概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | 押出発泡ポリスチレン |
| 略記号 | XPS |
| IUPAC | Poly(1-phenylethene)を主成分とする発泡体 |
| 英語名 | Extruded Polystyrene Foam / Extruded Polystyrene Insulation |
| 日本語名 | 押出発泡ポリスチレン、押出法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム断熱材、XPSフォーム |
| 分類 | 発泡プラスチック、硬質独立気泡フォーム、断熱材 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック系発泡体 |
| 化学式または代表構造 | ポリスチレンの繰り返し単位:[-CH2-CH(C6H5)-]n |
| CAS No. | 9003-53-6(ポリスチレンとして) |
| 構造・主成分 | ポリスチレンを主成分とし、独立気泡構造を形成した硬質発泡体。発泡剤、難燃剤、気泡調整剤、赤外線遮蔽材、着色剤等を含む場合がある。 |
| 主な用途 | 住宅・建築物の床、壁、屋根、基礎、外断熱、土木用軽量盛土、冷凍・冷蔵設備、畳床、芯材、模型材 |
押出発泡ポリスチレンは、ポリスチレン樹脂を押出機内で溶融し、発泡剤を高圧混合した後、ダイから連続的に押し出して発泡・成形した硬質発泡プラスチックである。一般にXPSと略記され、建築分野では押出法ポリスチレンフォーム断熱材として広く使用される。
XPSは微細な独立気泡を形成しやすく、低い熱伝導率、低吸水性、軽量性、比較的高い圧縮強さを併せ持つ。特に床、基礎、屋根、外断熱、土木軽量盛土等のように、断熱性能と耐水性、耐圧性が同時に要求される用途で有用である。
一方、主成分は非晶性のポリスチレンであるため、耐熱性、耐溶剤性、燃焼性には制約がある。実使用では製品区分、密度、厚さ、熱伝導率、圧縮荷重、温度、湿度、接着剤・塗料・防水材との相性、防火構成、使用時間を確認する必要がある。
特徴
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 低熱伝導率、低吸水性、軽量性、比較的高い圧縮強さ、板状寸法安定性、切断施工性に優れる。 |
| 短所 | 可燃性、耐熱性の低さ、溶剤への弱さ、紫外線劣化、長期荷重下の圧縮クリープ、点荷重による局部破壊に注意が必要である。 |
| 外観 | 一般に青、緑、桃、黄等に着色された硬質板状フォーム。切断面には微細な独立気泡が見られる。 |
| 耐熱性 | 主成分PSのTgは約90~105℃であるが、XPS製品の実用連続使用温度は一般に約60~70℃以下が目安となる。高温では収縮、反り、クリープが増加する。 |
| 耐薬品性 | 水、希薄酸、希薄アルカリ、低級アルコールには比較的安定である一方、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤、ガソリン等で膨潤・溶解しやすい。 |
| 加工性 | 押出発泡による連続板成形が主体。二次加工は切断、溝加工、熱線加工、接着、面材積層が可能である。 |
| 分類上の注意 | EPSはビーズ法発泡体、XPSは押出発泡による連続板状体であり、製法、気泡構造、吸水性、圧縮特性が異なる。 |
構造式
XPSの主成分はポリスチレンであり、化学構造自体は非発泡PSと同じである。XPS固有の低密度・低熱伝導率・低吸水性は、微細な独立気泡構造と発泡倍率に由来する。

代表的な構造単位
[-CH2-CH(C6H5)-]n
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主モノマー | スチレン |
| モノマー化学式 | C8H8 |
| ポリマー主鎖 | 炭素-炭素結合からなるビニルポリマー主鎖 |
| 側鎖 | フェニル基(C6H5) |
| 発泡構造 | 独立気泡を主体とする。気泡径、気泡分布、表皮層が熱・機械・吸水特性を左右する。 |
| 変性・添加 | 難燃剤、気泡核剤、赤外線遮蔽材、顔料、安定剤、再生PS等を配合する場合がある。 |
種類・代表グレード
