ページ内メニュー
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | シクロオレフィンポリマー |
| 略記号 | COP。環状オレフィン系樹脂全体をCOCと総称した旧来の用法があるが、現在は開環メタセシス重合+水素化で得る単独系をCOP、エチレン等との付加共重合体をCOCとして区別するのが一般的である。 |
| IUPAC | 単一構造ではないため一義的なIUPAC名は定まらない。ノルボルネン系の代表単位は poly[(cyclopentane-1,3-diyl)ethane-1,2-diyl] と表される。原料基準では hydrogenated ring-opening metathesis polymer of norbornene derivatives とも記述される。 |
| 英語名 | Cyclo Olefin Polymer、Cyclic Olefin Polymer、Hydrogenated Ring-Opening Metathesis Polymer(水素化ROMP重合体) |
| 日本語名・別名 | シクロオレフィンポリマー、環状オレフィンポリマー、環状オレフィン樹脂、水素化開環メタセシス重合体、脂環式オレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂(慣用) |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性透明樹脂、環状オレフィン系樹脂(脂環式ポリオレフィン) |
| プラスチック分類 | 光学用・医療用の高機能透明樹脂。用途上はエンジニアリング・プラスチック相当として扱われることが多い(エンプラ)。スーパーエンプラには分類されない。 |
| 化学式又は代表構造 | ノルボルネン系モデル:[-C5H8-CH2-CH2-]n=(C7H12)n。ジシクロペンタジエン(DCPD)系水素化開環重合体のモデルは(C10H16)n。実製品は複数の環状オレフィンの共重合組成であり、単一の分子式では表せない。 |
| CAS No. | 25038-76-0(ポリノルボルネン系として参照される代表例)。商業COPは組成により別番号又は企業秘密扱いとなる場合があるため、個別グレードのSDSで確認する。 |
| 構造・主成分 | ノルボルネン、DCPD、テトラシクロドデセン(TCD)等の環状オレフィンを開環メタセシス重合(ROMP)し、主鎖に残る炭素-炭素二重結合を水素化した飽和脂環式炭化水素ポリマーである。JSRのARTON等では、エステル基等の極性基を持つモノマーが用いられる。 |
| 主な用途 | スマートフォン・車載カメラレンズ、ピックアップレンズ、HUDミラー、導光板、位相差・偏光子保護フィルム、プレフィルドシリンジ、バイアル、マイクロ流路チップ、診断用プレート、医薬品包装フィルム、半導体関連容器、高周波・低誘電部材など |
シクロオレフィンポリマー(COP)は、嵩高い脂環構造を主鎖に持つ非晶性の透明熱可塑性樹脂である。一般には環状オレフィンの開環メタセシス重合と、それに続く主鎖二重結合の水素化によって製造される。炭素と水素のみから成る炭化水素系COPは、吸水率が0.01%未満と極めて低く、高透明、低複屈折、低比重(約1.01)、低誘電率・低誘電正接、低不純物を併せ持つ。
代表的な商業グレードのガラス転移温度は、炭化水素系で約100~165℃、極性基含有系で約170℃前後に分布し、モノマー組成により耐熱性、剛性、流動性を設計できる。光学用途ではアクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート(PC)と、医療・診断用途ではガラス、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィン・コポリマー(COC)と競合する。
一方、芳香族炭化水素、脂肪族・脂環族炭化水素、塩素系溶剤、一部の油脂・界面活性剤と残留応力の組合せで膨潤、溶解又は環境応力割れを生じる場合がある。耐衝撃性はPCより低く、表面エネルギーが低いため接着・印刷・コーティングには表面処理を要することが多い。数値はグレードにより大きく異なるため、実使用ではグレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
特徴
| 評価項目 | 代表的な特徴 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 長所 | 吸水率0.01%未満、全光線透過率約91~92%、低複屈折、低比重、低誘電正接、低溶出・低不純物、高い水蒸気バリア性を併せ持つ。 | 長所は炭化水素系COPの一般傾向である。極性基含有COPでは吸水率がPC並みに増える一方、密着性・接着性は向上する。 |
| 短所 | 炭化水素系溶剤・塩素系溶剤に弱い。PCより耐衝撃性が低く、ノッチ感受性がある。未処理表面は接着・印刷が難しい。紫外線で黄変し得る。 | ESC(環境応力割れ)は成形残留応力、締結、圧入、ウェルドで顕在化しやすい。実部品での応力下薬品試験が必要である。 |
| 外観 | 無着色標準グレードは無色透明ペレットである。成形品は高い透明性と低ヘーズを示す。 | 滞留・過熱・酸素混入により黄変、黒点、シルバーが生じる。光学グレードは異物管理された環境で取り扱う。 |
| 耐熱性 | Tgは約100~165℃(炭化水素系代表範囲)で、高Tgグレードは蒸気滅菌に対応する例がある。 | 連続使用温度はTg・HDTと同一ではない。荷重・寿命・酸化条件で決定する。 |
| 耐薬品性 | 水、酸、アルカリ、低級アルコール、アセトン等の極性溶剤には一般に良好である。 | トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ガソリン、塩素系溶剤では膨潤・溶解する。油脂・洗浄剤+応力でESCを生じる場合がある。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、フィルム成形に適し、微細転写性が良好である。 | Tgに応じて樹脂温度260~330℃程度、金型温度80~140℃程度が必要となる。表面水分・酸素の管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | COPとCOCは同じ環状オレフィン系で性質も近いが、重合法と主鎖構造が異なる別材料である。 | 「COC」と総称された旧文献・旧データシートがあるため、重合法、ブランド、メーカーで区別して比較する。 |
長所
- 吸水率が0.01%未満と樹脂中最小レベルであり、高湿度下でも寸法、屈折率、焦点位置が変化しにくい。
- 光弾性係数が小さく低複屈折であり、成形ひずみによる光学特性の乱れがPCより小さい。
- 比重約1.01と軽量で、ガラス代替による軽量化と破損リスク低減に寄与する。
- 金属イオン・溶出物が少なく、医薬品容器、診断デバイス、半導体関連用途で清浄性を活かせる。
- 比誘電率約2.3、誘電正接が小さく、高周波・ミリ波帯の低損失材料として検討される。
- 水蒸気透過度が低く、医薬品包装・PTPで防湿性を確保しやすい。
短所
- 非極性炭化水素溶剤に弱く、塗料・インキ・接着剤の溶剤選定に制約がある。
- 耐衝撃性、耐疲労性はPC、PPより劣り、ヒンジ・スナップフィット等の大変形用途には不向きである。
- 低表面エネルギーのため、蒸着・コーティング・接着ではプラズマ、コロナ、プライマー等の前処理が必要となる場合が多い。
- 紫外線・熱酸化で黄変し得るため、屋外用途や短波長光源用途では耐光グレードと促進試験が必要である。
- 汎用透明樹脂より高価格で、グレード・素材形状の流通が限定的である。
構造式

COPは、環状オレフィンの二重結合がメタセシス反応で開環し、主鎖に炭素-炭素二重結合と脂環(シクロペンタン環等)が交互に並ぶ開環重合体を経て、主鎖二重結合を水素化した構造を持つ。嵩高い脂環が主鎖の回転を妨げるため高いTgを示し、環構造の非対称性と立体不規則性により結晶化せず非晶性・透明となる。
| 構造要素 | 化学的意味 | 物性への主な影響 |
|---|---|---|
| 脂環(シクロペンタン環等) | ノルボルネン骨格の五員環部分が開環後も主鎖に残る。 | 剛直性、高Tg、低密度、低複屈折(主鎖と環の分極率異方性の相殺)に寄与する。 |
| 飽和炭化水素主鎖 | ROMPで生じた主鎖C=Cを水素化して飽和化したもの。 | 熱・光・酸化安定性を高める。水素化が不十分だと黄変・劣化の起点となる。 |
| 極性基の有無 | 炭化水素系(ZEONEX、ZEONOR等)は極性基を持たない。ARTON等はエステル基等を持つ。 | 炭化水素系は超低吸水・低誘電。極性基含有系は吸水が増えるが密着性・接着性・溶剤溶解性が向上する。 |
