発泡ポリウレタン

概要

項目 内容
材料名 発泡ポリウレタン
略記号 PUF、PURフォーム、PUフォーム
IUPAC 単一のIUPAC名を持つ物質ではない。ウレタン結合を含む架橋高分子発泡体の総称である。
英語名 Polyurethane Foam / Polyurethane Cellular Material
日本語名 発泡ポリウレタン、ウレタンフォーム、PUフォーム。軟質品はウレタンスポンジとも呼ばれる。
分類 反応発泡型高分子材料、熱硬化性発泡プラスチック又は発泡エラストマー
プラスチック分類 用途横断型材料。軟質、半硬質、硬質、PIR系、インテグラルスキン等を含む。
化学式又は代表構造 主鎖又は架橋構造中に –NH–C(=O)–O– を含む。水発泡ではCO₂によりセルを形成する。
CAS No. 9009-54-5がポリウレタンの代表CASとして扱われる場合があるが、配合物全体を一意に示すものではない。製品SDSを確認する。
構造・主成分 ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、架橋剤、難燃剤、顔料、充填材等。
主な用途 家具・寝具、自動車シート、吸音材、包装緩衝材、建築断熱材、冷蔵庫・冷凍設備、断熱パネル、配管保温、靴底、グリップ等。

発泡ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートの重付加反応と、化学発泡又は物理発泡を同時に進行させて得られるセル構造材料である。原料組成、架橋密度、発泡倍率、セル径、開放気泡率又は独立気泡率により、低密度の軟質クッション材から高断熱の硬質フォームまで幅広い設計が可能である。

軟質フォームは一般に開放気泡構造を持ち、クッション性、反発弾性、吸音性及び加工性に優れる。硬質フォームは独立気泡率が高く、低熱伝導率、軽量性、接着性及び断熱性に優れる。半硬質、低反発、高反発、インテグラルスキン、PIR系、難燃及び構造用強化フォーム等も存在する。

材料選定では、発泡ポリウレタンを単一材料として扱わず、軟質又は硬質、ポリエーテル系又はポリエステル系、密度、セル構造、イソシアネート種、難燃剤、発泡剤、表皮材、使用温度、湿度、薬品、荷重、圧縮率及び使用時間を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 密度、硬さ、反発弾性、セル構造及び機械特性を広範囲に設計できる。
  • 軟質フォームはクッション性、衝撃吸収性、吸音性及び加工性に優れる。
  • 硬質フォームは断熱性、軽量性、現場充填性及び各種面材への接着性に優れる。
  • モールド発泡、スラブ発泡、スプレー発泡、連続ラミネート及びRIM等に対応できる。
短所
  • 芳香族イソシアネート系は紫外線及び熱で黄変しやすい。
  • ポリエステル系は高温高湿、熱水又はアルカリ条件で加水分解しやすい場合がある。
  • 長期圧縮でへたり、圧縮永久ひずみ、セル破壊又は寸法変化が生じる場合がある。
  • 汎用品は燃焼しやすい場合があり、用途別の燃焼規格確認が必要である。
  • 熱硬化性フォームは再溶融できず、マテリアルリサイクルが限定される。
外観

白色、淡黄色、黄色、灰色、黒色等が一般的である。軟質品は多孔質のスポンジ状、硬質品は微細独立気泡を持つ板状、ブロック状又は現場発泡層として使用される。色調及び表面状態は原料、顔料、セル径、表皮形成及び経時劣化により変化する。

耐熱性

一般的な軟質フォームの連続使用温度はおおむね70~90℃程度、硬質PURフォームはおおむね80~110℃程度が目安である。PIR系はさらに高温側で検討されるが、長期耐熱性は密度、面材、酸素、湿度、荷重及び燃焼規格に依存する。

耐薬品性

希薄酸、希薄アルカリ、脂肪族炭化水素及び一部の油に比較的耐えるグレードがある。一方、強酸、強アルカリ、熱水、蒸気、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素系溶剤及び強極性溶剤では、膨潤、軟化、加水分解、接着剥離又はセル崩壊に注意する。

