ポリプロピレン(PP)
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概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリプロピレン |
| 略記号 | PP |
| IUPAC | poly(propene) |
| 英語名 | Polypropylene / Polypropene |
| 日本語名・別名 | ポリプロピレン、プロピレン樹脂、PP樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、ポリオレフィン系樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック |
| 化学式・代表構造 | (C3H6)n、[−CH2−CH(CH3)−]n |
| CAS No. | 9003-07-0 |
| 構造・主成分 | プロピレンの付加重合体である。一般的な成形材料はアイソタクチック構造を主体とする。 |
| 主な用途 | 自動車部品、食品容器、日用品、フィルム、シート、不織布、繊維、医療部品、配管、家電部品、電気絶縁部品 |
ポリプロピレン(PP)は、プロピレンを重合して得られる代表的な汎用プラスチックである。密度が約0.90 g/cm3と小さく、耐薬品性、成形加工性、電気絶縁性、コストのバランスに優れるため、包装、容器、自動車、家電、医療、繊維、建材などに広く使用される。
実用材料にはホモポリマー、ランダムコポリマー、耐衝撃コポリマーのほか、タルク充填、ガラス繊維強化、難燃、摺動、耐候、食品接触、医療用途向けなど多くのグレードがある。剛性、透明性、低温衝撃性、耐熱性、収縮率はグレードにより大きく異なる。
酸、アルカリ、水、低級アルコールに対しては一般に良好である一方、炭化水素、塩素系溶剤、燃料、高温油、強酸化剤では膨潤、軟化、酸化劣化又は応力割れに注意が必要である。実使用ではグレード、薬品濃度、温度、荷重、成形残留応力及び接触時間を確認する必要がある。
特徴
長所
- 主要な熱可塑性樹脂の中でも軽量であり、部品の軽量化に有利である。
- 酸、アルカリ、水、塩類水溶液及び多くのアルコールに対して一般に良好な耐性を示す。
- 射出、押出、ブロー、熱成形、フィルム、繊維及び発泡成形に対応し、量産性が高い。
- 吸水率が低く、湿度変化による寸法変化が小さい。
- 繰返し曲げに強いグレードは、リビングヒンジに適する。
- 電気絶縁性が良好であり、着色及びコンパウンドによる機能付与が容易である。
短所
- ホモPPは低温で脆化しやすく、衝撃用途では耐衝撃コポリマー等の選定が必要である。
- 紫外線、熱及び酸素により劣化しやすく、屋外及び長期高温用途では安定化処方が必要である。
- 表面エネルギーが低いため、接着、塗装及び印刷には表面処理又は専用プライマーが必要となる場合が多い。
- 結晶化収縮が比較的大きく、高精度部品では反り、ヒケ及び寸法ばらつきに注意が必要である。
- 標準グレードは燃えやすく、難燃性を要する用途では難燃グレードを選定する必要がある。
外観
自然色は白色半透明から乳白色である。ランダムコポリマー又は透明化核剤を用いたグレードでは透明性を高められるが、一般にPCやPMMAほどの透明性及び表面硬度は得にくい。
耐熱性
ホモPPの融点は一般に約160~170℃である。連続使用温度は標準グレードで概ね80~100℃を目安とするが、無負荷か荷重下か、空気中か薬液中か、要求寿命及び安定剤処方により異なる。タルク又はGF強化では荷重たわみ温度及び剛性保持を改善できる。
耐薬品性
非極性の結晶性ポリオレフィンであり、水系薬品には概して強い。芳香族・脂肪族炭化水素、燃料、塩素系溶剤及び高温油では、溶解しなくても膨潤、添加剤抽出、寸法変化又は環境応力割れが生じ得る。
加工性
吸水性が低いため通常は厳密な予備乾燥を要しない。ただし、結露、再生材、吸湿性フィラー、顔料又は難燃剤を含む場合は乾燥が必要となることがある。高温滞留では熱酸化劣化、臭気、黄変及び分子量低下に注意する。
分類上の注意
PPは汎用プラスチックである。ただし、GF強化、長繊維強化又は高充填PPは、実務上エンプラ代替又は複合材料として扱われることがある。バイオポリプロピレンは原料由来による分類であり、通常のPPと同様に一般には生分解性を持たない。
構造式
化学式の画像

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −CH2−CH(CH3)− |
| モノマー | プロピレン、CH2=CH−CH3 |
| 代表的な重合反応式 | n CH2=CH−CH3 → [−CH2−CH(CH3)−]n |
| 立体規則性 | 一般的な成形材料はアイソタクチックPPを主体とする。シンジオタクチックPP及びアタクチックPPも存在する。 |
| 共重合体 | 少量のエチレン等を導入したランダムコポリマー及び耐衝撃コポリマーがある。 |
| 変性グレード | 無水マレイン酸変性、エラストマー改質、タルク充填、GF強化、難燃、摺動、導電、耐候等がある。 |
種類・代表グレード
| 種類の名称 | 主成分・特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ホモPP | プロピレン単独重合体。結晶性及び剛性が高い。 | 剛性、耐熱性、耐薬品性、ヒンジ性 | 低温衝撃性が低い場合がある。 | 容器、キャップ、日用品、繊維 |
| ランダムコポリマーPP | エチレン等を少量ランダム共重合する。 | 透明性、柔軟性、ヒートシール性 | 剛性及び融点が低下しやすい。 | 透明容器、医療容器、フィルム |
| 耐衝撃コポリマーPP | PP相中にエチレン・プロピレン系ゴム相を形成する。 | 低温衝撃性、耐久性 | 透明性及び表面硬度が低下しやすい。 | 自動車、家電、コンテナ |
| 高流動グレード | MFRを高め、薄肉又は大型射出成形に対応する。 | 充填性、成形サイクル | 衝撃性又は溶融強度が低下する場合がある。 | 薄肉容器、大型射出品 |
| 高粘度・押出グレード | 溶融強度又は機械強度を重視する。 | 押出安定性、ブロー適性 | 射出時の流動性が低い。 | シート、パイプ、ボトル |
| 透明化グレード | 透明化核剤又はランダム共重合を用いる。 | 透明性、光沢、軽量性 | PC、PMMAほどの光学性は得にくい。 | 透明容器、医療・食品包装 |
| タルク充填グレード | タルク等の無機フィラーを配合する。 | 剛性、HDT、寸法安定性 | 比重上昇、衝撃性及び外観への影響 | 自動車内外装、家電筐体 |
| GF強化グレード | 一般にGF 10~40質量%程度。短繊維又は長繊維を用いる。 | 強度、剛性、耐熱性 | 反り、異方性、工具・金型摩耗 | 構造部品、ファン、ブラケット |
| CF強化・導電グレード | 炭素繊維又は導電性フィラーを配合する。 | 高剛性、帯電防止又は導電性 | コスト、異方性、電気特性のばらつき | 電装部品、軽量構造部品 |
| 難燃グレード | リン・窒素系、ハロゲン系等の難燃処方を用いる。 | UL 94 V-0等に対応する製品がある。 | 成形ガス、機械物性、耐候性への影響 | 端子台、電装筐体 |
| 摺動グレード | 潤滑剤、シリコーン、PTFE等を配合する。 | 低摩擦、鳴き音低減 | ブリード、接着性、食品接触適合に注意 | ガイド、低荷重摺動部品 |
| 耐候グレード | 光安定剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック等を用いる。 | 屋外寿命を延長しやすい。 | 色調及び長期熱安定性は個別確認が必要 | 屋外部品、園芸・建材部品 |
| 食品接触・医療用 | 添加剤、抽出物、品質管理又は滅菌適性を用途別に管理する。 | 規制・品質要求へ対応可能 | 適合は材料名ではなく個別グレードで確認する。 | 食品容器、シリンジ、検査容器 |
| フィルム・繊維グレード | 分子量分布、MFR及び結晶化を加工法別に調整する。 | 延伸性、紡糸性、ヒートシール性 | 熱収縮、帯電、低温衝撃に注意 | OPP、CPP、不織布、ロープ |
| 発泡グレード | 高溶融張力化又は架橋・分岐化を行う場合がある。 | 軽量、断熱、緩衝性 | セル制御及び接着・印刷性に注意 | EPP、緩衝材、自動車部材 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 | 加工上の注意 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 自動車部品、容器、家電部品 | 成形収縮、反り、ヒケ、結晶化及びフィラー配向を管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、パイプ、板、異形品 | MFR、冷却、配向及び厚み精度を管理する。 |
| ブロー成形 | ○ | ボトル、タンク、中空品 | 溶融張力の高いグレードを選定する。 |
| フィルム成形 | ◎ | OPP、CPP、包装フィルム | 延伸、透明性、ヒートシール及び帯電を管理する。 |
