| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | スチレンコポリマー |
| 略記号 | SC、Styrenic Copolymer、または構成によりSAN、ABS、ASA、MABS、SMAなどと表記される |
| IUPAC | 単一のIUPAC名はない。代表例として、SANは poly(styrene-co-acrylonitrile)、ABSは poly(acrylonitrile-co-butadiene-co-styrene) と表記されることが多い |
| 英語名 | Styrene Copolymer、Styrenic Copolymer、Styrene-based Copolymer |
| 日本語名 | スチレン共重合体、スチレン系共重合樹脂、スチレン系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂など |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、スチレン系樹脂、非晶性樹脂 |
| プラスチック分類 | 一般には汎用プラスチックから機能性熱可塑性樹脂に分類される。ABS、ASA、PC/ABSなどは実用上エンジニアリング用途に使われることも多い |
| 化学式または代表構造 | 代表例:–[CH2–CH(C6H5)]m–[CH2–CH(CN)]n–。ABSではブタジエンゴム相にSANがグラフトした構造を含む |
| CAS No. | スチレンコポリマー全体としては単一CAS No.はない。代表例:SAN 9003-54-7、ABS 9003-56-9、SMA 9011-13-6 |
| 構造・主成分 | スチレン単位を主成分とし、アクリロニトリル、ブタジエン、アクリル酸エステル、メチルメタクリレート、無水マレイン酸などを共重合またはグラフト重合した材料群である |
| 主な用途 | 家電筐体、OA機器、車両内外装部品、透明部品、日用品、建材、医療・診断機器部品、包装材、成形材料、ポリマー改質材など |
概要
スチレンコポリマーとは、スチレンを主成分または主要構成単位として、他のビニル系モノマーやゴム成分と共重合した熱可塑性樹脂の総称である。代表的なものに、スチレン・アクリロニトリル共重合体であるSAN樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体であるABS樹脂、耐候性を高めたASA樹脂などがある。
一般に、スチレン由来の成形性、寸法安定性、剛性、光沢を基礎とし、共重合成分により耐薬品性、透明性、耐衝撃性、耐候性、耐熱性などを調整できる。単一の材料ではなく材料群であるため、物性値や耐薬品性はSAN、ABS、ASA、MABS、SMAなどの種類とグレードにより大きく異なる。
実用上は、汎用樹脂に近い使いやすさを持ちながら、筐体、カバー、内装部品、透明部品などの外観部品に広く使われる。一方で、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤などには弱い場合が多く、実使用ではグレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
特徴
長所
- 射出成形、押出成形、熱成形などの加工性が良好である。
- 表面光沢、着色性、外観性に優れるグレードが多い。
- 寸法安定性が比較的良好で、成形収縮率が小さい傾向がある。
- ABSやASAでは耐衝撃性を高めやすい。
- SANやMABSでは透明性を持たせることができる。
- ASAやAESでは屋外用途向けに耐候性を高めることができる。
- PC、PA、PVC、PMMAなどとのアロイ化・改質に使われる場合がある。
短所
- 芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤に侵されやすいものが多い。
- 一般的なグレードでは耐熱性は中程度で、スーパーエンプラほどの高温使用には適さない。
- 屋外使用ではABSやSANは黄変、劣化、割れを生じる場合があり、ASAや耐候グレードの選定が必要である。
- 非晶性樹脂であるため、応力割れ、溶剤クラック、成形残留応力に注意を要する。
- 燃焼性はグレードにより異なり、電気・電子用途では難燃グレードや規格適合の確認が必要である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 透明、半透明、不透明のいずれも存在する。SANやMABSは透明性を持つものが多く、ABSやASAは一般に不透明で光沢を持つ |
