概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | CR-39(ポリアリルジグリコールカーボネート) |
| 略記号 | CR-39、PADC、ADC樹脂 |
| IUPAC | 硬化物の一義的なIUPAC名は一般化困難である。主モノマーは 2-(2-prop-2-enoxycarbonyloxyethoxy)ethyl prop-2-enyl carbonate と表記される。 |
| 英語名 | Poly(allyl diglycol carbonate)、Poly(diethylene glycol bis(allyl carbonate))、Allyl diglycol carbonate resin |
| 日本語名 | ポリアリルジグリコールカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート硬化樹脂、アリルジグリコールカーボネート樹脂 |
| 分類 | 熱硬化性樹脂、架橋型アリルカーボネート樹脂、透明光学樹脂 |
| プラスチック分類 | 熱硬化性プラスチック。一般的なエンプラ区分より、光学用熱硬化性樹脂として扱う方が適切である。 |
| 化学式または代表構造 | 主モノマー:C12H18O7。代表表記:(CH2=CHCH2OCOOCH2CH2)2O。硬化物はアリル基のラジカル重合による三次元架橋構造である。 |
| CAS No. | 主モノマー:142-22-3。硬化ポリマー:25656-90-0が参照される場合がある。モノマー、混合物、硬化物を区別して確認する。 |
| 構造・主成分 | ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(ADC)を主成分とし、過酸化物開始剤により架橋重合した透明ネットワーク樹脂である。 |
| 主な用途 | 眼鏡レンズ、サングラス、保護眼鏡、光学フィルター、透明注型品、固体飛跡検出器、放射線・中性子線量計用検出素子 |
| 商標上の注意 | CR-39はPPG Industriesの商標である。材料一般名としてはPADC又はADC硬化樹脂と表記する場合がある。 |
CR-39は、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを注型重合して得られる透明な熱硬化性光学樹脂である。屈折率は一般に約1.498、アッベ数は約58であり、色収差が小さく、無コート状態の光学用プラスチックとして比較的良好な耐擦傷性を示す。
架橋硬化物であるため再溶融できず、一般的な射出成形や押出成形には適さない。主加工法はガラス型を用いる注型重合であり、硬化後に研削、研磨、染色、ハードコート及び反射防止膜などの二次加工を行う。
物性はモノマー純度、開始剤、硬化温度履歴、架橋密度、残留モノマー、添加剤及び表面処理によって変動する。実使用ではグレード、温度、薬品濃度、荷重、残留応力、接触時間、湿度、レンズ形状及びコーティング仕様を確認する必要がある。
特徴
長所
- 高い透明性と高アッベ数を持ち、色収差が小さい。
- ポリカーボネートより無コート耐擦傷性が良好である。
- 染色性が良く、サングラスや調光レンズへ展開しやすい。
- ガラスより軽量である。
- 放射線飛跡をアルカリエッチングで可視化できる。
短所
- 再溶融成形及びマテリアルリサイクルが困難である。
- ポリカーボネートより耐衝撃性が低い。
- 高屈折率レンズ材料より屈折率が低く、強度数レンズでは厚くなりやすい。
- 強アルカリ、ケトン、塩素系溶剤及び応力下の薬品接触に注意が必要である。
- 硬化時間が長く、気泡、異物、型離れ及び残留応力を管理する必要がある。
外観
通常は無色透明である。染料、紫外線吸収剤、調光色素、偏光素子又は各種コーティングにより外観及び分光特性が変化する。
耐熱性
明確な融点を持たない架橋熱硬化性樹脂である。連続使用温度は一般に約80~100℃を目安とするが、光学精度、荷重及びコーティングを考慮すると、より低い温度で設計する場合が多い。
耐薬品性
水、希薄酸、低級アルコール及び脂肪族炭化水素には概ね安定な場合が多い。強アルカリはカーボネート結合及び表面を侵食し、ケトン、芳香族溶剤、塩素系溶剤及び一部エステルは膨潤、曇り又はクラックを生じる可能性がある。
加工性
液状モノマーの注型重合には適するが、一般的な熱可塑性樹脂用の射出、押出及びブロー成形には適さない。硬化後は切削、研削、研磨、染色、コーティング及び接着が可能である。
分類上の注意
カーボネート結合を含むが、一般にポリカーボネートと呼ばれるビスフェノールA系熱可塑性ポリカーボネート(PC)とは、原料、構造、重合方法、加工法及び物性が大きく異なる。
構造式

構造の基本は、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート架橋構造である。 既存サイト内の構造部分と同じ考え方で、主鎖、側鎖、官能基、共重合成分、架橋構造、充填材の有無が、耐熱性、耐薬品性、機械特性、吸水性、透明性、電気特性に影響する。
主モノマーは分子両末端にアリル基を持つ二官能性モノマーである。開始剤から生成したラジカルがアリル基へ付加し、分子間結合を形成して三次元架橋網目となる。硬化物は未反応末端、環化、分岐及び架橋点を含むため、図は代表的な模式表現である。
代表的な構造単位
| 構成要素 | 代表構造 | 役割 |
|---|---|---|
| アリル基 | CH2=CH−CH2− | ラジカル重合及び架橋反応部位となる。 |
| カーボネート結合 | −O−C(=O)−O− | 極性及び強アルカリによる加水分解挙動に関与する。 |
| ジエチレングリコール鎖 | −CH2CH2−O−CH2CH2− | 適度な柔軟性を付与する。 |
| 架橋点 | アリル基由来のC−C結合 | 不溶不融性、硬度及び寸法安定性を付与する。 |
共重合体及び変性グレード
屈折率、耐衝撃性、染色性、硬化速度又は耐熱性を調整するため、他のアリル系モノマー、多官能モノマー、紫外線吸収剤、調光色素、離型剤及び安定剤を配合する場合がある。改質組成はメーカー及び製品ごとに異なり、標準CR-39の物性と混同しない。
種類
| 種類 | 主成分・特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準光学グレード | ADC主体の無色透明硬化物 | 高アッベ数、透明性、染色性 | PCより耐衝撃性が低い | 眼鏡レンズ、サングラス |
| 耐衝撃改良 | 共重合又は架橋密度調整 | 欠け、割れを改善 | 硬度やTgとのトレードオフ | 保護眼鏡、縁なしレンズ |
| 調光・着色 | 調光色素、染料、UV吸収剤 | 光線制御と意匠性 | 退色、色むら、耐候性管理 | 調光レンズ、サングラス |
| 放射線検出 | 高純度PADCシート | 飛跡を化学エッチングで可視化 | 光学用とは評価項目が異なる | ラドン、中性子、重イオン検出 |
| ハードコート・AR対応 | 表面へ機能膜を形成 | 耐擦傷、低反射、防汚 | 膜密着と熱膨張差に注意 | 高機能眼鏡レンズ |
| GF・CF強化 | 一般光学用途では通常使用しない | 剛性向上の余地 | 透明性を失う | 一般化困難 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 注型重合 | ◎ | 液状モノマーを型内硬化できる。 | 脱泡、ろ過、温度勾配、収縮及び残留応力を管理する。 |
| 射出成形 | × | 硬化後は再溶融しない。 | 熱可塑性射出成形機では加工できない。 |
| 押出・ブロー・フィルム成形 | × | 溶融流動しない。 | 透明熱可塑性樹脂を検討する。 |
| 圧縮成形 | △ | 特殊反応成形は可能性がある。 | 標準レンズ製造法ではない。 |
| 真空成形 | × | 硬化後シートを熱可塑的に成形できない。 | 過熱による変形と白化に注意する。 |
| 3Dプリント | × | 標準CR-39は一般光造形用樹脂ではない。 | 類似光学樹脂と同一視しない。 |
| 切削・研削・研磨 | ◎ | 硬化後のレンズ加工が可能である。 | 欠け、クラック、発熱及び表面傷を抑える。 |
| 接着 | ○ | 光学接着剤又はエポキシで接合できる。 | 屈折率、黄変、収縮及び応力を確認する。 |
| 塗装・コーティング・蒸着 | ◎ | ハードコート、AR、防曇、防汚膜を形成できる。 | 前処理、膜応力、基材加熱及び密着を管理する。 |
| 染色・印刷 | ◎ | 後染色性が良好である。 | 温度、時間、退色及びコーティング順序を管理する。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | 一般的な目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | ペレット乾燥は該当なし | 液状モノマーの水分、異物及び気泡を管理する。 |
| モノマーろ過 | µm | 0.2~5 | 要求清浄度に応じて精密ろ過する。 |
| 脱泡 | - | 真空又は静置脱泡 | 開始剤の安全性と揮発性を考慮する。 |
| 硬化開始温度 | ℃ | 40~60 | 代表的な低温開始域の目安である。 |
| 最高硬化温度 | ℃ | 90~100 | 厚さ、開始剤及び型構成で調整する。 |
| 硬化時間 | h | 10~24 | 特定グレードの保証条件ではない。 |
| 成形収縮率 | % | 8~14 | 体積収縮と線収縮を区別する。 |
| アニール | ℃ | 80~100 | 必要に応じ残留応力を緩和する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験条件・状態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.31 | 1.30~1.32 | 23℃、標準硬化物、信頼度B | 配合及び硬化度で変動する。 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.15 | 0.10~0.25 | 23℃水中、信頼度C | 厚さ及び表面処理で変動する。 |
| 屈折率 nd | 無次元 | 1.498 | 1.497~1.500 | 589 nm、20~25℃、信頼度A | 温度及び波長依存性がある。 |
| アッベ数 | 無次元 | 58 | 57~59 | 光学グレード、信頼度A | 色収差が比較的小さい。 |
| 可視光線透過率 | % | 92 | 90~93 | 無色薄肉、信頼度B | 厚さ及びコートで変化する。 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 55 | 45~70 | 23℃、規格不明、信頼度C | 降伏と破断の区分が不明確な資料がある。 |
| 引張弾性率 | GPa | 2.3 | 2.0~2.6 | 23℃、信頼度C | 硬化度で変動する。 |
| 引張破断伸び | % | 5 | 3~10 | 23℃、信頼度C | 脆性的破壊を示す場合がある。 |
| 曲げ強さ | MPa | 95 | 80~115 | 23℃、信頼度C | 表面傷の影響が大きい。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.4 | 2.1~2.7 | 23℃、信頼度C | 引張弾性率と混同しない。 |
| 圧縮強さ | MPa | 120 | 100~140 | 23℃、信頼度C | 試験片形状に依存する。 |
| アイゾット衝撃・ノッチ付き | kJ/m² | 2.0 | 1.5~3.0 | ISO相当、条件不明、信頼度D | ASTMのJ/m値と単純比較しない。 |
| ロックウェル硬度 | M | 90 | 85~100 | 無コート、信頼度C | コーティング有無を区別する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 90 | 80~110 | DSC/DMA、信頼度B | 硬化条件と測定法で幅がある。 |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 架橋熱硬化性 | 溶融せず最終的に熱分解する。 |
| HDT・0.45 MPa | ℃ | 95 | 85~105 | 規格不明、信頼度C | 光学精度維持温度とは一致しない。 |
| HDT・1.80 MPa | ℃ | データなし | データなし | - | 実グレードで確認する。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 90 | 80~100 | 低荷重の目安、信頼度C | 光学精度とコートを考慮する。 |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 130 | 120~130 | 約1 h以下、信頼度C | 保証値ではない。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.20 | 0.18~0.22 | 23℃、信頼度C | 配合に依存する。 |
| 線膨張係数 | 10−5/K | 7.0 | 6.0~8.0 | Tg未満、信頼度C | 膜との熱膨張差に注意する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1015 | 1014~1016 | 乾燥、信頼度C | 湿度及び添加剤で低下する。 |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 4.0 | 3.7~4.3 | 1 kHz、乾燥、信頼度C | 周波数と吸湿に依存する。 |
| UL 94 | 等級 | グレード依存 | データなし | 厚さ未確認 | 材料名だけで等級を断定しない。 |
数値は標準的な非強化・無充填硬化物の代表値又は代表範囲であり、特定メーカーの保証値ではない。信頼度Dの値は確定的な比較値として使用しない。
耐薬品性
| 薬品 | 濃度 | 温度 | 接触 | 評価 | 主な劣化・備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 純水 | 23℃ | 長時間 | ◎ | わずかな吸水。精密光学用途では寸法と屈折率を確認する。 |
| 温水 | - | 60~80℃ | 長時間 | ○ | 吸水、応力緩和、コート劣化に注意する。 |
| 熱水・蒸気 | - | 100℃以上 | 長時間 | △ | 白化、寸法変化、膜剥離の可能性。 |
| 塩酸 | 10% | 23℃ | 24 h | ○ | 高濃度、高温及び応力下は個別試験する。 |
| 硫酸 | 10% | 23℃ | 24 h | ○ | 濃硫酸と高温では評価を下げる。 |
| 硝酸 | 10% | 23℃ | 短時間 | △ | 酸化、黄変、表面侵食に注意する。 |
| NaOH | 1% | 23℃ | 短時間 | △ | 表面加水分解。濃度と温度上昇で侵食が速くなる。 |
| NaOH/KOH | 20~30% | 60~80℃ | 浸漬 | × | 強いエッチングと質量減少。飛跡検出器の処理に利用される。 |
| エタノール | 70~100% | 23℃ | 拭取り | ○ | 繰返し、応力及びコート付き品を確認する。 |
| IPA | 70~100% | 23℃ | 拭取り | ○ | 長時間では膨潤又は膜損傷の可能性。 |
| グリセリン | 100% | 23℃ | 24 h | ◎ | 一般に影響は小さい。 |
| MMB | 100% | 23℃ | 短時間 | △ | グリコールエーテル系は実浸漬試験を推奨する。 |
| アセトン・MEK | 100% | 23℃ | 短時間 | × | 膨潤、白化、表面損傷又はクラック。 |
| 酢酸エチル・酢酸ブチル | 100% | 23℃ | 短時間 | △ | 膨潤、表面曇り。長時間又は応力下は避ける。 |
| トルエン・キシレン | 100% | 23℃ | 短時間 | △ | 膨潤、クラック又は膜損傷に注意する。 |
| ヘキサン・ヘプタン | 100% | 23℃ | 24 h | ○ | 軽微な膨潤又は添加剤抽出を確認する。 |
| ジクロロメタン・トリクロロエチレン | 100% | 23℃ | 短時間 | × | 強膨潤、白化、クラック。洗浄に使用しない。 |
| 鉱油・潤滑油 | 100% | 23℃ | 長時間 | ○ | 添加剤組成を含め評価する。 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃ | 短時間 | △ | 芳香族分及びエタノール含有量で変動する。 |
| 塩水・海水 | 3.5% NaCl | 23℃ | 長時間 | ◎ | 枠、接着部及び膜端部も確認する。 |
| 次亜塩素酸Na | 0.05~0.1% | 23℃ | 短時間 | △ | 酸化、黄変及びコート劣化に注意する。 |
| 中性洗剤 | 使用濃度 | 23~40℃ | 洗浄 | ◎ | 研磨粒子、強アルカリ及び溶剤を含まない製品を選ぶ。 |
SP値(溶解度パラメータ)
CR-39硬化物のSP値は公開値及び算定法が限定的であり、代表的な目安として約20~23 MPa1/2程度と推定される場合がある。この値は信頼度Dの参考範囲であり、比較機能で確定値として扱わない。架橋樹脂では完全溶解せず、膨潤として現れる。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | 差の目安 | 評価 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 5~8 | ○ | 長期抽出を確認する。 |
| トルエン | 18.2 | 2~5 | △ | 芳香族溶剤として実試験する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 2~5 | △ | 膨潤と曇りに注意する。 |
| アセトン | 19.9 | 0~3 | × | 強い膨潤又は表面損傷の可能性。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 0~3 | × | 強膨潤とクラックに注意する。 |
| IPA | 23.5 | 1~4 | ○ | SP差だけでは耐性を過小評価する場合がある。 |
| エタノール | 26.0 | 3~6 | ○ | 長期とコート付き品を確認する。 |
| 水 | 47.9 | 25以上 | ◎ | 熱水、蒸気、強アルカリ水溶液は別評価である。 |
SP値だけで耐薬品性を判断できない。加水分解、酸化、応力、残留モノマー、添加剤抽出及びコーティング損傷を含めて評価する。
注意点・推奨試験
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生条件 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|
| 黄変・熱酸化 | 熱、酸素、開始剤残渣 | 高温長時間、UV | 温度制限、安定化、後硬化管理 | 熱老化、透過率、黄色度、曲げ強度 |
| アルカリ侵食 | カーボネート結合へのOH−攻撃 | 高濃度、高温、長時間 | 強アルカリ回避、短時間洗浄 | 実液浸漬、重量、粗さ、ヘーズ |
| 溶剤膨潤 | 相溶性の高い溶剤吸収 | ケトン、塩素系、芳香族 | 溶剤選定、応力除去 | 重量、寸法、透過率、応力下浸漬 |
| 応力クラック | ノッチ、残留応力、溶剤 | 穴端、締付け、温度サイクル | R付与、アニール、締付け制限 | 実部品定荷重・薬品複合試験 |
