プラスチック・ゴムの熱伝導率

HSP溶解・膨潤性スクリーニング判定プログラム
HSP溶解・膨潤性スクリーニング判定プログラム

概要

英語名:coefficient of thermal conductivity for plastics material, coefficient of thermal conductivity for rubber materials
 

特性

熱伝導率は、プラスチック、ゴム、発泡体、繊維強化樹脂、熱伝導性複合材料などの放熱性または断熱性を評価するための基本的な物性値である。一般的な非充填プラスチックの熱伝導率は、室温付近でおおむね0.1~0.5 W/(m・K)程度であり、金属や高熱伝導性セラミックスと比較すると低い。

一方、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、黒鉛、炭素繊維、金属粉などを配合した熱伝導性プラスチックでは、充填材の種類、配合量、形状、配向、分散状態および成形条件により、1~20 W/(m・K)以上の熱伝導率を示す場合がある。

本ページに記載する数値は、主として室温付近における代表値または一般的な目安である。実際の熱伝導率は、樹脂グレード、充填材、結晶化度、密度、発泡倍率、温度、吸湿状態、測定方向、試験方法、試験片厚さおよび成形条件によって変化する。実使用では、グレード、温度、濃度、荷重、応力、使用時間、周辺雰囲気および接触状態を確認する必要がある。

熱伝導率とは

熱伝導率とは、物質内部を熱が移動しやすいかどうかを示す物性値である。一般に記号λまたはkで表し、単位にはW/(m・K)を用いる。

熱伝導率が大きい材料ほど熱を伝えやすく、放熱用途に適する。熱伝導率が小さい材料ほど熱を伝えにくく、断熱用途に適する。

フーリエの法則

厚さLの平板を通して、温度差ΔTによって熱が一次元的に移動する場合、定常状態における伝熱量Qは次式で表される。

Q=λ×A×ΔT÷L

  • Q:単位時間当たりの伝熱量[W]
  • λ:熱伝導率[W/(m・K)]
  • A:熱が通過する面積[m2
  • ΔT:材料両面の温度差[Kまたは℃]
  • L:熱が移動する方向の材料厚さ[m]

温度差は、Kと℃で数値が同じである。ただし、放射伝熱など絶対温度を使用する計算ではKを用いる必要がある。

熱抵抗

材料の熱の通りにくさは熱抵抗Rthで表され、単位にはK/Wを用いる。単層材料の熱抵抗は次式で求められる。

Rth=L÷(λ×A)

熱抵抗が小さいほど熱を通しやすく、放熱用途に有利である。熱抵抗が大きいほど熱を通しにくく、断熱用途に有利である。

熱流束

単位面積当たりの伝熱量を熱流束qといい、単位にはW/m2を用いる。

q=Q÷A=λ×ΔT÷L

熱拡散率

熱拡散率αは、材料内部で温度変化が広がる速さを示す物性値である。

α=λ÷(ρ×cp

  • α:熱拡散率[m2/s]
  • ρ:密度[kg/m3
  • cp:定圧比熱容量[J/(kg・K)]

同じ熱伝導率であっても、密度または比熱容量が異なると、温度変化への追従性は異なる。短時間加熱、電子部品の過渡発熱、金型冷却などを評価する場合は、熱伝導率だけでなく熱拡散率も確認する必要がある。

他材料との比較

一般的なプラスチックおよびゴムは、金属や高熱伝導性セラミックスと比較して熱伝導率が低い。これは、金属では自由電子が熱輸送に寄与するのに対し、高分子では主として分子鎖や分子間の振動によって熱が伝わるためである。