| 耐熱性 | 一般グレードでは中程度である。荷重たわみ温度はおおむね80〜110℃程度、高耐熱グレードやSMA系では100℃を超える場合がある |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ、アルコール類には比較的安定なグレードが多い。芳香族溶剤、ケトン、エステル、塩素系溶剤には注意が必要である |
| 加工性 | 射出成形性は良好で、薄肉成形、着色、二次加工に適する。グレードにより押出、シート成形、真空成形、ブロー成形にも使用される |
| 分類上の注意 | スチレンコポリマーは単一材料名ではなく、SAN、ABS、ASA、MABS、SMA、SBCなどを含む広い材料群である。ゴム弾性を主目的とするSBS、SEBSなどはスチレン系熱可塑性エラストマーとして分類されることが多い |
構造式
スチレンコポリマーは材料群であるため、構造式は共重合相手により異なる。代表的なSANでは、スチレン単位とアクリロニトリル単位がランダム共重合した非晶性構造をとる。ABSでは、ポリブタジエン系ゴム相にSANがグラフトし、さらにSANマトリックスが存在する二相構造になることが多い。
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 化学式の画像 | 画像タグは使用せず、本文HTMLでは白黒のテキスト表記で示す。画像化する場合はMS Pゴシック相当で、–CH2–CH(C6H5)–、–CH2–CH(CN)–などの構造単位を並べて表示する |
| 代表的な構造単位 | スチレン単位:–CH2–CH(C6H5)–、アクリロニトリル単位:–CH2–CH(CN)–、ブタジエン単位:–CH2–CH=CH–CH2– |
| モノマーまたは構成単位 | スチレン、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、アクリル酸エステル、メチルメタクリレート、無水マレイン酸など |
| SANの代表構造 | –[CH2–CH(C6H5)]m–[CH2–CH(CN)]n– |
| ABSの代表構造 | ポリブタジエンゴム粒子にSANがグラフトした構造と、SAN連続相からなる二相系として扱われることが多い |
| 共重合体・変性グレード | 耐衝撃、耐候、透明、高耐熱、難燃、ガラス繊維強化、帯電防止、めっき用、塗装用、医療用などのグレードがある |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| SAN樹脂・AS樹脂 | スチレンとアクリロニトリルの共重合体 | 透明性、剛性、耐薬品性、寸法安定性が比較的良好 | 耐衝撃性はABSより低く、溶剤クラックに注意が必要 | 透明容器、化粧品容器、家電部品、雑貨、ABSのマトリックス成分 |
| ABS樹脂 | アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンからなるグラフト共重合体 | 耐衝撃性、成形性、外観性、二次加工性のバランスが良い | 屋外耐候性や耐溶剤性はグレードにより制限がある | 家電筐体、自動車内装、OA機器、玩具、機械カバー |
| ASA樹脂 | アクリルゴム相にSANをグラフトした耐候性スチレン系樹脂 | 耐候性、色調保持性、外観性が良好 | ABSより材料価格が高くなる場合がある | 自動車外装、建材、屋外カバー、エクステリア部品 |
| AES樹脂 | エチレン系ゴムまたはEPDM系ゴムにSANを組み合わせた耐候性樹脂 | 耐候性、耐熱老化性、耐衝撃性を調整しやすい | 流通量やグレード選択肢はABSほど多くない | 屋外部品、自動車部品、耐候筐体 |
| MABS樹脂 | メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン系の透明耐衝撃樹脂 | 透明性、耐衝撃性、印刷性、接着性を両立しやすい | 耐溶剤性、耐熱性はグレード選定が必要 | 医療・診断部品、透明ケース、化粧品容器、日用品 |
| SMA樹脂 | スチレンと無水マレイン酸の共重合体 | 耐熱性、剛性、接着性、極性材料との相溶化効果がある | 吸水や加水分解、脆さに注意が必要 | 耐熱部品、樹脂改質材、相溶化剤、塗料・接着剤関連 |
