概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリエチレンナフタレート |
| 略記号 | PEN |
| IUPAC系統名 | poly(ethylene naphthalene-2,6-dicarboxylate) |
| 英語名 | Polyethylene Naphthalate / Poly(ethylene 2,6-naphthalate) |
| 日本語名・別名 | ポリエチレンナフタレート、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート) |
| 分類 | 熱可塑性芳香族ポリエステル、半結晶性樹脂、高バリア性樹脂 |
| プラスチック分類 | 高性能エンジニアリング・プラスチック相当。ただし市場では高機能ポリエステル又は高機能フィルム材料として扱われることが多い |
| 代表化学式 | (C14H10O4)n |
| CAS No. | 24968-11-4。資料により別の登録番号が併記される場合があるため、SDS又はメーカー証明書で確認する |
| 構造・主成分 | 2,6-ナフタレンジカルボン酸又はそのジメチルエステルとエチレングリコールから得られる芳香族ポリエステル |
| 主な用途 | 二軸延伸フィルム、電気絶縁フィルム、フレキシブル回路基材、磁気記録媒体用ベースフィルム、工業用テープ、繊維、包装、耐熱透明成形品 |
ポリエチレンナフタレート(PEN)は、2,6-ナフタレンジカルボン酸系成分とエチレングリコールから得られる熱可塑性芳香族ポリエステルである。基本的な重合形式はポリエチレンテレフタレート(PET)に近いが、ベンゼン環より剛直で大きいナフタレン環を主鎖に持つため、分子鎖運動が抑制され、一般にPETより高いガラス転移温度、剛性、耐熱寸法安定性及びガスバリア性を示す。
用途上の中心は二軸延伸フィルムであり、電気絶縁、フレキシブル回路、磁気記録媒体、工業用テープ、電子部品工程材など、高温下での寸法変化を小さくしたい用途で利用される。透明性、紫外線遮蔽性、低オリゴマー析出性及び耐加水分解性を活かした包装、光学周辺、クリーン用途にも適用される。
ただし、PENの物性は未延伸樹脂、射出成形品、一軸・二軸延伸フィルム、熱固定条件、結晶化度及び共重合組成で大きく異なる。本ページの数値は、原則として非強化・標準PENの代表範囲であり、実使用ではグレード、厚さ、配向方向、温度、湿度、荷重、応力、薬品濃度、接触時間及び成形履歴を確認する必要がある。
特徴
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | PETより高いガラス転移温度、耐熱寸法安定性、剛性、ガスバリア性、耐加水分解性、紫外線遮蔽性を示しやすい。フィルムでは高温域の弾性率保持と低収縮が利点である |
| 短所 | PETより高価で流通グレードが限定される。高い溶融温度と厳格な乾燥が必要であり、溶融滞留や水分による分子量低下に注意を要する。強アルカリ及び高温加水分解環境には不向きである |
| 外観 | 自然色は透明から淡黄色透明。結晶化度、厚さ、配向、添加剤により半透明又は不透明となる |
| 耐熱性 | Tgは概ね118~125℃、融点は概ね265~275℃である。連続使用温度は用途、配向、厚さ及び認証条件によるが、一般的な目安は120~160℃程度である |
| 耐薬品性 | 水、希酸、アルコール、脂肪族炭化水素、油に比較的良好である。一方、強アルカリ、高温水蒸気、一部の強極性溶剤及び加水分解促進条件では劣化し得る |
| 加工性 | 射出、押出、フィルム成形、延伸成形が可能である。結晶化が比較的遅いため透明成形品を得やすい場合があるが、乾燥、金型温度、滞留時間の管理が重要である |
| 分類上の注意 | PENは半結晶性樹脂であるが、急冷又は低結晶化条件では透明な非晶質状態を形成できる。フィルム物性と未延伸射出成形品の物性は直接比較できない |
構造式
PENの代表繰返し単位は、エチレングリコール由来の-O-CH2-CH2-O-部分と、2,6-ナフタレンジカルボン酸由来の-CO-C10H6-CO-部分がエステル結合で連結した構造である。ナフタレン環の高い剛直性と平面性により、主鎖の回転自由度が小さく、PETより高いTg、弾性率、バリア性及び紫外線吸収性を得やすい。
工業的には酸法とエステル交換法があり、酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸又はジメチル-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、グリコール成分としてエチレングリコールが用いられる。結晶化速度、透明性、成形性、靱性又は融点を調整するため、他の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又はジオールを少量共重合する場合がある。
種類
| 代表グレード区分 | 主な改質・特徴 | 物性への影響 | 主用途 |
|---|---|---|---|
| 非強化・標準グレード | 無充填PEN。射出又は押出用 | 透明性、耐熱性、バリア性の基準となる | 精密成形品、押出材 |
| 高粘度・押出グレード | 分子量又は固有粘度を高めたもの | 溶融強度と延伸安定性が向上しやすい | シート、フィルム、繊維 |
| フィルムグレード | 二軸延伸及び熱固定に適した分子量・添加剤設計 | 高弾性率、低熱収縮、電気絶縁性、バリア性 | 電気絶縁、FPC、工業用テープ |
| 耐熱・低オリゴマーグレード | 高温処理時の析出物及びアウトガスを低減 | 清浄性、耐熱耐湿性が向上 | 電子部品、クリーン用途 |
| 難燃グレード | 難燃剤又は難燃設計を採用 | UL 94等級を取得できる場合があるが、厚さと色に依存 | 電気・電子部品 |
| GF強化グレード | ガラス繊維を一般に15~40質量%程度配合する場合がある | 剛性、HDT、寸法安定性が向上し、伸びと透明性は低下 | 耐熱構造部品 |
