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概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ブチルゴム |
| 略記号 | IIR |
| IUPAC | poly(isobutene-co-isoprene) 又は poly(2-methylpropene-co-isoprene) と表記される。単一化学種ではなく、イソブチレンを主成分とし少量のイソプレンを共重合した共重合体群である。 |
| 英語名 | Butyl Rubber / Isobutylene-Isoprene Rubber / Isobutene-Isoprene Rubber |
| 日本語名・別名 | ブチルゴム、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブテン・イソプレンゴム |
| 分類 | 合成ゴム、オレフィン系エラストマー、低不飽和ゴム、架橋型エラストマー |
| プラスチック分類 | ゴム・熱硬化性エラストマー。加硫後は一般的な熱可塑性プラスチックのように再溶融成形できない。 |
| 化学式又は代表構造 | 主鎖の大部分は −[CH2−C(CH3)2]− であり、少量のイソプレン由来不飽和単位 −[CH2−C(CH3)=CH−CH2]− を含む。 |
| CAS No. | 9010-85-9 がブチルゴムに一般的に用いられる。ハロブチル、変性品、配合物では別CASが用いられる場合があるためSDSで確認する。 |
| 構造・主成分 | イソブチレンを主体とし、一般に約1~2 mol%台のイソプレン由来不飽和部を含む。実際の不飽和度、分子量、ムーニー粘度、安定剤、加硫系はグレードにより異なる。 |
| 主な用途 | タイヤインナーチューブ、タイヤインナーライナー、キュアリングブラダー、医薬品用ゴム栓、ガスケット、シール、ホース、制振材、防水シート、接着剤、シーラント、電気絶縁、タンク・配管ライニング。 |
ブチルゴム(IIR)は、イソブチレンを主成分とし、少量のイソプレンを共重合して加硫反応点を導入した合成ゴムである。分子鎖の大部分が飽和したポリイソブチレン骨格で構成されるため、一般に酸素、窒素、水蒸気などの気体透過性が小さく、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、電気絶縁性及び振動減衰性に優れる。
IIRの最も重要な特性は低ガス透過性であり、タイヤインナーチューブ、タイヤインナーライナー、スポーツボール用ブラダー、医薬品用ゴム栓など、気密性が要求される用途で広く使用される。一方、非極性の炭化水素系ゴムであるため、鉱物油、ガソリン、軽油、脂肪族・芳香族炭化水素及び一部のハロゲン化溶剤では著しい膨潤を生じやすい。
市販部品の多くはIIRポリマー単体ではなく、カーボンブラック又はシリカ、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤などを含む加硫配合物である。したがって、以下の物性値及び耐薬品性は材料群としての代表値又は代表傾向であり、実使用ではグレード、硬さ、充填材、加硫系、温度、濃度、荷重、応力、湿度、接触時間及び成形条件を確認する必要がある。
特徴
長所
- 気体透過性が非常に小さく、空気保持性及び防湿性に優れる。
- 主鎖不飽和度が低いため、耐オゾン性、耐候性、耐酸化老化性が良好である。
- 低いガラス転移温度を持ち、低温域でも柔軟性を維持しやすい。
- 内部損失が大きく、振動減衰、制振、衝撃吸収用途に適する。
- 希酸、希アルカリ、水、アルコール、グリコール及び一部の極性流体に比較的安定である。
- 非極性で吸水が小さく、電気絶縁特性が良好である。
短所
- 鉱物油、潤滑油、ガソリン、軽油、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素に対して膨潤しやすい。
- 一般に反発弾性が低く、天然ゴムやBRのような高反発用途には不利である。
- 低不飽和のため通常IIRは加硫速度が遅く、他ゴムとの共加硫性及び接着性が制限される場合がある。
- 耐油シール、燃料ホースなどには原則としてNBR、HNBR、FKM等を優先して比較する必要がある。
- 加硫後は再溶融できず、マテリアルリサイクル性は熱可塑性エラストマーより低い。
外観
原料ゴムは一般に淡色から淡黄色、灰白色系のベール状で供給される。実用品はカーボンブラック配合により黒色が多いが、白色又は淡色配合、医薬品用の低抽出配合も存在する。
耐熱性
一般的な加硫IIRの連続使用温度上限は概ね100~120℃程度が目安であり、配合及び加硫系によって異なる。短時間ではより高温に耐える場合があるが、高温では硬化、圧縮永久ひずみ増大、架橋構造変化及び添加剤消耗が進む。CIIR及びBIIRでは加硫性や耐熱性が改善される場合がある。
耐薬品性
水、希酸、希アルカリ、多くのアルコール及びグリコールには一般に良好である。対して、鉱油、燃料、炭化水素系溶剤はIIRと溶解度パラメータが近く、大きな膨潤を起こしやすい。強酸化性酸、濃硝酸、濃硫酸、高温薬液、塩素化溶剤については別途実浸漬評価が必要である。
加工性
ロール又はインターナルミキサーで配合し、押出、カレンダー、圧縮、トランスファー、ゴム射出成形後に加硫する。未加硫状態では粘着性、ムーニー粘度、配合剤分散、スコーチ安全性を管理する。通常IIRは硫黄加硫、樹脂加硫、キノイド系などが用いられ、ハロブチルではより多様な加硫系を採用できる。
分類上の注意
IIRはポリイソブチレン(PIB)と近い骨格を持つが、IIRは少量のイソプレン由来不飽和部を含み、加硫可能なゴムとして設計されている。また、クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)はIIRのハロゲン化誘導体であり、通常IIRとは加硫速度、接着性、耐熱性及び配合設計が異なる。
難燃性
標準IIRは一般に可燃性であり、材料名だけでUL 94等級を断定できない。難燃配合は可能であるが、UL 94、LOI、発煙性及び燃焼ガスは難燃剤、充填材、厚さ、色に依存するため、個別認証グレードを確認する。
法規制
