概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | シリコーンオイル |
| 略記号 | PDMS、Si Oil、Silicone Oil |
| IUPAC | Poly(dimethylsiloxane) が代表例である |
| 英語名 | Silicone Oil、Silicone Fluid、Polydimethylsiloxane |
| 日本語名 | シリコーンオイル、シリコーン油、ジメチルシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサン |
| 分類 | シリコーン系流体、有機ケイ素化合物、潤滑剤、離型剤、撥水剤、添加剤 |
| プラスチック分類 | 通常は成形用プラスチックではなく、シリコーン系高分子流体または樹脂添加剤として扱う |
| 化学式または代表構造 | HO−[Si(CH3)2−O]n−H、または CH3−[Si(CH3)2−O]n−Si(CH3)3 |
| CAS No. | 63148-62-9(ポリジメチルシロキサンの代表例) |
| 構造・主成分 | Si−O−Si結合を主鎖とし、側鎖にメチル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基などを持つシロキサン系ポリマーである |
| 主な用途 | 潤滑油、離型剤、消泡剤、撥水剤、化粧品原料、電気絶縁油、熱媒油、制振油、樹脂改質剤、表面処理剤 |
シリコーンオイルは、シロキサン結合(Si−O−Si)を主骨格とする液状のシリコーン系高分子である。代表的なものはポリジメチルシロキサン(PDMS)であり、一般に無色透明の液体として扱われる。粘度範囲が非常に広く、低粘度品は拡散性や濡れ性に優れ、高粘度品は制振性、潤滑性、被膜形成性を持つ。
一般的な鉱物油や炭化水素系油と比較して、温度による粘度変化が小さく、耐熱性、耐寒性、酸化安定性、撥水性、電気絶縁性に優れる傾向がある。一方で、機械的な油膜強度、金属間高荷重潤滑性、塗装・接着工程への悪影響、シリコーン移行によるはじきには注意が必要である。
シリコーンオイルは、シリコーン樹脂や液状シリコーンと同じシロキサン系材料であるが、架橋してゴム状または硬質樹脂になる材料とは用途と分類が異なる。材料選定では、粘度、変性基、揮発分、食品接触規格、電気特性、アウトガス、接触材料への影響を確認する必要がある。
特徴
長所
- 温度による粘度変化が比較的小さく、広い温度範囲で流動性を保持しやすい。
- 耐熱性、耐寒性、酸化安定性、耐候性に優れる。
- 撥水性、離型性、滑り性、表面改質性が高い。
- 電気絶縁性が高く、電気・電子用途の絶縁油や封止補助材に使われる。
- 粘度グレード、変性グレード、食品接触対応グレードなどの選択肢が多い。
- 消泡性に優れ、水系、溶剤系、油系の泡制御に使われる。
短所
- 高荷重の金属摺動では、鉱物油や合成潤滑油ほど油膜強度を得にくい場合がある。
- 塗装、印刷、接着、めっき工程では、微量付着によりはじきや密着不良を起こす場合がある。
- 一部の溶剤、燃料、芳香族炭化水素、塩素系溶剤では膨潤または溶解しやすい。
- 低分子シロキサンを含むグレードでは、アウトガスや接点障害に注意が必要である。
- 強酸、強アルカリ、高温水蒸気、酸化性薬品では分解や粘度変化を生じる場合がある。
外観
標準的なジメチルシリコーンオイルは、無色透明からわずかに淡黄色の液体である。粘度が高いものは水あめ状からペースト状に近い外観となる。変性シリコーンオイルでは、変性基や添加剤により透明性、色調、臭気、相溶性が変化する。
耐熱性
一般的なジメチルシリコーンオイルは、空気中でおよそ150〜200℃程度までの連続使用に用いられることが多い。フェニル変性品や耐熱グレードでは、より高温域で使用される場合がある。ただし、薄膜状態、空気接触、金属触媒、酸・アルカリ、使用時間により酸化、揮発、ゲル化、粘度上昇が変化するため、実使用条件で確認する必要がある。
耐薬品性
水、希酸、希アルカリ、低級アルコールには比較的安定である。一方、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、低分子シリコーンと相溶しやすい溶剤では膨潤・溶解・抽出が起こる場合がある。耐薬品性は、粘度、変性基、温度、薬品濃度、接触時間、攪拌条件、被接触材の有無により大きく異なる。
加工性
シリコーンオイルは、通常の射出成形用樹脂のように単独で成形する材料ではない。塗布、含浸、混合、乳化、スプレー、ディッピング、ロールコート、グリース化、コンパウンド添加などで使用する。プラスチック成形では、離型剤、滑剤、表面改質剤、消泡剤、樹脂添加剤として使われることが多い。
分類上の注意
シリコーンオイルは「プラスチック素材辞典」に掲載する場合でも、成形体を構成する樹脂材料というより、シリコーン系流体、樹脂添加剤、機能性油剤として分類するのが適切である。架橋してゴム状となる液状シリコーン、硬化物を形成するシリコーン樹脂、固体ゴムであるシリコーンゴムとは区別する必要がある。
構造式
代表的なジメチルシリコーンオイルの構造は、以下のように表される。
CH3−[Si(CH3)2−O]n−Si(CH3)3
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −Si(CH3)2−O− |
| 主骨格 | シロキサン結合、Si−O−Si |
| 側鎖 | メチル基が代表的であり、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基などで変性される場合がある |
| モノマーまたは構成単位 | ジメチルジクロロシラン、ジメチルシロキサン環状体、低分子シロキサンなどを原料とする |
| 共重合体・変性グレード | フェニル変性、メチルハイドロジェン変性、アミノ変性、エポキシ変性、カルビノール変性、ポリエーテル変性、アルキル変性、フッ素変性などがある |
構造式を画像化する場合は、白黒で「−Si(CH3)2−O−」の繰り返し構造を示すと分かりやすい。WordPress本文では、画像タグを使用せず、上記のようにHTML文字列で表記する。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ジメチルシリコーンオイル | ポリジメチルシロキサンを主成分とする標準品 | 耐熱性、耐寒性、撥水性、電気絶縁性、離型性のバランスが良い | 塗装・接着はじき、芳香族溶剤や塩素系溶剤への膨潤に注意する | 潤滑、離型、消泡、撥水、電気絶縁、化粧品 |
| フェニルメチルシリコーンオイル | メチル基の一部をフェニル基に置換したグレード | 耐熱性、耐放射線性、低温特性、屈折率に特徴がある | 標準PDMSより高価であり、相溶性や耐溶剤性はグレード依存である | 高温潤滑、光学用途、熱媒、低温用途 |
| メチルハイドロジェンシリコーンオイル | Si−H基を持つ反応性シリコーンオイル | 撥水処理、架橋反応、表面改質に使いやすい | 反応性があり、触媒や水分、アルカリ条件で水素発生に注意する | 撥水剤、繊維処理、紙処理、架橋剤 |
| アミノ変性シリコーンオイル | アミノ基を導入した変性シリコーン | 繊維、樹脂、無機表面への密着性や柔軟性付与に優れる | 黄変、臭気、酸性条件での変化に注意する | 繊維柔軟剤、表面改質、艶出し、コーティング |
| エポキシ変性シリコーンオイル | エポキシ基を導入した反応性グレード | 反応性、接着性、樹脂改質性を付与しやすい | 硬化剤や樹脂との反応条件を確認する必要がある | 樹脂改質、塗料、接着改質、表面処理 |
| ポリエーテル変性シリコーンオイル | ポリエーテル鎖を導入して親水性や乳化性を調整したもの | 水系への分散性、レベリング性、消泡・抑泡性を調整しやすい | 耐水性、耐熱性、加水分解性は構造により変化する | 塗料添加剤、消泡剤、湿潤剤、化粧品、界面制御 |
| フッ素変性シリコーンオイル | フルオロアルキル基などを導入した特殊グレード | 低表面張力、撥油性、耐溶剤性の向上が期待できる | 高価であり、法規制や用途制限を確認する必要がある | 撥油処理、特殊離型、表面改質、精密部品 |
成形加工
シリコーンオイルは、単独で射出成形や押出成形により固体部品を作る材料ではない。下表では、成形材料としての適性ではなく、使用・加工・塗布・配合のしやすさを含めた目安を示す。
| 加工方法 | 適性 | 主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | × | 単独で熱可塑性樹脂のように射出成形する材料ではない | 樹脂に添加する場合はブリード、金型汚染、塗装はじきに注意する |
| 押出成形 | × | 単独で押出成形体を作る用途には通常適さない | 樹脂改質剤として使用する場合は相溶性を確認する |
| ブロー成形 | × | 単独のブロー成形材料ではない | 容器材料への移行、内容物汚染、表面欠陥に注意する |
| 圧縮成形 | △ | ゴムや樹脂の離型剤、内部潤滑剤として使用される | 過剰添加では強度低下や接着不良を生じる場合がある |
| 真空成形 | △ | シート成形の離型、滑り性付与に使われる場合がある | 印刷、ラミネート、接着の前処理に影響する |
| 切削加工 | × | 液体のため切削加工材ではない | 加工油や潤滑油として用いる場合は洗浄性を確認する |
| 塗布・含浸 | ◎ | スプレー、ディッピング、ロールコート、刷毛塗りに対応しやすい | 塗布量、乾燥条件、移行性、二次加工性を確認する |
| 乳化・分散 | ○ | 乳化剤や変性グレードにより水系エマルション化できる | 粒径、pH、電解質、凍結融解安定性に注意する |
| グリース化 | ◎ | シリカ、金属石けん、PTFEなどと組み合わせてシリコーングリースにできる | 高荷重摺動、接点用途、食品機械用途では専用品を選定する |
代表的な物性値又は機械的性質
シリコーンオイルは液状材料であり、一般的な成形用プラスチックのような引張強さ、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強さは通常規定しない。下表では、ジメチルシリコーンオイルを中心に、代表値または目安を示す。実使用では、粘度グレード、揮発分、変性基、添加剤、温度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
| 項目 | 単位 | 低粘度PDMS | 標準PDMS | 高粘度PDMS | フェニル変性品 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 動粘度 | mm2/s、25℃ | 0.65〜20 | 50〜1,000 | 5,000〜100,000以上 | 10〜10,000程度 | 粘度グレードにより大きく異なる |
| 密度 | g/cm3 | 0.76〜0.95 | 0.96〜0.98 | 0.97〜0.98 | 1.00〜1.10 | フェニル含有量で高くなる傾向がある |
| 引張強さ | MPa | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 液体であるため、成形体物性としては扱わない |
| 伸び | % | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 硬化物ではなく液体である |
| 曲げ弾性率 | GPa | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 樹脂板材のような曲げ試験は通常行わない |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 液体材料のため対象外である |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 固体成形材料ではない |
| 流動点 | ℃ | -70〜-50 | -60〜-45 | -55〜-40 | -70〜-40 | 低温流動性の目安である |
| ガラス転移温度 | ℃ | -125前後 | -125前後 | -125前後 | -120〜-80程度 | PDMSの代表値であり、測定条件で変動する |
| 連続使用温度 | ℃ | -50〜150 | -50〜180 | -50〜200 | -50〜200以上 | 空気中、密閉系、薄膜状態で変化する |
| 引火点 | ℃ | 100〜250 | 250〜320以上 | 300以上 | 250〜320以上 | 低粘度品ほど低くなる傾向がある |
| 吸水率 | % | 極めて低い | 極めて低い | 極めて低い | 極めて低い | 疎水性であり水をほとんど吸収しない |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014〜1015 | 1014〜1016 | 1014〜1016 | 1013〜1015 | 電気絶縁油として利用される |
| 比誘電率 | なし | 2.6〜2.8 | 2.6〜2.8 | 2.6〜2.8 | 2.8〜3.2 | 周波数、温度、水分で変化する |
| 表面張力 | mN/m | 18〜21 | 20〜21 | 20〜21 | 21〜25 | 低表面張力により濡れ広がりやすい |
| 難燃性 | UL94 | 通常対象外 | 通常対象外 | 通常対象外 | 通常対象外 | 液体油剤であり、固体樹脂のUL94とは別に評価する |
代表グレード
| グレード分類 | 特徴 | 主な選定ポイント |
|---|---|---|
| 汎用 | 標準的なジメチルシリコーンオイル | 粘度、揮発分、電気特性、食品接触可否を確認する |
| 耐熱 | 高粘度品、フェニル変性品、安定化グレードなど | 連続温度、酸化雰囲気、密閉条件、分解生成物を確認する |
| 難燃 | 液体油剤のため、固体樹脂の難燃グレードとは扱いが異なる | 引火点、燃焼性、消防法分類、使用量を確認する |
| GF強化 | シリコーンオイル単体には該当しない | 樹脂やゴムへの添加剤として使用される場合がある |
| 摺動 | 潤滑油、シリコーングリース、樹脂用滑剤 | 荷重、速度、相手材、温度、洗浄性を確認する |
| 食品接触 | 食品機械用、消泡用、離型用などの規格対応品 | 食品衛生法、FDA、使用濃度、間接接触条件を確認する |
成形条件
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常不要 | 水分混入が問題となる用途では脱水・ろ過を行う場合がある |
| シリンダー温度 | 該当なし | 単独で射出成形する材料ではない |
| 金型温度 | 該当なし | 離型剤として使用する場合は金型温度と塗布量を確認する |
| 成形収縮率 | 該当なし | 液体材料であり、固体成形品の収縮率は規定しない |
| 混合温度 | 常温〜80℃程度 | 粘度低下、分散性改善のため加温する場合がある |
| 塗布後処理 | 常温乾燥、加熱乾燥、焼付け | 溶剤希釈品、反応性品、エマルションでは条件が異なる |
耐薬品性
下表はジメチルシリコーンオイルを中心とした一般的な目安である。シリコーンオイルは液体であるため、耐薬品性評価では「溶解」「膨潤」「粘度変化」「白濁」「分離」「揮発」「抽出」「被接触材への移行」を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○ | 希薄・常温では比較的安定であるが、濃酸や高温では分解に注意する |
| 強酸・酸化性酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸 | △〜× | 酸化、分解、粘度変化を生じる場合がある |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | △ | 強アルカリ、高温、長時間ではシロキサン結合の分解に注意する |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜◎ | 一般に大きな溶解は起こりにくいが、乳化系では分離に注意する |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 薬品の極性、温度、添加剤により相溶性が変化する |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | 膨潤・溶解・希釈が起こりやすい |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | △ | 条件により膨潤、希釈、粘度低下を生じる |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○〜△ | 短時間では比較的安定な場合があるが、変性品や低粘度品では確認が必要である |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | ○〜△ | 膨潤、白濁、分離の有無を確認する |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 溶解・膨潤しやすく、使用は避ける場合が多い |
| 水・温水 | 水、温水、純水 | ◎ | 疎水性であり水にはほとんど溶けない |
| 高温水・蒸気 | 熱水、蒸気 | ○〜△ | 長時間、高温、アルカリ共存では分解や乳化に注意する |
| 油 | 鉱物油、植物油、動物油脂 | ○〜△ | 相溶性は油種と粘度により異なる。混合安定性を確認する |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油 | △〜× | 膨潤、希釈、抽出が起こる場合がある |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| シリコーンオイルの代表的なSP値 | 約15〜16 MPa1/2 |
| 代表材料 | ポリジメチルシロキサン、ジメチルシリコーンオイル |
| 注意点 | SP値は溶解・膨潤の目安であり、耐薬品性を単独で判断できない。粘度、分子量、変性基、温度、接触時間、添加剤、応力、乳化状態、界面活性剤の有無を確認する必要がある |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表は、シリコーンオイルのSP値を約15.5 MPa1/2として計算した代表例である。実際の溶解性は、Hansen溶解度パラメータ、分子サイズ、結晶性の有無、温度、接触時間、攪拌、混合比にも左右される。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | SP値差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 32.4 | ◎ | SP値差は大きく、相溶しにくい |
| メタノール | 29.7 | 14.2 | ◎ | 極性が高く、一般に相溶しにくい |
| エタノール | 26.0 | 10.5 | ◎ | 短時間接触では比較的安定な場合が多い |
| IPA | 23.5 | 8.0 | ○〜◎ | 乳化品では分離や白濁を確認する |
| アセトン | 20.0 | 4.5 | △ | 条件により膨潤、白濁、希釈が起こる |
| MEK | 19.0 | 3.5 | △ | 短時間と長時間で挙動が異なる場合がある |
| 酢酸エチル | 18.6 | 3.1 | △ | 溶剤型塗料や洗浄用途では確認が必要である |
| トルエン | 18.2 | 2.7 | △〜× | 膨潤・溶解しやすい代表的な溶剤である |
| キシレン | 18.0 | 2.5 | △〜× | 希釈、膨潤、粘度低下に注意する |
| ヘキサン | 14.9 | 0.6 | × | SP値差が小さく、膨潤・希釈しやすい |
| ヘプタン | 15.3 | 0.2 | × | 脂肪族炭化水素との相溶性に注意する |
| ジクロロメタン | 20.2 | 4.7 | × | SP値差以上に溶解力が高く、不適となる場合が多い |