| CF強化・導電グレード | 炭素繊維又は導電材を配合 | 高剛性、導電性、低線膨張化。供給は限定的 | 特殊電子・精密部品 |
| 共重合・変性グレード | 他のジカルボン酸又はジオール成分を少量共重合 | 結晶化速度、透明性、成形温度、靱性を調整 | 透明容器、特殊フィルム |
| 食品接触・医療用途向け | 抽出物、添加剤、品質管理を用途別に設計 | 適合性は個別グレード及び接触条件に依存 | 食品包装、医療部材 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | 高温溶融と十分な乾燥が必要。結晶化及び金型温度で透明性と寸法が変化する |
| 押出成形 | ◎ | フィルム、シート、繊維に適する。溶融滞留とダイ内の局所過熱を避ける |
| ブロー成形 | ○ | 高粘度グレード及び延伸ブロー条件で適用可能。市場実績はPETより限定的 |
| インフレーション成形 | △ | 高温加工と結晶化制御が難しく、Tダイ法が一般に選択されやすい |
| Tダイフィルム成形 | ◎ | 未延伸シート製膜後の二軸延伸・熱固定に適する |
| 真空成形 | ○ | シートの結晶化状態と加熱窓を管理する |
| 圧空成形 | ○ | 高温での均一加熱と金型温度管理が必要 |
| 圧縮成形 | △ | 試験片又は特殊用途では可能だが主要量産法ではない |
| トランスファー成形 | × | 熱硬化性樹脂向けの方法であり一般的ではない |
| 回転成形 | × | 高融点、高乾燥要求及び粉末融着性の点で一般的ではない |
| 発泡成形 | △ | 特殊グレード及び発泡制御が必要 |
| 3Dプリント | △ | 高温対応装置と乾燥が必要で、汎用フィラメントの供給は限定的 |
| 切削加工 | ○ | 板・厚物が入手できれば可能。発熱、欠け、内部応力に注意する |
| 溶着 | ○ | 熱板、超音波、レーザー等が候補。結晶化度と接合面設計が重要 |
| 接着 | △ | 表面清浄化、プラズマ又はコロナ処理、プライマーで改善可能 |
| 塗装・印刷 | ○ | フィルムでは表面処理又は易接着層が一般的 |
| めっき | △ | 前処理と密着層が必要で、一般用途では限定的 |
| 蒸着 | ◎ | 寸法安定性と表面平滑性を活かし、金属・無機膜の基材に適する |
| レーザーマーキング | ○ | 添加剤、レーザー波長、色に依存する |
| インサート成形 | ○ | 金属との線膨張差、残留応力及びウェルド強度を確認する |
一般的な成形条件
| 成形条件項目 | 単位 | 一般的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 必要 | 吸湿したまま溶融すると加水分解し、粘度低下、シルバー、脆化を生じる |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | 150~170 | 乾燥機、露点、グレードにより調整する |
| 推奨乾燥時間 | h | 4~8 | 厚いペレット層や高湿度保管後は延長を検討する |
| 許容含水率 | % | 0.005以下を目標 | メーカー基準を優先する。測定法によって値が異なる |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 280~295 | 供給安定性と早期溶融を確認する |
| シリンダー温度・圧縮部 | ℃ | 290~310 | 局所過熱を避ける |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 295~315 | グレード及び滞留時間で調整する |
| ノズル温度 | ℃ | 295~315 | 糸引き、固化、熱劣化のバランスを取る |
| 樹脂温度 | ℃ | 295~320 | 長時間滞留を避ける |
| 金型温度 | ℃ | 80~160 | 低温側は透明性、高温側は結晶化と耐熱性を得やすい |
| 射出圧力 | MPa | 70~140 | 形状、ゲート、流動長により変動する |
| 背圧 | MPa | 0.5~2.0 | 過大なせん断発熱を避ける |
| スクリュー回転数 | rpm | 30~100 | 装置径と滞留時間に応じて低~中速とする |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.3~1.2 | 非強化材の代表範囲。結晶化度と肉厚に依存する |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 0.4~1.4 | 配向と結晶化の影響を受ける |
| 推奨肉厚 | mm | 0.8~3.5 | 流動性、冷却、結晶化を考慮する |
| アニール | - | 必要に応じて実施 | 寸法安定化にはTg近傍以上での熱処理を検討するが、変形を防ぐ治具が必要 |
上記は材料群としての一般的な目安であり、特定メーカーの特定グレードに対する保証条件ではない。PENはポリエステルであるため、溶融前の含水率管理が最重要である。乾燥不良では分子量が短時間で低下し、シルバー、粘度低下、延伸破断及び機械強度低下の原因となる。
代表的な物性値又は機械的性質
物理的性質
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 比較用代表値 | 試験規格 | 条件・材料状態 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.34~1.37 | 1.36 | ISO 1183相当 | 23℃、非強化 | A~B | 結晶化度で変動 |
| 比重 | 無次元 | 1.34~1.37 | 1.36 | 代表値、規格不明 | 23℃ | B | 密度と実質同等の表示 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.2~0.5 | 0.3 | ISO 62又はASTM D570相当 | 23℃水中 | B~C | 試験片厚さと結晶化度に依存 |