| 非晶性 | 立体不規則性と嵩高い環により結晶化しない。 | 高透明、比較的等方的な成形収縮。明確な融点を持たず、Tgを超えると急速に軟化する。 |
| 共重合組成 | DCPD、TCD、ノルボルネン誘導体、メタノテトラヒドロフルオレン等の比率を変える。 | Tg、剛性、流動性、屈折率、靭性を調整する。多環モノマー比率が高いほどTgは上昇する傾向がある。 |
モノマー及び構成単位
| モノマー | 分子式 | COPにおける役割 |
|---|---|---|
| ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン) | C7H10 | 最も単純なモデルモノマー。開環・水素化で[-C5H8-CH2CH2-]単位を与える。 |
| ジシクロペンタジエン(DCPD) | C10H12 | 工業的な主原料の一つ。縮合環を与え、剛性とTgを高める。 |
| テトラシクロドデセン(TCD) | C12H16 | 四環系モノマー。高Tg化・高耐熱化に用いられる代表例である。 |
| 極性基置換ノルボルネン類 | 置換基により異なる | エステル基等を導入し、密着性、溶剤可溶性、位相差特性を付与する(ARTON系の設計思想)。 |
COCはエチレンとノルボルネン類の付加共重合体であり、主鎖にエチレン単位とノルボルナン骨格(二環)がそのまま入る。COPは開環により環が一つ開いた単環(又は縮合環)が主鎖に入る点が異なる。両者の詳細はシクロオレフィン・コポリマー(COC)のページを参照されたい。
種類・代表グレード
代表的なブランドは日本ゼオンのZEONEX(主に光学・医療)とZEONOR(汎用・診断・フィルム)、JSRのARTON(極性基含有・光学フィルム)である。以下の数値はメーカー公表値又は流通資料の代表値であり、保証値ではない。
| 種類の名称 | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 光学成形グレード(例:ZEONEX E48R等) | 炭化水素系COP、Tg約135~140℃級 | 高透明、高アッベ数、低複屈折、湿熱後の光学安定性 | 炭化水素溶剤に弱い、表面硬度はPMMAより低い | スマートフォン・車載カメラレンズ、HUDミラー、f-θレンズ |
| 汎用・診断グレード(例:ZEONOR 1420R等) | 炭化水素系COP、Tg約136℃ | 低吸水、低たんぱく吸着、精密成形性、低蛍光 | 衝撃強度はPCより低い | マイクロ流路、ウェルプレート、光学部品、医療部材 |
| 医療容器グレード(例:ZEONEX 690R、790R、5000等) | 低溶出・高純度管理された炭化水素系COP | ガラス代替、低たんぱく吸着、防湿、各種滅菌への適合例 | USP・ISO 10993適合はグレード別に確認が必要 | プレフィルドシリンジ、バイアル、カートリッジ |
| 高耐熱グレード(Tg約160℃級) | 多環モノマー比率を高めた組成 | 高温成形後・蒸気滅菌後の寸法安定性 | 高い成形温度が必要、脆性に注意 | 耐熱光学部品、オートクレーブ対応医療部材 |
| 低Tg・高伸びグレード | Tgを下げ柔軟性を付与した組成 | 耐衝撃・耐落下性の改善、低温保存用途への適合例 | 耐熱性が低い | 液体窒素保存用容器、柔軟性を要する医療部材 |
| 高流動・微細転写グレード(例:ZEONEX K26R等) | 流動性を重視した分子量設計 | フレネルレンズ等の微細転写、薄肉成形 | 靭性・溶融強度が低下する場合がある | フレネルレンズ、導光板、微細光学素子 |
| フィルムグレード(ZeonorFilm、ARTONフィルム等) | 押出・溶液流延によるフィルム | 等方性・低複屈折、延伸による位相差制御 | 接着・コーティングには表面処理が必要 | 位相差フィルム、偏光子保護フィルム、タッチセンサー、医薬品包装 |
| 極性基含有COP(例:ARTON) | エステル基等を持つ水素化開環重合体、Tg約170℃級 | 高耐熱、密着性・接着性、溶液製膜性 | 吸水率がPC並みに増える | 位相差フィルム、NIRカットフィルター、光学フィルム |
グレード区分別の整理
| グレード区分 | 主な改質方法 | 物性への影響 | 主用途 | 公開状況 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準グレード | モノマー組成と分子量の調整 | Tg約100~165℃、透明、低吸水 | 光学・医療・診断 | 複数メーカーで公開 |
| 一般射出成形グレード | 中~高流動の分子量設計 | 精密転写、低複屈折 | レンズ、成形品 | 公開 |
| 押出成形グレード | 高分子量・高溶融張力設計 | フィルム・シート・ブロー適性 | フィルム、容器 | 公開 |
| 高流動グレード | 低分子量化 | 薄肉・微細転写、靭性低下の可能性 | フレネルレンズ、導光板 | 公開 |
| 耐熱グレード | 多環モノマー比率を増加 | Tg・HDT上昇、脆性増加の傾向 | 耐熱光学、滅菌部材 | 公開 |
| 耐衝撃グレード | 低Tg化・組成調整、エラストマー改質の例 | 伸び・衝撃強度向上、透明性・耐熱性低下の可能性 | 医療容器 | 個別確認 |
| 難燃グレード | 難燃剤配合 | UL 94等級向上の可能性、透明性・純度低下 | 電気電子部品 | データなし(一般化困難) |
| ガラス繊維強化グレード | GF配合 | 剛性・寸法安定性向上、透明性喪失 | 特殊部品 | データなし。標準値へ混在させない |
| 炭素繊維強化グレード | CF配合 | - | - | データなし |
| 導電・帯電防止グレード | 帯電防止剤、導電フィラー | 表面抵抗低下、光学特性低下 | 半導体搬送容器等 | 個別確認 |
| 耐候グレード | 紫外線吸収剤、HALS | 黄変抑制 | 屋外光学部材 | 個別確認 |
| 食品接触用途向けグレード | 添加剤管理 | 適合証明の取得例 | 食品包装、容器 | 個別グレードの証明書確認が必要 |
| 医療用途向けグレード | 低溶出・高純度・変更管理 | USP Class VI、ISO 10993評価実績のある製品が存在 | シリンジ、バイアル、診断 | 個別グレードの証明書確認が必要 |
| 光学グレード | 異物・ゲル低減、低複屈折設計 | 高透過、低ヘーズ | レンズ、光学フィルム | 公開 |
| フィルムグレード | 押出・溶液流延、延伸 | 位相差制御、等方性 | ディスプレイ、包装 | 公開 |
| 発泡グレード | - | - | - | データなし |
成形加工
加工方法別の適性
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 主用途。高流動・微細転写性と低収縮により精密光学部品・医療部品に適する。 | 残留応力(ESC・複屈折の原因)を抑えるため、金型温度を高めにし保圧を最適化する。 |
| 押出成形 | ◎ | フィルム、シート、チューブに適用できる。 | ゲル、ダイライン、酸化黄変を管理する。押出グレードを用いる。 |
| ブロー成形 | ○ | 医療用ボトル・バイアルの実績がある。 | 溶融張力と肉厚均一性をグレードで確認する。 |
| インフレーション成形 | △ | 単独では適用例が限られる。 | 溶融強度不足になりやすく、多層・ブレンド設計を検討する。 |
| Tダイフィルム成形 | ◎ | 光学フィルム、医薬品包装フィルムに用いられる。 | 厚さ精度、配向による位相差、ロール異物を管理する。 |
| 溶液流延製膜 | ○ | 極性基含有COP(ARTON等)で位相差フィルムに用いられる。 | 残留溶媒、乾燥条件を管理する。 |
| 真空成形・圧空成形 | ○ | PTP・ブリスター等の熱成形に適用できる。 | Tg近傍の成形窓が狭いグレードがあり、加熱均一性を管理する。 |
| 圧縮成形 | △ | 試験片・研究用途に限られる。 | 量産では射出・押出が中心である。 |
| 回転成形・発泡成形 | × | 一般的でない。 | - |
| 3Dプリント | △ | 研究例はあるが市販材料は限定的である。 | 反り、層間接着、熱劣化が課題となる。 |
| 切削加工 | ○ | 試作レンズ・治具に適用できる。 | 切削熱による白化、微細クラック、切削油によるESCに注意する。 |
| 溶着 | ○ | 超音波・レーザー・熱板溶着が可能であり、マイクロ流路チップで実績がある。 | 溶着部の残留応力と微細流路の変形を管理する。 |