| コート剥離 | 界面汚染、熱膨張差、吸湿 | 湿熱、洗浄、超音波 | 前処理、プライマー、膜応力管理 | クロスカット、煮沸、85℃85%RH、温度サイクル |
| アウトガス | 残留モノマー、低分子 | 真空、高温 | 十分な後硬化、真空ベーク | TML、CVCM又は用途相当試験 |
法規制・認証
| 項目 | 一般的状況 | 注意 |
|---|---|---|
| RoHS | 適合設計が可能 | 着色剤、コート、金属膜を含む個別製品の証明書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 個別確認 | モノマー、開始剤、添加剤及び最新候補リストを確認する。 |
| 食品接触 | 材料群として一律適合ではない | FDA、日本食品衛生法及びポジティブリストは特定グレードと使用条件で確認する。 |
| ISO 10993・USP Class VI | 特定グレードで評価可能 | 完成部品、抽出物、滅菌法及び接触部位で確認する。 |
| UL 94 | グレード依存 | 厚さ、色、添加剤及び製造拠点を確認する。 |
| PFAS関連 | PADC基材自体は通常フッ素系ではない | 防汚コート、離型剤及び界面活性剤を含めて確認する。 |
環境・リサイクル性
CR-39は熱硬化性であり、再溶融によるマテリアルリサイクルは困難である。粉砕充填材、加溶媒分解又は熱分解の研究余地はあるが、光学材料への閉ループ再生は一般に難しい。生分解性材料ではなく、バイオベース性も個別組成を確認する。
価格・供給性
相対価格は中価格程度である。完成レンズの流通性は高いが、光学モノマーの少量購入は工業用途、危険物管理及び契約条件に左右される。供給形態は液状モノマー、完成レンズ、硬化シート又は検出器チップであり、一般的なペレットや押出板材とは異なる。
比較用評価スコア
| 項目 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 硬質樹脂として標準的である。 |
| 剛性 | 3 | 弾性率約2~3 GPaである。 |
| 衝撃強度 | 2 | PCより低い。 |
| 耐熱性 | 3 | 連続約80~100℃が目安である。 |
| 耐薬品性 | 3 | 水、希酸、アルコールには比較的良好だが、強アルカリと一部溶剤に弱い。 |
| 寸法安定性 | 4 | 架橋物であるが、硬化収縮と残留応力管理が必要である。 |
| 透明性 | 5 | 高透明、高アッベ数である。 |
| 成形加工性 | 2 | 注型には適するが、射出及び押出には不適である。 |
| 切削加工性 | 4 | 研削、研磨、穴あけが可能である。 |
| リサイクル性 | 1 | 再溶融できない。 |
| 価格優位性 | 3 | 成熟した標準レンズ材であるが、長時間硬化工程を要する。 |
製法
製法
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを過酸化物開始剤で重合・架橋する。基本反応:アリルカーボネートモノマー → 架橋CR-39。 実用材料では、重合後に安定剤、可塑剤、架橋剤、充填材、ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、顔料などを配合して、用途別の物性に調整する。
| 工程 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本反応 | ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを過酸化物開始剤で重合・架橋する。基本反応:アリルカーボネートモノマー → 架橋CR-39 | 代表的な合成・製造経路である |
| 改質・共重合 | 柔軟性、耐熱性、耐薬品性、透明性を調整する | 用途別グレード |
| コンパウンド | 充填材、安定剤、難燃剤、着色剤を配合する | 成形材料 |
| 成形・硬化 | 熱可塑成形、加硫、架橋、注型、含浸、硬化を行う | 最終製品 |
原料
主原料はジエチレングリコールビスアリルカーボネート(ADC)である。光学用途では色度、水分、酸価、金属イオン、異物及び揮発分を管理する。開始剤には過酸化ジカーボネート系などの有機過酸化物が用いられる。
重合方法
液状ADCへ開始剤を溶解し、ろ過及び脱泡後、ガラス型間へ注入して段階的に加熱する。開始剤の熱分解でラジカルが発生し、分子両末端のアリル基へ付加して架橋重合が進行する。硬化発熱、収縮及びゲル化を均一にするため、低温から高温へ緩やかに昇温する。
代表的な反応式
n CH2=CH−CH2−O−CO−O−CH2CH2−O−CH2CH2−O−CO−O−CH2−CH=CH2 → 過酸化物開始剤・加熱 → 三次元架橋PADC
ペレット化・コンパウンド
標準CR-39は液状モノマーから型内硬化するため、一般的なペレット化工程はない。GF又はCFは透明性を失わせるため、眼鏡レンズ用標準材には通常使用しない。
詳細な利用用途