| 種類・グレード | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所・注意点 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 1種b | 比較的低密度の一般断熱グレード | 軽量、加工しやすい | 圧縮強さと断熱性能は上位種より低い | 壁、天井、一般断熱 |
| 2種b | 密度・圧縮強さ・断熱性能を高めたグレード | 性能と価格のバランス | 高荷重用途では3種を検討 | 床、屋根、外張り断熱 |
| 3種a | 高断熱・高圧縮強度型。製品区分により熱伝導率を低減 | 薄肉化しやすい | 一般に価格が高い | 高性能住宅、屋根、冷凍・冷蔵 |
| 3種b | 曲げ強さを含め高強度化したグレード | 床・基礎・土木で使いやすい | 重量・価格が上がる場合がある | 基礎、土間、土木 |
| スキン層あり | 押出表皮を保持した製品 | 透湿・表面耐久に有利な場合がある | 接着・モルタル付着性は表面仕様確認が必要 | 複合板、特殊施工 |
| 高断熱グレード | 微細気泡、発泡剤、赤外線遮蔽材等を最適化 | 熱伝導率0.020~0.024 W/(m・K)級の製品がある | 製品ごとに長期熱性能と施工条件確認が必要 | ZEH、高断熱建築 |
| 難燃グレード | 難燃剤を配合しJIS燃焼性等に対応 | 施工時の火災リスク低減に寄与 | 不燃材料ではなく、火気・溶接火花から保護が必要 | 建築断熱材全般 |
| 再生材配合グレード | 管理された回収材・再生PSを一部使用 | 資源循環に寄与 | 色調、臭気、物性、認証は製品ごとに確認 | 建築・土木 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 理由・主な注意点 |
|---|---|---|
| 射出成形 | × | XPS製品の成形法ではない。PS原料自体は射出成形可能である。 |
| 押出発泡成形 | ◎ | XPSの基本製法。溶融PSへ発泡剤を圧入し、ダイ出口で発泡させる。 |
| ブロー成形 | × | 板状硬質フォームには一般的でない。 |
| 真空成形 | △ | 薄いPS発泡シートでは可能だが、建築用厚板XPSには一般的でない。 |
| 圧縮成形 | × | 通常の製品製法ではない。 |
| 発泡成形 | ◎ | 連続押出発泡が主体である。 |
| 切削加工 | ○ | 切断、溝加工、穴あけ、NC加工が可能。粉じん・欠け・熱変形に注意する。 |
| 熱線切断 | ◎ | 形状加工に適する。局所溶融、発煙、換気に注意する。 |
| 接着 | ○ | 水系、無溶剤型、XPS適合品を使用する。溶剤型は溶解・収縮の危険がある。 |
| 塗装・防水材接触 | △ | 溶剤を含む塗料、防水材、プライマーは適合確認が必須である。 |
| 機械締結 | ○ | 座金・面圧分散が必要。締付け過多では局部圧壊する。 |
一般的な製造・加工条件
| 項目 | 単位 | 代表範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 原料乾燥温度 | ℃ | 60~80 | PS原料の保管状態・再生材比率により調整する。 |
| 原料乾燥時間 | h | 2~4 | 過乾燥・熱履歴増加を避ける。 |
| 溶融混練温度 | ℃ | 180~240 | 樹脂、発泡剤、押出機構成により大きく異なる。 |
| 発泡ダイ直前温度 | ℃ | 100~160 | 発泡剤溶解、粘度、気泡安定化を考慮して低下させる。 |
| 発泡剤圧入圧力 | MPa | 5~25 | 設備・発泡剤・密度により大きく変動。 |
| 成形収縮率 | % | 0.2~1.5 | 押出方向、幅方向、厚さ方向、高温履歴で異なる。 |
| 推奨使用上限温度 | ℃ | 60~70 | 長期荷重・接着層・外装条件により低下する。 |
| 二次加工 | ― | 切断、溝加工、熱線加工、面材貼合 | 粉じん、静電気、発煙、溶剤侵食に注意する。 |
上記は材料群としての一般的な目安であり、実際の押出条件は発泡剤、押出機L/D、スクリュー構成、ダイ、冷却装置、製品厚さ、目標密度によって大きく異なる。
代表的な物性値又は機械的性質