| 接着 | △ | 未処理では接着力が低い。 | プラズマ、UVオゾン、コロナ処理やプライマーを併用する。 |
| 塗装・印刷 | △ | 低表面エネルギーのため前処理が必要である。 | 芳香族・ケトン系溶剤を含む塗料・インキはESCの原因となる。 |
| めっき・蒸着 | ○ | 反射膜・反射防止膜の蒸着に用いられる。 | 蒸着時の熱とアウトガス、密着性を確認する。 |
| レーザーマーキング | △ | 透明材では吸収が小さい。 | 吸収剤添加又は波長選定が必要である。 |
| 二次成形・インサート成形 | ○ | 光学部品やセンサーでインサート成形が行われる。 | 線膨張差による割れ・剥離、角部応力に注意する。 |
代表的な成形条件
以下は非強化の炭化水素系COP(Tg約100~165℃)の一般的な目安であり、特定グレードの絶対条件ではない。基本的にはTgに応じて温度を設定し、最新のメーカー技術資料を優先する。
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 対象・条件 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 予備乾燥の要否 | - | 推奨 | 光学・医療グレード | 吸水は極小であるが、表面付着水と溶存酸素がシルバー・黄変の原因となる。 |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | 80~110 | Tgより30~50℃低い温度が目安 | 低Tgグレードではペレット融着を避けて低温側とする。 |
| 推奨乾燥時間 | h | 2~4 | 除湿乾燥機又は真空乾燥 | 長時間の空気中高温乾燥は酸化黄変を招く。 |
| ホッパー窒素パージ | - | 推奨 | 光学グレード | 酸素による黄変・黒点の抑制に有効とされる。 |
| シリンダー温度 | ℃ | 250~320 | Tgと流動長に応じて設定 | 高Tgグレードほど高温側となる。 |
| 樹脂温度 | ℃ | 260~330 | 一般的な目安 | 長時間滞留を避ける。 |
| 金型温度 | ℃ | 80~140 | Tgより10~40℃低い温度が目安 | 光学部品では高温側で残留応力・複屈折を低減する。 |
| 射出圧力 | MPa | データなし | 形状・肉厚・流動長依存 | 必要最小限から調整する。 |
| 保圧 | MPa | データなし | 形状依存 | 過大保圧は残留応力とESCの原因となる。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.4~0.7 | 非強化標準グレード | ZEONOR 1420Rの公表範囲は0.5~0.7%である。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 0.4~0.7 | 非強化標準グレード | 非晶性のため比較的等方的である。 |
| 推奨肉厚 | mm | 0.5~4 | 一般成形品 | 光学レンズは設計により厚肉部を含む。 |
| 抜き勾配 | ° | 0.5~1以上 | 一般目安 | 転写性が高いため離型抵抗に注意する。 |
| アニール | - | 必要に応じて | 光学・ESC対策 | Tgより20~30℃低い温度で数時間が出発点である(グレード依存)。 |
COPは熱分解で腐食性ガスを発生する材料ではないが、高温滞留による酸化黄変・黒点を生じやすい。成形停止時は温度を下げるか、PE・PP等の適合パージ材で置換する。光学用途ではスクリュー・シリンダーの清浄度、ホッパーの異物混入、作業環境のクリーン度を管理する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 適用上の特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 超音波溶着 | ○ | マイクロ流路チップ・医療カートリッジで用いられる。 | エネルギーダイレクター形状と溶着部の残留応力を管理する。 |
| レーザー溶着 | ○ | 吸収層・吸収剤との組合せで透明部品同士の接合が可能である。 | 吸収剤の溶出、流路変形を確認する。 |
| 熱板・熱圧着 | ○ | フィルムの熱封止、チップのラミネートに用いられる。 | Tg近傍の温度制御と平坦度を管理する。 |
| 溶剤接着 | △ | 炭化水素系溶剤で表面を溶かして接合できる。 | ESC・白化・流路閉塞のリスクがあり、条件管理が厳しい。 |
| 接着剤接合 | △ | UV硬化型・エポキシ系・ホットメルト等が用いられる。 | 前処理なしでは接着力が低い。接着剤中の溶剤・モノマーによるESCに注意する。 |
| 機械締結・タッピングねじ | △ | 可能であるが脆性に注意する。 | ボス割れ、締付け過多、クリープ緩みを確認する。 |
| コロナ・プラズマ・UVオゾン処理 | ◎ | 表面エネルギーを上げ、接着・印刷・コーティングを改善する。 | 処理効果の経時低下と過処理による表面脆化に注意する。 |
| プライマー処理 | ○ | 反射防止膜・ハードコートの密着向上に用いられる。 | プライマー溶剤によるESCを確認する。 |
| 蒸着 | ○ | 反射防止膜、ミラー、バリア膜を形成できる。 | 基材温度をTg未満に管理する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
比較用の代表値は、Tg約136℃の汎用光学・診断グレードであるZEONOR 1420Rの公表代表値(流通資料による)を用い、下限値・上限値は非強化の炭化水素系COP材料群の代表範囲とした。極性基含有COP(ARTON等)は吸水率等が大きく異なるため別記する。数値は保証値ではなく、グレード、試験規格、試験片厚さ、成形条件により変動する。
物理的性質・光学特性
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 試験条件・規格 | 材料状態・グレード | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.01 | 1.01 | 1.02 | ASTM D792、23℃ | 1420R代表、炭化水素系範囲 | A | 主要透明樹脂の中で最も軽い部類である。 |
| 比重 | 無次元 | 1.01 | 1.01 | 1.02 | ASTM D792、23℃ | 1420R代表 | A | - |
| 吸水率・24時間 | % | データなし | データなし | 0.01 | ASTM D570、23℃水中 | 炭化水素系、絶乾から浸漬 | A | メーカー公表は「0.01%未満」。0で代用しない。極性基含有系は約0.2~0.4%の例がある(C)。 |
| 飽和吸水率 | % | データなし | データなし | データなし | - | - | - | 実質的に極めて小さいが一般化可能な数値を確認できない。 |
| 水蒸気透過度 | g/(m²・24h) | 0.30 | データなし | データなし | JIS Z 0208、厚さ300µm | 1420R代表 | B | 試験温湿度条件は原資料で確認する。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | データなし | 0.5 | 0.7 | ASTM D955 | 1420R | B | 範囲表記のみ公表。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | データなし | 0.4 | 0.7 | - | 材料群目安 | C | 非晶性で比較的等方的である。 |
| 線膨張係数・流動方向 | 10⁻⁵/K | 7 | 6 | 7 | ASTM D696 | 1420R代表 | B | PC・PMMAと同等水準である。 |
| 屈折率 | 無次元 | 1.53 | 1.51 | 1.54 | ASTM D542、nD | 1420R代表、ARTONを含む範囲 | B | - |
| アッベ数 | 無次元 | データなし | データなし | データなし | - | 光学グレード | C | 光学グレードでは約56の例がある。PCの約30より大きく色収差が小さい。 |
| 全光線透過率 | % | 92 | 91 | 92 | ASTM D1003、厚さ3mm | 1420R代表 | A | 反射損失を含む値である。 |
| 光弾性係数 | 10⁻¹²/Pa | データなし | データなし | データなし | - | - | C | PCの約1/10程度と小さいとされる。グレード資料で確認する。 |
| 色調・外観 | - | 無色透明 | - | - | 目視 | 無着色標準 | A | 滞留・過熱で黄変する。 |
