概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 熱可塑性加硫ゴム |
| 略記号 | TPV、TPE-V |
| IUPAC | 単一のIUPAC名を持たない。一般にpolypropyleneとcrosslinked ethylene-propylene-diene rubberからなる動的架橋ブレンドである。 |
| 英語名 | Thermoplastic Vulcanizate、Thermoplastic Vulcanized Elastomer |
| 日本語名 | 熱可塑性加硫ゴム、動的架橋型熱可塑性エラストマー、加硫型TPE |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋ポリマーブレンド |
| プラスチック分類 | エラストマー、熱可塑性エラストマー、汎用プラスチック系材料 |
| 化学式又は代表構造 | PP連続相中に架橋EPDM相が微細分散した海島構造。PP:[-CH2-CH(CH3)-]n、EPDM:エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体。 |
| CAS No. | TPV全体を表す単一CAS No.はない。PP、EPDM、プロセス油、添加剤ごとにCAS No.が異なる。 |
| 構造・主成分 | 一般にPP、EPDM、プロセス油、加硫剤、酸化防止剤、光安定剤、充填材など。 |
| 主な用途 | 自動車ウェザーストリップ、ガラスラン、ブーツ、ダクト、シール、ホース、建築ガスケット、電線被覆、家電・生活用品の軟質部品。 |
熱可塑性加硫ゴムは、熱可塑性樹脂相と架橋ゴム相を組み合わせた熱可塑性エラストマーである。代表的なPP/EPDM系TPVでは、PPが連続相を形成し、動的加硫されたEPDMが微細な分散相として存在する。この構造により、加硫ゴムに近い弾性、耐候性及び圧縮永久ひずみ特性と、熱可塑性樹脂に近い射出・押出加工性を両立する。
TPVは材料群であり、硬度、PP/EPDM比、架橋密度、油量、充填材及び安定剤により物性範囲が広い。したがって、材料比較では標準・非強化グレードを基準とし、耐油、難燃、摺動、接着、医療、食品接触などの特殊グレードを分けて扱う必要がある。
実使用では、グレード、温度、薬品濃度、接触時間、荷重、圧縮率、応力、湿度、成形履歴及び部品形状を確認し、実部品又は実薬品で評価する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 低比重、良好な耐候性・耐オゾン性・耐水性、広い硬度範囲、射出・押出・ブロー成形性、ランナー・端材の再利用可能性、PPとの二色成形性、一般TPEより良好な高温弾性及び圧縮永久ひずみ。 |
| 短所 | 芳香族炭化水素、塩素系溶剤、燃料、鉱油などで膨潤しやすい。高温長期荷重ではクリープ及び圧縮永久ひずみに注意する。シリコーンゴム、FKM、完全加硫EPDMより耐熱・耐油・永久変形特性が劣る場合がある。 |
| 外観 | 自然色、黒色、着色品。通常は不透明で、表面はゴム調又は半光沢である。 |
| 耐熱性 | 連続使用は一般に約90~125℃が目安であり、耐熱グレードでは条件により135℃前後を対象とする場合がある。短時間耐熱はさらに高いが、荷重、酸素、油、圧縮条件で変化する。 |
| 耐薬品性 | 水、希酸、希アルカリ、アルコール、塩水、オゾンには比較的良好である。芳香族・塩素系溶剤、燃料、鉱油、低分子炭化水素では膨潤に注意する。 |
| 加工性 | 一般の熱可塑性成形設備で射出、押出、ブロー、二色成形が可能である。多くのグレードは原則として強制乾燥不要であるが、吸湿、結露、保管状態及び外観要求により予備乾燥を行う。 |
| 分類上の注意 | TPOは非架橋又は低架橋のオレフィン系TPEを含むのに対し、TPVはゴム相を動的加硫した材料である。商品名だけでは架橋状態を断定できないため、技術資料を確認する。 |
構造式
TPVは単一の繰返し単位で表せる共重合体ではなく、PP連続相と架橋EPDM分散相からなる多相材料である。代表構造を下図に示す。

ここに構造式直下の任意ブロックを挿入できる。
代表的な構造単位
| 構成成分 | 代表構造又は役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| PP相 | [-CH2-CH(CH3)-]n。連続相を形成し、加熱時の流動と冷却時の形状保持を担う。 | PPの結晶性、MFR、分子量及び添加量が剛性、耐熱性及び流動性に影響する。 |
