ビスマレイミドトリアジン樹脂

概要

項目内容
材料名ビスマレイミドトリアジン樹脂
略記号BT、BTレジン、BT樹脂
IUPAC単一のIUPAC名で表される材料ではなく、一般にビスマレイミド化合物とシアネートエステル化合物からなる熱硬化性共重合ネットワークである。
英語名Bismaleimide Triazine Resin、Bismaleimide-Triazine Resin、BT Resin
日本語名ビスマレイミドトリアジン樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、BTレジン、BT樹脂
分類熱硬化性樹脂、電子材料用樹脂、高耐熱絶縁樹脂
プラスチック分類熱硬化性プラスチック。耐熱性の観点ではスーパーエンプラ相当の用途に使われることが多い。
化学式または代表構造代表構造は、マレイミド基由来のイミド環、シアネートエステルの三量化により生じるトリアジン環、芳香族骨格からなる架橋構造である。組成により化学式は一定しない。
CAS No.樹脂全体として一般に統一されたCAS No.は扱われにくい。代表原料として4,4′-ビスマレイミドジフェニルメタンはCAS No. 13676-54-5、ビスフェノールAジシアネートはCAS No. 1156-51-0が用いられることがある。
構造・主成分ビスマレイミド、シアネートエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機フィラー、ガラスクロスなどを組み合わせた熱硬化性樹脂系である。
主な用途半導体パッケージ基板、BGA基板、CSP基板、プリント配線板、チップLED基板、高周波基板、電気絶縁材料、耐熱複合材料など。

ビスマレイミドトリアジン樹脂は、一般にビスマレイミド化合物とシアネートエステル化合物を主成分とする熱硬化性樹脂である。略称はBTであり、BTレジン、BT樹脂とも呼ばれる。シアネートエステルの三量化によりトリアジン環を形成し、ビスマレイミド由来のイミド環や芳香族骨格とともに高い耐熱性、低吸湿性、良好な電気絶縁性を示す。

実用上は、単独の樹脂としてよりも、ガラスクロスに含浸したプリプレグ、銅張積層板、ビルドアップ材料、エポキシ変性BT樹脂として用いられることが多い。特に半導体パッケージ基板や高密度プリント配線板では、耐リフロー性、寸法安定性、低熱膨張性、低誘電特性のバランスが評価される。

一方で、熱硬化性樹脂であるため、熱可塑性樹脂のような再溶融成形はできない。物性は樹脂配合、硬化条件、ガラスクロス、フィラー、銅箔、板厚、吸湿状態により大きく変わるため、実使用ではグレード、使用温度、吸湿条件、電気特性、はんだ耐熱性、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 一般にガラス転移温度が高く、耐熱性に優れる。
  • 低吸湿性で、寸法安定性と電気絶縁性を維持しやすい。
  • 誘電率、誘電正接が比較的低く、高周波用途に適するグレードがある。
  • ガラスクロスや無機フィラーとの複合化により、低熱膨張、高剛性、高耐リフロー性を得やすい。
  • エポキシ樹脂より耐熱性や耐湿信頼性を高めやすい。
  • 銅張積層板、プリプレグ、半導体パッケージ基板材料として実績が多い。
短所
  • 熱硬化性樹脂であり、成形後の再溶融やリサイクルは難しい。
  • 樹脂単体では脆さが出る場合があり、補強材や変性樹脂との設計が重要である。
  • 高温硬化が必要で、成形・積層・プレス条件の管理が必要である。
  • 強酸、強アルカリ、高温高湿、特定の溶剤では劣化、膨潤、界面剥離が起こる場合がある。
  • 熱膨張、反り、吸湿、アウトガスは半導体実装用途で注意が必要である。
  • 汎用樹脂に比べて材料費、加工費が高くなりやすい。
外観

樹脂硬化物は淡黄色から褐色系の透明または半透明の外観を示すことが多い。プリプレグ、積層板、銅張積層板では、ガラスクロス、銅箔、フィラー、難燃剤、変性樹脂の影響により、白色、黄褐色、茶色、不透明などの外観となる。

耐熱性

BT樹脂は高い架橋密度と芳香族骨格を持つため、一般にガラス転移温度は約200~300℃の範囲にある。変性BT、低誘電BT、BTエポキシ、フィラー強化品では値が異なる。連続使用温度は代表値として160~230℃程度が目安であるが、実使用では酸化、吸湿、荷重、電圧、周囲雰囲気、使用時間を含めて確認する必要がある。

