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概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリエチレン |
| 略記号 | PE(LDPE、LLDPE、HDPE、UHMWPE等に細分) |
| IUPAC名 | Poly(methylene)(慣用名としてPolyethyleneが広く用いられる) |
| 英語名 | Polyethylene / Polyethene |
| 日本語名(別名等) | ポリエチレン、ポリエテン。密度・製法により低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、架橋ポリエチレンなどと呼び分けられる |
| 分類 | プラスチック(汎用プラスチック) |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック(UHMWPEなど一部グレードはエンプラ的特性を示す) |
| 化学式または代表構造 | -(CH2-CH2)n-(詳細は構造式を参照) |
| CAS No. | 9002-88-4(一般名称としてのポリエチレン) |
| 構造・主成分 | エチレンを重合したポリオレフィンの一種。炭素・水素のみからなる非極性の脂肪族炭化水素系高分子で、密度・分岐構造により物性が大きく変化する |
| 主な用途 | 包装フィルム、レジ袋、容器・ボトル、パイプ・配管、電線被覆、タンク、まな板・日用品、自動車用燃料タンク、人工関節(UHMWPE)など |
ポリエチレンは、エチレン(CH2=CH2)を単量体として付加重合させて得られる、最も生産量の多い汎用プラスチックの一つである。分子構造上は炭素と水素のみからなる単純な直鎖状・分岐状の脂肪族炭化水素であるが、重合方法・触媒・分子量・分岐度の違いによって密度が0.91~0.97 g/cm3程度まで幅広く変化し、これに応じて低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)など、物性の異なる多数のグレードに分類される。一般に、密度が高いほど剛性・耐熱性・引張強さが高くなり、密度が低いほど柔軟性・透明性・ヒートシール性に優れる傾向がある。
化学的には非極性の飽和炭化水素であるため、水・酸・アルカリに対する耐薬品性に極めて優れる一方、無極性の有機溶剤(芳香族炭化水素、塩素系溶剤等)には条件により膨潤・浸透しやすい。電気絶縁性、耐寒性、耐衝撃性(低温下でも脆化しにくい)、衛生性、加工性に優れ、価格も比較的安価であることから、包装材料からパイプ、電線被覆、日用品、産業資材、医療用途(UHMWPEの人工関節摺動部材等)まで極めて広範囲に使用されている。
一方で、無極性であるがゆえに他材料との接着・印刷・塗装には表面処理(コロナ処理等)が必要であり、また熱変形温度が比較的低く、環境応力割れ(ESC)や紫外線劣化、クリープ変形といった設計上の注意点も存在する。実使用にあたっては、後述のグレード区分・物性値・耐薬品性データを踏まえ、荷重・温度・薬品接触条件・使用期間に応じたグレード選定と確認試験の実施が推奨される。
特徴
| 長所 | 耐薬品性(耐水性・耐酸・耐アルカリ)に優れる/電気絶縁性が高い/耐寒性・低温衝撃性に優れる/吸水率が極めて低く寸法安定性が良い/衛生性が高く食品・医療用途に適するグレードがある/成形加工性が良好で価格が比較的安価/比重が1未満で軽量(水に浮く) |
| 短所 | 耐熱性が比較的低い(結晶性樹脂のため融点以下でも高温では剛性低下)/無極性のため接着・印刷・塗装に表面処理が必要/燃えやすく自己消火性がない(無添加グレード)/紫外線劣化を受けやすい(無安定剤グレード)/HDPEは特に環境応力割れ(ESC)に注意が必要/クリープ変形しやすく長期荷重設計には注意を要する |
| 外観 | 半透明~乳白色(LDPEは比較的透明感がある半透明、HDPEはより白濁した乳白色)。無着色時は白色不透明~半透明で、薄肉フィルムでは高い透明性を示すグレードもある |
| 耐熱性 | 一般に連続使用温度は60~100℃程度、融点はグレードにより105~137℃程度。荷重たわみ温度は密度・結晶化度により大きく異なり、無荷重に近い低応力条件でないと高温での寸法保持が難しい |
| 耐薬品性 | 水、多くの酸・アルカリ、アルコール類に対して極めて良好。芳香族炭化水素・脂肪族炭化水素・油類には条件により膨潤しやすく、強酸化剤(濃硝酸等)や一部の塩素系溶剤には適さない。詳細は耐薬品性を参照 |
