ポリエーテルケトンケトン

概要

項目 内容
材料名 ポリエーテルケトンケトン
略記号 PEKK
IUPAC 単一の厳密なIUPAC名で一般化しにくい。代表的には poly(oxy-1,4-phenylene-carbonyl-phenylene-carbonyl-1,4-phenylene) 系の芳香族ポリエーテルケトンとして扱われる。中央フェニレン部にはテレフタロイル由来のpara配列とイソフタロイル由来のmeta配列が含まれ得る。
英語名 Polyetherketoneketone、Poly(ether ketone ketone)
日本語名 ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテル・ケトン・ケトン、PEKK樹脂
分類 熱可塑性樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、PAEK系樹脂、擬似非晶性又は半結晶性樹脂
プラスチック分類 スーパーエンジニアリング・プラスチック
化学式又は代表構造 代表繰返し単位:(C20H12O3)n。主鎖に芳香族環、エーテル結合1個、ケトン結合2個を含む。
CAS No. 25917-05-9がPEKKとして記載される例がある。ただし、T/I比、共重合組成、末端基、添加剤及び供給者のSDSにより取扱いが異なるため、個別グレードのSDSを確認する必要がある。
構造・主成分 ジフェニルエーテル由来の芳香族エーテル骨格と、テレフタロイル/イソフタロイル由来の芳香族ジケトン骨格からなる。T/I比により結晶化速度、融点、成形窓及び最終結晶化度を制御できる。
主な用途 航空宇宙部品、熱可塑性複合材料マトリックス、3Dプリント、半導体製造装置部品、電気絶縁部品、油田・ガス関連部品、摺動部品、粉体コーティング、医療用途向け部材など。

ポリエーテルケトンケトン(PEKK)は、芳香族環、エーテル結合及び2個のケトン結合を繰返し単位に持つPAEK系の高耐熱熱可塑性樹脂である。一般にPEEKよりケトン/エーテル比が高く、ガラス転移温度は約158~165℃、半結晶性グレードの融点はおおむね約305~360℃の範囲にある。非強化材でも高い強度、剛性、耐薬品性、難燃性及び高温クリープ特性を示す。

PEKKの重要な特徴は、テレフタロイル由来の直線性が高いT単位と、イソフタロイル由来の屈曲したI単位の比率を変えることで、結晶化速度と融点を広い範囲で調整できる点である。低結晶化速度のグレードは擬似非晶状態を得やすく、熱成形、粉体造形、フィラメント積層、接着及びコーティングに適しやすい。高結晶化グレードは高温強度、耐薬品性、耐摩耗性及び寸法安定性を得やすい。

材料選定では「PEKK」という材料名だけで性能を一律に扱わず、T/I比、分子量、溶融粘度、結晶化度、成形履歴、アニール、繊維強化率及び用途認証を確認する必要がある。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、接触時間、試験片形状及び成形条件を再現した評価が必要である。

特徴

長所
  • ガラス転移温度が約160℃前後であり、PAEK系の中でも高温域の剛性とクリープ特性に優れる。
  • 多くの燃料、油、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素及び作動油に対して高い耐性を示す。
  • T/I比と冷却条件により、擬似非晶状態から高結晶状態まで結晶化挙動を調整できる。
  • 非強化材、GF強化材、CF強化材、摺動材、粉末、フィラメント、フレーク及びコーティング用粉末を選択できる。
  • 本質的に難燃性が高く、ハロゲン系難燃剤を用いない難燃グレードを構成しやすい。
  • 射出成形、押出成形、熱成形、圧縮成形、粉体塗装及び付加製造に対応できる。
短所
  • 材料価格は極めて高く、少量調達、特注形状及び認証グレードでは供給条件が限定されやすい。
  • 溶融加工温度と金型温度が高く、一般樹脂用設備ではヒーター容量、金型温調、スクリュー材質及び安全対策が不足する場合がある。
  • 結晶化度の差により、色調、透明性、収縮、反り、耐薬品性及び高温物性が変化する。
  • 高温滞留、局所過熱、吸湿状態での加工及び酸素存在下の長時間滞留では変色、ガス、分子量低下又は黒点が生じる場合がある。
  • 濃硫酸等の強い反応性薬品では、単なる膨潤ではなくスルホン化又は溶解を伴う可能性がある。
外観

未着色の成形品は、結晶化度が低い場合に黄褐色から琥珀色の半透明~透明外観を示し、結晶化度が高い場合はベージュ色から灰褐色の不透明外観を示す。GF強化材は淡色不透明、CF強化材は黒色となることが一般的である。

耐熱性

非強化材のガラス転移温度はおおむね158~165℃であり、半結晶性グレードの融点はT/I比により約305~360℃程度である。連続使用温度は用途及び評価基準により異なるが、メーカー資料では約240~260℃級が示される場合がある。連続使用温度をHDT、Tg又は融点と同一視してはならない。

耐薬品性

常温では多くの有機溶剤、燃料、潤滑油、作動油、希酸及びアルカリに対して良好な耐性を示す。一方、濃硫酸等の強酸、強酸化剤、高温水蒸気、薬品と応力が重なる条件、低結晶化成形品及び薄肉3Dプリント品では個別確認が必要である。

加工性

PEEKと同様に高温加工設備を必要とするが、低融点・低結晶化速度のPEKKグレードでは、熱成形、レーザー焼結及びフィラメント積層の加工窓を確保しやすい場合がある。高結晶化グレードでは220~250℃級の高い金型温度が用いられ、表層と内部の結晶化を揃えることが重要である。

分類上の注意

PEKKはポリアリールエーテルケトン(PAEK)の一種であり、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリエーテルケトン(PEK)とはエーテル結合とケトン結合の配列が異なる。PEKKには擬似非晶状態と半結晶状態が存在するため、単純に「結晶性樹脂」又は「非晶性樹脂」の一方だけに固定して扱わない方が実務的である。

構造式

PEKKは、ジフェニルエーテル由来の芳香族エーテル部分と、テレフタロイル又はイソフタロイル由来の芳香族ジケトン部分からなる。下図は代表的なpara型単位とmeta型単位を示した模式構造であり、実際の商用材料では両単位が所定のT/I比で共重合される。

ポリエーテルケトンケトン構造式

ポリエーテルケトンケトンの代表構造 PEKKのpara型及びmeta型繰返し単位とT/I比による結晶化制御を示す構造模式図 PEKKの代表的な繰返し構造 芳香族環+エーテル結合1個+ケトン結合2個 代表組成式:(C₂₀H₁₂O₃)ₙ T単位:テレフタロイル由来のpara配列 [ -C₆H₄-O-C₆H₄-C(=O)-C₆H₄-C(=O)- ] x 直線性が高い 結晶化しやすい 融点・高温剛性が上がりやすい I単位:イソフタロイル由来のmeta配列 [ -C₆H₄-O-C₆H₄-C(=O)-m-C₆H₄-C(=O)- ] y 鎖に屈曲を導入 結晶化が遅くなる 熱成形・積層造形の窓を広げやすい T/I比を高くする方向 I比率が高い:低融点・低結晶化速度・擬似非晶化しやすい T比率が高い:高融点・高結晶化度・高温強度を得やすい

上図のx及びyはT単位とI単位の構成比を示す模式表現である。商用グレードの正確なT/I比、配列分布、分子量及び末端構造はメーカー固有情報となる場合がある。構造式だけで物性を固定せず、DSCによるTg・Tm・結晶化挙動と実成形品の密度又は結晶化度を併せて確認する必要がある。

種類

種類・グレード区分 主成分又は改質方法 長所 短所・注意点 主な用途
擬似非晶・低結晶化 I単位比率が比較的高く、結晶化が遅いPEKK 低い加工温度、熱成形性、層間接着、AM適性 高温HDTと耐薬品性は高結晶材より低下し得る。後結晶化収縮に注意 熱成形シート、SLS、FFF、粉体塗装
中間結晶化 加工性と半結晶性を両立したT/I比 広い加工窓、強度、複合材含浸性のバランス 冷却条件で透明性、収縮、反り、HDTが変化 射出、押出、連続繊維複合材
高結晶化 T単位比率が比較的高く、結晶化が速いPEKK 高温剛性、耐薬品性、耐摩耗性、寸法安定性 溶融・金型温度が高く、結晶化収縮を管理する必要 射出部品、押出素材、油田・ガス
高流動 低粘度又は高MVR設計 薄肉充填、繊維含浸、複雑形状に有利 バリ、滞留、靱性とのバランスに注意 薄肉射出、複合材、コーティング
高粘度 高分子量又は低MVR設計 溶融強度、押出安定性、靱性を得やすい 射出充填圧力が上がりやすい 板、丸棒、チューブ、厚肉押出
GF30 ガラス繊維約30質量% 剛性、HDT、寸法安定性、絶縁性を向上 異方性、ウェルド強度、繊維浮き、金型摩耗 絶縁部品、構造部品、耐熱治具
CF30 炭素繊維約30質量% 高剛性、低線膨張、耐摩耗性、導電性 絶縁用途に不向き。異方性と相手材摩耗に注意 航空宇宙、半導体治具、摺動部品
摺動・低摩擦 PTFE、CF、グラファイト等を配合 摩擦係数、摩耗率、焼付き限界を改善 強度、絶縁性、溶出及びPFAS関連確認が必要 軸受、ブッシュ、シール支持
導電・静電気拡散 CF、カーボンブラック、CNT等を配合 帯電防止、静電気拡散、EMI用途に対応 抵抗値は配向、成形条件、測定方向に依存 半導体搬送、電子治具
食品接触・医療用途向け 純度、添加剤、トレーサビリティを管理 滅菌、低溶出、生体適合設計に対応可能 適合は個別グレード、色、拠点、用途ごとに確認 医療器具、食品機械部品

PEKKはT/I比、分子量及び流動性により用途が大きく変わる。比較機能では、非強化標準、擬似非晶、高結晶、GF30及びCF30を別データとして管理し、同一の代表値に統合しないことが重要である。

成形加工

加工方法 適性 主な製品・用途 理由及び主な注意点
射出成形 高結晶化及び中間結晶化グレードに適する 高温シリンダー、高温金型、乾燥、滞留及び結晶化管理
押出成形 板、丸棒、チューブ、フィルム、被覆 粘度グレード、ダイ温度、冷却及びゲル管理
ブロー成形 高溶融強度の特殊グレードで検討 主要加工法ではなく、パリソン安定性と設備確認が必要
インフレーション × 一般には適用例が限定的 高温設備、溶融強度及びバブル安定性が課題
Tダイフィルム 絶縁・バリア・熱成形フィルム ダイ温度、結晶化、巻取り応力、ピンホールを管理
真空・圧空成形 擬似非晶シートを成形後に結晶化できる 加熱均一性、ドロー比、金型温度、後収縮を確認
圧縮成形 厚肉品、複合材、低流動グレード 加熱、加圧、脱気及び冷却速度を管理
回転成形 粉末グレードで中空品を形成可能 粒径、酸化、焼結、肉厚均一性が重要
粉体塗装 金属表面の耐熱・耐薬品コーティング 下地処理、予熱、膜厚、ピンホール、密着性を確認
3Dプリント・FFF 低結晶化又は専用フィラメント 乾燥、造形室、ベッド温度、反り、層間強度、アニール
3Dプリント・SLS/PBF 専用粒度の粉末を使用 粉末再使用率、酸化、焼結窓、空隙率、結晶化度
切削加工 押出・圧縮成形素材から精密加工 内部応力、発熱、工具摩耗、バリ、アニールに注意
溶着 熱板、超音波、振動、レーザー等 結晶化度、接合面温度、気密要求を評価
接着 表面処理と構造用接着剤を併用 プラズマ、研磨、プライマー後の耐久性を確認
塗装・印刷 表面処理後に適用可能 表面エネルギー、乾燥温度、インキ密着を確認
めっき・蒸着 専用前処理で可能 密着、熱膨張差、真空アウトガスが課題
インサート成形 金属代替・複合構造 金属予熱、熱膨張差、角部応力、圧入応力に注意
代表的な成形条件
項目 代表値又は範囲 単位 条件・区分 備考 信頼度
予備乾燥 必要 成形前乾燥を原則とする A
乾燥温度 120~150 メーカー推奨 120℃×6~8h又は150℃×3~4hが代表例 A
乾燥時間 3~8 h 温度との組合せ 除湿又は真空乾燥を使用 A
許容含水率 データなし % 材料群共通値は一般化困難。個別ガイド確認
シリンダー・供給部 300~350 グレード別目安 低融点6000系から高結晶8000系までを含む A
シリンダー・圧縮部 315~375 グレード別目安 局所過熱を避け樹脂温度を実測 A
シリンダー・計量部 320~380 グレード別目安 高結晶グレードほど高温側 A
ノズル温度 330~385 グレード別目安 固化防止と滞留短縮を両立 A
樹脂温度 320~385 メーカー推奨域 擬似非晶系は低温側、高結晶系は高温側 A
金型温度 160~250 用途別目安 完全結晶化では220~250℃級が代表的 A
射出圧力 80~160 MPa 一般目安 形状、ゲート、肉厚及び粘度に依存 C
保圧 40~100 MPa 一般目安 過大保圧は残留応力とインサート割れの原因 C
背圧 3~10 MPa 一般目安 必要最小限とし、せん断発熱を避ける C
スクリュー回転数 20~80 rpm 一般目安 低~中速を基本とし樹脂温度を優先 C
成形収縮率・流動方向 0.8~1.6 % 非強化材目安 結晶化度、肉厚、ゲート及び保圧に依存 C
成形収縮率・直角方向 1.0~2.0 % 非強化材目安 方向差と反りを実金型で確認 C
推奨肉厚 1.0~4.0 mm 一般設計目安 薄肉は充填、厚肉はボイドと結晶化差を確認 C
アニール 用途により必要 寸法安定化、結晶化促進、残留応力低減 B
アニール温度 200~280 グレード別目安 段階昇温し変形を防止。メーカー手順優先 C
アニール時間 2~8 h 肉厚依存 厚肉品は昇降温速度を遅くする C