耐薬品性

硬化したBT樹脂は、一般に水、油、アルコール類、脂肪族炭化水素に対して比較的安定である。芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では、条件により膨潤、軟化、界面剥離が起こる場合がある。強酸、強アルカリ、高温水蒸気、高温高湿環境では、加水分解や絶縁低下を考慮する必要がある。

加工性

BT樹脂は熱硬化性樹脂であるため、射出成形や押出成形よりも、ワニス含浸、乾燥、プリプレグ化、積層プレス、加熱硬化、銅張積層板加工、ドリル加工、レーザー加工、エッチング工程で用いられる。樹脂単体の成形品よりも、ガラス繊維強化積層板として扱われる場合が多い。

分類上の注意

BT樹脂はエポキシ樹脂ポリイミド、シアネートエステル樹脂、BMI樹脂と近い用途で比較される。BTエポキシと呼ばれる材料は、BT樹脂とエポキシ樹脂を併用した基板材料であり、純粋なBT樹脂とは物性や硬化挙動が異なる。

構造式

代表的な構造単位

BT樹脂は、単一の繰り返し単位を持つ線状高分子ではなく、複数の反応により形成される架橋ネットワークである。代表的には、ビスマレイミドのマレイミド二重結合、シアネートエステル基、三量化により形成されるトリアジン環、芳香族骨格、イミド環を含む。

構成要素構造の表記例役割
マレイミド基–CO–N–CO–を含む五員環、C=Cを含む反応部位耐熱性、架橋反応、イミド環による剛直性に寄与する。
シアネートエステル基Ar–O–C≡N加熱により三量化し、トリアジン環を形成する。
トリアジン環C3N3耐熱性、低誘電特性、架橋密度に寄与する。
芳香族骨格Ar、Ph、ビスフェノールA骨格など剛性、耐熱性、寸法安定性に寄与する。
代表反応式

代表的な形成反応は、シアネートエステルの三量化反応と、ビスマレイミドとの共硬化反応で説明される。

3 Ar–O–C≡N → Ar–O–[C3N3]–O–Ar

Bismaleimide + Cyanate Ester → Bismaleimide-Triazine Crosslinked Network

実際のBT樹脂では、上記に加えてエポキシ樹脂、フェノール系硬化剤、触媒、難燃剤、シリカ、ガラスクロスなどが加わり、反応経路はグレードにより異なる。

モノマーまたは構成単位
  • 4,4′-ビスマレイミドジフェニルメタンなどのビスマレイミド化合物
  • ビスフェノールAジシアネートなどのシアネートエステル化合物
  • エポキシ樹脂、フェノール樹脂、難燃性樹脂などの変性成分
  • ガラスクロス、シリカ、無機フィラーなどの補強・低熱膨張成分
共重合体や変性グレード

BT樹脂には、純BT系、BTエポキシ系、低誘電BT系、ハロゲンフリーBT系、高Tg系、低CTE系、フィラー高充填系などがある。半導体パッケージ基板では、単に樹脂の種類だけでなく、銅箔、ガラスクロス、フィラー、プリプレグ構成、積層条件を含めて材料設計される。

種類

種類の名称主成分または特徴長所短所主な用途
標準BT樹脂ビスマレイミドとシアネートエステルを主体とする熱硬化性樹脂耐熱性、絶縁性、耐湿性のバランスがよい。単独では脆さや加工性に注意が必要である。絶縁材料、耐熱複合材、基板材料
BTエポキシ樹脂BT樹脂をエポキシ樹脂で変性した材料加工性、接着性、積層性を改善しやすい。純BT系に比べ耐熱性や誘電特性が下がる場合がある。プリント配線板、航空宇宙用基板、BGA基板
ハロゲンフリーBT臭素系難燃剤を使わず難燃性を付与したBT系材料環境対応、鉛フリーリフロー対応に適する。難燃剤やフィラーの影響で誘電特性や加工性が変わる。ICパッケージ基板、CSP、SiP、モジュール基板
低誘電BT低極性樹脂、低誘電フィラー、樹脂設計によりDk、Dfを低減高速信号、高周波用途で伝送損失を抑えやすい。耐熱性、銅箔密着、加工性との両立が必要である。5G通信基板、高周波モジュール、アンテナ基板
低CTE BTシリカ、ガラスクロスなどの無機成分を高充填した材料反りを抑え、半導体チップとの熱膨張差を小さくしやすい。ドリル加工性、レーザー加工性、靭性に注意が必要である。FC-BGA、FCCSP、薄型パッケージ基板
高Tg BT架橋密度や芳香族成分を高めた耐熱グレードリフロー耐熱、寸法安定性、高温絶縁性に優れる。硬化条件が厳しく、脆性や内部応力が出やすい場合がある。高耐熱基板、車載電子部品、パワーデバイス周辺
食品接触・医療用途向けBT樹脂としては一般的ではなく、用途は限定的高耐熱絶縁性が必要な特殊用途で検討される。食品衛生、FDA、医療規格への個別確認が必要である。特殊絶縁部品、検査装置部材など

