概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | UV硬化樹脂 |
| 略記号 | UV Resin、UV硬化型樹脂、光硬化樹脂、UV硬化材料 |
| IUPAC | 特定の単一化合物ではなく、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ビニルエーテルなどの反応性樹脂組成物であるため、統一されたIUPAC名はない。 |
| 英語名 | UV-curable Resin / Ultraviolet-curable Resin / Photocurable Resin |
| 日本語名 | UV硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、光硬化樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂 |
| 分類 | 熱硬化性樹脂、反応硬化型樹脂、光硬化型樹脂、コーティング用樹脂、接着剤用樹脂、3Dプリンター用樹脂 |
| プラスチック分類 | 一般には熱硬化性プラスチックに分類される。構造材料としてのエンプラ、スーパーエンプラというより、塗膜、接着、封止、造形、表面改質に用いられる反応性樹脂である。 |
| 化学式または代表構造 | 代表例:R-(OCO-CH=CH2)n、R-(OCO-C(CH3)=CH2)n、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基などを含む反応性構造 |
| CAS No. | UV硬化樹脂は混合物であり、一般に単一のCAS No.はない。構成成分であるウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、反応性希釈剤、光開始剤などに個別のCAS No.が付与される。 |
| 構造・主成分 | オリゴマー、モノマーまたは反応性希釈剤、光開始剤、添加剤、必要に応じて顔料、フィラー、難燃剤、レベリング剤などから構成される。 |
| 主な用途 | 塗料、インキ、接着剤、ハードコート、電子部品封止、プリント配線板、光学部材、3Dプリンター用レジン、歯科材料、ネイル材料、粘着剤、フィルムコーティングなど |
UV硬化樹脂は、紫外線を照射することにより、光開始剤から発生したラジカルまたはカチオンを起点として、短時間で架橋・硬化する樹脂組成物である。一般に、常温または比較的低温で硬化でき、乾燥炉を必要としない場合が多いため、省エネルギー性、生産性、低VOC化の面で有利である。
主成分は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシ系カチオン硬化樹脂などであり、用途により硬さ、柔軟性、密着性、耐薬品性、耐熱性、透明性を調整する。単一材料名というより、反応性オリゴマーと添加剤を組み合わせた配合系として理解する必要がある。
硬化後の性能は、樹脂骨格、官能基数、架橋密度、光開始剤、照射波長、積算光量、膜厚、酸素阻害、基材、後硬化条件により大きく変化する。実使用では、グレード、膜厚、照射条件、温度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間を確認することが重要である。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 硬化速度が速く、低温硬化が可能である。溶剤レスまたは低溶剤化しやすく、薄膜コーティング、精密接着、パターン形成に適する。硬度、耐擦傷性、透明性、耐薬品性を設計しやすい。 |
| 短所 | 紫外線が届かない部分は硬化しにくい。厚膜、着色系、影部、充填材が多い配合では硬化不良が起こりやすい。酸素阻害、硬化収縮、内部応力、黄変、アウトガスに注意が必要である。 |
| 外観 | 未硬化状態では透明から淡黄色の液状またはペースト状であることが多い。硬化後は透明、半透明、白色、着色、光沢、マットなど用途により異なる。 |
| 耐熱性 | 一般的なアクリレート系では中程度であり、連続使用温度はおおむね60~120℃程度である。高架橋型、エポキシ系、無機フィラー配合ではより高い耐熱性を示す場合がある。 |
| 耐薬品性 | 硬化後は水、アルコール、油類に対して比較的安定なグレードが多い。一方で、ケトン、エステル、芳香族溶剤、塩素系溶剤では膨潤、白化、クラックを生じることがある。 |
| 加工性 | 塗布、印刷、ディスペンス、インクジェット、スプレー、ロールコート、スピンコート、3Dプリントに適する。射出成形や押出成形のような熱可塑性樹脂の成形法とは性格が異なる。 |
