概要
| 材料名 | ポリスルホン |
|---|---|
| 略記号 | PSU、PSF |
| 英語名 | Polysulfone |
| 分類 | 非晶性スーパーエンプラ、スルホン系樹脂 |
| 構造・主成分 | 芳香族スルホン基を持つ透明耐熱樹脂 |
| 主な用途 | 医療滅菌部品、 水処理膜、食品機器、電気電子部品 |
- ポリスルホンは、ユニオン・カーバイト社で開発された芳香族スルホン基を持つ透明耐熱樹脂である。
- 透明性、耐熱性、耐加水分解性、寸法安定性、電気特性が良い。
- 特に熱水、蒸気、オートクレーブ滅菌に強いため、医療、食品、理化学、電気電子分野で使用される。
- ポリカーボネートより高い耐熱性、耐加水分解性、寸法安定性を有し、蒸気滅菌や熱水環境で使用される部品に適している。
- 連続使用温度はおおむね160℃程度で、オートクレーブ環境にも対応しやすい。
- ただし、ケトン類、塩素系溶剤、芳香族炭化水素には弱く、薬品接触用途では事前確認が必要である。
- 材料選定では、溶剤クラック、一部有機溶剤に注意。
- 価格高い。
- 用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。
特徴
- 透明性、耐熱性、耐加水分解性、寸法安定性、電気特性が良い
- 溶剤クラック、一部有機溶剤に注意。価格高い
- グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
- 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
長所
- 透明性、耐熱性、耐加水分解性、寸法安定性、電気特性が良い
- 用途に応じたグレード展開がある。
- 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
- 耐熱性が高い。
- 透明性がある。
- オートクレーブ滅菌に対応しやすい。
短所
- 溶剤クラック、一部有機溶剤に注意。
- 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
- 価格が高い。
- 耐候性は限定的である。
- 成形温度が高い。
- 吸湿管理が必要である。
- 摩擦・摩耗用途ではPTFE、POM、PEEKなどに劣る場合がある。
- 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工
ポリスルホンの加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。
- 射出成形、押出成形、切削加工が可能である。
- 非晶性樹脂のため成形収縮率は比較的小さい。
- 吸湿によりシルバー、気泡、外観不良が発生しやすいため、成形前の乾燥が必要である。
- 成形温度は高く、金型温度も高めに設定する。
- 成形応力が残ると薬品接触時にクラックが発生することがある。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、板材に使用する |
| 圧縮・注型・硬化成形 | △〜◎ | 熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる |
| 切削加工 | ○ | 丸棒、板材、試作部品、治具に使用する |
構造式

芳香族エーテル・スルホン構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
種類
標準グレード
| 名称 | 標準ポリスルホン |
|---|---|
| 構成 | 芳香族スルホン基を持つ透明耐熱樹脂 |
| 特徴 | 透明性、耐熱性、耐加水分解性、寸法安定性、電気特性が良い |
| 主な用途 | 医療滅菌部品、水処理膜、食品機器、電気電子部品 |
特徴
- 標準的な物性バランスを持つ。
- 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
| 名称 | 強化・改質ポリスルホン |
|---|---|
| 構成 | ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード |
| 特徴 | 剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する |
| 主な用途 | 電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材 |
特徴
- 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
- 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。
代表的な物性値又は機械的性質
| 性質 | 単位 | 標準 | ガラス繊維強化 (30%) |
|---|---|---|---|
| 比重 | 1.24 | 1.45〜1.50 | |
| 引張強さ | MPa | 70〜80 | 110〜150 |
| 引張弾性率 | GPa | 2.4〜2.7 | 6.0〜8.0 |
| 曲げ強さ | MPa | 100〜110 | 160〜220 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.5〜2.8 | 6.5〜9.0 |
| アイゾット衝撃 (ノッチ付) | J/m | 60〜100 | 50〜90 |
| ロックウェル硬さ | M80〜M90 | M95〜M105 | |
| 荷重たわみ温度(1.8MPa) | ℃ | 170〜175 | 180〜190 |
| ガラス転移温度(Tg) | ℃ | 185〜190 | 185〜195 |
| 連続使用温度 | ℃ | 150〜160 | 160〜170 |
| 線膨張係数 | ×10⁻⁵/K | 5〜6 | 2〜3 |
| 成形収縮率 | % | 0.5〜0.7 | 0.2〜0.4 |
| 吸水率(24h) | % | 0.2〜0.4 | 0.1〜0.3 |
耐薬品性
熱水・蒸気に強い。ケトン、塩素系溶剤、芳香族溶剤に注意。
| 薬品・溶剤 | 耐性 |
|---|---|
| 水 | ◎ |
| 熱水 | ◎ |
| 水蒸気 | ◎ |
| 希酸 | ○〜◎ |