| 加工性 | 射出成形・押出成形・ブロー成形・回転成形など幅広い成形法に対応し、加工性は良好。ただし無極性であるため二次加工(接着・印刷・塗装・溶着)には表面処理が必要な場合が多い |
| 分類上の注意 | 「ポリエチレン」は単一物質ではなく、密度・分子量・分岐構造の異なる樹脂群の総称である。LDPE・LLDPE・HDPE・UHMWPE等はいずれも化学構造上は同一の繰り返し単位を持つが、物性は大きく異なるため、グレードを特定せずに物性を一般化しないよう注意が必要である |
構造式
ポリエチレンはエチレンモノマーの付加重合により生成する。繰り返し単位は-(CH2-CH2)n-であり、分岐の有無・頻度によってLDPE(分岐が多い)とHDPE・LLDPE(直鎖状に近い)に大別される。
代表的な構造単位
基本繰り返し単位:-(CH2-CH2)n-(分子量に応じて n は数百~数万程度)
モノマーまたは構成単位
エチレン(CH2=CH2、C2H4)を単量体とする単独重合体。LLDPEでは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィンをコモノマーとして少量共重合させ、短鎖分岐を導入することで密度・物性を制御する。
共重合体や変性グレードがある場合の説明
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂など、エチレンを主成分としつつ第二成分を共重合させた変性材料が多数存在する。また、シラン架橋・電子線架橋等により分子間に架橋構造を導入した架橋ポリエチレン(PEX/XLPE)は、耐熱性・耐クリープ性・耐環境応力割れ性を向上させたグレードとして、給湯配管・電線被覆等に用いられる。これらは基本骨格はポリエチレンと共通するが、物性は無変性のPEとは大きく異なるため、本ページの数値をそのまま適用しないよう注意する。
種類・代表グレード
| 種類 | 主成分・特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 低密度ポリエチレン(LDPE) | 高圧ラジカル重合。長鎖・短鎖分岐が多い。密度0.910~0.925 g/cm3 | 柔軟性・透明性・ヒートシール性に優れる | 剛性・耐熱性が低い | 包装フィルム、農業用フィルム、ラミネート、チューブ |
| 直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE) | 中低圧法・α-オレフィン共重合。短鎖分岐主体。密度0.915~0.925 g/cm3 | LDPEより引張強さ・耐衝撃性・耐環境応力割れ性に優れる | LDPEよりやや加工性が劣る場合がある | ストレッチフィルム、レジ袋、重袋 |
| 中密度ポリエチレン(MDPE) | 密度0.926~0.940 g/cm3の中間グレード | LDPEとHDPEの中間的バランス | 専用グレードは比較的少ない | ガス管、フィルム、キャップ |
| 高密度ポリエチレン(HDPE) | 中低圧法(チーグラー・ナッタ触媒等)。分岐が少ない直鎖状構造。密度0.941~0.965 g/cm3 | 剛性・強度・耐薬品性・耐熱性がPE系の中で最も高い | 透明性が低い、環境応力割れに注意 | ボトル、パイプ、コンテナ、キャップ、タンク |
| 超高分子量ポリエチレン(UHMWPE) | 分子量100万以上。密度0.930~0.935 g/cm3程度 | 耐摩耗性・耐衝撃性・自己潤滑性が極めて高い | 溶融粘度が極めて高く一般の射出成形が困難(圧縮成形・特殊押出が中心) | 人工関節摺動部材、ライナー、歯車、コンベア部材 |
| 架橋ポリエチレン(PEX/XLPE) | シラン架橋・電子線架橋等により三次元網目構造を導入 | 耐熱性・耐クリープ性・耐環境応力割れ性が向上 | 再溶融・リサイクルが困難 | 給湯・床暖房配管、高圧電線被覆 |
| 発泡ポリエチレン(PEフォーム) | 物理発泡剤・化学発泡剤によりセル構造を導入 | 軽量、緩衝性、断熱性に優れる | 強度・剛性が低下 | 緩衝材、断熱材、フロート材 |
| エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA) | 酢酸ビニルを共重合した変性グレード(別頁参照) | 柔軟性・透明性・耐衝撃性に優れる | 耐熱性・剛性はPEより低い場合が多い | ホットメルト接着剤、シート、発泡体 |