RoHS、REACH、SVHC、ELV、TSCA、食品接触、FDA、日本の食品衛生法、医薬品・医療用途及びUSP等への適合は、IIR材料群全体で一律に決まるものではない。ポリマー、加硫剤、促進剤、老化防止剤、可塑剤、顔料、抽出物、溶出物、製造拠点及び用途条件を含む個別グレードの証明書を確認する必要がある。
構造式

代表的な構造単位
| 構成単位 | 代表構造 | 主な役割 |
|---|---|---|
| イソブチレン単位 | −CH2−C(CH3)2− | 低ガス透過性、低吸水性、低Tg、耐候性、電気絶縁性の主要因となる。 |
| イソプレン由来単位 | −CH2−C(CH3)=CH−CH2− | 少量のC=C結合を導入し、硫黄加硫及び化学変性の反応点を与える。 |
| 加硫構造 | 硫黄架橋、樹脂架橋等 | 弾性回復、耐熱性、圧縮永久ひずみ、耐薬品性及び耐久性を左右する。 |
モノマー又は構成単位
主モノマーはイソブチレン(isobutylene / isobutene)であり、少量のイソプレンを共重合する。市販通常IIRの不飽和度は概ね1~2 mol%台が代表的であるが、メーカー及びグレードによって異なる。
共重合体及び変性グレード
代表的な変性体としてクロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)がある。ハロゲン化により反応性が高まり、加硫速度、他ゴムとの接着性及び共加硫性が改善される。さらに、p-メチルスチレン系共重合体を臭素化した特殊ブチル系エラストマーも存在するが、通常IIRとは分子構造及び特性が異なる。
種類・代表グレード
| 種類・グレード区分 | 主成分又は改質方法 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準IIR | イソブチレン主体+少量イソプレン | 低ガス透過、耐候、耐オゾン、制振、電気絶縁 | 耐油・耐燃料性が低い。加硫速度が遅い。 | インナーチューブ、ブラダー、防振、防水、ライニング |
| 高ムーニーIIR | 高分子量・高粘度側 | グリーン強度、押出形状保持、機械強度を確保しやすい | 混練負荷、流動性に注意 | 押出材、シート、厚肉ゴム製品 |
| 低ムーニーIIR | 低粘度側 | 混練性、流動性、加工性に優れる | 形状保持、強度設計に注意 | 接着剤、シーラント、加工性重視配合 |
| 食品・医薬用途向けIIR | 低抽出・低汚染配合に適する原料グレード | 清浄性、低透過性、密封性 | 適合性は最終配合で個別確認が必要 | 医薬品栓、食品関連シール |
| CIIR | IIRを塩素化 | 加硫速度、接着性、耐熱性を改善しやすい | 通常IIRより配合管理が複雑 | タイヤインナーライナー、医薬品栓、シール |
| BIIR | IIRを臭素化 | 高反応性、共加硫性、接着性が良好 | 保管・加工条件、金属腐食性成分に注意 | タイヤインナーライナー、医薬品栓、高性能シール |
| カーボンブラック補強 | IIR+CB 30~80 phr程度の配合例 | 引張強さ、耐摩耗、耐候、加工安定性を調整 | 電気特性、硬さ、比重が変化 | 一般工業ゴム、ホース、ガスケット、ライニング |
| 白色・シリカ補強 | IIR+シリカ・白色充填材 | 淡色化、清浄性、特定用途への適合設計 | 分散、吸湿、接着性に注意 | 医薬品、食品、一般淡色ゴム |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由及び主な注意点 |
|---|---|---|
| ゴム射出成形 | ◎ | 複雑形状及び量産に適する。粘度、金型温度、スコーチ、加硫時間、エア抜きを管理する。 |
| 圧縮成形 | ◎ | ガスケット、ブラダー、厚肉品に一般的である。加硫均一性とプリフォーム量を管理する。 |
| トランスファー成形 | ◎ | 精密品、インサート品に適する。ランナー廃材、スコーチ及び型内圧に注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | チューブ、ホース、異形材、シート前駆体に適する。押出後に連続加硫する。 |
| カレンダー成形 | ◎ | シート、ライニング材、防水材、布引きに適する。厚み、気泡、収縮を管理する。 |
| ブロー成形 | × | 熱可塑性樹脂の一般的ブロー成形には適さない。ブラダー類は別工程で成形・加硫する。 |
| インフレーション成形 | × | 架橋型ゴムであり一般的なフィルムインフレーションには不適である。 |
| Tダイフィルム成形 | △ | 未加硫シート押出としては可能だが、熱可塑性フィルムのような成形とは異なる。 |
| 真空成形・圧空成形 | × | 一般的な熱可塑シート成形には適さない。 |
| 発泡成形 | ○ | 独立気泡系等が可能。発泡剤分解速度と加硫速度の整合が重要である。 |
| 3Dプリント | △ | 特殊ペースト又は未加硫材料に限定され、一般的なIIR加工法ではない。 |
| 切削加工 | △ | 硬質配合、凍結加工、専用刃具で可能であるが、軟質品は変形しやすい。 |
| 溶着 | × | 加硫後は再溶融しない。未加硫状態でのスプライス及び共加硫を用いる。 |
| 接着 | ○ | 表面研磨、脱脂、プライマー、専用接着剤により可能。低表面エネルギーと配合剤ブリードに注意する。 |
| 塗装・印刷 | △ | 未処理表面では密着性が低い場合がある。プラズマ、コロナ、プライマーを検討する。 |
| インサート成形 | ○ | 金属接着剤を介した共加硫が可能。熱膨張差、腐食、接着耐久性を確認する。 |
代表的な成形・加硫条件
| 項目 | 単位 | 代表的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要 | IIR自体は低吸水性であるが、吸湿性充填材や薬品を含む配合では水分管理が必要である。 |
| ロール温度 | ℃ | 30~60 | 過度の発熱とスコーチを避ける。配合順序と分散状態を管理する。 |
| 押出機温度 | ℃ | 40~90 | 未加硫配合の粘度、スクリュー、ダイ、連続加硫方式に依存する。 |
| 金型温度 | ℃ | 150~190 | 硫黄、樹脂、キノイド、ハロブチル系など加硫方式により最適条件が異なる。 |
| 加硫時間 | min | 3~30 | 肉厚、温度、加硫曲線、金型構造に基づいて設定する。 |
