概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリアセタール |
| 略記号 | POM |
| IUPAC | Poly(oxymethylene) |
| 英語名 | Polyacetal / Polyoxymethylene / Acetal Resin |
| 日本語名・別名 | ポリアセタール、ポリオキシメチレン、アセタール樹脂、POM樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、アセタール系樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | (CH2O)n、[-CH2-O-]n |
| CAS No. | 9002-81-7(ポリオキシメチレンとして記載されることが多い) |
| 構造・主成分 | オキシメチレン単位を主鎖に持つ高結晶性ポリマーである。ホモポリマーPOMとコポリマーPOMに大別される。 |
| 主な用途 | ギア、軸受、カム、ローラー、ファスナー、ポンプ部品、燃料系部品、電気・電子部品、精密機械部品、食品機械部品など |
ポリアセタール(POM)は、オキシメチレン構造を主鎖に持つ結晶性エンジニアリング・プラスチックである。高い剛性、耐摩耗性、低摩擦性、寸法安定性、疲労特性を持つため、ギア、軸受、カム、ローラー、スライダー、ファスナー、精密機械部品などに広く使用される。
POMには、主鎖がほぼオキシメチレン単位で構成されるホモポリマーPOMと、少量のコモノマーを導入したコポリマーPOMがある。一般に、ホモポリマーは剛性、引張強さ、疲労特性に優れ、コポリマーは熱安定性、耐熱水性、耐アルカリ性、成形安定性に優れる傾向がある。ただし、実際の性能はメーカー、グレード、分子量、安定剤、添加剤、成形条件により変化する。
POMはナイロン6やナイロン66と比較して吸水率が低く、湿度による寸法変化が小さい。一方で、強酸、酸化性薬品、塩素系薬品、高温水、蒸気、紫外線、過熱分解には注意が必要である。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間、成形残留応力、相手材との摺動条件を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 機械的強度、剛性、耐摩耗性、低摩擦性、耐疲労性、寸法安定性、低吸水性、切削加工性に優れる。 |
| 短所 | 強酸、酸化剤、塩素系薬品、高温水、紫外線、難燃化、接着、塗装、印刷には注意が必要である。高温分解時にはホルムアルデヒドを発生する可能性がある。 |
| 外観 | 自然色は白色から乳白色で、不透明である。黒色、着色、摺動改質、導電、GF強化などのグレードがある。 |
| 耐熱性 | 連続使用温度は一般に約80〜105℃程度が目安である。GF強化グレードや耐熱グレードでは高めに設計される場合があるが、荷重、薬品、水分、酸素、寿命要求により実用温度は変化する。 |
| 耐薬品性 | 油、燃料、脂肪族炭化水素、多くのアルコール、弱アルカリには比較的良好である。一方、強酸、酸化性酸、塩素系溶剤、フェノール類、高温水、蒸気には注意が必要である。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、切削加工に適する。過熱、長時間滞留、酸性物質混入、PVCなどの異材混入により分解する場合があるため、成形温度管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | POMはエンジニアリング・プラスチックに分類される。ホモポリマー、コポリマー、摺動グレード、GF強化グレード、食品接触対応グレードでは特性が異なるため、材料名だけで判断しない。 |
| 代表グレード | 汎用、耐熱、耐候、摺動、低摩擦、耐摩耗、導電、帯電防止、GF強化、難燃、食品接触、低VOC、低アウトガスなどがある。 |
| 難燃性 | 標準グレードは一般に燃えやすく、UL94 HB相当のものが多い。難燃グレードもあるが、POMの熱分解特性上、難燃設計には制約がある。 |
| 法規制 | RoHS、REACH、食品衛生法、FDA、EU食品接触、医療用途などは、材料名ではなく個別グレード、添加剤、色材、製造履歴、適合証明書で確認する必要がある。 |
構造式

ポリアセタールは、オキシメチレン単位−CH2−O−を主鎖に持つ結晶性高分子である。 ホモポリマーPOMは主鎖がほぼオキシメチレン単位で構成されるため、結晶性と機械的強度が高い。