材料 熱伝導率の代表範囲
[W/(m・K)]
概要
静止空気 0.024~0.030 温度、湿度および圧力により変化する。発泡体の断熱性は内部に保持された気体の影響が大きい。
硬質ポリウレタンフォーム 0.020~0.030 代表的な断熱材である。密度、セル構造、発泡ガス、吸湿および経時変化により変動する。
一般的なゴム 0.12~0.35 ポリマー種、カーボンブラック、シリカ、可塑剤、硬度および温度によって変化する。
非充填プラスチック 0.10~0.50 樹脂種、結晶化度、密度、分子配向および温度によって変化する。
熱伝導性プラスチック 1~20以上 セラミックス、黒鉛、炭素繊維、金属粉などの種類、配合率および配向により大きく変化する。
0.58~0.65 温度により変化する。吸水性材料や発泡体では、含水状態が見掛けの熱物性に影響する。
ガラス 0.8~1.4 ガラス組成、気孔率および温度により変化する。
コンクリート 0.8~2.0 密度、骨材、含水率、空隙率および温度によって変化する。
アルミナセラミックス 15~35 純度、気孔率、結晶粒径、焼結状態および温度により変化する。
ステンレス鋼 14~25 鋼種および温度によって変化する。一般的な炭素鋼より低い傾向がある。
炭素鋼 40~60 炭素量、合金元素、組織および温度により変化する。
アルミニウム合金 120~230 合金種、熱処理状態および温度により変化する。
370~400 高い熱伝導率を示す。純度、加工状態および温度により変化する。

主要材料の熱伝導率一覧

以下の数値は、主として室温付近における非充填または標準的な一般グレードの代表値である。ガラス繊維、炭素繊維、無機充填材、難燃剤、可塑剤、耐衝撃改質剤などを含むグレードでは値が異なる。