| 繊維・不織布 | ◎ | 不織布、ロープ、フィルター | 紡糸性、分子量、添加剤及び熱履歴を管理する。 |
| 真空・熱成形 | ○ | 食品トレー、シート成形品 | 加熱可能範囲、ドローダウン及び結晶化収縮に注意する。 |
| 圧縮成形 | △ | 厚板、試験片、複合材 | 一般量産では射出又は押出が中心である。 |
| 発泡成形 | ○ | EPP、緩衝材、断熱部品 | 発泡倍率、セル径及び溶融張力を管理する。 |
| 切削加工 | ○ | 試作、治具、板・丸棒部品 | 熱膨張、バリ、固定変形及び切削熱に注意する。 |
| 接着・塗装 | △ | 加飾、複合部品 | コロナ、プラズマ、火炎処理又は専用プライマーを検討する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 通常不要 | 結露、再生材、吸湿性フィラー又は添加剤を含む場合は60~80℃、1~3時間程度を目安にメーカー条件を優先する。 |
| シリンダー温度 | 180~240℃ | 高流動、GF強化、難燃、押出グレードでは推奨範囲が異なる。 |
| 樹脂温度 | 200~240℃ | 高温滞留による熱酸化、臭気及び黄変を避ける。 |
| 金型温度 | 20~60℃ | 外観、結晶化、収縮、反り及びサイクルに影響する。 |
| 射出圧力・速度 | グレード・形状依存 | 薄肉、高流動又は繊維強化品ではゲート及びせん断発熱を含めて最適化する。 |
| 成形収縮率 | 1.0~2.5% | ホモPPは大きくなりやすい。タルク及びGF充填で低下するが、繊維配向による異方性に注意する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は非強化・無充填の標準的な射出成形用PPを中心とした代表値である。比較機能での数値利用を想定し、単位、代表値及び範囲を分離した。特定グレードの保証値ではない。
| 項目 | 単位 | 下限 | 代表値 | 上限 | 条件・備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.895 | 0.900 | 0.910 | 非強化・無充填、23℃の目安 |
| 比重 | 無次元 | 0.895 | 0.900 | 0.910 | 23℃、水=1 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.01 | 0.02 | 0.03 | 23℃水中の代表範囲。規格・試験片厚みにより変動 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.0 | 1.6 | 2.2 | 射出成形。肉厚、保圧、金型温度に依存 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.2 | 2.0 | 2.5 | 非強化材の目安。繊維強化材は別評価 |
| 線膨張係数・流動方向 | 10−5/K | 8 | 10 | 14 | 温度範囲及び結晶化度に依存 |
| 線膨張係数・流動直角方向 | 10−5/K | 9 | 12 | 15 | 非強化材の代表範囲 |
| ポアソン比 | 無次元 | 0.40 | 0.42 | 0.45 | 代表値、規格不明 |
| 硬度 | Rockwell R | 70 | 90 | 110 | グレード及び結晶化度に依存 |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 25 | 32 | 38 | 23℃、ISO 527又はASTM D638相当の代表範囲 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 20 | 30 | 35 | 破断様式及び試験速度に依存 |
| 引張弾性率 | GPa | 1.1 | 1.5 | 1.8 | 23℃、乾燥状態 |
| 引張破断伸び | % | 100 | 300 | 600 | ホモPPの代表範囲。試験片・速度で大きく変動 |
| 引張降伏伸び | % | 8 | 10 | 15 | 代表値、グレード依存 |
| 曲げ強さ | MPa | 30 | 40 | 55 | 23℃、代表範囲 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 1.2 | 1.5 | 1.8 | 引張弾性率と同一値とは限らない。 |
