概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 電子封止材用エポキシ |
| 略記号 | EMC(Epoxy Molding Compound)。液状封止材ではLMC、液状エポキシ封止材などの呼称も用いられる。 |
| IUPAC | 単一物質ではないため一義的なIUPAC名はない。母材には多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が用いられる。 |
| 英語名 | Epoxy Molding Compound for Electronic Encapsulation / Semiconductor Encapsulant |
| 日本語名 | エポキシモールディングコンパウンド、半導体封止材、電子部品封止用エポキシ樹脂 |
| 分類 | 熱硬化性樹脂系複合材料、電子材料、封止材料 |
| プラスチック分類 | 熱硬化性プラスチック。高充填無機フィラー複合材料として扱われる。 |
| 化学式又は代表構造 | エポキシ樹脂/フェノール系硬化剤の架橋網目+SiO2充填材。単一の化学式では表せない。 |
| CAS No. | 混合物であるため一義的なCAS No.はない。個別原料ごとにCAS No.が異なる。 |
| 構造・主成分 | 多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック等の硬化剤、硬化促進剤、溶融シリカ、シランカップリング剤、難燃剤、離型剤、着色剤など。 |
| 主な用途 | IC、LSI、パワー半導体、ディスクリート、センサー、受動部品、車載電子部品、モジュール封止。 |
電子封止材用エポキシは、半導体チップ、ボンディングワイヤ、リードフレーム、基板及び受動部品を、湿気、汚染、機械的衝撃、熱応力及び電気的ストレスから保護するための熱硬化性複合材料である。量産半導体では、粉体又はタブレット状のエポキシモールディングコンパウンドを加熱し、トランスファー成形又は圧縮成形で封止する方式が代表的である。
一般的なEMCは、エポキシ樹脂とフェノール系硬化剤からなる架橋樹脂相に、溶融シリカを高充填した材料である。シリカ充填により、線膨張係数、硬化収縮、吸湿、弾性率、熱伝導率及び成形流動性を調整する。さらに、シランカップリング剤、硬化促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、低応力化剤等が配合される。
実使用特性は、樹脂骨格、硬化剤、触媒、フィラー含有率・粒度分布、金型温度、硬化時間、ポストキュア、パッケージ形状及び界面状態に強く依存する。材料選定では、単体物性だけでなく、反り、剥離、クラック、ワイヤ流れ、ボイド、耐リフロー、吸湿後信頼性、イオン性不純物及びアウトガスを実部品で確認する必要がある。
特徴
長所
- 電気絶縁性、機械保護性、耐湿性及び量産成形性のバランスに優れる。
- 溶融シリカ高充填により、低線膨張、高剛性、低収縮及び難燃性を設計しやすい。
- 低応力、高Tg、高熱伝導、低誘電、ハロゲンフリー等の用途別グレードが豊富である。
- トランスファー成形及び圧縮成形による多個取り量産に適する。
短所
- 熱硬化性であり、硬化後は再溶融・再成形できない。
- 高剛性・低伸びであるため、熱膨張差により界面剥離、クラック、反りが生じる場合がある。
- 吸湿後の急速加熱でポップコーン現象、内部剥離、腐食が生じる可能性がある。
- 高充填材のため工具・金型摩耗、粉塵、バリ、金型汚れに注意が必要である。
| 項目 | 一般的傾向 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 外観 | 黒色又は濃色の粉体、顆粒、タブレットが一般的。液状、白色、透明系も存在する。 | 色、フィラー、難燃剤、レーザーマーキング性はグレード依存。 |
| 耐熱性 | Tg 120~200℃程度が代表範囲。高耐熱グレードでは200℃超もある。 | Tg、RTI、HDT、連続使用温度を混同しない。 |
| 耐薬品性 | 架橋構造により多くの液体に不溶である。 | 溶剤膨潤、吸湿、加水分解、酸化、界面剥離は別途評価する。 |
| 加工性 | 専用成形設備では高い量産性を示す。 | 流動性、ゲルタイム、金型温度、充填圧力、硬化時間を管理する。 |
| 分類上の注意 | 単一樹脂ではなく、高充填熱硬化性コンパウンドである。 | 樹脂単体のエポキシ物性をEMCへそのまま適用しない。 |