熱可塑性プラスチック
材料名 略号 熱伝導率の代表範囲
[W/(m・K)]
数値利用時の注意
ABS樹脂 ABS 0.17~0.25 耐熱、難燃、めっき、ガラス繊維強化などのグレードにより変化する。
AES樹脂 AES 0.17~0.25 ゴム成分、顔料、難燃剤、無機充填材および成形条件の影響を受ける。
ASA樹脂 ASA 0.17~0.23 耐候グレード、着色、難燃剤および充填材によって変化する。
アクリル樹脂 PMMA 0.17~0.25 キャスト板、押出板、射出成形グレード、分子量および温度により異なる。
ポリスチレン PS 0.10~0.14 汎用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンおよび発泡体を区別する必要がある。
低密度ポリエチレン LDPE 0.30~0.36 密度、結晶化度、分岐構造、成形方向および温度により変化する。
高密度ポリエチレン HDPE 0.40~0.52 一般にLDPEより結晶化度が高く、熱伝導率も高い傾向がある。
超高分子量ポリエチレン UHMWPE 0.40~0.50 分子配向が大きい成形体では、方向による差が大きくなる場合がある。
ポリプロピレン PP 0.12~0.22 ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、タルク充填などで異なる。
ポリメチルペンテン PMP 0.15~0.20 低密度材料であり、結晶化状態、グレードおよび温度により変化する。
エチレン・酢酸ビニル共重合体 EVA 0.25~0.35 酢酸ビニル含有率、架橋、発泡状態および温度により変化する。
硬質ポリ塩化ビニル PVC-U 0.14~0.25 安定剤、充填材、衝撃改質剤、顔料および測定温度の影響を受ける。
軟質ポリ塩化ビニル PVC-P 0.13~0.20 可塑剤量、充填材量、硬度、温度および可塑剤移行により変化する。
ポリアセタール POM 0.23~0.35 ホモポリマー、コポリマー、摺動グレードおよび充填材によって異なる。
ポリアミド6 PA6 0.23~0.30 吸湿状態、結晶化度、ガラス繊維量および温度による影響が大きい。
ポリアミド66 PA66 0.23~0.30 乾燥状態と吸湿状態を区別し、使用温湿度を確認する必要がある。
ポリカーボネート PC 0.19~0.23 難燃、ガラス繊維強化、PC/ABSアロイなどでは異なる。
ポリエチレンテレフタレート PET 0.20~0.35 非晶状態、結晶状態、延伸方向、繊維強化および温度により変化する。
ポリブチレンテレフタレート PBT 0.20~0.30 ガラス繊維強化グレードでは異方性が生じる。PBTPと表記される場合もある。
ポリエチレンナフタレート PEN 0.20~0.35 延伸フィルムでは面内方向と厚さ方向の値が異なる。
ポリフェニレンエーテル PPE 0.20~0.25 変性PPEでは、ポリスチレン、難燃剤、充填材などの配合により変化する。
ポリフェニレンサルファイド PPS 0.25~0.35 市販グレードはガラス繊維または無機充填材を含む場合が多い。
ポリサルホン PSU 0.20~0.26 PSFと表記される場合がある。ガラス繊維強化などのグレードでは異なる。
ポリエーテルサルホン PESU 0.18~0.24 PESと表記される場合もあるが、ポリエステルとの混同に注意する。
ポリエーテルイミド PEI 0.20~0.25 ガラス繊維強化、摺動、難燃などのグレードにより変化する。
ポリエーテルエーテルケトン PEEK 0.25~0.32 結晶化度、炭素繊維、ガラス繊維、黒鉛、PTFE配合などにより大きく異なる。
ポリアリレート PAR 0.18~0.25 充填材、アロイ組成、成形状態および温度によって変化する。
ポリイミド PI 0.20~0.35 フィルム、成形材料、熱硬化型、熱可塑型および充填材の有無を区別する。
ポリテトラフルオロエチレン PTFE 0.23~0.30 四フッ化エチレン樹脂と同じ材料である。充填PTFEでは値が異なる。
エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体 ETFE 0.20~0.25 四フッ化エチレン・エチレン共重合体と同じ材料である。
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体 FEP 0.20~0.25 四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体と同じ材料である。
パーフルオロアルコキシアルカン PFA 0.20~0.25 共重合組成、結晶化度、成形状態および温度によって変化する。
ポリフッ化ビニリデン PVDF 0.17~0.22 結晶相、延伸、充填材、測定方向および温度によって変化する。
熱硬化性樹脂・ゴム・エラストマー
材料名 略号 熱伝導率の代表範囲
[W/(m・K)]
数値利用時の注意
エポキシ樹脂 EP 0.18~0.35 硬化剤、架橋密度、無機充填材、気泡および硬化条件によって変化する。
フェノール樹脂 PF 0.15~0.30 木粉、ガラス繊維、鉱物、紙または布基材を含む場合は値が異なる。
ユリア樹脂 UF 0.20~0.35 充填材、含水率、硬化状態および成形密度によって変化する。
不飽和ポリエステル樹脂 UP 0.17~0.30 ガラス繊維、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの配合により変化する。
ポリウレタン PU 0.12~0.25 硬質、軟質、エラストマー、発泡体を区別する必要がある。
シリコーン樹脂 SI 0.15~0.25 シリカ、アルミナなどの無機充填材により大きく変化する。
天然ゴム NR 0.13~0.20 カーボンブラック、シリカ、加硫系、硬度および温度によって変化する。
スチレン・ブタジエンゴム SBR 0.14~0.25 補強剤、オイル、加硫密度、硬度および配合比率の影響を受ける。
エチレン・プロピレン・ジエンゴム EPDM 0.20~0.36 充填材量、発泡状態、硬度、吸湿状態および温度により変化する。
クロロプレンゴム CR 0.20~0.27 金属酸化物、補強剤、可塑剤、発泡状態および硬度により変化する。
ブチルゴム IIR 0.13~0.20 ハロゲン化、充填材、可塑剤および加硫状態によって変化する。
ニトリルゴム NBR 0.18~0.28 アクリロニトリル含有率、充填材、可塑剤、硬度および温度の影響を受ける。
フッ素ゴム FKM 0.18~0.25 ポリマー組成、充填材、加硫系、温度および薬品接触状態によって変化する。
シリコーンゴム VMQ 0.18~0.30 高熱伝導グレードではアルミナなどを高充填し、1 W/(m・K)以上となる場合がある。
熱可塑性ポリウレタン TPU 0.15~0.25 ポリエステル系、ポリエーテル系、硬度、結晶性および温度により異なる。
発泡プラスチック・発泡ゴム
材料 熱伝導率の代表範囲
[W/(m・K)]
主な変動要因
ビーズ法発泡ポリスチレン 0.034~0.045 密度、含水率、セル径、温度、圧縮状態および経時変化によって変化する。
押出法発泡ポリスチレン 0.028~0.040 発泡ガス、セル構造、密度、温度、吸湿および経時変化によって変化する。
硬質ポリウレタンフォーム 0.020~0.030 発泡ガス、独立気泡率、密度、吸湿および発泡ガス置換の影響が大きい。
軟質ポリウレタンフォーム 0.030~0.050 連続気泡率、密度、圧縮率、温度および空気対流の影響を受ける。
ポリエチレンフォーム 0.030~0.050 架橋状態、発泡倍率、セル構造、圧縮率および温度により変化する。
EPDM発泡ゴム 0.035~0.060 独立気泡率、密度、圧縮状態、吸水、温度および使用時間により変化する。
シリコーンフォーム 0.05~0.10 密度、セル構造、圧縮率、温度および無機充填材量によって変化する。