| 射出圧力 | MPa | 50~150 | 配合粘度、ゲート、肉厚、成形機により大きく変化する。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.0~3.0 | 配合、硬さ、加硫条件、後収縮、金型拘束に依存する。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.0~3.0 | 一般化困難。押出配向や充填材の異方性がある場合は実測する。 |
| 推奨肉厚 | mm | 1~12 | 厚肉では加硫不足、ボイド、温度勾配に注意する。 |
| 抜き勾配 | ° | 0.5~3 | 硬さ、表面粗さ、形状、金型表面処理により調整する。 |
| アニール | - | 通常不要 | 熱可塑性樹脂のアニールとは異なる。後加硫が必要な配合はメーカー条件に従う。 |
上記は材料群としての一般的な目安であり、特定グレードの保証条件ではない。IIRは配合、加硫系、ムーニー粘度、金型、肉厚及び設備による差が大きいため、レオメータ加硫曲線、ムーニースコーチ及び実成形で条件を決定する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 共加硫接合 | ◎ | 未加硫IIR同士に有効。異種ゴムとの共加硫は通常IIRでは難しい場合があり、CIIR/BIIRが有利である。 |
| 接着剤接合 | ○ | 研磨、脱脂、プライマー及びIIR適合接着剤を用いる。可塑剤や離型剤の移行を確認する。 |
| 機械締結 | ○ | 座面圧縮、クリープ、応力緩和を考慮し、過締結を避ける。 |
| 超音波・振動・熱板溶着 | × | 加硫後は熱可塑溶着できない。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ○ | 表面エネルギーを高め接着・印刷性を改善できる。処理効果の経時低下を確認する。 |
| フレーム処理 | △ | 条件次第で表面酸化可能であるが、過熱・劣化に注意する。 |
| プライマー処理 | ◎ | 金属接着及び異種材接合で一般的に有効である。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下の機械物性は、特に断らない限り非発泡・一般工業用の加硫IIR配合物の代表範囲である。原料IIRポリマーの密度及びムーニー粘度とは区別する。IIRはエラストマーであるため、曲げ弾性率、HDT、融点など熱可塑性樹脂向け指標は一般化しにくく、適用できない項目を無理に数値化していない。
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 材料状態・条件 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 原料ポリマー密度 | g/cm³ | 0.92 | 0.91~0.93 | ISO 1183相当 | 未加硫原料、23℃ | 市販IIR原料に共通する代表範囲。 | A |
| 加硫配合物密度 | g/cm³ | 1.10 | 1.00~1.25 | ISO 2781相当 | 一般カーボンブラック配合 | 充填材、可塑剤で大きく変化。 | B |
| 比重 | 無次元 | 1.10 | 1.00~1.25 | JIS K 6268相当 | 加硫配合、23℃ | 原料ポリマーは約0.92。 | B |
| 硬度 | Shore A | 60 | 30~85 | ISO 48-4 / ASTM D2240 | 23℃ | 配合により広範囲に調整可能。 | B |
| 引張強さ・破断 | MPa | 12 | 7~18 | ISO 37 / ASTM D412相当 | 23℃、加硫配合 | 補強剤、硬さ、架橋密度で変化。 | B |
| 引張破断伸び | % | 500 | 250~800 | ISO 37 / ASTM D412相当 | 23℃、加硫配合 | 一般に高伸びである。 | B |
| 100%引張応力 | MPa | 3.0 | 1.5~6.0 | ISO 37相当 | 23℃ | 硬さ、充填材依存。 | C |
| 引張弾性率 | GPa | データなし | 一般化困難 | - | ゴム状領域 | 非線形材料であり、100%モジュラス等を用いることが多い。 | - |
| 曲げ強さ | MPa | 該当なし | 該当なし | - | 柔軟エラストマー | 樹脂用曲げ試験を代表指標としない。 | - |
| 曲げ弾性率 | GPa | 該当なし | 該当なし | - | 柔軟エラストマー | 同上。 | - |
| 圧縮永久ひずみ | % | 30 | 15~50 | ISO 815-1 / ASTM D395相当 | 100℃×22~70 hの代表例 | 加硫系と硬さで大きく変化。値が小さいほど良い。 | C |
| 反発弾性 | % | 15 | 8~25 | ISO 4662相当 | 23℃ | 低反発・高減衰が特徴。 | C |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 該当なし | 該当なし | - | エラストマー | 樹脂用ノッチ衝撃値で評価しない。 | - |
| ガラス転移温度 | ℃ | -70 | -75~-60 | DSC又はDMA | 未加硫又は加硫IIR | 組成、架橋、可塑剤で変動。 | B |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | - | 実用IIR | 非晶性主体で明確な融点を代表指標としない。 | A |
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 該当なし | 該当なし | - | エラストマー | HDTは熱可塑性樹脂向け指標である。 | - |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | 該当なし | 該当なし | - | エラストマー | 同上。 | - |
| 連続使用温度・上限 | ℃ | 110 | 100~120 | 代表値、規格不明 | 空気中 | 寿命、配合、加硫系による。長期熱老化で確認する。 | C |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 140 | 130~150 | 代表値、規格不明 | 短時間 | 連続使用温度とは区別する。 | C |
| 低温使用限界 | ℃ | -50 | -55~-40 | TR10等を推奨 | 無荷重目安 | Tgより高い温度でも硬化が進むため実部品確認が必要。 | C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.09 | 0.08~0.20 | 代表値、規格不明 | 23℃ | 充填材で上昇する。 | B |
| 比熱 | J/(g・K) | 2.1 | 1.8~2.5 | 代表値、規格不明 | 室温付近 | 配合により変動。 | B |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 20 | 12~30 | 代表値、規格不明 | ゴム状領域 | 拘束部では熱応力に注意。 | B |
| 吸水率・24 h | % | 0.2 | 0.05~0.5 | ISO 62相当 | 23℃水、24 h | 低吸水。配合剤の抽出と区別する。 | C |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×10¹⁶ | 1×10¹⁴~1×10¹⁷ | IEC 60093相当 | 乾燥、絶縁配合 | 導電CB配合は別扱い。 | C |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 15~25 | IEC 60243相当 | 厚さ依存 | 絶縁配合の目安。 | C |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 2.9 | 2.7~3.2 | IEC 60250相当 | 23℃、乾燥 | 充填材、周波数、温度に依存。 | C |
| 誘電正接・1 kHz | 無次元 | 0.003 | 0.001~0.01 | IEC 60250相当 | 23℃、乾燥 | 配合依存。 | C |
原料IIRの代表仕様例
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 代表的試験方法 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ムーニー粘度 ML(1+8) 125℃ | MU | 約33~56 | ISO 289 / ASTM D1646 | 低粘度~高粘度グレードで変化する。 |
| 不飽和度 | mol% | 約1.4~2.3 | メーカー法 | イソプレン由来反応点の指標。 |
| 揮発分 | wt% | 0.3以下の製品例 | ISO 248 / ASTM D5668 | 製品により規格が異なる。 |
| 灰分 | wt% | 0.3以下の製品例 | ISO 247 / ASTM D5667 | 製品により規格が異なる。 |
燃焼性・電気特性
| 項目 | 単位 | 代表的な扱い | 備考 |
|---|---|---|---|
| UL 94燃焼性 | 等級 | グレード依存 | 一般IIR材料群を一律の等級としない。厚さと認証グレードを確認する。 |
| 限界酸素指数・LOI | % | データなし | 配合依存が大きい。難燃配合は別評価する。 |
| ハロゲン含有 | - | 通常IIRは意図的ハロゲンなし | CIIRは塩素、BIIRは臭素を含む。添加剤由来成分は別途確認する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 10¹⁴~10¹⁷程度 | 絶縁配合の目安。導電カーボン配合では大幅に低下する。 |
寸法精度・設計特性
- IIRは弾性体であり、成形収縮だけでなく加硫後収縮、応力緩和、クリープ及び圧縮永久ひずみを設計に含める必要がある。
- 吸水による寸法変化は一般に小さいが、温度変化による熱膨張は金属より大きい。
- 炭化水素油又は燃料との接触では体積膨潤が大きく、寸法精度及びシール圧が失われる場合がある。
- 短時間の引張強さを設計許容応力として直接使用せず、温度、時間、繰返し荷重及び安全率を考慮する。
- 金属インサート周辺では、熱膨張差、局部ひずみ、接着界面、腐食及びゴム収縮に注意する。
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の主因 | 成形条件側の主因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| スコーチ | 促進剤過多、保管劣化、混練履歴 | 混練・押出温度過高、滞留過長 | 温度管理、スコーチタイム確認、配合見直し、先入先出を行う。 |
| 加硫不足 | 加硫剤不足、分散不良 | 温度不足、時間不足、厚肉 | 加硫曲線を確認し、金型温度及び時間を補正する。 |
| ボイド・気泡 | 水分、揮発分、混練空気 | ベント不足、急速加硫 | 原料管理、真空、ベント改善、成形速度最適化。 |
| バリ | 低粘度、可塑剤過多 | 型締不足、金型摩耗、圧力過大 | 粘度、型締力、パーティング面及び圧力を管理する。 |
| 離型不良 | 高粘着、加硫不足 | 表面粗さ、温度不均一 | 離型処方、金型表面処理、加硫条件を調整する。 |
| ブルーム・ブリード | 配合剤の溶解度超過、可塑剤不適合 | 高温保管、圧縮 | 配合剤選定、添加量低減、加速保管試験で確認する。 |
| 接着不良 | 低表面エネルギー、離型剤・油汚染 | プライマー不足、加硫条件不適 | 研磨、脱脂、表面活性化、プライマー、共加硫条件を最適化する。 |
耐薬品性
以下は一般的な加硫IIRの代表傾向であり、保証値ではない。◎は一般的な条件で影響が小さい、○は概ね使用可能だが条件確認が必要、△は膨潤、軟化、硬化、強度低下又は抽出に注意、×は著しい膨潤、分解又は割れが生じる可能性が高いことを示す。
| 薬品 | 濃度 | 温度・時間 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃、168 h | 浸漬、無応力 | ◎ | わずかな抽出 | 低吸水性。長期は配合剤抽出を確認する。 |
| 温水 | - | 80℃、168 h | 浸漬、無応力 | ○ | 熱老化、抽出 | 加硫系による差がある。 |