| 分類上の注意 | 「UV硬化樹脂」は樹脂の硬化方式による分類であり、化学構造による単一分類ではない。エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどを含む総称である。 |
構造式
UV硬化樹脂は単一の化学構造を持つ材料ではないため、代表構造としてアクリレート系、メタクリレート系、エポキシ系、ビニルエーテル系の反応基を示す。
| 構造区分 | 代表的な構造表記 | 説明 |
|---|---|---|
| アクリレート基 | CH2=CH-COO-R | ラジカル重合により高速硬化する代表的なUV硬化官能基である。 |
| メタクリレート基 | CH2=C(CH3)-COO-R | アクリレートより硬化速度はやや遅い場合があるが、臭気、皮膚刺激性、硬化収縮の調整に使われる。 |
| ウレタンアクリレート | R-NH-COO-R’-OCO-CH=CH2 | ウレタン結合を持ち、柔軟性、強靭性、密着性を付与しやすい。 |
| エポキシアクリレート | Epoxy backbone-(OCO-CH=CH2)n | 硬度、耐薬品性、密着性に優れるが、硬化収縮や脆さに注意する。 |
| カチオン硬化エポキシ | 脂環式エポキシ基、グリシジルエーテル基 | 酸素阻害を受けにくく、硬化収縮が比較的小さい。硬化速度や後硬化挙動は配合により異なる。 |
代表的な構造単位
代表的な構造単位は、アクリレート基、メタクリレート基、ウレタン結合、エステル結合、エポキシ骨格、ポリエーテル骨格、シリコーン骨格などである。反応性官能基数が多いほど架橋密度は高くなりやすく、硬度、耐溶剤性、耐熱性は向上しやすいが、伸び、耐衝撃性、低収縮性は低下しやすい。
モノマーまたは構成単位
代表的な構成単位として、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーンアクリレート、TMPTA、HDDA、IBOA、NVP、HEMAなどが挙げられる。ただし、低分子モノマーは皮膚刺激性、臭気、揮発性、法規制の確認が必要である。
共重合体や変性グレード
UV硬化樹脂には、柔軟性を高めたポリエーテル変性品、耐候性を高めた脂肪族ウレタン系、低黄変グレード、高屈折率グレード、低収縮グレード、難燃グレード、無機フィラー配合グレード、食品接触を考慮したグレードなどがある。用途により、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂の特性を組み合わせる設計が行われる。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ウレタンアクリレート系 | ウレタン結合を有するアクリレートオリゴマー | 柔軟性、強靭性、密着性、耐摩耗性に優れる | 粘度が高い場合があり、配合により黄変や耐熱性に差がある | ハードコート、接着剤、フィルムコート、3Dプリント |
| エポキシアクリレート系 | エポキシ樹脂をアクリル酸などで変性したオリゴマー | 硬度、耐薬品性、密着性、反応性に優れる | 硬く脆くなりやすく、硬化収縮や黄変に注意 | インキ、塗料、レジスト、木工塗装、電子材料 |
| ポリエステルアクリレート系 | ポリエステル骨格を持つアクリレートオリゴマー | 比較的低粘度で、塗工性、顔料分散性、コストバランスが良い | 耐加水分解性、耐熱性、柔軟性は設計により差が大きい | 印刷インキ、コーティング、床材塗装、フィルム |
| シリコーンアクリレート系 | シリコーン骨格とアクリレート基を持つ樹脂 | 離型性、滑り性、撥水性、表面改質性に優れる | 密着性が低下する場合があり、再塗装性に注意 | 離型コート、撥水コート、表面改質剤 |
| カチオン硬化エポキシ系 | エポキシ樹脂、オキセタン、光酸発生剤を用いる | 酸素阻害を受けにくく、硬化収縮が比較的小さい | 湿度、塩基性成分、金属表面の影響を受けることがある | 電子部品封止、接着剤、光学接着、絶縁材料 |
| 水系UV硬化樹脂 | 水分散型または水溶性のUV硬化性樹脂 | 低VOC化しやすく、安全性、作業環境面で有利 | 乾燥工程が必要で、耐水性や硬化性に配合依存性がある | 水系塗料、紙コート、フィルムコート、木工塗装 |
| 3Dプリンター用UVレジン | 光造形用アクリレート、メタクリレート、エポキシ系組成物 | 高精細造形が可能で、透明、硬質、柔軟、耐熱などの設計が可能 | 後硬化、寸法変化、脆性、臭気、皮膚刺激性、未反応成分に注意 | SLA、DLP、LCD方式3Dプリント |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 射出成形 | × | 一般的な熱可塑性樹脂の射出成形には適さない。光硬化性成形、インモールドコーティングなどの特殊用途はある。 |
