概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | AS樹脂 |
| 略記号 | AS、SAN |
| IUPAC | 単一の厳密なIUPAC名はない。代表的には poly(styrene-co-acrylonitrile) と表記される。 |
| 英語名 | Acrylonitrile Styrene Resin、Styrene Acrylonitrile Copolymer、SAN Resin |
| 日本語名・別名 | アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、SAN樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、スチレン系樹脂、透明樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック |
| 化学式または代表構造 | スチレン単位:C8H8、アクリロニトリル単位:C3H3N のランダム共重合体。代表表記:(C8H8)m-(C3H3N)n |
| CAS No. | 9003-54-7 |
| 構造・主成分 | スチレンとアクリロニトリルを主成分とする非晶性ランダム共重合体である。一般にスチレン成分が多く、アクリロニトリル成分はおおむね20〜30質量%程度の範囲で設計されることが多い。 |
| 主な用途 | 透明容器、化粧品容器、食品容器、家電部品、電気部品、メーターカバー、ライター部品、日用品、事務用品、冷蔵庫部品、医療・検査器具、ABSやASAのマトリックス成分 |
AS樹脂は、アクリロニトリル(AN)とスチレン(ST)を共重合して得られる透明な熱可塑性樹脂である。SAN樹脂とも呼ばれ、スチレン由来の透明性、剛性、成形加工性に、アクリロニトリル由来の耐薬品性、耐熱性、表面硬度を付与した材料である。
一般用ポリスチレンであるPSより耐熱性、耐薬品性、表面硬度が高い傾向があり、透明性を必要とする容器、カバー、家電部品、日用品に使用される。一方で、耐衝撃性は高くなく、切欠き、応力集中、溶剤接触、落下衝撃には注意が必要である。
AS樹脂は、ゴム成分を含まない透明スチレン系樹脂として扱われることが多い。耐衝撃性を重視する場合はABS樹脂、耐候性を重視する場合はASA樹脂、透明性と耐衝撃性を両立する場合はポリカーボネートやアクリル樹脂と比較して選定する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 透明性、剛性、表面硬度、寸法安定性、耐薬品性、耐熱性、成形加工性のバランスが良い。PSより耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れる傾向がある。 |
| 短所 | 耐衝撃性は高くなく、割れやすいグレードがある。芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤には弱い。屋外長期使用では黄変や劣化に注意が必要である。 |
| 外観 | 一般に透明から淡黄色透明である。アクリロニトリル量、添加剤、耐熱グレード、難燃グレードにより透明性や色調は変化する。 |
| 耐熱性 | PSより高い傾向があり、荷重たわみ温度は代表値で80〜100℃程度である。耐熱グレードではこれより高い値を示す場合がある。 |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ、アルコール、油類には比較的良好である。芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では膨潤、白化、クラック、溶解が起こりやすい。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形に適する。非晶性樹脂で成形収縮率が小さく、寸法精度を得やすいが、残留応力による溶剤クラックには注意が必要である。 |
| 分類上の注意 | AS、SANは同じ材料群を指すことが多い。ABS、ASA、AES、MABSなどはSAN相を含むことがあるが、ゴム成分や変性成分を含むためAS樹脂とは区別する。 |
代表グレード
- 汎用グレード:透明性、剛性、成形性のバランスを重視した標準グレードである。
- 耐熱グレード:荷重たわみ温度、耐熱変形性を高めたグレードである。
- 高流動グレード:薄肉成形品、複雑形状品、容器類に使用される。
- 耐薬品グレード:油、洗剤、アルコールなどへの耐性を考慮したグレードである。
- 難燃グレード:UL94 HB、V-2、V-0相当を狙った配合があるが、透明性や物性が低下する場合がある。
- GF強化グレード:ガラス繊維により剛性、耐熱性、寸法安定性を高めるが、透明性は失われる。