| EPDM相 | エチレン、プロピレン及び少量の非共役ジエンからなる共重合ゴム。 | 動的加硫により架橋粒子となり、弾性、耐候性、耐オゾン性を担う。 |
| プロセス油 | 主としてパラフィン系油など。 | 硬度、流動性及び低温柔軟性を調整するが、耐油性、移行性、臭気及びアウトガスに影響する。 |
| 加硫系 | フェノール樹脂系、過酸化物系など。 | 架橋密度、残留物、色、臭気、圧縮永久ひずみ及び法規制適合性に影響する。 |
種類・代表グレード
| グレード区分 | 主な改質方法・特徴 | 長所 | 短所・注意点 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準射出成形 | PP/EPDM系、Shore A 40~90程度 | 流動性、外観、量産性 | 高温クリープ、油膨潤 | グリップ、シール、カバー |
| 押出成形 | 高溶融強度、低ダイスウェル設計 | 異形押出、表面平滑性 | 押出温度・引取条件依存 | ウェザーストリップ、ホース |
| ブロー成形 | 溶融張力とパリソン安定性を調整 | 中空・蛇腹形状 | グレード選定が限定 | ダクト、ブーツ |
| 耐熱 | 架橋密度、安定剤、PP相を最適化 | 熱老化、高温弾性 | 硬度上昇、コスト | エンジン周辺シール |
| 低圧縮永久ひずみ | ゴム相・架橋系を最適化 | シール保持性 | 成形流動性との両立が必要 | ガスケット、Oリング代替 |
| 耐油 | 極性成分、特殊ゴム相又は配合を採用する場合がある | 標準TPVより油膨潤を抑制 | NBR、HNBR、FKMほどではない | ホース、油接触部 |
| 難燃 | ハロゲン系又はノンハロゲン難燃剤 | 電気用途に対応可能 | 物性、密度、外観、ブリード | ケーブル、電装カバー |
| 接着・二色成形 | 基材への接着性を付与 | 組立削減、ソフトタッチ | 基材、乾燥、温度、金型設計依存 | PP複合部品、グリップ |
| 導電・帯電防止 | 導電性カーボン等を配合 | 静電気対策 | 弾性、外観、摩耗粉 | 電装・工業部品 |
| 食品・医療 | 原料・添加剤・溶出を管理した特定グレード | 規制対応可能 | 材料群全体の適合ではない | チューブ、シール、医療部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的である。低せん断過熱、滞留、ゲート白化、ヒケ及びバリを管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | 異形押出、ホース、チューブに適する。ダイスウェル、表面粗れ及び冷却条件を確認する。 |
| ブロー成形 | ○ | 専用グレードでダクト、ブーツ等に適用される。 |
| インフレーション成形 | △ | 一般用途では限定的であり、フィルム専用グレードが必要である。 |
| Tダイシート | ○ | シート、表皮材に使用可能である。 |
| 真空・圧空成形 | △ | シートグレード及び温度窓の確認が必要である。 |
| 圧縮成形 | △ | 試作や特殊用途では可能だが、量産の主流ではない。 |
| 発泡成形 | ○ | 化学又は物理発泡グレードで軽量化可能である。 |
| 3Dプリント | △ | ペレット式又は専用フィラメントで可能だが、反り、層間接着及び供給安定性に注意する。 |
| 切削加工 | △ | 軟質で変形しやすく、寸法精度が出にくい。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、振動、レーザー等を適用できる場合がある。材料、硬度及び接合設計依存である。 |
| 接着 | △ | 低表面エネルギーのため、プライマー、コロナ、プラズマ処理を要する場合が多い。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面処理、インキ及びプライマーの適合確認が必要である。 |
| 二色・インサート成形 | ◎ | PP系基材とは相性がよい。他樹脂では接着グレード又は機械的アンカーが必要である。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要 | 吸湿、結露又は外観不良時はメーカー推奨に従う。 |
| 乾燥温度 | ℃ | 70~90 | 必要時の目安。長時間高温乾燥によるブロッキングに注意する。 |