| 押出成形 | × | 通常のペレット押出成形材料ではない。UV硬化型インキ、コーティング液、粘着剤として塗工後に硬化する。 |
| ブロー成形 | × | ブロー成形には適さない。容器表面のUVコーティング用途では使用される。 |
| 圧縮成形 | △ | 透明型や光透過治具を用いる特殊な光硬化成形では使用できるが、一般的ではない。 |
| 真空成形 | × | 熱可塑性シートの真空成形材料ではない。成形済みシートへの表面コーティングとして用いられる。 |
| 切削加工 | △ | 硬化後の厚物や造形品は切削できる場合がある。ただし脆性、欠け、熱影響、粉じんに注意する。 |
| 塗布・コーティング | ◎ | ロールコート、バーコート、スプレー、スピンコート、ディップコートに適する。 |
| 印刷 | ◎ | オフセット、スクリーン、フレキソ、グラビア、インクジェットに用いられる。 |
| ディスペンス接着 | ◎ | 短時間固定、精密接着、電子部品接着、光学接着に適する。 |
| 3Dプリント | ◎ | SLA、DLP、LCD方式の光造形材料として広く用いられる。 |
代表グレード
| グレード区分 | 主な設計内容 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用グレード | 硬化速度、硬度、密着性、コストのバランスを重視 | 一般塗料、インキ、接着剤 | 耐熱性、耐薬品性、黄変性は個別確認が必要 |
| 耐熱グレード | 高架橋型、芳香族骨格、エポキシ系、無機フィラー配合など | 電子材料、耐熱コート、光学部材 | 脆性、内部応力、硬化収縮に注意 |
| 難燃グレード | リン系難燃剤、無機フィラー、難燃性オリゴマーを配合 | 電気・電子、フィルム、筐体表面処理 | 透明性、粘度、硬化性、UL94評価を確認する |
| GF・無機フィラー強化グレード | ガラスフィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素などを配合 | 封止、放熱、寸法安定、耐摩耗用途 | 光透過性低下により深部硬化が難しくなる場合がある |
| 摺動・低摩擦グレード | シリコーン、PTFE、ワックス、無機潤滑材を配合 | フィルム表面、保護コート、摺動部表面 | 密着性、再塗装性、印刷性が低下することがある |
| 食品接触配慮グレード | 低溶出、低臭気、法規制適合を考慮した配合 | 食品包装インキ、食品包装フィルムコート | 食品衛生法、FDA、EU規則、移行試験の確認が必要 |
| 医療用途配慮グレード | 低溶出、低細胞毒性、生体適合性を考慮 | 医療部材接着、歯科材料、分析チップ | ISO 10993、滅菌耐性、抽出物評価が必要 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 汎用アクリレート系 | ウレタンアクリレート系 | エポキシアクリレート系 | 無機フィラー配合系 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.05~1.25 | 1.05~1.20 | 1.10~1.30 | 1.30~2.20 | 液状樹脂、硬化物、フィラー量により変化する。 |
| 比重 | – | 1.05~1.25 | 1.05~1.20 | 1.10~1.30 | 1.30~2.20 | 代表値であり、3Dプリント用レジンでは顔料やフィラーの影響が大きい。 |
| 引張強さ | MPa | 20~60 | 10~70 | 40~90 | 30~100 | 柔軟グレードでは低く、硬質高架橋グレードでは高くなる。 |
| 伸び | % | 2~30 | 10~200 | 1~10 | 0.5~10 | ウレタン系では高伸びグレードがある。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 1000~3000 | 50~2500 | 2000~4000 | 3000~10000 | 架橋密度とフィラーに強く依存する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 1~5 | 2~20 | 1~4 | 1~8 | 厚み、ノッチ、後硬化条件により大きく変化する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 50~90 | 40~120 | 80~150 | 100~200 | 高耐熱グレードでは150℃以上を示す場合がある。 |