| SMMA・MS樹脂 | スチレンとメチルメタクリレートの共重合体 | 透明性、低吸湿性、成形性が良好 | 耐衝撃性や耐薬品性はPMMA、PC、MABSとの比較が必要 | 透明雑貨、容器、光学外観部品、日用品 |
| SBC・SBS系 | スチレンとブタジエンのブロック共重合体 | 透明性、柔軟性、耐衝撃改質効果がある | ゴム弾性用途では熱変形、耐油性、耐候性に注意が必要 | 包装材、改質材、粘接着剤、熱可塑性エラストマー用途 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的である。ABS、SAN、ASA、MABSなどで筐体、カバー、機構部品に広く使われる |
| 押出成形 | ○ | シート、板、異形押出、フィルム状材料に使われる。ASAやABSの押出グレードがある |
| ブロー成形 | △ | 一般的な用途は限定的であるが、専用グレードでは中空成形に使われる場合がある |
| 圧縮成形 | △ | 熱可塑性樹脂としては主流ではない。板材や複合材の二次加工では条件により可能である |
| 真空成形 | ○ | ABS、ASA、SANシートなどで使用される。肉厚分布、加熱温度、残留応力の管理が必要である |
| 切削加工 | ○ | 板材、丸棒、成形品の追加工が可能である。熱変形、溶着、クラックに注意する |
| 溶着・接着 | ○ | 超音波溶着、熱板溶着、溶剤接着、接着剤接合が使われる。溶剤選定では応力割れを確認する |
| 塗装・めっき | ○ | ABSでは塗装、めっき用途が多い。グレード、表面処理、成形条件により密着性が変わる |
| 3Dプリント | ○ | ABS系フィラメントとして使われる。反り、臭気、造形温度、換気に注意が必要である |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は代表値の目安である。スチレンコポリマーは材料範囲が広いため、実際の設計では各メーカーの個別グレードデータ、成形条件、吸水状態、温度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
| 項目(単位) | SAN・AS樹脂 | ABS一般グレード | ASA耐候グレード | SMA耐熱グレード | GF強化ABS・ASA | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度(g/cm3) | 1.06〜1.09 | 1.03〜1.07 | 1.05〜1.08 | 1.08〜1.12 | 1.15〜1.35 | 充填材、ゴム量、難燃剤により変動する |
| 引張強さ(MPa) | 60〜80 | 35〜55 | 35〜55 | 45〜70 | 50〜90 | ISO 527またはASTM D638相当の目安 |
| 伸び(%) | 2〜5 | 10〜50 | 10〜40 | 2〜10 | 2〜8 | 耐衝撃グレードでは大きくなる場合がある |
| 曲げ弾性率(MPa) | 3,000〜3,800 | 1,800〜2,700 | 1,800〜2,800 | 2,500〜3,800 | 5,000〜8,500 | ゴム量が増えると低下し、GF強化で上昇する |
| アイゾット衝撃強さ(kJ/m2) | 1〜4 | 10〜40 | 5〜30 | 2〜8 | 5〜18 | ノッチ付き、温度条件により大きく変動する |
| 荷重たわみ温度(℃、1.8MPa) | 85〜100 | 80〜105 | 85〜105 | 100〜130 | 95〜125 | 高耐熱グレードではさらに高い場合がある |
| 融点またはガラス転移温度(℃) | Tg 100〜110 | Tg 95〜110 | Tg 100〜110 | Tg 120〜160 | Tg 100〜120 | 多くは非晶性で、明確な融点を示さない |
| 連続使用温度(℃) | 60〜80 | 60〜85 | 70〜90 | 80〜100 | 70〜100 | 荷重、応力、雰囲気、規格により異なる |
| 吸水率(%、23℃・24h) | 0.2〜0.4 | 0.2〜0.5 | 0.2〜0.5 | 0.4〜0.8 | 0.2〜0.6 | ナイロンより低いが、寸法精度用途では確認が必要である |
| 体積抵抗率(Ω・cm) | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 1013〜1016 | 1013〜1016 | 1012〜1015 | 帯電防止、導電、難燃グレードでは異なる |
