シリコーンゴム

概要

項目内容
材料名シリコーンゴム
略記号Q(ISO 1629の主鎖分類)、MQ、VMQ、PVMQ、FVMQ。一般にはSilicone Rubber、SIとも表記される。
IUPACpoly(dimethylsiloxane)(代表主成分PDMSの一般的名称)
英語名Silicone Rubber、Silicone Elastomer、Polysiloxane Elastomer
日本語名シリコーンゴム、シリコーンエラストマー、けい素ゴム。日常語の「シリコンゴム」は慣用表現であるが、元素シリコンとは区別する。
分類合成ゴム、無機・有機ハイブリッド高分子、ポリシロキサン系架橋エラストマー
プラスチック分類一般的な熱可塑性プラスチック、エンジニアリング・プラスチック又はスーパーエンジニアリング・プラスチックには分類しない。架橋して使用するエラストマーである。
化学式または代表構造代表繰返し単位:[-Si(CH3)2-O-]n
CAS No.63148-62-9(ポリジメチルシロキサンの代表CAS)。配合物及び架橋体は単一CASで表せない場合がある。
構造・主成分Si-O-Si主鎖を持つポリオルガノシロキサンを主成分とし、補強性シリカ、架橋剤、触媒、顔料、耐熱剤、難燃剤、導電材などを配合する。
主な用途Oリング、ガスケット、パッキン、チューブ、ホース、電線被覆、コネクターシール、キーパッド、調理器具、医療部品、建築シーラント、ポッティング材、ロール、膜、コーティング。

シリコーンゴムは、炭素-炭素結合を主鎖とする一般の有機ゴムとは異なり、ケイ素-酸素結合(Si-O-Si)を主鎖に持つポリシロキサン系エラストマーである。代表材料はポリジメチルシロキサン(PDMS)を架橋したMQ又はVMQであり、補強性シリカを配合して実用的な強度を付与する。

Si-O結合の柔軟性と高い結合エネルギーにより、一般に低温から高温までゴム弾性を維持しやすく、耐候性、耐オゾン性、電気絶縁性及び生理的不活性を活かして、自動車、電気電子、医療、食品、建築及び工業シールに広く使用される。一方、炭化水素系液体への耐膨潤性、引裂強さ、耐摩耗性及びガスバリア性は用途上の制約になり得る。

物性及び耐久性は、ポリマー構造、ビニル量、シリカ種、架橋方式、硬度、二次加硫、抽出処理及び使用条件で大きく変化する。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、圧縮率、応力、湿度、時間、滅菌回数及び法規制適合を確認する必要がある。

特徴

項目内容
長所広い温度範囲で弾性を維持し、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐オゾン性、電気絶縁性に優れる。低温での柔軟性、離型性、低表面エネルギー、透明性を付与しやすい。
短所一般に引裂強さ、耐摩耗性、ガスバリア性が低く、鉱油、燃料、芳香族炭化水素及び塩素系溶剤で膨潤しやすい。接着には表面処理又はプライマーが必要となる場合が多い。
外観無色透明から乳白色であり、顔料により着色できる。補強材、難燃剤、導電材等により不透明化する。
耐熱性汎用VMQは一般に約-50~180℃の連続使用が目安であり、耐熱グレードは200℃以上で用いられる場合がある。寿命は温度、酸素、圧縮率、肉厚及び配合に依存する。
耐薬品性水、希薄酸・アルカリ、アルコール及び多くの極性液体には比較的安定である。一方、炭化水素油、燃料、芳香族溶剤、塩素系溶剤及び一部エステルでは膨潤に注意する。
加工性HCRは圧縮、トランスファー、押出及び射出成形、LSRは液状射出成形、RTVは注型、塗布、接着及びポッティングに適する。熱可塑性樹脂のような再溶融成形ではない。
分類上の注意シリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリコーンゲル、シリコーンシーラント及び熱可塑性シリコーンエラストマーは、形態と架橋状態が異なるため区別する。
難燃性