上表はPEKK材料群の一般的な加工窓であり、特定グレードの絶対条件ではない。低結晶化6000系相当と高結晶8000系相当では推奨温度が大きく異なるため、メーカーの最新加工ガイドを優先する。高温樹脂用スクリュー、逆流防止機構、耐摩耗材、金型ヒーター、断熱板及び高温対応安全設備を確認する必要がある。

接合・表面処理適性
方法 適性 適用性 主な注意点
熱板溶着 溶融温度域を均一管理できる 過熱分解、結晶化度差、バリ、治具温度を管理
超音波溶着 小型部品に適用可能 エネルギーダイレクタ、応力集中、微小クラックに注意
振動溶着 比較的大型の接合面に適用可能 発熱、溶融層、繊維配向、外観を確認
レーザー溶着 透過側と吸収側の光学設計が成立する場合 着色剤、CF、肉厚により透過率が変化
高周波溶着 × 一般には適用困難 誘電加熱適性を個別確認
溶剤接着 × 常温で安定に溶解する一般溶剤が乏しい 濃硫酸等の反応性薬品を接着用途に用いない
接着剤接合 表面粗化、プラズマ、プライマーで改善 高温・薬品・湿熱後の接着強度を確認
機械締結 ボルト、ねじ、インサート、圧入に対応 座面圧、クリープ、切欠き、締付トルクを管理
塗装・印刷 表面処理後に可能 密着、耐溶剤、焼付温度、アウトガスを評価
コロナ・プラズマ処理 ぬれ性と接着性を改善 処理効果の経時低下と過処理を確認
寸法精度・設計上の注意
  • 非強化PEKKの収縮は結晶化度の影響を強く受ける。金型温度、冷却、肉厚及びアニールを固定し、流動方向と直角方向を測定する。
  • GF・CF材は収縮を低減できる一方、繊維配向による異方性、反り、ウェルド強度低下及び相手材摩耗が増える場合がある。
  • 短時間引張強さを設計許容応力として直接使用しない。温度、寿命、クリープ、疲労、薬品及びノッチを考慮して安全率を設定する。

代表的な物性値又は機械的性質

比較用の基準データは、非強化・半結晶性・中間流動グレードの代表例として7002相当を採用した。数値は材料群の保証値ではない。ACFには代表値、下限、上限、単位、規格、温度、材料状態、グレード区分、強化材含有率及び信頼度を分離して登録することが望ましい。

