概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | バイオポリプロピレン |
| 略記号 | Bio-PP、バイオPP、bPP |
| IUPAC | poly(propene) |
| 英語名 | Bio-based Polypropylene、Bio-polypropylene、Biomass Polypropylene |
| 日本語名 | バイオポリプロピレン、バイオマスポリプロピレン、植物由来ポリプロピレン、バイオPP |
| 分類 | バイオマスプラスチック、熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、ポリオレフィン系樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック |
| 化学式または代表構造 | (C3H6)n、構造単位:−CH2−CH(CH3)− |
| CAS No. | 9003-07-0(ポリプロピレンとして) |
| 構造・主成分 | バイオマス由来原料から得られるプロピレンを重合したポリプロピレンである。主鎖構造は石油由来PPと基本的に同一である。 |
| 主な用途 | 食品容器、包装材、自動車部品、日用品、家電部品、繊維、不織布、フィルム、射出成形品、環境配慮型製品 |
バイオポリプロピレンは、植物油、廃食油、バイオナフサ、バイオエタノールなどの再生可能資源を原料として製造されるポリプロピレンである。一般に、分子構造そのものは通常のポリプロピレン(PP)と同じであり、物性、成形性、耐薬品性、リサイクル性も石油由来PPに近い。
バイオポリプロピレンは、植物由来成分を含むため環境配慮材料として扱われるが、生分解性プラスチックではない。生分解性を主目的とするポリ乳酸(PLA)などとは分類上区別する必要がある。
材料選定では、バイオマス度、マスバランス方式か物理的分離方式か、認証制度、食品接触適合性、成形グレード、耐熱性、添加剤、着色剤、リサイクル方針を確認する必要がある。実使用ではグレード、温度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間を確認したうえで採用する。
特徴
長所
- 石油由来PPと同等に近い軽量性、耐薬品性、成形加工性を持つ。
- 密度が低く、金属、ガラス、一部エンプラの軽量代替に使いやすい。
- 酸、アルカリ、アルコール類、水、油に対して比較的安定である。
- 射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム、不織布など幅広い加工に対応しやすい。
- 既存のPP成形設備、金型、リサイクル工程に適用しやすい場合が多い。
- バイオマス由来原料を用いることで、化石資源依存や温室効果ガス排出量の低減に寄与する場合がある。
短所
- 耐熱性は汎用PPの範囲であり、PBT、PA、PPS、PEEKなどのエンプラほど高くない。
- 芳香族炭化水素、塩素系溶剤、ガソリン、鉱物油、強酸化剤では膨潤、軟化、劣化が起こる場合がある。
- 低温衝撃性はグレードにより不足する場合がある。
- 表面エネルギーが低く、接着、塗装、印刷にはコロナ処理、プラズマ処理、プライマーが必要になる場合がある。
- 紫外線、熱酸化、銅害などにより劣化する場合があり、屋外用途では耐候安定剤の検討が必要である。
- バイオマス由来であっても、生分解性を持つとは限らない。
外観
自然色は半透明から乳白色である。結晶性樹脂であるため、肉厚、冷却条件、結晶化度、添加剤、充填材により透明性、白濁、光沢が変化する。着色グレード、タルク充填グレード、ガラス繊維強化グレードでは外観が大きく異なる。
耐熱性
融点は一般に約160〜170℃であり、連続使用温度は無負荷または低負荷条件で約80〜110℃程度が目安である。荷重たわみ温度はグレード、結晶化度、充填材、測定荷重により大きく変わる。耐熱用途では、ホモPP、ブロック共重合PP、ランダム共重合PP、タルク充填、GF強化、耐熱安定化グレードを区別して評価する。
耐薬品性
酸、アルカリ、アルコール、水、油に対しては比較的良好である。一方で、トルエン、キシレン、ガソリン、灯油、塩素系溶剤など、SP値が近く非極性の溶剤では膨潤や軟化が生じやすい。耐薬品性は温度、濃度、応力、接触時間、成形ひずみ、添加剤に左右される。
加工性
通常のPPと同様に、射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形、繊維、不織布加工に適する。吸水性が低いため、通常はPAやPETのような厳密な予備乾燥を必要としないが、保管環境、マスターバッチ、充填材、再生材混合時には乾燥が必要になる場合がある。