以下は主に建築用XPS断熱材の代表範囲である。比較機能用の代表値は単一数値として分離し、範囲、規格、条件、状態、信頼度を別欄にした。特定メーカーの特定製品値ではない。
| 項目 | 単位 | 代表値 | 代表範囲 | 試験規格・方法 | 試験温度・条件 | 材料状態 | 信頼度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.020 | 0.020~0.050 | JIS A 9521相当の製品群 | 23℃付近 | 製品状態 | A | 20~50 kg/m³に相当。区分・表皮・高強度品で変動 |
| 比重 | 無次元 | 0.020 | 0.020~0.050 | 密度からの換算 | 23℃付近 | 製品状態 | B | 発泡体の見掛け比重 |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.028 | 0.020~0.040 | JIS A 9521、平均温度23℃付近 | 規格条件 | 製品状態 | A | 製品記号λ20~λ40に対応。経時値・設計値は製品資料を確認 |
| 吸水量 | g/100cm² | 0.01 | 0~0.01 | JIS A 9521 | 規格条件 | 製品状態 | A | 表面積基準。体積吸水率とは単純換算しない |
| 透湿係数・厚さ25 mm | ng/(m²・s・Pa) | 55 | 55~145 | JIS A 9521 | 規格条件 | 製品状態 | A | スキン層・製品区分で異なる |
| 圧縮強さ | kPa | 200 | 160~300 | JIS A 9521相当 | 23℃付近 | 製品状態 | A | 16~30 N/cm²相当。変形条件は規格・製品資料を確認 |
| 曲げ強さ | kPa | 250 | 200~400 | JIS A 9521相当 | 23℃付近 | 製品状態 | A | 20~40 N/cm²相当。製品区分で変動 |
| 圧縮弾性率 | MPa | 10 | 5~20 | 代表値、規格不明 | 23℃付近 | 製品状態 | C | 密度、ひずみ範囲、試験速度に強く依存 |
| 引張強さ | kPa | 250 | 150~500 | 代表値、規格不明 | 23℃付近 | 製品状態 | C | 方向、表皮、密度に依存 |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 7 | 6~10 | 代表値、規格不明 | 常温域 | 製品状態 | C | 発泡方向と幅方向で異方性を持つ場合がある |
| 連続使用温度 | ℃ | 65 | 60~70 | 一般的な設計目安 | 連続 | 製品状態 | B | 荷重、厚さ、接着層、周辺材料により低下する |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 75 | 70~80 | 一般的な目安 | 短時間 | 製品状態 | C | 変形・収縮を許容しない用途では実製品試験が必要 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 100 | 90~105 | 主成分PS | 乾燥 | 樹脂相 | A | フォームの実用耐熱温度とは異なる |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 非晶性PS | ― | 樹脂相 | A | 明確な融点を持たない |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×10¹⁵ | 1×10¹⁴~1×10¹⁷ | 代表値、規格不明 | 23℃、乾燥 | 製品状態 | C | 添加剤、湿度、帯電防止処方で変動 |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 1.2 | 1.1~1.4 | 代表値、規格不明 | 23℃、乾燥 | 製品状態 | C | 発泡倍率と気泡率に依存 |
| UL 94燃焼性 | 等級 | グレード依存 | HB~V相当の認定品あり | 個別グレード | 規格条件 | 製品状態 | C | 材料群として一律認定ではない。JIS燃焼性とUL 94は別規格 |
