加工が利点になり得る | 低密度、熱可塑再加工及び工程短縮の利点がある一方、原料、エネルギー、寿命、回収率及び代替材料を含む製品単位で評価する。 |
価格・供給性
| 項目 | 一般的傾向 |
|---|---|
| 相対価格 | 汎用PE、PP、SBR及び一般EVAと比較すると、一般に比較的高価格から高価格の特殊材料に位置する。実価格はグレード、購入量、契約、地域及び市況で変動する。 |
| 流通性 | 汎用樹脂ほど広範ではなく、専門商社又はメーカー経由が中心となる。 |
| 国内入手性 | 国内メーカーの現行RB系列が確認できるが、在庫、供給地域及び最小購入量は個別照会が必要である。 |
| 少量購入 | 少量在庫又は試作用サンプルの入手性は販売経路に依存し、一般小売では限定的である。 |
| 供給形態 | 主にペレット又は成形材料として供給される。架橋配合、発泡配合及びマスターバッチはコンパウンダー品を含む。 |
| 板・丸棒・フィルム・チューブ | 汎用エンプラほど標準素材在庫は多くない。フィルム又はチューブは加工メーカーによる受注生産となる場合がある。 |
| 特注グレード | 色、安定剤、架橋性、発泡性、硬度、滑剤又は他樹脂ブレンドを調整できるが、最小購入量、評価期間及び法規書類を確認する。 |
関連材料との比較
比較材料名そのものにplastics-material.com内の内部リンクを設定している。シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系は、結晶相を物理架橋点とする熱可塑性材料であり、一般的な加硫ジエンゴム又はブロック共重合体TPEとは構造と加工挙動が異なる。
| 比較材料 | 主な特徴 | シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系との違い | 選定の目安 |
|---|---|---|---|
| ポリブタジエンゴム(BR) | 主に1,4結合を多く含む加硫ゴムで、反発弾性、低温性及び耐摩耗性に優れる。 | BRは一般に化学架橋して使用し、通常は再溶融できない。SPBは1,2結合と結晶相により未架橋でも熱可塑加工できる。 | 再成形性、透明フィルム又はチューブにはSPB、タイヤ・高反発加硫ゴムにはBRが有利である。 |
| エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA) | 柔軟性、透明性、発泡性、接着性及び広い流通性を持つ。 | EVAは酢酸ビニル基によりSPBより極性が高く、耐候性と接着性を得やすい。一方、SPBは側鎖ビニル基の反応性と耐摩耗性を生かせる。 | 接着・発泡・汎用フィルムではEVA、耐摩耗・架橋反応性・特定チューブではSPBを比較する。 |
| オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO) | PPとEPDM等を基礎とし、耐候性、成形性、軽量性及び自動車用途実績に優れる。 | TPOは一般にSPBより耐候・耐熱に優れ、SPBは透明性、側鎖反応性及び一部の耐摩耗特性で特徴がある。 | 屋外・自動車大型部品にはTPO、透明薄膜・特殊チューブ・反応性改質にはSPBを検討する。 |
| 熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE) | 高強度、耐熱性、耐油性、耐疲労性及び反発弾性を持つ。 | TPEEはSPBより高温・油中での機械特性に優れるが、密度と加工温度が高く、加水分解管理を要する。 | 高温チューブ、ギア、ブーツにはTPEE、低密度・低温加工・透明柔軟用途にはSPBを比較する。 |
| スチレンブタジエンゴム(SBR) | 価格、加工性、耐摩耗性及び配合自由度に優れる代表的加硫ゴムである。 | SBRは一般に加硫工程を要し、SPBは未架橋で射出・押出・フィルム成形が可能である。SPBは透明性を得やすい。 | 量産加硫ゴム用品にはSBR、再溶融加工・透明品・短工程にはSPBを検討する。 |
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐候性、耐オゾン性、耐熱水性及び電気絶縁性に優れる。 | EPDMは主鎖飽和度が高く、SPBより屋外及びオゾン環境で有利である。SPBは熱可塑加工性と透明性が長所である。 | 屋外シール、熱水又はオゾンにはEPDM、透明成形・再加工にはSPBを比較する。 |
| 天然ゴム(NR) | 高い引張強さ、耐疲労性、反発弾性及び良好な加工性を持つ。 | NRは加硫後に優れた強度を示すが、再溶融できず、天然由来のばらつきがある。SPBは工業合成材料として熱可塑加工できる。 | 高疲労・高反発加硫用品にはNR、寸法再現性と熱可塑工程にはSPBを検討する。 |