代表グレード区分の目安:汎用射出成形グレード、汎用フィルム(インフレーション)グレード、高流動グレード(薄肉・高速成形向け)、耐環境応力割れグレード(ボトル・タンク向け高分子量品)、パイプ用グレード(PE80/PE100等の長期強度等級)、電線被覆用グレード、食品接触用途向けグレード、医療用途向けグレード(UHMWPE等)など。強化材を添加したグレード(GF強化PE、CF強化PE、タルク・炭酸カルシウム充填PE、導電性カーボン配合PEなど)は、非強化・標準グレードと物性を混在させず別表として扱う。
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | コンテナ、キャップ、日用品等に広く使用。成形収縮率が比較的大きい点に注意 |
| 押出成形 | ◎ | パイプ、シート、電線被覆等。LDPE・LLDPE・HDPEいずれも良好な適性 |
| インフレーション(Tダイ)フィルム成形 | ◎ | 包装フィルム・農業用フィルムの主力製法 |
| ブロー成形 | ◎ | ボトル・タンク・燃料タンク等。HDPEが中心 |
| 回転成形 | ○ | 大型中空品(タンク、遊具等)に適する。専用グレードが用いられる |
| 圧縮成形 | △ | UHMWPE等、溶融粘度が高く射出成形が困難なグレードで採用 |
| 真空成形 | △ | シート状のPEで可能だが、PP・PSに比べ採用例は少ない |
| 発泡成形 | ○ | 緩衝材・断熱材用途の発泡PEシート・ブロック |
| 切削加工 | ○ | UHMWPE板材等は切削加工用素材としても流通 |
| 溶着(熱風溶着・熱板溶着) | ○ | 配管・タンク等で一般的。表面酸化に注意 |
| 接着 | × | 無極性のため通常の接着剤では接着困難。表面処理が必須 |
| 印刷・塗装 | △ | コロナ処理・プラズマ処理・フレーム処理等の表面処理が前提 |
| 3Dプリント | △ | 反り・収縮が大きく一般的なFDM方式では難易度が高い。専用条件が必要 |
成形条件の目安(射出成形・代表値)
| 項目 | 単位 | 目安 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 吸水率が極めて低いため、通常は不要(表面に付着水がある場合を除く) |
| シリンダー温度(LDPE) | ℃ | 160~220 |
| シリンダー温度(HDPE) | ℃ | 180~260 |
| 金型温度 | ℃ | 20~60 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.5~4.0(グレード・肉厚により変動、HDPEはLDPEよりやや大きい傾向) |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.0~3.5 |
成形条件はメーカー・グレード・成形機・製品形状によって異なるため、上表は一般的な目安である。実生産条件は各メーカーのテクニカルデータシートを確認すること。
代表的な物性値又は機械的性質
下表は非強化・無充填の標準グレードにおける代表値・代表範囲である。グレード、分子量、密度、試験片厚さ、試験温度により数値は変動するため、実設計では個別グレードのテクニカルデータシートで確認することが必須である。GF強化材・CF強化材等の改質グレードは別表として区分した。
物理的性質
| 項目 | 単位 | LDPE | LLDPE | HDPE | UHMWPE | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.910~0.925 | 0.915~0.925 | 0.941~0.965 | 0.930~0.935 | JIS K7112 |
| 吸水率(24時間) | % | <0.01 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | ASTM D570、実用上は無視できる水準 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.5~3.5 | 2.0~4.0 | 2.0~4.0 | データなし(成形法により大きく異なる) | 肉厚・成形条件で変動 |
引張・曲げ・衝撃特性