| 圧縮強さ | MPa | データなし | 降伏、ひずみ又は試験時間を統一できず一般化困難 | ||
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m2 | 2 | 5 | 8 | 23℃、ISO方式の目安。ASTMのJ/mと混同しない。 |
| シャルピー衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m2 | 2 | 5 | 10 | 23℃、ISO 179相当の代表範囲 |
| シャルピー衝撃強さ・ノッチなし | kJ/m2 | グレード依存 | NB(破壊せず)の場合があり、数値化しない。 | ||
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 85 | 100 | 115 | ISO 75又はASTM D648相当 |
| 荷重たわみ温度・1.8 MPa | ℃ | 50 | 60 | 70 | 荷重条件を必ず区別する。 |
| 融点 | ℃ | 160 | 165 | 170 | ホモPP。ランダムコポリマーは低い場合がある。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | −20 | −10 | 0 | 測定法及び立体規則性に依存 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80 | 90 | 100 | 標準グレードの設計目安。保証値ではない。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1016 | データなし | データなし | 一般に1016 Ω・cm以上。帯電防止品は別。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 30 | 40 | 厚さ、電極、周波数及び規格に依存 |
| 酸素指数 | % | 17 | 17.5 | 18 | 標準PPは燃えやすい。 |
| 難燃性 | UL 94 | HB相当 | 厚み及び個別認証に依存。難燃PPはV-2又はV-0等の製品がある。 | ||
| 色調・外観 | ― | 半透明~乳白色 | 透明化、着色、フィラーで変化 | ||
改質・強化グレードの代表物性
| 項目 | 単位 | 耐衝撃PP | タルク20%PP | GF30%PP | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.90~0.92 | 1.03~1.10 | 1.10~1.20 | 充填量で変化 |
| 引張強さ | MPa | 20~35 | 25~40 | 55~85 | 繊維長、界面処理、試験方向に依存 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.9~1.5 | 2.0~3.0 | 4.5~7.0 | 代表範囲 |
| 引張破断伸び | % | 50~500 | 10~80 | 2~5 | 強化・充填で低下 |
| HDT・0.45 MPa | ℃ | 70~100 | 105~135 | 135~160 | 結晶化及び試験規格に依存 |
| 成形収縮率 | % | 1.0~2.0 | 0.8~1.5 | 0.3~1.0 | GF品は流動方向差が大きい。 |
設計値として使用する場合は、採用候補グレードの最新データシート、試験規格、試験片厚さ、成形条件、含水・熱履歴及び使用温度を確認し、実成形品でのクリープ、疲労、薬液及び耐久試験を行う必要がある。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 条件・注意点 |
|---|---|---|---|
| 非酸化性酸 | 塩酸、希硫酸、リン酸、酢酸 | ◎ | 常温では一般に良好。高温・高濃度及び応力下は個別確認する。 |
| 酸化性酸・強酸化剤 | 濃硝酸、発煙硫酸、クロム酸混液 | × | 酸化劣化、脆化又は変色の危険がある。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、アンモニア水 | ◎ | 常温では非常に良好。高温・長時間では酸化安定性も確認する。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎ | 常温では一般に良好。添加剤抽出及び応力下は確認する。 |
| 多価・高沸点アルコール類 | グリセリン、プロピレングリコール、MMB | ○~◎ | グリセリン等は概して良好。ベンジルアルコール等は温度・時間を確認する。 |