構造式
電子封止材用エポキシは混合物であり、単一の繰返し単位では表せない。代表的には、クレゾールノボラック型又はビフェニル型等の多官能エポキシ樹脂と、フェノールノボラック硬化剤が反応し、β-ヒドロキシエーテル結合を含む三次元架橋網目を形成する。

| 構成要素 | 代表例 | 役割 |
|---|---|---|
| エポキシ樹脂 | クレゾールノボラック型、ビフェニル型、多官能芳香族型 | 架橋母材、耐熱性、接着性、電気特性を決定する。 |
| 硬化剤 | フェノールノボラック、アラルキルフェノール系等 | エポキシ基と反応し三次元網目を形成する。 |
| 硬化促進剤 | イミダゾール系、ホスフィン系等 | 成形温度での硬化速度、潜在性、流動時間を調整する。 |
| 充填材 | 溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化物系等 | CTE、弾性率、熱伝導率、収縮、流動性を調整する。 |
| 界面改質剤 | シランカップリング剤、低応力化剤 | フィラー界面、密着、吸湿、応力を調整する。 |
種類・代表グレード
| 種類の名称 | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用EMC | ノボラック型エポキシ+フェノール系硬化剤+溶融シリカ | 成形性とコストのバランスが良い | 高温・高湿・低反り要求では不足する場合がある | 一般IC、ディスクリート |
| 低応力・低反り | 低弾性化、フィラー粒度設計、シリコーン変性等 | チップ・基板への熱応力を低減しやすい | 弾性率低下や密着性との両立が必要 | BGA、QFN、薄型パッケージ |
| 高Tg・耐熱 | 多官能・高架橋型エポキシ、耐熱硬化系 | 高温時の弾性保持、耐リフロー性に優れる | 高弾性化しやすく、クラック・剥離リスクが増える場合がある | SiC、GaN、車載パワーモジュール |
| 高熱伝導 | 高充填シリカ、アルミナ、窒化物系フィラー等 | 放熱性を高めやすい | 粘度上昇、金型摩耗、コスト増加 | パワー半導体、LED、発熱部品 |
| 低誘電・高周波 | 低極性樹脂、低誘電フィラー、低吸湿設計 | 高周波損失を抑制しやすい | 難燃性、密着、機械強度との両立が必要 | 5G、RF、ミリ波部品 |
| ハロゲンフリー難燃 | 非ハロゲン難燃系、難燃性樹脂骨格 | 環境要求へ対応しやすい | 吸湿、イオン性不純物、流動性への影響を要確認 | 民生・車載電子部品 |
| 液状封止・アンダーフィル | 低粘度液状エポキシ、潜在性硬化剤、微細フィラー | 微細間隙へ充填しやすい | 気泡、硬化収縮、ポットライフ、濡れ性管理が重要 | FC、CSP、アンダーフィル、COB |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | △ | 一般的な熱可塑性射出成形ではなく、専用の熱硬化性成形条件が必要である。 |
| 押出成形 | × | 硬化後に再溶融しないため最終封止法としては不適である。混練工程では押出機が使用される場合がある。 |
| ブロー成形 | × | 中空熱可塑性成形法であり、封止材には適用しない。 |
| 圧縮成形 | ○ | コンプレッションモールド、ウェハレベル封止等で用いられる。充填均一性とボイド管理が重要である。 |
| トランスファー成形 | ◎ | 半導体封止の代表工程である。流動性、ゲルタイム、ワイヤ流れ、バリ、金型汚れを管理する。 |
| 真空成形 | × | 熱可塑性シートの二次成形法であり、一般的なEMCには適さない。 |
| 注型・ポッティング | ◎ | 液状エポキシでは適性が高い。混合、脱泡、発熱、硬化収縮、厚肉クラックに注意する。 |
| 切削加工 | △ | 硬化物の加工は可能だが、シリカ高充填材では工具摩耗、欠け、粉塵が問題となる。 |
| 接着 | ○ | 金属、セラミックス等への接着性は良好な場合が多いが、離型剤、表面酸化、汚染の影響を受ける。 |
| レーザーマーキング | ○ | 着色剤や吸収剤の設計により対応可能である。コントラストと発塵を確認する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 一般的な目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常はメーカー指定の保管・予熱条件に従う | 吸湿した材料はボイド、スコーチ、流動不良、信頼性低下を招く。 |