| 項目 | 単位 | LDPE | LLDPE | HDPE | UHMWPE | 規格 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ・降伏 | MPa | 8~17 | 12~20 | 20~37 | データなし(明確な降伏点を示さない場合あり) | ASTM D638 / ISO 527 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 10~25 | 20~40 | 20~35 | 35~50 | 同上 |
| 引張破断伸び | % | 100~800 | 500~900 | 200~1000 | 200~500 | グレード差が非常に大きい |
| 引張弾性率 | GPa | 0.15~0.30 | 0.20~0.40 | 0.7~1.4 | 0.4~0.8 | 同上 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.15~0.30 | 0.20~0.40 | 0.8~1.6 | 0.4~0.8 | ASTM D790 / ISO 178 |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m2 | 破壊せず(NB) | 破壊せず(NB) | 2~12(一部NB) | 破壊せず(NB、非常に高靭性) | ASTM D256 / ISO 180、値は規格・試験片形状で大きく異なるため単純比較不可 |
熱的性質
| 項目 | 単位 | LDPE | LLDPE | HDPE | UHMWPE |
|---|---|---|---|---|---|
| 融点 | ℃ | 105~115 | 118~124 | 130~137 | 125~138 |
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 32~50 | 40~55 | 60~88 | 43~50 |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | データなし(低荷重条件が一般的) | データなし | 43~60 | 40~48 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60~80 | 65~85 | 80~110 | 80~90 |
| 低温使用限界 | ℃ | -60程度 | -60程度 | -50程度 | -100程度(極めて優れた耐寒性) |
荷重たわみ温度(HDT)は試験荷重により大きく異なるため、必ず荷重条件(0.45 MPaまたは1.80 MPa)とあわせて評価すること。連続使用温度は熱老化・強度保持率・使用環境によって評価が異なるため一般的な目安である。
電気的性質(参考)
| 項目 | 単位 | 代表値 |
|---|---|---|
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1016~1018(密度・添加剤により変動) |
| 比誘電率・1 MHz | - | 2.2~2.4 |
| 誘電正接・1 MHz | - | 0.0002~0.0005程度(極めて低損失) |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20~28程度 |
強化グレード(参考・非強化グレードとは区別)
| グレード | 単位 | 密度(g/cm3) | 引張強さ(MPa) | 曲げ弾性率(GPa) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| GF強化HDPE(GF20~30%程度) | - | 1.05~1.20 | 35~55 | 2.5~4.5 | 繊維含有率はグレード依存、含有率不明の値を標準グレードと混同しないこと |
| タルク・炭酸カルシウム充填HDPE | - | 0.98~1.20 | 18~28 | 1.2~2.5 | 剛性向上・コストダウン目的が中心、衝撃強さは低下傾向 |
| カーボン配合(導電性)PE | - | 0.95~1.00 | データなし(用途上、導電性が優先項目) | データなし | 体積抵抗率101~106Ω・cm程度(配合量依存) |
耐薬品性