加工性

反応発泡後のフォームは、裁断、スライス、打抜き、プロファイル加工、接着、ラミネート及び一部の切削加工が可能である。通常の熱可塑性樹脂のような再溶融成形はできない。

分類上の注意

発泡ポリウレタンには軟質、半硬質、硬質及びPIR系があり、同じPUF表記でも物性が大きく異なる。熱可塑性ポリウレタンであるTPU、非発泡のポリウレタン軟質ウレタンフォームと区別する必要がある。

構造式

発泡ポリウレタンの代表構造式と発泡反応

発泡ポリウレタンは単一の繰返し単位だけで表せる均一高分子ではなく、ウレタン結合、尿素結合、エーテル又はエステル鎖、分岐及び架橋構造を含むネットワーク高分子である。

代表的な構造単位
項目 構造・内容
ウレタン結合 –NH–C(=O)–O–
代表セグメント –O–R′–O–C(=O)–NH–R–NH–C(=O)–
水との発泡反応 R–NCO + H₂O → R–NH₂ + CO₂↑
尿素結合形成 R–NH₂ + R–NCO → R–NH–C(=O)–NH–R
PIR構造 過剰イソシアネートの三量化によりイソシアヌレート環を形成する。
モノマー又は構成成分
構成成分 代表例 主な役割
ポリオール ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等 柔軟性、耐加水分解性、耐油性、硬さ及び架橋密度を調整する。
ポリイソシアネート TDI、MDI、ポリメリックMDI、変性MDI等 ウレタン結合、尿素結合及び架橋構造を形成する。
発泡剤 水、CO₂、炭化水素系、HFO、HCFO等 密度、セル構造、熱伝導率及び寸法安定性を調整する。
触媒 アミン触媒、金属触媒等 ゲル化反応、発泡反応及び三量化反応を制御する。
整泡剤 シリコーン系界面活性剤等 セル径、セル均一性、開孔性及び独立気泡性を制御する。

種類・代表グレード

種類・グレード 主成分又は特徴 長所 短所 主な用途
軟質フォーム 開放気泡、低架橋、低~中密度 クッション性、反発性、吸音性 へたり、黄変、燃焼性 家具、寝具、自動車シート
高反発フォーム 弾性回復性を高めた軟質フォーム 耐久性、座り心地 配合・密度依存性が大きい シート、椅子、マットレス
低反発フォーム 粘弾性を高めた軟質フォーム 体圧分散、衝撃吸収 温度依存、復元遅延 枕、マットレス、医療・介護
硬質PURフォーム 高架橋、独立気泡 断熱性、軽量性、接着性 脆さ、燃焼性、経時収縮 建築、冷蔵庫、冷凍設備
PIRフォーム イソシアヌレート環を多く含む 耐熱性、難燃性 脆さ、加工性、コスト 建築・設備断熱、配管保温
半硬質フォーム 軟質と硬質の中間 衝撃吸収、形状保持 圧縮永久ひずみ 自動車内装、緩衝部品
インテグラルスキン 緻密表皮と発泡芯の一体構造 外観、耐摩耗、軽量 表皮・金型管理が必要 ハンドル、靴底、グリップ
難燃グレード 難燃剤又はPIR化 用途規格へ対応可能 発煙、物性低下、規格依存 建築、車両、電気機器周辺
GF・無機強化構造用 ガラス繊維又は充填材を含む 剛性、寸法安定性 密度増加、切削粉じん 構造芯材、パネル、車両部品
食品・医療向け 原料、抽出物、VOC等を管理 用途適合性を設計可能 特定グレードのみ 保冷材周辺、介護・医療クッション