| 金型温度 | ℃ | 165~185 | グレード、パッケージ、硬化速度で調整する。 |
| 材料予熱温度 | ℃ | 60~100 | 高周波予熱等を用いる場合がある。過熱による早期ゲル化に注意。 |
| 成形圧力 | MPa | 5~15 | 装置表示圧力とキャビティ実圧は異なる場合がある。 |
| 成形時間 | s | 60~180 | 厚さ、金型温度、反応速度に依存する。 |
| ポストキュア温度 | ℃ | 150~180 | 不要又は短時間化グレードもある。 |
| ポストキュア時間 | h | 2~8 | Tg、残留反応、密着及び反りの変化を確認する。 |
| 成形収縮率 | % | 0.1~0.5 | フィラー量、硬化度、測定方向で変動する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下はシリカ高充填の標準的な硬化EMCを想定した代表範囲である。特定メーカーの特定グレード値ではない。比較機能へ登録する場合は、個別データシートの試験規格、材料状態、後硬化条件、試験片厚さ及び強化材含有率を別フィールドで管理する必要がある。
| 項目 | 単位 | 代表範囲・代表値 | 試験規格 | 試験温度 | 材料状態・備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.75~2.10 | - | 23℃ | 硬化後、シリカ高充填EMCの代表範囲 | B |
| 比重 | 無次元 | 1.75~2.10 | - | 23℃ | 密度とほぼ同義で用いられる場合がある | B |
| 吸水率・24時間 | % | 0.05~0.30 | 規格・条件依存 | 23℃ | 硬化物。試験片厚さ、後硬化、フィラー量で変動 | C |
| 引張強さ・破断 | MPa | 40~100 | ISO 527又はASTM D638相当 | 23℃ | 脆性硬化物。グレード差が大きい | C |
| 引張破断伸び | % | 0.3~1.5 | ISO 527又はASTM D638相当 | 23℃ | 低応力グレードでは高めになる場合がある | C |
| 曲げ強さ | MPa | 80~180 | ISO 178又はASTM D790相当 | 23℃ | 後硬化条件により変動 | B |
| 曲げ弾性率 | GPa | 10~28 | ISO 178又はASTM D790相当 | 23℃ | シリカ充填率と粒度分布の影響が大きい | B |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 1~5 | ISO 180相当 | 23℃ | 脆性材料であり、単純比較に注意 | C |
| ガラス転移温度 | ℃ | 120~200 | DSC、DMA又はTMA | - | 高耐熱グレードでは200℃超もある | B |
| 熱分解開始温度 | ℃ | 300~380 | TGA、雰囲気依存 | - | 質量減少基準により値が変わる | C |
| 連続使用温度 | ℃ | 130~180 | グレード認定・用途依存 | - | TgやRTIと同一ではない | C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.7~2.5 | ASTM E1530等 | 23℃ | 高熱伝導グレードではさらに高い場合がある | B |
| 線膨張係数・Tg以下 | 10⁻⁵/K | 0.8~2.5 | TMA | Tg以下 | シリコン、銅、基板とのミスマッチ評価が重要 | B |
| 線膨張係数・Tg以上 | 10⁻⁵/K | 3.0~8.0 | TMA | Tg以上 | Tg通過後に大きく増加する | B |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1014~1×1016 | IEC 60093等 | 23℃ | 吸湿・温度上昇で低下する場合がある | B |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 15~30 | IEC 60243等 | 23℃ | 試験片厚さと電極条件依存 | C |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 3.5~4.5 | IEC 60250等 | 23℃ | フィラー、吸湿、周波数依存 | B |
