概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 熱可塑性ポリエステルエラストマー |
| 略記号 | TPEE、TPC、TPC-ET、TEEE |
| IUPAC | 単一のIUPAC名で表される材料ではなく、芳香族ポリエステル硬質セグメントとポリエーテルまたはポリエステル軟質セグメントからなるブロック共重合体である。 |
| 英語名 | Thermoplastic Polyester Elastomer、Thermoplastic Copolyester Elastomer |
| 日本語名 | 熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、コポリエステルエラストマー |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ブロック共重合体 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・エラストマー、熱可塑性樹脂、結晶性樹脂系材料 |
| 化学式または代表構造 | 代表構造:−[PBT系硬質セグメント]−[ポリエーテル系またはポリエステル系軟質セグメント]−n |
| CAS No. | 単一物質ではないため一般に特定のCAS No.で扱わない。グレード、共重合成分、添加剤により異なる。 |
| 構造・主成分 | 主にPBT系結晶性ポリエステルを硬質セグメント、PTMGなどのポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルを軟質セグメントとするブロック共重合体である。 |
| 主な用途 | 自動車ブーツ、エアダクト、チューブ、電線被覆、コネクタシール、ギア消音部品、グリップ、フィルム、医療用チューブ、工業用ベルトなど |
熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、ポリエステルの耐熱性、耐油性、機械強度と、ゴム状材料の柔軟性、弾性回復性を併せ持つ熱可塑性エラストマーである。一般に、硬質セグメントが結晶性を形成して物理架橋点となり、軟質セグメントが低温柔軟性や反発弾性を担う。
TPEEは加硫ゴムのような架橋工程を必要とせず、射出成形や押出成形で加工できる。耐熱性、耐油性、屈曲疲労性、耐摩耗性を重視する用途で使用されることが多く、自動車、電気・電子、機械部品、チューブ、フィルム用途で採用される。
一方で、ポリエステル結合を含むため、高温高湿、温水、アルカリ、酸、加水分解条件には注意が必要である。実使用では、グレード、硬度、温度、薬品濃度、荷重、応力、接触時間、成形時の乾燥状態を確認する必要がある。
特徴
- ポリエステル系の熱可塑性エラストマーであり、ゴム弾性と熱可塑性樹脂の成形性を併せ持つ。
- 一般に耐熱性、耐油性、屈曲疲労性、反発弾性に優れる。
- 硬度範囲が広く、軟質グレードから高剛性グレードまで選定できる。
- 射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形に使用できるグレードがある。
- ポリエステル結合を含むため、高温水、蒸気、強酸、強アルカリ、加水分解条件には注意が必要である。
- 乾燥不足では加水分解による分子量低下、シルバー、気泡、強度低下が起こる場合がある。
長所
- 耐熱性と低温柔軟性のバランスが良い。
- 耐油性、耐グリース性、耐燃料性が比較的良い。
- 屈曲疲労性、反発弾性、耐摩耗性に優れる。
- 加硫工程が不要で、成形サイクルを短縮しやすい。
- 射出成形や押出成形により複雑形状や薄肉品を作りやすい。
- 硬質樹脂との二色成形、インサート成形、融着用途に使用できるグレードがある。
- 吸水率はポリアミドより低く、寸法安定性を得やすい場合がある。
短所
- 高温高湿、温水、蒸気環境では加水分解に注意が必要である。
- 強酸、強アルカリ、塩素系溶剤、芳香族溶剤、ケトン、エステルでは膨潤や劣化が起こる場合がある。
- 軟質グレードでは圧縮永久ひずみが加硫ゴムより大きい場合がある。
- 耐候性はグレードにより異なり、屋外長期使用では耐候グレードや着色、安定剤の確認が必要である。
- 乾燥条件、滞留時間、成形温度が不適切な場合、熱劣化や分子量低下が起こる。
- 高性能グレードは一般的なTPEやゴム材料より高価な場合がある。
外観
自然色は乳白色から半透明、または白色系である。着色グレード、黒色グレード、透明性を高めたグレードもあるが、一般に完全な透明材料ではない。表面はゴム状の柔らかい触感を持つものから、硬質プラスチックに近いものまである。
