熱可塑性コポリエステル

概要特徴構造式種類・代表グレード成形加工代表的な物性値又は機械的性質耐薬品性製法詳細な利用用途関連材料との比較代表的なメーカー関連キーワード

概要

項目 内容
材料名 熱可塑性コポリエステル
略記号 TPC、TPEE、TPC-ET、TEEE
IUPAC 単一のIUPAC名で表される材料ではなく、芳香族ポリエステル硬質セグメントとポリエーテル又はポリエステル軟質セグメントからなるブロック共重合体である。
英語名 Thermoplastic Copolyester、Thermoplastic Copolyester Elastomer、Thermoplastic Polyester Elastomer
日本語名 熱可塑性コポリエステル、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、コポリエステルエラストマー
分類 熱可塑性エラストマー、ポリエステル系ブロック共重合体
プラスチック分類 エンジニアリング・エラストマー、熱可塑性樹脂
化学式又は代表構造 -[PBT系硬質セグメント]-[ポリエーテル系又はポリエステル系軟質セグメント]-
CAS No. 単一物質ではないため一般に特定しない。共重合組成、末端構造及び添加剤により異なる。
構造・主成分 一般にPBT系結晶性ポリエステルを硬質セグメント、PTMG等のポリエーテル又は脂肪族ポリエステルを軟質セグメントとする。
主な用途 自動車ブーツ、エアダクト、ホース、チューブ、ケーブル被覆、コネクタ、ギア、ベルト、フィルム、医療用柔軟部品など

TPCは、結晶性ポリエステルの耐熱性、耐油性及び機械強度と、軟質セグメントの柔軟性及び弾性回復性を組み合わせた熱可塑性エラストマーである。硬質セグメントの結晶ドメインが物理架橋点として作用し、加硫ゴムに近い弾性を示しながら、通常の熱可塑性樹脂と同様に溶融成形できる。

硬度、融点、弾性率及び低温特性は共重合組成により大きく変化する。一般に硬質セグメント量の増加により剛性、耐熱性及び耐薬品性が高くなり、軟質セグメント量の増加により低温柔軟性及び反発弾性が高くなる。

ポリエステル結合を含むため、乾燥不足、高温高湿、熱水、蒸気、強酸及び強アルカリでは加水分解に注意が必要である。実使用ではグレード、硬度、温度、濃度、荷重、応力、湿度、接触時間及び成形履歴を確認する必要がある。

特徴

長所
  • 耐屈曲疲労性、反発弾性、耐衝撃性に優れる。
  • 油、グリース及び脂肪族炭化水素に比較的強い。
  • 低温から高温まで機械特性を保持しやすい。
  • 射出、押出、ブロー、フィルム及びチューブ成形に対応するグレードがある。
  • 加硫工程を必要とせず、端材の再利用を検討できる。
短所
  • 高温水、蒸気、強酸及び強アルカリで加水分解しやすい。
  • 芳香族溶剤、塩素系溶剤、ケトン及び一部エステルで膨潤又は軟化することがある。
  • 乾燥不足又は長時間滞留で分子量低下、シルバー及び強度低下が起こり得る。
  • 軟質グレードでは圧縮永久ひずみが架橋ゴムより大きい場合がある。
外観

自然色は乳白色から半透明が一般的であり、硬度及び結晶性により透明感が異なる。着色、黒色、艶消し及び高透明グレードも存在する。

耐熱性

融点は一般に約150~225℃、連続使用温度は概ね80~140℃の範囲であるが、グレード、荷重、雰囲気及び寿命基準により大きく異なる。

耐薬品性

鉱油、グリース、脂肪族炭化水素には比較的良好である一方、熱水、アルカリ、強酸、芳香族溶剤及びハロゲン化溶剤には注意が必要である。

加工性

一般的な熱可塑性樹脂設備で加工できるが、吸湿したペレットを高温で溶融すると加水分解が進むため、除湿乾燥と滞留時間管理が重要である。

分類上の注意

TPC、TPEE、TPC-ET及びTEEEは近い意味で使用されるが、規格及びメーカーにより範囲が異なる。材料指定ではメーカー名、グレード、硬度、軟質セグメント種及び認証を明記する。

構造式

代表例では、PBT系硬質セグメントとPTMG系ポリエーテル軟質セグメントが交互に連結したブロック共重合体である。

熱可塑性コポリエステルの代表的構造

項目 構造・内容
代表的な構造単位 硬質部:-O-(CH2)4-O-CO-C6H4-CO-、軟質部:PTMG等
硬質セグメント PBT系結晶性ポリエステル。強度、耐熱性及び物理架橋に寄与する。
軟質セグメント ポリエーテル又は脂肪族ポリエステル。柔軟性、低温特性及び弾性回復に寄与する。
主な構成原料 テレフタル酸又はDMT、1,4-ブタンジオール、長鎖ジオール。
共重合・変性 耐加水分解、難燃、耐候、摺動、接着、導電等を目的に構造設計又は添加剤配合される。

種類・代表グレード

グレード区分 主な改質方法 代表的特徴 物性への影響 主用途
非強化・標準 硬質/軟質セグメント比の調整 基本性能のバランス 硬度範囲が広い ブーツ、シール、機械部品
一般射出成形 流動性及び離型性の調整 複雑形状に対応 高流動化で強度が低下する場合がある グリップ、コネクタ
押出・高粘度 分子量及び溶融強度を高める チューブ、異形押出に適する 流動性は低下 ホース、ケーブル
ブロー成形 高溶融強度化 パリソン保持性 射出用と条件が異なる CVJブーツ、ダクト
耐熱 硬質部増加、耐熱安定剤 高温剛性、熱老化性向上 硬度上昇、低温柔軟性低下の場合 エンジン周辺
耐衝撃・軟質 軟質部増加 低温柔軟性、衝撃吸収 HDT及び剛性低下 グリップ、緩衝材
難燃 難燃剤及び助剤 UL 94認証グレードが存在 機械特性、色、加水分解性への影響 電線、電装部品
GF強化 GF 10~40質量%程度 剛性、HDT、寸法安定性向上 弾性、外観及び相手材摩耗に注意 ブラケット、構造部品
CF強化 CF配合 高剛性、導電性、低膨張 高価格、異方性 特殊機械部品
摺動 PTFE、シリコーン等 摩擦及び摩耗低減 接着、塗装、溶出に注意 ギア、ローラー
耐加水分解 末端封止、安定剤 湿熱寿命向上 蒸気・強アルカリには限界 冷却系、屋外部品
食品接触・医療 添加剤及び製造管理 規制対応グレードが存在 個別証明及び溶出確認が必要 チューブ、食品機械
フィルム・透湿 組成及び結晶性調整 柔軟フィルム、透湿性 ブロッキング及び巻取りに注意 医療、衣料、保護膜

成形加工

加工方法 適性 理由 主な注意点
射出成形 流動性と弾性のバランスが良い。 乾燥、滞留、ゲート白化、離型を確認する。
押出成形 高粘度グレードでチューブ、ホース及び被覆に適する。 ダイスウェル、冷却、寸法安定性を管理する。
ブロー成形 専用高溶融強度グレードが存在する。 パリソン垂れ、ピンチオフ強度、肉厚むらに注意する。
インフレーション 一部フィルムグレードで可能である。 溶融強度とブロッキングを確認する。
Tダイフィルム フィルム及びラミネートに対応する。 厚み、結晶化、巻取りを管理する。
真空・圧空成形 シートグレードで可能である。 加熱窓、ドローダウン及び戻りに注意する。
圧縮成形 試験片及び少量品に使用できる。 量産性は射出・押出に劣る。
発泡成形 専用設計で可能である。 セル安定性及び機械特性低下を確認する。
3Dプリント フィラメント化可能なグレードがある。 吸湿、反り、層間接着及び柔軟材搬送に注意する。
切削加工 硬質グレードは比較的加工しやすい。 軟質材の変形、発熱及びバリに注意する。
溶着 熱板、超音波、振動及びレーザーを検討できる。 グレード、肉厚、結晶化及び相手材適合を確認する。
接着 プライマー又は表面処理で改善できる。 接着剤選定と湿熱耐久性を確認する。
塗装・印刷 表面処理により対応できる。 離型剤、添加剤移行及び密着を確認する。
めっき × 一般グレードは直接めっきに不向きである。 特殊前処理又は専用グレードが必要である。
インサート成形 柔軟封止及び複合化に有効である。 金属温度、応力集中及び接着性を確認する。
成形条件の目安
項目 単位 代表範囲 備考
予備乾燥 必要 吸湿ペレットは必ず除湿乾燥する。
乾燥温度 80~120 軟化及びブロッキングを避け、メーカー条件を優先する。
乾燥時間 h 2~5 初期含水率、乾燥機及び粒量により調整する。
許容含水率 % 0.02~0.05以下が目安 高温成形では低含水率管理が重要である。
シリンダー温度・供給部 170~220 グレードの融点に応じて設定する。
シリンダー温度・圧縮部 180~240 局所過熱及び長時間滞留を避ける。
シリンダー温度・計量部 190~250 溶融粘度及び外観を確認する。
ノズル温度 190~245 糸引き又はコールドスラッグを防止する。
金型温度 20~80 結晶化、収縮、外観及び寸法に影響する。
射出圧力 MPa 50~120 製品形状及び流動長により調整する。
背圧 MPa 0.2~1.0 過度なせん断発熱を避ける。
スクリュー回転数 rpm 30~100 過度な回転による温度上昇を避ける。
成形収縮率・流動方向 % 0.8~2.2 硬度、結晶化、肉厚及び充填材で変動する。
成形収縮率・流動直角方向 % 1.0~2.5 GF強化材では異方性が大きくなる。
推奨肉厚 mm 1.0~4.0 流動、収縮及び柔軟性から設計する。
アニール 必要に応じて 寸法安定化又は結晶化促進に用いる。