| 水蒸気 | 飽和 | 100~120℃ | 連続又は間欠 | ○ | 圧縮永久ひずみ増大、熱老化 | 長期高温蒸気ではEPDM等とも比較する。 |
| 塩酸 | 10% | 23℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 軽微な硬さ変化 | 濃酸、高温は個別確認する。 |
| 塩酸 | 濃厚 | 23℃、長期 | 浸漬 | △ | 膨潤、表面粘着、物性低下 | 濃度上昇で劣化が増える実測例がある。 |
| 硫酸 | 10% | 23℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 軽微な変化 | 希硫酸には一般に良好。 |
| 濃硫酸 | 濃厚 | 23℃、長期 | 浸漬 | × | 強い劣化、分解 | 強脱水・酸化条件では不適。 |
| 硝酸 | 10% | 23℃、168 h | 浸漬 | ○ | 酸化、硬化 | 酸化性酸のため温度・時間管理が重要。 |
| 濃硝酸 | 濃厚 | 23℃、長期 | 浸漬 | × | 酸化分解 | 一般に不適。 |
| 水酸化ナトリウム | 10% | 23℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 軽微な変化 | 高温では配合剤抽出を確認する。 |
| 水酸化カリウム | 10% | 23℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 軽微な変化 | 強アルカリ自体には比較的安定。 |
| エタノール | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 軽微な抽出 | 一般に良好。 |
| IPA | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | ○ | 軽微な膨潤又は抽出 | 配合差を確認する。 |
| グリセリン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 一般に影響小 | 高温条件は別途確認する。 |
| MMB | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化の可能性 | エーテルアルコールであり公開データが限定的。実浸漬を推奨する。 |
| アセトン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | ○ | 軽微~中程度の膨潤 | 多くのIIR配合では炭化水素より良好であるが実測確認する。 |
| MEK | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化 | 長時間・高温では注意。 |
| 酢酸エチル | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化 | エステル類は配合差が大きい。 |
| THF | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 強溶剤として扱い、長期接触を避ける。 |
| n-ヘキサン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤、軟化 | IIRとSP値が近い非極性炭化水素。 |
| シクロヘキサン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 良溶媒側。 |
| トルエン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤、軟化 | 芳香族炭化水素。 |
| キシレン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 長時間接触を避ける。 |
| ジクロロメタン | 99% | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 膨潤、抽出 | ハロゲン化溶剤。実使用には不向き。 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤、強度低下 | 燃料系シールにはNBR、HNBR、FKM等を検討する。 |
| 軽油 | 市販燃料 | 23℃、168 h | 浸漬 | × | 膨潤、軟化 | 長期接触に不向き。 |
| エンジン油・鉱物油 | 市販油 | 100℃、168 h | 浸漬 | × | 著しい膨潤、物性低下 | IIRの主要な弱点。 |
| グリコール系ブレーキ液 | 市販液 | 70~100℃ | 浸漬 | ◎ | 体積・硬さ変化 | IIRは一般に適性が高いが、配合及び液規格で確認する。 |
| リン酸エステル系作動油 | 市販液 | 23~100℃ | 浸漬 | ○ | 膨潤、抽出 | 鉱油系作動油とは挙動が異なる。 |
| エチレングリコール水溶液 | 50% | 80℃、168 h | 浸漬 | ◎ | 軽微な変化 | 冷却液添加剤を含む実液で確認する。 |
| 食用油 | 100% | 23~80℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化 | 植物油種、酸化状態、温度に依存する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.1~1% | 23℃、短~中期 | 浸漬 | ○ | 酸化、表面硬化 | 有効塩素濃度、pH、温度、時間に依存する。 |
| 過酸化水素水 | 3~10% | 23℃、短~中期 | 浸漬 | ○ | 酸化、硬化 | 高濃度・高温は実測必須。 |
| 塩水・海水 | 3.5%前後 | 23℃、長期 | 浸漬 | ◎ | 軽微な抽出 | 一般に良好。 |
SP値(溶解度パラメータ)
IIRのHildebrand型SP値は代表値として約16.5 MPa1/2がよく用いられる。文献及び測定・推算法により約16.0~16.8 MPa1/2程度の値が示されるため、比較機能では代表値16.5 MPa1/2、代表範囲16.0~16.8 MPa1/2として扱うのが妥当である。
