概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリアリールエーテルケトン |
| 略記号 | PAEK |
| IUPAC | Polyarylene ether ketone類の総称。単一構造ではなく、代表例のPEEKは poly(oxy-1,4-phenyleneoxy-1,4-phenylenecarbonyl-1,4-phenylene) と表記される。 |
| 英語名 | Polyaryletherketone / Poly(aryl ether ketone) |
| 日本語名(別名) | ポリアリールエーテルケトン、ポリアリーレンエーテルケトン、芳香族ポリエーテルケトン |
| 分類 | 芳香族ポリエーテルケトン系樹脂 |
| プラスチック分類 | 熱可塑性樹脂、主として半結晶性樹脂、スーパーエンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | 一般構造:−Ar−O−Ar−CO−Ar− の繰返しを基本とする。Arは主としてp-フェニレン基である。 |
| CAS No. | PAEKは材料群の総称であり単一CAS No.は定めにくい。個別材料ではPEEK、PEK、PEKK等で番号が異なる。 |
| 構造・主成分 | 芳香環、エーテル結合(−O−)、ケトン結合(−CO−)からなる剛直な主鎖を持つ。エーテル/ケトン比、芳香環の結合様式、異性体比により融点、Tg、結晶化速度、靱性、加工温度が変化する。 |
| 主な用途 | 航空宇宙・自動車の高温部品、半導体製造装置、電気・電子絶縁部品、ギア・軸受・シール、油空圧部品、医療機器、食品機械、複合材料マトリックス、耐熱フィルム・チューブ |
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、芳香環をエーテル結合とケトン結合で連結した高性能熱可塑性樹脂群の総称である。代表材料として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)がある。エーテル結合は主鎖の可動性と加工性に寄与し、ケトン結合と芳香族骨格は剛性、耐熱性、耐薬品性に寄与する。
PAEKは、耐熱性、耐疲労性、耐クリープ性、耐摩耗性、耐加水分解性、難燃性、電気絶縁性を高い水準で組み合わせられるため、金属、熱硬化性樹脂、他のスーパーエンプラの代替候補となる。特にPEEKは供給実績と規格整備が進み、航空宇宙、自動車、半導体、医療、食品、油・ガス、機械部品に広く用いられる。
一方、PAEKは材料群として構造幅が広く、物性・成形条件を単一値で一般化できない。本ページの比較用代表値は、特に断りがない限り、非強化・無充填・標準粘度のPEEKを基準とする。実使用ではPAEK種、グレード、結晶化度、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、成形条件を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 高耐熱、高温機械強度、耐疲労性、耐クリープ性、耐薬品性、耐加水分解性、耐放射線性、難燃性、電気絶縁性を高い水準で両立しやすい。 |
| 短所 | 原料価格と加工コストが高い。溶融温度が高く、専用設備、金型加熱、厳密な乾燥・滞留管理を要する。濃硫酸等の強酸には侵される。 |
| 外観 | 未強化自然色は淡褐色~褐色、不透明。結晶化度、厚さ、顔料、強化材により色調・光沢が変化する。 |
| 耐熱性 | PAEK群として高い。代表的PEEKはTg約143~150℃、融点約343℃であり、連続使用温度は用途・認証・グレードにより概ね240~260℃程度が目安となる。PEKや一部PEKKはさらに高融点となる。 |
| 耐薬品性 | 多くの有機溶剤、燃料、油、弱酸、アルカリに良好である。ただし濃硫酸、発煙硫酸、強酸化性薬品、高温高濃度薬品では分解・膨潤・表面劣化に注意する。 |
| 加工性 | 射出、押出、圧縮、フィルム、切削、溶着、積層造形に対応する。加工窓はPAEK種と分子量で異なる。高い樹脂温度と金型温度が必要である。 |
| 分類上の注意 | PAEKは樹脂群の総称である。PEEK、PEK、PEKK、PEEKK、PEKEKK等を同一材料として扱わず、エーテル/ケトン比、異性体比、結晶性、グレードを確認する。 |
構造式

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | 一般式:−[Ar−O−Ar−CO−Ar−]ₙ−。実際にはエーテル結合数、ケトン結合数、フェニレンの結合位置が材料種により異なる。 |
| 構造の特徴 | 剛直な芳香族骨格、高い結合エネルギー、半結晶性、エーテル/ケトン比の設計により、耐熱性と溶融加工性を両立する。 |
| モノマーまたは構成単位 | 芳香族ジハライドと芳香族ジオールの組合せが代表的である。PEEK型ではジフルオロベンゾフェノン類とヒドロキノン類が用いられる。 |
| PEEK | −O−Ph−O−Ph−CO−Ph− を代表とし、PAEKの中で加工性、靱性、耐熱性のバランスが良い。 |
| PEK | −O−Ph−CO−Ph− を代表とし、PEEKよりケトン比率が高く、高融点・高温剛性となる傾向がある。 |
| PEKK | −O−Ph−CO−Ph−CO−Ph− を代表とし、テレフタロイル/イソフタロイル比により結晶化速度と融点を調整できる。 |
| 共重合・変性 | 異なるPAEK構成単位の共重合、末端変性、分岐、GF・CF・PTFE・黒鉛・無機フィラー配合等により、流動、耐熱、摺動、導電、寸法安定性を調整する。 |
種類・代表グレード
| 種類・グレード | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| PEEK | エーテル結合2、ケトン結合1を代表とする半結晶性PAEK | 供給実績、耐薬品性、靱性、加工技術、医療・航空用途のデータが豊富 | 高価。約400℃前後の高温加工を要する | 射出部品、押出材、フィルム、チューブ、医療、航空宇宙 |
| PEK | エーテル結合1、ケトン結合1。PEEKよりケトン比率が高い | 高温剛性、耐熱性 | 融点・加工温度が高く、加工窓が狭い場合がある | 高温機械部品、特殊複合材 |