分類上の注意
- バイオポリプロピレンは、主に原料由来による分類である。
- 生分解性プラスチックとは限らず、通常は環境中で容易に分解しない。
- バイオマス度はグレード、供給方式、認証方式により異なる。
- マスバランス方式では、製品分子中の全炭素が物理的にバイオ由来とは限らない場合がある。
- 材料名だけでは機械物性や耐熱性は特定できないため、ホモPP、ランダム共重合PP、ブロック共重合PP、充填材、添加剤を確認する必要がある。
構造式
化学式の画像
構造式画像を掲載する場合は、白黒表示で、フォントはMS Pゴシックを目安とする。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | −CH2−CH(CH3)− |
| 繰り返し単位の化学式 | (C3H6)n |
| モノマー | プロピレン、CH2=CH−CH3 |
| 代表構造 | [−CH2−CH(CH3)−]n |
| 立体規則性 | 実用グレードは一般にアイソタクチックポリプロピレン(i-PP)を主体とする。 |
| 共重合体 | エチレンを少量共重合したランダム共重合PP、ブロック共重合PPがある。透明性、耐衝撃性、低温特性、ヒートシール性を調整できる。 |
| 変性グレード | 無水マレイン酸変性PP、タルク充填PP、GF強化PP、難燃PP、摺動PP、耐候PP、食品接触グレードなどがある。 |
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| バイオPPホモポリマー | プロピレン単独重合体。結晶性が高い。 | 剛性、耐熱性、耐薬品性が良い。 | 低温衝撃性は不足する場合がある。 | 食品容器、キャップ、日用品、射出成形部品 |
| バイオPPランダム共重合体 | プロピレンにエチレンなどを少量共重合したグレード。 | 透明性、柔軟性、ヒートシール性に優れる場合がある。 | ホモPPより剛性や耐熱性が低い場合がある。 | 透明容器、フィルム、医療容器、包装材 |
| バイオPPブロック共重合体 | PP相とエチレン・プロピレンゴム相を持つ耐衝撃グレード。 | 耐衝撃性、低温特性が良い。 | 透明性や剛性はホモPPより低下しやすい。 | 自動車部品、家電部品、工具箱、コンテナ |
| タルク充填バイオPP | PPにタルクを配合した寸法安定グレード。 | 剛性、寸法安定性、HDTが向上する。 | 比重が上がり、衝撃性が低下する場合がある。 | 自動車内装、家電筐体、構造部材 |
| GF強化バイオPP | ガラス繊維を配合した強化グレード。 | 剛性、強度、耐熱性が大きく向上する。 | 成形収縮の異方性、外観、摩耗、金型摩耗に注意が必要である。 | 機械部品、ブラケット、電装部品、構造部品 |
| 難燃バイオPP | 難燃剤を配合したグレード。 | 電気・電子部品で使いやすい。 | 耐熱性、機械物性、成形性、環境規制適合性を確認する必要がある。 | 電装筐体、端子台、家電部品 |
| 摺動バイオPP | 潤滑剤、シリコーン、PTFE、無機フィラーなどを配合したグレード。 | 摩擦係数、耐摩耗性を改善できる。 | 添加剤のブリード、食品接触、接着性に注意が必要である。 | ヒンジ、スライダー、ローラー、簡易軸受 |
| 食品接触バイオPP | 食品容器、包装材向けに管理されたグレード。 | 軽量で耐水性、耐油性、耐熱性のバランスが良い。 | 法規制、溶出、添加剤、着色剤、使用温度を確認する必要がある。 | 食品容器、キャップ、包装フィルム、トレー |
成形加工
| 成形加工法 | 適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 最も一般的である。日用品、自動車部品、容器、家電部品に適する。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、フィルム、パイプ、異形押出に適する。MFR選定が重要である。 |
| ブロー成形 | ○ | ボトル、容器に使用される。溶融張力の高いグレードが適する。 |
| 圧縮成形 | △ | 板材、試験片、複合材用途で使われる場合があるが、量産では射出・押出が多い。 |
| 真空成形 | ○ | シートグレードで可能である。結晶化、加熱むら、収縮に注意する。 |
| 熱成形 | ○ | 食品トレー、容器に使用される。温度制御幅はPS、PET系より狭い場合がある。 |
| インフレーションフィルム | ○ | 包装材に使用される。グレードにより透明性、剛性、ヒートシール性が異なる。 |