寸法精度・設計特性
- 短時間の圧縮強さを、そのまま長期設計許容応力として使用しない。床、基礎、土木用途では長期圧縮クリープを確認する。
- 点荷重、アンカー、ビス、脚部荷重は局部圧壊を生じやすいため、面圧分散板又は座金を用いる。
- 押出方向、幅方向、厚さ方向で気泡配向が異なり、強度、線膨張、収縮に異方性が生じる場合がある。
- 高温下では弾性率と圧縮強さが低下し、熱収縮とクリープが増加する。
- 接着複合体ではXPS単体だけでなく、面材、接着剤、モルタル、防水層との熱膨張差を評価する。
難燃性・燃焼性
XPSは有機系可燃材料である。難燃剤配合品やJIS燃焼性適合品であっても不燃材料ではなく、火炎、溶接火花、トーチ、防水施工時の熱源から隔離する必要がある。UL 94はグレード、厚さ、色、製造拠点ごとの認定であり、XPS材料群全体へ一律に適用してはならない。
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 2 | 発泡体であり未発泡PSより低い。 |
| 剛性 | 3 | 板状フォームとして十分だが、点荷重には弱い。 |
| 衝撃強度 | 2 | 脆性的に欠けやすい。 |
| 耐熱性 | 2 | 実用上限は概ね60~70℃程度。 |
| 低温特性 | 4 | 低温断熱用途に適するが、接着層・熱収縮差を確認する。 |
| 耐薬品性 | 2 | 水・酸・アルカリには比較的良好だが、多くの有機溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 2 | 無被覆の紫外線曝露で表面劣化する。 |
| 耐加水分解性 | 5 | PS骨格は加水分解を受けにくい。 |
| 寸法安定性 | 3 | 常温では良好だが、高温・長期荷重で収縮・クリープがある。 |
| 低吸水性 | 5 | 独立気泡により非常に低い。 |
| 電気絶縁性 | 5 | 発泡体として高い絶縁性を示す。 |
| 難燃性 | 2 | 難燃品でも不燃ではない。 |
| 成形加工性 | 3 | 連続押出発泡には専用設備が必要だが、二次加工は容易。 |
| 切削加工性 | 5 | 切断、溝加工、熱線加工が容易。 |
| 接着性 | 3 | 適合接着剤では良好だが、溶剤侵食に注意する。 |
| リサイクル性 | 3 | PSとして再生可能だが、かさ高・汚染・複合化が課題。 |
| 価格優位性 | 4 | 高性能断熱材として比較的入手性が高く、性能当たりの価格競争力がある。 |
耐薬品性
下表はXPS又は主成分PSの一般的傾向を基にした一次選定用である。発泡体では薬品による樹脂相の膨潤・溶解に加え、気泡内への浸透、表皮層の有無、接着剤・面材への影響、毛細管侵入を考慮する必要がある。
| 薬品名 | 濃度 | 温度 | 接触時間・方法 | 応力 | 評価 | 主な劣化形態・備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | 100% | 23℃ | 長期浸漬 | 無 | ◎ | 吸水は小さいが、切断面・継ぎ目・凍結融解を確認する。 |
| 温水 | 100% | 60℃ | 長期 | 無 | ○ | 吸水より熱変形・寸法変化・圧縮クリープに注意する。 |
| 塩酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | PS骨格への化学反応は小さい。製品表面・添加剤影響を確認する。 |
| 硫酸 | 10% | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 希薄条件では比較的安定。濃硫酸・高温は別途評価する。 |
| 水酸化ナトリウム | 10% | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 一般に安定。界面活性剤併用時は濡れ・侵入に注意する。 |
| エタノール | 100% | 23℃ | 24 h | 無 | ○ | 短時間では概ね安定だが、接着層・長期接触を確認する。 |
| IPA | 100% | 23℃ | 24 h | 無 | ○ | 長時間、高温、応力下では表面変化を確認する。 |