| PEKK | エーテル結合1、ケトン結合2。T/I異性体比により結晶化を調整可能 | 耐熱、耐薬品、積層造形・複合材で結晶化制御しやすい | グレード間差が大きく、乾燥と熱履歴管理が重要 | 航空宇宙複合材、3Dプリント、油ガス |
| PEEKK/PEKEKK | エーテル・ケトン配列を変えた高ケトン比PAEK | 高温性能、耐薬品性、結晶性設計の自由度 | 商業グレードと供給性が限定される | 特殊高温部品、研究・限定用途 |
| 非強化・標準 | PAEK単体。粘度別に射出、押出、粉末グレードを設定 | 靱性、電気絶縁、純度、切削性 | 高温で剛性低下。結晶化収縮に注意 | 一般機械部品、絶縁部品、素材 |
| GF強化 | ガラス繊維20~30質量%が代表例 | 高剛性、低収縮、高HDT、寸法安定性 | 異方性、ウェルド低下、繊維浮き、摩耗性 | 構造部品、コネクタ、ポンプ、筐体 |
| CF強化 | 炭素繊維20~40質量%が代表例 | 非常に高い比強度・比剛性、低熱膨張、耐摩耗 | 導電性、異方性、相手材摩耗、コスト | 航空宇宙、自動車、摺動・高荷重部品 |
| 摺動・低摩擦 | PTFE、黒鉛、CF等を配合 | 摩擦・摩耗低減、PV特性向上 | 強度・靱性・電気特性が変化 | 軸受、シール、ギア、コンプレッサー部品 |
| 食品・医療 | 抽出物、純度、生体適合性、トレーサビリティを管理した個別グレード | 蒸気滅菌、薬品洗浄、繰返し使用への適性 | 材料名だけでは適合を断定できない | 食品接触部品、手術器具、インプラント(専用グレード) |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 主要加工法。高温仕様シリンダー、耐熱金型、適切な結晶化管理が必要。 |
| 押出成形 | ◎ | 棒、板、チューブ、フィルム、電線被覆に適する。高粘度グレードと熱安定管理が重要。 |
| ブロー成形 | △ | 高溶融強度グレードと高温設備が必要で、一般用途は限定的。 |
| インフレーション成形 | △ | 特殊フィルム用途。設備温度、バブル安定性、結晶化制御が難しい。 |
| Tダイフィルム成形 | ○ | 耐熱フィルムに適用可能。ダイ温度均一性と延伸・アニール管理が必要。 |
| 真空成形・圧空成形 | △ | シート予熱温度と結晶化度の管理が必要。深絞りは難しい場合がある。 |
| 圧縮成形 | ○ | 粉末、厚肉素材、複合材に用いられる。加熱・冷却時間が長い。 |
| トランスファー成形 | × | 一般的な熱硬化性トランスファー成形の対象ではない。 |
| 3Dプリント | ○ | 高温FDM、レーザー焼結等。高温チャンバー、層間接着、結晶化・反り管理が必要。 |
| 切削加工 | ◎ | 押出・圧縮素材から精密加工可能。発熱、残留応力、バリ、寸法変化に注意。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、振動、レーザー、超音波等が可能。結晶化度と接合面温度が強度を左右する。 |
| 接着 | △ | 表面が不活性で接着しにくい。プラズマ、コロナ、粗化、専用プライマーが有効。 |
| 塗装・印刷 | △ | 未処理では密着が不安定。表面処理と耐熱インキ・塗料の選定が必要。 |
| めっき・蒸着 | △ | 前処理と密着層設計が必要。用途別に実部品評価する。 |
| レーザーマーキング | ○ | 顔料・添加剤を含む専用グレードで安定しやすい。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | 要 | - | - | 吸湿量は小さいが、加水分解、シルバー、ガス抑制のため乾燥を推奨 |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | 150 | 120~160 | 一般に3~4時間。メーカー条件優先 |
| 推奨乾燥時間 | h | 3 | 2~4 | 露点−30℃以下の除湿乾燥が望ましい |
| 許容含水率 | % | 0.02 | 0.01~0.05 | 高品質成形では低く管理する |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 350 | 340~370 | グレード・成形機で調整 |
| シリンダー温度・圧縮部 | ℃ | 380 | 370~395 | 局所過熱を避ける |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 395 | 385~410 | PAEK種により400℃超の場合あり |
| ノズル温度 | ℃ | 395 | 385~410 | コールドスラッグ、糸引き、分解に注意 |
| 樹脂温度 | ℃ | 395 | 380~410 | 実測管理が望ましい |
| 金型温度 | ℃ | 180 | 160~200 | 高結晶化・高寸法安定性には高温金型 |
| 射出圧力 | MPa | 100 | 80~160 | 肉厚、流動長、GF/CFで調整 |
| 保圧 | MPa | 60 | 40~100 | 過大保圧は残留応力・バリの原因 |
| 背圧 | MPa | 5 | 2~10 | 過度なせん断発熱を避ける |
| 射出速度 | - | 中~高速 | グレード依存 | 充填不足と焼けのバランスを取る |
| スクリュー回転数 | rpm | 50 | 30~80 | 低~中速を基本とし滞留を抑える |
| 滞留時間 | min | 5 | 可能な限り短時間 | 長時間滞留、停止時の樹脂炭化に注意 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.0 | 0.8~1.2 | 非強化PEEK代表 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.3 | 1.1~1.5 | 非強化PEEK代表 |
| 推奨肉厚 | mm | 2.0 | 1.0~4.0 | 薄肉は高流動・高金型温度が必要 |
| 抜き勾配 | ° | 1.0 | 0.5~2.0 | 表面、深さ、強化材で調整 |
| アニール | - | 条件により推奨 | - | 残留応力、結晶化度、寸法安定性を改善 |
| 推奨アニール温度 | ℃ | 200 | 180~250 | 段階昇温・徐冷が望ましい |