| 芳香族炭化水素 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △~× | 膨潤・軟化しやすく、高温又は長時間では不適となる場合が多い。 |
| 脂肪族炭化水素 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | △ | 溶解しなくても膨潤、抽出及び寸法変化が起こり得る。 |
| 燃料 | ガソリン、灯油、軽油 | △ | 組成、温度、酸化燃料及びバイオ成分で変動。実燃料試験が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○ | 常温短時間では比較的安定な場合が多いが、長期、応力及び高温条件は確認する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | ○~△ | 温度、接触時間及び成形残留応力で膨潤又は割れが生じ得る。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | ×~△ | 膨潤、軟化、浸透及び応力割れに注意し、長期接触は避ける。 |
| 水・温水・塩水 | 水、温水、食塩水 | ◎ | 吸水率は低い。高温水、蒸気、塩素水又は長期荷重下は確認する。 |
| 油 | 植物油、動物油、鉱物油、潤滑油 | ○~△ | 常温植物油は比較的良好。高温油、鉱油及び添加剤を含む油は膨潤を確認する。 |
| 酸化剤 | 次亜塩素酸Na、過酸化水素 | △ | 濃度、pH、温度、光及び金属イオンにより酸化劣化速度が変わる。 |
| 界面活性剤 | 非イオン、アニオン、カチオン系洗剤 | ○ | 多くは使用可能だが、高温、高濃度、長時間及び応力下で確認する。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。上表は概ね常温、無応力、短~中時間接触の目安である。濃度、温度、グレード、充填材、添加剤、接触時間、荷重及び成形残留応力が変わる場合は、実液浸漬、質量・寸法変化、引張物性保持率及び定ひずみ応力割れ試験を行うことが望ましい。
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| PPの代表的なSP値 δ | 約16~18 MPa1/2。計算では代表値17.0 MPa1/2を用いた。 |
| 性質 | 非極性で低SP値側に位置する結晶性ポリオレフィンである。 |
| 注意点 | SP値は溶解・膨潤傾向の一次スクリーニングである。結晶化度、分子量、薬品分子サイズ、温度、応力、酸化性、添加剤抽出及び接触時間を含めて判断する必要がある。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
PPの代表SP値を17.0 MPa1/2として整理した。結晶性PPはSP値差が小さくても常温で直ちに溶解しない場合があるが、高温、長時間又は応力下では膨潤、軟化、白化、割れ及び添加剤抽出が起こり得る。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | PPとの差 | 実務評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 2.1 | △ | 膨潤及び抽出に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 1.2 | ×~△ | 芳香族炭化水素。高温・長時間で影響が大きい。 |
| キシレン | 18.0 | 1.0 | ×~△ | 膨潤・軟化に注意する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 1.6 | △ | 短時間で使用可能な場合もあるが実液確認が必要である。 |
| MEK | 19.0 | 2.0 | ○~△ | 応力、高温及び長時間接触を確認する。 |
| アセトン | 20.0 | 3.0 | ○ | 常温短時間では比較的良好な場合が多い。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 3.2 | ×~△ | SP差だけでなく塩素系溶剤の浸透・膨潤作用を重視する。 |
| IPA | 23.5 | 6.5 | ◎~○ | 一般に良好である。 |
| エタノール | 26.0 | 9.0 | ◎ | 一般に良好である。 |