| 成形収縮率(%) | 0.3〜0.7 | 0.4〜0.8 | 0.4〜0.8 | 0.3〜0.7 | 0.1〜0.4 | 金型設計では流動方向、肉厚、保圧条件を確認する |
耐薬品性
耐薬品性は、SAN、ABS、ASA、MABS、SMAなどの種類、ゴム量、アクリロニトリル量、添加剤、成形残留応力により変わる。特に非晶性樹脂では、短時間の接触では外観変化が小さくても、応力下でクラックが生じる場合がある。
| 薬品分類 | 代表的な薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸水溶液 | ○ | 低濃度・常温では比較的安定な場合が多い。高濃度、長時間、高温では確認が必要である |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、硝酸、クロム酸 | × | 劣化、変色、脆化のおそれがある |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水 | ○ | 希アルカリでは比較的安定な場合が多い。SMA系では加水分解に注意する |
| 低級アルコール類 | エタノール、メタノール、IPA | ○〜△ | 短時間では使用できる場合が多いが、応力下や長時間接触ではクラックを確認する |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 薬品ごとの差が大きい。ベンジルアルコールなど芳香族性を持つ溶剤は注意が必要である |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | × | 溶解、膨潤、白化、クラックを生じやすい |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | △ | 芳香族溶剤より影響は小さい場合があるが、グレードと接触時間により膨潤する |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | 溶解、軟化、クラックを起こしやすく、一般に不適である |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | ×〜△ | 多くのグレードで膨潤・軟化を生じる。短時間接触でも確認が必要である |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解性が高く、原則として避けるべきである |
| 水・温水 | 水、温水、湿熱環境 | ○ | 常温水では比較的安定である。高温水、蒸気、長期湿熱では寸法変化や劣化を確認する |
| 油 | 鉱物油、植物油、グリース、切削油 | ○〜△ | 油種、添加剤、温度により差がある。可塑剤や芳香族成分を含む油では注意する |
SP値(溶解度パラメータ)
スチレンコポリマーの代表的なSP値(δ)は、おおむね18.5〜22.0 MPa1/2程度である。PS系は約18.5〜19.0 MPa1/2、SAN系はアクリロニトリル量により約20.0〜22.0 MPa1/2に近づく傾向がある。ABSやASAではゴム相とSAN相を含むため、単一のSP値だけでは評価しにくい。
SP値は溶剤との親和性を推定するための目安であり、耐薬品性そのものを保証する値ではない。実際には、結晶性の有無、共重合比、ゴム相、添加剤、成形残留応力、薬品濃度、温度、接触時間、外力の有無を含めて判断する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差(MPa1/2) | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | 代表SP値(MPa1/2) | スチレンコポリマーとの差の目安 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約26〜29 | ◎ | SP値差は大きいが、温水や湿熱では寸法変化を確認する |
| エタノール | 26.0 | 約4〜8 | ○〜△ | 短時間接触では使用できる場合があるが、応力割れに注意する |
| IPA | 23.5 | 約2〜5 | △ | 清拭用途では濃度、頻度、応力を確認する |
| グリセリン | 36.2 | 約14〜18 | ◎〜○ | 一般には影響が小さいが、添加剤や温度条件により確認が必要である |
| トルエン | 18.2 | 約0〜4 | × | スチレン系樹脂を侵しやすい |
