概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリエーテルケトン |
| 略記号 | PEK |
| IUPAC | poly(oxy-1,4-phenylenecarbonyl-1,4-phenylene) などと表記される場合がある |
| 英語名 | Polyether Ketone / Poly Ether Ketone |
| 日本語名 | ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトン樹脂、PEK樹脂 |
| 分類 | 芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、PAEK系樹脂 |
| プラスチック分類 | 熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、スーパーエンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | 代表繰返し単位:[-O-C6H4-CO-C6H4-]n、繰返し単位の目安:C13H8O2 |
| CAS No. | 27380-27-4 が代表例として記載される場合がある。ただしグレード、共重合組成、末端構造により異なる場合がある |
| 構造・主成分 | 芳香環、エーテル結合、ケトン結合からなる半結晶性の芳香族高分子 |
| 主な用途 | 高温機械部品、摺動部品、シール、ギア、ベアリング、電気電子部品、航空宇宙部品、医療・分析機器部品 |
ポリエーテルケトンは、芳香族ポリエーテルケトン類、すなわちPAEK系樹脂に属する高耐熱熱可塑性樹脂である。分子内にエーテル結合とケトン結合を持ち、結晶性を有するため、一般のエンジニアリングプラスチックよりも耐熱性、耐薬品性、機械強度、耐摩耗性に優れる。
PEKは、同じPAEK系であるポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンと近い材料である。PEEKよりもケトン結合比率が高く、一般に融点、ガラス転移温度、高温剛性が高い傾向がある。一方で、成形温度が高く、結晶化管理や金型温度管理が難しいため、成形条件の設定には注意が必要である。
材料選定では、PEK単体として流通する場合と、PAEK、PEEK-HT、PEKK、PEEK系高耐熱グレードとして扱われる場合がある。用途、温度、荷重、薬品、応力、使用時間、滅菌条件、摺動条件、成形方法に応じて、実際のメーカーグレードの物性表を確認する必要がある。
特徴
長所
- 融点が高く、高温下でも機械強度を保持しやすい。
- 酸、アルカリ、多くの有機溶剤、油、燃料に対して耐性が高い。
- 耐摩耗性、耐クリープ性、疲労特性が良く、摺動部品に使用しやすい。
- 難燃性が高く、グレードによりUL94 V-0相当の性能を示す場合がある。
- 吸水率が低く、寸法安定性が比較的良い。
- 高温水、蒸気、放射線、真空環境で使用されるグレードがある。
短所
- 原料価格が高く、一般的なエンプラよりも材料費が高い。
- 成形温度が高く、高温対応の成形機、金型、温調設備が必要になる。
- 結晶性樹脂であるため、冷却条件により寸法、収縮、反り、結晶化度が変化しやすい。
- 濃硫酸など一部の強酸、強酸化性薬品、高温高濃度薬品には注意が必要である。
- 高温成形時の熱劣化、滞留劣化、アウトガス、炭化物混入に注意する必要がある。
外観
無充填グレードは、一般に淡褐色、灰褐色、黄褐色、自然色系の外観を示す。炭素繊維強化グレードや摺動グレードは黒色系となる場合が多い。着色は可能であるが、高温成形に耐える顔料、添加剤の選定が必要である。
耐熱性
PEKはPAEK系樹脂の中でも耐熱性が高い部類に入る。代表値として、融点は約370〜375℃、ガラス転移温度は約160〜170℃、連続使用温度は約250〜280℃程度が目安である。実使用では、荷重、酸素雰囲気、薬品接触、使用時間、繰返し熱履歴を確認する必要がある。
耐薬品性
PEKは、多くの酸、アルカリ、アルコール、炭化水素、油、燃料、塩素系溶剤に対して比較的安定である。ただし、濃硫酸、発煙硫酸、強酸化性薬品、高温高濃度アルカリ、強い極性溶媒との長時間接触では、膨潤、劣化、分子量低下、応力割れが起こる場合がある。
加工性
射出成形、押出成形、圧縮成形、切削加工に用いられる。成形温度は高く、シリンダー温度は400℃前後以上になる場合がある。乾燥不足、滞留、過度なせん断、低すぎる金型温度は、外観不良、結晶化不足、反り、強度低下の原因となる。
分類上の注意