| 乾燥時間 | h | 1~3 | 必要時の目安。 |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 160~190 | グレード及び成形機による。 |
| シリンダー温度・圧縮部 | ℃ | 175~210 | 過熱及び滞留を避ける。 |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 180~230 | 高硬度・高流動グレードで変動する。 |
| ノズル温度 | ℃ | 180~225 | 糸引き、コールドスラッグを確認する。 |
| 金型温度 | ℃ | 20~60 | 外観、収縮及び接着性に影響する。 |
| 射出圧力 | MPa | 40~120 | 製品形状、硬度及び流動長依存である。 |
| スクリュー回転数 | rpm | 30~100 | 過剰せん断による発熱を避ける。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 1.0~2.5 | 硬度、流動、金型温度及び保圧で変化する。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.2~2.8 | 異方性及び肉厚依存がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下はPP/EPDM系、非強化・標準TPVの代表範囲である。硬度が異なるグレード間では引張強さ、伸び、弾性率及び圧縮永久ひずみを単純比較できない。
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 代表値 | 試験条件・規格の例 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.88~1.05 | 0.95 | ISO 1183又はASTM D792 | 充填材、難燃剤で上昇する。 |
| 比重 | 無次元 | 0.88~1.05 | 0.95 | 23℃ | 低比重で軽量化に有利である。 |
| 硬度 | Shore A | 35~95 | 70 | ISO 868又はASTM D2240 | 高硬度品はShore D表示の場合がある。 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 3~15 | 8 | ISO 37又はASTM D412 | 硬度、流れ方向、試験片で変化する。 |
| 引張破断伸び | % | 200~700 | 450 | ISO 37又はASTM D412 | 低硬度グレードで大きい傾向。 |
| 引張弾性率 | GPa | 0.005~0.30 | データなし | 規格・硬度依存 | エラストマーでは100%モジュラス等を用いる場合が多い。 |
| 100%モジュラス | MPa | 1.5~8 | 4 | ISO 37又はASTM D412 | シール設計に有用である。 |
| 引裂強さ | kN/m | 15~60 | 35 | ISO 34又はASTM D624 | 形状及び方向依存。 |
| 圧縮永久ひずみ・23℃×22h | % | 10~35 | 22 | ASTM D395又はISO 815 | 圧縮率及び試験片厚さを確認する。 |
| 圧縮永久ひずみ・70℃×22h | % | 20~55 | 35 | ASTM D395又はISO 815 | 高温シールでは重要である。 |
| 脆化又は低温使用限界 | ℃ | -60~-35 | -45 | グレード依存 | 衝撃、圧縮、屈曲条件で変化する。 |
| 融点・PP相 | ℃ | 155~170 | 163 | DSC | TPV全体の単一融点ではない。 |
| ガラス転移温度・EPDM相 | ℃ | -60~-40 | -50 | DMA又はDSC | 配合及び油量で変化する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 90~125 | 110 | 用途別目安 | 熱老化、荷重、油、空気条件による。 |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 130~150 | 140 | 用途別目安 | 形状保持及び永久変形を確認する。 |