成形加工

加工方法 適性 理由・注意点
射出成形 通常の熱可塑性射出成形ではなく、発泡射出又はRIMとして適用される。
押出成形 連続発泡又はラミネート工程として適用されるが、再溶融押出ではない。
ブロー成形 × 一般的な中空ブロー成形には不向きである。
圧縮成形 モールド発泡及び反応成形で適用される。発泡圧と密度分布を管理する。
真空成形 × フォーム単体では一般的でなく、表皮材との複合工程に限定される。
注型・モールド発泡 金型内で反応発泡させる代表的加工法である。
スラブ発泡 大ブロックを連続発泡し、裁断・スライスして使用する。
スプレー発泡 現場断熱、気密及び設備保温に適する。施工品質と曝露管理が重要である。
切削加工 硬質フォームはルーター等で加工できる。粉じん及び欠けに注意する。
接着・ラミネート 布、フィルム、金属面材等との複合化に広く用いられる。
塗装・印刷 セル吸込み、表面粉化、溶剤攻撃及び密着性を確認する。
3Dプリント × 一般的な発泡PUの直接積層造形には不向きである。

代表的な成形・発泡条件

項目 単位 代表範囲又は状態 備考
原料液温 20~30 一般的な目安。反応性及び粘度により調整する。
金型温度 35~70 モールドフォームの一般的目安。
NCO指数 無次元 80~120 軟質から硬質PURの一般範囲。PIR系はさらに高い場合がある。
脱型時間 min 3~20 反応性、製品厚さ及び金型温度に依存する。
熟成時間 h 24~72 最終物性、臭気及び寸法安定性確認の目安。
成形収縮率 % 一般化困難 フォーム種、密度、発泡剤、面材及び拘束条件に強く依存する。
予備乾燥 原料管理を優先 ポリオール側の意図しない吸湿は発泡バランスを変える。

代表的な物性値又は機械的性質

発泡ポリウレタンは密度及びセル構造の影響が大きいため、軟質フォームと硬質フォームを分離して示す。下表は非強化の代表範囲であり、特定グレードの保証値ではない。

軟質発泡ポリウレタンの代表物性
項目 単位 下限 代表値 上限 試験・状態 備考
密度 g/cm³ 0.015 0.035 0.080 成形直後~標準状態 高密度フォームは範囲外となる。
引張強さ・破断 MPa 0.06 0.15 0.50 代表値、規格・密度依存 セル構造と密度に強く依存する。
引張破断伸び % 80 180 400 代表値、規格不明 ポリエーテル・ポリエステル系で差がある。
圧縮永久ひずみ % 2 8 20 50~75%圧縮、条件依存 温度、時間、圧縮率を併記して比較する。
反発弾性 % 10 45 70 代表値、グレード依存 低反発フォームは低値、高反発フォームは高値となる。
熱伝導率 W/(m・K) 0.030 0.040 0.060 23℃付近、代表値 含水率、密度及びセル構造に依存する。
連続使用温度 -30 80 90 一般的目安 荷重、酸素、湿度及び寿命に依存する。
吸水率・24時間 % データなし データなし データなし 一般化困難 開放気泡率、表皮及び試験方法で大きく変わる。
体積抵抗率 Ω・cm データなし データなし データなし 一般化困難 帯電防止・導電グレードを別扱いとする。
硬質発泡ポリウレタンの代表物性
項目 単位 下限 代表値 上限 試験・状態 備考
密度 g/cm³ 0.025 0.040 0.080 成形直後~標準状態 構造用高密度品は範囲外となる。
圧縮強さ MPa 0.10 0.25 0.70 10%変形又は降伏、密度依存 方向性及び面材の影響を受ける。
曲げ強さ MPa 0.20 0.45 1.20 代表値、規格依存 独立気泡率及び密度に依存する。
熱伝導率・初期 W/(m・K) 0.019 0.023 0.030 23℃付近、初期値 発泡剤、セルガス及び経時変化に依存する。
連続使用温度 -40 90 110 一般的目安 PUR。PIR系は別評価とする。
短時間耐熱温度 100 120 140 短時間、無荷重目安 PIR系では高くなる場合がある。
独立気泡率 % 85 93 98 代表値、規格依存 スプレー低密度品等は異なる。
吸水率・体積 % 0.5 2.0 5.0 24~96時間、条件依存 表皮、切断面及び独立気泡率に依存する。
線膨張係数 10⁻⁵/K 3 6 10 代表値、方向依存 面材拘束及び密度で変化する。
体積抵抗率 Ω・cm 1E12 1E14 1E16 乾燥状態、代表値 吸湿、難燃剤及び添加剤に依存する。
燃焼性・電気特性・環境特性
項目 単位 代表的な記載 注意点
UL 94燃焼性 等級 グレード依存 材料群として一律にV-0等を断定できない。厚さ、密度、色、難燃剤を確認する。
限界酸素指数・LOI % データなし/グレード依存 PUR、PIR、難燃剤及び密度で差が大きい。
燃焼時発生ガス CO、CO₂、窒素含有分解生成物等 不完全燃焼では有害ガスを生じ得るため、火災安全設計が必要である。
耐候性 5段階 2 無安定の芳香族系は黄変・粉化しやすい。表皮又は耐候グレードを推奨する。
耐加水分解性 5段階 3 ポリエーテル系は比較的良好、ポリエステル系は湿熱条件に注意する。
電気絶縁性 5段階 4 乾燥硬質フォームの一般傾向。吸湿及び添加剤の影響を確認する。
比較用評価スコア
評価項目 スコア 評価理由
引張強度 2 発泡体であり、非発泡PUより低い。密度依存性が大きい。
剛性 3 軟質は低く、硬質は高い。材料群として中間評価である。
衝撃吸収性 5 軟質・半硬質フォームはクッション用途で優れる。
耐熱性 3 一般PURは標準的、PIR系は高い。
耐薬品性 2 溶剤、熱水、強酸・強アルカリに注意が必要である。
耐候性 2 芳香族系は黄変・粉化しやすい。
耐加水分解性 3 ポリエーテル系は比較的良いが、ポリエステル系は注意する。
寸法安定性 3 硬質は比較的良いが、経時収縮、面材、温湿度の影響がある。
成形加工性 4 反応発泡で複雑形状、現場充填及び大型成形に対応しやすい。
リサイクル性 1 熱硬化性で再溶融できない。
価格優位性 3 用途、密度、難燃規格及び施工条件で大きく変動する。