| クロロホルム | 19.0 | 3.5 | × | シリコーンオイルを溶解・膨潤させやすい |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。ただし、SP値が近くても実用上問題が少ない場合や、SP値差が大きくても界面活性剤、温度、攪拌、混合物により白濁・分離・膨潤が起こる場合がある。
製法
| 工程 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原料 | 金属ケイ素、塩化メチル、ジメチルジクロロシラン、環状シロキサン、末端封鎖剤などを使用する | 不純物、低分子環状シロキサン、塩素分、水分を管理する |
| 直接法 | 金属ケイ素と塩化メチルからメチルクロロシラン類を製造する | ジメチルジクロロシランを主原料として分離精製する |
| 加水分解 | ジメチルジクロロシランを加水分解し、シラノールや低分子シロキサンを得る | 副生する塩化水素の処理が必要である |
| 環状体化・平衡化 | 環状シロキサンを触媒存在下で開環重合または平衡化する | 粘度、分子量、末端基、低分子残分を調整する |
| 末端封鎖 | トリメチルシロキシ基などで末端を安定化する | 末端OH品、メチル封鎖品、反応性末端品で性質が異なる |
| 精製・脱揮 | 低分子シロキサン、揮発分、触媒残分を除去する | 電子部品、医療、食品接触用途では特に重要である |
| 添加剤・変性 | 酸化防止剤、安定剤、乳化剤、シリカ、PTFE粉末、反応性官能基などを組み合わせる | 用途によりアウトガス、抽出物、法規制を確認する |
代表的な反応式
金属ケイ素からメチルクロロシランを製造する代表例は、以下のように表される。
Si + 2CH3Cl → (CH3)2SiCl2
ジメチルジクロロシランの加水分解は、概略的には以下のように表される。
n(CH3)2SiCl2 + nH2O → [−Si(CH3)2−O−]n + 2nHCl
実際の工業製法では、加水分解、縮合、環状体化、開環重合、平衡化、末端封鎖、脱揮精製を組み合わせ、目的粘度と低分子含有量に調整する。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 選定ポイント |
|---|---|---|
| 自動車 | 樹脂部品の滑り性付与、ウェザーストリップ潤滑、艶出し、制振油、離型剤 | 塗装はじき、VOC、アウトガス、ゴム・樹脂への移行を確認する |
| 電気・電子 | 絶縁油、放熱補助油、接点周辺の潤滑、封止補助、制振用途 | 低分子シロキサン、接点障害、体積抵抗率、誘電特性を確認する |
| 機械部品 | 軽荷重潤滑、樹脂摺動、Oリング潤滑、ダンパー、グリース基油 | 荷重、速度、相手材、摩耗粉、洗浄剤との相性を確認する |
| 医療 | 医療器具の潤滑、チューブ処理、シリンジ潤滑、表面改質 | 医療グレード、生体適合性、抽出物、滅菌条件を確認する |
| 食品機械 | 食品機械用潤滑、消泡、離型、包装機械の滑り性付与 | 食品衛生法、FDA、NSF、直接接触・間接接触条件を確認する |
| 建築・設備 | 撥水処理、シール材周辺の離型、艶出し、メンテナンス油 | 塗装・防水材・接着剤との相性、屋外耐候性を確認する |
| プラスチック成形 | 離型剤、滑剤、表面改質剤、消泡剤、樹脂添加剤 | ブリード、金型汚染、印刷性、接着性、透明性低下を確認する |
| 塗料・インキ | レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、表面調整剤 | はじき、再塗装性、相溶性、添加量を確認する |
| 化粧品・日用品 | ヘアケア、スキンケア、艶出し、撥水、感触改良 | 揮発性シリコーン、粘度、規制、表示名称を確認する |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| シリコーン樹脂 | シロキサン骨格を持つ硬質の熱硬化性樹脂である | シリコーンオイルは液体であり、樹脂成形体ではなく潤滑、離型、撥水、添加用途が中心である |
| 液状シリコーン | 液状のシリコーンポリマーを架橋してゴム弾性体にする材料である | 液状シリコーンは硬化して成形体になるが、シリコーンオイルは通常硬化せず流体として機能する |
| フッ素樹脂 | 耐薬品性、非粘着性、低摩擦性に優れるフッ素系樹脂である | フッ素樹脂は固体材料として部品化できる。シリコーンオイルは塗布・添加・潤滑による表面機能付与が中心である |
| ポリテトラフルオロエチレン | 最高レベルの耐薬品性と低摩擦性を持つフッ素樹脂である | PTFEは固体摺動材や充填材として使われ、シリコーンオイルは液体潤滑や離型に使われる |
| ポリアセタール | 高剛性、低摩擦、耐摩耗性に優れる結晶性エンプラである | POMはギアや軸受などの成形部品に用いられ、シリコーンオイルはPOMなどの摺動部への補助潤滑として使われる場合がある |