熱伝導率を左右する要因

樹脂の化学構造

高分子主鎖の剛直性、分子間力、側鎖構造、極性、結晶性などは、分子振動による熱輸送に影響する。ただし、化学構造だけから実際の熱伝導率を正確に予測することは難しい。

結晶化度

一般に、結晶領域は非晶領域より分子鎖が規則的に配列しているため、熱を伝えやすい傾向がある。例えば、HDPEはLDPEより高い熱伝導率を示す場合が多い。ただし、結晶形態、結晶配向、温度および成形履歴によって変化する。

分子配向・繊維配向

分子鎖、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛、板状窒化ホウ素などが一定方向へ配向すると、熱伝導率に異方性が生じる。射出成形品、押出シート、延伸フィルム、繊維強化材料では、流動方向、流動直角方向および厚さ方向を区別する必要がある。

充填材の種類

熱伝導率を高めるためには、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、黒鉛、炭素繊維、金属粉などが使用される。ただし、充填材単体の熱伝導率が高くても、樹脂中で連続した熱伝導経路が形成されない場合は、複合材料全体の熱伝導率は大きく上昇しない。

充填率

一般に充填率が高くなるほど熱伝導率は上昇する。ただし、高充填化により溶融粘度上昇、流動性低下、成形不良、ウェルド強度低下、衝撃強度低下、比重増加、金型摩耗などが生じる場合がある。

界面状態

樹脂と充填材の界面には熱抵抗が存在する。充填材表面処理、分散状態、界面密着性、空隙、凝集などによって熱伝導率が変化する。

空隙・気泡

空気の熱伝導率は低いため、材料内部の空隙率が高いほど、一般に見掛けの熱伝導率は低下する。ただし、大きな気泡、連続気泡または温度差が大きい条件では、気体の対流や放射の影響が増える場合がある。

温度

プラスチックの熱伝導率は温度によって変化する。ガラス転移温度、融点、結晶転移温度付近では、熱伝導率、比熱容量、密度および寸法が変化するため、室温の値を高温または低温設計へそのまま適用しないことが重要である。

吸湿・含水率

ポリアミドなどの吸湿性材料では、含水率によって熱伝導率、比熱容量、密度、寸法および機械特性が変化する。発泡体や多孔質材料では、水分の侵入によって断熱性能が低下する場合がある。

圧力・圧縮率

発泡ゴム、熱伝導シート、ギャップフィラーなどは、圧縮により材料厚さ、接触面積、空隙率および接触熱抵抗が変化する。材料単体の熱伝導率が同じでも、圧縮荷重によって実装時の熱抵抗が大きく変わる場合がある。

主な測定方法

熱伝導率の測定方法には、定常法と非定常法がある。異なる測定法で得られた数値は、試験片形状、測定方向、接触状態、解析条件などが異なるため、単純に比較できない場合がある。

測定方法 主な規格例 特徴 注意点
保護熱板法 ISO 8302、ASTM C177など 定常状態で熱流を測定する。断熱材や比較的低熱伝導率の材料に適用される。 測定時間が長く、試験片寸法、端部熱損失、表面状態および接触状態の管理が必要である。
熱流計法 ISO 8301、ASTM C518など 熱流計を用いて定常熱流を測定する。板状断熱材などに使用される。 校正条件、試験片厚さ、表面平滑性、平均温度および測定圧力を確認する。
トランジェント・プレーン・ソース法 ISO 22007-2など センサーを試験片間に挟み、非定常応答から熱伝導率および熱拡散率を求める。 試験片寸法、センサー径、接触状態、測定時間および異方性の影響を受ける。
レーザーフラッシュ法 ISO 22007-4、ASTM E1461など 熱拡散率を測定し、密度と比熱容量から熱伝導率を算出する。 λ=α×ρ×cpとして間接的に求めるため、各測定値の誤差が影響する。
熱線法 材料および装置に対応する規格による 加熱線周辺の温度上昇から熱伝導率を求める非定常法である。 試験片寸法、センサー接触、測定時間、材料の均一性および温度範囲を確認する。
定常比較法 装置または社内試験法による 標準試料との比較によって熱伝導率を求める。 標準試料、接触熱抵抗、熱損失および校正範囲の影響を受ける。
測定条件として確認すべき項目
  • 測定温度および平均温度
  • 試験片の厚さ、幅、直径および表面状態
  • 熱流方向および成形流動方向
  • 試験片の乾燥状態、吸湿状態および含水率
  • 材料密度、発泡倍率および空隙率
  • 充填材の種類、配合量、形状、粒径および配向
  • 成形方法、成形温度、金型温度、冷却条件およびアニール条件
  • 測定圧力、締付荷重および接触材の有無
  • 測定規格、測定装置、校正条件および解析方法
  • 面内方向、厚さ方向、流動方向および流動直角方向の区別