| Tダイフィルム | ◎ | CPPフィルム、シート用途に適する。 |
| 繊維・不織布 | ◎ | スパンボンド、メルトブロー、不織布用途に使用される。 |
| 発泡成形 | ○ | 高溶融張力PPや改質グレードが使われる。発泡倍率、気泡安定性に注意する。 |
| 切削加工 | ○ | 試作、治具、板材加工に可能である。熱膨張、バリ、寸法変化に注意する。 |
| 接着 | △ | 表面エネルギーが低く、表面処理や専用接着剤が必要になる。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、超音波、振動、レーザー溶着に対応できる場合がある。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 予備乾燥 | 通常不要、必要時は60〜80℃で1〜3時間 | 吸湿性は低いが、結露、充填材、マスターバッチ、再生材使用時は乾燥を検討する。 |
| シリンダー温度 | 180〜240℃ | 高流動グレード、GF強化、難燃グレードでは推奨条件を確認する。 |
| 金型温度 | 20〜60℃ | 外観、結晶化、寸法安定性、収縮率に影響する。 |
| 樹脂温度 | 約200〜240℃ | 過度な高温滞留では熱酸化、変色、臭気、分子量低下に注意する。 |
| 成形収縮率 | 約1.0〜2.5% | ホモPPは大きめで、タルク充填やGF強化では小さくなる。繊維強化品は異方性が出やすい。 |
| 金型設計 | 肉厚均一、十分な冷却、適切なゲート設計 | 反り、ヒケ、結晶化収縮、ウェルド強度を考慮する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | バイオPP ホモ | バイオPP ブロック共重合 | タルク充填バイオPP | GF30%強化バイオPP | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 0.90〜0.91 | 0.90〜0.91 | 1.00〜1.15 | 1.10〜1.25 | 充填材により上昇する。 |
| 引張強さ | MPa | 30〜40 | 22〜35 | 25〜40 | 60〜100 | グレード、試験速度、温度により変動する。 |
| 伸び | % | 50〜500以上 | 100〜500以上 | 5〜100 | 2〜5 | 充填・強化材で低下しやすい。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 1200〜1800 | 900〜1500 | 2000〜3500 | 4500〜8000 | GF、タルクで大きく向上する。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 2〜8 | 8〜40 | 2〜10 | 5〜20 | ノッチ付き、23℃の目安である。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 80〜110 | 70〜100 | 100〜140 | 130〜160 | 荷重0.45MPaまたは1.8MPaで値が異なる。 |
| 融点 | ℃ | 160〜170 | 150〜165 | 160〜170 | 160〜170 | 共重合成分により低下する場合がある。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約−10 | 約−10 | 約−10 | 約−10 | 実用上は結晶相の融点とHDTが重要である。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80〜110 | 80〜100 | 90〜120 | 100〜130 | 荷重、空気中、水中、薬品接触により変わる。 |
| 吸水率 | % | 0.01〜0.03 | 0.01〜0.03 | 0.01〜0.05 | 0.02〜0.08 | PA、PBT、PET、PUに比べて吸水の影響は小さい。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1016以上 | 1016以上 | 1014〜1016 | 1013〜1016 | 帯電しやすいため静電気対策が必要な場合がある。 |
| 酸素指数 | % | 17〜18 | 17〜18 | 17〜20 | 17〜21 | 一般に燃えやすい。難燃用途では難燃グレードを使用する。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当 | HB相当 | HB相当 | HB〜V-0 | V-0は難燃処方グレードの場合である。 |
上記は代表値の目安であり、バイオマス由来原料を使用していても、最終物性はPPの種類、分子量、MFR、立体規則性、共重合成分、充填材、添加剤、成形条件により変化する。
耐薬品性
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、酢酸、リン酸 | ◎ | 常温・低濃度では良好である。強酸化性酸では注意が必要である。 |
| 酸化性酸 | 濃硝酸、発煙硝酸、クロム酸混液 | × | 酸化劣化、脆化、変色が起こる場合がある。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、KOH、水酸化カリウム、アンモニア水 | ◎ | 一般にアルカリには強い。高温・高濃度では確認が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎ | 常温では比較的安定である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○ | 多くは使用可能であるが、温度、添加剤、応力を確認する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | 膨潤、軟化が起こりやすい。高温では不適となる場合が多い。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | △ | 短時間接触では使用できる場合があるが、膨潤に注意する。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油 | △ | 膨潤や寸法変化が起こる場合がある。燃料系用途では専用評価が必要である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○〜△ | 常温短時間では比較的安定な場合があるが、応力割れ、膨潤を確認する。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | △ | グレードと温度により膨潤、軟化が起こる場合がある。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤、軟化、溶剤浸透が起こりやすい。 |
| 水・温水 | 水、温水、食塩水 | ◎ | 吸水が小さく、常温水では安定である。高温水、蒸気、長期荷重では確認する。 |
| 油 | 植物油、動物油、潤滑油 | ○〜△ | 常温では比較的使用されるが、鉱物油や高温油では膨潤を確認する。 |
| 界面活性剤 | 非イオン、アニオン、カチオン系洗剤 | ○ | 多くは使用可能であるが、高温・高濃度・応力下では確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
バイオポリプロピレンの代表的なSP値(δ)は、約16〜18 MPa1/2である。一般にPPの代表値として約16.0〜17.5 MPa1/2が使われることが多い。
SP値は溶解・膨潤傾向を推定する目安であり、耐薬品性を単独で判断するものではない。結晶化度、分子量、添加剤、温度、薬品濃度、応力、接触時間、成形ひずみ、環境応力割れを合わせて評価する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
バイオポリプロピレンは非極性のポリオレフィンであり、SP値が近い炭化水素系溶剤では膨潤しやすい傾向がある。一方で、水、アルコール、強極性溶剤ではSP値差が大きく、常温短時間では比較的安定な場合が多い。
| 薬品名 | 代表SP値 MPa1/2 | PPとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ヘキサン | 14.9 | 約1.6〜2.6 | △ | SP値が近く、膨潤に注意する。 |
| トルエン | 18.2 | 約0.7〜2.2 | × | 膨潤・軟化が起こりやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 約0.5〜2.0 | × | 高温では特に不適である。 |
| ガソリン | 約14〜16 | 約0〜3 | △〜× | 組成により大きく変動し、膨潤しやすい。 |
| 灯油 | 約16 | 約0〜2 | △ | 長期接触では寸法変化を確認する。 |