ポリエーテルケトンという名称は、狭義にはPEKを指すが、広義にはPAEK系樹脂全体を指す場合がある。PEK、PEEK、PEKK、PEEKK、PEKEKKなどは構造が近いため、材料名、略記号、メーカーグレードを確認して区別する必要がある。
構造式
画像タグは使用せず、HTML上では代表構造単位を文字式で示す。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | [-O-C6H4-CO-C6H4-]n |
| 構造の特徴 | 芳香環にエーテル結合とケトン結合が交互に導入された剛直な高分子構造である |
| モノマーまたは構成単位 | ジハロゲン化ベンゾフェノン類と芳香族ジオール塩、または芳香族エーテルケトン型モノマーが代表例である |
| 共重合体・変性グレード | PEEK、PEKK、PEEKK、PEKEKKなどのPAEK系共重合体、GF強化、CF強化、摺動、難燃、医療、食品接触対応グレードがある |
| 類似材料 | ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリールエーテルケトン |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準PEK | 無充填のポリエーテルケトン | 耐熱性、耐薬品性、靭性のバランスが良い | 高価で成形温度が高い | 高温機械部品、絶縁部品、分析機器部品 |
| 耐熱グレード | 高結晶化、高分子量、またはPAEK高耐熱設計品 | 高温剛性、耐クリープ性に優れる | 成形条件の管理幅が狭い | 航空宇宙、自動車高温部品、ポンプ部品 |
| GF強化グレード | ガラス繊維を配合したPEKまたはPAEK | 剛性、寸法安定性、HDTが向上する | 靭性低下、摩耗相手材への攻撃性に注意する | コネクタ、構造部品、電装部品 |
| CF強化グレード | 炭素繊維を配合したPEKまたはPAEK | 高剛性、低熱膨張、耐摩耗性が良い | 異方性、導電性、金型摩耗に注意する | 摺動部品、航空宇宙部品、精密機械部品 |
| 摺動グレード | PTFE、黒鉛、炭素繊維などを配合 | 摩擦係数が低く、摩耗寿命を伸ばしやすい | 強度、成形収縮、相手材との組合せ確認が必要である | 軸受、ブッシュ、ギア、シールリング |
| 難燃グレード | 樹脂自体の難燃性を活かしたグレード、または規格対応品 | 低発煙、低アウトガス、自己消火性が期待できる | 規格適合は厚み、色、グレードにより異なる | 航空機、鉄道、電気電子部品 |
| 食品接触・医療対応グレード | 規制対応原料や管理工程で製造されたグレード | 滅菌、洗浄、繰返し使用に適する場合がある | 法規適合は国、用途、接液条件ごとに確認が必要である | 食品機械、医療器具、分析装置、流路部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 精密部品、コネクタ、ギア、摺動部品に使用される | 高温成形、乾燥、金型温度、結晶化管理が重要である |
| 押出成形 | ○ | 丸棒、板、チューブ、フィルム、シートに使用される | 溶融粘度、冷却速度、内部応力に注意する |
| ブロー成形 | △ | 特殊用途で検討される場合がある | 高温加工と溶融強度の制御が難しい |
| 圧縮成形 | ○ | 厚板、ブロック、特殊形状品に使用される | 加熱冷却時間、結晶化、残留応力を管理する |
| 真空成形 | △ | シートグレードで検討される | 成形温度範囲が高く、厚みむらに注意する |
| 切削加工 | ◎ | 丸棒、板から精密部品を加工できる | 内部応力、バリ、加工熱、寸法変化に注意する |
| 溶着 | △ | 超音波、熱板、レーザーなどで検討される | 高融点であり、条件設定が難しい |
| 接着 | △ | 表面処理と専用接着剤により可能な場合がある | 表面エネルギー、耐薬品性が高いため接着しにくい |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 150〜170℃ | 3〜4時間程度が目安である。吸湿状態、ペレット保管状態により調整する |
| シリンダー温度 | 390〜430℃ | グレード、流動性、成形機により異なる |
| ノズル温度 | 400〜430℃ | 滞留炭化と温度低下による固化に注意する |
| 金型温度 | 180〜220℃ | 結晶化度、寸法安定性、外観に影響する |
| 成形収縮率 | 約1.0〜2.0% | GF、CF強化では小さくなり、流動方向と直角方向で異なる |