| グリセリン | 36.1 | 19.1 | ◎ | 一般に膨潤しにくい。 |
| 水 | 47.9 | 30.9 | ◎ | 耐水性は良好。高温塩素水は別途確認する。 |
製法

原料と重合方法
主原料はプロピレンである。工業的にはチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を用いた配位重合により、立体規則性を制御して製造する。代表的な重合法はバルク重合、気相重合及びスラリー重合であり、触媒、温度、水素濃度及びコモノマー量により分子量、分子量分布、MFR、結晶性及び衝撃性を調整する。
代表的な反応式
n CH2=CH−CH3 → [−CH2−CH(CH3)−]n
| 工程 | 内容 | 管理項目 |
|---|---|---|
| 原料精製 | プロピレン中の水分、酸素、硫黄化合物等の触媒毒を除去する。 | 純度、水分、触媒活性 |
| 重合 | 触媒存在下でホモ重合又はエチレン等との共重合を行う。 | 立体規則性、分子量、MFR、コモノマー量 |
| 脱ガス・回収 | 未反応モノマーを除去・回収し、必要に応じて触媒残渣を処理する。 | 残留モノマー、臭気、揮発分 |
| 安定化・添加 | 酸化防止剤、中和剤、滑剤、造核剤等を配合する。 | 熱安定性、色調、透明性、成形性 |
| コンパウンド | 必要に応じてタルク、GF、エラストマー、難燃剤、導電材等を二軸押出機で混練する。 | 分散、繊維長、界面接着、フィラー量 |
| ペレット化 | 溶融押出後に冷却・切断してペレット化する。 | MFR、異物、灰分、揮発分、ペレット形状 |
ランダムPPでは少量のエチレン等を共重合して透明性、柔軟性及びヒートシール性を調整する。耐衝撃PPでは、PP重合後にエチレン・プロピレン系ゴム相を形成して低温衝撃性を高める。GF強化PPでは、無水マレイン酸変性PP等の相溶化剤によりガラス繊維とPPの界面接着を改善する場合が多い。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | バンパー、内装、アンダーカバー、ファン、ブラケット | 軽量、成形性、衝撃改質性、コスト | 低温衝撃、熱変形、耐候、塗装、VOC |
| 電気・電子 | 筐体、端子台、絶縁部品、電池周辺部品 | 電気絶縁性、耐薬品性、難燃グレード | UL 94、CTI、発熱、アウトガス |
| 機械部品 | カバー、低荷重ギア、ローラー、ガイド、治具 | 低吸水、軽量、耐薬品性 | クリープ、摩耗、熱膨張、荷重下変形 |
| 医療 | シリンジ、検査容器、遠沈管、医療包装 | 耐薬品性、透明化、滅菌対応品 | 生体適合、抽出物、滅菌方法、変更管理 |
| 食品・包装 | 容器、キャップ、トレー、OPP・CPP、ヒンジ容器 | 食品接触適合、耐水、軽量、耐熱 | 油性食品、電子レンジ、溶出、再生材 |
| 建築・設備 | 配管、ダクト、タンク、内装材 | 耐水・耐薬品、軽量、施工性 | 熱膨張、耐候、難燃、長期クリープ |
| 物流 | コンテナ、パレット、通い箱、結束バンド | 耐衝撃、量産性、リサイクル性 | 低温、紫外線、長期荷重、洗浄薬品 |
| 繊維・衛生 | 不織布、衛生材料、ロープ、カーペット、フィルター | 軽量、疎水性、紡糸性、耐薬品性 | 帯電、耐熱、紫外線、添加剤溶出 |
用途別選定の要点
| 用途 | 推奨するグレード方向 | 優先確認項目 |
|---|---|---|
| ギア・軸受 | 摺動PP、必要に応じてPOM又はPAも比較 | PV値、摩耗、相手材、温度、寸法精度 |
| チューブ・配管 | 押出・パイプ用高粘度PP | 内圧、クリープ、薬液、溶着、使用温度 |
| 筐体 | 耐衝撃、タルク充填又は難燃PP | HDT、反り、外観、UL 94、塗装性 |
| フィルム | OPP、CPP、ヒートシール用ランダムPP | 延伸、シール温度、バリア、摩擦、帯電 |
| コネクタ | GF強化・難燃PP。高耐熱時はPBT、PA又はPPSも比較 | 端子保持、HDT、CTI、難燃、リフロー温度 |
| 食品・医療 | 用途別に法規・品質管理された専用グレード | 適合法規、抽出物、滅菌、変更管理、トレーサビリティ |
難燃性・法規制・注意点
| 項目 | 内容 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 難燃性 | 標準PPは燃えやすく、UL 94ではHB相当となる場合が多い。 | V-0、V-2等は個別グレード、色、厚み及び認証番号を確認する。 |