| 平衡吸水率 | % | 0.3~0.7 | 0.5 | 代表値、規格不明 | 23℃・50%RH | C | 公開条件が限定的 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.3~1.2 | 0.7 | 成形条件依存 | 射出成形 | C | 非強化材の目安 |
| 線膨張係数・流動方向 | 10−5/K | 2.0~6.0 | 3.5 | 代表値、規格不明 | 配向・結晶化状態依存 | B~C | 二軸延伸フィルムはさらに低い場合がある |
| 屈折率 | 無次元 | 1.64~1.66 | 1.65 | 代表値、波長条件依存 | 透明材 | B | PETより高い傾向 |
| 光線透過率 | % | 85~90 | 88 | ASTM D1003相当 | 透明フィルム、厚さ依存 | B~C | 結晶化、厚さ、表面処理で変化 |
| 外観 | - | 透明~淡黄色透明 | データなし | 目視 | 自然色 | A | 結晶化で半透明化する |
機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 比較用代表値 | 試験規格 | 条件・材料状態 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ・降伏 | MPa | 70~100 | 85 | ISO 527相当 | 23℃、非強化 | B | 未延伸成形材の目安 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 65~100 | 80 | ISO 527相当 | 23℃、非強化 | B~C | 延伸フィルムは方向別に大幅に高くなる |
| 引張弾性率 | GPa | 2.5~3.5 | 3.0 | ISO 527相当 | 23℃、非強化 | B | 配向品では高い |
| 引張破断伸び | % | 20~120 | 60 | ISO 527相当 | 23℃、非強化 | C | 結晶化度、分子量、試験速度で幅が大きい |
| 曲げ強さ | MPa | 100~150 | 125 | ISO 178相当 | 23℃、非強化 | C | 公開データが限定的 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.7~3.8 | 3.2 | ISO 178相当 | 23℃、非強化 | B~C | 引張弾性率と混同しない |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 3~8 | 5 | ISO 180相当 | 23℃、非強化 | C | ASTMのJ/m値と直接比較しない |
| 圧縮強さ | MPa | データなし | データなし | - | - | 0 | 一般化困難 |
| 動摩擦係数 | 無次元 | 0.3~0.5 | 0.4 | 代表値、規格不明 | 対鋼、乾燥、参考 | D | 相手材・荷重・速度に強く依存 |
熱的性質
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 比較用代表値 | 試験規格 | 条件・材料状態 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | 118~125 | 121 | DSC/DMA | 非強化 | A~B | 測定法で差がある |
| 融点 | ℃ | 265~275 | 270 | DSC | 半結晶性 | A | 共重合で低下する |
| 結晶化温度 | ℃ | 190~230 | 210 | DSC、冷却条件依存 | 非強化 | B~C | 冷却速度で変動 |
| HDT・0.45 MPa | ℃ | 150~210 | 180 | ISO 75相当 | 非強化、結晶化状態依存 | C | 試験片の結晶化度で大きく変化 |
| HDT・1.80 MPa | ℃ | 120~175 | 150 | ISO 75相当 | 非強化、結晶化状態依存 | C | GF強化材は高くなる |
| 連続使用温度 | ℃ | 120~160 | 140 | 用途別目安 | 長期熱老化条件依存 | C | RTI又はメーカー長期データを優先 |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 180~220 | 200 | 用途別目安 | 無荷重短時間 | C | 融点及び荷重を考慮する |
| 低温使用限界 | ℃ | −60~−40 | −50 | 用途別目安 | 衝撃条件依存 | C | 低温衝撃試験が必要 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.20~0.30 | 0.24 | 代表値、規格不明 | 23℃、非強化 | B~C | フィラーで上昇する |
| 比熱 | J/(g・K) | 1.0~1.3 | 1.15 | 代表値、規格不明 | 23℃ | C | 温度依存 |
電気的性質
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 比較用代表値 | 試験規格 | 条件・材料状態 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1016以上 | 1×1016 | IEC 60093相当 | 23℃、乾燥 | B | 吸湿及び添加剤で低下する |
| 表面抵抗率 | Ω | 1015以上 | 1×1015 | IEC 60093相当 | 23℃、乾燥 | B~C | 表面汚染と湿度に依存 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 150~300 | 200 | IEC 60243相当 | 薄膜、厚さ依存 | B | フィルム用途で高い |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 3.0~3.4 | 3.2 | IEC 60250相当 | 23℃、乾燥 | B | 周波数と配向に依存 |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 2.9~3.3 | 3.1 | IEC 60250相当 | 23℃、乾燥 | B~C | 周波数を付して比較する |
| 誘電正接・1 kHz | 無次元 | 0.003~0.010 | 0.006 | IEC 60250相当 | 23℃、乾燥 | B~C | 温湿度依存 |
| 誘電正接・1 MHz | 無次元 | 0.008~0.020 | 0.012 | IEC 60250相当 | 23℃、乾燥 | C | グレード差あり |
| CTI | V | データなし | データなし | IEC 60112 | グレード依存 | 0 | 認証資料を確認する |
燃焼性・難燃性
| 項目 | 単位 | 一般的傾向 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| UL 94燃焼性 | 等級 | 未難燃グレードはHB相当となる場合がある | 材料群全体の認証ではない。グレード、厚さ、色及び添加剤ごとにUL Yellow Cardを確認する |
| UL 94試験片厚さ | mm | データなし | 認証グレードごとに確認する |
| 限界酸素指数・LOI | % | 約21~25の範囲が目安 | 測定条件と添加剤に依存し、一般化には注意する |
| ハロゲン含有 | - | ポリマー骨格はハロゲンを含まない | 難燃剤、顔料、添加剤は個別確認する |
| 燃焼時の主な発生物 | - | 二酸化炭素、一酸化炭素、低分子芳香族化合物等 | 不完全燃焼煙を吸入しない。SDS及び火災安全設計を優先する |
代表値と代表範囲は同一セルに混在させず、比較用代表値を別列とした。比較用代表値はACF等へ数値として登録する際の候補であるが、グレード、試験規格、試験片厚さ、配向方向、結晶化度及び材料状態が異なるデータを直接比較してはならない。特にフィルムの引張特性はMD方向とTD方向を分けて管理する必要がある。
耐薬品性
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触時間 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃ | 長期浸漬 | 無 | ◎ | 吸水、わずかな寸法変化 | 室温では一般に良好 |
| 温水 | - | 60~90℃ | 長期浸漬 | 無 | ○ | 加水分解、強度低下 | 時間と結晶化度を確認 |
| 水蒸気 | 飽和 | 100℃以上 | 反復 | 無 | △ | 加水分解、白化、脆化 | 高圧蒸気滅菌は個別評価 |
| 塩酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 表面変化又は分子量低下の可能性 | 濃酸・高温は別評価 |
| 硫酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 表面変化 | 濃硫酸及び高温は不適となり得る |
| 硝酸 | 10% | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 酸化、変色、強度低下 | 濃度と温度に敏感 |
| 酢酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 吸収、加水分解促進の可能性 | 氷酢酸及び高温は注意 |
| 水酸化ナトリウム | 1% | 23℃ | 24 h | 無 | △ | エステル結合の加水分解、表面荒れ | 高濃度・高温は× |
| 水酸化ナトリウム | 10% | 23℃ | 長期 | 無 | × | 加水分解、強度低下 | 強アルカリ洗浄には不向き |
| エタノール | 99% | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 通常は小さい | 応力下と高温は確認 |
| イソプロパノール | 99% | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 通常は小さい | 印刷層・接着層は別評価 |
| グリセリン | - | 23~60℃ | 長期 | 無 | ◎ | 通常は小さい | 高温長期は確認 |
| MMB(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール) | - | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 吸収又は膨潤の可能性 | 実測データが限定的 |
| トルエン | - | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | わずかな膨潤、添加剤抽出 | 高温、応力下は注意 |
| キシレン | - | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 膨潤、表面変化の可能性 | 混合溶剤は別評価 |
| n-ヘキサン | - | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 通常は小さい | 油分・添加剤抽出を確認 |
| アセトン | - | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤、白化、応力割れの可能性 | 長時間浸漬を避ける |
| メチルエチルケトン | - | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤、表面変化 | 応力下で要試験 |
| 酢酸エチル | - | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤、軟化の可能性 | 長期接触は非推奨 |