| 誘電正接・1 MHz | 無次元 | 0.005~0.030 | IEC 60250等 | 23℃ | 低誘電グレードでは低い | C |
| UL 94燃焼性 | 等級 | V-0取得グレードあり | UL 94 | 厚さ依存 | 材料群一律ではなく個別認証確認が必要 | A |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 高充填硬化物として標準~良好だが、脆性がある。 |
| 剛性 | 5 | シリカ高充填により高い。 |
| 衝撃強度 | 2 | 脆性でノッチ感受性がある。 |
| 耐熱性 | 4 | 高Tgグレードがあり、電子用途で高い。 |
| 耐薬品性 | 3 | 架橋構造で概ね良好だが、溶剤膨潤、加水分解、界面劣化に注意。 |
| 耐湿性 | 3 | 配合改良されているが、吸湿と界面剥離が主要信頼性課題である。 |
| 寸法安定性 | 4 | フィラー高充填で低CTE化できるが、硬化収縮と反りがある。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 高抵抗・高絶縁破壊強さを得やすい。 |
| 難燃性 | 4 | V-0認証グレードが多数存在するが厚さ・色・処方依存。 |
| 成形加工性 | 4 | 専用トランスファー/圧縮成形では量産性が高い。 |
| リサイクル性 | 1 | 熱硬化性で再溶融できず、マテリアルリサイクルは難しい。 |
| 価格優位性 | 3 | 高機能電子材料としては量産実績が大きいが、一般樹脂より高価。 |
耐薬品性
EMCは高度に架橋した樹脂であるため、多くの薬品に対して溶解しにくい。一方、電子封止材では樹脂単体の重量変化だけでなく、吸湿、イオン移動、金属腐食、フィラー界面劣化、チップ・リードフレーム界面の剥離、応力下クラックを評価する必要がある。
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触時間・形態 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 100% | 23℃ | 24~168 h浸漬 | 無応力 | ○ | 吸湿、誘電特性低下 | 一般に短期は安定だが長期吸湿を確認する。 |
| 温水 | 100% | 60~85℃ | 24~168 h浸漬 | 無応力 | △ | 吸湿、界面剥離、Tg低下 | 高温高湿信頼性試験が必要である。 |
| 水蒸気 | 飽和 | 121℃ | PCT/HAST条件 | 加圧 | △ | ポップコーン、剥離、腐食 | 封止材の重要な加速試験条件である。 |
| 塩酸 | 5~10% | 23℃ | 24 h浸漬 | 無応力 | ○ | 表面変色、界面劣化 | 濃度と温度上昇で要注意。 |
| 硫酸 | 5~10% | 23℃ | 24 h浸漬 | 無応力 | ○ | 表面劣化 | 濃硫酸、高温では評価が異なる。 |
| 水酸化ナトリウム | 5~10% | 23℃ | 24 h浸漬 | 無応力 | △ | 加水分解、表面侵食 | 高温・高濃度で劣化しやすい。 |
| エタノール | 99%以下 | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | ○ | 膨潤、抽出 | 硬化度と配合に依存する。 |
| IPA | 99%以下 | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | ○ | 膨潤、白化 | 洗浄用途では実部品確認が必要。 |
| グリセリン | 100% | 23℃ | 24 h | 無応力 | ○ | 吸湿促進 | 高温条件を別途確認する。 |
| アセトン | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | △ | 膨潤、表面軟化 | 未反応成分や低分子成分の抽出に注意。 |
| MEK | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | △ | 膨潤、軟化 | 長時間接触には不向きな場合がある。 |
| 酢酸エチル | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | △ | 膨潤、抽出 | 架橋密度とフィラー量で変動する。 |
