概要
| 材料名 | エチレン-ビニルアルコール共重合体 |
|---|---|
| 略記号 | EVOH |
| 英語名 | Ethylene Vinyl Alcohol Copolymer |
| 分類 | 高ガスバリア樹脂、熱可塑性樹脂 |
| 構造・主成分 | EVAを加水分解して得られるエチレン・ビニルアルコール共重合体 |
| 主な用途 | 食品包装多層フィルム、燃料容器、ボトルバリア層 |
エチレン-ビニルアルコール共重合体は、EVAを加水分解して得られるエチレン・ビニルアルコール共重合体である。酸素バリア性、耐油性、透明性が高い。エチレン成分で加工性と耐湿性を付与。
材料選定では、湿度でバリア性が低下しやすい。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。
特徴
- 酸素バリア性、耐油性、透明性が高い。エチレン成分で加工性と耐湿性を付与
- プラスチックの中で最大のガスバリア性を示す。
- 保香性にすぐれる。
- 湿度でバリア性が低下しやすい
- グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
- 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
- 機械的強度が高く、特に硬度が高い。
- クリープが小さく、耐摩擦にすぐれている。
- 耐油性や耐有機溶剤性に大変すぐれている。
- 耐候性にすぐれている。
- 燃焼しても有毒ガスを発生しない。
- 成形収縮率が小さい。
- 印刷適性にすぐれる。
- 非帯電性である。
- 分子中に水酸基を含むためある程度の透湿性をもつ。
- 他の樹脂やフィルムとの複合化、多層化によって使用されることが多い。
長所
- 酸素バリア性、耐油性、透明性が高い。エチレン成分で加工性と耐湿性を付与
- 用途に応じたグレード展開がある。
- 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
- 湿度でバリア性が低下しやすい
- 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
- 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工
エチレン-ビニルアルコール共重合体の加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。
化学
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、板材に使用する |
| 圧縮・注型・硬化成形 | △〜◎ | 熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる |
| 切削加工 | ○ | 丸棒、板材、試作部品、治具に使用する |
構造式

エチレン単位とビニルアルコール単位からなる共重合体。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
種類
標準グレード
| 名称 | 標準エチレン-ビニルアルコール共重合体 |
|---|---|
| 構成 | EVAを加水分解して得られるエチレン・ビニルアルコール共重合体 |
| 特徴 | 酸素バリア性、耐油性、透明性が高い。エチレン成分で加工性と耐湿性を付与 |
| 主な用途 | 食品包装多層フィルム、燃料容器、ボトルバリア層 |
特徴
- 標準的な物性バランスを持つ。
- 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
| 名称 | 強化・改質エチレン-ビニルアルコール共重合体 |
|---|---|
| 構成 | ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード |
| 特徴 | 剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する |
| 主な用途 | 電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材 |
特徴
- 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
- 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 標準EVOH | 高エチレンEVOH | 低エチレンEVOH | 耐湿・改良EVOH |
|---|---|---|---|---|---|
| 比重 | なし | 1.12〜1.22 | 1.10〜1.18 | 1.18〜1.25 | 1.12〜1.22 |
| 引張強さ | MPa | 40〜80 | 35〜65 | 60〜100 | 40〜80 |
| 引張伸び | % | 20〜150 | 50〜250 | 10〜80 | 30〜180 |
| 曲げ強さ | MPa | 60〜120 | 50〜100 | 80〜140 | 60〜120 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.0〜4.0 | 1.2〜3.0 | 3.0〜5.5 | 1.8〜4.0 |
| アイゾット衝撃強さ ノッチ付き | kJ/m2 | 2〜8 | 4〜12 | 1〜5 | 3〜10 |
| ロックウェル硬さ | なし | M60〜M90 | M50〜M80 | M80〜M105 | M60〜M90 |
| 融点 | ℃ | 160〜190 | 150〜175 | 180〜195 | 160〜190 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 50〜70 | 45〜60 | 60〜75 | 50〜70 |
| 荷重たわみ温度 0.45MPa | ℃ | 60〜90 | 55〜80 | 70〜100 | 60〜90 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60〜80 | 60〜80 | 70〜90 | 60〜90 |
| 酸素透過度 | cc・20µm/m2・day・atm | 0.1〜2 | 1〜10 | 0.01〜0.5 | 0.5〜5 |
| 水蒸気透過度 | g・20µm/m2・day | 10〜80 | 5〜50 | 20〜100 | 5〜60 |
| 吸水率 | % | 1〜5 | 0.5〜3 | 3〜8 | 0.5〜4 |
| 線膨張係数 | ×10-5/K | 5〜10 | 6〜12 | 4〜8 | 5〜10 |
| 成形収縮率 | % | 0.5〜1.5 | 0.7〜1.8 | 0.3〜1.2 | 0.5〜1.5 |
| 体積固有抵抗 | Ω・cm | 1012〜1015 | 1013〜1016 | 1011〜1014 | 1012〜1015 |