ポリエチレンは非極性の飽和炭化水素であるため、水・多くの酸・アルカリに対する耐薬品性は極めて良好である。一方、無極性溶剤(芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、一部の塩素系溶剤、油類)に対しては、濃度・温度・接触時間・応力の有無によって膨潤・浸透・環境応力割れ(ESC)を生じる場合があるため、条件を特定した評価が必要である。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水・温水 | 水道水、温水(~60℃程度) | ◎ | 吸水率が極めて低く、寸法・物性変化はほとんど生じない |
| 熱水・沸騰水 | 沸騰水(100℃) | ○ | 短時間では問題ないが、長期・高温では酸化劣化の進行に注意(給湯配管には耐熱グレード・架橋PEを推奨) |
| 無機酸(希薄) | 希塩酸、希硫酸、リン酸 | ◎ | 常温・中程度濃度では良好 |
| 無機酸(濃厚・酸化性) | 濃硫酸、濃硝酸 | × | 濃硝酸は強酸化性のため劣化・変色のおそれ。濃硫酸も高温では劣化リスクあり |
| 有機酸 | 酢酸、クエン酸 | ○ | 希薄・常温では概ね良好 |
| 強アルカリ | 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム | ◎ | 耐アルカリ性は極めて良好 |
| 低級アルコール類 | エタノール、イソプロピルアルコール(IPA) | ◎ | 常温で概ね良好、長期浸漬では若干の膨潤の可能性 |
| 多価アルコール類 | グリセリン、エチレングリコール | ◎ | 良好 |
| ケトン類 | アセトン、メチルエチルケトン(MEK) | ○ | 短時間接触では比較的安定だが長期では膨潤の可能性 |
| エステル類 | 酢酸エチル | △ | 条件により膨潤 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、ベンゼン | △ | 膨潤しやすい。高温・長時間接触では特に注意 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、灯油、ガソリン | △ | 燃料系用途では耐油・耐燃料グレードの選定と透過性(バリア性)の確認が必要 |
| 塩素系溶剤 | クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン | × | 著しい膨潤・溶解のおそれ |
| 油類(鉱物油・潤滑油) | マシン油、グリース | ○ | グレードにより差があり、長期接触でわずかに膨潤する場合がある |
| 食用油 | サラダ油、オリーブ油 | ○ | 食品用途で広く実績あり |
| 界面活性剤・洗剤 | 中性洗剤、アルキルベンゼンスルホン酸系 | △ | HDPEでは環境応力割れ(ESC)の主要因となりうるため、応力がかかる部品では特に注意 |
評価基準:◎=一般的な条件で影響が小さい、○=概ね使用可能であるが条件確認が必要、△=膨潤・軟化・強度低下・応力割れ等に注意、×=溶解・著しい膨潤・劣化のおそれが高い。上表はグレード・温度・濃度・接触時間・応力の有無により結果が変動する代表的な目安であり、実使用前には必ず対象グレードでの浸漬試験・応力下での環境応力割れ試験を推奨する。
環境応力割れ(ESC)に関する注意
HDPEを中心に、界面活性剤・アルコール類・洗剤等の存在下で、残留応力や外部荷重が加わった状態で微細なクラックが進展する環境応力割れ(Environmental Stress Cracking)が知られている。耐ESC性は分子量・密度・コモノマー種類により異なり、ボトル・タンク等の応力が持続的にかかる用途では耐ESCグレードの選定、成形残留応力の低減、ノッチ・鋭角形状の回避が重要である。
SP値(溶解度パラメータ)
ポリエチレンの溶解度パラメータ(SP値、δ)は、代表値としてδ ≈ 16.0 MPa1/2(約7.8~8.1 (cal/cm3)1/2)程度とされる。非極性の飽和炭化水素であるため、水素結合項・極性項がほぼゼロに近く、SP値のみからは無極性溶剤に対する挙動を過小評価しやすい点に注意が必要である。SP値差が大きくても、分子構造・結晶化度・応力の有無によって実際の耐薬品性は変化するため、SP値はあくまで一次スクリーニングの目安として用い、最終判断は実際の浸漬試験・環境応力割れ試験で確認することが望ましい。
溶解性の目安