成形加工

BT樹脂は熱硬化性であり、一般的な熱可塑性樹脂の射出成形、押出成形、ブロー成形には適さない。主な加工形態は、ワニス、プリプレグ、積層板、銅張積層板、熱プレス、硬化後の切削・穴あけ加工である。

成形・加工方法適性備考
射出成形×熱硬化性樹脂であり、一般的な熱可塑性射出成形には適さない。
押出成形×フィルムやチューブの連続押出材料としては一般的でない。
ブロー成形×中空成形用材料としては一般的でない。
圧縮成形樹脂組成物、複合材、積層材では熱プレス硬化が用いられる。
真空成形×熱可塑性シートのような加熱軟化成形は困難である。
プリプレグ化ワニスをガラスクロスに含浸し、半硬化状態にする代表的加工である。
積層プレス銅張積層板、パッケージ基板材料の主要工程である。
ドリル加工ガラスクロスやフィラーにより工具摩耗、バリ、スミアに注意する。
レーザー加工ビア形成に用いられる。樹脂組成、フィラー、銅箔との条件調整が必要である。
切削加工硬化積層板の外形加工、穴加工は可能であるが、欠けや層間剥離に注意する。
代表的な成形条件
項目代表値・目安備考
乾燥温度80~120℃プリプレグ、積層板、粉体、ワニス状態により異なる。吸湿管理が重要である。
シリンダー温度該当しない一般的な射出成形用ペレットとしては扱われにくい。
金型温度・プレス温度170~240℃程度硬化系、触媒、板厚、積層構成により異なる。
後硬化温度180~250℃程度高Tg化、残留反応低減、寸法安定化を目的に行う場合がある。
成形収縮率0.1~0.5%程度硬化収縮、フィラー量、ガラスクロス、銅箔、積層方向により異なる。
積層板の面内CTE10~20 ppm/℃程度ガラスクロス強化材の代表値である。Z方向はより大きくなる。
硬化時の注意点昇温速度、圧力、脱泡、Bステージ管理ボイド、反り、層間剥離、銅箔密着不良を避けるため管理が必要である。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は公開値や一般的なBT系材料の傾向から整理した代表値であり、保証値ではない。実際の値は樹脂配合、ガラスクロス、フィラー、板厚、銅箔有無、測定方向、吸湿状態、試験規格により変わる。

項目単位BT樹脂硬化物BTエポキシ積層板GF強化BT積層板備考
密度・比重g/cm31.20~1.301.70~1.901.80~2.05フィラー、ガラスクロス、銅箔の有無により変わる。
引張強さMPa70~120250~450300~550積層板は方向性が大きい。
伸び1~31~41~3熱硬化性であり、一般に伸びは小さい。
曲げ強さMPa120~180350~600400~700ガラスクロス強化により高くなる。
曲げ弾性率GPa3~516~2518~30無機充填量により大きく変わる。
アイゾット衝撃強さJ/m20~6040~10050~120ノッチ付きの目安。樹脂単体は脆い傾向がある。
荷重たわみ温度200~280180~260220~300試験荷重、Tg、補強材に依存する。
ガラス転移温度220~300180~230200~300DSC、DMA、TMAで値が異なる場合がある。
融点なしなしなし熱硬化性樹脂であり、明確な融点は持たない。
連続使用温度160~230140~200160~230環境、荷重、電圧、寿命要求により確認が必要である。
吸水率0.1~0.50.15~0.60.1~0.424時間浸漬または飽和吸水で値が異なる。
体積抵抗率Ω・cm1014~10161013~10161013~1016吸湿、高温、汚染により低下する。
誘電率 Dk2.9~3.53.2~4.23.4~4.51MHz~10GHzで測定条件により異なる。
誘電正接 Df0.004~0.0100.006~0.0150.004~0.012低誘電グレードではさらに低い値を示す場合がある。
難燃性V-0相当設計が可能UL94 V-0グレードありUL94 V-0グレードあり難燃剤、板厚、規格認定により確認が必要である。
酸素指数30~40程度30~45程度30~45程度配合により大きく変わる代表値である。

