概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 熱可塑性オレフィン |
| 略記号 | TPO、TPE-O |
| IUPAC | 単一物質ではないため一意に定義できない。主成分例はpoly(propene)、ethylene-propylene copolymer、ethylene-propylene-diene terpolymerである。 |
| 英語名 | Thermoplastic Olefin、Thermoplastic Polyolefin、Olefinic Thermoplastic Elastomer |
| 日本語名 | 熱可塑性オレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系TPE |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系複合材料 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック系高機能材料。一般にエンジニアリング・プラスチックには分類しない。 |
| 化学式又は代表構造 | PP系連続相[-CH2-CH(CH3)-]nと、EPR、EPDM、POE等のゴム相からなる多相構造 |
| CAS No. | 混合物であるためTPO全体を表す単一CAS No.はない。母材PPは9003-07-0、EPMは9010-79-1、EPDMは25038-36-2等が用いられる場合がある。 |
| 構造・主成分 | PP、PE等の熱可塑性ポリオレフィンを連続相とし、EPR、EPDM、POE等のゴム成分を分散させた材料である。タルク等の無機充填材、耐候剤、酸化防止剤、顔料を配合する場合が多い。 |
| 主な用途 | 自動車バンパー、インストルメントパネル、内外装表皮、エアバッグカバー、マッドガード、建築防水シート、ガスケット、電線被覆、グリップ、生活用品 |
熱可塑性オレフィンは、ポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィン樹脂に、エチレン・プロピレン系ゴム又はオレフィン系エラストマー成分を組み合わせた熱可塑性エラストマーである。ゴム的な柔軟性、耐衝撃性と、熱可塑性樹脂としての射出成形性、押出成形性、再溶融性を併せ持つ。
TPOは軽量、低吸水、耐水、耐酸・耐アルカリ、耐候性に優れ、自動車内外装や建築防水材で広く用いられる。一方、芳香族炭化水素、塩素系溶剤、燃料油等では膨潤又は物性低下が生じる場合があり、未処理表面は接着、塗装、印刷が難しい。
TPOは単一組成ではなく、非架橋ブレンド型、反応器内重合型、動的架橋型、タルク充填型等で物性幅が大きい。実使用では、グレード、硬度、充填材量、温度、薬品濃度、荷重、応力、湿度、接触時間及び成形条件を確認する必要がある。
特徴
長所
- 密度が一般に約0.88~1.10 g/cm³であり、PVC、TPU及び多くのエンプラより軽量である。
- 低吸水で、湿度による寸法変化及び電気特性変化が小さい。
- 耐水性、耐塩水性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐候性に優れるグレードが多い。
- 射出、押出、ブロー、熱成形等へ適用でき、成形端材を再利用しやすい。
- PPとの相溶性が高く、PP系部品との一体化及び単一材料化を行いやすい。
短所
- 耐油性、耐燃料性及び芳香族・塩素系溶剤耐性は限定的である。
- 表面エネルギーが低く、未処理では接着、塗装、印刷及びめっきが難しい。
- 高温下の剛性、クリープ、圧縮永久ひずみは架橋ゴム又は高耐熱TPEに劣る場合がある。
- 軟質グレードでは傷付き、摩耗、べたつき及びブロッキングに注意が必要である。
外観・耐熱性・加工性
自然色は乳白色から半透明又は不透明であり、充填材及び顔料により外観が変化する。PP結晶相の融点は一般に約150~165℃であるが、連続使用温度はこれより低く、標準TPOでは概ね80~100℃、耐熱又はTPV系では100~130℃程度が目安となる。成形性は良好であるが、グレードごとの流動性、収縮率、表面転写性を確認する必要がある。
分類上の注意
市場ではTPOを広義のオレフィン系TPE全般として用いる場合と、非架橋又は重合型TPOに限定し、動的架橋型をTPVとして分ける場合がある。本ページでは広義のTPOを扱い、TPVは別区分として明記する。
構造式

TPOは単一の繰返し単位からなるポリマーではなく、PP又はPE系の連続相と、EPR、EPDM、POE等のゴム相からなる。非架橋TPOではゴム相が未架橋又は低架橋であり、TPVでは混練中にゴム相を動的架橋して微細分散させる。
種類・代表グレード
| 種類・グレード | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非架橋ブレンド型TPO | PPとEPR、EPDM又はPOEを溶融混練 | 加工性、低密度、コストバランス | 高温弾性回復及び圧縮永久ひずみは限定的 | 自動車内外装、一般成形品 |
| 重合型TPO | 多段重合等でPP相とエラストマー相を反応器内形成 | 分散均一性、衝撃性、外観 | 組成設計の自由度は製法に依存 | バンパー、外装、シート |