| 融点 | ℃ | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 硬化後は三次元架橋構造となるため、熱可塑性樹脂のような融点は通常示さない。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 40~100 | -20~120 | 80~160 | 80~180 | 柔軟タイプから高Tgタイプまで範囲が広い。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60~90 | 60~120 | 80~130 | 100~150 | 長期使用では黄変、酸化、加水分解、応力割れを確認する。 |
| 吸水率 | % | 0.2~1.5 | 0.3~2.0 | 0.1~1.0 | 0.1~0.8 | 親水性モノマーやウレタン結合が多い配合では高くなることがある。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1012~1016 | 1011~1016 | 1013~1016 | 1010~1016 | 帯電防止、導電フィラー配合では低下する。 |
| 成形収縮率・硬化収縮率 | % | 3~10 | 2~8 | 3~8 | 0.5~5 | 厚膜、接着、精密部品では内部応力と反りに注意する。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当~V-2相当 | HB相当~V-2相当 | HB相当~V-0相当 | HB相当~V-0相当 | 難燃グレードではUL94 V-0を狙う設計もあるが、厚みと配合に依存する。 |
| 酸素指数 | % | 18~25 | 18~26 | 22~30 | 25~40 | リン系、無機フィラー配合で向上する場合がある。 |
成形条件・硬化条件の目安
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常はペレット乾燥ではなく、必要に応じて脱泡、脱水、保管管理を行う | 水分に敏感なカチオン硬化系、電子材料用途では水分管理が重要である。 |
| シリンダー温度 | 該当しない | 一般的な射出成形用熱可塑性樹脂ではない。 |
| 金型温度 | 常温~80℃程度 | 光造形や透明型成形では、粘度、寸法安定性、硬化速度により調整する。 |
| UV波長 | 365nm、385nm、395nm、405nmなど | 光開始剤の吸収波長と光源を合わせる必要がある。 |
| 積算光量 | 数百~数千mJ/cm2 | 膜厚、顔料、フィラー、透明性、要求物性により大きく変わる。 |
| 照度 | 数十~数千mW/cm2 | 高照度では表面硬化が先行し、内部硬化や収縮応力に注意する。 |
| 硬化雰囲気 | 空気中、窒素雰囲気、真空、密閉部など | ラジカル硬化系では酸素阻害を受けることがある。 |
| 後硬化 | UV後硬化、熱後硬化、自然後硬化 | 3Dプリント品、厚膜、電子材料では後硬化により物性が安定する場合がある。 |
| 成形収縮率 | 0.5~10%程度 | アクリレート系は硬化収縮が比較的大きく、カチオンエポキシ系やフィラー配合で低減する場合がある。 |
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○ | 短時間接触では比較的安定なグレードが多い。濃酸、高温、長時間ではエステル結合やウレタン結合の劣化に注意する。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、アンモニア水 | △ | エステル結合を持つアクリレート系では、強アルカリ、高温、長時間で加水分解が起こる場合がある。 |
| 低級アルコール類 | エタノール、メタノール、IPA | ○ | 短時間接触では良好な場合が多いが、柔軟グレードや未硬化成分が多い場合は膨潤、白化に注意する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○~△ | 極性、浸透性、温度により膨潤することがある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン | △~× | 膨潤、軟化、クラックを起こしやすい。高架橋グレードでは耐性が向上する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的安定な場合が多いが、低極性モノマーを含む柔軟系では膨潤することがある。