| テトラヒドロフラン | - | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 強い膨潤又は溶解の可能性 | 接触を避ける |
| ジクロロメタン | - | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 膨潤、溶解、応力割れ | 不適 |
| ガソリン | 市販相当 | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 添加成分による膨潤 | 燃料組成を確認 |
| 潤滑油 | 鉱物油 | 80℃以下 | 長期 | 無 | ◎ | 通常は小さい | 添加剤と温度を確認 |
| ブレーキ液 | グリコール系 | 23~80℃ | 長期 | 無 | ○ | 吸収又は強度変化 | 配合差が大きい |
| 冷却液 | EG水溶液50% | 80~120℃ | 長期 | 無 | ○ | 加水分解、吸水 | 高温寿命試験を行う |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.05% | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 酸化、変色 | 高濃度・高温・長時間は注意 |
| 過酸化水素 | 3% | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 酸化、表面変化 | 高濃度は△~× |
| 塩水 | 3.5% | 23℃ | 長期 | 無 | ◎ | 通常は小さい | 金属インサートの腐食は別途確認 |
| 食品油 | - | 23~80℃ | 長期 | 無 | ◎ | 通常は小さい | 食品接触適合は個別グレード確認 |
評価は非強化PENに対する一般的なスクリーニングであり、保証値ではない。ポリエステル系樹脂では、SP値差による膨潤だけでなく、酸又はアルカリによるエステル結合の加水分解、高温水蒸気による分子量低下、酸化剤による変色、応力下でのクラック及び積層接着層の剥離を考慮する必要がある。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 単位 | 代表値・目安 | 信頼度 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| PENのSP値 δ | MPa1/2 | 22~24 | C~D | 公開実測値が限定的であり、芳香族ポリエステルの凝集エネルギー及び類似材料からの推定を含む |
| 比較用代表値 | MPa1/2 | 23.0 | D | 確定値ではない。HSPのδD、δP、δH及び実浸漬結果を優先する |
SP値は溶解・膨潤傾向を把握する一次スクリーニングである。PENは半結晶性で分子鎖が剛直であり、実際の溶解には結晶領域の破壊、溶剤分子の拡散、温度及び時間が関与する。このため、SP値が近い溶剤でも室温短時間では膨潤が限定的な場合があり、逆に反応性薬品ではSP値差が大きくても化学劣化する。
溶解性の目安
| SP値差 |Δδ| | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤名 | 単位 | 溶剤SP値 | PENとの差 | SP差評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| テトラヒドロフラン | MPa1/2 | 18.5 | 4.5 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| アセトン | MPa1/2 | 20.0 | 3.0 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| メチルエチルケトン | MPa1/2 | 19.0 | 4.0 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| 酢酸エチル | MPa1/2 | 18.6 | 4.4 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| ジクロロメタン | MPa1/2 | 20.2 | 2.8 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| トルエン | MPa1/2 | 18.2 | 4.8 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| エタノール | MPa1/2 | 26.0 | 3.0 | △ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| イソプロパノール | MPa1/2 | 23.5 | 0.5 | × | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| 水 | MPa1/2 | 47.9 | 24.9 | ◎ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
| n-ヘキサン | MPa1/2 | 14.9 | 8.1 | ◎ | SP差のみの機械的評価。結晶性、分子サイズ、水素結合、反応性を反映しない |
上表のSP差評価はPENの比較用SP値を23.0 MPa1/2と仮置きした機械的計算であり、実際の耐薬品性評価とは一致しない場合がある。例えばIPAはSP値が近いが、常温でPENを直ちに溶解するとは限らない。THF、塩素系溶剤、強極性溶剤は、膨潤、白化又は応力割れの実試験を優先する。
製法
2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応にてビスヒドロキシエチレン-2,6-ナフタレートにした後、重縮合反応によって製造。