| キシレン | 18.0 | 約0〜4 | × | 膨潤、軟化、白化、クラックを生じやすい |
| n-ヘキサン | 14.9 | 約4〜7 | △〜○ | 芳香族溶剤よりは影響が小さいが、長時間接触は確認が必要である |
| アセトン | 20.1 | 約0〜3 | × | 溶解・軟化しやすく、一般に不適である |
| MEK | 19.0 | 約0〜3 | × | 溶剤クラックを生じやすい |
| 酢酸エチル | 18.2 | 約0〜4 | × | 溶解、膨潤、白化に注意する |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約0〜3 | × | 強く侵す場合が多い |
| 鉱物油 | 16〜17 | 約2〜6 | ○〜△ | 油種、添加剤、温度により変動する |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値差による評価は簡易的な目安であり、最終判断には浸漬試験、応力下試験、実液試験を行うことが望ましい。
製法
原料
主原料はスチレンであり、目的物性に応じてアクリロニトリル、1,3-ブタジエン、アクリル酸エステル、メチルメタクリレート、無水マレイン酸などを組み合わせる。耐衝撃性を高める場合は、ポリブタジエン、アクリルゴム、EPDM系ゴムなどのゴム相を導入する。
重合方法
SANやSMAでは、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが用いられる。ABSやASAでは、ゴム粒子にスチレンとアクリロニトリルをグラフト重合し、SANマトリックスと混合する方法が一般的である。製法によりゴム粒径、相構造、光沢、耐衝撃性、流動性が変わる。
代表的な反応式
| 材料 | 代表的な反応式・工程 |
|---|---|
| SAN・AS樹脂 | m C6H5CH=CH2 + n CH2=CHCN → –[CH2–CH(C6H5)]m–[CH2–CH(CN)]n– |
| ABS樹脂 | ポリブタジエンゴム + スチレン + アクリロニトリル → PB-g-SAN + SANマトリックス |
| ASA樹脂 | アクリルゴム + スチレン + アクリロニトリル → アクリルゴム-g-SAN + SANマトリックス |
| SMA樹脂 | m C6H5CH=CH2 + n 無水マレイン酸 → poly(styrene-co-maleic anhydride) |
| SBC・SBS系 | スチレンブロック + ブタジエンブロック + スチレンブロック → SBS型ブロック共重合体 |
ペレット化やコンパウンド
重合後の樹脂は、脱揮、乾燥、添加剤混合、押出ペレット化を経て成形材料になる。ABS、ASA、SANなどでは、顔料、耐候剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、ガラス繊維、ミネラルフィラーなどを加えたコンパウンド品も多い。
添加剤、充填材、強化材
耐候用途では紫外線吸収剤やHALS、電気・電子用途では難燃剤やトラッキング対策剤、機械部品用途ではガラス繊維、タルク、炭酸カルシウムなどが使われることがある。添加剤の種類により、耐熱性、衝撃性、外観、耐薬品性、燃焼性が変化する。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 使用されやすい種類 | 設計上の注意 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | インストルメントパネル部品、内装トリム、グリル、ミラーカバー、外装カバー | ABS、ASA、PC/ABS、AES | 耐熱、耐候、耐衝撃、塗装性、めっき性、VOC規制を確認する |
| 電気・電子 | 家電筐体、OA機器、プリンター部品、操作パネル、電装カバー | ABS、SAN、難燃ABS、PC/ABS | 難燃規格、絶縁性、耐熱性、そり、静電気対策を確認する |
| 機械部品 | カバー、ノブ、ケース、治具、保護部品、軽負荷部品 | ABS、GF強化ABS、SAN、SMA | 高荷重摺動部や高温部ではPOM、PA、PBT、PCなどとの比較が必要である |
| 医療 | 診断機器部品、透明ケース、ディスポーザブル部品、検査容器 | MABS、SAN、医療用ABS | 医療グレード、滅菌方法、溶出、薬液接触、規格適合を確認する |