非強化・半結晶性PEKKの比較用代表値
項目 単位 代表値 下限 上限 試験規格 試験条件 材料状態・備考 信頼度
密度 g/cm³ 1.29 ISO 1183-1 23℃ 半結晶性7002相当 A
比重 無次元 1.29 ISO 1183-1相当 23℃ 密度からの実務近似 A
吸水率・24時間水浸漬 % 0.11 ISO 62 23℃、2mm 水中浸漬後 A
吸湿率・24時間50%RH % 0.05 ISO 62 23℃、2mm 50%RH調節 A
平衡吸水率・水浸漬 % 0.70 ISO 62 23℃ 水中平衡 A
平衡吸湿率・50%RH % 0.40 ISO 62 23℃ 50%RH平衡 A
引張強さ・降伏 MPa 114 ISO 527-1/-2 23℃ 非強化7002相当 A
引張破断伸び % >15 ISO 527-1/-2 23℃ 公表値は下限表記 A
引張弾性率 GPa 3.90 ISO 527-1/-2 23℃ 非強化7002相当 A
曲げ強さ MPa 168 ISO 178 23℃ 非強化7002相当 A
曲げ弾性率 GPa 3.90 ISO 178 23℃ 非強化7002相当 A
圧縮強さ MPa 149 ISO 604 23℃、5mm/min 非強化7002相当 A
圧縮弾性率 GPa 3.80 ISO 604 23℃、1mm/min 非強化7002相当 A
シャルピー・ノッチ付き kJ/m² 5.0 ISO 179/1eA 23℃ ASTMアイゾットと単純比較しない A
シャルピー・ノッチなし kJ/m² 62 ISO 179/1eU 23℃ 非強化7002相当 A
ガラス転移温度 162 DSC、20℃/min 非強化7002相当 A
融点 336 DSC、第2昇温 20℃/min 半結晶性7002相当 A
荷重たわみ温度・1.80MPa 164 ISO 75-1/-2 結晶化状態に依存 A
連続使用温度 250 240 260 メーカー用途資料 用途依存 一般目安。RTI又は保証値ではない B
線膨張係数・Tg未満 10⁻⁵/K 2.4 DMA、引張 -100℃~Tg 7002相当 A
比熱 J/(g・K) 1.02 DSC 23℃ 非強化7002相当 A
体積抵抗率 Ω・cm 1×10¹⁷ ASTM D257 23℃ 1×10¹⁵Ω・mを換算 A
表面抵抗率 Ω 1×10¹⁷ ASTM D257 23℃ 非強化7002相当 A
絶縁破壊強さ kV/mm 84 IEC 60243-1 100µm 厚さ依存 A
比誘電率・1MHz 無次元 3.0 IEC 62631-2-1 23℃ 周波数依存 A
限界酸素指数 % 38 ISO 4589-1/-2 3.2mm 非強化7002相当 A
非強化グレード群の比較
グレード区分 強化 密度
g/cm³
引張弾性率
GPa
降伏強さ
MPa
降伏伸び
%
破断伸び
%
Tg
Tm
HDT 1.80MPa
備考
擬似非晶6000系相当 非強化 1.27 2.9~3.1 88~89 5.4~5.6 >50~80 158 該当なし/融解ピーク不明瞭 139 低結晶化、熱成形・AM向け
中間結晶7000系相当 非強化 1.29 3.9 114 5.5 >15 162 336 164 加工性と結晶性のバランス
高結晶8000系相当 非強化 1.29 3.6~4.1 100~120 3~5.5 3~30超 165 355~360 162~164 高温強度と結晶化度重視
GF30及びCF30強化グレード
グレード 強化材 含有率
質量%
密度
g/cm³
引張弾性率
GPa
降伏強さ
MPa
破断伸び
%
圧縮強さ
MPa
Tg
Tm
HDT 1.80MPa
表面抵抗率
Ω
備考
GF30・高結晶PEKK ガラス繊維 30 1.52 11.1 182 2.6 データなし 165 360 >330 >1×10¹⁶ 絶縁性を維持し剛性・HDT向上
CF30・高結晶PEKK 炭素繊維 30 1.39 19.6 190 1.3 294 165 360 >330 <1×10⁶ 高剛性・導電性。圧縮強さは流動方向
難燃性及び電気的性質
項目 代表値 単位又は厚さ 条件・注意点 信頼度
UL 94/IEC 60695-11-10相当 V-0 0.8mm 非強化6000~8000系の公表代表値。全色・全厚さを保証しない A
限界酸素指数 38~43 % 3.2mm。6000系43、7000/8000系38の代表例 A
ハロゲン含有 基ポリマーは含まない 添加剤、顔料、コンパウンド全体は個別確認 B
比誘電率 3.0 無次元 23℃、1MHz、非強化材代表値 A
誘電正接 0.002 無次元 23℃、1kHz、6000/8000系代表値 A
体積抵抗率 10¹⁶~10¹⁷ Ω・cm 非強化材。単位換算に注意 A
CF30表面抵抗率 <10⁶ Ω ASTM D257、配向・測定方向依存 A

UL 94、RTI、CTI、食品接触、医療、生体適合及び航空宇宙規格は、材料名ではなく個別グレード、色、厚さ、製造拠点及び用途条件に対して確認する必要がある。

疲労・クリープ・摺動特性

疲労強度、比摩耗量、摩擦係数及び限界PV値は、グレード、結晶化度、相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度及び潤滑条件に強く依存する。条件が揃った公開値が少ないため、比較機能では無理に単一値を格納せず、条件付きデータ又は「データなし」として管理する。

品質・成形不良
不良 主な原因 発生しやすい条件 影響 主な対策
シルバーストリーク・気泡 吸湿、ガス巻込み 乾燥不足、高速射出、厚肉 外観不良、ボイド、強度低下 除湿乾燥、材料保管、ベント改善
黒点・変色 高温滞留、デッドスポット、酸化 長時間停止、過熱ノズル 局部脆化、電気特性低下 滞留短縮、温度校正、高温用パージ
未溶融・表面荒れ 樹脂・金型温度不足 高結晶材、薄肉 光沢不良、ウェルド低下 温度均一化、可塑化調整
反り・寸法ばらつき 結晶化度差、繊維配向、肉厚差 偏肉、片側ゲート、急冷 組付け不良、平面度低下 均肉化、ゲート最適化、アニール
ウェルド強度低下 高粘度、低温フローフロント 多点ゲート、長流動、GF/CF材 破壊起点、気密不良 ゲート変更、温度上昇、ベント改善
繊維浮き 繊維の表面露出 高速射出、低金型温度 外観、摩耗、接着性低下 速度、金型温度、表面層を調整
離型・インサート割れ 高収縮、鋭角、過大保圧 厚肉ボス、金属インサート クラック、残留応力 R付与、保圧低減、予熱、抜き勾配
層間剥離・造形空隙 造形室温度不足、乾燥不足 FFF、SLS、複合材積層 Z方向強度低下、漏れ 造形条件、乾燥、後処理、CT検査
比較用評価スコア
評価項目 スコア
0~5
評価理由
引張強度 5 非強化約90~120MPa級、強化材約180~190MPa級
剛性 4 非強化約3~4GPa、GF30約11GPa、CF30約20GPa
衝撃強度 3 ノッチ感受性があり、結晶化度で差が大きい
耐熱性 5 Tg約158~165℃、連続使用温度約240~260℃級
低温特性 4 低温でも比較的高い靱性を保持
耐薬品性 5 多くの溶剤、燃料、油、作動油に高い保持率
耐候性 4 比較的良好だが屋外長期は安定化グレード確認
耐加水分解性 5 ポリエステルやポリアミドより高い
寸法安定性 4 低吸水だが結晶化収縮と配向管理が必要
低吸水性 4 24h吸水約0.1%級
摺動性 4 専用摺動配合により大幅改善可能
電気絶縁性 5 非強化材は高抵抗・高絶縁破壊強さ
難燃性 5 非強化材でV-0級、LOI約38~43%
透明性 2 低結晶化状態で半透明化できるが光学材ではない
成形加工性 2 加工温度、金型温度及び設備要求が高い
切削加工性 4 素材形状から精密加工可能
接着性 2 未処理表面では難しく表面処理が有効
リサイクル性 3 再溶融可能だが分別と熱履歴管理が必要
価格優位性 1 高機能樹脂の中でも極めて高価格

耐薬品性

下表は非強化PEKKを中心とした一次選定用の一般評価である。◎:一般条件で影響が小さい、○:概ね使用可能だが条件確認が必要、△:膨潤、軟化、強度低下、変色又は応力割れに注意、×:溶解、反応、著しい膨潤又は割れの可能性が高い、-:データ不足又は評価困難、とする。

薬品分類・薬品名 濃度 温度 接触時間 状態 評価 主な劣化形態 備考
水・塩水・海水 水、3.5%塩水 23℃ 7日~長期候補 無応力浸漬 軽微な吸水・寸法変化 低吸水で一般に良好。複合材界面も確認
温水 80~100℃水 80~100℃ 100~1000h候補 無応力又は応力下 吸水、結晶化、寸法変化 長期強度と接合部を確認
水蒸気 飽和蒸気 121~134℃ 滅菌サイクル 応力下を含む 酸化、微小クラック、寸法変化 実滅菌サイクルで確認
塩酸 5~30質量% 23℃ 7日候補 無応力 ◎~○ 表面変色、強度低下 高温・濃厚条件は確認
硫酸・希薄 5~30質量% 23℃ 7日候補 無応力 表面変化、長期強度低下 濃硫酸と区別する
硫酸・濃厚 95~98質量% 23℃以上 短時間から 無応力でも × スルホン化、溶解 SP差では評価不能
硝酸・酸化性酸 濃度依存 23℃以上 短時間から 無応力 △~× 酸化、変色、脆化 濃度、温度、混酸ごとに試験
NaOH・KOH 5~30質量% 23℃ 7日候補 無応力 ◎~○ 軽微な表面変化 高温濃厚条件は確認
アンモニア水 一般使用濃度 23℃ 7日候補 無応力 通常は小さい 接着部と添加剤を確認
メタノール・エタノール・IPA 原液 23℃ 7日 応力下候補 通常は小さい SP値が近いIPAでも実用耐性は高い
グリセリン・多価アルコール 原液又は水溶液 23~100℃ 7日候補 無応力 吸水、添加剤抽出 高温時の寸法と接合部確認
アセトン 原液 23℃ 7日候補 応力下含む ◎~○ 低結晶材で微小膨潤の可能性 造形品と高温条件は確認
MEK 原液 23℃ 7日 応力下 通常は小さい 1週間後も高い物性保持の公開例
NMP・DMF・DMAc 原液 23℃ 7日候補 応力下含む 低結晶材・高温で膨潤 高温洗浄は実試験
酢酸エチル・エステル 原液 23℃ 7日候補 応力下 ○~◎ 低結晶材で膨潤の可能性 結晶化度と残留応力確認
THF・エーテル 原液 23℃ 7日候補 応力下 膨潤、白化の可能性 長時間・高温・薄肉は確認
トルエン・キシレン 原液 23℃ 7日 応力下 通常は小さい 高い機械特性保持率の公開例
ヘプタン・脂肪族炭化水素 原液 23℃ 長期候補 無応力 通常は小さい 実燃料添加剤を確認
塩素系溶剤 個別溶剤 23℃ 7日候補 応力下 ○~◎ 低結晶材で膨潤の可能性 溶剤ごとに確認
燃料 Jet A、ガソリン、軽油 23~120℃ 7日~1000h候補 応力下含む ◎~○ 添加剤抽出、膨潤、酸化 実燃料・高温で確認
潤滑油・鉱油 実油 23~150℃ 長期 荷重・摺動下 ◎~○ 添加剤影響、摩耗 添加剤、すす、水分を含める
Skydrol系作動油 実液 23~100℃ 7日~長期 応力下 ◎~○ 表面変化、抽出 航空用実液で確認
ブレーキ液 実液 23~120℃ 長期 応力下 吸水、添加剤影響 DOT種類、水分、温度サイクル確認
次亜塩素酸塩・過酸化物 使用濃度 23~80℃ 繰返し 無応力 △~○ 酸化、変色、表面脆化 濃度、pH、温度、金属触媒を確認
界面活性剤・洗浄剤 製品使用濃度 23~80℃ 繰返し 応力下含む ○~◎ 抽出、応力割れ 混合成分の影響を確認
食品油 植物油・動物油 23~150℃ 長期 摺動下含む ◎~○ 酸化油、着色、臭気移行 食品接触適合は個別証明

さらに詳しい比較はプラスチックの耐薬品性一覧表を参照する。最終採用前には実薬品、実温度、実濃度、実応力、実時間及び実成形品を用いた評価が必要である。

環境応力割れ・ESC

PEKKは一般に高いESC耐性を示すが、擬似非晶成形品、3Dプリント層間、鋭いノッチ、金属インサート周辺、過大保圧及び接着前処理部では局部応力が集中する。薬品浸漬だけでなく、一定ひずみ又は一定応力を負荷したESC試験を行う。

SP値(溶解度パラメータ)

PEKKのSP値は標準化された単一の確定値ではなく、推算法、T/I比、結晶化度、温度及び文献により差がある。比較用には23.0MPa1/2を暫定代表値とするが、データ信頼度Dの参考値として扱う。

材料状態 代表値 下限 上限 単位 根拠区分 信頼度 備考
PEKK・比較用代表値 23.0 22.0 24.0 MPa1/2 文献値・推算法のばらつきを含む参考範囲 D 比較用暫定値。確定値として扱わない
擬似非晶PEKK 23.5 22.5 24.5 MPa1/2 非晶領域が多い場合の推定 D T/I比、分子量、熱履歴に依存
高結晶PEKK 22.8 22.0 23.5 MPa1/2 結晶相を含む見かけの参考値 D 結晶相の溶解障壁を表現しない
溶解性の目安

以下はSP値差だけを用いる簡易スクリーニングである。PEKKの実用耐薬品性はこの目安より高くなる場合が多く、反応性薬品では逆に低くなる場合がある。

SP値差 溶解・膨潤の目安 判定
0~2 膨潤・軟化しやすい ×
2~5 条件により膨潤する
5~8 短時間接触では比較的安定
8以上 溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性

代表PEKKのSP値を23.0MPa1/2として計算した。SP差判定と実用耐性を分離して示す。

溶剤・薬品 SP値
MPa1/2
SP値差 SP差のみの判定 実用耐性の目安 注意点
47.9 24.9 吸水と熱水は別評価
メタノール 29.7 6.7 高温長期は確認
エタノール 26.0 3.0 SP差判定より実用耐性が高い
IPA 23.5 0.5 × 高Tg、結晶相、拡散速度により実用耐性は高い
アセトン 20.3 2.7 ◎~○ 低結晶材、薄肉、高温、残留応力は確認
MEK 19.0 4.0 1週間浸漬後も高い物性保持の公開例
酢酸エチル 18.6 4.4 ○~◎ SP差だけで不適としない
THF 18.5 4.5 低結晶材と高温で膨潤確認
NMP 23.1 0.1 × 高温洗浄条件は実浸漬試験
DMF 24.8 1.8 × 未変性PEKKとスルホン化PEKKを混同しない
トルエン 18.2 4.8 公開浸漬例で高い物性保持率
キシレン 18.0 5.0 常温では一般に良好
n-ヘプタン 15.3 7.7 非極性炭化水素に良好
濃硫酸 SP評価対象外 × 反応性薬品でありスルホン化・溶解をSP差で予測できない