| グリセリン | 100% | 23℃ | 168 h | 無 | ◎ | 一般に影響が小さい。 |
| トルエン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 急速な膨潤、軟化、溶解が起こり得る。 |
| キシレン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 膨潤・溶解の危険が高い。 |
| ヘキサン | 100% | 23℃ | 24 h | 無 | △ | 発泡体へ浸透し、膨潤・強度低下が生じる場合がある。 |
| ガソリン | 市販燃料 | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 芳香族成分等により溶解・収縮しやすい。 |
| アセトン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 著しい軟化・溶解が起こる。 |
| MEK | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 著しい軟化・溶解が起こる。 |
| 酢酸エチル | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 膨潤・溶解が起こりやすい。 |
| ジクロロメタン | 100% | 23℃ | 短時間 | 無 | × | 強い溶解性を示す。 |
| 鉱物油 | 一般潤滑油 | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 油種、芳香族分、添加剤により変動する。 |
| 食用油 | 植物油 | 23℃ | 168 h | 無 | ○ | 通常は影響が小さいが、高温油は熱変形を確認する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 0.1% | 23℃ | 24 h | 無 | ○ | 樹脂骨格への影響は小さいが、酸化劣化・添加剤変色を確認する。 |
| 中性洗剤 | 1% | 23℃ | 24 h | 無 | ○ | 界面活性剤による濡れ・継ぎ目浸入を確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
ポリスチレンの代表的なSP値は約18.6 MPa1/2である。XPSの樹脂相も概ね同等であるが、発泡体の薬品接触では見掛け密度、気泡構造、表皮、添加剤、接着層が影響するため、SP値のみで耐薬品性を判定してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 Δδ | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0~2 | 膨潤・軟化・溶解しやすい | × |
| 2~5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | PSとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| スチレン | 18.6 | 0.0 | × | 同系モノマーで強く膨潤・溶解 |
| トルエン | 18.2 | 0.4 | × | 強い溶解性 |
| キシレン | 18.0 | 0.6 | × | 強い膨潤・溶解性 |
| 酢酸エチル | 18.2 | 0.4 | × | 実際にも溶解しやすい |
| MEK | 19.0 | 0.4 | × | 実際にも溶解しやすい |
| アセトン | 19.9 | 1.3 | × | 急速に軟化・溶解 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 1.6 | × | 強溶剤 |
| ヘキサン | 14.9 | 3.7 | △ | SP差だけでは中間域。浸透・添加剤影響を確認 |
| IPA | 23.5 | 4.9 | ○ | 短時間は比較的安定だが長期確認が必要 |
| エタノール | 26.0 | 7.4 | ○ | 一般に比較的安定 |
| 水 | 47.9 | 29.3 | ◎ | 溶解・膨潤しにくい |