| 推奨アニール時間 | h | 2 | 1~4 | 肉厚と寸法要求で調整 |
上記は非強化PEEKを中心とする一般的な目安である。PEK、PEKK、高流動、高粘度、GF・CF強化、粉末、フィルム、医療グレードでは条件が異なる。メーカーの最新成形条件、成形機の耐熱仕様、スクリュー・シリンダー材質、金型温調能力、パージ材適合性を優先する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 熱板溶着 | ◎ | 融着面温度、加圧、結晶化、冷却を管理する。 |
| 振動溶着 | ○ | 大型部品に適用可能。バリ、発熱、溶着リブ設計に注意。 |
| 超音波溶着 | ○ | 小型部品に適用可能。エネルギーダイレクター設計が重要。 |
| レーザー溶着 | ○ | 透過材/吸収材の組合せを設計する。自然色PAEKは光学条件確認。 |
| 高周波溶着 | × | 一般に誘電加熱適性が低く、主流ではない。 |
| 接着剤接合 | △ | プラズマ、コロナ、粗化、化学処理、専用プライマーを検討。 |
| 機械締結 | ◎ | クリープ、座面応力、締付トルク、熱膨張差を考慮。 |
| タッピングねじ | ○ | 下穴径、ボス肉厚、ノッチ、繰返し脱着を評価。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面処理と耐熱塗料・インキが必要。 |
| めっき | △ | 粗化・触媒化・密着層の工程開発が必要。 |
代表的な物性値又は機械的性質
非強化・無充填・標準PEEKを基準とする比較用物性
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 試験温度・条件 | 材料状態 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.30 | 1.29~1.32 | ISO 1183 | 23℃ | 絶乾~成形直後 | 代表的な非強化PEEK。PAEK種により異なる | A |
| 比重 | 無次元 | 1.30 | 1.29~1.32 | ISO 1183 | 23℃ | 絶乾~成形直後 | 密度の水基準表記 | A |
| 吸水率・24時間 | % | 0.10 | 0.05~0.15 | ISO 62 | 23℃ | 標準状態 | 試験片厚さ・前処理で変動 | B |
| 飽和吸水率 | % | 0.45 | 0.40~0.60 | ISO 62 | 23℃ | 吸湿平衡 | 代表的非強化PEEK | A |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.0 | 0.8~1.2 | ISO 294-4 | 成形条件依存 | 成形直後 | 結晶化度、ゲート、肉厚で変動 | A |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.3 | 1.1~1.5 | ISO 294-4 | 成形条件依存 | 成形直後 | 異方性を考慮 | A |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 98 | 95~105 | ISO 527-2 | 23℃ | 乾燥状態 | 非強化標準グレード | A |
| 引張弾性率 | GPa | 4.0 | 3.6~4.2 | ISO 527-1 | 23℃ | 乾燥状態 | 非強化標準グレード | A |
| 引張破断伸び | % | 25 | 20~45 | ISO 527-2 | 23℃ | 乾燥状態 | 分子量、結晶化度、試験速度で変動 | A |
| 曲げ強さ | MPa | 160 | 150~170 | ISO 178 | 23℃ | 乾燥状態 | 降伏/規定ひずみの定義を要確認 | A |
| 曲げ弾性率 | GPa | 3.8 | 3.6~4.1 | ISO 178 | 23℃ | 乾燥状態 | 引張弾性率と混同しない | A |
| 圧縮強さ | MPa | 125 | 115~135 | ISO 604 | 23℃ | 乾燥状態 | 短時間値 | A |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | 7.0 | 5.5~9.0 | ISO 180/A | 23℃ | 乾燥状態 | ASTMのJ/m値と直接比較しない | A |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチなし | kJ/m² | データなし | データなし | ISO 180/U | 23℃ | 乾燥状態 | 多くの標準グレードでNB(破壊せず) | A |
| ガラス転移温度 | ℃ | 150 | 143~152 | ISO 11357-2 | DSC | 乾燥状態 | onsetとmidpointを区別 | A |
| 融点 | ℃ | 343 | 340~345 | ISO 11357-3 | DSC | 乾燥状態 | PEEK代表値。PEK・PEKKは異なる | A |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | 152 | 150~160 | ISO 75-2/Af | 未アニール | 乾燥状態 | 非強化PEEK。強化材で大幅上昇 | A |
| 連続使用温度 | ℃ | 250 | 240~260 | メーカー長期評価・UL RTI等 | 用途依存 | 乾燥状態 | グレード、荷重、雰囲気で異なる目安 | B |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 300 | 280~320 | 代表値、規格不明 | 短時間 | 乾燥状態 | 荷重・時間を要確認 | C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.29 | 0.25~0.32 | ISO 22007等 | 23℃ | 乾燥状態 | 結晶化度と測定方向で変動 | B |