| 吸水率・24h | % | 0.01~0.10 | 0.05 | 23℃水中、代表値 | 低吸水であるが配合依存。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1012~1×1016 | 1×1014 | IEC 60093等 | 導電グレードを除く。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 15~30 | 22 | 試験片厚さ依存 | 配合及び吸湿条件を確認する。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.15~0.30 | 0.22 | 23℃代表値 | 充填材で変化する。 |
| 線膨張係数 | 10-5/K | 10~22 | 16 | 流動方向、温度範囲依存 | PP相及び配向の影響を受ける。 |
| UL 94燃焼性 | 等級 | HB~V-0 | グレード依存 | 厚さ及び色を明記 | 材料群全体の認証ではない。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 2 | エラストマーとして標準的であり、硬質樹脂より低い。 |
| 衝撃強度 | 5 | 柔軟で低温衝撃に強い。 |
| 耐熱性 | 3 | 一般TPEより良好だが、シリコーン、FKM、耐熱熱硬化ゴムより低い。 |
| 低温特性 | 4 | 一般に-40℃以下まで柔軟性を維持するグレードがある。 |
| 耐薬品性 | 3 | 水、酸、アルカリに良好だが、炭化水素油・芳香族溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 5 | EPDM相により耐候・耐オゾン性に優れる。 |
| 寸法安定性 | 3 | 低吸水だが、熱膨張、収縮及びクリープは大きい。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 一般グレードは高い体積抵抗率を示す。 |
| 成形加工性 | 5 | 射出、押出、ブロー、二色成形が可能である。 |
| 接着性 | 2 | 低表面エネルギーのため未処理では難しい。 |
| リサイクル性 | 4 | 熱可塑性加工が可能で、清浄な工程内端材を再利用できる。 |
| 価格優位性 | 3 | 一般ゴムより加工合理化が可能だが、汎用TPOや軟質PVCより高い場合がある。 |
耐薬品性
| 薬品・分類 | 濃度・条件例 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 23℃、168h | ◎ | 影響小 | 低吸水である。 |
| 温水 | 80℃、168h | ○ | 軟化、圧縮永久ひずみ | 高温長期では物性保持を確認する。 |
| 塩酸 | 10%、23℃ | ○ | 添加剤抽出、表面変化 | 濃酸、高温、長時間では試験する。 |
| 硫酸 | 10%、23℃ | ○ | 酸化、表面劣化 | 濃硫酸及び高温は不適となる場合がある。 |
| 酢酸 | 10%、23℃ | ○ | 膨潤、臭気吸着 | 濃度及び温度依存。 |
| 水酸化ナトリウム | 10%、23℃ | ◎ | 影響小 | 高温濃アルカリは確認する。 |
| エタノール | 99%、23℃ | ○ | わずかな膨潤、添加剤抽出 | 長時間浸漬及び応力下で確認する。 |
| IPA | 99%、23℃ | ○ | わずかな膨潤 | 配合依存。 |
| グリセリン | 23℃ | ◎ | 影響小 | 高温では確認する。 |
| MMB | 23℃ | △ | 膨潤、軟化 | グレード差が大きい。 |
| アセトン | 23℃ | △ | 膨潤、軟化、抽出 | 短時間拭取りでも外観を確認する。 |
| MEK | 23℃ | × | 著しい膨潤、軟化 | 一般TPVには不適である。 |
| 酢酸エチル | 23℃ | × | 膨潤、軟化 | 長時間接触を避ける。 |
| トルエン | 23℃ | × | 著しい膨潤、寸法変化 | SP値が近く、ゴム相及び油相へ浸透しやすい。 |
| キシレン | 23℃ | × | 著しい膨潤 | 一般TPVには不適である。 |
| n-ヘキサン | 23℃ | △ | 膨潤、油分抽出 | 非極性成分との親和性が高い。 |
| ジクロロメタン | 23℃ | × | 著しい膨潤、軟化 | 使用を避ける。 |
| 鉱物油 | 23~100℃ | △ | 膨潤、硬度低下 | 耐油TPVを選定し、体積変化を測定する。 |
| ガソリン・燃料 | 23℃ | × | 膨潤、抽出、強度低下 | 燃料連続接触にはNBR、HNBR、FKM等を比較する。 |
| ブレーキ液・グリコール系 | 23~100℃ | ○ | 膨潤、熱劣化 | 自動車規格及び高温条件で確認する。 |