SP値差が大きくても、酸化、添加剤抽出、界面活性剤による濡れ、応力割れ、温度上昇、混合溶剤の相乗効果により劣化する場合がある。実使用では実薬品、濃度、温度、接触時間、荷重、応力、試験片形状、切断面の有無を再現して確認する。
製法
XPSは、ポリスチレン樹脂を押出機で溶融し、発泡剤を高圧注入して均一に混合した後、ダイ出口で圧力を低下させて発泡させ、板状に連続成形する。化学反応として新しいポリマーを生成する工程ではなく、既に重合されたポリスチレンを物理発泡する工程が主体である。

原料
- ポリスチレン樹脂:一般PS又は製品設計に応じたスチレン系樹脂を用いる。
- 発泡剤:二酸化炭素、炭化水素系、HFO等が用いられる場合がある。種類と配合は製品・設備により異なる。
- 難燃剤:建築用途の燃焼性要求に対応するため配合される。
- 気泡核剤・安定剤:気泡径、気泡密度、押出安定性、熱老化を調整する。
- 赤外線遮蔽材:高断熱品で放射伝熱を抑制する目的で配合される場合がある。
- 顔料・再生材:識別色、製品設計、資源循環のため使用される場合がある。
代表的な重合反応
n CH2=CH-C6H5 → [-CH2-CH(C6H5)-]n
上式は原料ポリスチレンの代表的な付加重合反応である。XPS製造工程では、重合済みPSを溶融・発泡するため、主工程は物理混合、減圧発泡、冷却固化である。
詳細な利用用途
| 用途 | 適性 | 選定理由・注意点 |
|---|---|---|
| 床・土間断熱 | ◎ | 圧縮強さ、低吸水性、板状施工性に優れる。長期荷重、点荷重、継ぎ目を確認する。 |
| 基礎外断熱・基礎内断熱 | ◎ | 湿潤土壌下で低吸水性を活かせる。防蟻仕様、紫外線、保護層を確認する。 |
| 屋根・屋上断熱 | ○ | 高断熱・耐圧品が使用される。防水材溶剤、高温、火気、風圧に注意する。 |
| 外壁・外張り断熱 | ◎ | 連続断熱層を形成しやすい。目地、固定、透湿、防火構成を確認する。 |
| 冷凍・冷蔵倉庫 | ○ | 低温断熱・低吸水に適する。JIS A 9521の通常建築用途外となる場合があり、専用品仕様を確認する。 |
| 土木軽量盛土 | ◎ | 軽量性と圧縮強さを活用する。長期クリープ、浮力、燃料・溶剤汚染を評価する。 |
| 畳床・建材芯材 | ◎ | 軽量、断熱、寸法加工性に優れる。局部荷重と接着剤適合性を確認する。 |
| 模型・造形 | ○ | 切削・熱線加工が容易。塗料・接着剤の溶剤に注意する。 |
| 自動車衝撃吸収材 | △ | 用途によってはEPS/EPPが一般的。XPSは板状芯材・断熱用途向け。 |
| 食品接触部材 | △ | 一般建材グレードを食品接触に転用しない。適合法規・証明書を確認する。 |
| 医療機器部品 | × | 一般的なXPS建材は医療用途材料ではない。専用材料・清浄性・溶出性が必要。 |
| 透明カバー・レンズ | × | 発泡不透明体であり光学用途に適さない。 |
品質・成形不良
| 不良・現象 | 主な原因 | 材料側要因 | 工程側要因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|---|
| 密度むら | 発泡剤濃度・温度・圧力の変動 | 粘度差、再生材ばらつき | 混練不足、ダイ温度偏差 | 原料均一化、圧力・温度の閉ループ管理 |
| 気泡粗大化 | 核生成不足、冷却不足 | 核剤不足、溶融強度不足 | 発泡温度過高、引取不適 | 核剤・温度・冷却条件の最適化 |
| 連続気泡化 | 気泡壁破断 | 樹脂粘度不足、発泡剤過多 | 急膨張、冷却遅れ | 溶融強度確保、減圧・冷却条件調整 |
| 反り・厚さむら | 温度・引取・冷却の左右差 | 異方性、残留発泡剤 | ダイギャップ、冷却偏差 | ダイ調整、均一冷却、熟成管理 |
| 表面割れ・荒れ | 表皮形成不良 | 気泡粗大、添加剤分散不良 | ダイ温度、引取速度不適 | ダイ条件と表面冷却の最適化 |
| 臭気・アウトガス | 残留発泡剤、揮発成分 | 発泡剤、再生材、添加剤 | 熟成不足、保管不良 | 熟成時間確保、換気、SDS確認 |
| 接着不良 | 表面汚染、表皮、接着剤不適合 | 低表面エネルギー、添加剤移行 | 塗布量不足、硬化不足 | 適合接着剤、表面清掃、実接着試験 |
劣化・故障モードと推奨確認試験