| アセトン | 19.9 | 約2.4〜3.9 | ○〜△ | 常温短時間では比較的安定な場合があるが、応力下では確認する。 |
| MEK | 19.0 | 約1.5〜3.0 | △ | 膨潤、応力割れを確認する。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 約1.1〜2.6 | △ | 温度上昇時や長期接触では注意する。 |
| エタノール | 26.0 | 約8.5〜10.0 | ◎ | 一般に良好である。 |
| IPA | 23.5 | 約6.0〜7.5 | ○〜◎ | 常温では比較的安定である。 |
| グリセリン | 約33 | 約15以上 | ◎ | SP値差は大きい。温度と添加剤を確認する。 |
| 水 | 47.9 | 約30以上 | ◎ | 吸水が小さく、常温水では良好である。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 約2.7〜4.2 | × | SP値差だけではなく、溶剤浸透性が高く不適である。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適。SP値差が大きくても、低分子溶剤の浸透性、温度、応力、添加剤抽出により不具合が出る場合がある。
製法
原料
バイオポリプロピレンの原料は、バイオマス由来の炭素源から得られるプロピレンである。代表的には、植物油、廃食油、バイオナフサ、バイオエタノール、糖類発酵由来中間体などが使われる。実際の供給では、物理的にバイオ由来原料を分離して扱う方式と、既存石化設備にバイオマス由来原料を投入し、認証により割り当てるマスバランス方式がある。
重合方法
重合自体は通常のポリプロピレンと同様に、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などを用いた配位重合で行われる。立体規則性を制御することで、結晶性の高いアイソタクチックPPを得る。重合法には気相重合、バルク重合、スラリー重合などがある。
代表的な反応式
| 工程 | 代表式または内容 |
|---|---|
| バイオエタノールからプロピレンを得る例 | バイオエタノール → エチレン → プロピレン、または発酵・触媒変換によりプロピレン前駆体を得る。 |
| バイオナフサからプロピレンを得る例 | バイオナフサ → クラッキング → バイオプロピレン |
| プロピレンの重合 | n CH2=CH−CH3 → [−CH2−CH(CH3)−]n |
| 共重合 | プロピレン + 少量エチレン → ランダム共重合PPまたはブロック共重合PP |
ペレット化やコンパウンド
重合後のPPは、安定剤、中和剤、滑剤、核剤、帯電防止剤、耐候剤、難燃剤、顔料、タルク、ガラス繊維、エラストマーなどを添加し、押出混練によりペレット化される。食品接触用途、医療用途、電気電子用途では、添加剤の規制適合性と溶出性を確認する必要がある。
添加剤、充填材、強化材
- 酸化防止剤:熱酸化劣化、成形時変色、物性低下を抑制する。
- 核剤:透明性、剛性、結晶化速度、HDTを改善する。
- タルク:剛性、寸法安定性、耐熱性を向上させる。
- ガラス繊維:強度、剛性、HDTを大きく向上させる。
- エラストマー:低温衝撃性、耐衝撃性を改善する。
- 難燃剤:UL94 V-2、V-0などを狙う場合に使用される。
- 耐候剤:屋外用途で紫外線劣化を抑制する。
詳細な利用用途
| 分野 | 主な用途 | 選定理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装部品、トリム、コンソール、バンパー周辺、アンダーカバー、電装ケース | 軽量、耐薬品性、成形性、コストバランス、バイオマス由来訴求 | 耐熱、耐候、低温衝撃、VOC、臭気、リサイクル性を確認する。 |
| 電気・電子 | 筐体、コネクタ周辺部品、電装部品、バッテリー周辺非高耐熱部品 | 電気絶縁性、軽量性、成形性 | 難燃性、トラッキング、熱変形、寸法安定性を確認する。 |
| 機械部品 | カバー、レバー、ローラー、簡易ギア、治具、搬送部品 | 軽量、耐水、耐薬品、低吸水 | 摩耗、クリープ、荷重たわみ、熱膨張を確認する。 |
| 医療 | ディスポーザブル部品、容器、キャップ、トレー、包装材 | 成形性、耐薬品性、低吸水、滅菌対応グレードの選択肢 | 医療グレード、滅菌方法、溶出、薬機関連要求を確認する。 |
| 食品機械・食品包装 | 食品容器、キャップ、カップ、トレー、フィルム、ヒンジキャップ | 食品接触適性、耐水、耐油、軽量、ヒートシール性 | 食品衛生法、FDA、EU規則、耐熱温度、電子レンジ適性を確認する。 |