| 滞留管理 | 短時間管理 | 高温滞留では熱劣化、黒点、アウトガスが発生しやすい |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | PEK 無充填 | PEK GF30 | PEK CF30 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度・比重 | g/cm3 | 1.30〜1.34 | 1.45〜1.55 | 1.38〜1.48 | 代表値。充填材量により変化する |
| 引張強さ | MPa | 90〜115 | 130〜180 | 180〜250 | 試験温度、繊維配向により異なる |
| 伸び | % | 10〜50 | 2〜5 | 1〜3 | 強化材配合で低下する |
| 曲げ弾性率 | GPa | 3.5〜4.5 | 8〜12 | 15〜25 | CF強化では大幅に高くなる |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 5〜10 | 6〜12 | 5〜10 | ノッチ付きの代表目安である |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 160〜180 | 280〜330 | 300〜340 | 1.8MPa条件の目安。結晶化度により変化する |
| ガラス転移温度 | ℃ | 160〜170 | 160〜170 | 160〜170 | Tgの代表範囲である |
| 融点 | ℃ | 370〜375 | 370〜375 | 370〜375 | PEEKより高い傾向がある |
| 連続使用温度 | ℃ | 250〜280 | 250〜280 | 250〜280 | 荷重、雰囲気、寿命設計により異なる |
| 吸水率 | % | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.3 | 23℃水中または標準状態での目安である |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015〜1016 | 1014〜1016 | 102〜106 | CF配合では導電性を示す場合がある |
| 酸素指数 | % | 35〜40 | 35〜45 | 35〜45 | 高い難燃性を示す。UL94はグレードと厚みによる |
代表グレード
| グレード区分 | 特徴 | 代表用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用 | 無充填、標準粘度 | 切削素材、精密部品、絶縁部品 | 成形収縮と結晶化管理が必要である |
| 耐熱 | 高Tg、高融点、高温強度重視 | 高温摺動部品、航空宇宙、自動車 | 成形温度が高く、熱劣化に注意する |
| 難燃 | 自己消火性、低発煙性を重視 | 電気電子、航空機、鉄道 | UL94は厚みと色で確認する |
| GF強化 | ガラス繊維で剛性とHDTを改善 | 構造部品、コネクタ、ハウジング | 靭性と異方性に注意する |
| CF強化 | 炭素繊維で高剛性、低熱膨張化 | 高精度部品、摺動部品、航空宇宙 | 導電性と金型摩耗に注意する |
| 摺動 | PTFE、黒鉛、炭素系添加剤を配合 | 軸受、ギア、ブッシュ、シール | 相手材、潤滑、PV値の確認が必要である |
| 食品接触 | 食品接触規制への適合を考慮したグレード | 食品機械、充填機、搬送部品 | 日本、EU、米国などの規制適合を個別確認する |
耐薬品性
PEKは結晶性が高く、芳香族骨格を持つため、多くの薬品に対して耐性が高い。ただし、耐薬品性はSP値だけでなく、結晶化度、残留応力、温度、濃度、接触時間、荷重、薬品の酸化性、添加剤、充填材、成形履歴により変化する。
| 薬品・溶剤 | 代表例 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、酢酸 | ○〜◎ | 常温の非酸化性酸では良好な場合が多い。濃硫酸、発煙硫酸、強酸化性酸は注意する |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | ○ | 常温では比較的安定であるが、高温高濃度では劣化確認が必要である |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎ | 一般に良好である。