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観・性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱収縮・反り | 高温、直射日光、熱源近接 | 屋根、防水施工時、夏季保管 | 寸法変化、隙間、断熱欠損 | 遮熱・養生、温度上限を守る | 70℃前後の寸法安定性、実施工ヒートサイクル |
| 圧縮クリープ | 長期面圧、点荷重、高温 | 床、基礎、土木 | 沈下、段差、仕上げ材割れ | 設計荷重に対する長期許容応力を採用 | 長期圧縮クリープ試験 |
| 溶剤侵食 | 芳香族、ケトン、エステル、塩素系溶剤 | 接着剤、塗料、防水材、燃料漏れ | 溶解、収縮、空洞化 | XPS適合品を選定し事前接触試験 | 実薬品滴下・浸漬試験 |
| 紫外線劣化 | 屋外曝露 | 施工中、露出保管 | 黄変、粉化、表面脆化 | 速やかに被覆、遮光保管 | キセノンアーク、屋外曝露 |
| 燃焼・溶融滴下 | 火炎、溶接火花、高温作業 | 施工現場、改修工事 | 着火、煙、断熱欠損 | 不燃被覆、火気隔離、難燃品選定 | 規定燃焼性・施工構成試験 |
| 吸水・凍結融解 | 切断面、損傷、継ぎ目からの水侵入 | 地下、屋外、排水不良 | 質量増加、断熱低下、界面剥離 | 排水・防水・目地処理 | 吸水・凍結融解サイクル |
| 接着剥離 | 不適合接着剤、表面汚染、熱膨張差 | 複合板、外断熱 | 剥離、浮き、界面空隙 | 適合プライマー、面材との相性確認 | 接着強度、湿熱、熱サイクル |
| 虫害・防蟻 | シロアリ等による穿孔 | 基礎外断熱、地中近傍 | 断熱欠損、侵入経路形成 | 防蟻設計、点検可能化、防蟻仕様 | 地域条件に応じた防蟻試験・現場点検 |
法規制・認証
| 規格・法規 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| JIS A 9521 | 建築用断熱材としてXPSの種類、熱伝導率、密度、圧縮強さ、曲げ強さ、吸水量、燃焼性等を規定する。 | 製品記号・認証範囲を確認する。 |
| JIS A 9511 | 設備・配管等を含む発泡プラスチック保温材の規格。 | 用途が建築用断熱材か保温材かを区別する。 |
| 建築基準法・防火規定 | XPSは有機系可燃材料であり、部位・建物用途に応じた防火被覆、認定構成が必要となる。 | 材料単体ではなく壁・屋根等の構成認定を確認する。 |
| RoHS・REACH | 一般に対応可能な製品があるが、難燃剤、顔料、添加剤を含め個別製品証明が必要である。 | メーカーの最新版適合書を確認する。 |
| 日本の食品衛生法・FDA | 建築用XPSが自動的に食品接触適合するものではない。 | 食品接触専用品の証明書を確認する。 |
| UL認証 | 一部材料・複合体で認証が存在する場合がある。 | グレード、厚さ、色、製造拠点を含む認証範囲を確認する。 |
| フロン関連 | JIS A 9521は発泡剤としてCFC、HCFC、HFCを使用しない断熱材を対象とする。 | HFOは規格上のフロン類定義から除外される場合がある。製品SDSを確認する。 |
| 廃棄・リサイクル | 熱可塑性PSとして再資源化可能であるが、接着剤、モルタル、面材、異物付着で難しくなる。 | 分別回収ルート、地域の処理基準を確認する。 |
環境・リサイクル性
XPSは熱可塑性のポリスチレン発泡体であり、清浄な単一材であれば粉砕、減容、再ペレット化等によるマテリアルリサイクルが可能である。ただし、建築解体材は接着剤、モルタル、面材、防水材、土砂等が付着しやすく、分別と輸送時のかさ高さが課題となる。再生材使用時は臭気、色、異物、分子量低下、気泡安定性、難燃性、認証範囲を確認する必要がある。
バイオベース又はマスバランス原料を使用する製品が将来増える可能性はあるが、バイオベースと生分解性は別概念である。一般的なXPSは生分解性材料ではない。
価格・供給性
| 項目 | 相対評価 | 内容 |
|---|---|---|
| 価格区分 | 比較的低価格~中価格 | 厚さ、JIS区分、高断熱性能、表面加工、購入量で変動する。 |
| 国内入手性 | 良好 | 主要建材ルート、断熱材販売店、ホームセンター等で入手可能な製品がある。 |