評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値だけで耐薬品性を決定してはならない。反応性薬品、酸化剤、混合溶剤、応力下及び高温条件は実浸漬・ESC試験を優先する。

製法

PEKKは、代表的にはジフェニルエーテルとテレフタロイルクロリド/イソフタロイルクロリドを用いるルイス酸触媒下のフリーデル・クラフツ型求電子芳香族アシル化重縮合により製造される。下図は代表経路であり、実工業プロセスでは溶媒、触媒、投入順序、温度、分子量制御、末端封止及び精製方法がメーカー固有となる。

配列のバリエーション

PEKKの代表的製造工程 原料、重縮合、精製、乾燥、ペレット化及びコンパウンド工程 ポリエーテルケトンケトンの代表的製造経路 フリーデル・クラフツ型アシル化重縮合の模式図 ジフェニルエーテル C₆H₅-O-C₆H₅ 芳香族エーテル骨格を供給 芳香族ジ酸クロリド ClCO-C₆H₄-COCl テレフタロイル(T)/イソフタロイル(I)比を調整 重縮合 反応条件 ルイス酸触媒系・反応媒体 温度・粘度・分子量制御 副生成物及び触媒錯体を管理 PEKK重合体の形成 -[Ar-O-Ar-CO-Ar-CO]-ₙ 分子量・末端基・T/I配列を管理 失活・洗浄 触媒・塩類を除去 灰分・残留物を管理 析出・固液分離 フレーク又は粉末で回収 粒径・残留溶媒を管理 乾燥 水分・揮発分低減 酸化・熱履歴抑制 溶融押出・ペレット化 脱揮、ろ過、ストランド又は水中カット MVR、色調、ゲル、金属異物を管理 供給形態:ペレット、フレーク、粉末 コンパウンド GF、CF、PTFE、グラファイト、導電材等 繊維長、分散、界面、摩耗、異方性を管理 標準材と強化材の物性を分離 成形・二次加工・品質保証 射出、押出、熱成形、AM、粉体塗装、複合材 Tg、Tm、結晶化度、機械特性、純度を確認 用途認証は個別グレード・拠点単位で確認 代表概念式:n ジフェニルエーテル + n 芳香族ジ酸クロリド → [PEKK]ₙ + 副生成物
原料
原料・材料 役割 主な管理点
ジフェニルエーテル 芳香族エーテル骨格を供給 水分、フェノール性不純物、金属、異性体を管理
テレフタロイルクロリド 直線性の高いT単位を供給 純度、酸クロリド当量、水分、加水分解物を管理
イソフタロイルクロリド 屈曲したI単位を供給 T/I比を通じて結晶化速度と融点を調整
ルイス酸触媒系 芳香族アシル化を促進 触媒残渣、錯体失活、腐食性、洗浄を管理
反応媒体・溶媒 粘度、熱移動、反応均一性を確保 残留溶媒、安全、回収、純度を管理
末端封止剤・分子量調整剤 流動性、熱安定性、末端基を制御 過剰添加による分子量低下と抽出物に注意
重合方法

代表的には、ジフェニルエーテルの芳香環へ芳香族ジ酸クロリドを段階的にアシル化し、エーテル結合と2個のケトン結合を含む高分子鎖を形成する。概念式は、n ジフェニルエーテル+n テレフタロイル/イソフタロイルクロリド → [-Ar-O-Ar-CO-Ar-CO-]n+副生成物、で表される。実反応では触媒錯体形成、失活、洗浄及び残留物除去を含む。

ペレット化・コンパウンド

精製後のPEKKはフレーク又は粉末として回収され、必要に応じて溶融押出、ろ過、脱揮及びペレット化を行う。GF、CF、PTFE、グラファイト、導電材、顔料及び加工助剤を配合する場合は、繊維長、分散、界面接着、灰分、金属汚染、摩耗、導電性及び異方性を管理する。

工程管理上の重要点
  • T/I比、分子量及び末端基を管理し、MVR、Tg、Tm及び結晶化速度を規格化する。
  • 触媒残渣、塩化物、金属、灰分、残留溶媒及びゲルを用途別に管理する。
  • ペレット、フレーク及び粉末の水分、粒径、かさ密度及び流動性を管理する。
  • 強化材含有率を質量%で明示し、非強化材の物性と混在させない。