| ポリプロピレン | 軽量で耐薬品性と成形性に優れる汎用プラスチックである | PPは容器、部品、フィルムに成形される。シリコーンオイルはPP表面の滑り性や離型性を調整する添加剤として使われる場合がある |
| ポリエチレン | 耐水性、耐薬品性、低温性に優れるポリオレフィンである | PEは成形材料であり、シリコーンオイルはPE表面処理、滑剤、離型剤として補助的に使用される |
| ナイロン6 | 耐摩耗性と靭性に優れるポリアミド系エンプラである | ナイロン6は吸水による寸法変化に注意する成形材料であり、シリコーンオイルは潤滑・離型・表面改質材として扱う |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 信越化学工業 | KF、KM、KSなどのシリコーンオイル・シリコーンエマルション代表例 | 日本の主要シリコーンメーカーであり、ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーン、エマルション、離型剤などを展開する |
| Dow | DOWSIL、XIAMETER など | シリコーン材料の世界的メーカーであり、シリコーン流体、エラストマー、シーラント、特殊添加剤を展開する |
| Momentive | Silopren、Element14、TSF系などの代表例 | シリコーン、石英、特殊材料を扱うメーカーであり、シリコーン流体、変性シリコーン、添加剤を供給する |
| Wacker Chemie | AK、BELSIL、SILRES など | ドイツの化学メーカーであり、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、エマルション、シラン材料を展開する |
| Elkem | BLUESIL、MIRASIL など | シリコーン、シリコン、特殊材料を扱い、工業用・化粧品用のシリコーン流体を展開する |
| モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン | TSF、XF、YF系などの代表例 | 日本国内でシリコーン材料を供給するメーカーであり、用途別の変性シリコーンや工業用グレードを扱う |
| 旭化成ワッカーシリコーン | WACKER系シリコーン製品 | 日本国内でWacker系シリコーン製品を供給する企業であり、工業、建築、化粧品、電気電子向け材料を扱う |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 制限物質の含有有無 | 電子部品用途ではメーカーの適合証明を確認する |
| REACH | SVHC、登録、用途制限 | 低分子シロキサンや特殊変性品では最新情報を確認する |
| 食品衛生 | 食品接触用途、消泡用途、離型用途 | 日本の食品衛生法、ポジティブリスト、使用濃度、接触条件を確認する |
| FDA | 食品接触、医療周辺用途 | 該当条項、グレード、用途範囲を確認する必要がある |
| 医療用途 | 生体適合性、抽出物、滅菌条件 | 一般工業グレードを医療用途へ転用しない |
| 消防法・危険物 | 引火点、粘度、数量、保管条件 | 低粘度品や溶剤希釈品では分類が変わる場合がある |
用途別選定
| 用途 | 推奨される種類 | 注意点 |
|---|---|---|
| ギア | シリコーングリース、PTFE配合グリース | 高荷重、摩耗、樹脂クラック、洗浄剤との相性を確認する |
| 軸受 | 中〜高粘度シリコーンオイル、グリース化品 | 荷重、速度、温度、相手材を確認する |
| チューブ | 医療用または食品接触対応グレード | 抽出物、移行、滅菌、接液薬品を確認する |
| 筐体 | 滑り性付与剤、艶出し剤、表面保護剤 | 塗装、印刷、接着、帯電への影響を確認する |
| フィルム | スリップ剤、離型剤、表面改質剤 | ブリード、透明性、ヒートシール性、印刷性を確認する |
| コネクタ | 低アウトガス品、電気絶縁用途グレード | 低分子シロキサンによる接点障害に注意する |
注意点
- 塗装、接着、印刷、めっき前の部品には、微量のシリコーンオイル付着でもはじきや密着不良を起こす場合がある。
- 電子接点付近では、低分子シロキサンの揮発・移行・酸化により接点障害を起こす場合がある。
- 高温、酸化雰囲気、金属触媒、強酸、強アルカリでは熱劣化、ゲル化、粘度上昇、低分子化が起こる場合がある。
- 芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素系溶剤では溶解・膨潤・希釈が起こりやすい。
- 食品、医療、化粧品用途では、必ず該当グレード、法規制、使用濃度、接触条件を確認する。
- シリコーンオイルは吸水しにくいが、乳化品や変性品では水分、pH、電解質により安定性が変化する。
- 樹脂への添加では、摺動性や離型性が改善する一方、ブリード、白化、接着不良、外観不良を生じる場合がある。
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