| 食品機械・食品接触 | 容器、透明カバー、トレイ、ディスペンサー部品 | SAN、MABS、ABSの食品接触対応グレード | 食品衛生法、FDA、EU規制などの適合グレードを選定する |
| 建築・設備 | 屋外カバー、建材プロファイル、サイディング部材、設備カバー | ASA、AES、ASA/PC | 耐候性、熱膨張、色あせ、薬品洗浄、長期荷重を確認する |
| 包装・日用品 | 化粧品容器、透明箱、文具、雑貨、家庭用品 | SAN、SMMA、MABS、SBC | 透明性、耐落下性、耐アルコール性、印刷性を確認する |
| 樹脂改質 | 耐衝撃改質、相溶化、PVC改質、ABS用マトリックス、ブレンド材料 | SAN、SMA、MBS、SBC | 相溶性、流動性、ゲル、分散状態、熱安定性を確認する |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリスチレン(PS) | 透明性、成形性、剛性に優れる汎用樹脂 | スチレンコポリマーはPSに他成分を共重合することで耐衝撃性、耐薬品性、耐候性などを調整した材料群である |
| SAN樹脂・AS樹脂 | 透明性、剛性、耐薬品性を持つスチレン系共重合体 | スチレンコポリマーの代表例であり、ABSやASAのマトリックス成分としても重要である |
| ABS樹脂 | 耐衝撃性、外観、成形性のバランスが良い | SANにゴム相を加えた代表的な耐衝撃スチレンコポリマーである |
| ASA樹脂 | ABSに近い成形性を持ちながら耐候性に優れる | ブタジエンゴムの代わりにアクリル系ゴムを使うことで屋外耐候性を高めた材料である |
| アクリル樹脂(PMMA) | 透明性、耐候性、表面硬度に優れる | PMMAは透明性と耐候性に優れるが、スチレンコポリマーは成形性、耐衝撃性、コスト面で選ばれる場合がある |
| ポリカーボネート(PC) | 高い耐衝撃性、透明性、耐熱性を持つエンプラ | PCは高性能だが高価格で成形条件も厳しい。ABSやPC/ABSは外観、成形性、コストとのバランスで使われる |
| ポリアセタール(POM) | 摺動性、耐摩耗性、疲労特性に優れる結晶性エンプラ | POMは機械機能部品向けで、スチレンコポリマーは外観部品、筐体、カバー用途で使われやすい |
| ポリプロピレン(PP) | 軽量、耐薬品性、低コストに優れる結晶性樹脂 | PPは耐薬品性と軽量性に優れるが、スチレンコポリマーは寸法安定性、塗装性、剛性感、外観で有利な場合がある |
代表的なメーカー
以下は実在するメーカーおよび代表的な製品・ブランドの例である。スチレンコポリマーは地域、用途、グレードにより供給状況が変わるため、採用時には最新の製品データシートと供給可否を確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| INEOS Styrolution | Novodur、Terluran、Luran、Luran S、Terluxなど | ABS、SAN、ASA、MABSなどのスチレン系材料を広く展開する代表的メーカーである |
| SABIC | CYCOLAC、CYCOLOYなど | ABS、PC/ABSなどのエンジニアリング用途向けスチレン系材料を展開する |
| 東レ | TOYOLAC | ABS樹脂を中心に、外観性、成形性、機械特性のバランスを重視したグレードを展開する |
| テクノUMG | TECHNO ABS、UMG ABSなど | ABS、特殊ABS、耐熱、強化、透明系などのスチレン系樹脂を展開する |
| 日本エイアンドエル | KRALASTIC、LITAC-A、UNIBRITE、TECHNIACEなど | ABS、AS樹脂、ASA/AES、ポリマーアロイなどを展開する国内メーカーである |
| CHIMEI Corporation | POLYLAC、KIBISAN、KIBILACなど | ABS、SAN、ASAなどのスチレン系材料を扱う台湾の大手メーカーである |
| Trinseo | MAGNUM、TYRILなど | ABS、SANなどのスチレン系樹脂を展開する化学メーカーである |
| LG Chem | ABS、SAN、ASA系グレード | 家電、自動車、一般成形向けのスチレン系樹脂を展開するメーカーである |
関連キーワード
スチレンコポリマー スチレン共重合体 スチレン系樹脂 SAN樹脂 AS樹脂 ABS樹脂 ASA樹脂 MABS樹脂 SMA樹脂 SBC スチレン系熱可塑性エラストマー 非晶性樹脂 汎用プラスチック エンジニアリングプラスチック 耐衝撃性樹脂 透明樹脂 耐候性樹脂