詳細な利用用途

分野 代表用途 採用理由 選定・確認事項
航空宇宙 ダクト、ブラケット、クリップ、複合材マトリックス 軽量、高温強度、難燃・低煙・低毒性、燃料・作動油耐性 FST、アウトガス、疲労、衝撃、認証
宇宙・真空 治具、絶縁部品、3Dプリント部品 高耐熱、低アウトガス候補、電気絶縁 TML、CVCM、真空ベーク、放射線、発塵
自動車・輸送 センサー、絶縁、変速機・エンジン周辺 油、燃料、熱、摩耗、クリープ耐性 熱油、添加剤、振動、ヒートサイクル
電気・電子 コネクタ、ソケット、絶縁体、高電圧部品 絶縁破壊強さ、難燃性、高温誘電特性 CTI、部分放電、吸湿、沿面距離
半導体製造 ウェハキャリア、試験ソケット、真空部品 高純度、低発塵、耐薬品、寸法安定性 金属イオン、アウトガス、洗浄、プラズマ
化学装置 バルブ、ポンプ、ライニング、シール支持 耐熱・耐薬品、高強度、低透過性 濃酸、酸化剤、混合薬品、圧力、透過
油田・ガス バックアップリング、絶縁、ダウンホール部品 高温、サワーガス、圧力、クリープ、摩耗耐性 実媒体、急減圧、高圧ガス、NORSOK等
機械・摺動 ギア、軸受、ブッシュ、ローラー 高温摩耗、寸法安定性、金属代替 相手材、PV値、潤滑、摩耗粉、配向
医療 手術器具、滅菌治具、患者別3D造形、インプラント候補 放射線透過性、機械特性、滅菌耐性 医療グレード、ISO 10993、抽出物、承認
食品機械 ガイド、治具、バルブ、搬送部品 耐熱水、耐洗剤、低吸水、耐摩耗 食品接触適合、溶出、蒸気、摩耗粉
建築・鉄道 難燃内装、電装、熱成形パネル FST、耐熱、軽量、熱成形性 鉄道燃焼規格、煙毒性、耐候性、コスト
コーティング 耐薬品・耐摩耗粉体塗膜、金属保護 高温耐薬品性、バリア性、摩耗耐性 下地、膜厚、ピンホール、密着、焼成
用途別選定
用途 適性 理由 注意点
ギア 高温強度と耐摩耗性 摺動グレード、歯元応力、潤滑、騒音、精度を確認
軸受・ブッシュ 摺動配合と高温クリープ耐性 相手材、PV値、摩耗粉、潤滑を実試験
ローラー・摺動板 寸法安定性と耐薬品性 CF材の相手材攻撃性と粗さに注意
ねじ・ボルト・ナット 軽量、耐食、高温用途 締付トルク、座面圧、クリープ、再使用性
ポンプ・バルブ 耐薬品、高温強度、耐摩耗 実薬液、圧力、キャビテーション、シール面
シール・ガスケット 剛性支持・バックアップリングに適する 弾性シール材ではない
Oリング × 硬質熱可塑性樹脂である バックアップリング用途を検討
チューブ・配管 耐熱・耐薬品配管に利用可能 融着、曲げ、内圧、透過、継手を確認
タンク 耐薬品性は高いが大型成形とコストが課題 溶接、残留応力、透過、支持構造を評価
フィルム・シート バリア、絶縁、熱成形用途 厚さ、結晶化、巻取り応力、ピンホール
ボトル・容器 性能上可能でも成形法とコストが制約 ブローグレードと設備を確認
電気コネクタ・ソケット 高温絶縁、難燃、寸法安定性 CF材は絶縁用途に使用しない
電子部品筐体 高温・難燃・薬品用途に有効 一般筐体には過剰性能
透明カバー・レンズ × 光学透明性は限定的 低結晶半透明材でも光学用途は個別評価
エンジンルーム部品 熱、油、燃料、クリープに優れる 熱酸化、振動、締結、金属接触を評価
燃料系部品 燃料・炭化水素に高耐性 バイオ燃料、添加剤、温度、透過を確認
食品機械部品 熱水・洗剤・摩耗に強い 食品接触適合と溶出証明が必要
医療機器部品 滅菌、造形、X線透過性を活用可能 医療グレード、抽出物、規制承認が必須
半導体・真空装置 高純度、低発塵、耐熱・耐薬品 アウトガス、金属イオン、プラズマを確認
屋外部品 比較的良好な耐候性 UV、湿熱、色差、強度保持を促進試験
接着剤 × PEKK自体は一般接着剤ではない 熱接着フィルムの特殊用途は別評価
塗料・コーティング 粉体塗装・耐薬品ライニングに適する 焼成、密着、膜厚、ピンホールを管理
複合材料マトリックス 連続CF含浸、ATP、熱成形に適する 含浸、空隙、界面、結晶化、再加工を評価

上表は材料群としての一般的な適性である。実使用では、グレード、結晶化度、荷重、温度、薬品、湿度、寿命、摩耗条件、法規制、成形方法及び部品形状を確認する必要がある。

注意点・劣化及び故障モード
劣化現象 主な原因 発生しやすい条件 外観又は性能への影響 予防策 推奨確認試験
熱酸化劣化 高温、酸素、長時間滞留 成形機内滞留、長期高温 変色、脆化、分子量低下 滞留短縮、熱安定化、温度校正 熱老化後の物性保持率
結晶化度変化 成形・アニール・使用中の熱履歴 Tg超使用、厚肉、温度むら 収縮、反り、透明性・HDT変化 DSC管理、均一冷却、段階アニール DSC、密度、寸法、XRD
応力割れ 残留応力と薬品の重畳 インサート、鋭角、過大保圧 微細クラック、漏れ、破断 R付与、保圧最適化、アニール 一定ひずみESC
クリープ破壊 長期応力、高温、締結面圧 Tg付近、高荷重、薄肉 変形、緩み、座面陥没 応力低減、強化材、支持面拡大 温度別クリープ
疲労破壊 繰返し荷重、ノッチ、ウェルド ギア、振動、圧力脈動 クラック進展、突然破断 応力集中低減、ウェルド回避 S-N試験、実部品耐久
摩耗・摩耗粉 相手材、荷重、速度、粗さ 無潤滑、高温、CF材 寸法低下、発塵、相手材損傷 摺動グレード、潤滑、仕上げ 摩耗量、摩擦係数、PV
アウトガス 残留溶媒、水分、添加剤、分解物 真空、高温、3D造形品 汚染、光学・半導体不良 高純度材、乾燥、真空ベーク TML、CVCM、RGA
薬品反応 濃硫酸、強酸化剤、混酸 高濃度、高温、長時間 溶解、スルホン化、脆化 薬品分離、温度低下、代替材 浸漬、FT-IR、質量変化
繊維界面劣化 湿熱、薬品、熱膨張差 GF/CF材、高温水、サイクル 強度低下、微小剥離 界面処方・結晶化管理 湿熱後の曲げ・ILSS
滅菌劣化 蒸気、放射線、薬液滅菌 多数回サイクル 色、靱性、寸法、抽出物変化 医療グレード、上限設定 滅菌前後物性・溶出
法規制・認証

材料群全体に一律適用される事項と、特定グレードだけが取得又は適合する事項を区別する。証明書の有効日、色、添加剤、製造拠点、用途、接触条件及び最終成形品への適用範囲を確認する。