| 分野 | 具体的用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 眼鏡・光学 | 眼鏡レンズ、サングラス、調光レンズ | 透明性、高アッベ数、染色性 | 度数、厚さ、耐衝撃規格及びコートを確認する。 |
| 保護具 | 保護眼鏡、フィルター | 透明性、軽量、一定の耐薬品性 | 高速衝撃用途ではPCと比較する。 |
| 放射線計測 | ラドン、中性子、荷電粒子検出 | 飛跡をアルカリエッチングで可視化できる。 | 純度、厚さ、エッチング条件及び校正を管理する。 |
| 透明注型品 | 光学窓、フィルター、試験片 | 精密面転写と透明性 | 厚肉硬化の発熱、収縮及び気泡に注意する。 |
| 医療・研究 | 光学部品、線量測定素子 | 透明性及び検出特性 | 生体適合性、滅菌及び抽出物を個別確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・摺動部品 | × | 摺動材料ではない。 | POM、PA、PEEK、PTFE系を検討する。 |
| ポンプ・バルブ観察窓 | △ | 透明窓として可能性がある。 | 圧力、薬品、温度及び衝撃を実機評価する。 |
| シール・Oリング | × | 硬質架橋樹脂である。 | エラストマーを選ぶ。 |
| フィルム・シート | △ | 検出器用硬化シートは存在する。 | 一般的な押出フィルムではない。 |
| 透明カバー | ○ | 透明性と表面硬度に優れる。 | 大型化と衝撃ではPMMA、PCが有利な場合がある。 |
| レンズ | ◎ | 代表用途である。 | 度数、衝撃規格及びコーティングを確認する。 |
| 食品機械部品 | △ | 観察部材として可能性がある。 | 食品接触証明、熱水及び洗浄剤を確認する。 |
| 医療機器部品 | △ | 光学又は線量計用途に可能性がある。 | ISO 10993、滅菌及び抽出物を確認する。 |
| 接着剤・塗料・コーティング | △ | 特殊アリル系反応性樹脂としての可能性がある。 | 標準レンズ材とは配合と硬化条件が異なる。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | CR-39との違い |
|---|---|---|
| ジエチレングリコールビスアリルカーボネート | CR-39硬化物の主モノマーである。 | ADCは液状モノマー、CR-39又はPADCは架橋硬化物又は商標製品を指す場合が多い。 |
| ジアリルカーボネート樹脂 | 近縁のアリルカーボネート系熱硬化性樹脂である。 | モノマー骨格及び材料定義を確認して区別する。 |
| ポリカーボネート | 高耐衝撃、透明、射出成形可能な熱可塑性樹脂である。 | PCは耐衝撃性と量産性、CR-39はアッベ数、染色性及び表面硬度で有利な場合がある。 |
| アクリル樹脂 | 高透明、耐候、押出・射出可能な熱可塑性樹脂である。 | PMMAは大型板と量産加工、CR-39は眼鏡レンズの注型光学性能に強みがある。 |
| チオウレタン系樹脂 | 高屈折率と靱性を持つ光学熱硬化性樹脂である。 | チオウレタンは薄型化、CR-39は高アッベ数、低密度及び標準レンズ用途に有利である。 |
| エピスルフィド系樹脂 | 非常に高い屈折率を得やすい。 | エピスルフィドは薄型化に優れ、CR-39は標準屈折率用途向けである。 |
| 不飽和ポリエステル樹脂 | FRP及び大型注型品に広く使われる。 | UPは構造用途、CR-39は光学純度とレンズ用途へ特化する。 |
| エポキシ樹脂 | 接着、封止、複合材料及び透明注型に使われる。 | エポキシは接着性と配合自由度、CR-39は眼鏡レンズとしての光学均一性と染色性に強みがある。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| PPG Industries, Inc. | PPG CR-39 monomer | CR-39商標のアリルジグリコールカーボネート光学モノマーを展開する。 |
| ACOMON AG | RAV 7 | ADC系光学モノマーの代表例として知られる。最新仕様と供給状況はメーカーへ確認する。 |
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実液濃度、実温度及び予定接触時間で重量、寸法、透過率、ヘーズ、色差及び表面粗さを測定する。
- 応力負荷下試験:穴あけ又は切削した実部品へ設計ひずみを付与し、洗浄剤、ケトン、芳香族溶剤及び強アルカリとの複合影響を確認する。
- 高温高湿、熱老化、UV促進耐候及び温度サイクル後に黄変、膜剥離、クラック及び屈折力変化を確認する。
- 完成レンズでは落球、落錘、繰返し曲げ、コーティング密着及び洗浄耐久試験を行う。
- 真空又は医療用途ではアウトガス、抽出物、溶出物、滅菌耐久及び生体適合性を確認する。
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