生産の形式もPET と同様に溶融重合反応法で実施し、その後必要に応じて、溶融重合によって得られた樹脂を、ペレット状態のまま固相重合を実施する。
重合触媒としてPETと同様にアンチモン系、ゲルマニウム系が使用される
| 工程 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本反応 | 2,6-ナフタレンジカルボン酸またはジメチルエステルとエチレングリコールを重縮合する。基本反応:NDC + EG → PEN + H2O | 代表的な合成・製造経路である |
| 改質・共重合 | 柔軟性、耐熱性、耐薬品性、透明性を調整する | 用途別グレード |
| コンパウンド | 充填材、安定剤、難燃剤、着色剤を配合する | 成形材料 |
| 成形・硬化 | 熱可塑成形、加硫、架橋、注型、含浸、硬化を行う | 最終製品 |
PENは、2,6-ナフタレンジカルボン酸又はそのジメチルエステルとエチレングリコールを原料とし、エステル化又はエステル交換、溶融重縮合を経て製造される。酸法では水、エステル交換法では主にメタノールを除去しながら低分子量オリゴマーを形成し、その後、高温・減圧下でエチレングリコールを留去して分子量を増大させる。
代表的な酸法の総括反応は、n HO-CH2-CH2-OH + n HOOC-C10H6-COOH → [-O-CH2-CH2-O-CO-C10H6-CO-]n + 約2n H2O と表せる。実際には末端基、反応平衡及びオリゴマー段階があるため、これは代表的な総括式である。
溶融重縮合後はストランド又はアンダーウォーターカットでペレット化し、必要に応じて固相重合によって固有粘度を高める。フィルム用途では、乾燥、溶融押出、キャスト、逐次又は同時二軸延伸、熱固定、必要に応じたコロナ処理、易接着コート又は蒸着を行う。添加剤として酸化防止剤、滑剤、核剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、着色剤、UV安定剤等を用いる場合がある。
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の要因 | 成形条件側の要因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| シルバーストリーク | 吸湿、加水分解、低分子成分 | 乾燥不足、過熱、過大せん断 | 低露点乾燥、含水率測定、温度と回転数の適正化 |
| 粘度低下・脆化 | 加水分解又は熱分解 | 長時間滞留、再生材過多 | 滞留短縮、パージ、再生材比率管理 |
| 変色・黒点 | 酸化劣化、異物 | 局所過熱、デッドスポット | 温度均一化、設備清掃、滞留管理 |
| 反り | 結晶化差、配向、異方性 | 金型温度差、保圧不均一 | 肉厚均一化、冷却均一化、ゲート最適化 |
| ウェルド強度低下 | 高結晶化、汚染 | 低樹脂温度、ガス抜き不足 | 樹脂温度、金型温度、ベント改善 |
| ヒケ・ボイド | 収縮、結晶化 | 保圧不足、肉厚過大 | 保圧とゲートシール時間の最適化 |
| フィルム厚みむら | 溶融粘度変動 | ダイ温度差、吐出脈動 | 乾燥・温調・スクリーン管理 |
| 延伸破断 | 分子量低下、ゲル、異物 | 延伸温度又は倍率不適 | 原料品質、延伸条件、フィルター管理 |
注意点・劣化・故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 加水分解 | エステル結合の切断 | 吸湿溶融、高温水、蒸気、酸又はアルカリ | 分子量低下、脆化、白化 | 乾燥、温湿度制限、安定化グレード | 含水率、粘度、熱水浸漬、引張保持率 |
| 熱酸化劣化 | 酸素存在下の高温暴露 | 高温長期、溶融滞留 | 黄変、脆化、ガス | 酸化防止設計、滞留短縮 | 熱老化、色差、分子量 |
| 紫外線劣化 | 光酸化 | 屋外、短波長UV | 黄変、表面劣化、強度低下 | UV安定剤、遮光、耐候グレード | キセノンアーク、強度保持率 |
| 環境応力割れ | 残留応力と薬品吸収 | ノッチ、圧入、溶剤接触、高温 | クラック、破断 | アニール、R低減、薬品変更 | 定ひずみESC、実薬品試験 |
| クリープ変形 | 長期荷重 | Tg近傍、高温、薄肉 | 寸法変化、締結力低下 | 許容応力低減、肉厚・リブ設計 | 温度別クリープ試験 |
| 疲労破壊 | 繰返し応力 | 振動、ウェルド、ノッチ | 亀裂、破断 | 応力集中低減、溶着部設計 | S-N試験、実部品耐久 |
| アウトガス・析出 | 低分子オリゴマー、添加剤 | 真空、高温、長期 | 汚染、光学・電気不良 | 低オリゴマーグレード、ベーク | TML/CVCM、GC-MS、表面分析 |
| 滅菌劣化 | 熱、蒸気、放射線、薬剤 | 反復オートクレーブ、γ線 | 黄変、脆化、寸法変化 | 適合グレードと滅菌法選定 | 反復滅菌後の物性・溶出 |
短時間の引張強さ又はHDTを、そのまま長期設計許容応力として使用してはならない。高温、湿熱、薬品、繰返し荷重及び残留応力が同時に作用する場合、単独試験より劣化が加速する可能性がある。
寸法精度・設計上の注意
- 射出成形品では結晶化度と配向により収縮及び反りが変わるため、流動方向と直角方向を分けて評価する。
- 二軸延伸フィルムではMD方向とTD方向の弾性率、熱収縮率、引張強さ及び破断伸びを別項目として管理する。
- インサート、圧入、タッピングねじ周辺では残留応力と線膨張差を低減し、鋭角、薄肉及び過大締付けを避ける。
- Tg近傍以上では弾性率低下とクリープが顕著になるため、長期荷重部品は温度別クリープ曲線で設計する。
- ウェルド部、切欠き、打抜き端面及びフィルム折曲げ部は環境応力割れと疲労の起点になり得る。
法規制・認証
| 法規制・認証 | 一般的な扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS / REACH / SVHC | 対応可能なグレードが存在する | 樹脂、添加剤、顔料、製造拠点及び最新証明書を確認する |