耐薬品性

下表は室温、短時間接触又は一般的な浸漬を想定した材料群としての目安である。軟質・硬質、ポリエーテル・ポリエステル、密度、表皮、接着層及び応力により結果が変わる。

薬品・分類 濃度 温度 接触条件 評価 主な劣化形態・注意点
23℃ 短時間~浸漬 ポリエーテル系は比較的安定。開放気泡では吸水・乾燥不良に注意。
温水 60~80℃ 浸漬 加水分解、接着剥離、圧縮特性低下。
水蒸気 100℃以上 曝露 × 加水分解、軟化、セル崩壊の可能性。
塩酸 10%以下 23℃ 短時間 濃度、時間及びポリオール種を確認する。
硫酸 10%以下 23℃ 短時間 濃硫酸及び高温では不適。
酢酸 5%以下 23℃ 短時間 臭気、膨潤及び加水分解に注意する。
水酸化ナトリウム 5%以下 23℃ 短時間 ポリエステル系は鹸化・加水分解に注意。
水酸化ナトリウム 10%以上 23℃以上 浸漬 × 著しい劣化の可能性。
エタノール 99%以下 23℃ 短時間 長時間では膨潤、抽出、接着低下を確認する。
IPA 99%以下 23℃ 短時間 高濃度長時間ではグレード確認が必要。
グリセリン 23℃ 短時間~浸漬 比較的安定な場合が多いが吸湿条件を確認する。
MMB 23℃ 接触 エーテルアルコールであり、膨潤・軟化に注意する。
トルエン 23℃ 接触 × 膨潤、軟化、接着剥離の可能性が高い。
キシレン 23℃ 接触 × 芳香族炭化水素による膨潤に注意。
n-ヘキサン 23℃ 短時間 長時間では膨潤及び添加剤抽出を確認する。
シクロヘキサン 23℃ 接触 膨潤の可能性。
アセトン 23℃ 接触 × 強い膨潤、軟化、接着破壊の可能性。
MEK 23℃ 接触 × ケトン系溶剤は一般に不適。
酢酸エチル 23℃ 接触 × 膨潤、軟化の可能性。
THF 23℃ 接触 × 強い膨潤又は溶解作用に注意。
ジクロロメタン 23℃ 接触 × 著しい膨潤、軟化の可能性。
鉱物油・潤滑油 23℃ 浸漬 ポリエステル系が有利な場合がある。添加剤を含む実油で確認する。
ガソリン・燃料 23℃ 接触 芳香族分、アルコール混合及び添加剤に依存する。
ブレーキ液 23~80℃ 接触 グリコール系、シリコーン系等で差が大きい。
次亜塩素酸ナトリウム 0.1~1% 23℃ 短時間 酸化劣化、変色、強度低下に注意。
過酸化水素 3% 23℃ 短時間 酸化劣化及び触媒残渣の影響を確認する。
海水・塩水 3.5%程度 23℃ 浸漬 吸水、金属面材腐食及び接着界面を確認する。
SP値(溶解度パラメータ)