コポリマーPOMは、少量のコモノマーを導入することで主鎖中に熱安定性を高める構造を持つ。 この違いにより、ホモポリマーは強度や剛性に優れ、コポリマーは熱安定性、耐熱水性、耐アルカリ性に優れる。
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | -CH2-O- |
| 繰り返し構造 | [-CH2-O-]n |
| 化学式 | (CH2O)n |
| モノマーまたは構成単位 | ホルムアルデヒド、トリオキサン、ジオキソランなどが代表的である。 |
| ホモポリマーPOM | 主鎖がほぼオキシメチレン単位で構成されるPOMである。高い結晶性、剛性、機械強度、疲労特性を示す。 |
| コポリマーPOM | トリオキサンに少量の環状エーテルなどを共重合したPOMである。熱安定性、耐熱水性、耐アルカリ性を改善しやすい。 |
| 変性グレード | PTFE、シリコーン、潤滑剤、ガラス繊維、導電フィラー、耐候剤、難燃剤などを配合したグレードがある。 |
POMは主鎖中に酸素原子を含むため、結晶性が高く、剛性と摺動性に優れる。一方で、強酸性条件や過熱条件では主鎖の分解が起こりやすく、ホルムアルデヒドを発生する場合がある。成形時には過熱、滞留、酸性物質との接触、塩素系樹脂との混入を避ける必要がある。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ホモポリマーPOM | オキシメチレン単位を主体とする高結晶性POM | 剛性、引張強さ、疲労特性、耐クリープ性に優れる。 | 熱安定性、耐熱水性、耐アルカリ性ではコポリマーに劣る場合がある。 | 高荷重ギア、精密機械部品、軸受、カム、ローラー |
| コポリマーPOM | トリオキサンと環状エーテルなどの共重合体 | 熱安定性、耐熱水性、耐アルカリ性、成形安定性に優れる傾向がある。 | 剛性や機械強度はホモポリマーよりやや低い場合がある。 | 自動車部品、食品機械部品、ポンプ部品、水回り部品、燃料系部品 |
| 摺動グレードPOM | PTFE、シリコーン、潤滑剤、特殊添加剤などを配合 | 摩擦係数が低く、摩耗量を低減しやすい。 | 接着、塗装、印刷、機械強度、食品接触適合性に影響する場合がある。 | ギア、軸受、スライダー、ローラー、カム、搬送部品 |
| GF強化POM | ガラス繊維を配合した強化グレード | 剛性、荷重たわみ温度、寸法安定性、耐クリープ性が向上する。 | 摺動相手材を摩耗させやすく、成形収縮の異方性が大きくなる場合がある。 | 構造部品、ブラケット、ハウジング、荷重部品、精密部品 |
| 耐候グレードPOM | 紫外線安定剤、光安定剤、カーボンブラックなどを配合 | 屋外暴露での変色、脆化、物性低下を抑えやすい。 | 長期屋外用途では紫外線、熱、応力、薬品の複合劣化を確認する必要がある。 | 屋外機構部品、自動車外装周辺部品、建材部品 |
| 導電・帯電防止グレードPOM | カーボンブラック、導電フィラー、帯電防止剤などを配合 | 静電気対策、粉塵付着対策、電子部品搬送用途に適する。 | 機械特性、摩耗性、色調、食品接触適合性は個別確認が必要である。 | 電子部品搬送治具、ローラー、静電気対策部品、精密搬送部品 |
| 食品接触対応グレードPOM | 食品接触用途を想定した添加剤設計のPOM | 食品機械、飲料機器、厨房機器で採用しやすい。 | 日本、米国、EUなどの法規適合はグレード別の証明書確認が必要である。 | 食品機械部品、飲料部品、ポンプ、バルブ、ギア、スクレーパー |
| 難燃グレードPOM | 難燃剤を配合した特殊POM | 電気・電子用途で難燃要求に対応できる場合がある。 | 標準POMより選択肢が限られ、機械特性、熱安定性、発生ガスに注意が必要である。 | 電気・電子部品、コネクタ周辺部品、機構部品 |
| 低VOC・低アウトガスグレードPOM | 揮発成分やホルムアルデヒド発生量を抑えたグレード | 自動車内装、電気・電子、精密機器で使いやすい。 | 標準品より選定範囲が限られ、要求規格に応じた確認が必要である。 | 自動車内装機構部品、精密機器部品、電子機器部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適正 | 主な製品例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | ギア、ファスナー、クリップ、軸受、精密部品、自動車部品 | 最も一般的である。過熱、長時間滞留、PVCなどの異材混入を避ける。 |