- 食品接触グレード:食品容器や水回り部品向けに、各国法規への適合を確認して使用する。
注意点
- 応力が残った成形品では、アルコール、洗剤、油、溶剤接触により環境応力割れが発生する場合がある。
- 透明品では、乾燥不足、シリンダー滞留、焼け、金型汚れにより黄変、銀条、気泡、曇りが発生しやすい。
- 屋外長期使用では耐候グレード、UV安定剤、塗装、カバー設計を検討する必要がある。
- 実使用では、グレード、温度、薬品濃度、荷重、応力、接触時間、成形条件を確認する必要がある。
構造式

AS樹脂は、スチレン単位とアクリロニトリル単位からなるランダム共重合体である。 代表的にはスチレンとアクリロニトリルの繰り返し構造で表される。
スチレン単位は透明性、剛性、成形性、光沢性に寄与する。 アクリロニトリル単位は極性を持つニトリル基により、耐薬品性、耐熱性、表面硬度、剛
| 項目 | 構造 |
|---|---|
| スチレン単位 | -CH2-CH(C6H5)- |
| アクリロニトリル単位 | -CH2-CH(CN)- |
| 代表構造単位 | -[CH2-CH(C6H5)]m-[CH2-CH(CN)]n– |
| 代表組成 | スチレン約70〜80質量%、アクリロニトリル約20〜30質量%が目安である。グレードにより異なる。 |
| モノマー | スチレン:CH2=CH-C6H5、アクリロニトリル:CH2=CH-CN |
スチレン単位は透明性、剛性、成形加工性に寄与し、アクリロニトリル単位は耐薬品性、耐熱性、表面硬度、極性に寄与する。アクリロニトリル量を高めると耐薬品性や剛性が向上する傾向があるが、色調が黄色味を帯びたり、成形性や透明性に影響する場合がある。
AS樹脂を連続相として、ブタジエンゴムを分散させたものがABS樹脂であり、アクリルゴムを用いるとASA樹脂、EPDM系ゴムを用いるとAES樹脂として扱われる。これらはSAN相を含むが、材料特性はAS樹脂とは異なる。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用AS | 標準的なスチレン・アクリロニトリル共重合体 | 透明性、剛性、成形性、耐薬品性のバランスが良い。 | 耐衝撃性、耐候性、耐溶剤性には制限がある。 | 透明容器、日用品、家電部品、事務用品 |
| 高流動AS | 流動性を高めた射出成形用グレード | 薄肉品、複雑形状品、量産成形に適する。 | 機械強度や耐熱性が標準グレードより低下する場合がある。 | 薄肉容器、キャップ、家電小物、雑貨 |
| 耐熱AS | アクリロニトリル量や分子量、共重合組成を調整した耐熱グレード | HDT、剛性、寸法安定性に優れる。 | 成形温度が高くなりやすく、黄変や残留応力に注意が必要である。 | 家電部品、照明部品、冷蔵庫部品、機構カバー |
| 透明AS | 透明性、色調、外観を重視したグレード | ガラス状の透明外観を得やすい。 | PCやPMMAに比べると耐衝撃性、耐候性は限定的である。 | 化粧品容器、透明ケース、メーターカバー、表示部品 |
| 耐薬品AS | 薬品接触、油、洗剤などを考慮したグレード | PSより油類、洗剤、アルコールに対して安定しやすい。 | ケトン、エステル、芳香族溶剤、塩素系溶剤には注意が必要である。 | 洗剤容器、化粧品容器、食品容器、家庭用品 |
| 難燃AS | 難燃剤を配合したグレード | 電気電子部品で難燃要求に対応しやすい。 | 透明性、衝撃強さ、成形安定性が低下する場合がある。 | 電気部品、カバー、端子周辺部品 |
| GF強化AS | ガラス繊維で強化したAS複合材料 | 剛性、耐熱性、寸法安定性が向上する。 | 透明性はなくなり、外観、ウェルド、異方性に注意が必要である。 | 機構部品、補強部品、電気部品、精密部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的である。透明部品、容器、家電部品、精密部品に適する。乾燥、滞留、せん断発熱、金型温度管理が重要である。 |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、異形押出に使用される。溶融粘度、冷却条件、引取条件により透明性や寸法が変化する。 |
| ブロー成形 | ○ | 容器用途で使用される場合がある。グレードにより溶融強度を確認する必要がある。 |
| 圧縮成形 | △ | 一般的ではない。板材や試験片作製など限定的な用途で用いられる。 |
| 真空成形 | ○ | 押出シートを用いたトレー、カバー、包装材に適する。加熱温度、シート厚み、残留応力に注意する。 |
| 切削加工 | ○ | 試作、治具、透明部品の追加加工に適する。割れ、欠け、熱変形、クラックを避けるため切削条件を調整する。 |
