概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリフェニルサルホン |
| 略記号 | PPSU、PPSF |
| IUPAC | Poly(oxy-1,4-phenylene-1,4-phenyleneoxy-1,4-phenylenesulfonyl-1,4-phenylene) など。構造単位により表記が異なる。 |
| 英語名 | Polyphenylsulfone、Polyphenylene sulfone |
| 日本語名 | ポリフェニルサルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニルスルホン |
| 分類 | 芳香族ポリスルホン系樹脂 |
| プラスチック分類 | スーパーエンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | 代表繰返し単位:[-O-C6H4-C6H4-O-C6H4-SO2-C6H4-]n |
| CAS No. | 25608-64-4 がポリフェニルサルホンとして用いられることがある。ただしグレード、構造、供給元により確認が必要である。 |
| 構造・主成分 | 芳香環、エーテル結合、スルホン基を主鎖に持つ非晶性熱可塑性樹脂である。 |
| 主な用途 | 医療器具、滅菌対応部品、温水機器部品、食品機械部品、電気電子部品、コネクタ、ポンプ部品、配管継手、3Dプリンター用フィラメントなど。 |
ポリフェニルサルホン(PPSU)は、芳香族ポリスルホン系樹脂の中でも耐熱性、耐加水分解性、耐衝撃性に優れる非晶性スーパーエンプラである。一般にポリスルホン(PSU)やポリエーテルスルホン(PESU)と近い材料群に分類されるが、PPSUは特に靭性と耐スチーム性を重視する用途で選定されることが多い。
外観は透明から琥珀色のグレードが代表的であり、着色品や不透明グレードもある。ガラス転移温度は約220℃前後で、非晶性樹脂であるため明確な融点を持たない。高温水、蒸気滅菌、洗浄剤に接する用途に使われる一方、ケトン類、エステル類、塩素系溶剤などには膨潤、応力割れ、溶解を生じる場合がある。
実使用では、グレード、使用温度、薬品濃度、荷重、応力、接触時間、滅菌回数、成形品の残留応力を確認する必要がある。特に医療、食品接触、飲料水、電気安全用途では、FDA、食品衛生、NSF、USP、ISO 10993、RoHS、REACH、UL認証などの適合範囲を個別に確認することが重要である。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 高耐熱、高靭性、耐衝撃性、耐スチーム性、耐加水分解性、寸法安定性、難燃性、透明性に優れる。 |
| 短所 | 材料価格が高い。成形温度が高い。溶剤応力割れに注意が必要である。強酸化性薬品や一部有機溶剤には適さない場合がある。 |
| 外観 | 透明から淡黄色、琥珀色が一般的である。着色グレード、黒色グレード、不透明グレードもある。 |
| 耐熱性 | ガラス転移温度は約220℃、荷重たわみ温度は約200〜210℃が目安である。連続使用温度はグレードにより約160〜180℃程度である。 |
| 耐薬品性 | 酸、アルカリ、熱水、蒸気、洗浄剤、油類に比較的良好である。ケトン、エステル、塩素系溶剤、芳香族溶剤では注意を要する。 |
| 加工性 | 射出成形、押出成形、切削加工が可能である。高温成形が必要で、十分な乾燥と金型温度管理が重要である。 |
| 分類上の注意 | PPSUはPSU、PESUと同じポリスルホン系であるが、同一材料ではない。PPSと略されるポリフェニレンサルファイドとも異なる。 |
構造式
代表的な構造単位は、芳香環、エーテル結合、スルホン基から構成される。HTML上では次のように表記できる。
| 項目 | 構造 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | [-O-C6H4-C6H4-O-C6H4-SO2-C6H4-]n |
| モノマーまたは構成単位 | 4,4′-ビフェノール系成分と4,4′-ジハロジフェニルスルホン系成分が代表的である。 |
| 結合の特徴 | 芳香環により剛直性を持ち、エーテル結合により加工性と靭性を持つ。スルホン基により耐熱性、難燃性、極性が付与される。 |
| 共重合体・変性グレード | 透明、耐熱、難燃、食品接触、医療、耐薬品、GF強化、摺動、着色、3Dプリント用などのグレードがある。組成や添加剤はメーカー、グレードにより異なる。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用PPSU | 非強化の標準グレード | 靭性、透明性、耐熱性のバランスが良い。 | 剛性はGF強化品より低い。 | 医療器具、温水部品、食品機械部品 |
| 耐熱グレード | 高温使用向けに設計されたグレード | 高温下での寸法安定性に優れる。 | 成形条件範囲が狭い場合がある。 | 高温水部品、滅菌トレイ、電気部品 |
| 難燃グレード | UL94 V-0相当のグレードが多い | 電気電子用途に適する。 | 色調、流動性、規格適合はグレード確認が必要である。 | コネクタ、絶縁部品、筐体 |
| GF強化PPSU | ガラス繊維を配合 | 剛性、寸法安定性、荷重たわみ温度が向上する。 | 透明性は失われ、衝撃特性や外観に異方性が出る。 | 機械部品、構造部品、ポンプ部品 |
| 摺動グレード | PTFE、潤滑剤、カーボン系充填材などを配合する場合がある | 摩擦摩耗特性を改善しやすい。 | 食品・医療適合や摩耗粉の確認が必要である。 | 軸受、ギア、摺動部品 |
| 食品接触グレード | 食品接触規制に配慮したグレード | 熱水、蒸気、洗浄剤用途に使いやすい。 | 国・地域・用途ごとの適合確認が必要である。 | 食品機械、飲料水部品、哺乳びん関連部品 |
| 医療グレード | 生体適合性、滅菌性を重視したグレード | 蒸気滅菌、薬液洗浄、耐衝撃用途に適する。 | 長期体内埋植などは通常、個別承認と評価が必要である。 | 手術器具、滅菌ケース、歯科器具、医療機器部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 代表的な加工方法である。乾燥、樹脂温度、金型温度、滞留時間管理が重要である。 |
| 押出成形 | ○ | シート、ロッド、チューブ、フィラメントなどに用いられる。高温対応設備が必要である。 |
| ブロー成形 | △ | 可能な場合もあるが、一般用途では限定的である。グレードと設備の確認が必要である。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、素材成形などで行われる場合がある。量産成形では射出成形が一般的である。 |
| 真空成形 | △ | シート成形で検討されることがある。加熱条件と残留応力に注意する。 |
| 切削加工 | ◎ | 丸棒、板材から精密部品加工が可能である。発熱、バリ、寸法変化に注意する。 |
| 3Dプリント | ○ | FFF/FDM用フィラメントがある。高温ノズル、高温チャンバー、乾燥管理が必要である。 |
| 溶着・接着 | △ | 超音波溶着や熱溶着は形状により可能である。接着は表面処理や接着剤選定が必要である。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 140〜160℃ | 3〜5時間程度が目安である。吸湿状態により調整する。 |
| シリンダー温度 | 340〜390℃ | グレード、成形機、滞留時間により調整する。 |
| 金型温度 | 140〜180℃ | 外観、寸法、残留応力、ウェルド強度に影響する。 |
| 成形収縮率 | 0.5〜0.8%程度 | 非強化品の目安である。GF強化品では流動方向と直角方向で異なる。 |
| 注意点 | 熱劣化、銀条、ボイド、残留応力 | 高温成形のため、滞留、過乾燥、せん断発熱、金型温度不足に注意する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 非強化PPSU | GF強化PPSU | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.29〜1.31 | 1.45〜1.55 | GF量により増加する。 |
| 引張強さ | MPa | 65〜80 | 100〜140 | 乾燥状態、温度、試験片形状により変動する。 |
| 伸び | % | 40〜100以上 | 2〜5 | 非強化品は高靭性である。GF強化品は伸びが低下する。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.2〜2.6 | 6〜10 | GF強化により大きく向上する。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | ノッチ付き 600〜900程度 | 80〜150程度 | PPSUはポリスルホン系の中でも衝撃に強い。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 200〜210 | 210〜220 | 1.8MPa目安。グレードにより異なる。 |
| 融点 | ℃ | なし | なし | 非晶性樹脂であり、明確な融点を持たない。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約220 | 約220 | Tgの代表値である。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 160〜180 | 160〜180 | 荷重、雰囲気、寿命設計により確認が必要である。 |
| 吸水率 | % | 0.3〜0.4 | 0.2〜0.3 | 24時間浸漬の目安。PAより低いが寸法用途では考慮する。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015〜1016 | 1014〜1016 | 充填材、吸湿、温度により変動する。 |
| 難燃性 | – | UL94 V-0相当グレードあり | UL94 V-0相当グレードあり | 厚み、色、グレード、認証番号の確認が必要である。 |
| 酸素指数 | % | 約35〜40 | 約35〜40 | 代表値であり、配合により異なる。 |
耐薬品性
PPSUは一般に水、温水、蒸気、洗浄剤、希酸、弱アルカリ、油類に良好な耐性を示す。一方、SP値が近い溶剤、極性溶剤、塩素系溶剤、ケトン、エステル、芳香族溶剤では膨潤、軟化、応力割れを起こす場合がある。実使用では濃度、温度、応力、接触時間、洗浄サイクルを確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、酢酸 | ○ | 希酸には比較的良好である。濃酸、強酸化性酸では確認が必要である。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、洗浄用アルカリ | ○ | 低〜中濃度では比較的良好である。高温高濃度では劣化確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | エタノール、IPA、メタノール | ○ | 短時間接触では概ね良好である。応力下では確認が必要である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、MMB、ベンジルアルコール | ○〜△ | 種類により差がある。高温、長時間では膨潤に注意する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン | △〜× | 膨潤、応力割れの可能性がある。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的安定な場合が多いが、添加剤や応力条件により確認する。 |
| ケトン | アセトン、MEK、シクロペンタノン | × | 溶解、膨潤、応力割れを生じやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン | △〜× | 条件により膨潤、軟化、溶解を生じる。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 多くの場合不適である。応力割れに注意する。 |
| 水・温水 | 水、温水、熱水 | ◎ | 耐加水分解性に優れる。長期高温水ではグレード確認が必要である。 |
| 蒸気 | オートクレーブ、スチーム滅菌 | ◎ | 繰返し滅菌用途に使われる。回数、温度、薬液併用条件を確認する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、シリコーン油 | ○ | 一般に良好であるが、添加剤入り油では確認が必要である。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、アルコール混合燃料 | △〜○ | 燃料組成、温度、応力、長期接触により評価が変わる。 |
SP値(溶解度パラメータ)
PPSUの代表的なSP値(δ)は、20〜22 MPa1/2程度が目安である。文献、推算法、グレードにより差があり、充填材や添加剤を含む場合は見かけの耐溶剤性も変化する。
SP値は溶解、膨潤、応力割れの目安として有用であるが、耐薬品性はSP値だけでは判断できない。結晶性の有無、分子量、温度、濃度、成形残留応力、荷重、接触時間、薬品の反応性を併せて評価する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | PPSUとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 約26〜28 | ◎ | SP値差は大きい。PPSUは熱水、蒸気に比較的強い。 |
| エタノール | 26.0 | 約4〜6 | ○ | 短時間では概ね良好である。応力下では確認する。 |
| IPA | 23.5 | 約2〜4 | ○〜△ | 消毒、洗浄用途では接触時間と応力を確認する。 |
| アセトン | 20.3 | 約0〜2 | × | 膨潤、軟化、応力割れを生じやすい。 |
| MEK | 19.0 | 約1〜3 | × | 一般に不適である。 |
| トルエン | 18.2 | 約2〜4 | △〜× | 応力割れに注意する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約2〜4 | △〜× | 膨潤、表面荒れを確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 約6〜8 | ○ | 脂肪族炭化水素には比較的安定な場合が多い。 |
| ジクロロメタン | 19.8 | 約0〜2 | × | 塩素系溶剤は一般に不適である。 |
| グリセリン | 33.8 | 約12〜14 | ○ | 高温長時間では実液評価が必要である。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。上記は代表値による目安であり、実使用ではグレード、温度、濃度、応力、使用時間で確認する。
製法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | 4,4′-ビフェノール系化合物、4,4′-ジクロロジフェニルスルホン系化合物、アルカリ金属炭酸塩、極性高沸点溶媒などが用いられる。 |
| 重合方法 | 芳香族求核置換反応による縮合重合が代表的である。フェノキシドを形成し、活性化芳香族ハライドと反応させてエーテル結合を形成する。 |
| 代表的な反応式 | n HO-C6H4-C6H4-OH + n Cl-C6H4-SO2-C6H4-Cl + n K2CO3 → [-O-C6H4-C6H4-O-C6H4-SO2-C6H4-]n + 2n KCl + n CO2 + n H2O |
| ペレット化 | 重合後、精製、溶媒除去、乾燥、押出造粒によりペレット化される。異物、残留溶媒、熱履歴の管理が重要である。 |
| コンパウンド | 用途に応じてガラス繊維、炭素繊維、PTFE、潤滑剤、着色剤、安定剤、難燃助剤などを配合する場合がある。 |
| 注意点 | 医療、食品、水接触用途では、添加剤、着色剤、抽出物、規格適合範囲の確認が必要である。 |
詳細な利用用途
| 用途分野 | 具体例 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 冷却水部品、センサー部品、燃料周辺部品、電装部品 | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性が必要な部位に適する。 | 燃料、LLC、油、応力下での長期評価が必要である。 |
| 電気・電子 | コネクタ、絶縁部品、スイッチ部品、耐熱筐体 | 難燃性、耐熱性、電気絶縁性に優れる。 | UL認証、トラッキング性、薄肉流動性を確認する。 |
| 機械部品 | ギア、軸受、ポンプ部品、バルブ部品、インペラ | 高温下での強度、耐衝撃性、耐薬品性を活かせる。 | 摺動摩耗、クリープ、寸法公差を確認する。 |
| 医療 | 滅菌ケース、手術器具ハンドル、歯科器具、内視鏡部品 | 蒸気滅菌、薬液洗浄、耐衝撃性に優れる。 | USP、ISO 10993、FDA、滅菌回数、薬液適合性を確認する。 |
| 食品機械 | トレー、継手、ノズル、熱水洗浄部品、飲料水部品 | 熱水、蒸気、洗浄剤への耐性が期待できる。 | 食品接触規制、着色剤、抽出試験、洗浄薬品を確認する。 |
| 建築・設備 | 温水配管部品、給湯部品、バルブ、継手 | 耐熱水性、耐加水分解性、寸法安定性に優れる。 | 水質、塩素、圧力、温度サイクルを確認する。 |
| 航空・産業機器 | 軽量耐熱部品、絶縁部品、薬液処理部品 | 高耐熱、難燃、耐薬品を同時に求める用途に適する。 | 規格、燃焼性、アウトガス、長期耐久性を確認する。 |
| 3Dプリント | 治具、少量生産部品、耐熱試作品、低量産金型 | 高耐熱樹脂として造形できる。 | 反り、層間強度、乾燥、チャンバー温度、後処理を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PPSUとの違い |
|---|---|---|
| PSU | 透明なポリスルホン系樹脂。耐熱性、寸法安定性が良い。 | PPSUの方が一般に耐衝撃性、耐薬品性、耐スチーム性に優れるが、価格は高い傾向がある。 |
| PESU | 耐熱性の高いポリエーテルスルホン。 | PESUは高耐熱で剛性が高い。PPSUは靭性と耐スチーム性で選ばれることが多い。 |
| PEEK | 結晶性の最高級スーパーエンプラ。耐薬品性、耐摩耗性が高い。 | PEEKは耐薬品性、耐疲労、耐摩耗に優れる。PPSUは透明性、靭性、成形性、蒸気滅菌用途で使いやすい場合がある。 |
| PEI | 透明耐熱樹脂。高剛性、難燃性に優れる。 | PEIは剛性と耐熱性に優れる。PPSUは耐衝撃性、耐加水分解性、薬液洗浄性で有利な場合がある。 |
| PPS | 結晶性樹脂。耐薬品性、寸法安定性、難燃性に優れる。 | PPSは耐薬品性と剛性に優れるが、PPSUのような透明性や高靭性は得にくい。 |
| PC | 透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れるエンプラ。 | PCは価格と加工性で有利だが、PPSUは耐熱性、耐スチーム性、耐薬品性で優れる。 |
| PA66 | 強度、耐摩耗、コストバランスに優れる結晶性エンプラ。 | PA66は吸水による寸法変化が大きい。PPSUは吸水が比較的少なく、高温水・蒸気用途で選定されやすい。 |
| PTFE | 極めて優れた耐薬品性、低摩擦性を持つフッ素樹脂。 | PTFEは耐薬品性と摺動性に優れるが、機械強度と成形自由度ではPPSUが有利な場合がある。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Syensqo | Radel PPSU | ポリスルホン系高性能樹脂の代表的な供給メーカーである。医療、食品接触、温水、工業用途向けのPPSUグレードを展開している。 |
| BASF | Ultrason P | ポリスルホン系樹脂Ultrasonシリーズの一つとしてPPSUを展開している。耐熱、食品接触、医療、電気電子用途で使われる。 |
| Röchling | SUSTASON PPSU、医療用PPSU素材など | 板材、丸棒、切削加工用素材、医療グレード素材を扱う代表的なエンジニアリングプラスチック素材メーカーである。 |
| Ensinger | TECAPASON P | PPSUの切削加工用素材を供給するメーカーである。医療、食品、機械部品用途の素材がある。 |
| 三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ | Ketron、Duratron系の高機能樹脂素材群の中でPPSU素材を扱う場合がある | 高機能樹脂の素材、加工品を扱うメーカーである。PPSUの取扱いは地域、時期、グレードにより確認が必要である。 |
代表グレード
| グレード区分 | 特徴 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用 | 透明性、靭性、耐熱性の標準バランス品 | 機械部品、医療器具、温水部品 | 成形残留応力と薬品接触を確認する。 |
| 耐熱 | 高温使用、高温水、蒸気環境向け | 滅菌部品、給湯部品、耐熱部品 | 連続使用温度は荷重と寿命で評価する。 |
| 難燃 | UL94 V-0相当のグレードが多い | 電気電子部品、コネクタ、筐体 | 厚み、色、認証番号を確認する。 |
| GF強化 | ガラス繊維で剛性と寸法安定性を向上 | 構造部品、ポンプ部品、支持部品 | 異方性、ウェルド強度、外観に注意する。 |
| 摺動 | 摩擦摩耗特性を改善したグレード | ギア、軸受、摺動部品 | 相手材、潤滑条件、摩耗粉を確認する。 |
| 食品接触 | 食品接触規制に対応するグレード | 食品機械、飲料水、熱水洗浄部品 | 国・地域・用途ごとに適合証明を確認する。 |
| 医療 | 滅菌性、生体適合性、トレーサビリティを重視 | 手術器具、滅菌ケース、歯科部品 | 最終医療機器での評価、規格、滅菌方法を確認する。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 備考 |
|---|---|---|
| RoHS | 鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、特定臭素系難燃剤、フタル酸エステルなど | 樹脂単体だけでなく着色剤、添加剤、再生材の有無を確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、登録・届出対象 | 最新版の適合証明をメーカーまたは商社から入手する。 |
| 食品衛生 | 食品接触材、溶出、抽出、国別規制 | 日本、EU、米国などで要求が異なる。用途と接触条件を確認する。 |
| FDA | 食品接触用途、医療関連用途の適合範囲 | グレード別の適合範囲と最終製品評価が必要である。 |
| 医療用途 | USP Class VI、ISO 10993、滅菌適性、抽出物 | 長期体内埋植用途は通常、別途厳格な評価が必要である。 |
| 難燃性 | UL94、酸素指数、電気安全規格 | 厚み、色、登録グレード、認証ファイルを確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨されるグレード傾向 | 選定ポイント |
|---|---|---|
| ギア | 摺動グレード、GF強化グレード | 摩耗、相手材、潤滑、騒音、クリープを確認する。 |
| 軸受 | 摺動グレード | PV値、摩擦係数、摩耗粉、熱膨張を確認する。 |
| チューブ | 押出グレード、食品・医療グレード | 曲げ、圧力、薬液、抽出物、透明性を確認する。 |
| 筐体 | 難燃グレード、耐熱グレード | UL94、衝撃、寸法、外観、電気絶縁性を確認する。 |
| フィルム・シート | 押出グレード | 厚み精度、残留応力、透明性、耐熱変形を確認する。 |
| コネクタ | 難燃グレード、GF強化グレード | 薄肉流動性、反り、耐熱、絶縁性、UL認証を確認する。 |
| 滅菌器具 | 医療グレード、耐スチームグレード | 滅菌回数、薬液、変色、衝撃、規格適合を確認する。 |
注意点
- PPSUは耐加水分解性に優れるが、すべての高温水、蒸気、薬液に無条件で耐えるわけではない。
- ケトン、エステル、塩素系溶剤、芳香族溶剤では、膨潤、軟化、応力割れが発生する場合がある。
- 高温成形材料であるため、乾燥不足、過度な滞留、金型温度不足により外観不良や物性低下が起こることがある。
- 非晶性樹脂であり、成形残留応力が耐薬品性に影響する。必要に応じてアニール処理や設計応力の低減を検討する。
- 吸水率はPAほど高くないが、寸法精度、電気特性、成形外観を重視する用途では乾燥と保管管理が必要である。
- 医療、食品、水接触用途では、グレード名だけで判断せず、適合証明、抽出データ、滅菌条件、最終製品評価を確認する。
- アウトガス、抽出物、イオン性不純物が問題となる精密機器用途では、専用グレードと実機評価が必要である。
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