応力下、長時間浸漬では確認する |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜◎ | 多くは良好であるが、高温条件では膨潤、応力割れを確認する |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | ◎ | 常温では良好な場合が多い |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン | ◎ | 油、燃料系への耐性は良好な場合が多い |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○〜◎ | 一般に耐性は高いが、応力下、高温、長時間では確認する |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | ○〜◎ | 常温では比較的良好である |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | ○ | 短時間接触では良好な場合があるが、応力割れ、抽出、環境規制に注意する |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ◎ | 耐加水分解性は良好である。高温蒸気の繰返しではグレード確認が必要である |
| 油 | 鉱物油、作動油、潤滑油、シリコーン油 | ◎ | 高温油中でも比較的安定であるが、添加剤との相性を確認する |
| 燃料 | ガソリン、軽油、ジェット燃料 | ○〜◎ | 燃料添加剤、バイオ燃料、温度条件により評価が変わる |
| 強極性溶媒 | NMP、DMF、DMSO | △〜○ | SP値が近いものがあるため、高温、長時間では膨潤確認が必要である |
| 強酸化性薬品 | 濃硝酸、過酸化水素濃厚液、次亜塩素酸塩高濃度液 | △〜× | 酸化劣化、表面荒れ、強度低下に注意する |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 代表値 MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| PEKのSP値 δ | 約22〜24 | 代表的な推定範囲である。結晶化度、測定法、データソースにより差がある |
| PEEKのSP値 δ | 約22〜23 | PEKと近い範囲で扱われることが多い |
| 注意点 | SP値は目安 | PEKは結晶性、分子剛直性、耐熱性が高いため、SP値が近い溶剤でも常温では溶解しにくい場合が多い |
SP値は、溶解、膨潤、応力割れの一次スクリーニングには有効である。しかし、PEKのような高結晶性スーパーエンプラでは、SP値差だけで耐薬品性を判断することはできない。温度、濃度、接触時間、荷重、残留応力、結晶化度、充填材、薬品の酸化性を含めて評価する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下は、PEKのSP値を22.5MPa1/2程度と仮定した場合の目安である。実際の耐薬品性は、グレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間により確認する必要がある。
| 薬品名 | SP値の目安 MPa1/2 | PEKとの差 | SP値上の目安 | 実用上の評価 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 25.4 | ◎ | ◎ |
| エタノール | 26.0 | 3.5 | △ | ◎ |
| IPA | 23.5 | 1.0 | × | ◎ |
| アセトン | 19.9 | 2.6 | △ | ○〜◎ |
| MEK | 19.0 | 3.5 | △ | ○〜◎ |
| NMP | 23.1 | 0.6 | × | △〜○ |
| DMF | 24.8 | 2.3 | △ | △〜○ |
| DMSO | 26.7 | 4.2 | △ | △〜○ |
| トルエン | 18.2 | 4.3 | △ | ◎ |
| キシレン | 18.0 | 4.5 | △ | ◎ |
| ヘキサン | 14.9 | 7.6 | ○ | ◎ |
| 酢酸エチル | 18.6 | 3.9 | △ | ○〜◎ |
| ジクロロメタン | 20.2 | 2.3 | △ | ○ |
| グリセリン | 33〜36 | 10.5以上 | ◎ | ○〜◎ |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。PEKはSP値が近い溶剤でも溶解しにくい場合が多いが、高温、長時間、応力下では膨潤、白化、応力割れ、強度低下を確認する必要がある。
製法
| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | 芳香族ジハライド、芳香族ジオール、芳香族ケトン化合物などが用いられる | 製法によりモノマー構成、末端基、分子量が異なる |