| ELV | 自動車用途で対応可能な場合がある | 個別グレードの適合証明を確認する |
| PFAS関連規制 | PEN骨格自体はフッ素を含まない | 加工助剤、表面処理、コーティング及び複合層を確認する |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在し得る | 適用条項、食品種、温度、時間、単層・多層構成を確認する |
| EU食品接触規則 | 適合グレードが存在し得る | 移行試験、SML、NIAS及びDeclaration of Complianceを確認する |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 収載又は適合グレードの確認が必要 | 事業者証明、添加剤、使用条件を確認する |
| USP Class VI / ISO 10993 | 医療用途向けの個別グレードに限定 | 材料名だけで生体適合性を断定しない |
| UL認証 | 難燃・電気用途の認証グレードが存在し得る | Yellow Card、厚さ、色、RTI、CTIを確認する |
| ハロゲンフリー | ポリマー骨格はハロゲンを含まない | 難燃剤及び添加剤を含む完成グレードで確認する |
規制適合はメーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、接触温度、接触時間及び最終製品構成によって異なる。「一般に対応可能」「適合グレードが存在する」「個別証明書が必要」を区別し、材料名だけで適合を断定してはならない。
環境・リサイクル性
| 項目 | 評価・内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 樹脂区分 | 熱可塑性 | 再溶融可能だが、熱履歴と加水分解で分子量が低下し得る |
| マテリアルリサイクル | ○ | 単一材で清浄な工程端材は再利用可能。フィルム積層品、蒸着品、接着層付きは分離が課題 |
| ケミカルリサイクル | 技術的に解重合可能 | 回収量、純度、経済性及びプロセス適合性が必要 |
| 再生材利用 | 用途を限定して可能 | 粘度、色、異物、バリア性、電気特性を確認する |
| 識別表示 | PEN専用の広く統一された家庭回収表示は限定的 | PET流に混入すると品質へ影響し得るため分別が重要 |
| バイオベース | 一部原料のバイオ化は技術的に可能 | バイオベースと生分解性を混同しない |
| 生分解性 | 一般に生分解性ではない | 環境中へ放出しない |
| 焼却 | 可燃性であり熱回収可能 | 不完全燃焼煙、一酸化炭素等に注意する |
価格・供給性
| 項目 | 相対評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 価格帯 | 高価格 | PET、PBT等の汎用ポリエステルより高い。特殊フィルム、厚さ、表面処理及び購入量で変動する |
| 汎用的な流通性 | 限定的 | フィルムは一定の流通があるが、射出成形ペレットや板材は地域と用途で限定される |
| 国内入手性 | ○ | 主要メーカー又は加工商社を通じて入手可能だが、常備寸法・最小購入量を確認する |
| 少量購入 | △ | 研究用フィルムは入手可能な場合がある。成形材料の少量販売は限定的 |
| 供給形態 | ペレット、フィルム、シート、繊維、積層材 | 厚さ、表面処理、易接着、蒸着、離型処理等の仕様確認が必要 |
用途別選定
| 用途分野 | 適性 | 採用理由 | 主な注意点・比較候補 |
|---|---|---|---|
| 高耐熱フィルム | ◎ | 高Tg、低熱収縮、高弾性率 | PET、PI、PPSフィルムと温度・価格を比較 |
| 電気絶縁フィルム | ◎ | 絶縁破壊強さ、耐熱耐湿、寸法安定性 | 認証厚さ、部分放電、熱老化を確認 |
| フレキシブル回路基材 | ◎ | 低収縮、表面平滑性、耐薬品性 | 銅箔接着、はんだ耐熱、寸法変化を評価 |
| 工業用テープ基材 | ◎ | 強度、耐熱性、薄膜安定性 | 粘着剤と表面処理の耐久性を確認 |
| 包装・高バリア容器 | ○ | 酸素・二酸化炭素バリア、UV遮蔽 | 価格、食品接触、リサイクル流を確認 |
| 繊維・産業資材 | ○ | 高弾性率、寸法安定性 | 紡糸条件と加水分解管理 |
| ギア・軸受 | △ | 剛性と耐熱性はある | 摺動専用グレードの供給性、摩耗データが必要 |
| 電気コネクタ | ○ | 耐熱性、寸法安定性、絶縁性 | 難燃、ウェルド、リフロー耐熱を個別確認 |
| 透明カバー | ○ | 透明性、耐熱性、UV吸収 | PC、COP、PMMAとの衝撃・複屈折比較 |
| 医療機器部品 | △ | 耐熱、透明性、低アウトガスの可能性 | 生体適合、滅菌、溶出は個別グレード確認 |
| 半導体・真空装置部品 | ○ | 低アウトガスグレードと清浄性 | TML/CVCM、粒子、金属イオンを確認 |
| 屋外部品 | ○ | 比較的良好な耐候性 | 長期UV、湿熱、色差を試験 |
| 塗料・コーティング用樹脂 | △ | 芳香族ポリエステルとして利用可能性 | PENそのものの溶解・反応加工は限定的 |
| 複合材料マトリックス | ○ | 耐熱性と剛性 | 含浸温度、繊維界面、結晶化制御が必要 |
用途適性は材料群としての一般的傾向である。実使用ではグレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、試験片形状、成形条件及び法規制を確認する。
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 4 | 非強化材でも高い強度を示し、延伸フィルムではさらに向上する |
| 剛性 | 4 | PETより高温域で弾性率を保持しやすい |
| 衝撃強度 | 3 | 標準的であり、ノッチ及び結晶化状態に依存する |
| 耐熱性 | 4 | Tg約120℃、融点約270℃でPETより高い |