| 少量購入 | 比較的容易 | 標準寸法品は少量入手しやすいが、高性能品・特殊厚さは取寄せとなる場合がある。 |
| 供給形態 | 板、加工品、複合板 | 標準板、溝加工品、面材貼合品、土木ブロック等がある。 |
| 特注条件 | 色、厚さ、表面、強度、断熱性能 | 最小購入量、納期、加工費を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | XPSとの違い |
|---|---|---|
| 発泡ポリスチレン(EPS) | ビーズ法発泡、軽量、成形自由度、低コスト | XPSは連続板状、吸水性と圧縮強さで有利になりやすい。EPSは複雑形状・緩衝用途に有利。 |
| 硬質ウレタンフォーム | 低熱伝導率、吹付け・注入・複合板が可能 | 硬質PUは同厚みで高断熱化しやすい。XPSは低吸水、板状施工、切削性に優れる。 |
| フェノールフォーム | 高断熱、比較的良好な難燃性 | フェノールフォームは火災性能で有利な場合がある。XPSは耐水性・圧縮施工性で有利。 |
| 発泡ポリエチレン | 柔軟、耐水、緩衝、シール性 | XPSは硬質板状で断熱・圧縮用途向け。発泡PEは柔軟性と緩衝性を重視する。 |
| 発泡ポリプロピレン(EPP) | 反発弾性、耐衝撃、繰返し耐久性 | EPPは自動車緩衝材等に適する。XPSは建築断熱板として低熱伝導率と低吸水性を重視する。 |
| 非発泡ポリスチレン(PS) | 高密度、剛性、成形性、透明性 | XPSは大幅に軽量で断熱性が高いが、機械強度、表面硬度、耐熱性は低下する。 |
| グラスウール | 不燃性、吸音性、施工追従性 | グラスウールは防火・吸音で有利。XPSは低吸水、圧縮強さ、基礎・床用途で有利。 |
| ロックウール | 耐火性、吸音性、高温安定性 | ロックウールは火災・高温で有利。XPSは軽量、切断性、低吸水性に優れる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| デュポン・スタイロ株式会社 | スタイロフォーム® | 国内で広く用いられるXPS断熱材。JIS A 9521適合品、各種断熱性能・用途別製品を展開する。 |
| 株式会社カネカ | カネライトフォーム® | 住宅・建築・土木向けの押出法ポリスチレンフォーム。高断熱・高強度系を含む。 |
| 株式会社JSP | ミラフォーム®、ミラフォーム®Λ | 押出法ポリスチレンフォーム断熱材。一般品から高性能断熱グレードまで展開する。 |
製品名、JIS区分、熱伝導率、圧縮強さ、厚さ、難燃性、環境対応は変更される場合がある。採用時は各メーカーの最新版カタログ、SDS、JIS認証書、法規適合書を確認する。
関連キーワード
押出発泡ポリスチレン、 XPS、 ポリスチレン、 発泡ポリスチレン、 EPS、 硬質ウレタンフォーム、 発泡ポリエチレン、 発泡ポリプロピレン、 建築用断熱材、 押出発泡成形、 独立気泡、 熱伝導率、 圧縮クリープ、 環境応力割れ、 JIS A 9521、 JIS A 9511
用途決定前の推奨確認試験
- 実薬品浸漬・滴下試験:接着剤、塗料、防水材、燃料、洗浄剤を実濃度・実温度で確認する。
- 長期圧縮クリープ試験:設計温度、面圧、使用期間を想定し、短時間圧縮強さではなく長期変形量を評価する。
- 高温寸法安定性試験:60~80℃の実使用上限域で厚さ、長さ、反り、質量変化を測定する。
- 吸水・凍結融解試験:切断面、継ぎ目、損傷部を含め、浸水と凍結融解の繰返しを評価する。
- 接着・複合体試験:面材、モルタル、接着剤、防水層を含む実構成で剥離強さ、湿熱、熱サイクルを確認する。
- 燃焼・防火構成試験:材料単体だけでなく、実際の壁、床、屋根、防火被覆を含む認定構成を確認する。
- 紫外線促進耐候試験:施工中又は露出用途を想定し、変色、粉化、表面強度を測定する。
- 実施工・実部品耐久試験:温度、湿度、荷重、応力、厚さ、固定方法、目地、防蟻条件を再現する。
本ページの数値及び評価は材料選定の一次比較用である。最終採用では、対象グレード、製品記号、厚さ、密度、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、成形・施工条件、法規制を確認する必要がある。