| RoHS・REACH | PPポリマーだけでなく添加剤、顔料、難燃剤及び再生材を含めて確認する。 | 最新のサプライヤー適合証明及びSVHC情報を確認する。 |
| 食品接触 | 日本の食品用器具・容器包装、FDA又はEU規則等への適合が必要となる。 | 接触食品、温度、時間、使用回数及び着色剤を含む最終構成で確認する。 |
| 医療用途 | 医療専用グレードでは生体適合性、抽出物、滅菌及び変更管理が重視される。 | 一般工業用グレードを根拠なく医療用途へ転用しない。 |
| 加水分解 | 加水分解性結合を持たず、PA、PBT、PET及びPUより加水分解に強い。 | 高温水、蒸気、塩素水及び酸化剤では熱酸化を含めて確認する。 |
| 応力割れ | 炭化水素、燃料、油、塩素系溶剤及び界面活性剤で発生し得る。 | 成形残留応力、締結応力及び薬品接触を組み合わせて試験する。 |
| 吸湿 | 吸水率は低い。 | フィラー、顔料、再生材又は表面結露は成形外観に影響し得る。 |
| 熱劣化 | 高温滞留及び酸素存在下で熱酸化劣化を生じる。 | 酸化防止剤、滞留時間、再生回数、銅接触及び長期温度を管理する。 |
| アウトガス | 添加剤、低分子成分及び残留揮発分が臭気又はフォギングの原因となり得る。 | 車載内装、光学、電子、食品及び医療用途は低VOC専用グレードを検討する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PPとの違い |
|---|---|---|
| ポリエチレン(PE) | 軽量、耐水、耐薬品及び低温特性に優れる。 | PPは一般に剛性、融点及び耐熱性が高い。PEは柔軟性及び低温衝撃で有利な場合がある。 |
| ABS樹脂 | 外観、塗装・めっき性及び耐衝撃性が良い。 | PPは軽量、耐水・耐薬品及びコストで有利。ABSは表面加飾と寸法安定性で有利な場合がある。 |
| ポリアミド(PA) | 強度、耐摩耗性及び耐熱性に優れる。 | PPは低吸水、耐酸・アルカリ、軽量及びコストで有利。PAは荷重部品で有利な場合が多い。 |
| ポリアセタール(POM) | 剛性、摺動、疲労及び寸法安定性に優れる。 | POMは精密ギア・摺動部品向き。PPは軽量、耐薬品、ヒンジ及びコストで有利である。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れる。 | PPは耐薬品、耐アルカリ、低比重及びコストで有利。PCは光学性と衝撃性で有利である。 |
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 電気特性、寸法安定性及び耐熱性に優れる。 | PBTはコネクタ等に適する。PPは加水分解、軽量及びコストで有利である。 |
| 短繊維ガラス強化PP | PPを短繊維GFで強化した複合材料である。 | 標準PPより剛性、強度及びHDTが高いが、比重、反り、異方性及び外観に注意する。 |
| 長繊維強化PP | 長いGFを保持し、衝撃と剛性を両立しやすい。 | 構造用途で標準PPを大幅に上回るが、成形時の繊維長保持及び異方性管理が必要である。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 日本ポリプロ株式会社 | NOVATEC™ PP、WINTEC™ | 射出、フィルム、繊維、自動車及び食品包装向け等のPPを展開する。 |
| 株式会社プライムポリマー | Prime Polypro™ | 自動車、包装、日用品及び工業部品向けのPPを展開する。 |
| 住友化学株式会社 | 住友ノーブレン™ | 成形、包装及び工業用途向けのPPを展開する。 |
| LyondellBasell | Moplen、Pro-fax、Hifax | ホモPP、コポリマー及び自動車用コンパウンド等を世界的に展開する。 |
| SABIC | SABIC® PP、STAMAX™ | 汎用PPから長繊維強化PPまで展開する。 |
| Borealis | BorPure™、Daplen™、Fibremod™ | 包装、配管、自動車及びコンパウンド用途のPPを展開する。 |
| ExxonMobil | Achieve™、Exxtral™ | 包装、射出、自動車用途のPP及びコンパウンドを展開する。 |
ブランド名、供給地域及び製品ラインは変更される場合がある。食品接触、医療、難燃及び自動車認定用途では、最新のメーカー資料と個別グレードの適合証明を確認する必要がある。
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