| 押出成形 | ○ | 丸棒、板材、パイプ、シート、異形押出材 | 溶融安定性、冷却条件、結晶化収縮、寸法変動に注意する。 |
| ブロー成形 | △ | 特殊容器、燃料関連部品、中空部品 | 一般的なPE、PPほど容易ではなく、対応グレード選定が重要である。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、ブロック材、素材成形品 | 熱履歴、結晶化、内部応力、気泡、寸法変化に注意する。 |
| 真空成形 | × | 一般熱成形品には不向き | 結晶性が高く、加熱窓が狭いため、一般的な真空成形には適しにくい。 |
| 切削加工 | ◎ | ギア、摺動部品、治具、ローラー、機械加工部品 | 発熱、寸法変化、残留応力、切削油との相性を確認する。 |
| 溶着 | △ | 超音波溶着、熱板溶着、スピン溶着など | 結晶性と低表面エネルギーの影響で条件設定が難しい場合がある。 |
| 接着 | △〜× | 小型部品、仮固定、表面処理後の接着 | 表面処理なしでは接着しにくい。プラズマ処理、コロナ処理、プライマーを検討する。 |
| 塗装・印刷 | △ | 加飾部品、識別表示、マーキング | 密着性が低いため、脱脂、表面処理、プライマー、密着試験が必要である。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 一般に80〜100℃程度 | POMは吸水率が低いが、保管状態、結露、再生材使用時には乾燥が推奨される。 |
| 乾燥時間 | 2〜4時間程度 | メーカー推奨条件を優先する。過乾燥や高温乾燥による熱履歴にも注意する。 |
| シリンダー温度 | 一般に180〜220℃程度 | 高温滞留により分解し、ホルムアルデヒドが発生する場合がある。 |
| 金型温度 | 一般に60〜100℃程度 | 結晶化、寸法安定性、外観、成形収縮、そりに影響する。 |
| 成形収縮率 | 標準POMで約1.5〜2.5%、GF強化POMで約0.5〜1.2%程度 | グレード、肉厚、ゲート位置、金型温度、保圧、繊維配向により大きく変化する。 |
| 金型設計 | 結晶化収縮を考慮する | 精密部品ではゲート位置、肉厚、ウェルド、そり、後収縮、アニール要否を確認する。 |
| 再生材使用 | 条件付きで可能 | 熱履歴により分解が進むため、混合率、臭気、色調、機械物性、MFR変化を確認する。 |
| 成形時の禁止事項 | 過熱、長時間滞留、酸性物質混入、PVC混入を避ける | POMは分解時にホルムアルデヒドを発生する可能性があるため、換気とパージ管理が重要である。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | ホモポリマーPOM | コポリマーPOM | 摺動グレードPOM | GF強化POM | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 比重・密度 | g/cm3 | 約1.41〜1.43 | 約1.39〜1.42 | 約1.40〜1.45 | 約1.50〜1.65 | 充填材、添加剤、結晶化度により変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 約65〜80 | 約55〜70 | 約45〜65 | 約80〜130 | ホモポリマーは高強度傾向、GF強化品は高剛性傾向である。 |
| 伸び | % | 約10〜40 | 約20〜75 | 約5〜40 | 約2〜6 | 試験片形状、成形条件、グレードにより大きく変化する。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 約2,800〜3,500 | 約2,400〜3,000 | 約2,000〜3,000 | 約5,000〜9,000 | GF強化により剛性が大きく向上する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 約4〜10 | 約5〜12 | 約4〜10 | 約4〜9 | ノッチ有無、温度、グレードにより差が大きい。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 約100〜130 | 約90〜120 | 約90〜120 | 約140〜170 | 荷重条件により数値が変わる。GF強化品は高い傾向がある。 |