| 溶着 | ○ | 超音波溶着、熱板溶着などが可能である。形状、残留応力、添加剤により溶着性は変化する。 |
| 接着 | △ | 溶剤系接着剤でクラックや白化が起こる場合がある。接着剤との相性、応力、薬品残留を確認する必要がある。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 70〜85℃、2〜4時間 | 吸湿は大きくないが、透明品や外観品では乾燥が推奨される。 |
| シリンダー温度 | 200〜250℃ | 高すぎると黄変、焼け、ガス発生が起こる場合がある。 |
| 金型温度 | 40〜80℃ | 外観、寸法安定性、残留応力に影響する。 |
| 射出圧力 | 中〜高圧 | 薄肉品では高めの射出圧が必要な場合がある。 |
| 成形収縮率 | 0.2〜0.6% | 非晶性樹脂のため比較的小さい。GF強化では流動方向と直角方向で異方性が生じる。 |
| 滞留管理 | 短めが望ましい | 長時間滞留により黄変、ゲル、黒点が発生する場合がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は射出成形用AS樹脂の代表値であり、保証値ではない。実際の値はグレード、成形条件、試験方法、含水状態、温度、添加剤、強化材により変化する。
| 項目 | 単位 | 汎用AS | 耐熱AS | GF強化AS | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度・比重 | g/cm3 | 1.06〜1.08 | 1.07〜1.09 | 1.20〜1.35 | GF量により上昇する。 |
| 引張強さ | MPa | 60〜80 | 65〜85 | 80〜120 | 標準状態の代表値である。 |
| 伸び | % | 2〜5 | 2〜4 | 1〜3 | 比較的脆性を示す。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 3200〜3800 | 3500〜4200 | 5500〜9000 | GF強化で大きく上昇する。 |
| 曲げ強さ | MPa | 90〜120 | 100〜130 | 130〜180 | 試験片形状により変化する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 1.5〜4 | 1.5〜3.5 | 2〜6 | ノッチ付き。耐衝撃樹脂ではない。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 80〜100 | 95〜110 | 105〜125 | 荷重条件により異なる。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約100〜110 | 約105〜115 | 約105〜115 | 非晶性樹脂であり明確な融点は持たない。 |
| 融点 | ℃ | なし | なし | なし | 非晶性樹脂のため、軟化域で加工される。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60〜80 | 70〜90 | 80〜95 | 荷重、雰囲気、寿命要求により確認が必要である。 |
| 吸水率 | % | 0.2〜0.4 | 0.2〜0.4 | 0.2〜0.5 | 24時間水中または平衡吸水で値が異なる。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014〜1016 | 1014〜1016 | 1013〜1015 | 吸湿、添加剤、温度により変化する。 |
| 誘電率 | – | 2.8〜3.2 | 2.8〜3.3 | 3.2〜4.0 | 周波数により変化する。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当が多い | HB相当が多い | HB〜V-0相当品あり | 難燃グレードでは個別認証を確認する必要がある。 |
| 酸素指数 | % | 約18〜20 | 約18〜20 | 配合により異なる | 一般グレードは燃焼しやすい部類である。 |
耐薬品性
AS樹脂は、PSより耐薬品性が高い傾向があるが、非晶性で極性を持つため有機溶剤への耐性は限定的である。実使用では、薬品名だけでなく濃度、温度、接触時間、応力、成形残留応力、洗浄条件を含めて評価する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 希薄水溶液では比較的安定である。濃酸、高温、長時間では劣化に注意する。 |