機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 試験条件・規格 | 材料状態・グレード | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 引張強さ・降伏 | MPa | データなし | 55 | 75 | ASTM D638 | 材料群範囲 | B | E48Rの降伏強さは72MPaの例がある。 |
| 引張強さ | MPa | 61 | 55 | 75 | ASTM D638、23℃ | 1420R代表 | B | 降伏・破断の区分は原資料で明示されていない。 |
| 引張弾性率 | GPa | 2.4 | 2.1 | 2.6 | ASTM D638 | 1420R代表 | B | 原資料2400MPaを換算。 |
| 引張破断伸び | % | 20 | 3 | 100 | ASTM D638 | 1420R代表、範囲は低Tg系を含む | C | グレード差が大きい。 |
| 曲げ強さ | MPa | 94 | 80 | 110 | ASTM D790 | 1420R代表 | B | E48Rは106MPaの例がある。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.2 | 2.1 | 2.6 | ASTM D790 | 1420R代表 | B | 原資料2200MPaを換算。引張弾性率と同一視しない。 |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 3 | 2 | 5 | ASTM D256(原資料表記) | 1420R代表 | C | ASTMは通常J/m表記であり、単位換算条件が不明確である。ISO 180値とは単純比較しない。 |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き(ASTM) | J/m | 21 | データなし | データなし | ASTM D256 | E48R | C | 原資料0.206J/cmを換算。 |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチなし | kJ/m² | データなし | データなし | データなし | - | - | - | - |
| ロックウェル硬度 | - | データなし | データなし | データなし | - | - | - | 表面硬度はPMMAより低い傾向とされる。 |
| 動摩擦係数・比摩耗量 | - | データなし | データなし | データなし | - | - | - | 摺動用途は想定されない材料である。 |
熱的性質・燃焼性
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 試験条件・規格 | 材料状態・グレード | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | 136 | 100 | 165 | DSC | 1420R代表、炭化水素系範囲 | A | 極性基含有系(ARTON)は約171℃の報告がある。 |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | - | 非晶性 | A | 明確な融点を持たない。 |
| 荷重たわみ温度・1.80MPa | ℃ | 136 | 90 | 160 | ASTM D648 | 1420R代表(流通資料) | C | Tgと同値の記載であり、試験片・アニール条件の確認が必要である。 |
| 荷重たわみ温度・0.45MPa | ℃ | データなし | データなし | データなし | - | - | - | - |
| 連続使用温度 | ℃ | 一般化困難 | データなし | データなし | - | - | - | Tgより十分低く設定し、荷重・寿命・酸化・光で決定する。 |
| MFR | g/10min | 20 | データなし | データなし | JIS K 6719、280℃、21.18N | 1420R代表 | B | E48Rは21~29(280℃、2.16kg)。グレード差が大きい。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | データなし | データなし | データなし | - | - | - | - |
| UL 94燃焼性 | - | HB | - | - | UL 94 | グレード・厚さ・色依存 | C | 材料群全体の認証ではない。個別UL登録で確認する。 |
| 限界酸素指数 | % | データなし | データなし | データなし | - | - | - | 炭化水素系であり一般に燃えやすい。 |
| 燃焼時の主な発生ガス | - | CO₂、CO、水 | - | - | - | 炭化水素系 | B | ハロゲン・窒素・硫黄を基材に含まない。 |
電気的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 試験条件・規格 | 材料状態・グレード | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 比誘電率・1MHz | 無次元 | 2.3 | 2.2 | 2.4 | ASTM D150相当 | 炭化水素系 | B | 低吸水のため吸湿による変化が小さい。 |
| 誘電正接・1MHz | 無次元 | データなし | データなし | 0.001 | - | 炭化水素系 | C | 極めて小さい値が報告される。高周波帯はグレード資料で確認する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | データなし | 1×10¹⁶ | データなし | - | 炭化水素系 | C | - |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | データなし | データなし | データなし | - | - | - | - |
| 耐トラッキング性・CTI | V | データなし | データなし | データなし | - | - | - | 電気部品用途では認定グレードを確認する。 |
GF強化、CF強化、難燃等の改質COPは一般化可能な公開データを確認できないため、標準グレードとの比較表には含めない。短時間の引張強さ等をそのまま設計許容応力として用いず、長期荷重部品ではクリープ・応力緩和試験で確認する。
比較用5段階評価
5:非常に優れる、4:優れる、3:標準的、2:やや劣る、1:劣る、0:評価不能又はデータなし。非強化の炭化水素系COPの一般傾向による概略評価である。
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 約55~75MPaで透明非晶性樹脂として標準的である。 |
| 剛性 | 3 | 曲げ弾性率約2.1~2.6GPaで、PMMA・COCよりやや低い。 |
| 衝撃強度 | 2 | PCより大幅に低く、ノッチ感受性がある。 |
| 耐熱性 | 4 | Tg約100~165℃。高Tgグレードは蒸気滅菌に対応する例がある。 |
| 低温特性 | 3 | 非晶性ガラス状であり、低温では脆性が増す。低Tg・高伸びグレードで改善例がある。 |
| 耐薬品性 | 3 | 酸・アルカリ・アルコール・ケトンに良好であるが、炭化水素・塩素系溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 2 | 屋外・紫外線では黄変し得るため安定化が必要である。 |
| 耐加水分解性 | 5 | 加水分解性結合を持たない(炭化水素系)。 |
| 寸法安定性 | 5 | 超低吸水・非晶性・低収縮である。 |
| 低吸水性 | 5 | 24時間吸水率0.01%未満である。 |
| 摺動性 | 1 | 摺動用途向けの材料ではない。 |
| 耐摩耗性 | 2 | 表面は傷付きやすく、光学用途ではハードコートを検討する。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 低誘電率・低誘電正接・高体積抵抗率である。 |
| 難燃性 | 1 | 標準材はHB相当が多い。 |
| 透明性 | 5 | 全光線透過率約92%、低ヘーズ、低複屈折である。 |
| 成形加工性 | 4 | 高流動・精密転写であるが、乾燥・酸素・滞留管理が必要である。 |
| 切削加工性 | 3 | 可能であるが白化・微細クラックに注意する。 |
| 接着性 | 1 | 未処理表面の接着は困難である。 |
| リサイクル性 | 2 | 熱可塑性であるが回収・分別の基盤が限定的である。 |
| 価格優位性 | 1 | 汎用透明樹脂より高価格である。 |
耐薬品性
炭化水素系COPは非極性の飽和炭化水素ポリマーであり、極性の大きい水系薬品、酸、アルカリ、低級アルコール、ケトンには一般に安定である。一方、SP値が近い芳香族・脂肪族・脂環族炭化水素及び塩素系溶剤には膨潤・溶解する。非晶性樹脂であるため、無応力浸漬で問題がなくても、残留応力・外部応力下では油脂、界面活性剤、溶剤蒸気で環境応力割れを生じる場合がある。以下は非強化標準グレード・無応力・23℃付近を基準とした目安である。
| 薬品分類 | 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水・水道水 | - | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | 超低吸水で寸法変化も極小である。 |
| 温水・熱水 | 温水 | - | 60~90℃ | 長時間 | 無 | ○ | 応力緩和、白化 | Tgと残留応力に依存する。 |
| 水蒸気 | 飽和蒸気 | - | 121℃ | 繰返し滅菌 | 無 | △ | 変形、白化、割れ | 高Tgグレードで蒸気滅菌適合例がある。グレード別に確認する。 |
| 無機酸 | 塩酸 | 10~35% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | - |
| 無機酸 | 硫酸 | 10~50% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | 濃硫酸・高温では別評価とする。 |
| 酸化性酸 | 硝酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 酸化・黄変 | 高濃度では△~×となる。 |
| 有機酸 | 酢酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | 氷酢酸は別評価とする。 |
| 強アルカリ | 水酸化ナトリウム・水酸化カリウム | 10~40% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | 加水分解性結合を持たない。 |
| 弱アルカリ | アンモニア水 | 10% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | - |
| 低級アルコール | メタノール・エタノール | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | - |
| 低級アルコール | IPA | 70~100% | 23℃ | 清拭・浸漬 | 有 | ○ | 応力割れ | 高残留応力部品で繰返し清拭を確認する。 |
| 多価アルコール | グリセリン・エチレングリコール | 100% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | - |
| 高級アルコール | MMB(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール) | 100% | 23℃ | 短時間 | 有 | △ | 膨潤・応力割れの可能性 | データ不足。実浸漬試験を行う。 |
| ケトン | アセトン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 白化・応力割れの可能性 | 応力下では△となる場合がある。 |
| ケトン | メチルエチルケトン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤・白化 | SP値が近い。 |
| エステル | 酢酸エチル・酢酸ブチル | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤・軟化・割れ | インキ・接着剤溶剤として注意する。 |
| エーテル | THF・ジエチルエーテル | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 膨潤・溶解 | 不適。 |
| 芳香族炭化水素 | トルエン・キシレン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 溶解・著しい膨潤 | 代表的な弱点である。 |
| 脂肪族炭化水素 | n-ヘキサン・n-ヘプタン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 膨潤・軟化・割れ | - |
| 脂環族炭化水素 | シクロヘキサン・デカリン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 溶解 | COPの良溶媒として用いられる。 |
| ハロゲン化炭化水素 | ジクロロメタン・クロロホルム | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 膨潤・溶解 | 洗浄用途に不適。 |
| 燃料 | ガソリン・灯油 | 市販品 | 23℃ | 接触 | 無 | × | 膨潤・溶解・割れ | - |
| 潤滑油・作動油 | 鉱物油 | 市販品 | 23℃ | 長時間 | 有 | △ | 膨潤・ESC | 基油・添加剤・温度で大きく変わる。 |
| ブレーキ液 | グリコールエーテル系 | 市販品 | 23℃ | 長時間 | 有 | △ | 膨潤・ESC | データ不足。実液で評価する。 |
| 冷却液 | エチレングリコール水溶液 | 50% | 23~80℃ | 長時間 | 無 | ○ | 高温で応力割れ | 防錆剤を含めて評価する。 |
| 界面活性剤 | 中性洗剤 | 1~5% | 23~40℃ | 洗浄 | 有 | ○ | 応力割れ | 香料・溶剤成分に注意する。 |
| 酸化剤 | 過酸化水素 | 3~30% | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 酸化・黄変 | VHP滅菌適合例がある。高濃度・高温は実測する。 |
| 次亜塩素酸塩 | 次亜塩素酸ナトリウム | 0.1~1% | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 表面酸化・黄変 | 繰返し回数を確認する。 |
| 塩水・海水 | 塩化ナトリウム水溶液 | 3.5% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 通常は影響小 | - |
| 食品油 | 植物油 | 100% | 23~60℃ | 長時間 | 有 | △ | 膨潤・ESC・白化 | 油種・温度・残留応力に依存する。 |
評価基準:◎一般的な条件で影響が小さい、○概ね使用可能であるが条件確認が必要、△膨潤・軟化・強度低下・変色・応力割れ等に注意、×溶解・著しい膨潤・割れ等の可能性が高い。上表は炭化水素系COPの一般傾向であり、極性基含有COP(ARTON等)は溶剤への溶解性が異なる。実使用ではグレード、温度、濃度、荷重、応力、時間、薬品純度を確認する。
SP値(溶解度パラメータ)
| 対象 | SP値 δ | 単位 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| シクロオレフィンポリマー(炭化水素系) | 16.8~18.2 | MPa1/2 | C | 脂環式飽和炭化水素ポリマーとしての目安。組成・算出法で変動する。 |
| 比較計算用代表値 | 17.5 | MPa1/2 | D | 一次スクリーニング用の便宜値であり、確定値ではない。 |
SP値が近い溶剤ほど非晶相へ浸透しやすいが、SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。分子量、Tg、自由体積、溶剤分子径、混合溶剤、温度、時間、残留応力、添加剤抽出及び環境応力割れが影響する。より詳細な評価にはハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いる方法が有効であり、耐薬品性スクリーニングやHSP計算も参照されたい。各種樹脂のSP値はホモポリマー・樹脂のSP値にまとめている。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品・溶剤 | SP値 δ | 単位 | SP値差 | SP判定 | 実務評価 | 実務上の補正 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | MPa1/2 | 30.4 | ◎ | ◎ | 熱水・蒸気は温度とTgで別評価する。 |