| 線膨張係数・流動方向 | 10⁻⁵/K | 4.5 | 4.0~5.0 | ISO 11359-2 | Tg未満 | 成形直後 | 非強化PEEK | A |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1E16 | 1E15~1E17 | IEC 60093等 | 23℃ | 乾燥状態 | 吸湿・温度で低下 | B |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 17~25 | IEC 60243等 | 23℃ | 乾燥状態 | 厚さ依存 | B |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 3.2 | 3.1~3.4 | IEC 60250等 | 23℃ | 乾燥状態 | 周波数・結晶化度依存 | B |
| 誘電正接・1 MHz | 無次元 | 0.003 | 0.002~0.005 | IEC 60250等 | 23℃ | 乾燥状態 | 周波数・温度依存 | B |
| UL 94燃焼性 | 等級 | V-0 | グレード依存 | UL 94 | 厚さ依存 | 認証グレードのみ | 材料群一律ではない。個別UL認証確認 | B |
| 限界酸素指数・LOI | % | 35 | 34~36 | ISO 4589等 | 23℃ | 標準状態 | 代表的PEEK目安 | B |
代表値は特定メーカーの単一グレードを材料群全体へ拡張するものではない。比較機能では「PAEK群の標準値」ではなく「非強化・標準PEEK基準」として格納することが望ましい。PEK、PEKK、共重合PAEKでは融点、Tg、結晶化速度、HDT、流動性が異なる。
強化・改質グレードの代表比較
| グレード区分 | 強化材含有率(質量%) | 強化材 | 密度(g/cm³) | 引張強さ(MPa) | 引張弾性率(GPa) | 破断伸び(%) | 曲げ強さ(MPa) | 曲げ弾性率(GPa) | HDT・1.80MPa(℃) | 成形収縮率・流動(%) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| GF30強化PEEK | 30 | GF | 1.51 | 172 | 11.5 | 2.2 | 250 | 11.0 | 328 | 0.30 | 静的高剛性、低収縮。繊維配向に注意 |
| CF30強化PEEK | 30 | CF | 1.40~1.43 | 200~230 | 18~25 | 1.5~2.5 | 280~350 | 18~25 | 300超 | 0.30~0.50 | 高比剛性、低熱膨張、導電性 |
| CF40強化PEEK | 40 | CF | 1.44 | 240~260 | 30~35 | 1.0~1.8 | 350~420 | 28~35 | 300超 | 0.10~0.50 | 極めて高剛性。脆性・異方性・相手材摩耗に注意 |
| 摺動グレード | グレード依存 | CF/PTFE/黒鉛等 | 1.40~1.55 | 90~180 | 5~18 | 1~5 | 120~260 | 5~16 | グレード依存 | グレード依存 | 摩擦係数・摩耗は相手材、PV、潤滑、温度で確認 |
難燃性
PAEKは芳香族骨格を持つため本質難燃性が高く、PEEKでは薄肉を含めUL 94 V-0を取得した個別グレードが多い。ただしUL 94等級は材料名だけでは決まらず、グレード、試験片厚さ、色、強化材、添加剤、製造拠点に依存する。限界酸素指数(LOI)は代表的PEEKで約34~36%が目安である。
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア(0~5) | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 5 | 非強化でも約100MPa、強化材では大幅向上 |
| 剛性 | 4 | 非強化は約4GPa。GF/CFで5相当まで向上するが材料群評価は4 |
| 衝撃強度 | 4 | 非強化は靱性が高いが、ノッチ・結晶化度・強化材で変化 |
| 耐熱性 | 5 | Tg・融点・長期耐熱が高く、高温機械特性に優れる |
| 低温特性 | 4 | 低温でも比較的靱性を保持するが実グレード評価が必要 |
| 耐薬品性 | 5 | 濃硫酸等を除き広範な薬品に優れる |
| 耐候性 | 4 | 芳香族骨格で比較的良好だが長期UVは安定化・色調評価が必要 |
| 耐加水分解性 | 5 | 熱水・蒸気への耐久性が高い |
| 寸法安定性 | 4 | 低吸水だが結晶化収縮と繊維異方性に注意 |
| 低吸水性 | 5 | 飽和吸水率は一般に0.4~0.6%程度 |
| 摺動性 | 4 | 標準材でも良好。専用摺動グレードでさらに向上 |
| 耐摩耗性 | 5 | 高温・高荷重摺動に強い |
| 電気絶縁性 | 5 | 広い温度・周波数域で良好。CF・導電材配合は除く |
| 難燃性 | 5 | 本質難燃性が高くV-0認証グレードが多い |
| 透明性 | 1 | 一般的PAEKは不透明 |
| 成形加工性 | 2 | 溶融成形可能だが約400℃級設備と高温金型が必要 |
| 切削加工性 | 4 | 素材から精密加工可能。発熱・残留応力管理が必要 |
| 接着性 | 2 | 表面不活性で前処理が必要 |
| リサイクル性 | 3 | 熱可塑性だが高価・高温・複合材分離が課題 |
| 価格優位性 | 1 | 極めて高価格帯 |
耐薬品性
以下は主として非強化PEEKの一般的な傾向であり、PAEK種、結晶化度、温度、濃度、接触時間、浸漬/蒸気/短時間接触、残留応力、外部荷重、薬品混合物、添加剤により変化する。特に濃硫酸、発煙硫酸、強酸化性混酸、高温酸化剤は不適となる場合がある。
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触時間 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃ | 長期浸漬 | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温では吸水と寸法変化を確認 |
| 温水 | - | 80℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 軽微な吸水 | 結晶化度・残留応力を確認 |