| 強酸 | 濃硫酸、濃硝酸、発煙酸 | × | 酸化、変色、劣化、割れが起こる場合がある。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | ○ | 希薄水溶液では比較的安定である。高温、高濃度では確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜△ | 短時間接触では使用されることがあるが、応力下ではクラックに注意する。 |
| 高級アルコール類 | ブタノール、グリセリン、MMB | ○〜△ | 種類により膨潤、白化、応力割れが起こる場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | 膨潤、軟化、溶解が起こりやすい。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○〜△ | 比較的安定な場合があるが、添加剤、油分、応力により変化する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | 溶解、膨潤、白化、クラックが起こりやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | × | 溶解、膨潤、表面クラックが起こりやすい。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解または著しい膨潤が起こりやすい。 |
| 水・温水 | 水、温水 | ◎〜○ | 常温水では良好である。熱水、蒸気、高温長時間では寸法変化や劣化を確認する。 |
| 油 | 鉱油、植物油、シリコーン油 | ○ | 多くの油には比較的良好である。添加剤、香料、溶剤を含む油では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、灯油、軽油 | △〜× | 芳香族成分や添加剤により膨潤、クラックが発生する場合がある。 |
| 洗剤・界面活性剤 | 中性洗剤、弱アルカリ洗剤 | ○〜△ | 応力、温度、濃度、香料成分により環境応力割れに注意する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
AS樹脂のSP値(δ)は、代表値としておおむね20〜22 MPa1/2程度を目安にすることが多い。スチレン量、アクリロニトリル量、分子量、添加剤、共重合組成により値は変化する。
SP値は溶解や膨潤の傾向を見るための目安であり、耐薬品性を単独で判断するものではない。実際には、結晶性の有無、極性、水素結合、分子サイズ、温度、応力、接触時間、成形残留応力、薬品濃度が大きく影響する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下はAS樹脂のSP値を21 MPa1/2と仮定した場合の代表的な溶剤との比較である。SP値差が大きくても、応力割れ、抽出、添加剤移行、加水分解、酸化劣化が起こる場合があるため、実液で確認する必要がある。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | AS樹脂との差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約26.9 | ◎ | 常温では良好である。熱水では寸法、応力を確認する。 |
| メタノール | 29.7 | 約8.7 | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合がある。 |
| エタノール | 26.0 | 約5.0 | ○〜△ | 応力下ではクラックに注意する。 |
| IPA | 23.5 | 約2.5 | △ | 消毒、洗浄用途では実液評価が必要である。 |
| アセトン | 20.0 | 約1.0 | × | 溶解、膨潤、クラックが起こりやすい。 |
| MEK | 19.0 | 約2.0 | × | 溶剤接着や洗浄では特に注意する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約2.4 | × | 膨潤、白化、溶解が起こりやすい。 |
| トルエン | 18.2 | 約2.8 | × | 芳香族溶剤であり不適である。 |
| キシレン | 18.0 | 約3.0 | × | 膨潤、軟化に注意する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約6.1 | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合があるが、燃料成分では確認する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約0.8 | × | 溶解しやすく不適である。 |
| グリセリン | 33.8 | 約12.8 | ◎〜○ | 常温では比較的安定であるが、配合液では確認する。 |