シリコーンゴムは一般の炭化水素系ゴムより燃焼時の発熱量が低く、燃焼後にシリカ質残渣を形成する場合がある。ただし、UL 94等級は材料名だけで決まらず、グレード、厚さ、色、添加剤及び認定条件ごとに確認が必要である。

法規制

RoHS、REACH、食品接触、FDA、USP Class VI、ISO 10993、UL等に対応するグレードが存在する。材料群全体の一律適合ではないため、製品名、色、製造拠点、接触条件、滅菌方法及び使用温度を指定して証明書を確認する必要がある。

構造式

シリコーンゴムの代表構造式

代表的な構造単位は[-Si(CH3)2-O-]nである。実用VMQでは、メチル基の一部をビニル基に置換し、過酸化物架橋又は白金触媒によるヒドロシリル化付加架橋を可能にする。

フェニル基を導入したPVMQは低温特性及び放射線耐性を調整でき、3,3,3-トリフルオロプロピル基を導入したFVMQは燃料及び鉱油への耐膨潤性を改善する。構造名は側鎖置換基を表すISO 1629の記号体系に基づく。

種類・代表グレード

種類・グレード主成分又は特徴長所短所主な用途
HCR/ミラブル型VMQ高分子量VMQ+補強シリカ。ロール混練可能物性、押出性、圧縮成形性のバランス混練、架橋剤管理、二次加硫が必要な場合シール、チューブ、電線、成形品
LSR/液状シリコーンゴム低粘度二液付加架橋型自動計量、短サイクル、精密成形、低バリ化専用LIM設備、金型シール、触媒被毒管理医療部品、コネクターシール、乳幼児用品
RTV-1一液縮合架橋型常温硬化、施工性、接着・シール性硬化副生成物、厚膜深部硬化、保管安定性建築・電気シール、接着、コーティング
RTV-2二液縮合又は付加架橋型厚肉注型、型取り、低収縮グレード混合比、脱泡、ポットライフ管理型取り、ポッティング、複製
FVMQ/フロロシリコーンゴムフルオロアルキル側鎖燃料、鉱油、溶剤への耐膨潤性を改善低温性、機械物性、価格に制約燃料系シール、航空宇宙、自動車
高引裂・高強度グレード高補強シリカ及び構造制御薄肉品、複雑形状、耐裂き性を改善粘度上昇、成形条件依存ダイヤフラム、薄膜、医療部品
難燃グレード難燃助剤、白金系難燃システム等UL 94 V-0等の認定グレードが存在厚さ、色、配合ごとに認定確認が必要電気電子、鉄道、家電
導電・帯電防止グレードカーボン、金属又は導電性充填材導電、静電気拡散、EMI対策硬度、伸び、圧縮永久ひずみが変化接点、シールドガスケット、ローラー
食品・医療用途グレード抽出物、揮発分及び触媒残渣を管理食品接触又は生体適合に対応可能特定グレードの適合証明が必要チューブ、バルブ、シール、調理器具

成形加工

加工方法適性理由・主な注意点
射出成形LSR-LIM及びHCR射出に適する。金型温度、架橋速度、バリ及びエア抜きを管理する。
押出成形HCRでチューブ、ホース、電線被覆、異形押出に広く用いる。連続加硫条件を管理する。
ブロー成形×一般的な熱可塑性ブロー成形には適さない。特殊な中空成形は別工程で行う。
インフレーション成形×溶融熱可塑性フィルムのインフレーションには適さない。
Tダイフィルム成形未架橋シートのカレンダー又はコーティングは可能だが、通常の熱可塑性Tダイとは異なる。
真空成形×架橋後は熱可塑性を示さず、一般的な真空成形には不適である。
圧空成形×一般的な熱可塑性圧空成形には不適である。
圧縮成形HCRの代表的成形法。チャージ量、金型温度、加圧、架橋時間及びバリを管理する。
トランスファー成形複雑形状、インサート成形に適用される。流動、スコーチ及びゲート設計に注意する。
カレンダー成形シート、布基材コーティング等に適する。厚み、気泡及び架橋均一性を管理する。
発泡成形化学発泡又は二液発泡型がある。セル径、密度、圧縮永久ひずみを確認する。
3Dプリント専用二液吐出・UV/熱硬化システムに限定される。一般フィラメント方式には不適である。
切削加工軟質のため寸法保持が難しい。凍結、専用刃具、低送り等の工夫を要する。
溶着熱可塑性溶着は困難。未硬化材料、自己接着型又は専用接着剤で接合する。
接着低表面エネルギーのためプライマー、プラズマ処理又は自己接着グレードを用いる。
塗装・印刷表面処理及び専用インクが必要。ブリード成分による密着低下に注意する。
代表的な成形条件
項目単位HCR/ミラブル型の目安LSRの目安注意点
予備乾燥通常不要通常不要吸湿より異物、水分、揮発分及び触媒被毒物質の混入防止を重視
混練温度20~60該当なしHCRはロール発熱とスコーチを抑制
金型温度150~190150~200製品厚さ、架橋系及びサイクルにより調整
成形圧力MPa5~2030~150機械表示圧とキャビティ圧を区別
一次加硫時間min1~150.2~3肉厚及び温度依存
二次加硫温度180~220150~200又は不要過酸化物分解物、揮発分及び圧縮特性を改善する目的
二次加硫時間h2~82~4又は不要食品・医療用途では抽出物管理を含めて確認
成形収縮率・流動方向%2~42~3金型、硬度、架橋及び後加硫で変化
成形収縮率・流動直角方向%2~42~3異方性は熱可塑性GF材より小さいが実測が必要
推奨肉厚mm0.5~200.1~10薄肉LSRはエア抜き、厚肉は架橋均一性を確認

代表的な物性値又は機械的性質

以下は非強化・標準VMQを中心とした代表範囲であり、特定メーカーの単一グレード値ではない。硬度、補強シリカ、架橋密度及び試験条件で変動するため、比較機能では代表値と範囲を分離して扱う必要がある。