| 動的架橋型TPO(TPV) | PP連続相中に架橋EPDM相を微分散 | 弾性回復、耐熱、圧縮永久ひずみ | 価格及び加工管理が非架橋型より高い場合がある | シール、ホース、ガスケット |
| タルク充填TPO | タルク10~30質量%程度を配合する例が多い | 剛性、HDT、寸法安定性、低線膨張 | 密度上昇、低温衝撃及び表面外観低下に注意 | 自動車内外装、構造パネル |
| 耐候・外装グレード | UV吸収剤、HALS、耐候顔料を配合 | 屋外耐久性、色調保持 | 色、厚さ、曝露方位で寿命が変動 | バンパー、ルーフィング、建材 |
| 難燃グレード | リン系、無機系等の難燃処方 | UL 94等級を取得した個別グレードがある | 密度、機械特性、成形性への影響 | 電気部品、電線被覆 |
| 食品接触・医療用途向け | 抽出物、臭気、添加剤及び規制適合を管理 | 低吸水、柔軟性、軽量性 | 材料名だけでは適合を判断できない | 容器部品、チューブ、キャップ |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 流動性と離型性が良く、複雑形状へ適用しやすい。 | 収縮、反り、ウェルド、フローマーク、タルク配向を確認する。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、異形材、電線被覆、膜材に適する。 | メルトフラクチャー、ダイスウェル、厚み偏差を管理する。 |
| ブロー成形 | ○ | 高溶融張力グレードで中空品を成形できる。 | グレード選定とパリソン制御が必要である。 |
| 真空・圧空成形 | ○ | シートグレードは大型内装表皮等へ適用できる。 | 加熱むら、薄肉化、表面転写及び戻りを確認する。 |
| 圧縮成形 | ○ | シート及び大型部材へ適用可能である。 | 量産性と加熱冷却時間を考慮する。 |
| 切削加工 | △ | 加工可能だが、軟質材では変形しやすい。 | 切削熱、ばり、固定変形を抑える。 |
| 3Dプリント | △ | 専用フィラメント又はペレットで対応例がある。 | 反り、層間接着、供給安定性を確認する。 |
| 熱板・振動・超音波溶着 | ○ | PP系材料同士では溶着しやすい。 | 硬度、充填材、形状、溶着条件により強度が変化する。 |
| 接着・塗装・印刷 | △ | 未処理表面は低表面エネルギーである。 | コロナ、プラズマ、フレーム処理又は専用プライマーを使用する。 |
成形条件の一般的な目安
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要 | 低吸水材料である。ただし吸湿性添加剤、再生材、結露がある場合は確認する。 |
| 乾燥温度 | ℃ | 60~80 | 必要時の目安。2~3 h程度。 |
| シリンダー温度 | ℃ | 170~230 | 硬度、MFR、充填材及び架橋状態により調整する。 |
| ノズル温度 | ℃ | 180~220 | 糸引き、鼻垂れ、未溶融を確認する。 |
| 金型温度 | ℃ | 20~60 | 外観、収縮、成形サイクルを優先して設定する。 |
| 射出圧力 | MPa | 50~120 | 製品形状及び流動長により大きく変動する。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.8~2.0 | タルク充填では低下する傾向がある。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 1.0~2.2 | 形状、保圧、充填材配向に依存する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は非強化・標準TPOの材料群としての代表範囲であり、特定グレードの保証値ではない。硬度、ゴム相量、タルク量、架橋状態、試験規格及び温度で大きく変動する。
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 条件・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.95 | 0.88~1.10 | 非充填軟質材からタルク充填材まで。ISO 1183相当。 |
| 比重 | 無次元 | 0.95 | 0.88~1.10 | 23℃の代表範囲。 |
| 吸水率・24時間 | % | 0.02 | 0.01~0.05 | 23℃水中、代表値。添加剤及び充填材に依存。 |
| 引張強さ・破断 | MPa | 15 | 8~25 | ISO 527相当、23℃。硬度及び配合で変動。 |
| 引張弾性率 | GPa | 0.8 | 0.05~1.8 | 軟質TPOから高剛性TPOまで幅が大きい。 |
| 引張破断伸び | % | 400 | 100~700 | ISO 527相当。タルク量増加で低下しやすい。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.9 | 0.1~2.5 | 自動車外装用高剛性TPOでは高い値を取る。 |
| アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き | kJ/m² | データなし | 20~破壊せず | ISO方式。NBは数値化せず、低温条件を別途確認する。 |
| 硬度 | Shore A/D | グレード依存 | Shore A 60~Shore D 70 | 軟質TPOから高剛性外装グレードまで。 |
| ガラス転移温度・ゴム相 | ℃ | -50 | -60~-35 | EPR、EPDM、POE組成に依存。 |
| 融点・PP結晶相 | ℃ | 160 | 150~165 | DSC、PP相の融解ピーク。 |
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 85 | 60~120 | ISO 75相当。タルク充填、剛性で変動。 |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | 55 | 45~90 | 高剛性充填グレードで高くなる。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 90 | 80~120 | 標準TPOの目安。TPV又は耐熱グレードは個別確認。 |
| 低温使用限界 | ℃ | -40 | -50~-30 | 衝撃、曲げ、シール性の要求で異なる。 |
| 線膨張係数・流動方向 | 10-5/K | 8 | 5~14 | タルク充填で低下する。 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.20 | 0.15~0.30 | 23℃、代表範囲。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1016 | 1×1014~1×1017 | 乾燥状態。導電グレードを除く。 |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 25 | 20~35 | 厚さ及び試験方法に依存。 |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 2.4 | 2.2~2.7 | 乾燥状態、充填材で変動。 |
| UL 94燃焼性 | 等級 | HB相当が一般的 | グレード依存 | V-0等の難燃グレードもある。厚さ、色、認証番号を確認する。 |
| 限界酸素指数・LOI | % | 18 | 17~19 | 標準非難燃材の目安。 |
充填・強化グレードの代表傾向
| グレード | 密度 g/cm³ | 引張強さ MPa | 曲げ弾性率 GPa | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 非充填標準TPO | 0.88~0.95 | 8~20 | 0.05~1.2 | 柔軟性、低密度、耐衝撃性を重視。 |
| タルク10~20質量%充填TPO | 0.98~1.08 | 15~25 | 1.0~2.2 | 剛性、HDT、寸法安定性を改善。 |
| 高充填・高剛性TPO | 1.05~1.20 | 18~30 | 1.8~3.0 | 低温衝撃、表面外観及びウェルド強度を確認。 |
耐薬品性
評価は一般的な非架橋TPOを23℃付近で短時間から中期接触させた場合の目安である。実部品では濃度、温度、時間、応力、成形残留応力、添加剤抽出及びゴム相組成を確認する。
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響は一般に小さい。 | 低吸水である。 |
| 温水 | - | 60~80℃ | 長時間 | ○ | 軟化、添加剤抽出 | 温度と時間を確認する。 |
| 塩水・海水 | 3~5% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響は小さい。 | 金属との組合せでは腐食に注意。 |
| 塩酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響は一般に小さい。 | 高温・高濃度は個別確認。 |
| 硫酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 長期で表面変化の可能性 | 濃硫酸、加熱条件は不適となり得る。 |
| 硝酸 | 10% | 23℃ | 浸漬 | △ | 酸化、変色、脆化 | 酸化性のため濃度・温度依存が大きい。 |
| 水酸化ナトリウム | 10% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響は一般に小さい。 | 高温条件を確認する。 |
| エタノール | 99% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 軽微な膨潤又は抽出 | 添加剤及び応力条件に依存。 |
| イソプロピルアルコール | 99% | 23℃ | 浸漬 | ○ | 軽微な膨潤 | 高温・長期は確認。 |
| グリセリン | 99% | 23℃ | 浸漬 | ◎ | 影響は小さい。 | 多価アルコール。 |