| SP値差(MPa1/2) | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤名 | SP値δ(MPa1/2) | PEとのSP値差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 1.1 | × | 非常に近く膨潤しやすい |
| 四塩化炭素 | 17.6 | 1.6 | × | SP値差は小さくないが実際は強く膨潤・溶解する例。SP値のみで判断できない代表例 |
| トルエン | 18.2 | 2.2 | △ | 芳香族炭化水素は膨潤しやすい |
| 酢酸エチル | 18.2 | 2.2 | △ | 条件により膨潤 |
| メチルエチルケトン(MEK) | 19.0 | 3.0 | △ | 短時間なら比較的安定 |
| アセトン | 19.9 | 3.9 | ○ | 比較的安定 |
| イソプロピルアルコール(IPA) | 23.5 | 7.5 | ○ | 概ね良好 |
| エタノール | 26.0 | 10.0 | ◎ | 安定 |
| 水 | 47.9 | 31.9 | ◎ | 極めて安定(吸水率も極小) |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値差はあくまで簡易評価の目安であり、四塩化炭素の例のように、分子サイズ・形状や特異的な相互作用によりSP値差だけでは説明できない事例も存在するため、実際の耐薬品性判断はSP値と併せて浸漬試験等の実測データを参照すること。
製法
原料
主原料はナフサの熱分解等により得られるエチレン(C2H4)である。LLDPE等では1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンといったα-オレフィンをコモノマーとして少量共重合させる。
重合方法
ポリエチレンの製法は大きく高圧法と中低圧法に分かれる。高圧ラジカル重合法(約150~300 MPa、約150~300℃、有機過酸化物等を開始剤とするラジカル重合)は主にLDPEの製造に用いられる。中低圧法は、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒(酸化クロム系)、あるいはメタロセン触媒を用いた配位重合(気相法・スラリー法・溶液法等、数MPa以下、80~100℃前後)により、HDPE・LLDPE・UHMWPEなどが製造される。触媒・反応条件・コモノマー種類の組み合わせにより、密度・分子量分布・分岐構造が制御され、多様なグレードが作り分けられる。
代表的な反応式(模式)
n CH2=CH2 -(触媒・熱・圧力)-▶ -(CH2-CH2)n-
上記は代表的な反応経路を模式的に示したものであり、実際の反応機構は製法(ラジカル重合/配位重合)により異なる。一般化が困難なため、あくまで代表的な反応経路として示す。
ペレット化・コンパウンド
重合後のパウダー状樹脂は、酸化防止剤、中和剤(触媒残渣中和用)、滑剤、必要に応じて顔料・難燃剤・帯電防止剤等の添加剤とともに押出機で溶融混練され、水中カット方式等によりペレット化される。ペレット化後、粒径・メルトフローレート(MFR)・密度等の品質検査を経て出荷される。
添加剤・充填材・強化材
酸化防止剤(フェノール系・ホスファイト系)、紫外線吸収剤・光安定剤(屋外用途)、滑剤、帯電防止剤、顔料(カーボンブラック等、耐候グレードに配合)、難燃剤(ハロゲン系・非ハロゲン系)、ガラス繊維・タルク・炭酸カルシウム等の充填材・強化材が、用途に応じて配合される。
詳細な利用用途
| 分野 | 具体的用途 | 求められる特性 |
|---|---|---|
| 包装・日用品 | レジ袋、ラップフィルム、食品容器、ボトル、キャップ、まな板 | 柔軟性、ヒートシール性、衛生性、透明性(グレードによる) |
| 自動車 | 燃料タンク(多層ブロー成形)、内装部品、ウォッシャータンク、配線被覆 | 耐燃料透過性(多層化)、耐薬品性、耐衝撃性 |
| 電気・電子 | 電線・ケーブル被覆、絶縁材 | 電気絶縁性、耐候性、柔軟性 |
| 機械部品 | 歯車、軸受、摺動部品(主にUHMWPE) | 耐摩耗性、自己潤滑性、耐衝撃性 |
| 医療 | 人工関節摺動部材(UHMWPE)、薬液容器、チューブ | 生体適合性、耐摩耗性、滅菌耐久性 |
| 食品機械・食品接触 | 食品搬送部品、まな板、食品用フィルム・容器 | 食品衛生法適合、耐薬品性、衛生性 |
| 建築・設備 | 給水・給湯配管(架橋PE)、ガス管、防水シート | 耐圧強度、長期クリープ強度、耐熱水性(架橋PE) |
| 農業 | 農業用フィルム、灌漑用チューブ、育苗ポット | 耐候性、柔軟性、耐薬品性(農薬対応) |
| スポーツ・レジャー | スキー板ソール、カヤック、人工芝の基布 | 耐摩耗性、低摩擦係数、耐候性 |
用途別選定の目安
| 用途 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| ボトル・容器 | ◎ | HDPE・LDPEとも実績豊富。耐ESCグレードの選定が重要 |
| フィルム・シート | ◎ | LDPE・LLDPEが主力。用途に応じヒートシール性・強度を選定 |
| 配管(給水・ガス) | ◎ | HDPE(PE80/PE100等の長期強度等級)が主流 |
| 摺動部品・軸受 | ○ | UHMWPEが摺動用途に適する。荷重・速度条件の確認が必要 |
| 透明性が求められる包装 | △ | PP・PETと比較して透明性はやや劣る場合がある。LDPE薄膜は比較的透明 |
| 高温部品(100℃超の連続使用) | × | 連続使用温度を超えるため耐熱樹脂への変更を検討 |
| 接着・印刷が必要な部品 | △ | 表面処理(コロナ処理等)が前提 |
評価は材料群としての一般的な適性であり、実使用ではグレード、荷重、温度、薬品接触、湿度、使用期間、法規制を必ず確認すること。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | ポリエチレン(PE)との違い |
|---|---|---|
| ポリプロピレン(PP) | 同じポリオレフィン系樹脂。密度約0.90、融点約160~170℃ | PPはPEより剛性・耐熱性・耐クリープ性に優れるが、低温での耐衝撃性はPEの方が良好な場合が多い |
| エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA) | PEに酢酸ビニルを共重合させた変性材料 | EVAは柔軟性・透明性・接着性(ホットメルト用途)に優れるが、剛性・耐熱性はPEより低下する |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 塩素を含む極性樹脂。可塑剤配合で軟質~硬質まで対応 | PVCは難燃性・耐候性(硬質)に優れるがPEより比重が大きく、燃焼時に塩化水素ガスを発生する点が異なる |
| ポリスチレン(PS) | スチレン系の透明性の高い樹脂。剛性は高いが脆い | PSは透明性・剛性に優れるが耐衝撃性・耐薬品性はPEより劣る(特に脂肪族炭化水素に弱い) |
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | ポリエステル系樹脂。高い透明性とガスバリア性 | PETは強度・剛性・ガスバリア性でPEを上回るが、耐薬品性(特に耐アルカリ性)はPEの方が優れる |
| ポリアセタール(POM) | 結晶性エンプラ。優れた摺動性・寸法安定性 | POMはPEより高い剛性・耐摩耗性・寸法精度を持つが、耐薬品性(特に耐酸性)ではPEが優位な場合がある |
| ナイロン6(PA6) | ポリアミド系エンプラ。高い機械的強度・耐熱性 | PA6は強度・耐熱性でPEを大きく上回るが、吸水による寸法変化があり、PEは吸水率が極めて低い点で優れる |
| ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | フッ素樹脂。極めて高い耐薬品性・耐熱性・低摩擦性 | PTFEは化学的・熱的安定性でPEを大きく上回るが、価格が非常に高く、PEは経済性・成形性で優位 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 日本ポリエチレン株式会社(三菱ケミカルグループ) | ノバテック™ HD/LD/LL | 国内大手のポリエチレン専業メーカー。汎用グレードから機能性グレードまで幅広く展開 |
| 株式会社プライムポリマー(出光興産・三井化学の合弁) | ハイゼックス®(HDPE)、エボリュー®(LLDPE) | フィルム用途・高機能グレードに強みを持つ国内大手ポリオレフィンメーカー |
| 東ソー株式会社 | ペトロセン®(LDPE) | 高圧法LDPEを中心とする国内メーカー |
| Celanese Corporation | GUR®(UHMWPE) | 超高分子量ポリエチレンの世界的大手メーカー |
| ExxonMobil Chemical | Exceed™、Enable™(メタロセンLLDPE) | メタロセン触媒による高性能ポリエチレングレードで知られる世界大手 |
| LyondellBasell | Petrothene® | 世界最大級の総合ポリオレフィンメーカー |
| Dow Inc. | DOWLEX™(LLDPE) | フィルム用途向けLLDPEで高いシェアを持つ世界大手化学メーカー |
| Chevron Phillips Chemical | Marlex®(HDPE) | フィリップス法(クロム系触媒)の開発元であり、HDPE分野の主要メーカー |
| Borealis AG | Borstar® | 独自の多段重合プロセス技術を持つ欧州大手ポリオレフィンメーカー |
上記は実在が確認できる主要メーカー・ブランドの代表例であり、記載は網羅的なものではない。取扱いグレードは各社の最新テクニカルデータシートで確認すること。
難燃性・法規制・注意点
燃焼性・難燃性
| UL94燃焼性 | 無添加グレードは一般にHB相当(滴下燃焼性あり)。難燃剤配合グレードではV-2、V-0等を取得したグレードも存在するが、材料名だけで一律に決まるものではなく、グレード・試験片厚さ・色・添加剤により異なる |
| 限界酸素指数(LOI) | 約17~18%程度(代表値、規格・グレードにより変動) |
| 自己消火性 | 無添加グレードは自己消火性を持たない。難燃剤配合により付与可能 |
| 燃焼時の発生ガス | 炭化水素であるため主に二酸化炭素・水・すす(炭素)。ハロゲン系難燃剤配合品では別途発生ガスの確認が必要 |
UL認証グレードの結果と一般材料の推定難燃性は混同しないこと。難燃性が必要な用途では、必ず個別グレードの認証書・試験成績書を確認する。
法規制・認証(確認可能な範囲の一般的傾向)
| RoHS/REACH | 非ハロゲン系の一般グレードは適合しやすい傾向にあるが、添加剤・顔料・製造拠点により異なるため個別グレードでの確認が必要 |
| 食品衛生法・FDA食品接触規則 | 食品接触用途向けの適合グレードが各社より提供されている(個別グレードの証明書確認が必要) |
| 医療機器用途(ISO 10993等) | UHMWPE等で医療グレードが存在し、人工関節摺動部材等の実績がある(個別グレードの認証確認が必要) |
| ハロゲンフリー | 基本骨格はハロゲンを含まないが、難燃剤・添加剤の種類により異なる |
| リサイクル識別表示 | 日本国内では識別マーク上「プラ」表示対象。北米等ではPE系はリサイクル識別番号2(HDPE)・4(LDPE)に該当する例が一般的 |
規制適合はメーカー・グレード・色・添加剤・製造拠点・用途・接触条件によって異なる。材料名だけで適合を断定せず、「一般に対応可能」「適合グレードが存在する」「個別グレードの証明書確認が必要」を区別して取り扱うこと。
劣化・故障モードと注意点
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 予防策 |
|---|---|---|---|
| 環境応力割れ(ESC) | 界面活性剤・アルコール等の存在下での残留応力・外部応力 | ボトル・タンク等の持続荷重部、成形残留応力が大きい部位 | 耐ESCグレードの選定、残留応力低減、ノッチ回避 |
| 紫外線劣化(チョーキング・脆化) | 紫外線による酸化分解 | 屋外・無安定剤グレードでの長期使用 | 耐候グレード(UV安定剤・カーボンブラック配合)の選定 |
| 熱酸化劣化 | 高温下での酸化反応 | 連続使用温度を超える高温環境、滞留成形 | 酸化防止剤配合グレードの選定、成形温度・滞留時間の管理 |
| クリープ変形 | 長期荷重下での粘弾性変形 | 配管の内圧、長期静荷重部品 | 長期クリープ強度データに基づく設計、架橋PE等高耐クリープグレードの検討 |
| 燃料・溶剤の透過 | 非極性溶剤・燃料の樹脂内拡散 | 燃料タンク・配管 | 多層構造化(バリア層併用)、耐透過グレードの選定 |
推奨確認試験
実使用にあたっては、対象グレード・使用条件(温度、濃度、荷重、応力、湿度、接触時間、繰返し回数等)を確認したうえで、必要に応じて次のような試験の実施を推奨する。実薬品浸漬試験、応力負荷下での環境応力割れ試験(ASTM D1693等)、高温高湿試験、紫外線促進耐候試験、クリープ試験、疲労試験、燃料透過試験、寸法変化測定、実成形試験、実部品での耐久試験。