| グリセリン | 36.1 | MPa1/2 | 18.6 | ◎ | ◎ | 一般に良好である。 |
| メタノール | 29.7 | MPa1/2 | 12.2 | ◎ | ◎ | 一般に良好である。 |
| エタノール | 26.0 | MPa1/2 | 8.5 | ◎ | ◎ | 一般に良好である。 |
| DMF | 24.8 | MPa1/2 | 7.3 | ○ | ○ | 極性溶剤であり比較的安定とみられる。実測推奨。 |
| IPA | 23.5 | MPa1/2 | 6.0 | ○ | ○ | 応力下の繰返し清拭を確認する。 |
| NMP | 23.1 | MPa1/2 | 5.6 | ○ | ○ | 長期接触・高温では実測する。 |
| 酢酸 | 21.4 | MPa1/2 | 3.9 | △ | △ | 希薄水溶液では良好である。 |
| MMB | 21.0 | MPa1/2 | 3.5 | △ | △ | SP値は推定(D)。エーテル結合を持つため実測する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | MPa1/2 | 2.7 | △ | × | 高拡散性で実際は溶解・膨潤しやすい。 |
| アセトン | 20.0 | MPa1/2 | 2.5 | △ | ○ | 実務では概ね使用可能とされるが、応力下は白化に注意する。 |
| メチルエチルケトン | 19.0 | MPa1/2 | 1.5 | × | △ | 極性を持つため溶解までは至りにくいとみられる(推測)。膨潤・白化に注意する。 |
| クロロホルム | 19.0 | MPa1/2 | 1.5 | × | × | 溶解する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | MPa1/2 | 1.1 | × | △ | 短時間接触の目安。長時間・応力下では×として扱う。 |
| テトラヒドロフラン | 18.5 | MPa1/2 | 1.0 | × | × | 溶解又は著しい膨潤。 |
| トルエン | 18.2 | MPa1/2 | 0.7 | × | × | 溶解又は著しい膨潤。 |
| キシレン | 18.0 | MPa1/2 | 0.5 | × | × | 溶解又は著しい膨潤。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | MPa1/2 | 0.7 | × | × | 良溶媒である。 |
| n-ヘプタン | 15.3 | MPa1/2 | 2.2 | △ | × | 膨潤・ESCにより実務上は×である。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | MPa1/2 | 2.6 | △ | × | 膨潤・ESCにより実務上は×である。 |
上表はCOPの代表SP値を17.5MPa1/2として計算した一次スクリーニングである。評価基準は、◎:非常に良好、○:概ね良好、△:注意が必要、×:不適である。SP値差が大きくても、応力下ではESCを生じる場合がある。
環境応力割れ(ESC)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 感受性 | 非晶性透明樹脂として一般的な水準のESC感受性を持つ。無応力浸漬で問題がない薬品でも、応力下でクレーズ・割れを生じ得る。 |
| 問題となりやすい薬品 | 炭化水素系溶剤とその蒸気、油脂、潤滑油、界面活性剤入り洗浄剤、IPA(高応力時)、接着剤・インキ・コーティング液の溶剤、可塑剤を含む軟質PVCとの接触。 |
| 残留応力の影響 | ゲート近傍、ウェルド、肉厚急変部、インサート周囲に集中しやすい。偏光観察で可視化できる。 |
| 成形条件の影響 | 低金型温度、過大保圧、高速充填は残留応力を増大させる。 |
| ノッチ・温度の影響 | 鋭角部・傷は割れの起点となる。温度上昇は溶剤拡散を促進し割れを早める。 |
| 推奨アニール条件 | Tgより20~30℃低い温度で数時間を出発点とし、寸法変化と光学特性を確認して決定する(グレード依存)。 |
| 実部品での確認方法 | 1/4楕円治具又は定ひずみ曲げ試験で臨界ひずみを求め、実薬品・実温度で割れ発生時間を評価する。 |
製法

COPは、精製した環状オレフィンモノマーを炭化水素溶媒中でメタセシス触媒により開環重合し、得られた不飽和開環重合体を水素化触媒と水素で飽和化して製造する。代表反応式(ノルボルネン系モデル)は次のとおりである。
- 開環メタセシス重合:n C7H10(ノルボルネン) → [-CH=CH-C5H8-]n
- 水素化:[-CH=CH-C5H8-]n + n H2 → [-CH2-CH2-C5H8-]n

| 製造段階 | 主な管理項目 | 製品特性への影響 |
|---|---|---|
| 原料精製 | DCPD・TCD・ノルボルネン類の純度、水分、酸素、極性不純物 | 触媒活性、分子量、ゲル、色調を安定化する。 |
| 開環メタセシス重合 | 触媒種(W・Mo・Ru系等)、助触媒、分子量調整剤(α-オレフィン等)、温度、モノマー組成 | 分子量・分子量分布、共重合組成、Tgを決定する。 |
| 水素化 | 水素化触媒(Ni・Pd系等)、水素圧、温度、水素化率 | 耐熱黄変性、耐光性、酸化安定性を左右する。 |
| 触媒除去・精製 | ろ過、吸着、洗浄 | 金属残渣、異物、溶出物を低減し、医療・光学・半導体用途の清浄性を確保する。 |
| 脱溶媒・脱揮 | 溶媒・未反応モノマー・オリゴマーの除去 | 揮発分、臭気、アウトガス、成形時シルバーに影響する。 |
| 配合・押出・造粒 | 酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤等の配合、押出、ペレット化 | 熱安定性、耐光性、離型性を調整する。医療・光学グレードは添加剤を最小限とする場合がある。 |
| 品質検査・包装 | Tg、MFR、透過率、YI、異物・黒点、揮発分 | ロット間ばらつきを管理する。クリーン包装が用いられる。 |
強化材・難燃剤・フィラーを配合するコンパウンドは一般的ではなく、COPは主に無充填の透明材料として使用される。触媒系、溶媒、反応条件は各社の独自技術であり、上記は代表的な工程である。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 代表用途 | 採用理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 光学・カメラ | スマートフォンカメラレンズ、車載カメラレンズ、ピックアップレンズ、f-θレンズ、AR・VR用光学素子 | 低吸水による焦点・屈折率安定性、低複屈折、高アッベ数、精密転写 | 成形ひずみ、表面傷、耐熱、反射防止膜の密着 |
| ディスプレイ・フィルム | 位相差フィルム、偏光子保護フィルム、タッチセンサー基材、導光板、NIRカットフィルター | 等方性・低複屈折、延伸による位相差制御、低吸湿寸法変化 | 接着・コーティングの前処理、溶剤による白化 |
| 自動車 | 車載カメラ、HUDミラー、センサーカバー、LiDAR関連光学部品 | 湿熱後の光学安定性、軽量性 | 高温高湿、紫外線、ヒートサイクル、燃料・洗浄剤との接触 |
| 医療・医薬 | プレフィルドシリンジ、バイアル、カートリッジ、薬液容器、輸液部材 | ガラス代替(破損しにくい)、低溶出、低たんぱく吸着、防湿、各種滅菌への適合例 | グレード別の生物学的安全性、薬剤適合性、滅菌後物性、脂溶性薬剤・油性製剤 |
| 診断・バイオ | マイクロ流路チップ、PCRプレート、ウェルプレート、キュベット、細胞培養容器 | 低自家蛍光、高透過、低吸水、精密成形、溶着性 | 表面親水化処理、たんぱく吸着、溶着部の流路変形 |
| 医薬品包装 | PTP・ブリスター用防湿フィルム(多層) | 高い水蒸気バリア、透明性、熱成形性 | 酸素バリアは限定的であり多層構成で補う。 |
| 電気・電子 | 高周波・ミリ波用基板材料、アンテナ部品、レドーム、絶縁フィルム | 低誘電率・低誘電正接、低吸水による特性安定性 | 難燃性、耐熱性、金属との密着 |
| 半導体 | ウエハ・レチクル関連容器、薬液接触部材、観察窓 | 低金属溶出、低アウトガス、透明 | 帯電、溶剤洗浄、パーティクル発生 |
| 食品・包装 | 防湿包装フィルム、PE・PPとの共押出層 | 防湿性、剛性付与、透明性 | 油脂によるESC、食品衛生法適合グレードの確認 |