発泡ポリウレタンの代表的なHildebrand SP値は、おおむね20~25 MPa1/2程度として扱われることがある。ただし、ポリエーテル系、ポリエステル系、架橋密度、硬質セグメント比率及び発泡構造により幅が大きく、単一値での代表は限定的である。

SP値は溶剤による膨潤傾向の一次スクリーニングに使用できるが、加水分解、酸化、架橋密度、結晶性、セル構造、添加剤抽出、温度及び応力を反映しないため、耐薬品性をSP値差だけで決定してはならない。

溶解性の目安
SP値差 Δδ 溶解・膨潤の目安 判定
0~2 膨潤・軟化しやすい ×
2~5 条件により膨潤する
5~8 短時間接触では比較的安定
8以上 溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤 SP値 MPa1/2 PUF代表値22.5との差 SP値上の評価 実務上の注意
n-ヘキサン 14.9 7.6 非極性溶剤でも長時間は膨潤・抽出を確認する。
トルエン 18.2 4.3 実測では膨潤が大きくなる場合があり、一般に注意が必要。
酢酸エチル 18.6 3.9 エステル系は軟化しやすく、実務評価は×寄りとなる場合がある。
MEK 19.0 3.5 ケトン系は膨潤・軟化が強く、実務上は不適となりやすい。
アセトン 19.9 2.6 短時間でも強い影響が生じる場合がある。
IPA 23.5 1.0 × SP差は小さいが、実際の耐性は架橋構造により○~△となる場合がある。
エタノール 26.0 3.5 短時間は使用可能な場合がある。
47.9 25.4 SP差が大きくても、熱水では加水分解が支配する。

上表はSP値による単純評価と実測耐性が一致しない例を含む。特に架橋ポリウレタンでは、溶解より膨潤、軟化、セル破壊、接着低下及び添加剤抽出が問題となる。

製法

発泡ポリウレタンの代表的な製造工程

代表的な反応は、ポリイソシアネートのNCO基とポリオールのOH基とのウレタン形成反応である。水発泡ではNCO基と水の反応からCO₂が発生し、同時に生成したアミンが追加のNCO基と反応して尿素結合を形成する。硬質PIR系では、過剰イソシアネートの三量化反応によりイソシアヌレート環を形成する。

代表的な製造方式
製造方式 概要 主な管理項目 代表用途
スラブ発泡 コンベア上で連続発泡し、大型ブロックを裁断する。 吐出量、クリームタイム、ライズ、セル開孔、密度分布 軟質クッション、吸音、包装
モールド発泡 金型内で反応発泡し、所定形状を得る。 金型温度、脱型時間、発泡圧、表皮、収縮 自動車シート、半硬質部品
スプレー発泡 二液を現場混合噴霧し、基材上で発泡硬化する。 混合比、基材温度、層厚、換気、施工者曝露 建築・設備断熱
連続ラミネート 面材間で硬質フォームを連続発泡する。 面材接着、厚さ、セル方向、寸法安定性 断熱パネル、冷蔵設備
RIM・インテグラルスキン 反応性液を金型注入し、緻密表皮と発泡芯を形成する。 反応速度、表皮厚さ、金型温度、脱型 グリップ、靴底、内装部品