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | 溶解、膨潤、白化を生じやすい。耐溶剤グレードでも長時間接触は避ける。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | △~× | SP値が近く、膨潤や密着低下が起こりやすい。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解、膨潤、割れのリスクが高い。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ○~△ | 常温水では比較的安定なグレードが多い。温水、加圧蒸気、吸湿環境では加水分解、白化、密着低下に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、植物油、潤滑油 | ○ | 多くのグレードで比較的良好であるが、添加剤や可塑剤の影響を確認する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、アルコール混合燃料 | △ | 燃料中の芳香族成分、アルコール、添加剤により膨潤、軟化する場合がある。 |
SP値(溶解度パラメータ)
UV硬化樹脂硬化物の代表的なSP値(δ)は、おおむね18~24MPa1/2程度を目安とする。アクリレート系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、シリコーン変性系、フィラー配合系では大きく異なるため、単一値として扱わない方がよい。
SP値は溶剤との親和性を推定する目安であり、耐薬品性を単独で判定するものではない。実際の耐薬品性は、架橋密度、官能基、Tg、結晶性の有無、膜厚、残留モノマー、硬化度、温度、薬品濃度、応力、接触時間により変化する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下は、UV硬化樹脂硬化物の代表SP値を21MPa1/2と仮定した場合の目安である。実際には、樹脂骨格と硬化条件により評価が変わる。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | SP値差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 26.9 | ◎ | SP値差は大きいが、親水性基や吸水による白化、加水分解は別途確認が必要である。 |
| エタノール | 26.0 | 5.0 | ○ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 2.5 | △ | グレードにより膨潤、白化、密着低下に注意する。 |
| アセトン | 20.0 | 1.0 | × | 膨潤、軟化、クラックを生じやすい。 |
| MEK | 19.0 | 2.0 | × | 塗膜評価ではMEKラビング試験などで確認されることが多い。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 2.4 | △~× | エステル系溶剤は膨潤しやすい。 |
| トルエン | 18.2 | 2.8 | △~× | 芳香族溶剤に対しては高架橋グレードを選定する。 |
| キシレン | 18.0 | 3.0 | △ | 長時間接触、高温では注意が必要である。 |
| ヘキサン | 14.9 | 6.1 | ○ | 低極性溶剤には比較的安定な場合が多い。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 0.8 | × | 強い膨潤、溶解リスクがある。 |
| グリセリン | 33.8 | 12.8 | ◎~○ | SP値上は良好だが、吸湿性や温度条件を確認する。 |
| 鉱物油 | 16~18 | 3~5 | ○~△ | 油種、添加剤、温度により評価が変化する。 |
製法
| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | アクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー、エポキシ樹脂、ウレタンプレポリマー、反応性希釈剤、光開始剤、添加剤を用いる。 | 用途により低臭気、低粘度、低溶出、低黄変、耐熱、柔軟、難燃などを設計する。 |
| 重合方法 | ラジカル光重合、カチオン光重合、チオール・エン反応、ハイブリッド硬化などが用いられる。 | 酸素阻害、湿度、光透過性、熱履歴、基材表面の影響を確認する。 |