| 融点 | ℃ | 約175〜180 | 約165〜170 | 約165〜175 | 約165〜180 | ホモポリマーとコポリマーで差がある。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約-60付近 | 約-60付近 | 約-60付近 | 約-60付近 | 測定方法により幅がある。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 約80〜100 | 約80〜105 | 約80〜105 | 約90〜110 | 空気中、荷重、薬品、水分、寿命要求により変わる。 |
| 吸水率 | % | 約0.2〜0.5 | 約0.2〜0.5 | 約0.2〜0.5 | 約0.2〜0.6 | PA6、PA66、PBT、PET、PUなどと比較する際は吸水による寸法変化を確認する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 約1014〜1016 | 約1014〜1016 | 約1013〜1016 | 約1013〜1016 | 導電・帯電防止グレードでは大きく低下する。 |
| 摩擦係数 | – | 約0.2〜0.4 | 約0.2〜0.4 | 約0.1〜0.3 | 約0.25〜0.5 | 相手材、面圧、速度、潤滑、表面粗さにより変化する。 |
| 線膨張係数 | ×10-5/K | 約8〜12 | 約8〜12 | 約7〜12 | 約3〜7 | GF強化では繊維配向により異方性が出る。 |
| 酸素指数 | % | 約15〜16 | 約15〜16 | 約15〜17 | 約15〜18 | 標準グレードは燃えやすい部類であり、難燃要求がある場合はUL94グレードを確認する。 |
| UL94 | – | HB相当が多い | HB相当が多い | HB相当が多い | HB相当が多い | 難燃グレードでは異なる。肉厚、色、認証ファイルで確認する。 |
耐薬品性
POMは、油、燃料、脂肪族炭化水素、多くのアルコール、弱アルカリに対して比較的良好な耐性を示す。一方で、強酸、酸化性酸、塩素系薬品、高温水、蒸気には弱い場合がある。以下の評価は代表的な目安であり、実使用では濃度、温度、接触時間、応力、成形残留応力、グレード、添加剤、洗浄頻度を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸、クエン酸 | △ | 低濃度・短時間では使用可能な場合があるが、酸性条件では分解が進む場合がある。 |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸、過酸化水素高濃度品 | × | POMの分解、脆化、変色、ガス発生のリスクが高い。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、炭酸ナトリウム、アンモニア水 | ○ | コポリマーPOMは比較的良好な傾向がある。高温・高濃度では確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合があるが、応力下では膨潤、割れ、寸法変化を確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ブタノール、MMB | ○ | 一般に大きな溶解性は低いが、温度上昇時や長期接触では確認が必要である。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | ○〜△ | 短時間では比較的安定な場合があるが、膨潤、寸法変化、応力割れを確認する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット、灯油 | ◎〜○ | 一般に良好であるが、添加剤抽出や長期膨潤は確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○〜△ | 溶解しにくい場合が多いが、応力下、長期接触、温度上昇では注意する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合があるが、膨潤や表面変化を確認する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | △〜× | 膨潤、割れ、抽出、劣化のリスクがあるため、原則として慎重に扱う。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ○〜△ | 常温水では比較的安定である。高温水、蒸気、長期浸漬では加水分解や寸法変化を確認する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、グリース、動植物油 | ◎〜○ | 一般に良好であるが、添加剤、酸化劣化油、高温油では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | ○ | 燃料組成、アルコール含有量、温度、圧力、規格要求により確認が必要である。 |