耐薬品性

BT樹脂の耐薬品性は一般に良好であるが、硬化度、樹脂変性、フィラー、ガラスクロス界面、吸湿状態、温度、応力により差が出る。特に積層板では、樹脂そのものの膨潤だけでなく、銅箔密着、層間剥離、CAF、絶縁抵抗低下も確認する必要がある。

薬品分類代表薬品評価備考
酸類希塩酸、希硫酸、酢酸常温・低濃度では比較的安定である。高濃度、酸化性酸、高温では注意が必要である。
強酸濃硫酸、濃硝酸、発煙硝酸△~×酸化、分解、変色、強度低下のおそれがある。
アルカリ類水酸化ナトリウム、KOH、アンモニア水高温、高濃度では加水分解や界面劣化に注意する。
低級アルコール類メタノール、エタノール、IPA短時間接触では比較的安定である。長時間浸漬では膨潤を確認する。
高級アルコール類グリセリン、ベンジルアルコール、MMB○~△分子量、温度、接触時間により変わる。
芳香族炭化水素類トルエン、キシレン、ベンゼン条件により膨潤、軟化が起こる場合がある。
脂肪族炭化水素類ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット常温では比較的安定な場合が多い。
ケトンアセトン、MEK、MIBK△~×樹脂変性や未硬化成分により膨潤、溶出が起こる場合がある。
エステル酢酸エチル、酢酸ブチル長時間接触、高温では注意が必要である。
塩素系溶剤ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン△~×膨潤、応力割れ、抽出の可能性がある。
水・温水水、温水、純水高温高湿、加圧蒸気では吸湿、絶縁低下、加水分解を確認する。
鉱物油、潤滑油、シリコーン油◎~○常温では良好な場合が多い。添加剤入り油では確認が必要である。
燃料ガソリン、軽油、灯油○~△芳香族分や添加剤により膨潤する場合がある。
フラックス・洗浄剤ロジン系フラックス、準水系洗浄剤○~△電子材料用途では実工程条件で絶縁信頼性を確認する。
SP値(溶解度パラメータ)

BT樹脂のSP値は、組成や硬化度により一定しない。代表的な目安として、硬化BT樹脂はおおよそ20~23 MPa1/2程度の範囲で扱われることが多い。BTエポキシ、低誘電変性、フィラー充填品では有効なSP値が変わる。

SP値は溶解・膨潤傾向を考えるための目安であり、熱硬化性樹脂の耐薬品性を単独で判断することはできない。架橋密度、結晶性の有無、吸湿、温度、応力、薬品濃度、添加剤、界面接着、試験時間を併せて評価する必要がある。

溶解性の目安
SP値差溶解・膨潤の目安判定
0 ~ 2膨潤・軟化しやすい×
2 ~ 5条件により膨潤する
5 ~ 8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性

ここではBT樹脂の代表SP値を22 MPa1/2として、代表溶剤とのSP値差を示す。実際の耐薬品性はSP値差だけでなく、溶剤の極性、水素結合性、分子サイズ、温度、応力、接触時間、硬化度により変わる。

薬品名代表SP値
MPa1/2
BT樹脂との差評価備考
47.925.9SP値上は膨潤しにくいが、高温高湿では吸湿と絶縁低下を確認する。
メタノール29.77.7短時間接触では比較的安定である。
エタノール26.04.0長時間接触では膨潤確認が必要である。
IPA23.51.5SP値差は小さいが、架橋構造により直ちに溶解するとは限らない。
アセトン20.31.7×膨潤、軟化、抽出成分に注意する。
MEK19.03.0△~×洗浄用途では接触時間と温度を確認する。
酢酸エチル18.63.4長時間浸漬には注意が必要である。
トルエン18.23.8芳香族溶剤は膨潤を確認する。
キシレン18.04.0高温条件では注意が必要である。
ヘキサン14.97.1短時間接触では比較的安定である。
ジクロロメタン20.21.8×膨潤や応力割れのおそれがある。
グリセリン33.811.8◎~○高温では吸湿や添加剤影響を確認する。
鉱物油16~184~6油種、添加剤、温度により確認が必要である。

製法

原料
  • ビスマレイミド化合物
  • シアネートエステル化合物
  • エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの変性樹脂
  • 硬化触媒、反応促進剤、安定剤
  • 難燃剤、無機フィラー、シリカ、ガラスクロス
  • 銅箔、離型フィルム、工程用溶剤
重合方法