詳細な利用用途

用途分野 具体例 適性 選定理由 主な確認項目
家具・寝具 マットレス、椅子、枕 クッション性、体圧分散、反発性 密度、硬さ、へたり、VOC、難燃性
自動車 シート、ヘッドレスト、吸音材、内装芯材 軽量、成形自由度、衝撃吸収、吸音 FMVSS 302、FOG、VOC、耐熱老化
建築 吹付断熱、断熱ボード、サンドイッチパネル 低熱伝導率、気密、接着性 燃焼規格、施工厚さ、熱伝導率経時変化
冷蔵・冷凍 冷蔵庫、冷凍庫、保冷庫、配管保温 高断熱、軽量、隙間充填 低温寸法安定性、吸水、面材接着
電気・電子 緩衝材、吸音材、断熱材、ポッティング周辺 軽量、振動吸収、断熱 難燃性、アウトガス、イオン汚染、発塵
機械・設備 断熱、吸音、防振、フィルター 加工性、吸音、断熱 油・薬品、温度、圧縮永久ひずみ
医療・介護 体圧分散マット、クッション、保護パッド 柔軟性、体圧分散 ISO 10993、清拭、滅菌、抽出物、難燃性
食品機械 保冷周辺材、断熱芯材 断熱性 直接接触適合、溶出、洗浄剤、吸水、衛生設計
包装 精密機器緩衝材、ケース内装 衝撃吸収、加工性 帯電防止、発塵、アウトガス、再使用性
ギア・軸受 × 構造摺動部品としては強度・摩耗性が不足する。 代替としてPOM、PA、PTFE等を検討する。
チューブ・配管 液体搬送 × 連続気泡フォームは液体搬送に不向きである。 TPU、PVC、シリコーン等を検討する。

接合・表面処理適性

方法 適性 主な注意点
接着剤接合 フォームへの吸込み、溶剤攻撃、可塑剤移行及び難燃剤の影響を確認する。
熱溶着 × 熱硬化性フォームは再溶融しない。熱可塑性表皮材のみ適用できる場合がある。
機械締結 局部圧縮と座屈を避け、面圧分散板又はインサートを用いる。
塗装 セル吸込み、溶剤、密着及び黄変を確認する。
印刷 表面平滑性とインキ溶剤の影響を確認する。
コロナ・プラズマ 表皮材又は緻密スキンの接着性改善に有効な場合がある。
ラミネート 布、フィルム、アルミ箔、鋼板等との複合化に適する。

寸法精度・設計特性

  • 短時間の圧縮強さ又は引張強さを、そのまま長期設計許容応力に使用してはならない。
  • 密度勾配、セル方向、表皮、面材拘束及び発泡流動方向により異方性が生じる。
  • 長期荷重ではクリープ、へたり及び圧縮永久ひずみを評価する。
  • 硬質フォームでは低温・高温サイクルによる収縮、反り、面材剥離及びクラックを確認する。
  • 局部締結、圧入及びねじ締結ではセル潰れが起きやすいため、荷重分散構造を採用する。

品質・成形不良

不良 材料側の主因 成形・施工側の主因 主な対策
ボイド・粗大セル 整泡剤不足、発泡剤不均一 混合不良、吐出変動、空気巻込み 混合比、ミキサー、整泡剤及び液温を管理する。
収縮・陥没 開孔不足、低架橋、発泡剤バランス不良 早期脱型、冷却不足、密閉セル圧低下 セル開孔、架橋、脱型時間及び熟成を最適化する。
焦げ・変色 反応性過大、触媒過多 厚肉部の蓄熱、局所過熱 配合反応性、厚さ、放熱及び触媒を調整する。
密度むら 原料粘度差、発泡剤偏析 吐出量変動、混合不良、型内流動不均一 計量校正、混合、金型ベント及び注入口を見直す。
表皮不良 離型剤・整泡剤不適合 金型温度不均一、湿気、汚れ 金型温度、清掃、離型剤及び湿度を管理する。
接着不良 基材汚染、反応性不足 基材温度不足、結露、硬化前移動 前処理、基材温度、含水及び硬化条件を確認する。
臭気・VOC 触媒、残留モノマー、添加剤 熟成不足、換気不足 低VOC配合、熟成、ベーキング及び換気を行う。