項目単位代表値代表範囲試験規格試験温度(℃)材料状態備考信頼度
密度g/cm³1.050.95~1.30ISO 1183相当23成形直後非強化標準VMQ。シリカ及び添加剤量で変化B
比重無次元1.100.95~1.30代表値、規格不明23成形直後非強化標準VMQB
硬度デュロメータA5010~80ISO 48-4又はJIS K 6253相当23標準状態調節後非常に軟質なゲル状から高硬度まで存在A
引張強さ・破断MPa84~12ISO 37又はJIS K 6251相当23標準状態調節後高強度グレードは範囲を超える場合があるB
引張破断伸び%400150~800ISO 37又はJIS K 6251相当23標準状態調節後硬度及び架橋密度に依存B
引裂強さkN/m255~50ISO 34-1又はJIS K 6252相当23標準状態調節後試験片形状で値が大きく異なるB
100%引張応力MPa2.00.8~4.0ISO 37相当23標準状態調節後モジュラスの目安C
圧縮永久ひずみ%205~40ISO 815-1相当175標準状態調節後例:25%圧縮、22~24 h。条件依存が大きいC
反発弾性%5030~70ISO 4662相当23標準状態調節後配合及び硬度依存C
ガラス転移温度-120-125~-110DSC又はDMA不明PDMS系の代表範囲B
融点該当なし架橋体として明確な融点を設計指標にしない
連続使用温度・上限180150~200長期熱老化の目安耐熱グレードでは200℃超の例があるB
短時間耐熱温度250200~300代表値、規格不明時間、酸素、応力及び肉厚で変化C
低温使用限界-50-60~-40代表値、規格不明PVMQはさらに低温側を狙えるB
熱伝導率W/(m・K)0.200.15~0.30ISO 22007相当23標準状態調節後熱伝導フィラー配合品は別区分B
線膨張係数10⁻⁵/K2520~35TMA等充填材量で低下するC
吸水率・24時間%0.50.1~1.0ISO 62相当23乾燥後低吸水だが透湿性は高いC
体積抵抗率Ω・cm1×10¹⁵1×10¹⁴~1×10¹⁶IEC 60093相当23乾燥状態導電グレードを除くB
絶縁破壊強さkV/mm2015~30IEC 60243相当23乾燥状態厚さ及び電極条件に依存B
比誘電率・1 MHz無次元3.02.7~3.3IEC 60250相当23乾燥状態周波数及び配合依存B
誘電正接・1 MHz無次元0.0030.001~0.010IEC 60250相当23乾燥状態周波数及び配合依存C
限界酸素指数・LOI%2524~30ISO 4589相当23難燃グレードは別評価C
UL 94燃焼性等級HBHB~V-0UL 94材料群一律ではない。厚さ・色・認定グレード確認が必要A
複合・改質グレードの代表的傾向
グレード区分改質方法物性への主な影響注意点
高補強シリカヒュームドシリカ又は沈降シリカを増量引張、引裂、モジュラスを向上粘度上昇、透明性低下、圧縮永久ひずみ変化
熱伝導性アルミナ、窒化ホウ素等を高充填熱伝導率を約0.8~3 W/(m・K)以上へ改善可能硬度、伸び、比重及び流動性が大きく変化
導電性カーボンブラック、金属、導電フィラー体積抵抗率を静電拡散~導電領域へ調整機械物性、圧縮特性、汚染性を確認
難燃性白金系、金属酸化物等UL 94 V-0等を狙えるグレードが存在認定厚さ、色、電気特性、発煙性を個別確認
FVMQフルオロアルキル側鎖燃料、油、溶剤による膨潤を低減通常VMQより価格が高く、低温・機械特性が変化
比較用評価スコア
評価項目スコア評価理由
引張強度3ゴムとして標準~良好。高補強グレードでは向上するがNR等に劣る場合がある。
剛性2軟質エラストマーであり、構造部材の高剛性用途には適さない。
衝撃強度4低温を含め柔軟で衝撃吸収性が高い。
耐熱性5一般ゴムの中で非常に優れる。
低温特性5PDMSのTgが低く、低温柔軟性に優れる。
耐薬品性3水・極性液体には良好だが、燃料・炭化水素溶剤に弱い。
耐候性5紫外線、オゾン及び屋外暴露に優れる。
耐加水分解性4一般に良好だが、高温蒸気及び強酸・強アルカリでは確認が必要。
寸法安定性2熱膨張、圧縮永久ひずみ及び膨潤を考慮する必要がある。
低吸水性4吸水は小さいが、ガス及び水蒸気透過性は高い。
摺動性3低表面エネルギーだが、耐摩耗性は必ずしも高くない。
耐摩耗性2一般に有機ゴムやTPUより劣る。
電気絶縁性5広い温湿度範囲で良好。
難燃性4難燃グレードが豊富。ただし認定はグレード依存。
透明性5高透明LSR等が存在する。
成形加工性4LSR自動成形は優れるが、架橋管理と専用設備が必要。
切削加工性1軟質で寸法保持が難しい。
接着性1低表面エネルギーのため未処理では難しい。
リサイクル性1架橋後の再溶融ができない。
価格優位性2汎用ゴムより高価であることが多い。

耐薬品性

評価は一般的なVMQ配合物の目安である。耐薬品性はポリマーだけでなく、硬度、架橋密度、シリカ、添加剤、温度、濃度、接触時間、圧縮率及び応力で変化する。特にシールでは体積変化、硬度変化、引張特性及び圧縮永久ひずみを併せて確認する。