BT樹脂は、シアネートエステルの三量化反応とビスマレイミドの付加・共硬化反応により形成される。シアネートエステル基は加熱によりトリアジン環を形成し、ビスマレイミド成分は二重結合を介して架橋ネットワークに組み込まれる。硬化は一般に170~240℃程度の温度域で行われ、触媒や配合により反応速度が調整される。

ペレット化やコンパウンド

BT樹脂は熱可塑性樹脂のようにペレットを溶融成形する材料としては一般的でない。電子材料用途では、樹脂ワニスとして調製し、ガラスクロスへ含浸、乾燥してプリプレグ化する。さらに複数枚を積層し、銅箔とともに加熱加圧して銅張積層板を得る。

添加剤、充填材、強化材

半導体パッケージ基板では、低熱膨張、低反り、寸法安定性、難燃性、低誘電特性を得るため、シリカ、アルミナ、ガラスクロス、低誘電フィラー、難燃剤などが配合される。充填材量が増えると剛性や寸法安定性は向上しやすいが、ドリル加工性、レーザー加工性、銅箔密着、靭性は低下する場合がある。

代表的な工程
工程内容管理ポイント
樹脂ワニス調製BT樹脂成分、変性樹脂、フィラー、触媒、溶剤を混合する。粘度、固形分、分散、ポットライフを管理する。
含浸ガラスクロスにワニスを含浸する。含浸量、ボイド、樹脂流れを管理する。
乾燥・Bステージ化溶剤を除去し、半硬化状態のプリプレグにする。揮発分、ゲルタイム、硬化進行度を管理する。
積層プリプレグ、銅箔、内層回路を重ねる。位置精度、異物、吸湿、層構成を管理する。
熱プレス硬化加熱・加圧により樹脂を流動、硬化させる。温度、圧力、昇温速度、樹脂流れ、ボイドを管理する。
後硬化必要に応じて追加加熱し硬化を進める。Tg、反り、内部応力、寸法変化を確認する。
穴あけ・回路形成ドリル、レーザー、めっき、エッチングを行う。スミア、デスミア、密着、絶縁信頼性を管理する。

詳細な利用用途

分野主な用途採用理由注意点
自動車車載ECU、パワーモジュール周辺基板、センサー基板高温環境での絶縁性、耐湿性、寸法安定性が求められる。熱サイクル、吸湿、イオンマイグレーション、長期信頼性を確認する。
電気・電子BGA、CSP、FC-BGA、SiP、モジュール基板リフロー耐熱、低CTE、低反り、電気絶縁性に優れる。薄型化では反り、銅箔密着、ビア信頼性が重要である。
高周波通信5G通信基板、RFモジュール、アンテナ基板低誘電率、低誘電正接グレードが選定される。周波数、銅箔粗さ、吸湿後のDk・Df変化を確認する。
機械部品耐熱絶縁板、治具、スペーサー、構造複合材高剛性、高耐熱、電気絶縁性を両立しやすい。切削時の欠け、粉じん、層間剥離に注意する。
医療検査装置用絶縁部材、電子機器内部基板高温絶縁性、寸法安定性を活かせる。生体接触用途では個別の医療規格適合を確認する。
食品機械制御基板、耐熱絶縁部品装置内部の高温絶縁材料として使われる場合がある。食品接触部材としては一般的でなく、食品衛生適合の確認が必要である。
建築・設備高耐熱電装基板、制御盤内絶縁材耐熱性、難燃性、絶縁性を活かす。難燃規格、耐湿、結露、長期絶縁性を確認する。
航空宇宙高信頼性電子基板、軽量複合材、絶縁部品高耐熱、低吸湿、寸法安定性が有効である。アウトガス、熱サイクル、難燃・発煙・毒性規格を確認する。
用途別選定の目安
用途選定されやすいグレード確認項目
半導体パッケージ基板ハロゲンフリーBT、低CTE BT、高Tg BT反り、Tg、CTE、吸湿、はんだ耐熱、銅箔密着
高周波基板低誘電BT、低Df BTDk、Df、周波数依存性、銅箔粗さ、吸湿後特性
耐熱絶縁板GF強化BT積層板曲げ強度、絶縁抵抗、HDT、切削性
薄型基板低反りBT、低CTE BT板厚精度、反り、熱サイクル、レーザー加工性
車載電子部品高耐熱BT、耐湿BT高温高湿、CAF、絶縁劣化、熱衝撃
治具・スペーサー硬化積層板、GF強化BT切削性、寸法安定性、欠け、粉じん対策
法規制・規格上の注意
項目確認内容備考
RoHS鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類など基板材料、銅箔、難燃剤、添加剤単位で確認する。
REACHSVHC、制限物質、登録対象物質サプライヤーのSDS、chemSHERPA等を確認する。
UL94V-0、V-1、V-2などの難燃等級板厚、色、銅張有無、製品認定範囲に注意する。
食品衛生食品接触材料としての適合性BT樹脂では一般用途でなく、個別確認が必要である。
FDA食品接触、医療機器周辺用途での適合性グレード単位で確認する。
医療用途生体適合性、滅菌耐性、抽出物BT樹脂は電子部材用途が中心であり、直接接触用途は慎重に評価する。
アウトガス低分子成分、残留溶剤、硬化副生成物半導体、光学、真空用途では測定が必要である。
注意点
  • 吸湿した状態で高温リフローを受けると、膨れ、層間剥離、ポップコーン現象につながる場合がある。
  • 高温高湿環境では、絶縁抵抗低下、CAF、イオンマイグレーションに注意する。
  • 熱硬化性樹脂のため、硬化不足や過硬化によりTg、靭性、密着性が変わる。
  • 低CTE化のためにフィラーを増やすと、レーザー加工性やドリル加工性が低下する場合がある。
  • 高Tgグレードでは内部応力、反り、脆性を考慮する。
  • 薬品、フラックス、洗浄剤との接触では、樹脂膨潤だけでなく電気信頼性を確認する。