| 洗剤・水溶液 | 中性洗剤、弱アルカリ洗剤、界面活性剤水溶液 | ○〜△ | pH、界面活性剤、キレート剤、酸化剤、温度、濃度、洗浄時間により変化する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 値・内容 |
|---|---|
| POMの代表的なSP値 | 約22〜24 MPa1/2 |
| 代表値の扱い | 文献、測定方法、結晶化度、ホモポリマー・コポリマー差、添加剤、温度により差があるため、目安として扱う必要がある。 |
| 耐薬品性判断上の注意 | SP値が近い薬品ほど膨潤・軟化しやすい傾向はあるが、POMでは酸分解、酸化、加水分解、応力割れ、添加剤抽出も重要である。 |
| 実務上の確認項目 | 濃度、温度、接触時間、応力、荷重、流速、洗浄頻度、成形残留応力、グレード差を確認する。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
POMの代表SP値を23 MPa1/2として、代表的な溶剤とのSP値差を整理する。SP値差が小さいほど膨潤や軟化の可能性が高くなるが、実際の耐薬品性は化学反応性、結晶化度、温度、応力、濃度、添加剤、接触時間に強く依存する。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | POMとの差 | SP値上の目安 | 実務評価 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 約47.9 | 約24.9 | ◎ | 常温水は比較的良好だが、高温水・蒸気では加水分解確認が必要である。 |
| メタノール | 約29.7 | 約6.7 | ○ | 短時間は比較的安定な場合があるが、長期接触や応力下では確認する。 |
| エタノール | 約26.0 | 約3.0 | △ | 一般には使用例があるが、膨潤、寸法変化、応力割れを確認する。 |
| IPA | 約23.5 | 約0.5 | × | SP値上は近いが、実際には短時間接触で使用可能な場合もある。応力下評価が重要である。 |
| アセトン | 約20.0 | 約3.0 | △ | 短時間では大きな溶解がない場合もあるが、膨潤、白化、割れを確認する。 |
| MEK | 約19.0 | 約4.0 | △ | 応力下、長期接触、温度上昇では注意が必要である。 |
| 酢酸エチル | 約18.6 | 約4.4 | △ | 短時間接触では使用可能な場合があるが、膨潤と寸法変化を確認する。 |
| トルエン | 約18.2 | 約4.8 | △ | 大きな溶解はしにくい場合があるが、長期接触では注意する。 |
| キシレン | 約18.0 | 約5.0 | ○ | 短時間では比較的安定な場合があるが、膨潤、臭気、抽出を確認する。 |
| ヘキサン | 約14.9 | 約8.1 | ◎ | 一般に良好である。ただし添加剤抽出や燃料混合成分は確認する。 |
| ジクロロメタン | 約20.2 | 約2.8 | △ | 塩素系溶剤として注意が必要であり、膨潤、割れ、劣化を確認する。 |
| グリセリン | 約33.8 | 約10.8 | ◎ | SP値上は膨潤しにくいが、高温、吸湿、水混合系では確認する。 |
| 評価 | 意味 |
|---|---|
| ◎ | 非常に良好。一般に溶解・膨潤しにくいが、実使用条件での確認は必要である。 |
| ○ | 概ね良好。短時間接触や常温では使用可能な場合が多い。 |
| △ | 注意が必要。濃度、温度、応力、接触時間により膨潤、軟化、割れが起こる場合がある。 |
| × | 不適。溶解、膨潤、分解、脆化、応力割れのリスクが高い。 |
製法
ポリアセタールは、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンを原料として製造される。 ホモポリマーPOMは主にホルムアルデヒドを重合して得られ、コポリマーPOMはトリオキサンに少量のコモノマーを共重合して得られる。
ホモポリマー
- 99.9%以上に精製したホルムアルデヒドを低温でアニオン重合し、適当な分子量の重合体を製造する。