薬品濃度代表条件応力評価主な劣化形態備考
100%23℃・168 h浸漬無応力変化小高温では抽出物、透湿及び圧縮特性を確認
温水100%80℃・168 h浸漬無応力わずかな物性変化長期熱水、蒸気では加水分解よりも添加剤抽出と圧縮劣化を確認
水蒸気飽和121℃・反復圧縮あり圧縮永久ひずみ、強度低下蒸気滅菌回数は医療グレードで実機確認
塩酸10%23℃・168 h浸漬無応力一般に変化小高濃度・高温では架橋系及び充填材への影響確認
硫酸10%23℃・168 h浸漬無応力一般に変化小濃硫酸及び高温は別評価
硝酸10%23℃・168 h浸漬無応力酸化、硬化、変色濃度、温度及び時間の影響が大きい
酢酸10%23℃・168 h浸漬無応力軽微な膨潤の可能性濃酢酸、高温は確認
水酸化ナトリウム10%23℃・168 h浸漬無応力一般に変化小高温濃厚アルカリではSi-O主鎖への影響に注意
アンモニア水10%23℃・168 h浸漬無応力一般に変化小高温、濃度、架橋剤残渣を確認
エタノール99.5%23℃・168 h浸漬無応力軽微な膨潤長期接触では体積変化及び抽出を確認
IPA99%23℃・168 h浸漬無応力軽微~中程度の膨潤高温及び応力下は確認
グリセリン99%23℃・168 h浸漬無応力変化小水分及び温度条件を確認
MMB100%23℃・168 h浸漬無応力膨潤の可能性3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール。実測推奨
アセトン100%23℃・168 h浸漬無応力膨潤、抽出短時間拭取りと長期浸漬を区別
MEK100%23℃・168 h浸漬無応力膨潤、軟化実配合で体積変化測定
酢酸エチル100%23℃・168 h浸漬無応力×大きな膨潤シール用途には原則不向き
トルエン100%23℃・72 h浸漬無応力×著しい膨潤芳香族炭化水素は不適になりやすい
キシレン100%23℃・72 h浸漬無応力×著しい膨潤長期接触回避
n-ヘキサン100%23℃・72 h浸漬無応力×大きな膨潤脂肪族炭化水素でも膨潤しやすい
ミネラルオイル100%100℃・70 h浸漬無応力膨潤、硬度低下油種、芳香族分及び温度依存
ガソリン市販相当23℃・72 h浸漬無応力×著しい膨潤FVMQ又はFKMを検討
軽油市販相当70℃・168 h浸漬無応力膨潤、軟化FVMQの方が適する場合が多い
エチレングリコール水溶液50%100℃・168 h浸漬無応力一般に小さい冷却液添加剤を含む実液で確認
ジクロロメタン100%23℃・24 h浸漬無応力×著しい膨潤塩素系溶剤は不適
次亜塩素酸ナトリウム1000 ppm23℃・168 h浸漬無応力長期で酸化・変色の可能性有効塩素、pH、光、温度を管理
過酸化水素3%23℃・168 h浸漬無応力長期で酸化の可能性高濃度・高温は個別評価
海水人工海水相当23℃・1000 h浸漬無応力変化小金属との組合せ及び生物付着は別評価
食品油100%23~100℃無応力膨潤、抽出油種、温度、食品接触適合を確認
SP値(溶解度パラメータ)

PDMS系シリコーンゴムの代表的なHildebrand SP値は約15.0~15.5 MPa1/2であり、代表値として15.4 MPa1/2を用いることがある。架橋体では溶解せず、近似溶媒中で膨潤するため、SP値は膨潤傾向の一次スクリーニングに用いる。