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拡張データ

材料状態による熱伝導率の変化
比較項目 一般的な傾向 熱伝導率への影響 確認すべき条件
非晶状態と結晶状態 結晶化度が高いほど分子鎖が規則的に配列する。 一般に結晶化度の上昇に伴い高くなる傾向がある。 結晶化度、冷却速度、アニール、成形履歴
乾燥状態と吸湿状態 吸湿により水分が高分子内部へ取り込まれる。 熱伝導率、比熱容量、密度および寸法が変化する可能性がある。 調湿条件、含水率、温度、湿度、使用時間
無配向と配向状態 分子鎖、繊維または板状フィラーが特定方向へ配列する。 配向方向の熱伝導率が高くなる場合がある。 流動方向、押出方向、延伸倍率、厚さ方向
非充填と繊維強化 繊維が熱伝導経路を形成する。 配向方向では上昇するが、厚さ方向では上昇が小さい場合がある。 繊維種類、繊維長、含有量、配向、界面状態
中実体と発泡体 発泡により低熱伝導率の気体を含む。 発泡倍率の増加により一般に低下する。 発泡倍率、独立気泡率、セル径、含水率、圧縮率
常温と高温 分子運動、密度、結晶状態および界面状態が変化する。 樹脂種により増加または減少し、転移温度付近では変化が大きくなる場合がある。 使用温度、Tg、融点、熱履歴、測定雰囲気
温度依存性の簡易補間

温度T1における熱伝導率λ1と、温度T2における熱伝導率λ2が既知であり、その温度範囲内で変化がほぼ直線とみなせる場合、温度Tにおける熱伝導率λ(T)は次式で近似できる。

λ(T)=λ1+(λ2-λ1)×(T-T1)÷(T2-T1

この式は簡易的な線形補間であり、ガラス転移温度、融点、結晶転移温度などをまたぐ範囲には適用しない。既知の温度範囲外へ外挿する場合は誤差が大きくなるため、原則として避ける。

温度補間の計算例

20℃で0.20 W/(m・K)、80℃で0.17 W/(m・K)の材料について、50℃の熱伝導率を線形補間する。

λ(50℃)=0.20+(0.17-0.20)×(50-20)÷(80-20)

λ(50℃)=0.185 W/(m・K)

実際の材料では温度依存性が直線にならない場合があるため、設計値には安全率を設け、重要部品では使用温度で実測する。

異方性の表し方
方向 主な表記例 意味
面内方向 In-plane、XY方向 シート、フィルムまたは板の面に沿って熱が移動する方向である。
厚さ方向 Through-plane、Z方向 シート、フィルムまたは板の表面から裏面へ熱が移動する方向である。
流動方向 MD、Flow direction 射出または押出時に樹脂が流れた方向であり、繊維や板状フィラーが配向しやすい。
流動直角方向 TD、Transverse direction 流動方向に対して直角の方向である。

充填系プラスチックの熱伝導率

熱伝導性プラスチックでは、樹脂中に高熱伝導性の充填材を分散させ、充填材同士の接触によって熱伝導経路を形成する。実際の熱伝導率は、充填材単体の熱伝導率だけでなく、粒子径、粒度分布、アスペクト比、配向、表面処理、充填率、空隙および界面熱抵抗によって決まる。

充填材 複合材料の代表的な目安
[W/(m・K)]
電気特性 主な特徴 主な注意点
ガラス繊維 0.3~0.8 絶縁性 補強、耐熱性および寸法安定性を改善しやすい。 熱伝導性向上は比較的小さい。流動方向と厚さ方向で異方性が生じる。
タルク 0.3~1.0 絶縁性 剛性、寸法安定性および耐熱性を改善しやすい。 板状粒子の配向により方向差が生じる。衝撃強度が低下する場合がある。
アルミナ 0.8~5 絶縁性 熱伝導性、電気絶縁性および耐熱性のバランスがよい。 高充填では比重、粘度、金型摩耗および脆化が増加する。
窒化ホウ素 2~15以上 絶縁性 高い熱伝導性と電気絶縁性を両立しやすい。 板状粒子が面内方向に配向すると、厚さ方向の値が低くなる場合がある。
窒化アルミニウム 2~10 絶縁性 高熱伝導性と電気絶縁性を有する。 吸湿、加水分解、表面処理、分散性、コストおよび設備摩耗を確認する。
酸化マグネシウム 1~5 絶縁性 熱伝導性と絶縁性を付与できる。 吸湿、表面処理、界面状態および高充填時の粘度上昇に注意する。
黒鉛 3~30以上 導電性 高い熱伝導性を得やすく、面内方向の放熱に有効である。 電気絶縁用途には通常適さない。異方性、着色性および機械特性を確認する。
炭素繊維 0.5~10以上 導電性 高剛性、軽量化および熱伝導性を付与できる。 異方性が大きい。ウェルド強度、電気絶縁性および表面外観を確認する。
金属粉・金属繊維 1~20以上 導電性 高い熱伝導性を得られる場合がある。 比重増加、導電性、腐食、金型摩耗および界面密着性を確認する。
ハイブリッド充填 1~20以上 配合による 異なる粒径や形状を組み合わせ、熱伝導経路を形成しやすくできる。 粘度、機械特性、絶縁性、比重およびコストが大きく変化する。
充填系材料の選定比較
充填系 熱伝導性 電気絶縁性 軽量性 成形性 代表的な用途
ガラス繊維強化 構造部品、電装部品、耐熱筐体
アルミナ充填 絶縁放熱部品、封止材、接着剤
窒化ホウ素充填 絶縁放熱筐体、LED周辺部品、TIM
窒化アルミニウム充填 高絶縁放熱部品、電子部品封止
黒鉛充填 × 導電性放熱部品、ヒートスプレッダー
炭素繊維強化 × 軽量構造部品、導電性放熱筐体

凡例は、◎:特に適する傾向、○:適する傾向、△:条件確認が必要、×:一般に適さない傾向を示す。評価は代表的な傾向であり、実際には樹脂、充填率、表面処理、成形条件および製品形状によって異なる。

複合材料の簡易推算

球状充填材が均一に分散し、充填率が比較的低く、界面熱抵抗や凝集を無視できると仮定した場合、複合材料の熱伝導率はMaxwell型の近似式で概算できる。

λc=λm×{λf+2λm+2φ(λf-λm)}÷{λf+2λm-φ(λf-λm)}

  • λc:複合材料の熱伝導率
  • λm:母材樹脂の熱伝導率
  • λf:充填材の熱伝導率
  • φ:充填材の体積分率

この近似式は、板状フィラー、繊維状フィラー、高充填材料、凝集体、配向材料およびフィラー同士が連続的な熱伝導経路を形成する材料には十分に適用できない場合がある。実設計では実測値を優先する。

熱抵抗・温度差の計算例

単層板の熱抵抗

熱伝導率0.20 W/(m・K)、厚さ2 mm、伝熱面積100 cm2の樹脂板について熱抵抗を求める。

  • λ=0.20 W/(m・K)
  • L=2 mm=0.002 m
  • A=100 cm2=0.01 m2

Rth=0.002÷(0.20×0.01)=1.0 K/W

この樹脂板を10 Wの熱が通過すると仮定した場合、樹脂板両面の温度差は次のようになる。

ΔT=Q×Rth=10×1.0=10℃

厚さ変更による比較
厚さ 熱伝導率 熱抵抗 10 W通過時の温度差
1 mm 0.20 W/(m・K) 0.5 K/W 5℃
2 mm 0.20 W/(m・K) 1.0 K/W 10℃
3 mm 0.20 W/(m・K) 1.5 K/W 15℃
5 mm 0.20 W/(m・K) 2.5 K/W 25℃

面積および熱伝導率が同じ場合、材料厚さが2倍になると熱抵抗も2倍になる。ただし、実際の部品では側面への熱拡散、対流、放射および接触熱抵抗などが加わる。

複層材料の合成熱抵抗

熱が複数の層を直列に通過する場合、各層の熱抵抗を加算する。

Rtotal=R1+R2+R3+Rcontact

伝熱面積Aが共通の場合は、次式で表される。

Rtotal=L1÷(λ1A)+L2÷(λ2A)+L3÷(λ3A)+Rcontact

樹脂板と熱伝導シートの計算例
  • 樹脂板:厚さ2 mm、熱伝導率0.20 W/(m・K)
  • 熱伝導シート:厚さ1 mm、熱伝導率2.0 W/(m・K)
  • 伝熱面積:100 cm2=0.01 m2
  • 接触熱抵抗:計算例では無視

樹脂板の熱抵抗=0.002÷(0.20×0.01)=1.0 K/W

熱伝導シートの熱抵抗=0.001÷(2.0×0.01)=0.05 K/W

合成熱抵抗=1.0+0.05=1.05 K/W

10 W通過時の温度差=10×1.05=10.5℃

この例では、熱伝導シートよりも熱伝導率の低い樹脂板が全体の熱抵抗を支配している。高熱伝導材料を一部に使用しても、低熱伝導層が厚い場合は放熱性能が十分に改善されない場合がある。

接触熱抵抗を含む計算

固体同士の接触面には微細な凹凸と空隙が存在するため、接触熱抵抗が発生する。接触熱抵抗を含む全体の温度差は次式で表される。

ΔT=Q×(Rmaterial+Rcontact1+Rcontact2

接触熱抵抗は、表面粗さ、平面度、締付圧力、熱伝導グリース、熱伝導シート、接着剤、空隙、温度、荷重および使用時間によって変化する。

単位換算
換算項目 換算方法
mmからm mmの値÷1000
cm2からm2 cm2の値÷10000
mm2からm2 mm2の値÷1000000
℃の温度差からKの温度差 温度差の数値は同じ
mW/(m・K)からW/(m・K) mW/(m・K)の値÷1000

材料選定上の注意

室温の値を高温設計へそのまま使用しない

熱伝導率、比熱容量、密度および寸法は温度によって変化する。特にガラス転移温度、融点または軟化温度に近い条件では、機械強度、クリープ、変形および接触状態も変化するため、使用温度域のデータを使用する。

面内方向と厚さ方向を区別する

黒鉛、窒化ホウ素、炭素繊維、ガラス繊維などを含む材料では、フィラー配向によって大きな異方性が生じる。放熱経路が厚さ方向である場合、面内方向の高い熱伝導率を設計値として使用しない。

試験方法を確認する

熱伝導率の測定結果は、測定法、試験片寸法、平均温度、測定圧力、接触状態および解析方法によって異なる。同一の規格または同等の条件で測定した値を比較することが望ましい。

材料単体の熱伝導率だけで判断しない

実装時の放熱性能には、材料厚さ、面積、接触熱抵抗、締付圧力、表面粗さ、熱源位置、空気流、自然対流、強制対流、放射および周辺部材が影響する。

充填率だけで判断しない

同じ充填率であっても、充填材の粒径、形状、粒度分布、配向、凝集、表面処理および界面状態によって熱伝導率は異なる。質量分率と体積分率を混同しないことも重要である。

電気絶縁性を確認する

黒鉛、炭素繊維、金属粉などは高い熱伝導性を付与できる一方、電気導電性も高くなる。電子部品周辺で使用する場合は、体積抵抗率、表面抵抗率、絶縁破壊強さ、耐トラッキング性および必要な絶縁距離を確認する。

高充填による成形性低下を確認する

熱伝導性フィラーを高充填すると、樹脂の流動性が低下し、充填不足、ウェルド、ボイド、フィラー配向、表面粗れ、金型摩耗などが生じやすくなる。射出圧力、樹脂温度、金型温度、ゲート位置、製品肉厚および成形機能力を確認する。

機械特性とのバランスを確認する

高熱伝導化により、引張伸び、衝撃強度、ウェルド強度、疲労特性などが低下する場合がある。放熱性能だけでなく、荷重、応力、振動、衝撃、締結、熱膨張差および使用時間を考慮して選定する。

比重増加を確認する

アルミナ、窒化アルミニウム、金属粉などを高充填すると、材料比重が大きくなる。金属代替による軽量化を目的とする場合は、部品体積、必要肉厚および最終製品重量を比較する。

熱膨張差を確認する

樹脂、金属、セラミックスおよび接着剤では線膨張係数が異なる。温度サイクルによって、界面剥離、クラック、反り、接触圧力低下および接触熱抵抗の増加が生じる場合がある。

吸湿・加水分解・薬品接触を確認する

吸湿性樹脂、加水分解を受ける樹脂、発泡材および多孔質材料では、温湿度や薬品接触によって熱物性と機械特性が変化する。実使用では、グレード、温度、濃度、pH、荷重、応力、使用時間および乾湿サイクルを含めて確認する。

長期使用時の変化を確認する

長期使用では、熱老化、酸化、加水分解、可塑剤移行、収縮、クリープ、発泡ガス置換、接着界面劣化などにより、初期の熱抵抗を維持できない場合がある。

推奨する確認試験
  • 使用温度域における熱伝導率測定
  • 面内方向および厚さ方向の異方性測定
  • 乾燥状態と吸湿状態の比較
  • 実製品厚さでの熱抵抗測定
  • 締付圧力を変えた接触熱抵抗測定
  • 熱サイクル前後の熱抵抗比較
  • 高温高湿処理前後の熱物性比較
  • 成形条件を変えたフィラー配向および熱伝導率比較
  • 実部品を使用した温度分布測定
  • 赤外線サーモグラフィーまたは熱電対による発熱部温度確認

有料会員向け詳細データ

有料会員向けには、一般値だけでは判断しにくい設計条件について、詳細な材料比較、温度別データ、充填系データ、複層熱抵抗計算およびグレード別情報を提供する構成が適している。

有料会員プランを確認する 会員情報を確認する

有料会員向けの主な詳細項目

項目 内容
温度別熱伝導率 室温以外の温度域について、利用可能な範囲で代表値、測定方向および測定条件を整理する。
グレード別比較 非強化、ガラス繊維強化、炭素繊維強化、無機充填および熱伝導グレードを区分する。
方向別データ 面内方向、厚さ方向、流動方向および流動直角方向の違いを整理する。
充填材別データ アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、黒鉛、炭素繊維などの特性を比較する。
熱抵抗計算 厚さ、面積、熱伝導率、発熱量および接触熱抵抗から温度差を計算する。
複層構造計算 樹脂、接着剤、熱伝導シート、金属板などを組み合わせた合成熱抵抗を計算する。
温度補間計算 2点以上の温度データを用いて、指定温度における熱伝導率を簡易補間する。
材料比較 熱伝導率、密度、電気絶縁性、耐熱性、成形性および異方性を同時に比較する。
設計用出力 選定結果、計算条件、使用数値および注意事項を一覧化し、設計記録として利用できるようにする。

有料会員向け計算で入力する項目

  • 材料名または熱伝導率
  • 材料厚さ
  • 伝熱面積
  • 発熱量または熱流束
  • 高温側温度
  • 低温側温度
  • 材料層数
  • 各層の熱伝導率と厚さ
  • 接触熱抵抗
  • 熱流方向
  • 測定温度または使用温度
  • 安全率

計算結果として表示する項目

  • 各材料層の熱抵抗
  • 合成熱抵抗
  • 予想温度差
  • 予想通過熱量
  • 熱流束
  • 各界面の推定温度
  • 最も熱抵抗が大きい層
  • 厚さ変更時の比較
  • 材料変更時の比較
  • 計算条件に基づく注意事項

計算結果は、一次元定常熱伝導を基本とした簡易的な設計値である。実際の部品では、三次元的な熱拡散、対流、放射、熱源分布、接触状態、形状、周辺部材、荷重、応力および使用時間が影響する。重要部品では、熱流体解析および実部品試験による確認が必要である。

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