| 希アルカリ | ○ |
| 塩類水溶液 | ◎ |
| アルコール | ○ |
| 油類 | ○ |
| 炭化水素 | ○ |
| 芳香族炭化水素 | × |
| ケトン類 | × |
| 塩素系溶剤 | × |
| 強酸化性薬品 | △ |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
ポリスルホンのSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。
| 項目 | SP値(δ) MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| PSU 標準グレード | 22.5 | 一般的なポリスルホン。耐熱水性・耐蒸気性に優れるが、塩素系溶剤には注意。 |
| PSU GF20 (ガラス繊維20%) | 22.8 | 剛性向上。溶剤浸透がやや抑制され、耐薬品性も若干向上。 |
| PSU GF30 (ガラス繊維30%) | 23.0 | 高剛性タイプ。応力クラック低減傾向。高温薬液用途向け。 |
| PSU CF20 (炭素繊維20%) | 22.7 | 導電性・寸法安定性向上。芳香族溶剤には注意。 |
| 難燃グレード PSU | 22.5~23.5 | 難燃剤により耐薬品性が変化する場合あり。 |
| 医療用 PSU | 22.4 | オートクレーブ耐性重視。アルコール耐性は比較的良好。 |
| 高耐熱 PSU | 23.0前後 | 高温蒸気環境に強いが、ケトン系溶剤は注意。 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤・薬品 | SP値(δ) MPa1/2 | PSU耐性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | 高温水・蒸気にも強い。 |
| メタノール | 29.7 | ○ | 短時間は良好。長時間で応力クラック注意。 |
| エタノール | 26.0 | ○ | 消毒用途で一般的。応力存在時は注意。 |
| IPA(イソプロパノール) | 23.5 | △ | SP値が近く膨潤傾向。高温・応力下で注意。 |
| アセトン | 20.0 | × | PSUを強く侵す可能性。 |
| MEK | 19.0 | × | ケトン系は非常に危険。 |
| シクロヘキサノン | 20.3 | × | 溶解・クラック発生リスク大。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | △ | 長時間接触で膨潤。 |
| トルエン | 18.2 | △ | 芳香族溶剤は注意。 |
| キシレン | 18.0 | △ | 長時間接触で白化・クラック可能性。 |
| NMP | 23.1 | × | PSUを溶解しやすい。 |
| DMF | 24.8 | × | 極性溶剤で溶解性高い。 |
| DMAc | 22.7 | × | PSU溶媒として使用される場合あり。 |
| THF | 18.5 | × | 強い膨潤・溶解性。 |
| クロロホルム | 18.7 | × | 塩素系溶剤は危険。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | × | 急速膨潤・クラックの危険。 |
| 10% NaOH | 48付近 | ◎ | アルカリに比較的強い。 |
| 塩酸(希) | 36前後 | ◎ | 希酸には良好。 |
| 硫酸(希) | 35前後 | ○ | 高濃度・高温では注意。 |
| 硝酸 | 41前後 | △ | 酸化作用による劣化注意。 |
| エンジン油 | 16~18 | ○ | 一般的には安定。 |
| シリコーンオイル | 15~17 | ◎ | 影響小さい。 |
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
特に注意する溶剤
ポリスルホン(PSU)は以下の溶剤で特に問題が発生しやすい。
- アセトン
- MEK
- THF
- DMAc
- DMF
- NMP
- ジクロロメタン
- クロロホルム
これらは PSU のSP値に近い、または極性相互作用が強く、短時間でも以下を起こす場合がある。
- 応力クラック
- 白化
- 膨潤
- 溶解
- 強度低下
特に「成形応力が残った透明PSU部品」はアルコール類やIPAでも割れる場合がある。
備考
- 本表は一般的なPSUグレードを基準にした参考値。
- GF・CF強化品では溶剤浸透が低減する場合がある。
- 高温環境では耐溶剤性は大きく低下。
- 実使用時は「温度・濃度・応力・接触時間」を考慮した実機評価が必要。
- 耐溶剤評価は PSUのSP値中央値(δ≒22.8 MPa^1/2) を基準。
実務上の注意
- SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
- 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
- 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。
製法
主に芳香族求核置換重合(SNAr反応)によって製造される。ビスフェノール系化合物とジハロ芳香族スルホンを重縮合させる。

詳細な利用用途
代表用途
- 医療滅菌部品
- 水処理膜
- 食品機器
- 電気電子部品
工業用途
- 電気電子部品
- 自動車部品
- 機械部品
- 耐熱・耐薬品部材
- フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| Solvay Udel | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| BASF Ultrason | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| SABIC | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| Ensinger TECASON | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |