ページ内メニュー
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリエーテルブロックアミド |
| 略記号 | PEBA |
| IUPAC | 単一のIUPAC名で一般化できない。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックからなるセグメント化ブロック共重合体である。 |
| 英語名 | Polyether Block Amide / Poly(ether-block-amide) |
| 日本語名 | ポリエーテルブロックアミド、ポリエーテルブロック共重合ポリアミド、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの一種 |
| 分類 | 熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE)、ブロック共重合体 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・エラストマー。一般的なエンプラ/スーパーエンプラの区分より、TPAE系高機能TPEとして扱う方が実務的である。 |
| 化学式または代表構造 | [−(polyamide block)−CO−O−(polyether block)−O−CO−]ₙ のように模式化できる。PA12/PTMG系は代表例であり、全PEBAを一つの式で表すことはできない。 |
| CAS No. | 単一材料ではないため一般に一つのCAS No.で特定しない。SDSでは組成・グレードごとに確認する。 |
| 構造・主成分 | PA12、PA11等の結晶性ポリアミドをハードセグメント、PTMG、PEG、PPG等のポリエーテルをソフトセグメントとする。商用PEBAではPA12系が代表的である。 |
| 主な用途 | 高性能スポーツシューズ部材、スキーブーツ、医療用カテーテル・チューブ、自動車流体配管、空圧チューブ、ホース、フィルム、電線被覆、低騒音機構部品、3Dプリント・発泡体など。 |
ポリエーテルブロックアミド(PEBA)は、結晶性ポリアミドのハードセグメントと、低ガラス転移温度を持つポリエーテルのソフトセグメントを同一分子鎖中に配置した熱可塑性ブロック共重合体である。ハードセグメントが物理架橋点として寸法安定性、強度、耐薬品性を担い、ソフトセグメントが柔軟性、反発弾性、低温特性を担う。
PEBAは、TPUやTPEEと競合する高機能熱可塑性エラストマーであり、特に低密度、高い弾性回復、低温での柔軟性、耐屈曲性、耐油・耐薬品性のバランスに優れる。硬度はポリアミド/ポリエーテル比によって広く設計でき、可塑剤に依存せず柔軟化できるグレードが多い。
一方、PEBAは単一組成の材料ではなく、ポリアミド種、ポリエーテル種、ブロック長、硬度、安定剤、着色、発泡、導電・帯電防止設計などで物性が大きく変化する。実使用では、グレード、温度、薬品濃度、荷重、応力、湿度、使用時間、試験片形状、成形履歴を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 低密度、低温柔軟性、反発弾性、屈曲疲労性、耐衝撃性、耐油・耐薬品性、着色性、射出・押出加工性のバランスに優れる。 |
| 短所 | 硬質PEBAでも剛性・HDTは一般的な構造用エンプラより低い。吸湿、強酸・強アルカリ、高温水・蒸気、一部極性溶剤では物性変化に注意する。材料価格は汎用TPEより高い。 |
| 外観 | 自然色は半透明~乳白色のものが多い。組成により透明・高光沢グレード、着色グレード、発泡グレードもある。 |
| 耐熱性 | 代表的なPA12系PEBAの融点は約134~174℃程度である。高融点特殊グレードではこれを上回る場合がある。連続使用温度は融点やHDTと同一ではなく、荷重・熱老化・媒体条件ごとに確認する。 |
| 耐薬品性 | 油、グリース、脂肪族炭化水素、多くの燃料、アルコール類に比較的良好なグレードが多い。一方、強酸・強アルカリ、高温水、一部の芳香族・塩素系・極性溶剤では膨潤、軟化、加水分解等に注意する。 |
| 加工性 | 射出成形、チューブ押出、フィルム押出、シート、共押出、オーバーモールドに適する。粉末・発泡専用グレードでは3Dプリントやビーズ発泡にも用いられる。 |
| 難燃性 | 未難燃グレードのUL 94等級を材料名だけで一律に定義できない。V-0等が必要な場合は難燃専用グレード、色、厚さ、認証ファイルを確認する。 |
| 法規制 | RoHS、REACH、SVHC、食品接触、FDA、医療、生体適合、UL等はグレード単位で確認する。材料群全体への適合を断定しない。 |
| 分類上の注意 | PEBAはTPAEの主要サブタイプである。PA12そのもの、TPU、TPEE、SEBSとは別材料である。ブランド名Pebax®やVESTAMID® EはPEBA系製品を含むが、ブランド全体を単一組成と見なさない。 |
構造式
PEBAは、ポリアミドハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントからなるブロック共重合体である。代表的なPA12/PTMG系を模式化すると、PA12部分は [−NH−(CH2)11−CO−]m、PTMG部分は [−O−(CH2)4−]p と表せる。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | ポリアミドブロック−ポリエーテルブロックの反復構造。代表例では両ブロック間にエステル結合を含む。 |
| ハードセグメント | PA12、PA11等。結晶性、融点、剛性、耐薬品性、寸法安定性に寄与する。 |
| ソフトセグメント | PTMG、PEG、PPG等。低温柔軟性、弾性回復、透湿性、帯電防止性等に影響する。 |
| モノマーまたは構成単位 | PA12系ではラウロラクタム/12-アミノドデカン酸由来ポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール等を用いる経路が代表的である。 |