耐熱性
融点はグレードによりおおむね170〜225℃程度、連続使用温度は80〜150℃程度が目安である。高耐熱グレードではより高温で使える場合があるが、荷重、湿度、油、薬品、使用時間により許容温度は変わる。
耐薬品性
油、グリース、脂肪族炭化水素、低濃度薬品には比較的安定な場合が多い。一方で、強酸、強アルカリ、温水、蒸気、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では膨潤、軟化、クラック、加水分解が起こることがある。
加工性
射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形、チューブ成形に対応するグレードがある。成形前乾燥が重要であり、一般に80〜120℃程度で2〜5時間程度の乾燥が目安である。成形温度はグレードにより180〜250℃程度、金型温度は20〜80℃程度が目安である。
分類上の注意
TPEEは熱可塑性エラストマーの一種であり、TPU、TPO、TPS、TPVとは化学構造が異なる。また、TPEE、TPC、TPC-ET、TEEEは近い意味で使われることがあるが、規格、メーカー、グレードにより対象範囲が異なるため、材料指定ではメーカー名、グレード名、硬度、規格適合を確認する必要がある。
構造式
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、主鎖中にエステル結合を持つブロック共重合体である。代表例では、硬質セグメントとしてPBT系結晶性ポリエステル、軟質セグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)由来のポリエーテル鎖を持つ。
| 項目 | 構造・内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO− と −O−(CH2)4−O− の組合せ |
| 硬質セグメント | PBT系ポリエステルセグメント。結晶性を持ち、耐熱性、強度、弾性回復に寄与する。 |
| 軟質セグメント | PTMGなどのポリエーテルセグメント、または脂肪族ポリエステルセグメント。柔軟性、低温特性、ゴム弾性に寄与する。 |
| 構成単位 | テレフタル酸またはDMT、1,4-ブタンジオール、ポリエーテルジオールまたはポリエステルジオールを主な構成単位とする。 |
| 共重合体・変性 | 硬度調整、耐熱性、耐加水分解性、難燃性、耐候性、接着性、摺動性を目的として共重合、アロイ化、添加剤配合が行われる。 |
構造式(テキスト表記):HO−[CO−C6H4−CO−O−(CH2)4−O]x−[CO−C6H4−CO−O−(CH2)4−O−(CH2)4−O]y−H
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用TPEE | PBT系硬質セグメントとポリエーテル系軟質セグメントの標準グレード | 耐熱性、耐油性、成形性のバランスが良い。 | 高温水、強アルカリ、強酸には注意が必要である。 | 自動車部品、グリップ、シール、機械部品 |
| 高耐熱グレード | 硬質セグメント量や結晶性を高めたグレード | 高温環境で剛性、弾性回復を保ちやすい。 | 硬くなりやすく、低温柔軟性や成形性が低下する場合がある。 | 自動車エンジン周辺、電装部品、ブーツ |
| 軟質グレード | 軟質セグメント比率を高めた低硬度グレード | 柔軟性、反発弾性、触感に優れる。 | 耐熱性、圧縮永久ひずみ、剛性は硬質グレードより低い。 | グリップ、チューブ、ガスケット、シール |
| 難燃グレード | 難燃剤、難燃助剤を配合したグレード | UL94 V-0、V-2などに対応するグレードがある。 | 柔軟性、色調、耐加水分解性、電気特性に影響する場合がある。 | コネクタ、電線被覆、電子機器部品 |
| GF強化グレード | ガラス繊維を配合した高剛性グレード | 剛性、寸法安定性、HDTが向上する。 | 柔軟性、反発弾性、外観、摩耗相手材への攻撃性に注意が必要である。 | 構造部品、ブラケット、電装部品 |
| 摺動グレード | 潤滑剤、シリコーン、PTFE、その他改質剤を配合したグレード | 摩擦係数や摩耗を低減しやすい。 | 添加剤の移行、接着性、塗装性、法規制を確認する必要がある。 | ギア、ローラー、ブッシュ、消音部品 |
| 耐加水分解グレード | 安定剤や構造設計により湿熱劣化を抑えたグレード | 温水、湿熱環境で標準グレードより寿命を延ばしやすい。 | 強アルカリ、蒸気、長期高温水では限界がある。 | 冷却系部品、チューブ、屋外設備部品 |
| 食品接触・医療用途グレード | 抽出物、添加剤、規格適合を管理したグレード | 食品接触、医療用途で検討しやすい。 | 一般グレードを転用せず、規格、滅菌、溶出条件を確認する必要がある。 | 食品機械部品、チューブ、医療機器部品 |
成形加工
TPEEは熱可塑性材料であるため、射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形などに対応する。成形前乾燥が重要であり、乾燥不足では加水分解による分子量低下、外観不良、機械特性低下が起こる。実際の条件はメーカー推奨条件を優先する。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | シール、ブーツ、グリップ、コネクタ部品、ギア消音部品 | 乾燥、滞留時間、離型、ゲート白化を確認する。 |
| 押出成形 | ◎ | チューブ、ホース、電線被覆、異形押出、フィルム | 溶融粘度、冷却条件、寸法安定性を確認する。 |
| ブロー成形 | ○ | 自動車ブーツ、ダクト、蛇腹部品 | ブロー用グレードを選定し、肉厚むらとピンチオフ強度を確認する。 |
| 圧縮成形 | △ | シート、試験片、少量成形品 | 量産では射出・押出が中心である。 |
| 真空成形 | △ | 薄肉シート、カバー、試作部品 | シートグレード、加熱温度、ドローダウンを確認する。 |
| フィルム成形 | ○ | 透湿フィルム、保護フィルム、ラミネート材 | ブロッキング、巻取り、結晶化、厚み精度を確認する。 |
| 切削加工 | ○ | 試作部品、治具、シール部品 | 軟質グレードでは変形、バリ、寸法ばらつきに注意する。 |
| 溶着 | ○ | チューブ、フィルム、組立部品 | 超音波、熱板、振動、レーザー溶着はグレードと形状で確認する。 |
| 接着 | △ | 複合部品、ラミネート材 | 表面処理、接着剤、相手材との相性を確認する。 |
成形条件の目安
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 80〜120℃ | 除湿乾燥が望ましい。グレードにより条件は異なる。 |
| 乾燥時間 | 2〜5時間 | 吸湿状態、ペレット量、乾燥機性能により調整する。 |
| シリンダー温度 | 180〜250℃ | 軟質グレードは低め、高融点グレードは高めとなる。 |
| 金型温度 | 20〜80℃ | 外観、結晶化、寸法、収縮率に影響する。 |
| 成形収縮率 | 1.0〜2.5%程度 | 流動方向、肉厚、金型温度、充填材で変わる。GF強化では低くなる。 |
| 再生材使用 | 条件付きで可 | 熱履歴と吸湿により物性低下が起こるため、混合率を管理する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表は代表値・目安であり、保証値ではない。TPEEは硬度、軟質セグメント量、添加剤、強化材により物性が大きく変化する。設計では実グレードのデータシート、使用温度、荷重、薬品、湿度、寿命を確認する必要がある。
| 項目 | 単位 | 標準TPEE | 高耐熱TPEE | GF強化TPEE | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 比重・密度 | g/cm3 | 1.10〜1.25 | 1.15〜1.30 | 1.30〜1.60 | 硬度、充填材量で変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 20〜45 | 30〜55 | 50〜100 | 硬質グレードほど高い傾向がある。 |
| 伸び | % | 300〜800 | 200〜600 | 20〜200 | GF強化では低下する。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 50〜700 | 300〜1200 | 1500〜6000 | 硬度選定に重要である。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | NB〜800 | NB〜600 | 50〜300 | NBは破壊せずを示す。低温特性はグレードで確認する。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 50〜100 | 80〜160 | 120〜200 | 荷重0.45MPaまたは1.82MPaで値が異なる。 |