製法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | スチレンモノマー、アクリロニトリルモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤、安定剤などを用いる。 |
| 重合方法 | 塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などが用いられる。工業的には品質、透明性、残留モノマー、分子量制御、量産性を考慮して選定される。 |
| 共重合 | スチレンとアクリロニトリルをラジカル共重合し、非晶性のランダム共重合体を得る。 |
| ペレット化 | 重合後、未反応モノマーを除去し、安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、強化材などを必要に応じて配合し、押出機でペレット化する。 |
| コンパウンド | GF強化、難燃、耐熱、帯電防止、食品接触、摺動改質などのグレードでは、添加剤や充填材を溶融混練する。 |
| 品質管理 | MFR、残留モノマー、色調、透明性、分子量、AN含有量、異物、熱安定性、機械物性を管理する。 |
代表的な反応式
n CH2=CH-C6H5 + m CH2=CH-CN → -[CH2-CH(C6H5)]n-[CH2-CH(CN)]m–
この反応はラジカル共重合であり、スチレン単位とアクリロニトリル単位が主鎖中に導入される。組成比は物性に大きく影響し、アクリロニトリル量が増えると耐薬品性や剛性は高くなる傾向があるが、成形性、色調、透明性とのバランスを取る必要がある。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 透明カバー、小型内装部品、表示部品、レンズ周辺部品 | 透明性、剛性、寸法安定性が良い。 | 耐衝撃性、耐候性、耐熱性を確認する。屋外部品ではASAやPCとの比較が必要である。 |
| 電気・電子 | メーターカバー、表示窓、照明カバー、小型筐体、スイッチ部品 | 透明性、成形性、電気絶縁性、表面硬度が良い。 | 難燃要求、UL認証、熱変形、溶剤洗浄を確認する。 |
| 機械部品 | カバー、ケース、透明ガード、治具、軽荷重部品 | 寸法安定性、剛性、透明性が必要な部品に適する。 | ギア、軸受など高荷重・摺動用途ではPOM、PA、PBTなどを検討する。 |
| 医療・検査 | 検査容器、透明ケース、ディスポーザブル部品、分析機器部品 | 透明性、成形性、寸法安定性が良い。 | 滅菌方法、抽出物、薬液、法規制、医療グレードの確認が必要である。 |
| 食品機械・食品容器 | 食品容器、冷蔵庫部品、保存容器、透明トレー | 透明性、剛性、耐水性、食品接触グレードの選定が可能である。 | 食品衛生法、FDA、EU規則、耐熱温度、洗剤、油脂、アルコールを確認する。 |
| 建築・設備 | 室内部品、透明カバー、表示板、設備カバー | 外観、透明性、加工性が良い。 | 屋外、紫外線、熱、衝撃、難燃性要求では材料変更を検討する。 |
| 日用品 | 化粧品容器、ライター部品、歯ブラシ柄、文具、台所用品 | 透明性、表面硬度、成形性、コストのバランスが良い。 | 香料、アルコール、油、洗剤による応力割れを確認する。 |
| シート・包装 | 透明シート、熱成形トレー、ブリスター、ディスプレイ材 | 透明性、剛性、熱成形性が良い。 | 耐衝撃性、折り曲げ割れ、溶剤印刷、食品接触を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | AS樹脂の適性 | 比較材料 | 選定上の注意 |
|---|---|---|---|
| 透明容器 | ○ | PS、PMMA、PETG、PC | 耐アルコール、耐油、落下衝撃、食品接触規制を確認する。 |
| 筐体 | △〜○ | ABS、PC/ABS、HIPS | 耐衝撃性が必要な場合はABSやPC/ABSを検討する。 |
| フィルム・シート | ○ | PS、PETG、PVC、PMMA | 熱成形性、折り曲げ、透明性、耐薬品性を比較する。 |
| コネクタ | △ | PBT、PA66、LCP、PPS | 耐熱性、難燃性、寸法安定性、端子保持力ではエンプラが有利である。 |
| ギア | ×〜△ | POM、PA、PBT | 摩耗、疲労、衝撃に弱いため軽負荷用途に限られる。 |
| 軸受 | × | POM、PA、PTFE、PPS | 摺動性、耐摩耗性、発熱を考慮するとASは一般に不向きである。 |
| チューブ | △ | PVC、PE、PP、PA、TPE | 柔軟性が低く、割れやすいため用途が限定される。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | AS樹脂との違い |