| 冷却液・EG水溶液 | 50%、100℃ | ○ | 熱老化、膨潤 | 長期熱水条件で確認する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.1%、23℃ | ○ | 酸化、変色 | 濃度、pH、温度、時間により劣化する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
PP/EPDM系TPVの見掛けのSP値は、一般に約16.5~18.5 MPa1/2を目安とする。ただし、TPVは架橋ゴム、PP、油、充填材からなる多相材料であるため、単一のSP値で溶解・膨潤を完全には表せない。架橋相は溶解せず膨潤し、低分子油及び添加剤は抽出される場合がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | TPV基準値17.5との差 | SP値評価 | 実務評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 30.4 | ◎ | ◎ | 常温水には安定。 |
| メタノール | 29.7 | 12.2 | ◎ | ○ | 極性は高いが長期抽出を確認する。 |
| エタノール | 26.0 | 8.5 | ◎ | ○ | 長時間及び高温で確認する。 |
| アセトン | 20.3 | 2.8 | △ | △ | 膨潤、軟化、添加剤抽出。 |
| MEK | 19.0 | 1.5 | × | × | 著しい膨潤の可能性。 |
| トルエン | 18.2 | 0.7 | × | × | 芳香族溶剤で膨潤しやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 0.5 | × | × | 寸法変化及び強度低下。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 2.6 | △ | △ | 非極性でゴム相・油相へ浸透する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 2.7 | △ | × | 塩素系溶剤のため実務上不適。 |
SP値差は一次スクリーニングであり、架橋密度、結晶性、拡散速度、温度、応力、酸化・加水分解反応、添加剤抽出及び可塑剤移行を考慮する必要がある。
製法
TPVは、PPなどの熱可塑性樹脂とEPDMなどの未架橋ゴムを溶融混練しながら、混練機内でゴム相を選択的に架橋する動的加硫により製造される。架橋の進行と強いせん断により相反転及び粒子微細化が起こり、PP連続相中に架橋EPDM粒子が分散する。

ここに製法直下の任意ブロックを挿入できる。
| 工程 | 主な内容 | 管理項目 |
|---|---|---|
| 原料配合 | PP、EPDM、プロセス油、加硫剤、促進剤、酸化防止剤、光安定剤、充填材、顔料等を計量する。 | 配合精度、原料水分、異物、油の粘度。 |
| 溶融混練 | 二軸押出機又は連続混練機でPPを溶融し、EPDMを分散する。 | 温度、トルク、比エネルギー、滞留時間。 |
| 動的加硫 | 混練中にEPDM相を架橋する。 | 加硫速度、架橋密度、粒子径、相反転。 |
| 脱揮・安定化 | 揮発分及び反応副生成物を除去し、安定剤を均一化する。 | 真空度、臭気、VOC、ゲル、変色。 |
| 押出・ペレット化 | ストランドカット又は水中カットによりペレット化する。 | 粒径、ブロッキング、含水、金属異物。 |
| 品質評価 | 硬度、引張、伸び、圧縮永久ひずみ、MFR、外観、臭気、耐薬品性等を確認する。 | ロット変動、規格適合、トレーサビリティ。 |
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 適性 | 採用理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車外装・シール | ウェザーストリップ、ガラスラン、モール、ブーツ | ◎ | 耐候、耐オゾン、低温柔軟性、軽量 | 圧縮永久ひずみ、塗膜汚染、摺動性。 |
| 自動車エンジン周辺 | エアダクト、ベローズ、保護カバー | ○ | 耐熱、ブロー成形性、振動吸収 | 油、燃料、高温空気への耐久性。 |
| 燃料系 | シール、ホース内層 | × | 標準TPVでは一般に不適 | 耐油特殊TPVでも実燃料試験が必要。 |
| 建築・設備 | 窓枠ガスケット、防水シール、伸縮目地 | ◎ | 耐候、耐水、押出性 | 長期圧縮、難燃、可塑剤移行。 |
| 電気・電子 | ケーブル被覆、コネクタシール、グロメット | ○ | 絶縁性、柔軟性、難燃グレード | UL、温度定格、接触材料適合。 |
| 機械部品 | 防振材、カバー、ローラー、シール | ○ | 耐屈曲、成形自由度 | 摩耗、クリープ、油接触。 |
| 医療 | チューブ、シール、グリップ | △ | 医療グレードで対応可能 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌、溶出確認。 |
| 食品機械 | ガスケット、グリップ、保護部品 | △ | 食品接触グレードが存在 | 日本食品衛生法、FDA、洗浄薬品及び温度。 |
| 生活用品 | グリップ、キャップ、スポーツ用品 | ◎ | 触感、着色、二色成形 | 臭気、ブリード、皮膚接触。 |
| 透明カバー・レンズ | 光学部品 | × | 一般TPVは不透明 | 透明性が必要ならTPU、TPS等を検討。 |
注意点・劣化及び故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 油・溶剤膨潤 | 炭化水素成分の浸透、油分抽出 | 燃料、鉱油、芳香族・塩素系溶剤、高温 | 体積増加、硬度低下、強度低下 | 耐油グレード又はNBR、HNBR、FKMへ変更 | 実薬品浸漬、体積・質量・硬度・引張保持率。 |
| 圧縮永久ひずみ | 高温、過大圧縮、架橋不足、クリープ | シール、高温長時間 | シール力低下、漏れ | 圧縮率最適化、低CSグレード、溝設計 | ISO 815又はASTM D395、実温度×実時間。 |
| 熱酸化劣化 | 酸素、熱、金属触媒 | 100℃以上、長時間、薄肉 | 硬化、亀裂、伸び低下 | 耐熱グレード、遮熱、安定剤 | 熱老化後の引張・伸び・硬度。 |
| 紫外線劣化 | UV、顔料・安定剤不足 | 屋外、淡色、薄肉 | 退色、チョーキング、亀裂 | 耐候グレード、カーボンブラック、HALS | キセノンアーク、色差、光沢・引張保持率。 |
| クリープ変形 | PP連続相の粘弾性、長期荷重 | 高温、締結、圧入、一定荷重 | 寸法変化、緩み | 荷重低減、リブ、金属併用 | 長期クリープ、応力緩和試験。 |
| ブリード・移行 | プロセス油、添加剤の移動 | 高温、接触材、長期保管 | べたつき、汚染、接着低下 | 低移行グレード、接触材適合 | 接触移行、VOC、表面分析。 |
| アウトガス・臭気 | 油、残留反応物、低分子添加剤 | 高温、密閉、真空 | 曇り、臭気、汚染 | 低VOCグレード、脱揮、ベーキング | VOC、フォギング、TML/CVCM相当試験。 |
| 接着剥離 | 低表面エネルギー、汚染、収縮差 | 二色成形、接着、塗装 | 界面剥離 | 接着グレード、表面処理、アンカー設計 | 180°剥離、引張せん断、熱湿サイクル。 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS・REACH・SVHC | 適合可能なグレードが多い。 | 最新SDS、chemSHERPA、メーカー適合証明書を確認する。 |
| PFAS関連 | 標準PP/EPDM系TPVはフッ素ポリマーを主成分としないが、添加剤又は加工助剤の有無はグレード依存である。 | 意図的添加、分析閾値、地域規制を確認する。 |
| 食品接触 | FDA、EU、日本食品衛生法対応グレードが存在する。 | グレード、色、接触食品、温度、時間、製造拠点を確認する。 |
| 医療 | ISO 10993、USP Class VI等の評価グレードが存在する場合がある。 | 生体適合性は最終製品及び滅菌条件を含めて確認する。 |
| UL | 難燃性及びRTI認証グレードが存在する。 | UL Yellow Card、厚さ、色、認証ファイルを確認する。 |
| 自動車規格 | OEM規格対応グレードが広く使用される。 | 個別OEM、用途、臭気、フォギング、耐候、熱老化規格を確認する。 |
環境・リサイクル性及び供給性
| 項目 | 評価・内容 |
|---|---|
| 熱可塑性又は熱硬化性 | 材料全体として熱可塑性加工が可能である。ただし、分散EPDM相は架橋している。 |
| マテリアルリサイクル | 工程内端材は汚染がなければ再粉砕・再配合できる場合がある。再生回数増加により外観、流動、臭気及び物性が変化する。 |
| ケミカルリサイクル | 一般的な商業プロセスは限定的である。PP回収と架橋ゴム分離は容易ではない。 |