ただし、SP値が近いほど膨潤しやすいという傾向は予備スクリーニングに有効であるが、加硫密度、充填材、溶媒分子サイズ、蒸気圧、温度、混合溶媒、酸化、抽出、反応性などを含まない。IIRの実際の耐薬品性はSP値だけで決定してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品 | SP値 MPa1/2 | IIRとの差 | SP判定 | 実務上の評価・注意 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 1.6 | × | 実際にも膨潤しやすい。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 0.3 | × | IIRに対する良溶媒側であり不適。 |
| キシレン | 17.8 | 1.3 | × | 著しい膨潤に注意。 |
| トルエン | 18.2 | 1.7 | × | 著しい膨潤に注意。 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 1.7 | × | SP上は高リスク。実際の膨潤量は配合及び時間に依存する。 |
| THF | 18.5 | 2.0 | △ | 境界値であり、実際には強い膨潤を生じ得るため×相当で扱うのが安全。 |
| MEK | 19.0 | 2.5 | △ | 条件依存。浸漬試験を推奨。 |
| アセトン | 19.9 | 3.4 | △ | 炭化水素より良好なことが多いが、長期は確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 3.7 | △ | SP差だけでは過小評価する。ハロゲン化溶剤として実際は×寄り。 |
| IPA | 23.5 | 7.0 | ○ | 一般に比較的良好。 |
| エタノール | 26.0 | 9.5 | ◎ | 一般に良好。 |
| 水 | 47.9 | 31.4 | ◎ | 低吸水であり実際にも良好。 |
評価基準:◎ 非常に良好、○ 概ね良好、△ 注意が必要、× 不適。SP値は単一溶剤の膨潤傾向を予測する補助指標であり、IIRでは溶剤クラス、分子体積、蒸気圧、架橋密度及び配合剤抽出の影響が大きい。特にハロゲン化溶剤、混合燃料、界面活性剤を含む洗浄剤はSP差だけで評価しない。
環境応力・長期耐久上の注意
IIRはPC等の非晶性熱可塑樹脂に見られる典型的な環境応力割れとは挙動が異なるが、引張・圧縮ひずみを与えた状態で不適合油又は溶剤へ接触すると、膨潤による強度低下、接着剥離、シール圧低下、亀裂成長が加速する。実部品では無応力浸漬だけでなく、実際の圧縮率又は伸張率を付与した薬液浸漬試験を行うことが望ましい。
注意点・劣化故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観又は性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 炭化水素膨潤 | 溶剤とIIRの溶解度パラメータが近い | 鉱油、燃料、ヘキサン、トルエン、高温 | 体積増加、軟化、強度低下、シール不良 | NBR/HNBR/FKMへの変更、接触遮断 | 実油浸漬、体積・硬さ・引張保持率 |
| 熱酸化劣化 | 高温酸素、酸化剤 | 100℃超の長期使用 | 硬化、亀裂、圧縮永久ひずみ増加 | 耐熱配合、温度低減、酸化防止剤 | 熱老化試験 100~150℃、168~1000 h |
| 加硫系劣化 | 高温、薬品、架橋再配列 | 蒸気、高温薬液、長期圧縮 | 弾性回復低下、圧縮セット増大 | 加硫系最適化、CIIR/BIIR検討 | 圧縮永久ひずみ、応力緩和試験 |
| 添加剤抽出 | 溶剤、水、洗浄剤による抽出 | 高温浸漬、界面活性剤 | 質量減少、硬化、表面変化 | 低抽出配合、添加剤選定 | 質量変化、抽出物分析、溶出試験 |
| 接着剥離 | 低表面エネルギー、膨潤、界面汚染 | 金属接着部、溶剤接触、熱サイクル | 界面剥離、漏れ | 表面処理、専用プライマー、BIIR検討 | 180°剥離、熱老化後接着強度、薬液浸漬後評価 |
| 低温硬化 | Tg接近、結晶化的挙動、配合影響 | -40℃以下 | シール追従性低下、亀裂 | 低温グレード、可塑化、設計圧縮率調整 | TR10、低温圧縮、低温衝撃 |
| オゾン・UV劣化 | 大気曝露 | 屋外長期 | 通常IIRは比較的良好だが表面変色等 | 耐候配合、遮光 | オゾン試験、キセノンアーク試験 |
| アウトガス | 残留揮発物、可塑剤、加硫副生成物 | 真空、高温、電子用途 | 汚染、曇り、質量減少 | 低揮発配合、後処理 | TML/CVCM相当、GC-MS、真空ベーク評価 |
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実濃度・実温度で168 h、500 h、1000 h等を設定し、質量、体積、硬さ、引張強さ、伸びを測定する。
- 応力・圧縮負荷下浸漬:Oリング、ガスケットでは実使用圧縮率又は伸張率を与えて漏れ、亀裂、応力緩和を確認する。
- 熱老化試験:想定連続使用温度及びその上限で168~1000 h以上を行い、硬さ、引張保持率、圧縮永久ひずみを確認する。
- ガス透過試験:対象ガス、温度、圧力差、厚さを実使用条件に合わせる。
- 低温試験:TR10、低温圧縮回復、低温漏れを最低使用温度付近で確認する。
- 接着耐久試験:金属・樹脂との接着品は熱老化、薬液浸漬、湿熱、熱サイクル後の剥離強度を確認する。
製法

原料
主原料は高純度イソブチレン及び少量のイソプレンである。カチオン重合は水、酸素及び塩基性不純物に敏感であるため、原料及び重合媒体を高度に精製する必要がある。
重合方法
代表的な工業製法では、塩化メチル等の低温媒体中で、AlCl3系などのカチオン重合触媒を用いて非常に低い温度で共重合する。低温化は高分子量化、反応制御及びポリマー物性確保に重要である。実際の触媒系、助触媒、反応器形式、濃度及び温度はメーカーのプロセスにより異なる。
代表反応式
簡略化した代表式は次のように表せる。
m CH2=C(CH3)2 + n CH2=C(CH3)−CH=CH2 → −[CH2−C(CH3)2]m−[CH2−C(CH3)=CH−CH2]n−