| 熱可塑性エラストマー(TPE) | スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等を含む広い材料群である。 | SPBはTPEの一種であり、1,2-ポリブタジエンの立体規則性と結晶性を利用する点が特徴である。 | 要求耐熱、耐油、透明性、硬度、成形温度、接着性及び価格に基づいてTPE各系統を比較する。 |
材料比較機能向け5段階評価
評価は5:非常に優れる、4:優れる、3:標準的、2:やや劣る、1:劣る、0:評価不能又はデータなしとする。非強化・未架橋の一般グレードを基準とした概略評価である。
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 2 | 一般グレードは約6~17 MPa程度の報告範囲であり、高強度エンプラ又は加硫NRより低い。 |
| 剛性 | 2 | 柔軟TPEであり、曲げ弾性率はグレード依存で低い。 |
| 衝撃強度 | 4 | 柔軟性が高く、歴史的資料ではノッチ付きアイゾットで破壊しないグレードが報告される。 |
| 耐熱性 | 2 | 融点は現行代表グレードで約71~126℃であり、連続荷重下の使用温度はこれより低い。 |
| 低温特性 | 3 | 低温柔軟性は比較的良いが、硬質・高結晶グレードほど脆化温度が上昇する。 |
| 耐薬品性 | 2 | 水、希薄酸・アルカリ、低級アルコールには比較的安定だが、芳香族・塩素系溶剤及び炭化水素油で膨潤しやすい。 |
| 耐候性 | 2 | 二重結合を多く含み、無安定グレードでは紫外線・オゾン・酸化に注意を要する。 |
| 耐加水分解性 | 5 | 主鎖にエステル、アミド又はウレタン結合を持たず、加水分解そのものは起こりにくい。 |
| 寸法安定性 | 3 | 低吸水性は有利であるが、クリープ、熱収縮及び配向異方性を考慮する必要がある。 |
| 低吸水性 | 5 | 非極性炭化水素系ポリマーであり、吸水は一般に小さい。 |
| 摺動性 | 3 | 弾性接触と耐摩耗性は利用できるが、摩擦係数及びPV限界は条件依存である。 |
| 耐摩耗性 | 4 | 履物及びローラー用途に利用される代表的長所である。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 高い体積抵抗率と低誘電率の報告があり、低極性材料として良好である。 |
| 難燃性 | 1 | 炭化水素系材料であり、一般グレードは可燃性である。難燃性は専用配合・認証が必要である。 |
| 透明性 | 4 | 低結晶性と微細結晶構造により薄肉成形品・フィルムで高透明性を得られる。 |
| 成形加工性 | 4 | 未架橋で射出、押出及びフィルム成形が可能で、通常は強制予備乾燥を要しない。 |
| 切削加工性 | 2 | 柔軟で変形しやすく、精密切削では保持、発熱及びバリに注意を要する。 |
| 接着性 | 2 | 未変性表面は低極性であり、極性基材への接着には表面処理又は変性が必要となる場合が多い。 |
| リサイクル性 | 3 | 未架橋品は再溶融できるが、熱酸化、ゲル化及び専用回収ルートの少なさが制約となる。 |
| 価格優位性 | 1 | 汎用樹脂・汎用ゴムより流通量が少なく、特殊材料として比較的高価格である。 |
代表的なメーカー
現在の公式製品情報を確認できる主要メーカーのみを記載する。旧文献には旧社名又は過去の製品系列が記載される場合があるが、現行供給元としては扱わない。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| ENEOSマテリアル株式会社 | RB 810、RB 820、RB 830、RB 840 | 1,2結合量90%以上の低結晶性シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーを展開する。現行公開資料では医療用チューブ・フィルム及び履物ソール等を代表用途としている。供給状況、法規適合及び最新仕様はメーカーへ確認する。 |
関連キーワード
- シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン
- SPB
- s-1,2-PB
- ポリブタジエン
- ブタジエンゴム(BR)
- 熱可塑性エラストマー(TPE)
- エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)
- オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)
- 熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)
- スチレンブタジエンゴム(SBR)
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- 環境応力割れ
本ページの数値及び適性評価は、非強化・未架橋の標準的な材料群を中心とする代表値又は参考範囲である。実使用では、最新の個別グレード資料を確認し、温度、濃度、荷重、応力、湿度、接触時間、試験片形状、成形条件、添加剤、架橋状態及び法規制を含む実条件で評価する必要がある。