規制・認証 一般的な位置付け 確認事項
RoHS 一般に対応可能なグレードが存在 添加剤、顔料、金属不純物、証明書を個別確認
REACH・SVHC 一般に対応可能 最新候補物質、添加剤、製造拠点を確認
PFAS関連規制 PEKK基ポリマーはフッ素を含まない PTFE配合摺動材、加工助剤、サプライチェーンを別確認
TSCA・Proposition 65 個別グレード・地域で確認 樹脂名だけで適合を断定しない
EU食品接触・FDA 適合グレードが存在する場合がある 食品、温度、時間、色、移行試験の証明書が必要
日本食品衛生法・ポジティブリスト 個別グレード確認 基ポリマー、添加剤、使用条件の適合確認書が必要
USP Class VI・ISO 10993 医療グレードで確認 最終成形品、滅菌、抽出物まで評価
UL認証 一部グレードで難燃データあり ファイル番号、色、厚さ、RTI、拠点を確認
航空宇宙・鉄道FST PEKKの強みだが個別仕様 煙密度、毒性、熱放出、部品構成で認証
ASTM D8501 非強化PEKK材料の分類規格 分類、試験法、最新版を確認
医療用PEKK規格 外科用インプラント材料の仕様例が存在 対象用途、最新版、ロット、最終製品承認を確認
推奨確認試験
試験 代表的な確認条件 評価項目
実薬品浸漬 実濃度、実温度、24・168・1000h等 質量、寸法、色、表面、物性保持
応力負荷ESC 実薬品、23℃及び上限温度、一定ひずみ又は応力 クラック発生時間、破断、残留強度
熱老化 使用温度及び上限温度、500~5000h候補 引張、伸び、衝撃、色、質量、電気
高温高湿・熱水 85℃・85%RH、熱水、蒸気滅菌 吸水、寸法、絶縁、界面、強度
ヒートサイクル 低温~高温、100~1000サイクル候補 反り、クラック、締結緩み、金属界面
クリープ 実温度、実応力、1000h以上候補 ひずみ、破断、応力緩和
疲労 実応力比、周波数、温度、薬品環境 S-N曲線、起点、ウェルド影響
摩耗・摩擦 実相手材、荷重、速度、温度、潤滑 摩擦係数、比摩耗量、相手材摩耗、発塵
寸法・結晶化 成形直後、アニール後、熱履歴後 DSC、密度、XRD、収縮、反り、CTE
電気絶縁 実周波数、電圧、温湿度、汚染 絶縁破壊、誘電、CTI、部分放電
難燃・FST 実厚さ、色、部品構成 UL 94、LOI、煙、毒性、熱放出
接着・溶着 表面処理、接着剤、熱履歴、薬品後 せん断、はく離、気密、破壊形態
滅菌・溶出 実滅菌サイクル、抽出媒体、接触条件 物性、色、寸法、抽出物、細胞毒性
アウトガス 真空度、温度、時間、ベーク TML、CVCM、RGA、パーティクル
実成形・実部品耐久 量産機、実金型、実荷重、実組付け 不良、寸法、寿命、安全率、再現性

関連材料との比較

比較材料名そのものに、plastics-material.com内で確認できる個別ページ又は分類ページへの内部リンクを設定している。

比較材料 特徴 PEKKとの主な違い
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) PAEK系で実績が多く、Tm約343℃、Tg約143℃ PEKKはTgが高く結晶化速度を調整しやすい。PEEKは供給・規格・加工実績が広い
ポリエーテルケトン(PEK) ケトン比率が高く、高融点・高温剛性 PEKは加工温度がさらに高い。PEKKは共重合で加工窓を広げやすい
ポリアリールエーテルケトン(PAEK) PEEK、PEK、PEKK等を含む材料群 PEKKはPAEKの一種で、2個のケトン結合とT/I設計が特徴
ポリフェニレンサルファイド(PPS) 耐薬品、難燃、低吸水、量産性 PEKKは靱性、高温強度、疲労、耐摩耗で有利だが、PPSは低コスト
ポリエーテルイミド(PEI) 非晶性、透明性、低収縮、難燃、高Tg PEKKは耐溶剤・疲労・摺動で有利。PEIは透明性と成形収縮で有利
ポリアミドイミド(PAI) 高強度、耐摩耗、クリープ、高温性能 PAIは後硬化を要する場合が多い。PEKKは溶融成形・溶着・再加工で有利
ポリイミド(PI) 極限耐熱、絶縁、フィルム、摺動 PIはより高温で使える場合があるが、PEKKは成形自由度が高い
ポリスルホン(PSU) 透明、耐熱水、蒸気、寸法安定性 PEKKは耐有機溶剤・高温強度・耐摩耗で優れる。PSUは低温加工・低コスト
環境・リサイクル性、価格及び供給性
項目 評価 備考
熱可塑性/熱硬化性 熱可塑性 再溶融可能。ただし熱履歴、変色、分子量、結晶化を確認
マテリアルリサイクル 条件付きで可能 単一材のスプルー等は乾燥、異物、繊維長、熱履歴を管理
ケミカルリサイクル 研究・限定的 汎用的な工業回収ルートは限定的
サーマルリサイクル 可能 地域法令、排ガス、高性能材の資源価値を考慮
再生材利用 用途限定 疲労、衝撃、純度、色、アウトガス、認証用途で制限
識別表示 汎用樹脂番号は限定的 部品図、材質証明、レーザーマーク等で明確化
バイオベース 一般商用材は化石資源由来 認証又はマスバランスは個別製品情報を確認
生分解性・コンポスト なし バイオベースと生分解性を混同しない
ハロゲン 基ポリマーはF・Cl・Brを含まない PTFE配合、顔料、添加剤は別確認
価格区分 極めて高価格 量、グレード、粉末、認証、色、地域で変動
国内入手性 限定的 主要商社、加工素材、AM材料ルートが中心
供給形態 ペレット、フレーク、粉末、フィラメント、板、丸棒、シート、複合材テープ 形態で最小購入量、納期、認証、加工条件が異なる

代表的なメーカー

PEKKベースレジン、独自PEKK配合又はPEKK専用付加製造材料を展開する実在企業を記載した。製品の供給地域、名称、認証及び仕様は変更される場合があるため、最新資料を確認する必要がある。

メーカー 代表製品・ブランド 主な製品区分 概要
Arkema Kepstan 6000、7000、8000、GF30、CF30等 PEKKベースレジン、フレーク、粉末、ペレット、強化コンパウンドを供給
Oxford Performance Materials OXPEKK 工業・医療用PEKK配合、付加製造 独自PEKK配合と医療・航空宇宙向け技術を展開
Stratasys Antero 800NA、Antero 840CN03 FDM用PEKK系材料 800NAは非強化系、840CN03は静電気拡散用途向け
LEHVOSS LUVOCOM 3F PEKK 50082 NT 付加製造向けPEKKコンパウンド 半結晶造形性、層間接着、寸法安定性を狙う

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