代表的な物性値又は機械的性質

以下は非強化・標準グレード群の代表範囲である。TPCは硬度範囲が広いため単一代表値で一般化しにくい。比較機能では硬度又はグレード区分を揃えて使用する必要がある。

項目 単位 代表範囲 比較用代表値 試験規格 条件・備考 信頼度
密度 g/cm³ 1.10~1.30 ISO 1183等 23℃、乾燥状態 B
比重 無次元 1.10~1.30 代表値 23℃ B
吸水率・24時間 % 0.1~0.6 ISO 62又はASTM D570 23℃水中、グレード依存 B
平衡吸水率 % 0.2~1.0 代表値 23℃・50%RH付近 C
硬度 Shore D 25~80 ISO 868等 23℃ A
引張強さ・破断 MPa 15~55 ISO 527等 23℃、乾燥状態 B
引張弾性率 GPa 0.03~1.5 ISO 527等 23℃、硬度依存 B
引張破断伸び % 200~700 ISO 527等 23℃ B
曲げ弾性率 GPa 0.05~1.6 ISO 178等 23℃ B
アイゾット衝撃強さ・ノッチ付き kJ/m² 破壊せず~100超 ISO 180等 数値化できないグレードあり C
ガラス転移温度・軟質相 -70~-20 DSC/DMA 組成依存 C
融点 150~225 DSC 硬質セグメント依存 B
荷重たわみ温度・0.45 MPa 45~130 ISO 75 硬度・結晶性依存 C
荷重たわみ温度・1.80 MPa データなし 軟質材では一般化困難 0
連続使用温度 80~140 用途・寿命基準 荷重及び雰囲気依存 C
低温使用限界 -60~-30 用途目安 衝撃・屈曲条件依存 C
熱伝導率 W/(m・K) 0.18~0.25 代表値 23℃ C
線膨張係数・流動方向 10⁻⁵/K 8~20 代表値 非強化、温度域依存 C
体積抵抗率 Ω・cm 1012~1016 IEC 60093等 乾燥状態 C
絶縁破壊強さ kV/mm 15~30 IEC 60243等 厚さ依存 C
比誘電率・1 MHz 無次元 3.0~5.0 IEC 60250等 乾燥状態 C
誘電正接・1 MHz 無次元 0.01~0.05 IEC 60250等 乾燥状態 C
UL 94燃焼性 等級 HB~V-0 UL 94 グレード及び厚さ依存 A
限界酸素指数・LOI % 20~28 ISO 4589等 難燃剤依存 C
強化・改質グレードの代表的傾向
グレード 強化材含有率 密度 g/cm³ 引張強さ MPa 曲げ弾性率 GPa HDT 0.45 MPa ℃ 主な注意点
標準・非強化 0% 1.10~1.30 15~55 0.05~1.6 45~130 硬度差が大きい。
GF強化 10~40質量% 1.25~1.55 50~130 2~10 100~200 異方性、繊維浮き、柔軟性低下。
CF強化 グレード依存 1.20~1.45 一般化困難 4~15程度 一般化困難 導電性、価格、相手材摩耗。
摺動改質 添加剤依存 1.10~1.40 標準より低下する場合 グレード依存 グレード依存 添加剤移行、接着性、溶出。
比較用評価スコア
評価項目 スコア 評価理由
引張強度 3 硬度により中程度から高い。
剛性 2 エラストマーとしては高いが、硬質エンプラより低い。
衝撃強度 5 低温を含め高い靭性を示すグレードが多い。
耐熱性 4 TPEの中では高い。
低温特性 4 軟質セグメント設計により良好である。
耐薬品性 3 油には良好だが、熱水、アルカリ及び一部溶剤に弱い。
耐候性 3 安定化グレードで改善可能である。
耐加水分解性 2 標準材は高温高湿に注意が必要である。
寸法安定性 3 PAより吸湿影響が小さいが、熱収縮とクリープを考慮する。
摺動性 3 改質グレードで改善できる。
電気絶縁性 4 乾燥状態では良好である。
難燃性 2 標準材は可燃性であり、難燃グレードが必要である。
成形加工性 4 多様な溶融成形に対応する。
接着性 2 表面処理又は専用接着剤が必要な場合が多い。
リサイクル性 4 熱可塑性で再溶融可能だが、熱履歴と加水分解を管理する。
価格優位性 2 汎用TPEより高価格となる場合が多い。