| 共重合体・変性 | PA/PE比、ブロック長、ポリエーテル種、末端基、安定剤、導電材、難燃剤、着色剤、発泡設計などで物性を調整する。 |
種類・代表グレード
| グレード区分 | 主な改質方法・組成 | 代表的特徴 | 物性への影響 | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| 非強化・標準 | PA12系等のPEBA、無充填 | 低密度、弾性、低温柔軟性 | PA比増加で硬度・融点・剛性が上昇し、PE比増加で柔軟性が増す | スポーツ部材、チューブ、機構部品 |
| 一般射出 | 流動性・離型性を調整 | 薄肉・複雑形状に対応 | 流動性と強度のバランス | シューズ部品、ギア、機構部品 |
| 押出・高粘度 | 高分子量・押出安定化 | チューブ、フィルム、シートに適する | 溶融強度向上 | 医療チューブ、自動車配管、フィルム |
| 高硬度・耐熱 | PA比率を高める等 | 剛性、耐熱変形を高めやすい | 弾性率・融点上昇、伸び・柔軟性低下 | スポーツ部材、機構部品 |
| 低硬度・高弾性 | PE比率を高める等 | 柔軟、反発弾性、低温特性 | 弾性率・融点低下 | シューズ、チューブ、ソフト部品 |
| 耐候・熱安定 | UV・熱安定剤 | 屋外・長期熱老化を改善 | 色・添加剤・規制適合は個別確認 | スポーツ、自動車外装周辺 |
| 帯電防止・透湿 | 親水性ポリエーテル設計等 | 永久帯電防止、透湿膜用途に使える場合がある | 吸湿性・電気特性が環境依存 | 包装、フィルム、添加剤用途 |
| 医療用途 | 抽出物・生体適合・工程管理 | 柔軟チューブ、カテーテル適性 | 滅菌方法により変色・劣化を確認 | カテーテル、医療チューブ |
| 食品接触用途 | 添加剤・色材を規制対応 | 低密度、柔軟、耐油性 | 規制は国・温度・接触条件ごとに確認 | 食品接触チューブ等 |
| 発泡 | 物理発泡・ビーズ発泡等 | 極低密度、高反発 | 圧縮特性・セル構造依存 | 高性能ミッドソール |
| 3Dプリント | SLS/HSS等の粉末設計 | 柔軟な複雑形状を造形可能 | 造形方向・粉末再利用で変動 | 試作、スポーツ、機能部品 |
| GF/CF強化 | 特殊コンパウンドで繊維配合 | 剛性・寸法安定性向上 | PEBA本来の伸び・柔軟性は低下 | 構造部品。一般的な標準PEBAとは別管理 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 主要加工法。薄肉成形、オーバーモールドにも適する。乾燥、滞留時間、樹脂温度を管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | チューブ、ホース、シート、異形材に適する。押出専用粘度を選定する。 |
| ブロー成形 | △ | 専用高粘度グレードで検討可能だが一般的主用途ではない。 |
| インフレーション成形 | ○ | フィルムグレードで適用可能。バブル安定性と厚みを管理する。 |
| Tダイフィルム成形 | ◎ | 薄膜、透湿・機能フィルム用途に適するグレードがある。 |
| 真空成形 | △ | シートの軟化窓と戻り弾性を考慮する。 |
| 圧空成形 | △ | 専用シートで検討可能。 |
| 圧縮成形 | △ | 一般的主成形法ではない。特殊成形・評価片で使用する場合がある。 |
| 回転成形 | - | 一般化困難。専用粉末・設備が必要。 |
| 発泡成形 | ◎ | 専用PEBAはビーズ発泡、超臨界流体発泡等で高反発低密度部材に使われる。 |
| 3Dプリント | ○ | SLS/HSS等の粉末グレードがある。 |
| 切削加工 | ○ | 硬質グレードでは可能。柔軟グレードは保持・発熱・バリに注意。 |
| 溶着 | ○ | 熱板、レーザー、超音波等を検討できる。硬度・肉厚・添加剤で条件が変わる。 |
| 接着 | △ | 表面処理、プライマー、接着剤選定で改善する。 |
| 塗装・印刷 | ○ | 熱転写、印刷、加飾実績がある。表面状態と耐摩耗を確認する。 |
| めっき | △ | 一般用途では少ない。専用前処理が必要。 |
| 蒸着 | △ | 密着・真空アウトガス・熱履歴を評価する。 |
| レーザーマーキング | ○ | 色・添加剤設計で対応可能。 |
| 二次成形 | ◎ | PA11、PA12、TPU等とのオーバーモールドを検討できる。 |
| インサート成形 | ○ | 金属・樹脂・繊維等との組合せが可能。熱膨張差と界面密着を確認する。 |
代表的な射出成形条件
| 項目 | 単位 | 代表条件 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | 要否 | 開封後・吸湿時に必要 | 未開封防湿包装ではそのまま使用可能な製品もある。 |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | 55~80 | 柔軟グレードほど低め、硬質グレードほど高め。メーカー指定優先。 |
| 推奨乾燥時間 | h | 4~8 | 真空/除湿乾燥。Evonik系では80℃・2~4hの推奨例もある。 |
| 許容含水率 | % | グレード指定 | 一律値を設定しない。外観、気泡、加水分解回避のためTDS確認。 |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 180~230 | グレードの融点・粘度により設定。 |
| シリンダー温度・圧縮部 | ℃ | 200~250 | 過度なせん断発熱を避ける。 |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 210~260 | 標準系列の推奨溶融温度は概ね210~260℃。 |
| ノズル温度 | ℃ | 200~260 | 糸引き・コールドスラグを確認。 |
| 樹脂温度 | ℃ | 210~260 | 柔軟低融点グレードは低め、高硬度グレードは高め。 |
| 金型温度 | ℃ | 10~60 | 柔軟グレード10~30℃、高硬度グレード25~60℃程度の例。 |