| 配合・混合 | オリゴマー、モノマー、光開始剤、添加剤を混合し、必要に応じて脱泡、ろ過、分散を行う。 | 顔料やフィラーを含む場合は分散性と深部硬化性が重要である。 |
| ペレット化やコンパウンド | 一般的には液状またはペースト状で供給される。特殊用途ではフィルム、シート、プリプレグ状で供給される場合がある。 | 熱可塑性樹脂のような汎用ペレット材とは異なる。 |
| 添加剤・充填材・強化材 | シリカ、アルミナ、ガラスフレーク、難燃剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、密着付与剤、シランカップリング剤などを使用する。 | 添加量が多いと粘度上昇、硬化阻害、沈降、光透過性低下が起こる。 |
| 硬化工程 | 塗布または成形後、UV-LED、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いて照射硬化する。 | 波長、照度、積算光量、膜厚、照射距離、温度を管理する。 |
代表的な反応式
ラジカル硬化型アクリレートの基本反応式は、次のように表される。
光開始剤 + hν → ラジカル
R-OCO-CH=CH2 + ラジカル → R-OCO-CH・-CH2 → 架橋ポリマー
多官能アクリレートの場合は、複数のC=C結合が連鎖反応により結合し、三次元架橋構造を形成する。
カチオン硬化型エポキシの基本反応式は、次のように表される。
光酸発生剤 + hν → H+酸種
エポキシ基 + H+ → 開環カチオン → ポリエーテル型架橋構造
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 要求特性 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装加飾コート、ヘッドランプコート、センサー部材、接着、保護膜 | 耐擦傷性、耐候性、密着性、耐熱性、低アウトガス | 温湿度、紫外線、薬品、燃料、洗浄剤への耐性を確認する。 |
| 電気・電子 | 基板保護、レジスト、封止、絶縁コート、部品固定、ディスプレイ接着 | 絶縁性、低イオン、低アウトガス、耐湿熱、寸法安定性 | 未硬化部、影部、熱サイクル、吸湿による信頼性低下に注意する。 |
| 機械部品 | 表面保護、摩耗防止、摺動部表面改質、マーキング | 硬度、耐摩耗性、密着性、耐油性 | 繰返し荷重、衝撃、剥離、応力割れを評価する。 |
| 医療 | 分析チップ、カテーテル部材接着、歯科材料、医療用透明部品 | 低溶出、生体適合性、透明性、滅菌耐性 | 医療用途では専用グレード、抽出物、細胞毒性、滅菌後物性を確認する。 |
| 食品機械・包装 | 食品包装インキ、包装フィルムコート、ラベル、保護膜 | 低臭気、低移行、耐摩耗性、耐水性 | 食品接触規制、移行試験、未反応モノマー、光開始剤残渣を確認する。 |
| 建築・設備 | 床材コート、化粧板、建材フィルム、補修材、保護コーティング | 耐擦傷性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性 | 屋外用途では黄変、チョーキング、密着低下に注意する。 |
| 光学部材 | レンズ接着、ハードコート、光ファイバー、導光板、OCA、OCR | 透明性、屈折率、低黄変、低収縮、低複屈折 | 気泡、アウトガス、硬化収縮、湿熱白化を確認する。 |
| 3Dプリンター | 試作部品、治具、歯科模型、フィギュア、透明造形品、耐熱造形品 | 造形精度、硬化性、強度、靭性、寸法安定性 | 後硬化、洗浄、未反応成分、脆性、長期耐候性を確認する。 |
法規制・安全性
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、フタル酸エステル類などの制限物質 | 電子材料用途ではグレードごとの適合証明を確認する。 |
| REACH | SVHC、登録物質、制限物質、用途制限 | 光開始剤、モノマー、添加剤に注意する。 |
| 食品衛生 | 食品接触材料、包装材料、インキ、移行試験 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、FDA、EU規則など用途地域ごとの確認が必要である。 |
| FDA | 食品接触用途、医療関連用途での適合性 | 材料単体ではなく、配合、硬化条件、使用条件ごとの確認が必要である。 |
| 医療用途 | ISO 10993、生体適合性、滅菌耐性、抽出物評価 | 一般工業用UV樹脂を医療用途へ流用しない。 |
| 作業安全 | 皮膚刺激性、感作性、臭気、揮発成分、紫外線暴露 | 未硬化樹脂は手袋、保護眼鏡、換気、遮光管理が必要である。 |