用途別選定の目安
以下は非強化の炭化水素系COPとしての一般的適性である。実使用ではグレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、法規制を確認する。
| 用途 | 適性 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・ブッシュ・摺動板 | × | 摺動性・靭性・耐摩耗性が不足する。 | POM、PA、PEEK等を選定する。 |
| ねじ・ボルト・ナット | × | 脆性・クリープ・ESCの懸念がある。 | 金属又は高靭性樹脂を選定する。 |
| ポンプ・バルブ部品 | △ | 水系・薬液系の透明部品では使用例がある。 | 炭化水素系流体、応力、圧力サイクルを確認する。 |
| シール・ガスケット・Oリング | × | 剛性樹脂でありシール材には不適である。 | エラストマーを選定する。 |
| チューブ・ホース・配管 | △ | 透明性・低溶出が必要な医療・分析用途で検討例がある。 | 柔軟性不足、キンク、継手部ESCを確認する。 |
| タンク・ボトル・容器 | ○ | バイアル、薬液容器、診断容器に適する。 | 落下衝撃、脂溶性薬剤、滅菌を確認する。 |
| フィルム・シート | ◎ | 光学フィルム、防湿包装フィルムの主要用途である。 | 接着・印刷の前処理、延伸位相差を管理する。 |
| 電気コネクタ・ソケット | △ | 低誘電用途では検討されるが、難燃性・靭性に課題がある。 | UL認証、端子圧入時の割れを確認する。 |
| 絶縁部品 | ○ | 低誘電・高絶縁・低吸水である。 | 難燃性・耐熱性を確認する。 |
| 電子部品筐体・一般筐体 | △ | 透明筐体には使用可能であるが、PC・PMMAの方が一般的である。 | 耐衝撃、ねじ締結、難燃性を確認する。 |
| 透明カバー・レンズ | ◎ | 主要用途である。 | 傷付き、紫外線黄変、表面処理を確認する。 |
| 自動車内装 | △ | 表示・光学部品に限定される。 | 芳香剤・可塑剤移行・洗浄剤によるESCを確認する。 |
| 自動車外装・屋外部品 | △ | センサーカバー等で検討されるが耐候安定化が必要である。 | 促進耐候試験を行う。 |
| エンジンルーム部品・燃料系部品 | × | 耐熱・耐燃料性が不足する。 | - |
| 食品機械部品 | △ | 透明観察部品には検討可能である。 | 油脂・洗浄剤・熱水、食品衛生法適合を確認する。 |
| 医療機器部品・滅菌部品 | ◎ | シリンジ、バイアル、診断デバイスの主要材料の一つである。 | グレード別の適合証明と滅菌後評価が必要である。 |
| 半導体製造装置・真空装置部品 | ○ | 低溶出・低アウトガスを活かせる。 | 真空中アウトガス、プラズマ耐性、帯電を確認する。 |
| 建築部材 | × | 価格・耐候・難燃の点で一般的でない。 | - |
| 接着剤・塗料・コーティング | △ | 極性基含有COP等は溶液コーティングの研究例がある。 | 溶剤は炭化水素系となり、下地のESCに注意する。 |
| 複合材料マトリックス | × | 一般的でない。 | - |
寸法精度・設計特性
| 設計項目 | 一般的傾向 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| 成形収縮・異方性 | 約0.4~0.7%で比較的小さく等方的である。 | 光学面は配向・残留応力による複屈折を考慮し、ゲート位置を最適化する。 |
| 反り | 非晶性のため反りは比較的小さい。 | 肉厚差、非対称冷却を避ける。 |
| 吸湿による寸法変化 | 極めて小さい(炭化水素系)。 | 極性基含有系では吸湿変化を考慮する。 |
| 温度による寸法変化 | 線膨張係数約6~7×10⁻⁵/K。 | 金属・ガラスとの接合では熱膨張差による応力を考慮する。 |
| クリープ | Tg近傍では急速に増大する。 | 短時間物性値をそのまま設計許容応力として使用しない。 |
| ウェルド強度 | ウェルドで強度・光学特性が低下し得る。 | 光学有効範囲外にウェルドを配置する。 |
| ノッチ・応力集中 | ノッチ感受性があり脆性破壊しやすい。 | R0.5mm以上の角R、急激な肉厚変化の回避を基本とする。 |
| インサート・ねじ・圧入 | 周辺割れ・ESCが生じやすい。 | 圧入代を小さくし、金属インサートは予熱し、締結部は座面を広く取る。 |
| 安全率 | 短時間物性・無応力の耐薬品データは設計に不十分である。 | 温度・薬品・時間を含めた長期試験に基づき設定する。 |
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の要因 | 成形条件側の要因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| シルバーストリーク | 表面付着水、揮発分 | 高樹脂温度、急減圧、背圧不足 | 乾燥、窒素パージ、背圧・射出速度調整 |
| ガス焼け | 揮発分・分解生成物 | エアトラップ、高速充填、ベント不足 | ベント追加、速度多段化 |
| 黒点・異物 | 劣化樹脂、汚染 | 滞留、デッドスポット、パージ不足 | 設備清掃、滞留時間短縮、クリーン環境 |
| 黄変 | 酸化防止不足、水素化不十分 | 高温長時間滞留、酸素混入 | 温度低減、窒素パージ、滞留管理 |
| フローマーク・ジェッティング | - | 低金型温度、ゲート形状、初期速度過大 | 金型温度上昇、ゲート改善、速度多段化 |
| ウェルドライン | - | 低樹脂温度・低速・ベント不足 | 温度・速度・ゲート位置の最適化 |
| ヒケ・ボイド | - | 保圧不足、厚肉、ゲート早期固化 | 肉厚均一化、保圧時間延長 |
| 複屈折・光学ひずみ | 分子配向 | 高せん断、低金型温度、過大保圧 | 高金型温度、低せん断、アニール |
| クラック・クレーズ | ESC感受性、脆性 | 残留応力、離型抵抗、溶剤接触 | 角R、抜き勾配、アニール、離型剤・洗浄剤の見直し |
| 離型不良 | 高転写性 | 抜き勾配不足、冷却不足 | 勾配確保、表面処理、冷却調整 |
| バリ | 高流動グレード | 過大射出圧力、型締不足 | 圧力・温度低減、パーティング面整備 |
| ダイライン・ゲル(押出) | 酸化ゲル、異物 | ダイ滞留、フィルター不良 | ろ過精度向上、ダイ清掃、温度管理 |
劣化・故障モードと注意点
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 環境応力割れ | 炭化水素・油脂・界面活性剤と応力 | 圧入、締結、ウェルド、鋭角部 | クレーズ、白化、破断 | 低応力設計、アニール、薬品変更 | 定ひずみ・定荷重下の実薬品試験 |
| 膨潤・溶解 | 炭化水素・塩素系溶剤 | 高温、長時間、薄肉 | 寸法増加、軟化、白化 | 溶剤選定、バリア層 | 浸漬後の質量・寸法・強度保持率 |
| 熱酸化劣化 | 残存二重結合・高温酸素 | 成形時滞留、長期高温 | 黄変、脆化、透過率低下 | 窒素パージ、温度管理、耐熱グレード | 熱老化後の色差・透過率・引張 |
| 紫外線劣化 | 光酸化 | 屋外、短波長光源 | 黄変、ヘーズ増加、表面クラック | 耐光グレード、UVカットコート | キセノンアーク促進耐候試験 |
| 熱水・蒸気による変形 | Tg近傍での応力緩和 | 繰返し蒸気滅菌 | 変形、白化、割れ | 高Tgグレード、応力低減 | 実滅菌条件の繰返し試験 |
| 放射線劣化 | γ線・電子線 | 高線量滅菌 | 黄変、透過率低下 | 線量最適化、耐放射線グレード | 照射前後の色差・透過率・強度 |
| クリープ破壊 | 長期静荷重 | 高温、締結部 | 変形、締結力低下、破断 | 許容応力低減、肉厚設計 | 使用温度でのクリープ試験 |
| 添加剤抽出・溶出 | 低分子成分の移行 | 脂溶性薬剤、油脂、高温 | 汚染、薬剤品質への影響 | 医療グレード選定 | 溶出試験、GC-MS、LC-MS、ICP-MS |
| アウトガス | 残留溶媒・低分子量成分 | 真空、高温 | 光学面曇り、汚染 | 低揮発グレード、予備ベーク | TML・CVCM、TD-GC/MS |
| 摩耗・傷 | 低表面硬度 | 清拭、接触摺動 | ヘーズ増加、光学性能低下 | ハードコート | テーバー摩耗、鉛筆硬度、ヘーズ測定 |
推奨確認試験
| 試験 | 推奨する確認条件の例 | 主な判定項目 |
|---|---|---|
| 実薬品浸漬試験 | 実濃度・使用上限温度で23℃・7日を初期評価とし、必要に応じ30日以上 | 質量・寸法変化、外観、透過率、ヘーズ、引張保持率 |