| 射出圧力 | MPa | グレード・形状依存 | 固定値の一般化は避け、充填・バリ・残留応力で最適化。 |
| 保圧 | MPa | グレード・形状依存 | ヒケ・収縮・残留応力で調整。 |
| 背圧 | MPa | 低~中 | 混練に必要な最小限とし、過度な発熱を避ける。 |
| 射出速度 | - | 中速~高速 | 薄肉では高速が有効。ガス焼け・ジェッティングに注意。 |
| スクリュー回転数 | rpm | グレード依存 | 発熱・滞留を抑える。 |
| 滞留時間 | min | 10未満を目安 | 長時間滞留で熱劣化・変色の恐れ。 |
| 成形収縮率・流動方向 | % | 0.5~1.5 | 代表的標準系列の目安。形状・硬度・条件で変動。 |
| 成形収縮率・流動直角方向 | % | 0.5~1.5 | 異方性はゲート・流動・充填材で変化。 |
| 推奨肉厚 | mm | 0.8以上を目安 | 極薄成形可能例はあるが、流動長と強度を確認。 |
| 抜き勾配 | ° | 0.5~2 | 柔軟性、シボ、深さで調整。 |
| アニール | 要否 | 通常は必須ではない | 寸法精度、残留応力、高温用途で必要に応じ検討。 |
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 実務上の要点 |
|---|---|---|
| 熱板溶着 | ○ | 溶融温度、加圧、冷却保持を管理。 |
| 超音波溶着 | ○ | 柔軟グレードではエネルギー伝達が弱くなるため形状設計が重要。 |
| 振動溶着 | ○ | 大型部品で検討可能。バリと発熱を確認。 |
| レーザー溶着 | ○ | 透過/吸収色設計と界面温度を管理。 |
| 高周波溶着 | △ | 誘電特性と厚さに依存。 |
| 熱風溶着 | ○ | チューブ・シートで可能。酸化と寸法を管理。 |
| 溶剤接着 | △ | 膨潤・残留溶剤・強度低下に注意。 |
| 接着剤接合 | ○ | プラズマ・コロナ・プライマーで改善可能。 |
| 機械締結 | ○ | クリープ、座面圧、応力集中を考慮。 |
| タッピングねじ | △ | 柔軟グレードはねじ保持力を実測する。 |
| コロナ処理 | ○ | ぬれ性向上。処理効果の経時変化を確認。 |
| プラズマ処理 | ○ | 接着・印刷密着の改善に有効。 |
| フレーム処理 | △ | 熱損傷、変形、酸化を避ける。 |
| プライマー処理 | ○ | 接着剤・塗料系に合わせて選定。 |
代表的な物性値又は機械的性質
PEBAは硬度範囲が非常に広いため、材料群の比較値として単一値を置くと誤解を生じる。以下では、PA12系標準PEBAの公開標準系列から得られる代表範囲を示し、比較用代表値は中硬度クラス(Shore D約50前後)を目安として分離した。数値は材料群の保証値ではない。
非強化・標準PA12系PEBAの比較用物性
| 項目 | 単位 | 比較用代表値 | 代表範囲 | 試験規格 | 試験条件 | 材料状態・備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.01 | 1.00~1.01 | ISO 1183 | 23℃ | 非強化標準系列 | A |
| 比重 | 無次元 | 1.01 | 1.00~1.01 | ISO 1183相当 | 23℃ | 密度に準じる | A |
| 平衡吸水率 | % | 0.6 | 0.4~0.7 | ISO 62 | 23℃・50%RH | 調湿後 | A |
| 24時間水浸漬吸水率 | % | 1.2 | 0.9~1.2 | ISO 62 / ASTM D570 | 23℃・24h | 水浸漬後 | A |
| ショアD硬度・15秒 | Shore D | 50 | 22~61 | ISO 868 | 23℃ | 硬度系列で大幅変動 | A |
| 引張弾性率 | GPa | 0.161 | 0.010~0.522 | ISO 527 | 23℃ | 中硬度クラスを代表値 | A |
| 引張強さ・降伏 | MPa | 12 | 12~26 | ASTM D638 | 23℃、硬質側で降伏確認 | 柔軟側は明確な降伏点なしの場合あり | A |
| 引張強さ・破断 | MPa | 52 | 32~56 | ASTM D638 | 23℃ | 標準系列 | A |
| 引張破断伸び | % | 450 | >300~>750 | ASTM D638 | 23℃ | 数値化不能の「>」を含むため比較時注意 | A |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.170 | 0.012~0.513 | ISO 178 | 23℃ | 中硬度クラスを代表値 | A |
| アイゾット衝撃・ノッチ付き | kJ/m² | データなし | データなし | - | - | 公式系列はJ/m表記が中心でISO値へ単純換算しない | - |
| シャルピー衝撃・ノッチ付き | kJ/m² | NB | 10~20またはNB | ISO 179 | 23℃/-30℃ | NBは数値化しない | A |
| ガラス転移温度・ソフト相 | ℃ | 約-65 | グレード依存 | DSC | 代表的柔軟グレード | ポリエーテル相。単一Tgとして一般化しない | B |
| 融点 | ℃ | 159 | 133.5~174 | ISO 11357 | DSC | PA結晶相由来。特殊高融点系を除く標準系列 | A |
| HDT・0.45MPa | ℃ | 66 | グレード依存 | ISO 75 | 0.45MPa | 中硬度クラスの公開例 | A |
| HDT・1.80MPa | ℃ | データなし | グレード依存 | ISO 75 | 1.80MPa | 硬質グレードの公開例では45℃等。材料群一般値にしない | C |
| ビカット軟化温度 | ℃ | 142 | 58~164 | ISO 306 | 10N系代表系列 | 硬度依存 | A |
| 連続使用温度 | ℃ | データなし | 一般化困難 | - | 実使用条件依存 | メーカー保証・熱老化データを確認 | - |
| 低温使用限界 | ℃ | -40 | -40以下も可能なグレードあり | 用途情報 | 低温衝撃・柔軟性 | 保証値ではなく用途目安 | B |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 17 | 12~21 | ASTM D696 | -40~140℃ | 標準系列 | A |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | データなし | グレード依存 | - | - | 一般化困難 | - |
| 比熱 | J/(g・K) | データなし | グレード依存 | - | - | 一般化困難 | - |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 約3.2×10¹³ | グレード依存 | IEC 62631系 | 23℃ | 5533系公開値3.2×10¹¹ Ω·mを換算 | A |
| 表面抵抗率 | Ω | 約3×10¹² | >10¹²程度 | IEC 60093 / IEC 62631 | 23℃ | 帯電防止グレードは別扱い | A |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 38.5 | グレード依存 | IEC 60243 | 23℃ | 中硬度公開例 | A |
| 比誘電率・1MHz | 無次元 | 5 | 4~5程度 | IEC 62631 | 23℃ | グレード依存、吸湿影響あり | A |
| 誘電正接・1MHz | 無次元 | 0.102 | グレード依存 | IEC 62631 | 23℃ | 公開例1020×10⁻⁴ | A |
| CTI | V | 600 | グレード依存 | IEC 60112 | 23℃ | 中硬度公開例 | A |
PEBAでは引張弾性率や曲げ弾性率が硬度設計により1桁以上変化する。比較機能では、材料群の代表値と特定グレードの値を混在させず、硬度又はグレード区分を必ず併記することが重要である。
燃焼性・難燃性
| 項目 | 代表的な扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| UL 94燃焼性 | グレード依存 | 未難燃PEBAを一律にHB、V-2等と断定しない。認証グレード、色、厚さごとにULファイル確認。 |
| 限界酸素指数・LOI | データなし | 材料群の統一値として十分な公開データを確認できない。 |
| ハロゲン含有 | 基ポリマーは通常ハロゲンを必須構成元素としない | 難燃剤、着色剤、添加剤は個別確認。 |
| 燃焼時発生ガス | CO、CO₂、窒素含有分解物等を生じ得る | 換気、SDS、火災安全評価を優先。 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 3 | 柔軟TPEとして高い強度を持つが、硬度依存が大きい。 |
| 剛性 | 2 | 標準PEBAは柔軟材料であり構造用エンプラより低い。 |
| 衝撃強度 | 5 | 常温・低温で非常に高い靱性を示すグレードが多い。 |
| 耐熱性 | 3 | 融点は約134~174℃級だが、荷重下耐熱・連続使用は中程度。 |
| 低温特性 | 5 | ポリエーテル相の低Tgにより低温柔軟性に優れる。 |
| 耐薬品性 | 4 | 油・燃料・多くの薬品に良好だが強酸・強アルカリ・一部溶剤に注意。 |
| 耐候性 | 3 | 安定化グレードで改善可能。無安定材を一律に高評価しない。 |
| 耐加水分解性 | 3 | TPUポリエステル系より有利な場合があるが、高温水・酸塩基では確認必須。 |
| 寸法安定性 | 3 | 低密度・比較的低吸水だが柔軟性と吸湿で寸法変化あり。 |
| 低吸水性 | 4 | PA6/PA66より低いが、ポリエーテル種で吸湿性が増える場合あり。 |
| 摺動性 | 3 | 低騒音ギア用途実績があるが、摩擦係数・摩耗は専用評価が必要。 |
| 耐摩耗性 | 4 | スポーツ・機構部品で良好な耐久性を示す。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 標準グレードは高抵抗。帯電防止系は別。 |
| 難燃性 | 2 | 本質難燃材ではなく専用難燃グレード確認が必要。 |
| 透明性 | 3 | 透明・高光沢グレードが存在するが材料群全体では半透明~乳白色。 |
| 成形加工性 | 5 | 射出、押出、フィルム、チューブ、オーバーモールドに適する。 |
| 切削加工性 | 3 | 硬質グレードは可能、軟質材は保持・バリ対策が必要。 |
| 接着性 | 3 | 表面処理・プライマーで改善可能。 |
| リサイクル性 | 4 | 熱可塑性で再溶融可能。ただし吸湿・熱履歴・異物を管理。 |
| 価格優位性 | 1 | 汎用TPE、TPU等より高価格になることが多い。 |
耐薬品性
PEBAの耐薬品性はポリアミド/ポリエーテル比、ポリエーテル種、結晶化度、硬度、温度、濃度、時間、応力、吸湿状態で変化する。以下はPA12系PEBAの一般的傾向を材料選定の一次スクリーニングとして整理したものであり、実部品では必ず浸漬試験と応力負荷試験を行う。
| 分類 | 薬品・媒体 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態・注意点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 水 | - | 23℃ | 長時間浸漬 | 無 | ◎ | 吸水による寸法・弾性率変化を確認。 |
| 温水 | 温水 | - | 60~80℃ | 長時間 | 無 | ○ | 吸水と熱の複合作用。 |
| 熱水・蒸気 | 熱水/水蒸気 | - | >90℃ | 長時間 | 有無 | △ | 加水分解・軟化・寸法変化を確認。 |
| 無機酸 | 塩酸 | ~10%目安 | 23℃ | 短時間~浸漬 | 無 | △ | アミド結合への酸作用。濃度・温度上昇で悪化。 |
| 無機酸 | 硫酸 | 希薄 | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 濃硫酸・高温は不適と考える。 |
| 有機酸 | 酢酸 | 希薄 | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 高濃度・高温では膨潤・加水分解確認。 |
| 強アルカリ | 水酸化ナトリウム | ~10%目安 | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 高温・高濃度ではポリアミド鎖の劣化に注意。 |
| 弱アルカリ | 炭酸塩水溶液 | 希薄 | 23℃ | 短時間 | 無 | ○ | 長期は吸水と物性保持を確認。 |
| 低級アルコール | エタノール | 99%以下 | 23℃ | 短時間~浸漬 | 無 | ○ | 一般に比較的良好だが軟化・抽出を確認。 |
| 低級アルコール | IPA | 99%以下 | 23℃ | 短時間~浸漬 | 無 | ○ | グレード差を確認。 |
| 多価アルコール | グリセリン | - | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 比較的安定な場合が多い。 |
| ケトン | アセトン | - | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤・軟化を実測。 |
| エステル | 酢酸エチル | - | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 膨潤、寸法変化、応力下割れに注意。 |
| エーテル | THF | - | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 溶解・著しい膨潤の可能性があるため要実測。 |
| 芳香族炭化水素 | トルエン | - | 23℃ | 短時間~浸漬 | 無 | △ | 膨潤・軟化に注意。 |
| 脂肪族炭化水素 | n-ヘキサン | - | 23℃ | 浸漬 | 無 | ○ | 一般に比較的良好。 |
| ハロゲン化炭化水素 | ジクロロメタン | - | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 強い膨潤・溶解作用の可能性。 |
| 燃料 | ガソリン系燃料 | 市販燃料 | 23℃ | 長時間 | 有無 | ○ | 芳香族成分・アルコール混合率で差。 |
| 潤滑油 | 鉱物油 | - | 23~80℃ | 長時間 | 有無 | ◎ | 高温では抽出・膨潤を確認。 |
| 作動油 | 油圧作動油 | - | 23~80℃ | 長時間 | 有 | ○ | 添加剤系、温度、圧力を確認。 |
| ブレーキ液 | グリコールエーテル系 | - | 23~80℃ | 長時間 | 有 | △ | 実液での膨潤・強度保持を必須確認。 |
| 冷却液 | EG/水 | 30~50% | 80~120℃ | 長時間 | 有 | △ | 高温水とグリコールの複合作用。 |
| 界面活性剤 | 中性洗剤水溶液 | 使用濃度 | 23~60℃ | 長時間 | 有無 | ○ | 界面活性剤による浸透・応力影響を確認。 |
| 酸化剤 | 過酸化水素 | 低濃度 | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 酸化劣化、濃度・温度上昇に注意。 |
| 次亜塩素酸塩 | 次亜塩素酸ナトリウム | 低濃度 | 23℃ | 短時間 | 無 | △ | 酸化、変色、脆化を確認。 |
| 塩水 | 塩化ナトリウム水溶液 | 3~5% | 23℃ | 浸漬 | 無 | ◎ | 吸水による寸法変化は確認。 |
| 海水 | 海水 | - | 23℃ | 長時間 | 無 | ○ | 長期吸水、紫外線との複合劣化を確認。 |
| 食品油 | 植物油 | - | 23~80℃ | 長時間 | 無 | ◎ | 食品接触規制は別途確認。 |
| 洗浄剤 | アルカリ/溶剤配合洗浄剤 | 製品依存 | 使用温度 | 短時間 | 有無 | △ | 単一成分から推定せず実液で評価。 |
SP値(溶解度パラメータ)
PEBAは相分離型ブロック共重合体であるため、材料群全体を一つのHildebrand SP値で表すことは適切ではない。文献ではPebax® 2533に対しHansenパラメータ δD=17.6、δP=7.6、δH=6.8 MPa1/2、合成値δt=20.3 MPa1/2という報告例がある。これは特定組成の参考値であり、PA/PE比やポリエーテル種が異なるPEBAへそのまま適用しない。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
この単純なΔδ判定は、特にPEBAのようなブロック共重合体では粗い一次スクリーニングである。水素結合、結晶相、拡散、溶剤サイズ、温度、応力、酸・塩基による化学分解を考慮しなければならない。
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 δ MPa1/2 | Pebax® 2533との差(概算) | SP差だけの判定 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| ジクロロメタン | 約20.2 | 約0.1 | × | 実際にも膨潤・溶解側の懸念が大きい。 |
| アセトン | 約19.9 | 約0.4 | × | ケトンとの相互作用を実測する。 |
| THF | 約18.5 | 約1.8 | × | ポリエーテル相への親和性が高くなり得る。 |
| トルエン | 約18.2 | 約2.1 | △ | 芳香族溶剤は膨潤を確認。 |
| 酢酸エチル | 約18.2 | 約2.1 | △ | 短時間接触でも外観・寸法変化を確認。 |
| IPA | 約23.6 | 約3.3 | △ | HSP三成分距離では単純δ差と異なる。 |
| エタノール | 約26.5 | 約6.2 | ○ | 吸湿・抽出・長時間接触を確認。 |
| n-ヘキサン | 約14.9 | 約5.4 | ○ | 非極性油・燃料成分として膨潤試験推奨。 |
| 水 | 約47.8 | 約27.5 | ◎ | SP差では良好でも実際には吸水するため、SP値だけで判断できない。 |
環境応力割れ・ESC
PEBAはPCやPMMAほど典型的なESC材料として扱われないが、残留応力、ノッチ、薄肉、溶剤吸収、低温衝撃、高温薬液が重なるとクラック、白化、永久変形が生じる可能性がある。特に溶剤、燃料、洗浄剤との接触部品では、無応力浸漬だけでなく、実使用応力を与えた曲げ治具・定ひずみ治具で評価することが望ましい。
製法
PEBAは一般に、所定分子量のポリアミドブロックとポリエーテルブロックを用意し、末端官能基間の縮合によりブロック共重合体化する。代表例として、カルボキシ末端PA12ブロックとポリエーテルジオールを反応させるポリエーテルエステルアミド型の経路を下図に示す。実際の工業プロセスでは、原料PA種、ポリエーテル種、触媒、末端基設計、反応温度、真空度、分子量制御がメーカー固有である。

| 工程・原料 | 役割 | 主な管理点 |
|---|---|---|
| PAブロック形成 | PA12、PA11等の所定分子量ポリアミドブロックを形成 | 分子量、末端カルボキシル/アミノ基、水分、モノマー残分 |
| ポリエーテル原料 | PTMG、PEG、PPG等の柔軟ブロックを供給 | 分子量分布、水酸基価、水分、酸化安定性 |
| ブロック共重合 | 末端官能基間の縮合でPAブロックとPEブロックを連結 | 触媒、温度、真空度、反応時間、副生成物除去 |
| 溶融仕上げ | 目標粘度・分子量へ調整 | 滞留、酸化、ゲル、色相 |
| ペレット化 | ストランド/水冷等でペレット化 | 水分、粒径、異物、切粉 |
| コンパウンド | 安定剤、着色剤、導電材、難燃剤等を用途別に配合 | 添加量、分散、規制適合、機械特性への影響 |
| 品質検査 | MVR、融点、硬度、機械特性、水分等を確認 | ロット再現性、用途別規格 |
詳細な利用用途
| 分野 | 代表用途 | 適性 | 採用理由 | 選定・確認事項 |
|---|---|---|---|---|
| スポーツ | ランニングシューズ、サッカーシューズ、スキーブーツ、プロテクター | ◎ | 低密度、高反発、低温柔軟性、耐疲労 | 硬度、反発、疲労、発泡密度、低温衝撃 |
| 自動車 | エア・真空・流体チューブ、ブレーキブースター配管、保護材 | ◎ | 耐油、耐薬品、低温柔軟、耐屈曲 | 燃料組成、圧力、温度、透過、耐久 |
| 電気・電子 | ケーブル被覆、フレキシブル部材、帯電防止用途 | ○ | 柔軟、耐屈曲、絶縁性/専用帯電防止性 | UL、誘電、吸湿、難燃、添加剤 |
| 機械部品 | 低騒音ギア、ローラー、柔軟機構部品 | ○ | 衝撃、弾性、耐摩耗、低騒音 | PV、摩耗、クリープ、温度 |
| 医療 | カテーテル、チューブ、コネクタ | ◎ | 柔軟性、押出性、硬度選択、耐屈曲 | ISO 10993、USP、生体適合、滅菌、抽出物 |
| 食品機械 | 柔軟チューブ、接液部材 | ○ | 耐油、柔軟、低密度 | FDA/EU/日本食品衛生、温度、洗浄剤 |
| 建築・設備 | ホース、保護部材、シール補助 | △ | 耐候グレードでは屋外可能 | UV、温湿度、圧縮永久ひずみ |
| フィルム | 透湿膜、装飾フィルム、機能フィルム | ◎ | 薄膜成形、柔軟、透湿設計可能 | WVTR、厚さ、ブロッキング、印刷密着 |
| 3Dプリント | 柔軟機能部品、試作、スポーツ部材 | ○ | 高靱性、柔軟性、複雑形状 | 造形方向、粉末再利用、寸法、表面粗さ |
| 発泡体 | 高反発ミッドソール | ◎ | 極低密度、高反発、低温特性 | 発泡倍率、セル径、圧縮疲労、接着 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| ギア | ○ | 低騒音・耐衝撃に有利。高荷重・高温クリープはPOM/PA等と比較。 |
| 軸受 | △ | 専用摺動グレード以外はPV・摩耗の確認が必要。 |
| ブッシュ | △ | 柔軟性が必要な緩衝ブッシュには有効。精密軸受では変形に注意。 |
| ローラー | ○ | 弾性・耐摩耗を活用。荷重によるクリープを確認。 |
| 摺動板 | △ | 摩擦係数と摩耗粉の実測が必要。 |
| ねじ・ボルト・ナット | × | 高剛性・ねじ保持用途には一般に不向き。 |
| ポンプ部品 | △ | シール・ダイヤフラム的用途を除き、圧力・クリープを確認。 |
| バルブ部品 | △ | 柔軟シート・シール補助には可能。 |
| シール | ○ | 動的シールでは摩耗・圧縮永久ひずみを確認。 |
| ガスケット | ○ | 低~中温の柔軟シールに適する場合あり。 |
| Oリング | △ | 一般には架橋ゴムが優位。長期圧縮永久ひずみを確認。 |
| チューブ | ◎ | 代表用途。硬度・耐圧・薬品・透過を選定。 |
| ホース | ◎ | 柔軟、耐屈曲、耐油性を活用。 |
| 配管 | ○ | 小径・柔軟配管向け。高圧・高温は個別設計。 |
| タンク | × | 柔軟性・コスト面から一般的主用途ではない。 |
| フィルム | ◎ | キャスト/ブロー対応グレードがある。 |
| シート | ○ | 押出可能。熱成形性はグレード依存。 |
| ボトル | △ | ブロー専用設計が必要。 |
| 容器 | △ | 剛性・コスト面から限定用途。 |
| 電気コネクタ | △ | 柔軟シール・ストレインリリーフ用途向け。剛性端子保持にはPA/PBTが優位。 |
| ソケット | × | 高剛性・高HDT用途には一般に不向き。 |
| 絶縁部品 | ○ | 標準グレードは高抵抗。温湿度、CTI、難燃を確認。 |
| 電子部品筐体 | △ | 柔軟筐体・保護部材には可能。剛性筐体には他材が一般的。 |
| 一般筐体 | △ | 同上。 |
| 透明カバー | △ | 透明グレードはあるがPC/PMMAほど一般的ではない。 |
| レンズ | × | 光学材料としては一般に選択しない。 |
| 自動車内装 | ○ | 柔軟・耐屈曲・低騒音用途に適する。 |
| 自動車外装 | △ | 耐候安定グレードと長期UV評価が必要。 |
| エンジンルーム部品 | ○ | 配管・保護部材で実績。温度・媒体・圧力確認。 |
| 燃料系部品 | ○ | PA12系の耐燃料性を活用。ただし燃料組成・透過規制を確認。 |
| 食品機械部品 | ○ | 適合グレードが前提。 |
| 医療機器部品 | ◎ | カテーテル・チューブ用途で重要。 |
| 滅菌部品 | ○ | EtO、電子線、γ線、蒸気等で耐久性が異なる。 |
| 半導体製造装置部品 | △ | 柔軟配管・ESD用途の専用グレードに限定。 |
| 真空装置部品 | △ | アウトガス・透過を評価。 |
| 建築部材 | △ | 高コストで限定用途。 |
| 屋外部品 | ○ | 耐候安定グレードとUV試験が前提。 |
| 接着剤 | × | PEBA自体は通常成形材料。ホットメルト用途は別系ポリアミドを検討。 |
| 塗料 | × | 一般的な塗料バインダー用途ではない。 |
| コーティング | △ | 粉末/溶液特殊用途はあり得るが一般化困難。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 柔軟マトリックス、改質材として限定的。 |
寸法精度・設計特性
- 成形収縮は一般に0.5~1.5%程度の範囲が目安であるが、硬度、結晶化、肉厚、ゲート、保圧で変動する。
- 吸湿により寸法と弾性率が変化するため、精密部品では23℃・50%RH調節後と乾燥状態の両方を評価する。
- 柔軟材料であるため、短時間引張強さを設計許容応力として直接使用しない。クリープ、疲労、温度、薬品、繰返し変形を考慮する。
- インサートやねじ周辺では局所応力、肉厚急変、成形残留応力を避ける。
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の要因 | 成形条件側の要因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| シルバーストリーク | 吸湿、揮発分 | 樹脂温度過高、背圧過大 | 適正乾燥、滞留短縮、温度最適化 |
| 加水分解 | 水分 | 高温・長時間滞留 | 開封管理、乾燥、パージ |
| ガス焼け | 揮発分、熱劣化 | 高速射出、ベント不足 | ベント改善、速度低減、温度適正化 |
| 黒点 | 熱劣化物、異物 | デッドスポット、長時間滞留 | 設備清掃、パージ、滞留短縮 |
| 変色 | 酸化、安定剤消耗 | 過熱、滞留 | 低温側最適化、真空/除湿乾燥 |
| フローマーク | 粘度・硬度 | 低温、速度不適 | 温度・速度・ゲート最適化 |
| ジェッティング | 低粘度 | ゲート位置、速度過大 | ゲート変更、初期速度低減 |
| ウェルドライン | 低界面温度 | 樹脂/金型温度不足 | 温度・ベント・ゲート改善 |
| ヒケ | 収縮 | 保圧不足、肉厚過大 | 保圧・ゲート・肉厚設計 |
| ボイド | 収縮、揮発分 | 保圧不足、急冷 | 保圧・冷却・乾燥改善 |
| 反り | 結晶化・配向 | 冷却不均一 | 金型温度・ゲート・肉厚均一化 |
| バリ | 低粘度 | 圧力過大、型締不足 | 温度・圧力・型締調整 |
| プレートアウト | 添加剤・低分子成分 | ダイ温度・滞留 | グレード選定、清掃、温度最適化 |
| ダイスウェル | 高弾性 | 押出せん断・ダイ設計 | ダイ寸法、温度、速度を調整 |
| メルトフラクチャー | 高粘度・弾性 | せん断速度過大 | 温度上昇、速度低減、ダイ改善 |
注意点・劣化/故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 高温・酸素 | 高温長時間、滞留 | 黄変、硬化、強度低下 | 熱安定グレード、滞留短縮 | 熱老化試験 |
| 紫外線劣化 | UV・酸素 | 屋外、無安定材 | 退色、表面劣化、脆化 | UV安定グレード、顔料設計 | キセノンアーク試験 |
| 加水分解 | 水・熱・酸塩基 | 高温水、蒸気、強酸・強アルカリ | 分子量低下、強度低下 | 媒体・温度制限、グレード選定 | 熱水/加水分解試験 |
| 吸湿 | 水分拡散 | 高湿度、水浸漬 | 寸法変化、弾性率変化 | 調湿状態で設計 | ISO 62吸水試験 |
| 膨潤 | 溶剤吸収 | 芳香族、塩素系、極性溶剤 | 寸法増加、軟化 | 実液選定 | 実薬品浸漬試験 |
| 応力割れ | 薬品+残留応力 | 薄肉、ノッチ、締結、溶剤 | クラック、白化 | 応力低減、R付け | 定ひずみESC試験 |
| 疲労破壊 | 繰返し変形 | 高応力、高周波、低温 | 亀裂、破断 | 応力低減、肉厚最適化 | 屈曲/疲労試験 |
| クリープ破壊 | 長期荷重 | 高温、締結、シール圧 | 永久変形、漏れ | 荷重低減、硬質グレード | クリープ試験 |
| 摩耗粉発生 | 摺動 | 高PV、粗い相手材 | 寸法損失、汚染 | 摺動グレード、潤滑 | 摩耗試験 |
| 添加剤抽出 | 液体接触 | アルコール、油、洗浄 | 質量減少、表面変化 | 低抽出グレード | 抽出・溶出試験 |
| アウトガス | 低分子・水分 | 真空、高温 | 汚染、質量減少 | 乾燥・低アウトガス品 | TML/CVCM/RGA |
| 滅菌劣化 | 熱・放射線・薬剤 | 蒸気、γ線、電子線、EtO | 黄変、脆化、硬度変化 | 医療グレード選定 | 滅菌サイクル耐久試験 |
推奨確認試験:実薬品浸漬試験、応力負荷下ESC試験、高温高湿試験、熱老化試験、熱水・加水分解試験、紫外線促進耐候試験、ヒートサイクル試験、クリープ・疲労試験、摩耗試験、寸法変化・吸水試験、電気絶縁試験、接着・溶着強度試験、滅菌耐久試験、溶出試験、アウトガス試験、実成形・実部品耐久試験を用途に応じて選択する。温度、濃度、時間、荷重、応力、湿度、繰返し回数を実使用条件に合わせる。
法規制・認証
| 項目 | 材料群としての扱い | 実務上の確認 |
|---|---|---|
| RoHS | 一般に対応可能なグレードが存在する | 個別グレードの適合証明書を確認。 |