使用上の注意点
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 加水分解 | エステル結合、ウレタン結合を含む配合では、高温高湿やアルカリ環境で劣化することがある。 | 耐湿熱グレードの選定、後硬化、吸水率評価を行う。 |
| 応力割れ | 硬化収縮、基材との熱膨張差、溶剤接触によりクラックが発生する場合がある。 | 低収縮グレード、柔軟化、膜厚管理、応力緩和設計を行う。 |
| 吸湿 | 親水性モノマーやウレタン系では吸湿により白化、寸法変化、絶縁低下が起こる場合がある。 | 低吸水グレード、乾燥保管、防湿設計を行う。 |
| 熱劣化 | 高温長時間で黄変、硬化物の脆化、密着低下が起こることがある。 | 耐熱グレード、脂肪族骨格、安定剤、熱老化試験を検討する。 |
| アウトガス | 未反応モノマー、光開始剤分解物、添加剤がアウトガスとして発生する場合がある。 | 低アウトガスグレード、十分なUV照射、熱後硬化、真空評価を行う。 |
| 酸素阻害 | ラジカル硬化では表面がべたつく場合がある。 | 窒素パージ、高照度照射、アミン助剤、ワックス添加、カチオン系の検討を行う。 |
| 深部硬化不足 | 厚膜、黒色、顔料入り、フィラー入りでは紫外線が届きにくい。 | 波長選定、光開始剤選定、両面照射、熱硬化併用を検討する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| エポキシ樹脂 | 二液硬化、熱硬化、接着性、耐薬品性に優れる | UV硬化樹脂は短時間硬化が可能だが、光が届かない部分では硬化しにくい。 |
| エポキシアクリレート | 硬度、密着性、耐薬品性に優れるUV硬化オリゴマー | UV硬化樹脂を構成する代表的な主成分の一つである。 |
| ウレタンアクリレート | 柔軟性、強靭性、耐摩耗性を付与しやすい | 柔軟性や伸びを重視するUV硬化樹脂に使われる。 |
| ポリエステルアクリレート | 低粘度、塗工性、コストバランスに優れる | インキ、コーティング用途のUV硬化樹脂でよく用いられる。 |
| シリコーン樹脂 | 耐熱性、撥水性、離型性、耐候性に優れる | シリコーンアクリレートとしてUV硬化性を付与する場合がある。 |
| ポリウレタン | 柔軟性、弾性、耐摩耗性に優れる | UV硬化型ではウレタンアクリレートとして短時間硬化と柔軟性を両立する。 |
| フェノール樹脂 | 耐熱性、難燃性、寸法安定性に優れる熱硬化性樹脂 | フェノール樹脂は主に熱硬化型であり、UV硬化樹脂より硬化工程が高温長時間になりやすい。 |
| 不飽和ポリエステル樹脂 | FRP、注型、塗料に使われる熱硬化性樹脂 | UV硬化ポリエステルアクリレートとは硬化機構や配合が異なる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三菱ケミカル株式会社 | SHIKOH | ウレタンアクリレート系を中心としたUV硬化樹脂を展開している。ハードコート、接着、コーティング用途などに用いられる。 |
| レゾナック株式会社 | HAシリーズなど | UV硬化型ポリマー、機能性樹脂を展開している。用途に応じたカスタム設計も行われる。 |
| 新中村化学工業株式会社 | NK Oligo、NK Ester | アクリレート、メタクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどのUV硬化材料を扱う。 |
| 三洋化成工業株式会社 | SANRAD、NEOJET | UV硬化樹脂、インクジェット関連材料、コーティング材料などを展開している。 |
| 信越化学工業株式会社 | UV硬化型シリコーン、ハードコート材料 | シリコーン技術を利用したUV硬化型材料を展開している。表面改質、ハードコート、離型用途などがある。 |
| allnex | EBECRYL、UCECOAT、IRR | UV/EB硬化用オリゴマー、モノマー、水系UV樹脂などを展開する世界的メーカーである。 |
| Arkema | Sartomer | アクリレートモノマー、オリゴマー、UV硬化材料を展開している。 |
| IGM Resins | Omnirad、Omnipol、Photomer | 光開始剤、UV硬化用モノマー・オリゴマーを扱うメーカーである。 |
| 日本化薬株式会社 | KAYARAD | アクリレート系モノマー、オリゴマーなどの光硬化材料を展開している。 |
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