| 環境応力割れ試験 | 0.2~1.0%程度の定ひずみ曲げ治具で実薬品に暴露 | 臨界ひずみ、クレーズ・割れ発生時間 |
| 高温高湿試験 | 85℃・85%RHで500~1000h等 | 寸法、光学特性、コーティング密着 |
| 熱老化試験 | 使用上限温度及び+10~20℃で100、500、1000h | 色差、YI、透過率、引張保持率 |
| 紫外線促進耐候試験 | キセノンアーク等、使用環境に応じた照射量 | 色差、ヘーズ、表面クラック |
| ヒートサイクル試験 | -40℃~使用上限温度の繰返し | インサート周囲の割れ、剥離、寸法 |
| 滅菌耐久試験 | EO、γ線、電子線、VHP、蒸気の各条件を予定回数 | 物性・透明性・溶出物・寸法 |
| 溶出試験 | 日本薬局方、USP、ISO 10993等の該当条件 | 溶出物量、生物学的安全性 |
| アウトガス試験 | 真空又は加熱条件でのTML・CVCM測定 | 揮発成分、光学面汚染 |
| 溶着強度・接着性試験 | 実溶着条件、実表面処理条件 | 破断強度、剥離モード、耐久後保持率 |
| 実成形試験・実部品耐久試験 | 量産金型・量産条件で、温度・薬品・荷重を組み合わせる | 外観、寸法、複屈折、機能、寿命 |
法規制・認証
法規制及び認証は材料群全体ではなく、メーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、使用温度及び接触条件ごとに確認する必要がある。
| 規制・認証 | 材料群としての扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・ELV | 適合グレードが存在する | 個別グレードの適合宣言を確認する。 |
| REACH・SVHC | 一般に対応可能 | 最新候補物質リストとSDSを確認する。 |
| PFAS関連規制 | 樹脂骨格にフッ素を含まない | 離型剤、加工助剤、表面処理剤を個別に確認する。 |
| TSCA・Proposition 65 | 販売地域別に個別確認 | 添加剤・残留物を含めて確認する。 |
| EU食品接触規則・FDA食品接触 | 適合グレードが存在する場合に限る | 食品種、温度、時間、移行試験、該当条項を確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 個別グレードで確認 | 樹脂区分、添加剤、使用条件、確認書を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 一部医療グレードで評価実績 | 日本ゼオンはZEONEX 5000、690R、790R、ZEONOR 1020R等についてUSP Class VI、ISO 10993等への適合評価を公表している。最終製品での評価は別途必要である。 |
| 医薬品容器関連(USP<661.1>、EP、JP) | 一部医療グレードで評価実績 | 製品番号別の適合情報とFDA DMFの有無を確認する。 |
| UL認証 | 登録グレードのみ対象 | UL 94等級、試験片厚さ、色、ファイル番号を確認する。 |
| ハロゲンフリー | 基材は炭化水素系 | 添加剤を含む完成グレードで確認する。 |
| リサイクル表示 | プラスチック識別表示「その他」扱いが一般的 | 地域制度と製品設計に従う。 |
環境・リサイクル性
| 項目 | 一般的評価 | 説明・注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性・熱硬化性 | 熱可塑性 | 再溶融成形が可能である。 |
| マテリアルリサイクル | 技術的には可能 | 熱履歴による黄変・分子量低下があり、光学・医療用途では工程内再生に限られることが多い。 |
| ケミカルリサイクル | 一般的な商業ルートは限定的 | 熱分解・油化の対象になり得る。 |
| サーマルリサイクル | 可能 | 炭化水素系で発熱量が大きい。ハロゲンを含まない。 |
| バイオベース | 一般品は化石資源由来 | マスバランス品の有無はメーカー最新情報を確認する。 |
| 生分解性 | なし | バイオベースと生分解性を混同しない。 |
価格・供給性
| 項目 | 一般的傾向 |
|---|---|
| 相対価格 | 高価格。PC・PMMAより高く、COCと同等クラスとされる。実価格はグレード、数量、市況で変動する。 |
| 流通性・国内入手性 | 国内メーカー品であり、メーカー・特約店経由で入手可能である。 |
| 少量購入 | グレードにより難しい場合がある。 |
| 供給形態 | ペレット、フィルム(ZeonorFilm、ARTONフィルム等)、成形品。板・丸棒の汎用在庫は少ない。 |
関連材料との比較
比較材料名そのものにplastics-material.com内の内部リンクを設定している。
| 比較材料 | 特徴 | シクロオレフィンポリマーとの違い |
|---|---|---|
| シクロオレフィン・コポリマー(COC) | エチレンと環状オレフィンの付加共重合体。高透明・低吸水。 | 性質は近いが重合法と主鎖構造が異なる。COCは共重合比でTgを約70~180℃に広く設計できる。COPは低複屈折・低蛍光・純度を重視した光学・医療用途で多用される。 |
| アクリル樹脂(PMMA) | 高透明、高表面硬度、優れた耐候性。 | COPは吸水率が一桁以上小さく、湿度による寸法・屈折率変化が小さい。PMMAは耐候性・表面硬度・価格・板材流通で有利である。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明で耐衝撃性に優れる。 | PCは耐衝撃性で大きく勝る。COPは低複屈折、低吸水、低誘電、高アッベ数で光学用途に有利である。 |
| ポリメチルペンテン(PMP) | 超低密度、透明、耐熱、低誘電。 | PMPは結晶性で耐薬品性・離型性に優れるが、光学均一性・精密転写性はCOPが有利である。 |
| ポリスチレン(PS) | 低価格、透明、成形性良好。 | COPは耐熱性、低吸水、純度、低複屈折で優れる。PSは価格で有利であるが、診断用途では自家蛍光が大きい。 |
| PETG樹脂 | 透明、耐衝撃、熱成形・接着が容易。 | COPは水蒸気バリア、耐熱、低吸水で有利である。PETGは接着・印刷・価格で有利である。 |
| ポリプロピレン(PP) | 低価格、耐薬品性、ヒンジ性。 | PPは炭化水素以外の耐薬品性・柔軟性・価格で有利であるが、透明性・剛性・寸法精度はCOPが優れる。医療容器では用途により併用される。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 日本ゼオン株式会社 | ZEONEX、ZEONOR、ZeonorFilm | 炭化水素系COPの代表的メーカー。光学レンズ、医療容器、診断デバイス、光学フィルム向けにTg約100~160℃級のグレードを展開する。米国ではZeon Specialty Materialsが販売する。 |
| JSR株式会社 | ARTON | 極性基(エステル基等)を持つ水素化開環メタセシス重合体。高耐熱・低複屈折で、位相差フィルム、NIRカットフィルター等の光学用途に用いられる。 |
三井化学のAPEL、TOPAS Advanced PolymersのTOPASはCOC(付加共重合体)であり、COPとは区別される。シクロオレフィン・コポリマーのページを参照されたい。
関連キーワード
- シクロオレフィン・コポリマー(COC)
- 環状オレフィン系樹脂
- ノルボルネン
- 開環メタセシス重合(ROMP)
- アクリル樹脂(PMMA)
- 耐衝撃ポリメタクリル酸メチル
- ポリカーボネート(PC)
- ポリメチルペンテン(PMP)
- ポリスチレン(PS)
- PETG樹脂
- ポリプロピレン(PP)
- ポリエチレン(PE)
- ポリエチレンテレフタレート(PET)
- CR-39(眼鏡レンズ用樹脂)
- エンジニアリング・プラスチック
- 汎用プラスチック
- 材料選定
- ホモポリマー・樹脂のSP値
- 耐薬品性スクリーニング
- HSP計算
- 光学レンズ用樹脂
- プレフィルドシリンジ
- マイクロ流路チップ
- 低複屈折
- 環境応力割れ
- USP Class VI
- ISO 10993
本ページの数値及び適性評価は、非強化の標準的な炭化水素系COPを中心とする代表値又は参考範囲である。実使用では最新の個別グレード資料を確認し、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、成形条件及び法規制を含む実条件で評価する必要がある。