| 建築・設備 | 配管部材、タンク部品、ダクト、カバー、設備部材 | 耐水、耐薬品、軽量、加工性 | 屋外耐候性、熱膨張、長期荷重、薬品接触を確認する。 |
| 日用品 | 収納容器、ボトル、キャップ、文具、家庭用品、玩具 | 低密度、耐薬品、ヒンジ性、量産性 | 耐衝撃、着色、臭気、法規制を確認する。 |
| フィルム・包装 | CPPフィルム、OPPフィルム、ラミネート、軟包装、ラベル | 透明性、剛性、防湿性、ヒートシール性 | 低温シール性、印刷性、帯電、リサイクル設計を確認する。 |
| 繊維・不織布 | 衛生材、不織布、フィルター、包装資材、産業資材 | 軽量、耐薬品、疎水性、加工性 | 繊維径、熱接着、柔軟性、肌接触規制を確認する。 |
代表グレード
| 代表グレード | 特徴 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用グレード | 標準的な射出成形、押出成形向け。 | 日用品、容器、キャップ、一般成形品 | 耐熱、衝撃、成形収縮を確認する。 |
| 耐熱グレード | 高結晶化、核剤、充填材によりHDTを高めたグレード。 | 食品容器、家電部品、自動車内装 | 熱変形、寸法安定性、結晶化条件を確認する。 |
| 難燃グレード | 難燃剤を配合し、UL94対応を狙うグレード。 | 電気・電子部品、筐体、電装ケース | RoHS、REACH、ハロゲン、リン系難燃剤、機械物性を確認する。 |
| GF強化グレード | ガラス繊維で剛性、強度、HDTを高めたグレード。 | 構造部品、ブラケット、機械部品 | 反り、異方性、表面外観、金型摩耗を確認する。 |
| 摺動グレード | 潤滑剤、無機フィラーなどにより摩擦摩耗を改善したグレード。 | ローラー、スライダー、ヒンジ、簡易軸受 | ブリード、相手材摩耗、食品接触適合を確認する。 |
| 食品接触グレード | 食品接触用途向けに添加剤や溶出を管理したグレード。 | 食品容器、包装、キャップ、トレー | 食品衛生法、FDA、EU規則、使用温度、油脂食品への適合を確認する。 |
法規制・規格上の注意
| 項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| RoHS | 電気・電子用途で制限物質への適合を確認する。 | 顔料、難燃剤、再生材、添加剤を含めて確認する。 |
| REACH | SVHC、制限物質、供給者証明を確認する。 | 欧州向けでは最新リストへの対応が必要である。 |
| 食品衛生法 | 日本国内の食品接触用途ではポジティブリスト、溶出、使用条件を確認する。 | 樹脂本体だけでなく添加剤、着色剤、リサイクル材を確認する。 |
| FDA | 米国食品接触用途では該当規則、使用条件、温度条件を確認する。 | グレードごとの適合証明が必要である。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌適性、抽出物、溶出物、変更管理を確認する。 | 一般グレードを医療用途に転用しない。 |
| バイオマス認証 | ISCC PLUS、バイオマスマーク、第三者認証、マスバランス証明を確認する。 | バイオマス度、認証範囲、表示方法を確認する。 |
| リサイクル表示 | PPとしての識別、再資源化ルート、単一素材設計を確認する。 | バイオ由来であっても通常はPPとして扱われる。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨されるグレード | 選定ポイント |
|---|---|---|
| ギア | 摺動グレード、GF強化グレード | 荷重、摩耗、クリープ、相手材、潤滑条件を確認する。 |
| 軸受 | 摺動グレード | 低荷重用途が中心である。高荷重ではPOM、PA、PEEKなどを検討する。 |
| チューブ | 押出グレード、耐薬品グレード | 柔軟性、耐薬品性、耐折れ、食品接触を確認する。 |
| 筐体 | 耐衝撃グレード、難燃グレード、タルク充填グレード | 剛性、耐衝撃、難燃、反り、外観を確認する。 |
| フィルム | ランダム共重合、CPP、OPP向けグレード | 透明性、ヒートシール性、防湿性、印刷性を確認する。 |
| コネクタ | 難燃、GF強化、寸法安定グレード | 耐熱、寸法精度、クリープ、電気特性を確認する。高耐熱用途ではPBT、PA、PPSも比較する。 |
| 食品容器 | 食品接触グレード、透明ランダムPP、耐熱PP | 電子レンジ適性、油脂食品、耐熱、溶出を確認する。 |