SP値差だけでは、架橋密度、充填材、酸化、加水分解、添加剤抽出、界面作用及び応力を表せない。耐薬品性の最終判断には実液浸漬及びシール条件での評価が必要である。

溶解性の目安
SP値差 Δδ(MPa1/2溶解・膨潤の目安判定
0~2膨潤・軟化しやすい×
2~5条件により膨潤する
5~8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
薬品名薬品SP値(MPa1/2PDMSとの差評価実務上の注意
n-ヘキサン14.90.5×SP値が近く、実際にも膨潤しやすい
シクロヘキサン16.81.4×著しい膨潤に注意
トルエン18.22.8×SP差だけなら境界だが実際の膨潤は大きい
酢酸エチル18.63.2×エステル溶剤で膨潤しやすい
MEK19.03.6配合及び架橋密度で差が出る
アセトン19.94.5短時間接触でも抽出・膨潤確認
IPA23.58.1比較的安定だが長期浸漬は確認
エタノール26.010.6一般に比較的良好
47.932.5SP差は大きいが透湿性は高い

評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。ただし、トルエン等では単純な差分基準より実際の膨潤が大きくなるため、実測結果を優先する。

製法

シリコーンゴムの代表的な製造工程

工業的には、金属ケイ素と塩化メチルからメチルクロロシラン類を合成し、蒸留分離したジメチルジクロロシランを加水分解して環状又は直鎖状シロキサンを得る。これを酸又は塩基触媒で平衡重合し、末端封鎖してベースポリマーを製造する。

代表的概念式は、Si + CH3Cl → (CH3)2SiCl2ほか、続いてn(CH3)2SiCl2 + 2nH2O → [-Si(CH3)2-O-]n + 2nHClである。実際には複数のクロロシランが生成し、分離、環化、平衡化及び末端制御を経る。

ベースポリマーに補強性シリカ、構造制御剤、架橋剤、触媒、耐熱剤、顔料等を配合する。HCRはロール混練後に圧縮、押出又は射出成形し、LSRはA/B二液を定量混合して加熱金型内で付加架橋する。過酸化物架橋品及び低揮発分要求品では二次加硫を行う場合がある。

詳細な利用用途

用途分野代表用途適性選定理由主な注意点
自動車コネクターシール、点火ケーブル、ガスケット、ダイヤフラム耐熱、耐寒、耐候、電気絶縁燃料・油接触ではFVMQ又はFKM比較
電気・電子絶縁部品、キーパッド、ポッティング、熱伝導シート絶縁、耐熱、柔軟、難燃グレード低分子シロキサン、接点障害、アウトガス
医療チューブ、バルブ、シール、カテーテル部品透明、柔軟、滅菌対応グレードISO 10993、USP Class VI、抽出物及び滅菌回数
食品機械ガスケット、ホース、ベーキング用品耐熱、離型、食品接触対応グレード油脂膨潤、着色、臭気、適合証明
建築・設備シーラント、目地、耐火シール耐候、追従性、接着グレード三面接着、プライマー、可塑剤移行、汚染
半導体・真空シール、チューブ、絶縁、治具高純度グレード、耐熱、絶縁アウトガス、低分子シロキサン、プラズマ劣化
ギア・軸受軟質ローラー、特殊摺動部品低摩擦、柔軟耐摩耗、荷重、発熱に制約
Oリング・ガスケット静的及び低圧シール広温度域、圧縮追従ガス透過、圧縮永久ひずみ、油膨潤
チューブ・ホース医療、食品、ポンプ、電気絶縁柔軟、透明、耐熱透過、吸着、抽出、キンク
屋外部品カバー、ブーツ、シール耐候、耐オゾン、耐UV引裂、砂塵摩耗、汚れ付着
コーティング布、電線、離型、保護膜耐熱、撥水、電気絶縁接着、ピンホール、硬化阻害
複合材料マトリックス柔軟複合材、封止材柔軟、耐熱、低応力界面接着、充填材沈降、粘度
寸法精度・設計上の注意
  • 短時間の引張強さを設計許容応力として使用せず、圧縮永久ひずみ、クリープ、応力緩和及び温度劣化を考慮する。
  • シール設計では圧縮率、溝充填率、熱膨張、流体膨潤、ガス透過及び押出隙間を確認する。
  • 低表面エネルギーにより接着が難しいため、インサート材、プライマー、プラズマ処理及び自己接着LSRの適合性を確認する。
  • 鋭角、薄肉端部、ウェルド部及びバリ取り傷は引裂起点となり得る。
品質・成形不良
不良材料側の主因成形条件側の主因主な対策
気泡・ボイド混入空気、揮発分、水分脱泡不足、射出速度過大、エア抜き不足真空脱泡、金型ベント、計量混合系点検
未硬化・硬化阻害白金触媒被毒、混合比不良低金型温度、短時間、硫黄・アミン・スズ等の汚染隔離管理、混合比校正、硬化曲線確認
バリ低粘度、金型合わせ面への流入型締不足、金型摩耗、射出圧過大金型精度、型締、ゲート及び充填条件の最適化
変色・臭気過酸化物分解物、顔料、汚染過加熱、二次加硫不足適正架橋、二次加硫、清浄管理
引裂・欠け低引裂配合、異物離型不良、鋭角、アンダーカット高引裂グレード、R付与、離型設計
寸法ずれ収縮、後加硫収縮金型温度差、硬化不足収縮率実測、温調均一化、後加硫条件固定
接着不良ブリード、低表面エネルギープライマー乾燥不足、基材汚染洗浄、表面処理、自己接着グレード評価
注意点・劣化及び故障モード
劣化現象主な原因発生しやすい条件影響予防策推奨確認試験
熱酸化劣化高温酸素、金属触媒180℃超、長時間、薄肉硬化、亀裂、伸び低下耐熱グレード、温度低減、金属影響確認熱老化後の引張・伸び・硬度
膨潤炭化水素、燃料、溶剤高温、長時間、低架橋密度寸法増加、軟化、シール圧低下FVMQ/FKM検討、実液評価体積・質量・硬度・圧縮特性
圧縮永久ひずみ架橋緩和、熱劣化高温、高圧縮率、長時間漏れ、復元不足適正硬度・圧縮率、二次加硫ISO 815相当、実溝シール試験
引裂破壊ノッチ、バリ、鋭角薄肉、繰返し変形、離型時亀裂進展、破断高引裂グレード、R付与、傷防止引裂、疲労、実部品耐久
アウトガス低分子シロキサン、架橋副生成物真空、高温、密閉電子部品汚染、光学曇り、接点障害低揮発グレード、二次加硫、洗浄TML/CVCM、GC-MS、接点試験
接着剥離低表面エネルギー、汚染水分、熱サイクル、異種材界面漏れ、脱落表面処理、プライマー、自己接着材剥離、せん断、熱湿サイクル
蒸気劣化高温水蒸気、抽出121~135℃反復滅菌強度低下、圧縮劣化蒸気対応医療グレード、回数制限オートクレーブ反復後物性
プラズマ・放射線劣化高エネルギー照射半導体、滅菌、宇宙硬化、亀裂、質量変化用途別グレード、遮蔽、交換周期照射後物性、質量、表面分析
推奨確認試験
  • 実薬品浸漬試験:実液、実濃度、最低・最高温度で24 h、168 h、1000 hを目安に、質量、体積、硬度、引張及び外観を測定する。
  • 圧縮シール試験:実溝、実圧縮率、実流体、最高温度で漏れ、圧縮永久ひずみ及び応力緩和を確認する。
  • 熱老化・熱湿試験:使用上限温度及び90~95%RH条件で、物性保持率、絶縁性及び接着を評価する。
  • アウトガス試験:真空・光学・接点用途ではTML、CVCM、GC-MS又は用途別汚染試験を行う。
  • 滅菌耐久試験:蒸気、EO、ガンマ線、電子線等の実滅菌条件を繰り返し、透明性、機械特性、抽出物及び接着を確認する。
環境・リサイクル性及び供給性
項目評価・内容
熱可塑性/熱硬化性架橋型であり、実質的に熱硬化性エラストマーとして扱う。
マテリアルリサイクル架橋後の再溶融はできない。粉砕材の限定再利用又は充填材化は用途限定である。
ケミカルリサイクルシロキサンへの解重合技術が検討・実用化されているが、回収系及び配合物分離が課題である。
焼却時の注意シリカ質残渣を生じる。フロロシリコーンはフッ素含有排ガス管理が必要である。
生分解性一般的な架橋シリコーンゴムは生分解性材料ではない。
価格区分比較的高価格。FVMQ、医療、高純度、難燃、熱伝導等は高価格になりやすい。
供給形態HCRコンパウンド、二液LSR、RTV、シート、丸紐、チューブ、成形品、発泡体等。
国内入手性主要メーカー及び加工業者が多く、汎用品は比較的入手しやすい。特殊色・特殊認証品は最小購入量に注意する。

関連材料との比較

比較材料特徴シリコーンゴムとの違い
EPDM耐候、耐オゾン、耐水、耐極性液体に優れるシリコーンゴムより耐熱上限と低温柔軟性は低いことが多いが、蒸気・熱水及び価格で有利な場合がある。
フッ素ゴム(FKM)耐熱、耐油、耐燃料、耐薬品性に優れる燃料・炭化水素への耐膨潤性はFKMが優れる。シリコーンゴムは低温性、柔軟性及び電気絶縁で有利。
天然ゴム(NR)高弾性、高引張、耐疲労性NRは機械強度と耐摩耗に優れるが、耐候、耐オゾン、耐熱及び耐油はシリコーンゴムより劣る。
ブタジエンゴム(BR)低温性、反発弾性、耐摩耗性BRは耐摩耗と動的特性に優れるが、耐候・耐熱・耐オゾンはシリコーンゴムが優れる。
フロロシリコーンゴム(FVMQ)シリコーン主鎖とフッ素側鎖通常VMQより燃料・油への耐膨潤性が高いが、価格、低温性及び機械強度に制約がある。
熱可塑性ポリウレタン(TPU)高強度、耐摩耗、熱可塑成形TPUは強度と耐摩耗に優れる。シリコーンゴムは耐熱、低温、耐候、電気特性で有利。
熱可塑性エラストマー(TPE)再溶融成形、短サイクル、リサイクル性TPEは射出成形性と再加工性に優れるが、高温・低温及び長期耐候ではシリコーンゴムが有利な場合が多い。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
信越化学工業KE、KEG、X-34、LIMS各シリーズ等HCR、LSR、RTV、電気電子、食品・医療、耐熱、難燃等の幅広いシリコーンゴムを供給。
DowSILASTIC™、DOWSIL™、XIAMETER™HCR、LSR、RTV、フロロシリコーン及びカスタムコンパウンドを展開。
Momentive Performance MaterialsSilopren™、LIM™、TSE/TFS系等LSR、HCR、RTV、自己接着、医療、光学、耐油等のシリコーンエラストマーを展開。
Wacker ChemieELASTOSIL®HCR、LSR、RTV、固体及び液状シリコーンゴムを世界展開。
ElkemSILBIONE™、BLUESIL™医療・ヘルスケア、工業、成形及びRTV用途のシリコーンエラストマーを展開。
デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアルSILASTIC™等(国内取扱例)国内におけるシリコーン材料の供給・技術支援。製品体系は販売時点の資料確認が必要。

製品名、ブランド、法規制適合及び供給状況は変更される場合がある。採用時には各メーカーの最新技術資料、SDS、適合証明書及びUL認定情報を確認する必要がある。

関連キーワード

シリコーンゴムQVMQFVMQPDMS液状シリコーンゴムLSRLIM成形RTVEPDMフッ素ゴムTPU熱可塑性エラストマーエラストマーの耐薬品性プラスチック・ゴムの熱伝導率

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