| 融点 | ℃ | 170〜220 | 200〜225 | 200〜225 | DSC測定値。硬質セグメントに依存する。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | −70〜−20 | −60〜−10 | −50〜0 | 軟質セグメントの種類で変わる。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜120 | 120〜150 | 120〜150 | 湿熱、荷重、油接触で低下する場合がある。 |
| 吸水率 | % | 0.2〜0.8 | 0.2〜0.7 | 0.2〜0.6 | PAより低いが、成形前乾燥は必要である。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1013〜1016 | 1013〜1016 | 1012〜1015 | 難燃剤、カーボン、吸湿で変化する。 |
| 硬度 | Shore D | 25〜75 | 40〜75 | 50〜85 | 軟質品はShore Aで表示される場合がある。 |
| 難燃性 | UL94 | HB〜V-2 | HB〜V-2 | HB〜V-0 | 難燃グレード、厚み、色で異なる。 |
| 酸素指数 | % | 20〜25程度 | 20〜26程度 | 22〜30程度 | 難燃剤配合で高くなる。 |
耐薬品性
耐薬品性は、グレード、硬度、温度、濃度、応力、接触時間、成形品の残留応力により大きく変化する。下表は常温短時間接触を中心とした目安であり、実使用では浸漬試験、応力下試験、熱老化試験を行う必要がある。
| 薬品・溶剤 | 代表例 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | △〜○ | 低濃度・常温では使える場合がある。強酸、高温、長時間では加水分解に注意する。 |
| 強酸 | 濃硫酸、濃硝酸、クロム酸 | × | 酸化劣化、加水分解、脆化の恐れがある。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | △〜× | ポリエステル結合がアルカリ加水分解を受けやすい。高温・高濃度では不適である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○ | 短時間では比較的安定な場合が多い。応力下ではクラックを確認する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 分子量、温度、接触時間により膨潤する場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | 膨潤、軟化、物性低下が起こる場合がある。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的良好な場合が多いが、長時間浸漬では膨潤を確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | △〜× | 膨潤、軟化、表面荒れが起こる場合がある。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | △〜× | SP値が近く、膨潤しやすい場合がある。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、トリクロロエチレン、クロロホルム | × | 膨潤、溶解、応力割れに注意する。 |
| 水・温水 | 水道水、温水、冷却水 | ○〜△ | 常温水は比較的安定な場合が多い。高温水、蒸気、長期接触では加水分解を確認する。 |
| 油 | 鉱油、潤滑油、グリース、作動油 | ◎〜○ | 耐油性は比較的良い。添加剤、温度、酸化劣化油では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、アルコール混合燃料 | ○〜△ | 燃料種、アルコール含有、温度、透過性を確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
TPEEのSP値(δ)は、硬質セグメントと軟質セグメントの比率、ポリエーテル系かポリエステル系か、添加剤の有無により変動する。代表的な目安として、約20〜22 MPa1/2程度で扱われることが多い。