| 焼却時の注意 | 主成分が炭化水素系であり、適正燃焼が必要である。難燃剤、顔料及び添加剤の組成を確認する。 |
| 生分解性 | 一般的なPP/EPDM系TPVは生分解性ではない。 |
| 価格区分 | 中価格~比較的高価格。硬度、耐熱、難燃、医療、色及び購入量で変動する。 |
| 供給形態 | 主にペレット。黒色、自然色、着色品、射出、押出、ブロー及び接着グレードが流通する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | TPVとの違い |
|---|---|---|
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐候性、耐オゾン性、耐水性に優れる加硫ゴム。 | EPDMは通常、成形後に加硫が必要で再溶融できない。TPVは熱可塑成形及び工程内リサイクルが可能である。 |
| 熱可塑性エラストマー(TPE) | 加熱で軟化し冷却で固化するエラストマーの総称。 | TPVはTPEの一種で、ゴム相を動的加硫した材料である。 |
| 熱可塑性オレフィン(TPO) | PP、PE及び未架橋又は低架橋ゴムを主体とする。 | TPVは架橋ゴム相により高温弾性及び圧縮永久ひずみが一般に優れる。 |
| 熱可塑性ポリウレタン(TPU) | 耐摩耗性、機械強度、透明性及び接着性に優れる。 | TPVは低比重、耐候、耐水、低温性に優れやすい。TPUは耐摩耗・耐油で有利な場合がある。 |
| 熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE) | 高強度、高反発、耐油、耐熱性に優れる。 | TPVは低硬度化、耐候、低比重及び加工温度で有利。TPEEは剛性と耐油性が高い。 |
| ニトリルゴム(NBR) | 耐油・耐燃料性に優れる加硫ゴム。 | TPVは成形加工性と耐候性に優れるが、油・燃料連続接触ではNBRが優れる。 |
| フッ素ゴム(FKM) | 高温、燃料、油、薬品に優れる高機能ゴム。 | TPVは軽量、低コスト、成形サイクル及び再加工性に優れるが、耐熱・耐油性は大幅に劣る。 |
| ポリプロピレン(PP) | 軽量、耐薬品性及び成形性に優れる汎用樹脂。 | TPVはPP連続相を持つが、架橋EPDM相により柔軟性とゴム弾性を示す。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Celanese | Santoprene® TPV | 代表的なTPVブランド。自動車シール、アンダーフード、建築、工業用途等に展開する。 |
| Teknor Apex | Sarlink® TPV | 自動車、建築、工業、家電用途向けの射出・押出TPVを展開する。 |
| 三菱ケミカル | TREXPRENE™ | PP/EPDM系動的加硫TPV。射出、押出、ブロー成形及び自動車用途等に展開する。 |
| 東洋紡エムシー | SARLINK® | 国内でTPVシリーズを取り扱う。用途及びグレードの詳細は最新製品資料で確認する。 |
| RTP Company | Custom TPV Compounds | 用途別の着色、充填、難燃、導電等のカスタムコンパウンドを展開する。 |
関連キーワード
TPV、熱可塑性エラストマー、TPO、EPDM、ポリプロピレン、TPU、TPEE、NBR、FKM、耐薬品性、SP値、動的加硫、圧縮永久ひずみ、ウェザーストリップ、二色成形、環境応力割れ、UL 94
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:使用薬品の実濃度、最低・最高温度及び実接触時間で、質量、体積、硬度、引張強さ及び伸びの保持率を確認する。
- 圧縮永久ひずみ試験:実圧縮率、実温度及び想定寿命を模擬し、シール反力及び漏れを確認する。
- 熱老化及び高温高湿試験:70~125℃、500~2000h等を用途に合わせ、硬度、引張、伸び、外観及び臭気を評価する。
- 紫外線促進耐候試験:キセノンアーク又はUV蛍光ランプで、色差、光沢、亀裂及び物性保持率を確認する。
- クリープ・応力緩和試験:実温度、実荷重及び実締結条件で長期変形を確認する。
- 接着・溶着強度試験:基材、表面処理、成形温度、金型温度及び熱湿サイクル後の強度を確認する。
- VOC・フォギング・溶出試験:自動車内装、医療、食品、電子・光学用途では用途規格に従って確認する。
- 実成形及び実部品耐久試験:ウェルド、反り、収縮、バリ、外観、組付け、疲労及びシール性能を量産条件で確認する。