| トルエン | 100% | 23℃ | 短時間~24 h | 無応力 | △ | 膨潤、接着界面低下 | 封止材単体より界面信頼性を重視する。 |
| n-ヘキサン | 100% | 23℃ | 24 h | 無応力 | ○ | 低分子抽出 | 一般に芳香族溶剤より影響は小さい。 |
| ジクロロメタン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無応力 | × | 著しい膨潤、クラック | 使用回避が望ましい。 |
| 潤滑油 | 市販油 | 23~100℃ | 長期接触 | 無応力 | ○ | 添加剤抽出、界面劣化 | 油種、温度、電圧印加条件を確認する。 |
| 過酸化水素 | 3~10% | 23℃ | 24 h | 無応力 | △ | 酸化、変色、界面劣化 | 高濃度・高温では不適となる可能性がある。 |
| 次亜塩素酸Na | 0.1~1%有効塩素 | 23℃ | 短時間 | 無応力 | △ | 酸化、変色、表面劣化 | pH、濃度、接触時間を厳密に確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
電子封止材用エポキシは多成分架橋複合材料であり、一義的なSP値を定義しにくい。未硬化エポキシ樹脂相の代表的なHildebrand SP値は、概ね20~24 MPa1/2程度を目安とする資料があるが、樹脂骨格、硬化率及びフィラー量により変動する。硬化後は溶解ではなく、膨潤、低分子抽出、界面劣化及び応力割れが支配的となるため、SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ(MPa1/2) | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値(MPa1/2) | EMC樹脂相とのSP値差目安 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| アセトン | 19.9 | 約0~3 | △~× | 硬化物は架橋しているため溶解より膨潤・抽出が主体となる。 |
| MEK | 19.0 | 約1~4 | △ | 配合・硬化度により膨潤する場合がある。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約1~5 | △ | 長時間接触に注意。 |
| トルエン | 18.2 | 約2~5 | △ | 芳香族溶剤は界面や低分子成分へ影響し得る。 |
| IPA | 23.5 | 約2~6 | ○~△ | 短時間洗浄は可能な場合が多いが、応力・温度を確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 約4~8 | ○ | 吸湿との複合影響に注意。 |
| 水 | 47.9 | 20以上 | ◎相当 | SP差は大きいが、吸湿・加水分解・界面剥離は別機構である。 |
| ジクロロメタン | 20.3 | 約0~3 | × | SP差が小さく、膨潤リスクが高い。 |
評価基準は、◎:非常に良好、○:概ね良好、△:注意が必要、×:不適である。ただし、架橋密度、温度、時間、応力、吸湿、フィラー界面及び実パッケージ構造により結果は変化する。
製法

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | 多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック等の硬化剤、促進剤、溶融シリカ、カップリング剤、難燃剤、離型剤、顔料。 |
| 重合・硬化方法 | エポキシ環とフェノール性OH、アミン、酸無水物等との付加反応により三次元架橋網目を形成する。EMCでは潜在性触媒を用い、成形時の加熱で急速硬化させる。 |
| コンパウンド化 | 原料を予備混合後、加熱ロール、ニーダー、連続混練機等で短時間溶融混練し、冷却、粉砕、タブレット化する。 |
| 代表反応式 | エポキシ環+Ar–OH → Ar–O–CH2–CH(OH)–CH2–。多官能成分により架橋網目となる。 |
| 成形・後硬化 | トランスファー又は圧縮成形後、必要に応じてポストキュアを行う。金型温度、硬化時間、流動長、充填圧力を管理する。 |
| 重要品質項目 | スパイラルフロー、ゲルタイム、溶融粘度、イオン性不純物、吸湿、CTE、Tg、反り、密着、ボイド、ワイヤ流れ、難燃性、アウトガス。 |