| 水蒸気 | 飽和 | 121~134℃ | 反復滅菌 | 無応力 | ◎ | 一般に良好 | 医療・食品用途は専用グレード証明を確認 |
| 塩酸 | 10~20% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温・高濃度は個別確認 |
| 硫酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 概ね良好 | 濃度上昇で急激に悪化 |
| 硫酸 | 98% | 23℃ | 短時間~浸漬 | 無応力 | × | 溶解・スルホン化 | PEEKは濃硫酸に溶解し得る |
| 硝酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 酸化劣化注意 | 高濃度・高温は△~× |
| 酢酸 | 50% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温条件確認 |
| 水酸化ナトリウム | 30% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温・応力下も比較的良好だが実液試験推奨 |
| 水酸化カリウム | 30% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温条件確認 |
| エタノール | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 残留応力部品も一般に良好 |
| IPA | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 洗浄用途に広く適用 |
| グリセリン | 99% | 80℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温長期は寸法確認 |
| MMB(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール) | - | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 一般に大きな膨潤は起こりにくい | 公開データが限定的なため実液試験推奨 |
| アセトン | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | PAEKは多くのケトンに耐える |
| MEK | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温・応力下を確認 |
| 酢酸エチル | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 長期高温は確認 |
| THF | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 概ね良好 | 高温・応力・共重合PAEKで差 |
| トルエン | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 高温では透過・膨潤を確認 |
| キシレン | 混合 | 80℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 概ね良好 | 温度上昇時は寸法・強度確認 |
| n-ヘキサン | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 燃料混合物は別途確認 |
| ジクロロメタン | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 概ね良好 | 高温・長期、応力下は確認 |
| クロロホルム | 99% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 概ね良好 | グレード差・高温条件確認 |
| ガソリン | 市販相当 | 23℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 含酸素燃料、添加剤、温度を確認 |
| 軽油 | 市販相当 | 80℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | バイオディーゼル混合は別評価 |
| 潤滑油 | 鉱油系 | 150℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 一般に良好 | 添加剤パッケージ別に確認 |
| ブレーキ液 | グリコールエーテル系 | 120℃ | 500 h | 無応力 | ○ | 概ね良好 | 吸湿液・添加剤・応力下を確認 |
| 冷却液 | 50%エチレングリコール水溶液 | 120℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 一般に良好 | 酸化劣化液、金属イオンを含む実液で確認 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 1%有効塩素 | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 酸化・変色注意 | 高濃度、高温、長期は△ |
| 過酸化水素 | 30% | 23℃ | 168 h | 無応力 | ○ | 酸化劣化注意 | 高温・金属触媒共存で厳しくなる |
| 海水 | 天然海水相当 | 60℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 応力、隙間、金属接触を確認 |
| 食品油 | 植物油 | 120℃ | 1000 h | 無応力 | ◎ | 影響小 | 酸化油、洗浄剤との複合環境を確認 |
SP値(溶解度パラメータ)
PAEKのSP値は単一値として一般化しにくい。代表的PEEKについて、Hildebrand型の推算値はおおむね22.5~23.5 MPa1/2程度として扱われる場合がある。ただし、結晶性、分子量、測定・推算法、温度により変化する。SP値差が小さくても、剛直な芳香族骨格、高結晶性、分子鎖運動性の低さにより常温で溶解しない場合が多い。
| 物質 | SP値 δ(MPa1/2) | PAEKとの関係・注意 |