| 重合方法 | 求核芳香族置換重合、または芳香族求電子置換系の重合で製造される | 高分子量化には水分、塩、溶媒、温度管理が重要である |
| ペレット化 | 重合後、洗浄、乾燥、溶融混練、ペレット化を行う | 高温での熱劣化、異物、金属摩耗粉混入に注意する |
| コンパウンド | GF、CF、PTFE、黒鉛、顔料、安定剤などを配合する | 充填材分散、繊維長、流動性、摩耗性を管理する |
| 成形材料化 | 射出成形用、押出用、切削素材用、フィルム用などに調整される | 粘度グレード、結晶化速度、成形条件が用途により異なる |
代表的な反応式
PEKの基本骨格は、芳香族エーテル結合と芳香族ケトン結合を持つ繰返し構造として表すことができる。
n HO-C6H4-CO-C6H4-X + n base → [-O-C6H4-CO-C6H4-]n + n HX
または、芳香族ジオール塩とジハロゲン化芳香族ケトンを用いる場合、以下のように表記できる。
n NaO-C6H4-ONa + n X-C6H4-CO-C6H4-X → [-O-C6H4-O-C6H4-CO-C6H4-]n + 2n NaX
実際の工業製法では、狙うPEK、PEEK、PEKKなどの構造により、モノマー、溶媒、触媒、塩、重合温度、後処理条件が異なる。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 高温ギア、ブッシュ、シール、ポンプ部品、センサー部品 | 耐熱性、耐油性、耐摩耗性、寸法安定性が良い | 燃料添加剤、冷却液、長期熱老化を確認する |
| 電気・電子 | コネクタ、絶縁部品、半導体製造装置部品、ソケット | 耐熱性、絶縁性、低アウトガス、難燃性が期待できる | CF配合品は導電性を示すため絶縁用途では注意する |
| 機械部品 | ギア、軸受、ブッシュ、ローラー、バルブシート、シールリング | 高温下の強度保持、耐摩耗性、耐薬品性が良い | PV値、相手材、潤滑、摩擦熱を確認する |
| 医療 | 滅菌器具、分析機器部品、手術器具部品、インプラント周辺部品 | 蒸気滅菌、耐薬品性、寸法安定性に優れるグレードがある | 医療適合、USP、ISO 10993、FDA等はグレード別に確認する |
| 食品機械 | 搬送部品、充填機部品、スクレーパー、ノズル、ガイド | 耐熱水性、耐洗浄剤性、耐摩耗性が良い | 食品接触規制、洗浄薬品、摩耗粉混入を確認する |
| 航空宇宙 | 軽量構造部品、摺動部品、ケーブル保持部品、複合材マトリックス | 耐熱性、難燃性、低発煙性、軽量性が評価される | 航空規格、トレーサビリティ、難燃規格を確認する |
| 建築・設備 | 高温設備部品、ポンプ、バルブ、絶縁部品 | 耐薬品性、耐熱性、長寿命化が期待できる | コストが高いため、PPSやPEEKとの比較が必要である |
| フィルム・チューブ | 耐熱フィルム、絶縁フィルム、高温チューブ | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性が良い | 押出条件、結晶化、厚み精度を確認する |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ポリエーテルエーテルケトン | PAEK系で最も代表的なスーパーエンプラである | PEKはPEEKより融点、Tg、高温剛性が高い傾向があるが、成形難度も高い |
| ポリエーテルケトンケトン | ケトン結合比率が高いPAEK系樹脂で、3Dプリントや複合材にも使用される | PEKと同様に高耐熱であるが、結晶化速度や加工性がグレードにより異なる |
| ポリアリールエーテルケトン | PEK、PEEK、PEKKなどを含む芳香族ケトン系樹脂の総称である | PEKはPAEKファミリーの一種であり、狭義の材料名として扱う |
| ポリフェニレンサルファイド | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる結晶性スーパーエンプラである | PEKの方が靭性、高温強度、耐摩耗性で優れる場合が多いが、PPSはコスト面で有利である |
| ポリエーテルイミド | 非晶性の高耐熱スーパーエンプラで、透明グレードもある | PEKは結晶性で耐薬品性と耐摩耗性に優れる。PEIは寸法安定性と成形性に優れる |
| ポリサルフォン | 非晶性で耐熱性、耐加水分解性、透明性を持つ | PEKの方が高温強度、耐溶剤性、耐摩耗性に優れるが、PSUは成形しやすい |
| 炭素繊維強化プラスチック | 炭素繊維で補強した複合材料である | PEKをマトリックスにしたCFRPは高耐熱熱可塑性複合材として使用される |