SP値は溶解・膨潤傾向を推定するための目安であり、耐薬品性をSP値だけで判断することはできない。結晶化度、拡散速度、薬品の反応性、温度、濃度、応力、接触時間を合わせて評価する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
下表ではTPEEの代表SP値を21 MPa1/2として、代表的な溶剤とのSP値差を示す。実際の耐性は化学反応性、結晶性、温度、応力、接触時間で変わるため、必ず実グレードで確認する。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | TPEEとの差 | 評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約26.9 | ○〜△ | SP値差は大きいが、ポリエステル結合の加水分解に注意する。 |
| エタノール | 26.0 | 約5.0 | ○ | 短時間では比較的安定な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 約2.5 | ○〜△ | 応力下、長時間接触では確認する。 |
| アセトン | 20.3 | 約0.7 | △〜× | 膨潤、軟化、表面荒れに注意する。 |
| MEK | 19.0 | 約2.0 | △〜× | 溶剤接触部品には不適となる場合が多い。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約2.4 | △〜× | 膨潤や白化を確認する。 |
| トルエン | 18.2 | 約2.8 | △〜× | 芳香族溶剤では膨潤しやすい場合がある。 |
| キシレン | 18.0 | 約3.0 | △〜× | 長時間接触、応力下では避けることが望ましい。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約6.1 | ○ | 短時間では比較的安定な場合が多い。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約0.8 | × | 膨潤、溶解、応力割れに注意する。 |
| グリセリン | 33.8 | 約12.8 | ○〜△ | 高温では吸湿や加水分解条件を確認する。 |
| 鉱油 | 16〜18 | 約3〜5 | ◎〜○ | SP差だけではなく、油添加剤、温度、酸化劣化油を確認する。 |
製法
原料
代表的な原料は、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル(DMT)、1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などである。グレードにより、他のジカルボン酸、ジオール、ポリエステルジオール、安定剤、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、ガラス繊維などを用いる。
重合方法
一般には、エステル交換反応または直接エステル化反応により低分子量オリゴマーを形成し、その後、減圧下で重縮合して高分子量化する。硬質セグメントと軟質セグメントの比率を調整することで、硬度、融点、弾性率、耐熱性、低温柔軟性を制御する。
代表的な反応式
DMTを用いる場合の概略反応式:
n CH3OOC−C6H4−COOCH3 + n HO−(CH2)4−OH + m HO−[CH2CH2CH2CH2−O]k−H → TPEE + 2n CH3OH
テレフタル酸を用いる場合の概略反応式:
n HOOC−C6H4−COOH + n HO−(CH2)4−OH + m ポリエーテルジオール → TPEE + 2n H2O
ペレット化・コンパウンド
重縮合後のポリマーはストランドカット、水中カットなどでペレット化される。必要に応じて、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、潤滑剤、耐加水分解剤、ガラス繊維、無機充填材を混練してコンパウンド化する。
添加剤・強化材
難燃グレードではリン系難燃剤、臭素系難燃剤、難燃助剤などが使われる場合がある。摺動グレードでは潤滑剤やフッ素系改質剤が使われることがあるため、PFAS規制、食品接触、医療用途では添加剤の確認が重要である。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | CVJブーツ、ラックブーツ、エアダクト、チューブ、シール、ケーブル被覆、ドアラッチ部品 | 耐熱性、耐油性、屈曲疲労性、低温柔軟性に優れる。 | 熱老化、油添加剤、燃料、融雪剤、湿熱、加水分解を確認する。 |