関連材料との比較

比較材料特徴対象材料との違い
エポキシ樹脂接着性、加工性、コストバランスに優れ、FR-4基板で広く使われる。BT樹脂は一般に耐熱性、耐湿信頼性、高周波特性を高めやすいが、コストは高くなりやすい。
ポリイミド非常に高い耐熱性を持ち、フレキシブル基板や耐熱フィルムに使われる。ポリイミドはフィルム用途に強く、BT樹脂は半導体パッケージ用積層板で使われることが多い。
シアネートエステル樹脂低誘電、高耐熱、低吸湿の熱硬化性樹脂である。BT樹脂はシアネートエステルにビスマレイミドを組み合わせ、靭性、硬化性、耐熱性を調整した材料である。
BMI樹脂ビスマレイミドを主体とする高耐熱熱硬化性樹脂である。BT樹脂はトリアジン構造を含み、電子材料向けの誘電特性や加工性を設計しやすい。
PEEK高耐熱の熱可塑性スーパーエンプラで、機械部品に多く使われる。PEEKは射出成形や切削部品に適し、BT樹脂は熱硬化性積層板や電子基板用途が中心である。
PPS耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる熱可塑性樹脂である。PPSは成形部品に適し、BT樹脂は高密度基板や半導体パッケージ材料として使われる。
PTFE極めて低い誘電率、低摩擦、耐薬品性を持つフッ素樹脂である。PTFEは高周波特性に優れるが加工・銅箔密着が難しい。BT樹脂は基板加工性とのバランスを取りやすい。
LCP低吸湿、高流動、低誘電の熱可塑性液晶ポリマーである。LCPは射出成形品やフィルムに適し、BT樹脂は熱硬化積層板として高信頼基板に使われる。

代表的なメーカー

BT樹脂およびBT系積層板は電子材料用途が中心であり、製品名、グレード、供給形態は時期や地域により変わる。以下は公開情報で確認しやすい代表例である。

メーカー代表製品・ブランド概要
三菱ガス化学株式会社BTレジン、BT材料、CCL-HLシリーズ、GHPLシリーズなどBT樹脂および半導体パッケージ基板用積層材料の代表的メーカーである。ICパッケージ、CSP、BGA、SiP、チップLED、高周波用途向け材料を展開している。
AGC Multi MaterialN5000 BT Epoxy Laminate and Prepreg などBTエポキシ系の積層板、プリプレグを展開する代表例である。高密度プリント配線板、航空宇宙、通信基板用途で使われる。
Isola Group高性能積層板、プリプレグ各種高信頼性プリント配線板材料メーカーであり、BTエポキシ系または高Tg・低損失系の競合材料として比較されることがある。採用時は対象グレードの樹脂系を確認する必要がある。
Panasonic Industry高多層基板材料、半導体パッケージ関連材料各種電子回路基板材料の主要メーカーである。BT樹脂そのもののブランドとしてではなく、低損失、高Tg、低CTE基板材料の比較対象として扱われる場合がある。

関連キーワード

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