- 重合体はそのままだと末端からモノマーに戻る可能性があるため、末端をエステル化して生成する。
- 市販されているホモポリマーは、通常1000個以上のアルデヒド基を持っており、結晶化度は85~90%である。

コポリマー
- ホルムアルデヒドの3分子環状重合物であるトリオキサンに数%のエチレンオキシドを混合し、触媒を用いてカチオン重合する。
- 重合体は、エチレンオキシドが連鎖中に入っているので、酸性不純物による加水分解が防止出来、末端はエステル化を行うことで安定する。
- コポリマー(ジュラコン)共重合体の結晶化度は80~85%である。

| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | ホルムアルデヒド、トリオキサン、ジオキソランなどが代表的である。 | 高純度原料、触媒、水分、不純物、酸性成分の管理が重要である。 |
| 重合方法 | ホルムアルデヒドまたはトリオキサンを重合してPOMを得る。ホモポリマーとコポリマーで工程が異なる。 | 熱安定性を高めるため、末端安定化や共重合設計が行われる。 |
| ホモポリマー製造 | ホルムアルデヒドを重合し、高結晶性POMを得る。 | 高強度・高剛性が得られる一方、末端安定化が重要である。 |
| コポリマー製造 | トリオキサンにジオキソランなどを共重合し、熱安定性や耐アルカリ性を改善する。 | 共重合成分量により結晶性、融点、機械特性が変化する。 |
| ペレット化 | 重合後に安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤などを配合し、押出混練してペレット化する。 | 熱履歴、揮発成分、ホルムアルデヒド発生、異物混入を管理する。 |
| コンパウンド | GF、摺動改質剤、導電フィラー、耐候剤、難燃剤、食品接触対応添加剤などを配合する。 | 配合により機械特性、摺動性、成形収縮、摩耗性、法規適合性が変わる。 |
代表的な反応式
| 種類 | 反応式・工程イメージ |
|---|---|
| ホルムアルデヒドの重合 | n HCHO → [-CH2-O-]n |
| トリオキサンの開環重合 | n (CH2O)3 → 3[-CH2-O-]n |
| コポリマー化の概念 | トリオキサン + 環状エーテル → オキシメチレン単位を主体とするPOMコポリマー |
| 末端安定化 | POM末端の不安定構造を安定化し、熱分解やホルムアルデヒド発生を抑える。 |
POMの製造では、重合後の安定化処理が重要である。成形加工時の熱分解を抑えるため、安定剤、酸化防止剤、捕捉剤、滑剤などが用いられる。GF強化品や摺動グレードでは、添加剤の種類により摩擦摩耗、寸法精度、相手材攻撃性、発生ガス、食品接触適合性が変わるため、用途別にグレードを選定する必要がある。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 燃料系部品、ドアロック部品、シート機構、クリップ、ギア、レバー、スライダー | 耐燃料性、摺動性、寸法安定性、耐疲労性が求められる部品に適する。 | 燃料組成、アルコール燃料、熱老化、低VOC、低アウトガス、耐候性を確認する。 |
| 電気・電子 | スイッチ部品、コネクタ周辺部品、リレー部品、精密機構部品、搬送治具 | 寸法安定性、絶縁性、耐摩耗性、成形精度に優れる。 | 難燃性、トラッキング、アウトガス、接点汚染、帯電防止性を確認する。 |
| 機械部品 | ギア、軸受、カム、ローラー、ブッシュ、スプロケット、スペーサー | 金属代替、低摩擦、自己潤滑性、耐摩耗性が期待できる。 | 面圧、速度、温度、相手材、潤滑条件、摩耗粉、クリープを確認する。 |
| 医療 | 医療機器部品、機構部品、ハンドル、ポンプ部品 | 寸法安定性、機械強度、切削加工性が有用である。 | 医療グレード、滅菌方法、抽出物、薬液接触、規格適合を確認する。 |
| 食品機械 | ギア、スクレーパー、搬送部品、ローラー、ポンプ、バルブ、ノズル | 低吸水、摺動性、耐油性、洗浄性が評価される。 | 食品接触適合、アルカリ洗浄、酸洗浄、熱水洗浄、異物混入リスクを確認する。 |
| 建築・設備 | 水回り部品、ファスナー、戸車、摺動部品、調整部品 | 耐摩耗性、寸法安定性、静音性に優れる。 | 屋外UV、高温水、洗剤、塩素系薬品、応力割れに注意する。 |
| 日用品 | ファスナー、バックル、文具部品、玩具部品、精密可動部品 | 成形性、耐久性、摺動性、寸法精度に優れる。 | 色材、衝撃、誤使用、燃焼性、法規制を確認する。 |