| 電気・電子 | コネクタシール、ケーブル被覆、保護キャップ、スイッチ部品、難燃部品 | 柔軟性、電気絶縁性、耐熱性、成形性のバランスが良い。 | UL94、CTI、RoHS、REACH、難燃剤、アウトガスを確認する。 |
| 機械部品 | ギア消音材、ローラー、ベルト、ブッシュ、ダンパー、ばね部品 | 反発弾性、耐摩耗性、耐疲労性、低騒音化に有効である。 | PV値、相手材、摩耗粉、温度上昇、クリープを確認する。 |
| 医療 | チューブ、カテーテル部材、機器カバー、柔軟部品 | 柔軟性、成形性、耐薬品性を活かせる場合がある。 | 医療用グレード、生体適合性、滅菌、抽出物、薬液接触を確認する。 |
| 食品機械 | 搬送部品、シール、チューブ、ガイド、ローラー | 耐油性、柔軟性、耐摩耗性が必要な部位に使いやすい。 | 食品衛生法、FDA、洗浄薬品、温水、蒸気、加水分解を確認する。 |
| 建築・設備 | シール材、保護材、配管部品、緩衝部品、屋外設備部品 | 耐候グレードでは屋外柔軟部品に使用できる場合がある。 | 紫外線、雨水、温湿度変化、応力緩和を確認する。 |
| 日用品・スポーツ | グリップ、ゴーグルガスケット、筆記具、靴部材、保護具 | 柔軟な触感、反発弾性、耐摩耗性を付与できる。 | 肌接触、可塑剤、におい、着色、耐汗性を確認する。 |
| フィルム・シート | 透湿フィルム、ラミネート、保護フィルム、弾性シート | 柔軟性、耐屈曲性、熱融着性を活かせる。 | ブロッキング、厚み精度、熱収縮、相手材との接着性を確認する。 |
用途別選定の目安
| 用途 | 推奨されるTPEEグレード | 重視する特性 |
|---|---|---|
| ギア | 摺動、耐摩耗、硬質、高反発グレード | 摩耗、騒音、バックラッシュ、耐疲労性 |
| 軸受・ブッシュ | 摺動、潤滑剤配合、耐熱グレード | PV値、相手材、摩擦係数、熱変形 |
| チューブ | 押出、耐薬品、軟質、耐加水分解グレード | 柔軟性、耐圧、薬品、透過性、キンク性 |
| 筐体・カバー | 硬質、GF強化、難燃グレード | 剛性、寸法、UL94、反り、外観 |
| フィルム | 押出、低ゲル、ラミネート用グレード | 厚み精度、柔軟性、熱融着性、耐屈曲性 |
| コネクタ | 難燃、耐熱、シール用グレード | UL94、電気特性、圧縮永久ひずみ、耐湿熱 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 熱可塑性ポリエステルエラストマーとの違い |
|---|---|---|
| PBT | 結晶化が速く、寸法安定性、電気特性、耐薬品性に優れるポリエステル系エンプラである。 | TPEEはPBT系構造を硬質セグメントに持つが、軟質セグメントにより柔軟性とゴム弾性を示す。PBTは剛性部品向けである。 |
| PET | 透明性、機械強度、ガスバリア性、寸法安定性に優れる熱可塑性ポリエステルである。 | PETはボトル、繊維、フィルム用途に多く、TPEEは柔軟性、屈曲疲労性、耐油性を重視する用途に使われる。 |
| ポリアミド(PA) | 靭性、耐摩耗性、耐油性に優れるが吸水により寸法や物性が変化しやすい。 | TPEEはPAより吸水による寸法変化が小さい場合がある。PAは構造強度、TPEEは柔軟性と弾性回復で有利な場合がある。 |
| ナイロン66(PA66) | 耐熱性、剛性、耐摩耗性に優れる代表的なエンジニアリングプラスチックである。 | PA66は剛性と耐熱強度に優れるが、TPEEは柔軟性、低温弾性、シール性、屈曲疲労性を得やすい。 |
| POM | 低摩擦、耐摩耗性、寸法安定性、疲労特性に優れるアセタール樹脂である。 | POMは高剛性の摺動部品向けである。TPEEは柔軟な摺動・消音・緩衝部品に適する場合がある。 |
| PC | 透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れる非晶性エンプラである。 | PCは硬質透明部品に適する。TPEEはPCとの融着や二色成形に使われるグレードがあり、柔軟部を付与できる。 |
| PPS | 耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性に優れるスーパーエンプラである。 | PPSは高温・薬品環境に強いが硬質である。TPEEは柔軟性が必要な中温域部品で有利な場合がある。 |
| PE | 低比重、耐薬品性、柔軟性に優れる汎用樹脂である。 | PEは耐薬品性とコストに優れるが、TPEEは耐熱性、弾性回復、耐油性、機械強度で有利な場合がある。 |
代替材料比較の目安
| 置き換え検討 | TPEEが有利な場合 | 代替材が有利な場合 |
|---|---|---|
| TPEE vs TPU | 耐熱性、耐油性、屈曲疲労性、低吸水を重視する場合 | 耐摩耗性、接着性、透明性、ソフトな触感を重視する場合はTPUが候補となる。 |
| TPEE vs TPO | 高温、油接触、機械的強度を重視する場合 | 軽量、耐候性、低コスト、PPとの相溶性を重視する場合はTPOが候補となる。 |
| TPEE vs PA12 | 柔軟性、弾性回復、シール性を重視する場合 | 耐燃料透過性、寸法安定性、チューブ実績を重視する場合はPA12が候補となる。 |
| TPEE vs PBT | ゴム弾性、衝撃吸収、柔軟部品が必要な場合 | 剛性、寸法安定性、電装部品としての耐熱性を重視する場合はPBTが候補となる。 |
| TPEE vs 加硫ゴム | リサイクル性、射出成形、短サイクル、二色成形を重視する場合 | 圧縮永久ひずみ、耐熱寿命、耐薬品性が厳しい場合は加硫ゴムが有利な場合がある。 |
代表的なメーカー
以下はTPEEまたはコポリエステルエラストマーの代表例である。製品ライン、供給地域、グレード名、メーカー体制は変更される場合があるため、採用時には各メーカーの最新データシート、SDS、規格適合書を確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Celanese | Hytrel | コポリエステルエラストマーの代表的ブランドであり、自動車、電気電子、工業部品、フィルム、チューブ用途などに用いられる。 |
| 東洋紡エムシー | PELPRENE | 熱可塑性ポリエステルエラストマーの代表的ブランドであり、耐熱、耐油、屈曲疲労、耐摩耗用途にグレード展開がある。 |
| Envalior | Arnitel | 熱可塑性コポリエステルエラストマーのブランドであり、自動車、電気電子、消費財、フィルム用途などに展開される。 |
| 三菱ケミカルグループ | PRIMALLOY、TEFABLOCの一部グレード | 熱可塑性エラストマーを展開しており、ポリエステル系やポリエステルアロイ系の柔軟材料がある。採用時は対象グレードの樹脂系を確認する必要がある。 |
| LG Chem | KEYFLEX BT | 熱可塑性ポリエステルエラストマーのグレードを展開するメーカーであり、自動車、電気電子、工業用途に使用される。 |
| SK Chemicals | SKYPEL | コポリエステルエラストマーを展開しており、柔軟性、耐熱性、成形性を必要とする用途で使用される。 |
| Chang Chun Plastics | TPEE | 1,4-ブタンジオール、DMTまたはPTA、ポリエーテルジオールを用いたTPEE材料を展開する。 |
法規制・規格確認
| 規制・規格 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など | 難燃グレード、着色グレード、リサイクル材では個別確認が必要である。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録状況 | 添加剤、難燃剤、安定剤、摺動改質剤を確認する。 |
| 食品衛生法 | 食品接触用途への適合 | 日本国内用途ではポジティブリスト、溶出条件、使用温度を確認する。 |
| FDA | 米国食品接触用途に関する適合 | 樹脂、添加剤、着色剤、使用条件の範囲を確認する。 |
| UL94 | 燃焼性 HB、V-2、V-0など | 試験片厚み、色、グレードにより結果が異なる。 |
| 医療用途 | ISO 10993、USP Class VI、滅菌適性、抽出物 | 一般グレードを医療用途へ転用せず、医療用グレードを確認する。 |
| PFAS規制 | フッ素系摺動改質剤、PTFE、加工助剤の有無 | 摺動グレードや特殊グレードでは使用地域の規制動向を確認する。 |
| アウトガス | 揮発成分、におい、フォギング、抽出物 | 車載内装、光学、電子機器、医療用途では個別評価が必要である。 |
関連キーワード
熱可塑性ポリエステルエラストマー TPEE TPC TPC-ET TEEE コポリエステルエラストマー ポリエステル系エラストマー エンジニアリングエラストマー PBT系エラストマー PTMG 耐熱TPEE 難燃TPEE GF強化TPEE 摺動TPEE 耐加水分解TPEE 食品接触対応TPEE 自動車ブーツ材料 チューブ材料 コネクタシール 熱可塑性エラストマー