詳細な利用用途
| 用途 | 適性 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 半導体IC・LSI | ◎ | 量産性、絶縁性、耐湿性、機械保護に優れる。 | パッケージ形状、ワイヤ径、チップサイズ、リフロー条件を確認する。 |
| パワー半導体 | ◎ | 高Tg、高熱伝導、低応力グレードが利用される。 | SiC/GaNでは200℃級使用、CTEミスマッチ、部分放電を確認する。 |
| センサー | ○ | 機械・湿気保護が可能である。 | 感応部被覆、アウトガス、透湿、応力によるゼロ点変動に注意。 |
| LED | ○ | 黒色又は白色成形材料、反射用途などがある。 | 光学封止には黄変、光透過、屈折率を別途評価する。 |
| 車載ECU・モジュール | ◎ | 高温高湿、熱サイクル、振動への信頼性設計が可能。 | AEC-Q相当の部品評価は個別グレード・パッケージで実施する。 |
| コイル・モーター部品 | ○ | 絶縁、固定、耐振動に有効である。 | 含浸性、発熱、熱伝導、熱膨張を確認する。 |
| アンダーフィル | ◎ | はんだ接合部の応力緩和と疲労寿命向上に有効。 | 毛細管流動、フィラー沈降、硬化収縮、リワーク性を確認する。 |
| 一般筐体 | △ | 高剛性・難燃性は得やすい。 | 高コスト、脆性、再成形不可のため一般筐体には過剰性能となりやすい。 |
注意点・劣化・故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 界面剥離 | 吸湿、表面汚染、低密着、CTE差 | 高温高湿後のリフロー、熱サイクル | 電気絶縁低下、腐食、クラック | 表面処理、カップリング剤、低吸湿化、応力低減 | SAT、C-SAM、HAST、温度サイクル |
| ポップコーン | 吸湿水分の急膨張 | 吸湿後の急速リフロー | 内部剥離、外観膨れ、破裂 | ベーキング、防湿包装、低吸湿材料 | MSL、リフロー、C-SAM |
| パッケージクラック | 高弾性、硬化収縮、応力集中 | 厚肉差、角部、低温・高温サイクル | 絶縁破壊、湿気侵入 | 低応力化、R設計、硬化条件最適化 | 熱衝撃、温度サイクル、曲げ試験 |
| 反り | CTE・弾性率・硬化収縮の非対称 | 薄型、大面積、異種材料積層 | 実装不良、接合疲労 | 材料物性整合、成形・後硬化最適化 | 反り測定、熱機械解析 |
| 電食・腐食 | イオン性不純物、吸湿、電圧 | 高温高湿・バイアス | リーク、断線、短絡 | 低イオン化、洗浄、界面封止 | THB、HAST、イオンクロマトグラフィー |
| アウトガス | 未反応成分、低分子、添加剤 | 高温、真空、長時間 | 接点汚染、光学曇り、密着低下 | 高純度原料、十分な硬化、低揮発配合 | TGA、GC-MS、TML/CVCM相当 |
| 金型汚れ・バリ | 離型剤、低分子、過充填、型締不足 | 長期連続成形 | 外観不良、寸法不良、生産性低下 | 離型剤最適化、金型清掃、成形条件管理 | 連続成形試験、バリ測定 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的な扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・ELV | 対応可能なグレードが一般的である。 | メーカー適合証明、閾値、適用除外、製造拠点を確認する。 |
| REACH・SVHC | 登録・含有管理の対象となる。 | 最新版候補リスト、意図的添加、不純物、成形後含有を確認する。 |
| PFAS関連規制 | フッ素系離型剤・助剤等の有無が論点となる場合がある。 | 処方非開示成分を含め、メーカーへ個別照会する。 |
| UL 94 | V-0等の認証グレードが存在する。 | グレード、色、厚さ、ファイル番号を確認する。 |
| ハロゲンフリー | ノンハロゲン設計グレードが存在する。 | IEC 61249-2-21等の基準、総塩素・臭素を確認する。 |
| 自動車・半導体信頼性 | 用途別適合グレードが存在する。 | AEC-Qは部品規格であり、材料単独認証と誤認しない。JEDEC条件を実パッケージで確認する。 |
| 食品・医療 | 一般EMCの主要用途ではない。 | FDA、食品衛生法、USP Class VI、ISO 10993は個別グレード証明が必要。 |