|---|---|---|
| PAEK(代表的PEEK換算) | 約22.5~23.5 | 材料群・結晶化度・推算法で変動 |
| アセトン | 19.9 | 差約2.6~3.6。SP上は近いが、結晶性と剛直主鎖により常温耐性は一般に良好 |
| MEK | 19.0 | 差約3.5~4.5 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 差約3.9~4.9 |
| トルエン | 18.2 | 差約4.3~5.3 |
| キシレン | 18.0 | 差約4.5~5.5 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 差約2.3~3.3 |
| クロロホルム | 18.9 | 差約3.6~4.6 |
| THF | 18.5 | 差約4.0~5.0 |
| エタノール | 26.0 | 差約2.5~3.5 |
| IPA | 23.5 | 差約0~1.0。SP差だけでは実際の耐性を説明できない代表例 |
| 水 | 47.9 | 差約24.4~25.4 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい可能性 | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する可能性 | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定の目安 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい目安 | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
SP値による判定は、非反応性・非結晶性ポリマーの溶解傾向を一次スクリーニングする指標である。PAEKでは結晶性、芳香族主鎖、ガラス転移温度、融点、拡散速度、酸・酸化剤との化学反応が支配的となるため、SP値差のみで耐薬品性を決定してはならない。IPAのようにSP値が近くても実際には常温耐性が良好な溶剤がある一方、濃硫酸はSP値より化学反応性が支配する。
評価基準:◎ 非常に良好、○ 概ね良好、△ 注意が必要、× 不適。最終判断には実薬品浸漬試験、重量・寸法・外観・引張特性の保持率、応力負荷下の環境応力割れ試験を用いる。
製法

| 工程・項目 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | 芳香族ジハライド(例:ジフルオロベンゾフェノン類)と芳香族ジオール(例:ヒドロキノン、ビフェノール類)を用いる。PAEK種によりモノマー配列が異なる。 |
| 塩基・溶媒 | 炭酸カリウム等の塩基と、ジフェニルスルホン等の高沸点極性溶媒が代表的である。 |
| 重合方法 | フェノキシド末端による求核芳香族置換型重縮合が代表的である。反応温度、モル比、末端封止剤で分子量と溶融粘度を調整する。 |
| 分離・洗浄 | 重合物を粉砕・析出し、無機塩、副生成物、残留溶媒、低分子成分を多段洗浄で除去する。 |
| 乾燥・ペレット化 | 高温真空乾燥後、溶融押出によりペレット化する。粉末、微粉、フィルム、素材形状として供給される場合もある。 |
| コンパウンド | GF、CF、PTFE、黒鉛、無機フィラー、導電材、顔料等を二軸押出で配合する。繊維長、分散、熱履歴、金属汚染を管理する。 |
| 品質管理 | 溶融粘度、分子量、結晶化挙動、残留塩、灰分、揮発分、色調、金属イオン、異物、熱安定性を確認する。 |
代表反応式
PEEK型PAEKの代表的な概念反応は、芳香族ジオールを炭酸カリウム等でフェノキシド化し、活性化芳香族ジフルオリドと高温下で求核芳香族置換重縮合するものである。
n HO−Ar−O−Ar−OH + n F−Ar−CO−Ar−F → −[O−Ar−O−Ar−O−Ar−CO−Ar]ₙ− + 無機フッ化物塩等
実際の副生成物、末端基、モノマー配列、反応溶媒、塩基、反応温度は製法とPAEK種により異なるため、上式は代表的な概念式である。
品質・成形不良
| 不良 | 主な材料側原因 | 主な成形条件側原因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| シルバーストリーク | 水分、揮発分、過熱分解 | 乾燥不足、背圧不足、急減圧 | 乾燥条件確認、材料保管、温度低減、ベント改善 |
| ガス焼け・黒点 | 滞留、局所過熱、デッドスポット | 高温長時間停止、過大せん断 | 滞留短縮、パージ、スクリュー回転低減、設備清掃 |
| 充填不足 | 樹脂温度・金型温度不足、流動抵抗 | 薄肉、長流動、高粘度 | 温度・速度・圧力調整、高流動グレード、ゲート拡大 |
| バリ | 高圧、高温、金型摩耗、型締不足 | 薄肉、GF/CF、過大保圧 | 型締・金型確認、圧力低減、保圧最適化 |
| 反り | 結晶化差、繊維配向、肉厚差 | 低金型温度、不均一冷却 | 金型温度均一化、ゲート・肉厚改善、アニール |
| ウェルドライン | 合流部の温度・圧力不足、繊維配向 | 多点ゲート、穴周辺 | 樹脂・金型温度上昇、ベント、ゲート位置変更 |
| 繊維浮き | GF/CF配向、表面凍結、せん断 | 強化グレード、高速充填 | 金型温度、射出速度、保圧、表面設計を最適化 |
| 離型不良 | 抜き勾配不足、過大保圧、表面粗さ | 深形状、高光沢 | 抜き勾配、離型設計、保圧低減、表面処理 |
寸法精度・設計特性
- 非強化PAEKは低吸水であるが、半結晶性のため成形収縮と後収縮を考慮する。
- GF・CF強化材は流動方向と直角方向の異方性が大きく、反り、ウェルド強度、熱膨張差をCAEと実測で確認する。
- 短時間の引張強さや曲げ強さを、そのまま設計許容応力として使用してはならない。使用温度、寿命、クリープ、疲労、応力集中、ノッチ、薬品、湿度を考慮して安全率を設定する。
- インサート、圧入、タッピングねじでは局部応力と熱膨張差を考慮し、ボス肉厚、R、下穴径、締付トルクを実部品で確認する。
- 高精度部品ではアニール前後の寸法変化、結晶化度、機械加工後の応力解放を確認する。