| REACH / SVHC | 一般に対応可能 | 最新SVHC候補リスト、添加剤、着色剤を確認。 |
| ELV | 自動車用途グレードで対応可能 | 車種・OEM規格を確認。 |
| PFAS関連規制 | PEBA基ポリマー自体はフッ素を必須としない | 加工助剤・添加剤・多層構成にPFASがないか確認。 |
| TSCA | 米国流通グレードで確認 | 製品SDS・規制証明を確認。 |
| Proposition 65 | 添加剤・着色剤依存 | California用途では個別確認。 |
| EU食品接触 | 適合グレードが存在する場合がある | EU 10/2011等の適合宣言、接触条件を確認。 |
| FDA食品接触 | 適合グレードが存在する場合がある | 用途、温度、食品種、抽出条件を確認。 |
| 日本の食品衛生法 | 適合グレードを個別確認 | ポジティブリスト、添加剤、使用条件を確認。 |
| USP Class VI | 医療グレードで取得例があり得る | 材料名だけで断定せずTDS・証明書確認。 |
| ISO 10993 | 医療用途グレードで評価例がある | 接触部位・期間・滅菌条件に応じた生体適合評価が必要。 |
| UL認証 | 一部グレードで取得可能 | UL 94、厚さ、色、RTI等を個別確認。 |
| ハロゲンフリー | 設計可能 | 添加剤・顔料まで含めた判定が必要。 |
| ISCC PLUS等 | マスバランス型製品が存在する | 認証対象製品・拠点・証明書を確認。 |
環境・リサイクル性
| 項目 | 評価・内容 |
|---|---|
| 熱可塑性/熱硬化性 | 熱可塑性。再溶融・再成形が可能。 |
| マテリアルリサイクル | ○。単一材回収、乾燥、熱履歴、異物管理が前提。 |
| ケミカルリサイクル | 研究・個別プロセス領域。一般流通インフラは限定的。 |
| サーマルリサイクル | 可能だが、窒素含有樹脂として適切な燃焼・排ガス処理が必要。 |
| 再生材利用 | 用途により可能。粘度、色、臭気、機械特性、規制適合を再確認。 |
| バイオベース材 | PA11等再生可能原料由来成分を含むPEBA、マスバランス製品等が存在する。 |
| 生分解性 | 一般的PEBAを生分解性樹脂として扱わない。 |
| コンポスト適合 | 一般に対象外。 |
| 識別表示 | PEBA単独の世界共通リサイクルコードは限定的。製品仕様に従う。 |
価格・供給性
| 項目 | 相対評価 | 備考 |
|---|---|---|
| 価格区分 | 高価格 | 汎用TPE、標準TPU等より高い場合が多い。発泡・医療・認証・特殊グレードはさらに高い。 |
| 汎用的な流通性 | 中~限定 | 主要メーカー・専門商社経由が中心。 |
| 国内入手性 | ○ | Arkema、Evonik系など実績あり。グレードによって受注・輸入条件あり。 |
| 少量購入 | △ | 評価量は代理店・コンパウンダー経由で可能な場合がある。 |
| 供給形態 | ペレット、粉末、発泡材用原料等 | フィルム、チューブ、3Dプリント粉末等は加工品・専用品として流通。 |
| 最小購入量 | グレード依存 | 色、医療、特殊硬度ではMOQが大きくなる場合がある。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | PEBAとの主な違い |
|---|---|---|
| 熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE) | ポリアミド系TPEの上位概念。PEBAを含む。 | PEBAはTPAEの主要サブタイプで、ソフトセグメントがポリエーテルである。 |
| ナイロン12(PA12) | 低吸水・耐燃料性に優れる長鎖ポリアミド。 | PA12はより高剛性。PEBAはポリエーテルブロックにより柔軟性、弾性回復、低温特性が高い。 |
| 熱可塑性ポリウレタン(TPU) | 高引張強度、耐摩耗、広い硬度範囲。 | PEBAは一般に低密度、低温弾性、反発性で有利。TPUは接着性や一般流通性で有利な場合がある。 |
| 熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE) | 耐熱、耐油、疲労、反発弾性。 | TPEEは高温剛性で有利な場合がある。PEBAは低密度・低温柔軟性に強い。 |
| SEBS | 低硬度、耐候性、触感、配合自由度。 | SEBSは低価格・低密度・低吸水で有利。PEBAは耐油・耐燃料・機械強度・高反発で有利な場合が多い。 |
| 熱可塑性エラストマー(TPE) | TPS、TPO、TPV、TPU、TPEE、TPAE等の総称。 | PEBAはTPEの中でも高機能・高価格側に位置する。 |
| ポリアミド(PA) | アミド結合を持つエンプラ群。 | PEBAはPAハードセグメントを持つが、ポリエーテル導入によりゴム弾性を示す。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Arkema | Pebax® / Pebax® Rnew® | PA系ハードブロックとポリエーテルソフトブロックからなるPEBAを広い硬度範囲で展開。スポーツ、医療、工業、フィルム等で実績。 |
| Evonik | VESTAMID® E | PA12セグメントとポリエーテルセグメントを組み合わせたPEBA。スポーツ、チューブ、医療、機構部品等に展開。日本ではダイセル・エボニックが取り扱う。 |
| ダイセル・エボニック | DAIAMID® E / VESTAMID® E | 日本市場向けにPEBA(PA12エラストマー)を展開。射出・押出、医療・スポーツ・一般工業用途の情報を提供。 |
関連キーワード
ポリエーテルブロックアミド(PEBA) 熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE) PA12 ポリアミド 熱可塑性エラストマー TPU TPEE SEBS PTMG ポリエーテル スポーツシューズ 医療チューブ カテーテル チューブ押出 射出成形 発泡成形 3Dプリント 耐薬品性 SP値 環境応力割れ ISO 10993 UL 94