この式は構造理解のための理想化表記であり、実際の共重合体では単位配列、末端構造及びイソプレン由来微細構造が単純なブロック配列になることを意味しない。
回収・仕上げ
重合後は反応を停止し、未反応モノマー及び溶媒を回収する。温水又はスチームストリッピングなどでポリマーを回収し、洗浄、脱水、乾燥、防着処理を経て、計量・圧縮してベール状原料ゴムとする。必要に応じて安定剤を添加する。
ハロブチル化
CIIR及びBIIRは、IIRのイソプレン由来不飽和部を利用して塩素又は臭素を導入して製造する。ハロゲン化により加硫反応性及び異種ゴムとの接着性が高まり、タイヤインナーライナー及び医薬品用栓等に広く用いられる。
コンパウンド
IIR原料にカーボンブラック、シリカ、クレー、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、酸化亜鉛、加硫剤及び促進剤等を混練する。用途によって低ガス透過、低抽出、耐熱、難燃、制振、電気絶縁、接着性、白色化などを調整する。IIRでは配合剤との相溶性とブルーム、低温性、ガス透過性への影響を確認する。
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 採用理由・注意点 |
|---|---|---|
| 自動車・タイヤ | インナーチューブ、インナーライナー、キュアリングブラダー、防振材 | 低ガス透過性、耐候性、制振性を利用する。燃料・鉱油直接接触部には不向き。 |
| 医薬・医療 | バイアル栓、シリンジ部品、密封栓 | 低ガス・水蒸気透過、密封性を利用する。抽出物、溶出物、滅菌耐久性は個別規格で確認する。 |
| 建築・設備 | 防水シート、目地、シーラント、防振材、屋根材 | 耐候性、耐水性、粘着・制振性を利用する。 |
| 化学設備 | 酸・アルカリ槽ライニング、配管ライニング、ガスケット | 水系薬品には比較的強いが、炭化水素溶剤を含む系は不適。 |
| 電気・電子 | ケーブル絶縁、絶縁シート、防湿部材 | 低吸水、電気絶縁性、低ガス透過を利用する。アウトガスは用途別確認。 |
| スポーツ・レジャー | ボールブラダー、空気保持部材 | 空気保持性及び柔軟性が高い。 |
| 接着・シーラント | 感圧接着、シーラント、防水テープ | 低透過性、粘弾性、タック調整性を利用する。 |
| 機械部品 | ガスケット、ダイヤフラム、制振マウント | 水・空気系に適する。油圧・燃料系は他ゴムを優先する。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| ギア | × | 低剛性・低反発で一般構造ギアには不適。 |
| 軸受・ブッシュ | △ | 制振ブッシュには適するが、摺動軸受としては摩耗・摩擦を確認する。 |
| ローラー | ○ | 制振、耐候用途に適する。油接触は避ける。 |
| ポンプ・バルブ部品 | △ | 水・酸・アルカリ系では候補。油、燃料、炭化水素系では不適。 |
| シール・ガスケット | ◎ | 空気、水、グリコール、ブレーキ液等で有力。鉱油系は不適。 |
| Oリング | ○ | 適合流体が限定される。圧縮永久ひずみと温度を確認する。 |
| チューブ・ホース | ◎ | 空気・ガス・水系に適する。燃料ホースには原則不適。 |
| タンク・配管ライニング | ○ | 酸・アルカリ・水系に適する。溶剤混入に注意。 |
| フィルム・シート | ○ | 防水・防湿シートとして使用可能。熱可塑フィルムとは加工法が異なる。 |
| ボトル・容器 | × | 一般的な剛性容器材料ではない。 |
| 電気絶縁部品 | ◎ | 低吸水・非極性で電気絶縁性が良い。難燃性は個別配合で確認。 |
| 電子部品筐体 | × | 剛性筐体には不向き。 |
| 自動車内装 | ○ | 制振・シール用途に有効。表皮材としては用途限定。 |
| 自動車外装 | ○ | 耐候性は良いが、機械強度・意匠・塗装性を確認する。 |
| エンジンルーム部品 | △ | 高温及び油接触が多いため用途を限定する。 |
| 燃料系部品 | × | ガソリン、軽油で著しく膨潤しやすい。 |
| 食品機械部品 | ○ | 適合グレードを選定し、食品油・洗浄剤・温度を確認する。 |
| 医療機器部品 | ○ | 医薬品栓等で実績があるが、ISO 10993等は最終製品・グレードで確認。 |
| 真空装置部品 | ○ | 低ガス透過は有利だが、アウトガス及び真空中抽出物を評価する。 |
| 屋外部品 | ◎ | 耐オゾン・耐候性が良好。 |
| 接着剤・シーラント | ◎ | タック、気密、防水、制振用途で有力。 |
| 塗料・コーティング | △ | 溶液・分散系として特殊用途に可能だが一般塗料樹脂ではない。 |
上記はIIR材料群としての一般的な適性である。実使用ではグレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、接触圧、法規制、成形条件及び試験片形状を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | IIRとの違い・選定ポイント |
|---|---|---|
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐候、耐オゾン、耐水、耐蒸気性に優れる。 | IIRはガス透過性と制振性で有利。EPDMは高温水・蒸気及び加工・共加硫条件で有利な場合がある。双方とも鉱油には弱い。 |
| アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) | 耐油、耐燃料、耐摩耗性に優れる。 | 油・燃料はNBR、空気保持・耐候・制振はIIRを優先する。 |
| 天然ゴム(NR) | 高強度、高反発、耐疲労性に優れる。 | NRは機械強度・反発性、IIRは低ガス透過・耐候・低反発で有利。 |
| イソプレンゴム(IR) | NRに近い高弾性、均一性、加工性。 | IRは動的弾性、IIRは気密・耐候・減衰で有利。 |
| ブタジエンゴム(BR) | 低Tg、高反発、耐摩耗、低発熱。 | BRはタイヤ動的特性、IIRはインナーライナー等の空気保持用途に有利。 |
| シリコーンゴム(VMQ) | 広い高低温範囲、耐候、電気特性。 | VMQは高低温で優れるがガス透過性が大きい。IIRは気密性で大幅に有利。 |