環境・リサイクル性及び供給性
| 項目 | 評価・概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性/熱硬化性 | 熱硬化性 | 硬化後は再溶融できない。 |
| マテリアルリサイクル | 低い | 電子部品との複合体であり、粉砕再利用は用途が限定される。 |
| ケミカルリサイクル | 研究・限定用途 | 樹脂分解と金属・シリカ分離の経済性が課題である。 |
| サーマルリサイクル | 限定的 | 灰分が多く、難燃剤、金属、排ガス処理を考慮する。 |
| 価格区分 | 比較的高価格~高価格 | 高熱伝導、高Tg、低誘電等の特殊グレードは高価になりやすい。 |
| 国内入手性 | 良好 | 多くは電子材料向けB2B供給であり、少量購入は難しい場合がある。 |
| 供給形態 | 粉体、顆粒、タブレット、液状 | 保管温度、使用期限、防湿、ロット管理が必要である。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 電子封止材用エポキシとの違い |
|---|---|---|
| エポキシ樹脂 | 封止材の母材となる熱硬化性樹脂。 | EMCは高充填シリカ、難燃剤、離型剤等を含む電子用途専用コンパウンドである。 |
| シリコーン樹脂 | 低弾性、耐熱、耐候、電気絶縁性に優れる。 | エポキシEMCより柔軟で低応力だが、機械強度、ガスバリア、接着性が異なる。 |
| ビスマレイミド樹脂 | 高Tg、高耐熱の熱硬化性樹脂。 | より高温に対応しやすいが、脆性、加工温度、コストが高くなりやすい。 |
| シアネートエステル | 低誘電、高Tg、低吸湿に優れる。 | 高周波特性に優れるが、原料コスト、硬化管理、靭性でエポキシと差がある。 |
| ポリイミド | 高耐熱、高絶縁、薄膜形成に適する。 | フィルム・コーティング用途に強いが、EMCのような低コスト大量モールドとは異なる。 |
| PPS | 高耐熱・耐薬品性の熱可塑性樹脂。 | 再溶融成形可能で筐体・コネクタ向け。チップ直接封止の密着・低応力設計はEMCが有利。 |
| PEEK | 超耐熱・耐薬品性の熱可塑性樹脂。 | 再成形可能で靭性に優れるが、価格と成形温度が高く、一般半導体封止には用いにくい。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 住友ベークライト株式会社 | スミコン EMEシリーズ | 半導体用エポキシ樹脂封止材料を展開する主要メーカー。用途別の高耐熱、低反り、高信頼性材料を供給する。 |
| 京セラ株式会社 | 半導体用エポキシモールディングコンパウンド | 半導体・電子部品向けEMCを展開し、ノンハロゲン、高耐熱用途等に対応する。 |
| 信越化学工業株式会社 | KMCシリーズ | 低応力、低反り、高耐熱、高熱伝導等を特徴とする半導体封止材を展開する。 |
| レゾナック株式会社 | 半導体封止材・電子材料関連製品 | 半導体パッケージ向け材料を幅広く展開する。個別製品・供給状況は最新の公式資料確認が必要である。 |
メーカー製品の適合性、供給拠点、認証、製品名称及びグレード構成は変更される場合がある。採用時には各社の最新技術資料、SDS、認証書及び個別仕様書を確認する必要がある。
用途決定前の推奨確認試験
- 85℃・85%RH、500~1000 hを目安とする高温高湿試験及び吸湿後電気特性評価。
- 121℃加圧水蒸気又はHAST条件による界面剥離、腐食、リーク評価。
- 実装前処理レベルに応じた吸湿・リフロー試験、C-SAMによる内部剥離観察。
- 使用温度範囲を含む温度サイクル又は熱衝撃試験。反り、クラック、接合部疲労を確認する。
- 実パッケージでのトランスファー/圧縮成形試験。流動、ワイヤ流れ、ボイド、バリ、充填不足を確認する。
- イオン性不純物、体積抵抗率、絶縁破壊、誘電率・誘電正接及び高温バイアス試験。
- 高温用途ではDMA/TMA/TGA、熱伝導率、CTE、長期熱老化、界面密着及びアウトガス試験。
最終的な材料選定では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、使用時間、試験片形状、成形条件、後硬化条件、パッケージ構造及び法規制を確認する必要がある。
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