| 自動車内装 | タルク充填、耐候、低VOCグレード | 臭気、VOC、耐候、耐熱、低温衝撃を確認する。 |
注意点
- 加水分解の影響はPA、PBT、PET、PUなどに比べて小さいが、高温水、蒸気、添加剤抽出には注意する。
- 応力割れは一部の溶剤、界面活性剤、油、成形ひずみ、荷重により発生する場合がある。
- 吸湿による寸法変化は小さいが、成形収縮と熱膨張は比較的大きい。
- 熱劣化、酸化劣化により黄変、臭気、脆化、分子量低下が起こる場合がある。
- アウトガス、臭気、VOCは自動車内装、食品、医療、電子部品用途で確認する。
- 銅、金属イオン、酸化剤、紫外線により劣化が促進される場合がある。
- バイオマス由来表示を行う場合は、第三者認証、バイオマス度、マスバランス、表示根拠を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | バイオポリプロピレンとの違い |
|---|---|---|
| ポリプロピレン(PP) | 石油由来の代表的な汎用ポリオレフィンである。 | 分子構造と物性はほぼ同等である。違いは主に原料由来、認証、環境訴求である。 |
| アイソタクチックポリプロピレン(i-PP) | 立体規則性が高く、結晶性、剛性、耐熱性に優れるPPである。 | バイオPPの実用グレードも多くはi-PP構造を主体とする。 |
| ポリエチレン(PE) | 軽量、柔軟、耐水、耐薬品性に優れるポリオレフィンである。 | PPの方が一般に剛性、耐熱性が高い。PEは低温特性や柔軟性に優れる場合が多い。 |
| 熱可塑性オレフィン(TPO) | PPとオレフィン系エラストマーを組み合わせた軟質・耐衝撃材料である。 | バイオPPより柔軟性、耐衝撃性に優れるが、剛性や耐熱性は低くなる場合がある。 |
| ABS樹脂 | 外観、寸法安定性、耐衝撃性、めっき性に優れるスチレン系樹脂である。 | ABSは塗装・めっき・外観性に優れるが、PPは軽量性、耐薬品性、耐水性で有利な場合が多い。 |
| ポリアミド(PA) | 機械強度、耐摩耗性、耐油性に優れるエンプラである。 | PAは強度と摺動性に優れるが吸水に注意が必要である。PPは低吸水、軽量、耐薬品性で有利である。 |
| ポリ乳酸(PLA) | 植物由来の生分解性ポリエステルである。 | PLAは生分解性や透明性を訴求しやすいが、PPは耐水性、耐薬品性、靭性、既存リサイクル性で有利な場合がある。 |
| ビーズ法発泡ポリプロピレン(EPP) | PPを発泡させた軽量・緩衝性材料である。 | EPPは発泡体であり、緩衝、断熱、軽量化に使う。バイオPPは未発泡の樹脂ペレットや成形材料を指すことが多い。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| プライムポリマー | バイオマスポリプロピレン、Prime Polypro系のバイオマス対応グレード | 三井化学グループのポリオレフィンメーカーであり、国内でバイオマスPPの商業生産・出荷実績がある。グレード、認証、用途適合は個別確認が必要である。 |
| 三井化学 | BePLAYER、バイオマス・リサイクル関連材料 | バイオマス由来炭化水素を用いたポリオレフィン展開を進めるメーカーである。PPとしてはグループ会社を含めて確認する。 |
| SABIC | TRUCIRCLE、認証再生可能原料由来ポリオレフィン | マスバランス方式による認証再生可能原料由来のポリオレフィンを展開している。PPグレードの有無、地域供給、認証範囲は確認が必要である。 |
| Borealis | Bornewables | 再生可能原料由来ポリオレフィンの代表例として知られる。PPを含む供給体系があるが、グレードと認証範囲は個別確認が必要である。 |
| LyondellBasell | CirculenRenew | 再生可能原料由来・循環型原料由来ポリオレフィンの代表例である。PPグレードは用途、地域、認証方式を確認する。 |
| NaturePlast | NP BioPP | バイオベースPPコンパウンドの代表例がある。バイオマス含有率、物性、供給形態はグレードごとに確認する。 |
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バイオマスプラスチック バイオPP バイオマスポリプロピレン 植物由来ポリプロピレン ポリオレフィン 汎用プラスチック ポリプロピレン アイソタクチックポリプロピレン ランダム共重合PP ブロック共重合PP タルク充填PP GF強化PP 食品接触グレード マスバランス方式 ISCC PLUS RoHS REACH