| 用途別選定 | ギア、軸受、チューブ、筐体、フィルム、コネクタ、ポンプ部品、食品機械部品 | ギア・軸受は摺動性、チューブ・ポンプは耐薬品性、筐体は寸法安定性が重視される。 | POMは一般にフィルム用途の主材料では少ない。用途ごとに摩耗、薬品、荷重、温度、法規、異物混入を分けて評価する必要がある。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | POMとの違い |
|---|---|---|
| ナイロン6(PA6) | 靭性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れるポリアミドである。 | POMより吸水率が高く、湿度による寸法変化が大きい。一方、衝撃性や耐熱グレードの選択肢が多い。 |
| ナイロン66(PA66) | PA6より融点が高く、耐熱性と剛性に優れるポリアミドである。 | POMより耐熱性が高い場合があるが、吸水による寸法変化が大きい。ギア用途では湿度環境を考慮する。 |
| ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 電気特性、寸法安定性、成形性に優れる結晶性ポリエステルである。 | POMより電気・電子用途や難燃グレードで使いやすい場合がある。一方、摺動性や耐摩耗性ではPOMが有利な場合がある。 |
| ポリエチレンテレフタレート(PET) | 耐薬品性、剛性、寸法安定性に優れるポリエステルである。 | POMより剛性や耐熱性が高いグレードもあるが、成形時の結晶化管理が重要である。摺動部品ではPOMが選ばれやすい。 |
| ポリカーボネート(PC) | 透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れる非晶性樹脂である。 | PCは透明部品や耐衝撃用途に適する。POMは摺動性、耐摩耗性、低吸水性で有利である。 |
| ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | 極めて低い摩擦係数と優れた耐薬品性を持つフッ素樹脂である。 | PTFEは耐薬品性と低摩擦性で優れるが、機械強度、成形性、寸法精度ではPOMが有利な場合が多い。 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れるスーパーエンプラ系の結晶性樹脂である。 | PPSは高温・薬品環境に強いが、コストが高い。POMは常温から中温域の摺動・機構部品でコストバランスが良い。 |
| ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | 高耐熱、高強度、耐薬品性に優れる高機能スーパーエンプラである。 | PEEKは高温・高荷重・薬品環境に適するが高価である。POMは一般機構部品でのコストと加工性に優れる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| ポリプラスチックス株式会社 | DURACON | 日本で広く使用されるPOMコポリマー系の代表的ブランドである。自動車、電気・電子、機械部品などに用いられる。 |
| DuPont | Delrin | POMホモポリマーの代表的ブランドとして知られる。高剛性、高強度、耐疲労性を要求する用途で採用される。 |
| Celanese | Hostaform / Celcon | POMコポリマーを中心に、標準、摺動、耐候、特殊グレードを展開する主要メーカーである。 |
| BASF | Ultraform | POMコポリマー系ブランドとして知られ、自動車、機械、電気・電子用途に使用される。 |
| 旭化成株式会社 | TENAC | POMホモポリマーおよびコポリマーを展開する代表的メーカーである。摺動、耐候、低VOCなどの用途展開がある。 |
| 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 | ユピタール | POMコポリマーの代表的ブランドであり、機械部品、電気・電子部品、自動車部品などに用いられる。 |
| Kolon Plastics | KOCETAL | POM樹脂を展開する海外メーカーの一つであり、自動車、産業部品、電気・電子用途に使用される。 |
| Formosa Plastics | FORMOCON | POM樹脂を展開する海外メーカーの一つであり、汎用機構部品や工業用途で使用される。 |
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