|---|---|---|
| ポリスチレン(PS) | 透明性、成形性、低コストに優れる汎用スチレン系樹脂である。 | ASはPSより耐熱性、耐薬品性、表面硬度が高い傾向があるが、コストは高くなる場合がある。 |
| ABS樹脂 | アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンからなる耐衝撃性スチレン系樹脂である。 | ABSは耐衝撃性に優れるが、一般に不透明である。ASは透明性に優れるが衝撃には弱い。 |
| ASA樹脂 | アクリルゴムを含む耐候性スチレン系樹脂である。 | ASAは耐候性と耐衝撃性に優れるが、一般に不透明である。ASは透明性を重視する用途に適する。 |
| AES樹脂 | EPDM系ゴムを含む耐候性スチレン系樹脂である。 | AESは屋外耐候性と耐衝撃性を重視する材料であり、ASは透明性、剛性、表面硬度を重視する材料である。 |
| アクリル樹脂(PMMA) | 透明性、表面硬度、耐候性に優れる透明樹脂である。 | PMMAは透明性と耐候性に優れるが、ASは成形性、耐薬品性、コスト面で有利な場合がある。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックである。 | PCは耐衝撃性と耐熱性が高いが、コストが高く、薬品応力割れに注意が必要である。ASは低コスト透明部品に適する。 |
| PETG樹脂 | 透明性、耐衝撃性、熱成形性に優れる非晶性共重合ポリエステルである。 | PETGは熱成形シートや容器で使いやすく、ASは剛性、表面硬度、スチレン系材料との相性が良い。 |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 耐薬品性、難燃性、シート加工性に優れる汎用樹脂である。 | PVCは難燃性と耐薬品性に優れるが、ASは透明性、剛性、成形外観に優れる場合がある。 |
代表的なメーカー
AS樹脂は、SAN樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体として供給されることが多い。代表製品・ブランドは地域や時期により変わるため、最新のグレード、供給状況、規格適合は各メーカー資料で確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 東レ | TOYOLAC SAN(代表例) | ABS、透明ABS、SAN系材料を展開するメーカーである。透明性、成形性、機械特性を重視したSANグレードが知られる。 |
| INEOS Styrolution | Luran、Terluran系SANグレード(代表例) | スチレン系樹脂の大手メーカーであり、SAN、ABS、ASAなどを扱う。 |
| Trinseo | TYRIL SAN Resin(代表例) | SAN、ABS、PS系材料を扱うメーカーであり、透明性、耐薬品性、剛性を重視した用途で使用される。 |
| LG Chem | LG SAN(代表例) | ABS、SAN、ASAなどのスチレン系樹脂を供給する化学メーカーである。 |
| Chi Mei Corporation | KIBISAN(代表例) | ABS、SAN、PMMAなどを扱う台湾の主要樹脂メーカーである。 |
| LOTTE Chemical | SAN樹脂グレード(代表例) | スチレン系樹脂、汎用樹脂、エンプラを扱うメーカーである。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| RoHS | 電気電子用途では、鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類などの規制物質を確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、添加剤、着色剤、難燃剤の適合状況を確認する。 |
| 食品衛生 | 食品接触用途では、日本の食品衛生法、ポジティブリスト、溶出試験、使用温度を確認する。 |
| FDA・EU食品接触 | 輸出用途ではFDA、EU 10/2011などの適合グレードか確認する。 |
| 医療用途 | ISO 10993、生体適合性、滅菌適性、抽出物、トレーサビリティを確認する。一般グレードを医療用途へ転用しない。 |
| 難燃性 | UL94のHB、V-2、V-0などはグレードごとの認証を確認する。色、厚み、成形条件により認証範囲が異なる。 |
| アウトガス | 密閉空間、光学部品、電子部品では残留モノマー、添加剤、揮発成分による曇りや接点障害を確認する。 |
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