| ガラス繊維強化プラスチック | ガラス繊維で補強した複合材料である | PEK GFは高剛性と高HDTを得られるが、繊維配向と摩耗性に注意が必要である |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Victrex | VICTREX HT、VICTREX PEEK、VICTREX PAEK など | PAEK系高機能樹脂の主要メーカーである。PEKまたはPEKに近い高耐熱PAEKグレードが使用される場合がある |
| Solvay | KetaSpire PEEK、AvaSpire PAEK など | PEEK、PAEK系高機能樹脂を展開するメーカーである。PEK単独名ではなくPAEK系として扱われる場合がある |
| Evonik | VESTAKEEP PEEK | PEEK系高性能樹脂を展開するメーカーである。医療、工業用途向けグレードが知られる |
| Arkema | Kepstan PEKK | PEKKを展開するメーカーであり、PEKと同じPAEK系の関連材料として比較対象になる |
| 三菱ケミカルグループ | Ketron PEEK、Duratron PAI などの素材製品 | PEEKを中心とした高機能樹脂の丸棒、板、切削素材を扱う。PEK選定時の比較素材として参照される |
| Drake Plastics | PEK、PEEK、PAI、PPS素材 | 高機能樹脂の丸棒、板、成形素材を扱うメーカーであり、PEK素材の代表例として挙げられる |
難燃性・法規制・注意点
難燃性
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| UL94 | V-0相当のグレードがある | 厚み、色、充填材、メーカーグレードにより異なる |
| 酸素指数 | 約35〜45%程度が目安 | 試験方法とグレードにより差がある |
| 発煙性 | 低発煙性が期待できる | 航空、鉄道用途では個別規格の確認が必要である |
| ハロゲン | 樹脂自体はハロゲンを含まない構造である | 添加剤、顔料、難燃処方はグレード別に確認する |
法規制
| 規制・規格 | 確認内容 | 備考 |
|---|---|---|
| RoHS | 制限物質の非含有または閾値以下を確認する | 顔料、添加剤、充填材を含むグレードごとに確認する |
| REACH | SVHC、登録状況、サプライチェーン情報を確認する | 欧州向け用途では最新版の確認が必要である |
| 食品衛生 | 日本の食品衛生法、PL制度、器具・容器包装用途への適合を確認する | 食品接触用途ではグレード指定が必要である |
| FDA | 米国食品接触用途への適合を確認する | 樹脂、添加剤、色、使用温度、接触食品により判断する |
| 医療用途 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌耐性、トレーサビリティを確認する | 医療専用グレードの採用が必要になる場合がある |
用途別選定
| 用途 | 推奨されるグレード傾向 | 確認項目 |
|---|---|---|
| ギア | 無充填、摺動、CF強化 | 摩耗、騒音、PV値、相手材、潤滑条件 |
| 軸受・ブッシュ | 摺動グレード、CF/PTFE配合 | 荷重、速度、温度、摩擦熱、摩耗粉 |
| チューブ | 押出グレード、医療・食品対応グレード | 押出安定性、内面粗さ、耐薬品性、規制適合 |
| 筐体 | GF強化、難燃グレード | 反り、寸法安定性、UL94、熱変形 |
| フィルム | 押出フィルム用グレード | 結晶化、厚み精度、耐熱性、絶縁性 |
| コネクタ | GF強化、難燃、低アウトガスグレード | はんだ耐熱、寸法精度、絶縁性、難燃性 |
注意点
- 加水分解には比較的強いが、高温高圧蒸気の繰返しではグレード確認が必要である。
- 応力割れは起こりにくい部類であるが、塩素系溶剤、強極性溶媒、高温薬液、残留応力下では確認が必要である。
- 吸湿は低いが、成形前乾燥を省略すると外観不良や物性低下の原因になる場合がある。
- 熱劣化を避けるため、シリンダー内滞留、過熱、停止時の樹脂残りに注意する。
- 高温成形時にはアウトガス、黒点、炭化物、金属摩耗粉の混入に注意する。
- CF、GF強化グレードは異方性が出やすく、反り、収縮、ウェルド強度を確認する。
- 摺動用途では、単純な材料強度だけでなく、相手材、面圧、速度、潤滑、粉塵、温度を合わせて評価する。
関連キーワード
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