| クロロプレンゴム(CR) | 耐候、難燃、接着、中程度の耐油性。 | CRは接着性・難燃性、IIRは低ガス透過・制振・低吸水で有利。 |
| エチレンプロピレンゴム(EPM) | 飽和主鎖で耐候・電気特性が良好。 | EPMは過酸化物架橋中心。IIRは少量不飽和を持ち、気密性と制振性で有利。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 補強配合で実用強度を得られるが、NR等より突出しない。 |
| 剛性 | 1 | 柔軟エラストマーであり高剛性用途には不向き。 |
| 衝撃強度 | 4 | 柔軟性と減衰性が高く、衝撃吸収に優れる。 |
| 耐熱性 | 3 | 一般に100~120℃級である。 |
| 低温特性 | 4 | Tgが低く低温柔軟性に優れる。 |
| 耐薬品性 | 3 | 水・酸・アルカリには強いが、炭化水素油・燃料に弱い。 |
| 耐候性 | 5 | 低不飽和主鎖により耐オゾン・耐候性が非常に良い。 |
| 耐加水分解性 | 5 | 主鎖に加水分解性官能基を持たない。 |
| 寸法安定性 | 2 | 弾性体で熱膨張・クリープ・膨潤の影響がある。 |
| 低吸水性 | 5 | 非極性で吸水が小さい。 |
| 摺動性 | 2 | 制振材には良いが、摺動用途は摩擦・摩耗面で専用材に劣る。 |
| 耐摩耗性 | 2 | BR、NR、NBR等の耐摩耗配合より不利な場合が多い。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 非極性・低吸水で絶縁性が高い。 |
| 難燃性 | 1 | 標準IIRは可燃性。難燃剤配合が必要。 |
| 透明性 | 1 | 一般工業配合は不透明。 |
| 成形加工性 | 3 | ゴム加工法として確立しているが、通常IIRは加硫が遅い。 |
| 切削加工性 | 2 | 軟質品は変形しやすい。 |
| 接着性 | 2 | 通常IIRは低表面エネルギーで接着に工夫が必要。BIIR/CIIRは改善。 |
| リサイクル性 | 2 | 加硫後は再溶融できず、再生ゴム・粉砕利用等が中心。 |
| 価格優位性 | 3 | 汎用合成ゴムより用途特化型であるが、高機能フッ素ゴムより安価。 |
環境・リサイクル性
| 項目 | 一般的な扱い |
|---|---|
| 熱可塑性/熱硬化性 | 加硫後は熱硬化性エラストマーとして扱われ、再溶融しない。 |
| マテリアルリサイクル | 粉砕ゴム、再生ゴム、フィラー利用等は可能だが、バージン材と同等物性への再生は難しい。 |
| ケミカルリサイクル | 研究・限定用途はあるが、一般的なクローズドループ法としては限定的。 |
| サーマルリサイクル | 炭化水素系ポリマーのため発熱量は高い。燃焼設備及び添加剤由来成分を確認する。 |
| 再生材使用 | 用途によって可能。ガス透過性、疲労、接着性、異物及び臭気への影響を確認する。 |
| バイオベース・生分解性 | 一般的なIIRは石油系であり、生分解性材料ではない。バイオベースと生分解性は別概念である。 |
価格・供給性
| 項目 | 一般的な評価 |
|---|---|
| 価格区分 | 中価格~比較的高価格。NR、SBR等の汎用ゴムより用途特化型で、FKM等より一般に低価格である。 |
| 国内入手性 | タイヤ、工業ゴム、医薬用途向けに流通しているが、一般小売での少量入手性は限定的。 |
| 供給形態 | 原料はベール状が中心。加工品としてシート、ガスケット、テープ、シーラント等が流通する。 |
| 特注グレード | 低抽出、医薬品、色、硬さ、難燃、接着、制振等では専用配合が必要になる場合が多い。 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的な扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・REACH・SVHC | 対応可能な個別グレード・配合が存在する | 最新SDS、chemSHERPA等の含有化学物質情報を製品・色・製造拠点ごとに確認する。 |
| TSCA | 個別確認 | 米国輸出ではポリマー及び配合添加剤のインベントリ・用途規制を確認する。 |
| FDA食品接触 | 適合用途向け配合が存在する | IIR材料群全体の適合ではない。接触食品、温度、時間、抽出条件を確認する。 |
| 日本食品衛生法・ポジティブリスト | 個別確認 | 最終ゴム製品の材質・添加剤・溶出条件を確認する。 |
| 医薬品栓・医療用途 | 専用ハロブチル等が広く用いられる | 薬局方、USP、ISO 10993等は個別製品の証明及び試験結果を確認する。 |
| UL認証 | 個別グレード依存 | UL 94、温度定格、厚さ、色を確認する。 |
| PFAS関連規制 | 通常IIRポリマー自体はフッ素系ポリマーではない | 離型剤、加工助剤、添加剤等にPFASが含まれないことは個別サプライチェーンで確認する。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| ExxonMobil Product Solutions | Exxon™ Butyl 065、068、268系等 | 通常IIR、クロロブチル、ブロモブチルを展開。タイヤ、医薬、ホース、接着・シーラント等に使用される。 |
| ARLANXEO | X_Butyl® RB 101-3、RB 301、RB 402、BB、CB系 | 通常IIR及びハロブチルを展開。RB 301等ではムーニー粘度、不飽和度等の公表仕様がある。 |
| Reliance Sibur Elastomers | IMPRAMER R 1675、B 2232、B 2239、B 2247等 | インドのJamnagarで通常IIR及びハロブチルを生産し、タイヤ、医薬品栓等へ供給する。 |
| SIBUR | IIR-1675N、IIR-1675M等 | 通常IIR及びハロブチルを展開し、タイヤ、工業ゴム、医療用途等へ供給する。 |
メーカー名及びブランドは代表例であり、供給地域、製造拠点、グレード名称及び販売状況は変更される場合がある。採用時は最新TDS、SDS、規制適合証明及び供給条件をメーカー又は正規代理店へ確認する。
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