| 低温特性 | 3 | 使用可能だが、低温衝撃はグレードと形状依存 |
| 耐薬品性 | 4 | 多くの水、油、アルコールに良好。強アルカリと一部溶剤は注意 |
| 耐候性 | 4 | 芳香族構造とUV吸収性により比較的良好だが、長期屋外は安定化が必要 |
| 耐加水分解性 | 4 | PETより良好とされるが、高温水・蒸気・アルカリでは劣化する |
| 寸法安定性 | 5 | 延伸・熱固定フィルムで特に優れる |
| 低吸水性 | 4 | PAより低く、寸法変化が比較的小さい |
| 摺動性 | 3 | 標準的。専用摺動材ほどではない |
| 耐摩耗性 | 3 | 用途条件依存で、POMやPTFE系との比較が必要 |
| 電気絶縁性 | 5 | 薄膜で高い絶縁破壊強さと耐熱寸法安定性を示す |
| 難燃性 | 2 | 未難燃材は自己消火性を期待できず、難燃グレードが必要 |
| 透明性 | 4 | 透明成形・フィルムが可能だが、結晶化でヘーズが増える |
| 成形加工性 | 3 | 加工可能だが、高温と厳格な乾燥が必要 |
| 切削加工性 | 3 | 素材入手性は限定的だが加工自体は可能 |
| 接着性 | 3 | 表面処理又は易接着層で改善可能 |
| リサイクル性 | 3 | 熱可塑性だが、流通量と積層構成が回収を難しくする |
| 価格優位性 | 1 | PET等より高価で供給も限定的 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PENとの主な違い | 選定上の要点 |
|---|---|---|---|
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | 汎用性、透明性、成形性、低コスト | PENはTg、耐熱寸法安定性、バリア性、UV遮蔽性に優れるが高価 | 一般包装はPET、高耐熱フィルムはPENを検討 |
| ポリブチレンナフタレート(PBN) | ナフタレン骨格とブチレン鎖を持つ高機能ポリエステル | PBNは結晶化・靱性・加工挙動が異なり、PENはフィルム寸法安定性に強い | 成形品とフィルム用途を分けて評価 |
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 射出成形性、速い結晶化、電気部品用途 | PBTは成形サイクルに優れ、PENは耐熱バリア・フィルム性能に優れる | 量産射出部品はPBTが有利 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 高耐熱、難燃、耐薬品性 | PPSは高温耐薬品性と難燃性に優れ、PENは透明性とフィルム加工性に優れる | 高温薬液はPPS、透明薄膜はPEN |
| ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | 極めて高い耐熱、耐薬品、機械特性 | PEEKは性能上限が高いが極めて高価。PENは薄膜・バリア用途で費用対効果がある | 200℃超の長期構造用途はPEEK |
| ポリイミド(PI) | 高耐熱フィルム、耐放射線、電気絶縁 | PIは耐熱上限が高いが一般に着色し、PENは透明性と低吸水性、コストで優位 | 高温FPCはPI、透明性と寸法安定性はPEN |
| ポリカーボネート(PC) | 高透明、高衝撃、射出成形性 | PCは衝撃性と成形品実績、PENは耐薬品性、バリア、フィルム寸法安定性で優位 | 厚肉透明部品はPC、薄膜耐熱はPEN |
| 液晶ポリマー(LCP) | 高流動、低線膨張、リフロー耐熱 | LCPは超薄肉射出と寸法精度、PENは透明フィルムとバリア性に優れる | コネクタはLCP、フィルムはPEN |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 帝人株式会社 / 帝人フロンティア株式会社 | TEONEX®(テオネックス) | PEN樹脂及びPENフィルムの代表的ブランド。用途、地域、供給形態は各社窓口で確認する |
| 東洋紡株式会社 | TEONEX® PENフィルム | PENフィルムを展開。商標・供給関係、グレード、厚さ及び表面処理仕様は最新資料で確認する |
| Indorama Ventures | Polyethylene Naphthalate(PEN) | NDC又はPNDAとエチレングリコール由来の特殊ポリエステルとしてPENを案内。供給地域と銘柄を確認する |
メーカー、ブランド、事業主体及び供給地域は変更される場合がある。採用時は最新のメーカー公式資料、技術データシート、SDS、規制証明書及び供給可否を確認する。
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実濃度、最低・最高使用温度、実接触時間及び洗浄サイクルで、質量、寸法、外観、引張特性及び分子量を確認する。
- 環境応力割れ試験:成形残留応力又は実部品荷重を再現し、ノッチ、圧入、曲げ及び溶剤接触を組み合わせる。
- 高温高湿・加水分解試験:85℃・85%RH、温水、沸騰水又は実蒸気条件で、500~2000 hを目安に段階評価する。
- 熱老化試験:想定連続使用温度とその上側温度で、色差、質量、引張保持率、絶縁特性及び寸法を測定する。
- クリープ・疲労試験:実温度、実応力、応力比及び繰返し回数で実施し、短時間強度から寿命を推定しない。
- フィルム寸法安定性試験:MD・TD別に熱収縮率、CTE、吸湿寸法変化、カール及び積層後寸法を測定する。
- 電気絶縁試験:厚さ別の絶縁破壊、誘電率、誘電正接、耐湿後特性及び部分放電を確認する。
- 接着・溶着試験:表面処理、接着剤、熱履歴及び湿熱後の剥離強度又は溶着強度を測定する。
- アウトガス試験:真空、高温又はクリーン用途ではTML、CVCM、GC-MS及び表面析出を評価する。
- 実成形・実部品耐久試験:量産機、実金型、実肉厚、実ゲート及び実組付け条件で最終確認する。
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