| 比誘電率 | なし | 3.5〜5.0 | 3.0〜4.5 | 4.0〜6.0 | 3.5〜5.0 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当 | HB相当 | HB相当 | HB相当 |
| 透明性 | なし | 透明〜半透明 | 透明〜半透明 | 透明〜半透明 | 透明〜半透明 |
| 耐薬品性 | なし | ○ | ○ | ○〜△ | ○ |
| 耐湿性 | なし | △ | ○ | △〜× | ○ |
エチレンのモル%による特性
| 性質 | 単位 | 32% | 38% | 44% | 47% |
|---|---|---|---|---|---|
| 比重 | 1.19 | 1.17 | 1.14 | 1.12 | |
| メルトインデックス | 1.3 | 1.6 | 5.5 | 14 | |
| 融点 | ℃ | 183 | 175 | 165 | 160 |
| 引張強さ | MPa | 79 | 68 | 60 | 44 |
| 引張伸び | % | 230 | 250 | 280 | 330 |
| 曲げ強さ | MPa | 122 | 110 | 100 | 85 |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 17 | 15 | 10 | 13 |
| ロックウェル硬さ | M100 | M93 | M88 | M85 |
耐薬品性
油・有機溶剤に良好。水分吸収と強酸・強アルカリに注意。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する |
| 酸 | △〜○ | 強酸では劣化する材料がある |
| アルカリ | △〜○ | ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する |
| アルコール | ○〜△ | 応力クラックや膨潤は材料により異なる |
| ケトン | △〜× | 非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する |
| 芳香族溶剤 | △〜× | 膨潤、白化、クラックの可能性がある |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
エチレン-ビニルアルコール共重合体のSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。
| 材料 | SP値(δ) | 特徴 |
|---|---|---|
| EVOH(高エチレン型) | 約20〜22 MPa1/2 | 柔軟性と耐湿性を高めたEVOHである |
| EVOH(標準グレード) | 約22〜25 MPa1/2 | 高ガスバリア性と透明性を持つ代表的グレードである |
| EVOH(高VOH型) | 約24〜28 MPa1/2 | 極めて高い酸素バリア性を持つ高極性タイプである |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶媒・薬品 | SP値(δ) MPa1/2 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | △ | 吸湿しやすくバリア性が低下する |
| 熱水 | 47.9 | △〜× | 高温高湿で大きく物性低下する |
| エタノール | 26.0 | △ | アルコールにより膨潤する場合がある |
| IPA | 23.5 | △ | 高VOH型ほど影響を受けやすい |
| メタノール | 29.7 | △〜× | 高極性アルコールで膨潤しやすい |
| アセトン | 19.9 | ○ | 比較的安定である |
| MEK | 19.0 | ○ | 短期では比較的安定である |
| 酢酸エチル | 18.6 | ○ | 高エチレン型では安定性が高い |
| THF | 18.5 | △ | 一部グレードでは膨潤する |
| クロロホルム | 19.0 | △ | 長時間では影響を受ける場合がある |
| ジクロロメタン | 20.2 | △ | 膨潤する可能性がある |
| トルエン | 18.2 | ◎ | 芳香族溶剤には比較的強い |
| キシレン | 18.0 | ◎ | 高温長期を除き安定である |
| ヘキサン | 14.9 | ◎ | 脂肪族炭化水素には強い |
| ガソリン | 15〜18程度 | ◎ | 耐燃料性は良好である |
| 鉱物油 | 15〜17程度 | ◎ | 耐油性に優れる |
| フェノール | 24〜25 | × | 高極性芳香族化合物で影響を受けやすい |
| DMF | 24.8 | × | 高極性溶剤で膨潤しやすい |
| DMSO | 26.7 | × | 高極性溶剤で大きく影響を受ける |
| 希酸 | – | ○〜◎ | 一般的には比較的安定である |
| 濃硫酸 | 高極性 | × | 分解や炭化の可能性がある |
| 弱アルカリ | – | ○ | 短期では比較的安定である |
| 強アルカリ | – | △〜× | 加水分解や劣化に注意する |
| 次亜塩素酸ナトリウム | – | △ | 酸化劣化する可能性がある |
| 過酸化水素 | – | △ | 高濃度酸化剤では注意が必要である |
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
実務上の注意
- SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
- 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
- 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。
製法
エチレンと酢酸ビニルのラジカル共重合によって、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を生成し、この共重合体をアルカリでケン化してEVOHを製造する。

詳細な利用用途
代表用途
- 食品包装多層フィルム
- 燃料容器
- ボトルバリア層
工業用途
- 電気電子部品
- 自動車部品
- 機械部品
- 耐熱・耐薬品部材
- フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| クラレ EVAL | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| 三菱ケミカル ソアノール | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| Nippon Gohsei | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |