エチレン・酢酸ビニル共重合体

概要

材料名エチレン・酢酸ビニル共重合体
略記号EVA
英語名Ethylene Vinyl Acetate Copolymer
分類オレフィン系共重合体、熱可塑性樹脂
構造・主成分エチレンと酢酸ビニルの共重合体
主な用途フィルム、ホットメルト、発泡体、太陽電池封止材、接着剤

エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体である。透明性、柔軟性、低温特性、接着性が良い。VA量で物性が変わる。

材料選定では、耐熱性と耐油性は限定的、有機溶剤で膨潤しやすい。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。

特徴

  • 透明性、柔軟性、低温特性、接着性が良い。VA量で物性が変わる
  •  性質は、内部可塑化ポリエチレンともいわれ、大きい反発性を有する無色透明のゴム状物質である。
  • 耐候性、低温可塑性を有しており、-50℃まで可撓性がある。
  • 加硫を要しないゴムである。
  • 酢酸ビニル含量が増えるとゴム状になり、軟化点が低く、熱接着力が大きく、耐溶剤性がなくなる。
  • トルエン、ベンゼン、トリクロロエチレン、THFに溶解するが、メチルエチルケトン、塩化メチレン、アセトン、酸、アルコール、、水などには不溶である。
  • 耐熱性と耐油性は限定的。
  • 耐オゾン性、水・紫外線によく耐える。
  • 成形加工性にすぐれ、耐候性、耐ストレスクラック性にすぐれている。
  • 他のプラスチックとブレンドすると成形時の流動性、低温下の耐衝撃性を向上させるのに効果的である。
  • グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
  • 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
長所
  • 透明性、柔軟性、低温特性、接着性が良い。VA量で物性が変わる
  • 用途に応じたグレード展開がある。
  • 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
  • 耐熱性と耐油性は限定的、有機溶剤で膨潤しやすい
  • 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
  • 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工

エチレン・酢酸ビニル共重合体の加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。

プラスチック、ポリマー

加工方法適性主な製品例
射出成形グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する
押出成形シート、フィルム、チューブ、板材に使用する
圧縮・注型・硬化成形△〜◎熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる
切削加工丸棒、板材、試作部品、治具に使用する

構造式

エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂

PE主鎖に酢酸ビニル単位を含むランダム共重合構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。

種類

標準グレード
名称標準エチレン・酢酸ビニル共重合体
構成エチレンと酢酸ビニルの共重合体
特徴透明性、柔軟性、低温特性、接着性が良い。VA量で物性が変わる
主な用途フィルム、ホットメルト、発泡体、太陽電池封止材、接着剤
特徴
  • 標準的な物性バランスを持つ。
  • 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
名称強化・改質エチレン・酢酸ビニル共重合体
構成ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード
特徴剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する
主な用途電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材
特徴
  • 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
  • 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位標準
比重0.92~0.95
引張強さMPa5~26
引張伸び%650~1,000
アイゾット衝撃強さ
(ノッチ付き)
J/m破壊せず
シェア硬さD30~95
荷重たわみ温度
(0.45MPa)
60~64
体積固有抵抗Ω・cm1.5×108
誘電率(60Hz)2.5×3.2
透明性透明

VAの種類と性質

性質単位EVA含量
40%
EVA含量
33%
EVA含量
28%
EVA含量
18%
引張強さMPa571420
引張伸び%1,300700750850
硬さ(JIS)40687792
軟化点59616987
メルトインデックスg/10min5525152.5

耐薬品性

水・アルコールは比較的良好。炭化水素、油、芳香族溶剤で膨潤。

薬品・溶剤耐性備考
多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する
△〜○強酸では劣化する材料がある
アルカリ△〜○ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する
アルコール○〜△応力クラックや膨潤は材料により異なる
ケトン△〜×非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する
芳香族溶剤△〜×膨潤、白化、クラックの可能性がある
油・燃料○〜△ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

エチレン・酢酸ビニル共重合体のSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。

材料SP値(δ)特徴
LDPE約16〜17 MPa1/2非極性ポリエチレンであり耐水性と柔軟性に優れる
EVA(VA 5〜10%)約17〜18 MPa1/2PEに近い特性を持つ低極性EVAである
EVA(VA 15〜25%)約18〜20 MPa1/2柔軟性、接着性、透明性のバランスが良い
EVA(VA 30〜40%)約19〜21 MPa1/2高極性で接着性や柔軟性が高い
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶媒・薬品SP値(δ)
MPa1/2
耐性備考
47.9耐水性は良好である
熱水47.9高温長期では劣化する場合がある
エタノール26.0アルコールには比較的強い
IPA23.5一般的な洗浄用途で安定である
メタノール29.7○〜◎短期では安定である
アセトン19.9VA含有量が高いほど膨潤しやすい
MEK19.0△〜×膨潤や軟化を起こしやすい
酢酸エチル18.6△〜×高VAグレードでは影響が大きい
THF18.5×強い膨潤や溶解を起こす場合がある
クロロホルム19.0×塩素系溶剤で強く膨潤する
ジクロロメタン20.2×高VAグレードでは溶解しやすい
トルエン18.2△〜×芳香族溶剤で膨潤しやすい
キシレン18.0△〜×高温では大きく軟化する場合がある
ヘキサン14.9○〜◎低VAグレードでは比較的安定である
ガソリン15〜18程度△〜○低VAでは安定だが高VAでは膨潤しやすい
鉱物油15〜17程度条件によって膨潤する
フェノール24〜25×高極性芳香族化合物には弱い
希酸一般的には安定である
濃硫酸高極性×分解や炭化の可能性がある
弱アルカリ○〜◎比較的安定である
強アルカリ酢酸ビニル部位の加水分解に注意する
次亜塩素酸ナトリウム酸化劣化する場合がある
過酸化水素高濃度では酸化劣化に注意する

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

実務上の注意
  • SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
  • 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
  • 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。

製法

エチレンと酢酸ビニルを高圧ラジカル共重合する。

詳細な利用用途

代表用途
  • フィルム
  • ホットメルト
  • 発泡体
  • 太陽電池封止材
  • 接着剤
工業用途
  • 電気電子部品
  • 自動車部品
  • 機械部品
  • 耐熱・耐薬品部材
  • フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
PVCエチレン・酢酸ビニル共重合体はPVCとは耐熱性、成形性、耐薬品性、価格帯が異なる難燃・低コストならPVC、高機能用途なら対象材料を検討する
PCPCは透明性と耐衝撃性に優れる透明防護用途ではPC、高耐薬品・高耐熱用途では他材料を検討する
PBTPBTは成形性と電気特性に優れる電装部品ではPBT、より高耐熱用途ではスーパーエンプラを選ぶ
PEEKPEEKは高耐熱・高耐薬品の代表材料である最高性能が必要ならPEEK、コスト重視なら汎用エンプラを検討する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
三井・ダウ代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
東ソー代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
住友化学代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Celanese代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
ExxonMobil代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
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