注意点・劣化・故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 高温空気中の長期暴露、局所過熱、長時間滞留 | 樹脂温度が高い成形、薄肉、酸素存在 | 変色、分子量低下、脆化、ガス・黒点 | 滞留短縮、適正温度、パージ、酸素・熱安定化 | 熱老化、GPC、FT-IR、色差、強度保持率 |
| 結晶化不足・過結晶化 | 金型温度・冷却条件・アニール不適切 | 低金型温度、厚肉、急冷、不均一熱履歴 | 反り、寸法変化、靱性低下、残留応力 | 高温金型、均一冷却、段階アニール | DSC、密度、寸法、ヒートサイクル |
| 応力割れ | 残留応力と薬品・温度の複合作用 | インサート、圧入、鋭角、過大保圧、濃硫酸等 | クラック、破断、漏れ | R付与、応力低減、アニール、実薬品試験 | 定ひずみESC、実部品浸漬 |
| 疲労・クリープ破壊 | 長期荷重、繰返し応力、高温 | ギア、バルブ、締結、圧力部品 | 永久変形、亀裂、歯欠け | 温度別許容応力、断面増加、CF/GF検討 | クリープ、S-N疲労、実負荷耐久 |
| 摩耗・摩耗粉 | 高PV、相手材粗さ、無潤滑、偏荷重 | 軸受、シール、摺動面 | 寸法減少、発熱、相手材損傷、粉発生 | 摺動グレード、表面粗さ管理、潤滑、放熱 | 摩擦係数、比摩耗量、限界PV |
| アウトガス・抽出物 | 残留低分子、汚染、添加剤、加工劣化 | 真空、半導体、医療、分析機器 | 汚染、曇り、電気不良、溶出 | 高純度グレード、洗浄、ベーク、低添加設計 | TML/CVCM、GC-MS、イオン抽出、溶出 |
| 繊維配向・異方性 | GF/CF流動配向、ゲート設計 | 薄肉、長流動、複雑形状 | 反り、方向別強度差、ウェルド低下 | ゲート最適化、CAE、繊維含有率最適化 | 3方向物性、反り、ウェルド強度 |
| 金属腐食・設備損傷 | 高温樹脂、強化繊維、滞留炭化物 | 長期量産、GF/CF、高温ダイ | スクリュー・シリンダー・金型摩耗 | 耐摩耗鋼、適正クリアランス、清掃・保全 | 摩耗量、表面観察、金属分析 |
法規制・認証
| 規制・認証 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS/REACH/SVHC | 一般に適合可能なグレードが存在する | 着色剤、添加剤、製造拠点、最新SVHC候補を個別証明書で確認 |
| ELV | 自動車用途向け適合グレードが存在する | OEM要求、重金属、IMDS登録を確認 |
| PFAS関連規制 | PAEK自体はフッ素樹脂ではないが、製法にフッ素含有モノマーを用いる場合やPTFE配合摺動グレードがある | 製品中残留、意図的添加、地域規制、顧客定義を個別確認 |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在する | 用途、食品種、温度、時間、抽出条件、色を確認 |
| EU食品接触規則/日本食品衛生法 | 適合可能な個別グレードが存在する | ポジティブリスト、添加剤、成形品評価、移行試験を確認 |
| USP Class VI/ISO 10993 | 医療専用グレードで取得・評価例がある | 材料群全体の適合ではない。接触部位・期間・滅菌法を確認 |
| UL認証 | V-0、RTI、電気特性等を登録したグレードが存在する | グレード、色、厚さ、製造拠点のUL Yellow Cardを確認 |
| 航空宇宙規格 | FST、AMS、顧客規格等に対応する材料・複合材が存在する | 材料ロット、工程認定、トレーサビリティ、アウトガスを確認 |
| リサイクル表示 | 熱可塑性で再溶融可能 | PAEK個別識別コードは一般化しにくく、複合材・汚染・熱履歴で再利用性が低下 |
規制適合はメーカー、グレード、色、添加剤、製造拠点、用途、使用温度、接触条件により異なる。材料名だけで適合を断定せず、最新の適合証明書、UL Yellow Card、食品接触声明、生体適合性資料、変更管理通知を確認する。
環境・リサイクル性・価格・供給性
| 項目 | 評価・内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 熱可塑性 | 再溶融・再成形が可能 | 高温履歴による酸化、分子量変化、異物混入を管理する |
| マテリアルリサイクル | 条件付きで可能 | GF・CF・PTFE等の配合材、汚染材、医療材は分別が必要 |
| ケミカルリサイクル | 研究・限定用途 | 芳香族高耐熱骨格のため一般化した商業プロセスは限定的 |
| サーマルリサイクル | 可燃性有機材料としてエネルギー回収可能 | 適切な燃焼設備と排ガス管理が必要 |
| 生分解性 | なし | バイオベースと生分解性を混同しない |
| 価格区分 | 極めて高価格 | PAEK種、粘度、強化材、医療・航空認証、購入量で大きく変動 |
| 国内入手性 | PEEKは比較的良好、他PAEKは限定的 | 標準ペレット、粉末、板、丸棒、フィルム、チューブの供給形態を確認 |
| 少量購入 | 素材・切削用板棒は比較的入手しやすい | 特殊グレード、特注色、医療・航空グレードはMOQと納期が大きい |
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 適性 | 選定理由・注意点 |
|---|---|---|---|
| 航空宇宙 | 構造ブラケット、クランプ、電線被覆、複合材マトリックス、内装部品 | ◎ | 軽量、難燃、低発煙、高温機械特性。航空規格・FST・アウトガス確認 |
| 自動車 | シールリング、ギア、軸受、ポンプ、センサー、エンジンルーム部品 | ◎ | 燃料・油・冷却液、高温疲労に強い。コストと成形設備が課題 |
| 電気・電子 | コネクタ、ソケット、絶縁体、半導体製造治具、ウェハ搬送部品 | ◎ | 絶縁、難燃、低アウトガス、耐薬品。導電グレードとの区別が必要 |
| 機械部品 | ギア、ブッシュ、ローラー、ねじ、バルブ、ポンプ部品 | ◎ | 耐摩耗、耐クリープ、寸法安定性。PV値と相手材評価が必要 |
| 医療 | 手術器具、滅菌対応部品、歯科、整形外科インプラント | ◎ | 専用医療・インプラントグレードのみ。ISO 10993、USP等を個別確認 |
| 食品機械 | スクレーパー、軸受、ガイド、充填機部品 | ◎ | 蒸気洗浄、薬品洗浄、耐摩耗。食品接触適合証明を確認 |