劣化・故障モードと注意点

劣化現象 主な原因 発生しやすい条件 性能への影響 予防策 推奨確認試験
加水分解 エステル結合の切断 高温高湿、熱水、アルカリ 強度低下、粉化、べたつき ポリエーテル系又は耐加水分解グレードを選ぶ。 70~85℃、85%RH、500~1000hの湿熱試験
熱酸化劣化 酸素、熱、残留触媒 高温、圧縮荷重、長時間 黄変、硬化、脆化、へたり 耐熱安定剤、温度低減、換気 使用温度+10~20℃で500~1000h熱老化
紫外線劣化 芳香族骨格の光酸化 屋外、窓際、強照明 黄変、粉化、強度低下 遮光、表皮、耐候グレード キセノンアーク又はUV促進耐候試験
圧縮永久ひずみ セル壁疲労、クリープ 高圧縮率、高温、長時間 厚さ減少、シール性・座り心地低下 圧縮率低減、高密度・高反発グレード 実圧縮率、温度、時間での圧縮永久ひずみ試験
溶剤膨潤 溶剤とPU相互作用 ケトン、エステル、芳香族、塩素系溶剤 軟化、膨潤、接着剥離 耐溶剤グレード又はバリア層 実薬品浸漬及び圧縮応力下試験
吸水・カビ 開放気泡による水保持 連続気泡、結露、乾燥不良 重量増加、臭気、衛生性低下 独立気泡材、排水・乾燥設計 吸水、乾燥回復、微生物試験
アウトガス 触媒、未反応物、低分子添加剤 高温、密閉、真空 曇り、接点汚染、臭気 低VOC配合、熟成、洗浄 VOC、FOG、TML/CVCM又は用途別アウトガス試験
燃焼 可燃性骨格、難燃性不足 火気、電気短絡、高熱流束 延焼、発煙、有害ガス 用途規格適合グレード、バリア材 UL 94、LOI、建材・車両燃焼試験

法規制・認証

項目 材料群としての扱い 実務上の確認
RoHS 一般に対応可能な配合が存在する。 難燃剤、触媒、顔料及び接着剤を含む完成品で証明書を確認する。
REACH・SVHC 適合グレードが存在する。 残留イソシアネート、難燃剤、触媒及び添加剤の最新SDS・証明書を確認する。
PFAS関連 発泡剤、界面活性剤又は表面処理により影響を受け得る。 フッ素系成分の有無及び地域規制を個別確認する。
日本の食品衛生法 食品接触対応グレードが存在する場合がある。 ポジティブリスト、接触条件、温度及び溶出試験を確認する。
FDA・EU食品接触 特定グレードのみ対象となる。 材料名だけで適合を断定せず、用途別適合書を確認する。
医療・ISO 10993 医療・介護向けグレードが存在する。 接触部位、接触時間、滅菌方法、抽出物及び生物学的安全性を確認する。
UL・燃焼規格 難燃グレード又は複合体で取得される。 UL 94厚さ、密度、色、面材及び製造拠点を確認する。
自動車 FMVSS 302等への適合品が存在する。 VOC、FOG、臭気、難燃及び熱老化を完成部品で確認する。

環境・リサイクル性及び供給性

項目 評価・内容
熱可塑性/熱硬化性 一般的な発泡ポリウレタンは熱硬化性である。
マテリアルリサイクル 再溶融は困難。粉砕充填、再結合フォーム等に限定される。
ケミカルリサイクル グリコリシス等が検討・実施されるが、回収物流及び品質管理が課題となる。
サーマルリサイクル 可能であるが、窒素含有分解ガス、燃焼管理及び地域法規を確認する。
再生材利用 再生フォーム粉をバインダーで再結合した材料等がある。物性及び臭気を確認する。
バイオベース 植物由来ポリオールを含む製品が存在する。バイオベースと生分解性は別概念である。
生分解性 一般的なPUFは生分解性材料として扱わない。
価格区分 中価格。高機能、難燃、低VOC、PIR、医療等は比較的高価格となる。
国内入手性 良好。原液システム、成形品、ブロック、シート及び加工品として流通する。