| MMB | 99% | 23℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化 | グリコールエーテル系。実測確認を推奨。 |
| アセトン | 99% | 23℃ | 短時間 | ○ | 添加剤抽出、軽微な膨潤 | 長期及び応力下は確認。 |
| メチルエチルケトン | 99% | 23℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化 | ゴム相量が多いほど影響が出る場合がある。 |
| 酢酸エチル | 99% | 23℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、軟化 | 長時間接触を避ける。 |
| n-ヘキサン | 99% | 23℃ | 浸漬 | △ | ゴム相の膨潤 | SP値が近く、長期で影響しやすい。 |
| トルエン | 99% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤、軟化 | 芳香族炭化水素。 |
| キシレン | 99% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 温度上昇で影響が増大する。 |
| ジクロロメタン | 99% | 23℃ | 浸漬 | × | 膨潤、軟化、抽出 | 塩素系溶剤。 |
| エンジン油 | - | 23~100℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、硬度低下 | TPV及び耐油グレードでも個別確認。 |
| ガソリン | - | 23℃ | 浸漬 | × | 膨潤、抽出、強度低下 | 燃料系部品には専用材料を選定する。 |
| ブレーキ液 | グリコール系 | 23~100℃ | 浸漬 | ○ | 配合により膨潤 | 液種及び高温条件を確認する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.05% | 23℃ | 短時間 | ○ | 長期で酸化、退色 | 濃度、pH、温度、光を確認する。 |
| 過酸化水素 | 3% | 23℃ | 短時間 | ○ | 長期で酸化 | 高濃度・高温は注意。 |
| 食品油 | - | 23~80℃ | 浸漬 | △ | 膨潤、臭気移行 | 温度及び接触時間に依存。 |
SP値(溶解度パラメータ)
TPOは多相材料であるため単一のSP値で表すことはできない。PP相は概ね16.0~18.0 MPa1/2、EPR・EPDM相は概ね16.0~17.5 MPa1/2が目安であり、材料全体では約16~18 MPa1/2を参考範囲とする。SP値差が小さい炭化水素系溶剤ではゴム相の膨潤が生じやすい。
SP値は溶解・膨潤の一次スクリーニングに使用できるが、結晶性、架橋、充填材、分子量、温度、拡散、酸化反応、応力割れ及び添加剤抽出を表さないため、耐薬品性をSP値だけで判断してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | TPOとの差の目安 | 評価 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| n-ヘキサン | 14.9 | 1~3 | △ | ゴム相の膨潤に注意。 |
| トルエン | 18.2 | 0~2 | × | 著しい膨潤が生じやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 0~2 | × | 高温で影響が大きい。 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 0~2 | △ | 極性差があるためSP差のみより良好な場合もあるが、実測が必要。 |
| MEK | 19.0 | 1~3 | △ | 膨潤、抽出、応力下変形を確認。 |
| IPA | 23.5 | 6~8 | ○ | 長時間及び高温は確認。 |
| エタノール | 26.0 | 8~10 | ○ | 添加剤抽出を考慮。 |
| 水 | 47.9 | 30以上 | ◎ | 熱水では熱軟化及び添加剤抽出を別途確認。 |
製法

ブレンド型TPOは、PP又はPE、EPR、EPDM、POE等を、酸化防止剤、耐候剤、相溶化剤、顔料、タルク等とともに二軸押出機等で溶融混練し、脱揮、濾過、造粒して製造する。反応器内重合型TPOでは、多段重合又は連続重合によりPP系相とエチレン・プロピレン系ゴム相を形成する。
TPVでは、PP溶融相中でEPDM等を混練しながら架橋反応を進め、架橋ゴム相を微細粒子として分散させる。代表的な概念反応は「EPDM+架橋剤 → 架橋EPDM相」であるが、実際の架橋剤、助剤、反応条件は製品設計により異なる。ペレット化後はMFR、硬度、密度、引張特性、圧縮永久ひずみ、分散状態、色及び異物を管理する。
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 適性 | 選定理由・注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車外装 | バンパー、クラッディング、マッドガード | ◎ | 低密度、低温衝撃、耐候性に優れる。塗装密着、傷付き、線膨張を確認する。 |
| 自動車内装 | インストルメントパネル、表皮、エアバッグカバー | ◎ | 触感、柔軟性、軽量性、成形性に優れる。VOC、臭気、フォギングを確認する。 |
| シール部品 | ウェザーストリップ、ガスケット、グロメット | ○ | TPV系が適する。圧縮永久ひずみ、温度、油接触を確認する。 |
| 建築・設備 | 防水シート、ルーフィング、目地材 | ◎ | 耐候性、溶着性、耐水性に優れる。長期屋外曝露及び接合部を評価する。 |
| 電気・電子 | 電線被覆、コネクタシール、筐体緩衝部 | ○ | 電気絶縁性と柔軟性に優れる。難燃、耐熱、低分子移行を確認する。 |
| 医療 | チューブ、グリップ、機器外装 | △ | 医療用個別グレードのみ。滅菌、抽出物、ISO 10993等を確認する。 |
| 食品接触 | キャップ、シール、容器部品 | △ | 食品接触適合グレードに限定し、油脂、温度、移行試験を確認する。 |
| ギア・軸受 | 低荷重緩衝ギア、ブッシュ | △ | 剛性、クリープ、摩耗及び寸法精度が制約となる。 |
| 燃料系部品 | 燃料ホース、タンクシール | × | 標準TPOは燃料で膨潤しやすい。専用バリア材又は耐燃料材を使用する。 |
| 塗料・コーティング | 粉末、ホットメルト、表皮層 | △ | 低表面エネルギーと溶剤選定に注意。接着性改良が必要な場合がある。 |
注意点・劣化及び故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 酸素、熱、金属触媒残渣 | 高温長時間、薄肉、換気環境 | 硬化、脆化、亀裂、変色 | 耐熱安定剤、温度低減、遮熱 | 100~130℃熱老化、引張保持率 |
| 紫外線劣化 | UV、酸素、顔料 | 屋外、淡色、薄肉 | 白化、退色、亀裂、強度低下 | HALS、UV吸収剤、耐候顔料 | キセノンアーク、色差、光沢、強度保持率 |
| 溶剤膨潤 | 炭化水素系溶剤の吸収 | 燃料、芳香族溶剤、温度上昇 | 寸法増加、軟化、強度低下 | 耐油材への変更、接触回避 | 実薬品浸漬、質量・体積・硬度変化 |
| クリープ変形 | 低弾性率、温度、持続荷重 | 高温、締結、片持ち、薄肉 | 永久変形、シール低下 | 肉厚、リブ、荷重低減、充填材 | 使用温度・荷重で1000 h以上のクリープ試験 |
| 接着・塗装剥離 | 低表面エネルギー、離型剤 | 未処理表面、汚染、経時 | 剥離、外観不良 | 洗浄、表面処理、専用プライマー | 表面張力、クロスカット、180度剥離 |
| アウトガス・フォギング | 低分子添加剤、加工劣化物 | 自動車内装、高温密閉 | 臭気、ガラス曇り、汚染 | 低VOCグレード、乾燥、滞留抑制 | VOC、フォギング、GC-MS、質量減少 |
法規制・認証
| 法規制・認証 | 一般的な対応 | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS、REACH、SVHC | 対応可能なグレードが多い | 色、難燃剤、安定剤、製造拠点及び最新証明書を確認する。 |
| ELV | 自動車用グレードで対応例が多い | IMDS登録及び個別材料データを確認する。 |
| 日本食品衛生法・ポジティブリスト | 適合グレードが存在する | 食品種、接触温度、時間、油脂性食品、添加剤を確認する。 |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在する | 該当条項、使用条件及びメーカー適合宣言を確認する。 |
| USP Class VI、ISO 10993 | 医療用個別グレードに限定 | 最終製品の生物学的安全性及び滅菌後性能を評価する。 |
| UL 94 | HB又は難燃認証グレードがある | 等級、厚さ、色、UL File No.を個別確認する。 |
| PFAS関連規制 | 標準TPO主鎖はフッ素を含まない | 加工助剤、難燃剤、表面処理剤等の意図的添加を確認する。 |
環境・リサイクル性及び価格・供給性
TPOは熱可塑性であり、組成及び汚染が管理された成形端材はマテリアルリサイクルしやすい。PP系部品との単一材料化に有利である一方、架橋ゴム相、塗膜、接着剤、異種材、タルク及び劣化履歴は再生材物性に影響する。バイオベース又はマスバランス原料を用いた製品も存在するが、バイオベースであることと生分解性は別であり、一般的なTPOは生分解性ではない。
価格は一般に比較的低価格から中価格であり、TPV、医療、難燃、低VOC及び特殊外観グレードは高くなる。国内外で流通性は良いが、硬度、色、充填材量及び自動車認定仕様では最小購入量と供給継続性を確認する。
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 2 | 柔軟性を重視する材料群であり、高強度エンプラより低い。 |
| 剛性 | 3 | タルク充填により高められるが、非充填軟質材は低い。 |
| 衝撃強度 | 5 | 低温を含む耐衝撃性を設計しやすい。 |
| 耐熱性 | 3 | 標準TPOは中程度、TPV及び耐熱材で改善可能。 |
| 耐薬品性 | 4 | 水、酸、アルカリに強いが、油、燃料、芳香族溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 4 | 安定化グレードは屋外用途に適する。 |
| 低吸水性 | 5 | 吸水率が低く、湿度寸法変化が小さい。 |
| 成形加工性 | 5 | 射出、押出、ブロー、熱成形へ対応しやすい。 |
| 接着性 | 1 | 表面処理又は専用プライマーが必要となりやすい。 |
| リサイクル性 | 4 | 熱可塑性でPP系部品との単一材料化に適する。 |
| 価格優位性 | 4 | 性能に対して比較的低価格である。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | TPOとの違い |
|---|---|---|
| ポリプロピレン(PP) | 低密度、耐薬品性、剛性、成形性に優れる。 | TPOはゴム相によりPPより柔軟で低温衝撃性に優れるが、剛性と耐熱変形は低い場合がある。 |
| 熱可塑性エラストマー(TPE) | TPS、TPO、TPV、TPU、TPC、TPAE等の総称。 | TPOはTPEの一群であり、オレフィン系組成、低密度、耐水性を特徴とする。 |
| SEBS | 水添スチレン系TPE。低硬度、触感、透明設計に適する。 | TPOは自動車外装や大型成形に適し、SEBSは軟質グリップや透明・着色用途を設計しやすい。 |
| 熱可塑性ポリウレタン(TPU) | 耐摩耗、引張強度、耐油性に優れる。 | TPOは低密度、耐水、耐候、コストで有利。TPUは吸湿と加水分解に注意。 |
| 熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPC) | 耐熱、疲労、反発弾性、耐油性に優れる。 | TPOは低密度、耐水、耐候、価格で有利だが、高温機械特性はTPCに劣る。 |
| 熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE) | 耐熱、耐油、低温柔軟性に優れる高機能TPE。 | TPOは低吸水、低価格、加工性で有利。TPAEは高温・油環境に適する。 |
| EPDM | 架橋ゴム。耐候、耐水、耐オゾン、シール性に優れる。 | TPOは再溶融成形とリサイクルが可能。EPDMは高温弾性回復及び圧縮永久ひずみに優れる場合が多い。 |
| 軟質ポリ塩化ビニル(PVC) | 難燃性、接着・印刷性、柔軟配合範囲に優れる。 | TPOは低密度、ハロゲンフリー設計、耐候及び再資源化で有利。PVCは油や溶剤で可塑剤移行に注意。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 三井化学株式会社 | ミラストマー® | オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂を主体とするTPO/TPV。自動車シール、内装表皮、グリップ、建材等に展開する。 |
| LyondellBasell | Hifax、Hiflex、Softell | 反応器型TPO及びコンパウンドを自動車、建築防水、シート、表皮用途等へ展開する。 |
| ExxonMobil Product Solutions | Santoprene™ TPV | 動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー。シール、ホース、電気、自動車用途で使用される。 |
| Teknor Apex | Sarlink® TPV | TPV及びオレフィン系TPEを自動車、工業、消費財用途へ展開する。 |
| Avient Corporation | OnFlex™、Maxelast™等 | オレフィン系を含む各種TPEコンパウンドを提供する。個別製品の樹脂系統を確認して選定する。 |
ブランドの分類はメーカーの製品体系によりTPO、TPE-O又はTPVと表記される。採用時は最新の技術資料、供給地域、グレード統廃合、規制証明及び物性保証範囲をメーカーへ確認する。
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用途決定前に推奨される確認試験
- 実薬品浸漬試験:実濃度、実温度、予定接触時間で質量、体積、硬度、引張強さ及び外観を測定する。
- 応力負荷下耐薬品試験:実部品又は曲げ試験片へ設計応力を付与し、割れ、白化及び永久変形を確認する。
- 熱老化試験:使用上限温度付近で500~2000 hを目安に、引張特性、伸び、色及び臭気を評価する。
- 紫外線促進耐候試験:キセノンアーク又はUV試験後の色差、光沢、亀裂及び強度保持率を確認する。
- クリープ・圧縮永久ひずみ試験:実温度、実荷重又は圧縮率で長期変形を評価する。
- 接着・塗装試験:表面処理直後及び経時後に、密着性、剥離強度、温湿度及び薬品耐久性を確認する。
- 実成形試験:収縮、反り、ウェルド、フローマーク、外観、臭気、VOC及び再生材混合率の影響を確認する。
材料選定では、短時間物性値をそのまま設計許容応力として使用せず、グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、肉厚、成形履歴及び安全率を含めて評価する必要がある。