| 油・ガス | シール、バックアップリング、電気コネクタ、ダウンホール部品 | ◎ | 高温高圧、酸性ガス、油井流体。急減圧・透過・疲労評価が必要 |
| 化学設備 | バルブ、ポンプ、シール、絶縁部品 | ○ | 広範な耐薬品性。濃硫酸、強酸化剤、高温混酸は不適または要評価 |
| 建築・設備 | 特殊耐熱絶縁、摺動部品、難燃部品 | △ | 性能は高いが価格が高く、一般建材には過剰性能となりやすい |
| フィルム・チューブ | 耐熱フィルム、電線被覆、カテーテル・分析機器チューブ | ○ | 高温押出と寸法管理が必要。用途規格を確認 |
| 透明カバー・レンズ | 光学部品 | × | 一般的PAEKは不透明であり、透明性用途には不向き |
| 接着剤・塗料 | 高耐熱バインダー、粉体コーティング | △ | 微粉末・分散グレードで可能。溶解性が低く高温焼付を要する |
| 複合材料マトリックス | CF/PAEKプリプレグ、熱可塑複合材 | ◎ | 溶着・再成形・耐衝撃に利点。含浸温度と結晶化制御が重要 |
用途適性は材料群としての一般的評価である。実使用ではグレード、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、摩擦条件、滅菌条件、法規制、成形品質を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PAEKとの違い・選択のポイント |
|---|---|---|
| PEEK | PAEK群で最も普及した半結晶性樹脂 | PAEKの代表種。供給性、加工実績、規格、医療・航空データが最も豊富 |
| PEKK | 高ケトン比で結晶化速度を異性体比により調整可能 | PAEK群の一種。積層造形や複合材で加工窓を設計しやすい |
| PEK | PEEKより高ケトン比で高融点・高温剛性 | PAEK群の一種。加工温度が高く、供給性が限定される |
| PPS | 耐薬品、難燃、低吸水、量産性に優れる | PAEKより安価で精密成形に有利。靱性、疲労、高温強度ではPAEKが有利な場合が多い |
| PEI | 非晶性、透明性、低収縮、難燃、高Tg | PEIは透明性・寸法精度・加工温度で有利。PAEKは耐溶剤、耐摩耗、疲労で有利 |
| PAI | 高温機械強度、耐摩耗、クリープに優れる | PAIは後硬化・吸湿管理を要する場合がある。PAEKは溶融成形・再加工・耐加水分解に有利 |
| PI | 極限耐熱、絶縁、フィルム、摺動用途 | PIはより高温域で使える場合がある。PAEKは溶融成形性と量産性に優れる |
| LCP | 薄肉流動性、低誘電、耐リフロー、低バリ | LCPは薄肉電子部品に有利。PAEKは機械的等方性、靱性、耐疲労で有利 |
| PTFE | 極低摩擦、最高水準の耐薬品性、非粘着性 | PTFEは耐薬品・低摩擦で有利。PAEKは強度、剛性、耐クリープ、溶融成形性で有利 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Victrex plc | VICTREX™ PEEK、VICTREX™ PAEK、APTIV™フィルム | PEEKを中心とするPAEK材料、フィルム、複合材、医療向けソリューションを展開する主要メーカー。 |
| Syensqo | KetaSpire® PEEK、AvaSpire® PAEK | 非強化、GF・CF強化、摺動、医療・航空宇宙等の高機能PAEK材料を展開する。 |
| Evonik Industries | VESTAKEEP® PEEK | 射出、押出、粉末、3Dプリント、医療・インプラント用途を含むPEEK材料を展開する。 |
| Arkema | Kepstan® PEKK | T/I異性体比の異なるPEKKを展開し、航空宇宙複合材、粉末、積層造形用途に供給する。 |
| Gharda Chemicals | G-PAEK™、G-PEEK™等 | PAEK系高性能樹脂を展開する。採用時はグレード仕様、供給地域、認証を確認する。 |
| Jilin Joinature Polymer | PEEK/PAEK系製品(代表例) | 中国系PAEKメーカーの一例。採用時は品質保証、トレーサビリティ、規格、長期供給を個別確認する。 |
ブランド、メーカー、製造拠点、製品系列は変更される場合がある。採用時は最新のメーカー資料、供給契約、変更管理、規格認証を確認する。
関連キーワード
PAEK | PEEK | PEK | PEKK | スーパーエンジニアリング・プラスチック | PPS | PEI | PAI | PI | LCP | PTFE | 芳香族ポリエーテルケトン | 求核芳香族置換重合 | 炭素繊維強化PAEK | ガラス繊維強化PAEK | 耐熱樹脂 | 耐薬品性 | SP値 | 環境応力割れ | クリープ | 耐摩耗 | 射出成形 | 押出成形 | 積層造形 | UL 94 | ISO 10993
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実液、実濃度、最低・最高使用温度、想定接触時間で、重量、寸法、外観、硬さ、引張特性を評価する。
- 環境応力割れ試験:実部品または定ひずみ試験片に設計応力を負荷し、薬品、温度、時間を組み合わせてクラック発生を確認する。
- 熱老化・高温高湿・熱水・蒸気試験:使用温度+安全余裕、500~5000時間、または想定滅菌回数で強度・寸法・色調を確認する。
- クリープ・疲労試験:使用温度、平均応力、応力振幅、応力比、105~107回、または設計寿命相当時間で評価する。
- 摩耗試験:相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度、湿度、潤滑条件を実機相当にし、摩擦係数、比摩耗量、摩耗粉を確認する。
- ヒートサイクル・寸法変化試験:成形直後、アニール後、吸湿後で寸法、反り、結晶化度を比較する。
- 電気絶縁・難燃試験:実厚さ、実色、実コンパウンドで絶縁破壊、体積抵抗、CTI、UL 94相当条件を確認する。
- アウトガス・溶出試験:真空、半導体、食品、医療用途ではTML、CVCM、GC-MS、イオン抽出、TOC、規格別溶出を確認する。
- 実成形・実部品耐久試験:量産機、実金型、実ゲート、実アニール条件で、ウェルド、反り、黒点、繊維配向、長期耐久を確認する。