関連材料との比較

比較材料 特徴 発泡ポリウレタンとの違い
軟質ウレタンフォーム 発泡PUの軟質・開放気泡系を詳しく扱う材料。 本ページは軟質、半硬質、硬質及びPIRを含む総合ページである。
ポリウレタン 非発泡材、フォーム、塗料、接着剤等を含むPU材料群。 発泡PUはセル構造と低密度化を主目的とする。
熱可塑性ポリウレタン 再溶融成形可能な熱可塑性エラストマー。 TPUは一般に非発泡又は微発泡で、耐摩耗・機械強度が高い。
発泡ポリスチレン 軽量、低価格、断熱・緩衝用途。 EPSは熱可塑性で、PUFより耐熱・接着性が低い場合がある。
押出法ポリスチレンフォーム 独立気泡で吸水が比較的少ない断熱材。 XPSは板材中心、PUFは現場発泡及び複雑形状充填に優れる。
発泡ポリプロピレン 反復衝撃、復元性、リサイクル性に優れる。 EPPは熱可塑性で再使用緩衝材向け、PUFは配合自由度と接着性に優れる。
発泡ポリエチレン 耐水性、柔軟性、化学安定性が比較的良い。 PEフォームは低表面エネルギーで接着が難しいが、PUFは接着・複合化しやすい。
PMIフォーム 高比強度、高耐熱の構造用コア材。 PMIは高価格だが航空宇宙複合材コアに適し、PUFは断熱・クッション用途が中心である。

代表的なメーカー

メーカー 代表製品・事業 概要
イノアックコーポレーション カラーフォーム等のウレタンフォーム製品 軟質・硬質を含むウレタン、ゴム、プラスチック及び複合材を展開する。
東洋クオリティワン 軟質ポリウレタンフォーム、機能性フォーム 軟質フォームを中心に、自動車、産業、生活資材向け製品を展開する。
アキレス エアロン等の軟質ウレタンフォーム クッション、吸音、断熱、衝撃吸収等の機能性フォームを展開する。
BASF Elastopor、Elastoflex等のPUシステム 硬質、軟質、半硬質及び特殊PUシステムを世界展開する。
Covestro Baymer、Bayfit、Baydur等のPU原料・システム MDI、TDI、ポリオール及び各種フォームシステムを展開する。
Dow VORANOL、VORACOR等のPU原料・システム ポリオール、イソシアネート及びフォーム用途システムを展開する。
Huntsman JEFFOL、RUBINATE等 ポリオール、MDI及び硬質・軟質フォーム向けシステムを展開する。

製品名、供給地域及び事業範囲は変更される場合がある。採用時には各メーカーの最新技術資料、SDS、規制適合書及び供給条件を確認する。

推奨確認試験

  • 実薬品浸漬試験:実濃度、実温度、24時間、168時間及び必要寿命相当で、質量、体積、硬さ、圧縮特性及び外観を評価する。
  • 湿熱・加水分解試験:70~85℃、85%RH、500~1000時間を目安に、強度、硬さ、圧縮永久ひずみ及び臭気を確認する。
  • 熱老化試験:想定使用温度より10~20℃高い条件で500~1000時間実施し、寸法、色、圧縮及び脆化を評価する。
  • クリープ・圧縮永久ひずみ試験:実圧縮率、実荷重、実温度で長期厚さ保持率を確認する。
  • 燃焼試験:UL 94、LOI、FMVSS 302、建築又は鉄道規格等、用途に適した規格を完成品厚さで実施する。
  • アウトガス・VOC試験:自動車、電子、医療及び密閉空間用途では、実使用温度でVOC、FOG、臭気又はTML/CVCMを評価する。
  • 実成形・実施工試験:密度分布、接着、セル構造、収縮、ボイド、表皮及び施工厚さを確認する。

関連キーワード

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