耐薬品性

評価は非強化標準グレードの一般傾向であり、濃度、温度、接触時間及び応力の有無により変化する。特に高温水、蒸気、強酸、強アルカリ及び応力下では実部品試験が必要である。

分類 薬品名 濃度 温度 時間 応力 評価 主な劣化形態 備考
純水 100% 23℃ 長期浸漬 吸水、わずかな寸法変化 概ね使用可能。
温水 100% 60~90℃ 長期 加水分解、強度低下 耐加水分解グレードを検討する。
水蒸気 飽和蒸気 100℃以上 繰返し × 急速な加水分解 蒸気滅菌には原則注意。
無機酸 塩酸 10% 23℃ 168 h 長期で加水分解の可能性 濃度と温度を確認する。
無機酸 硫酸 10% 23℃ 168 h 加水分解、変色 高濃度・高温は不適。
有機酸 酢酸 10% 23℃ 168 h 膨潤又は加水分解 濃度上昇で悪化する。
強アルカリ NaOH 10% 23℃ 168 h × エステル加水分解 低濃度短時間でも確認が必要。
弱アルカリ 炭酸Na水溶液 5% 23℃ 168 h 表面劣化、加水分解 温度上昇で悪化する。
低級アルコール エタノール 100% 23℃ 168 h 軽度膨潤の場合 応力下を確認する。
低級アルコール IPA 100% 23℃ 168 h 軽度膨潤の場合 長期接触を確認する。
多価アルコール エチレングリコール 50%水溶液 90℃ 1000 h 加水分解、膨潤 自動車冷却液は添加剤込みで試験する。
高級アルコール グリセリン 100% 23℃ 168 h 吸収又は膨潤は小さい傾向 高温では確認する。
グリコールエーテル MMB 100% 23℃ 168 h 膨潤、軟化 SP値が近くなり得る。
ケトン アセトン 100% 23℃ 24~168 h 膨潤、軟化 グレード差が大きい。
エステル 酢酸エチル 100% 23℃ 24~168 h 膨潤、軟化 応力割れを確認する。
芳香族炭化水素 トルエン 100% 23℃ 168 h 膨潤、物性低下 長期又は高温は不適となる場合。
脂肪族炭化水素 n-ヘキサン 100% 23℃ 168 h 影響が小さい傾向 添加剤抽出を確認する。
ハロゲン化炭化水素 ジクロロメタン 100% 23℃ 短時間 × 著しい膨潤又は溶解 不適。
燃料 ガソリン 市販燃料 23℃ 1000 h 膨潤、添加剤抽出 アルコール混合率を確認する。
潤滑油 鉱物油 100% 100℃ 1000 h 熱老化、膨潤 油種、添加剤及び温度を確認する。
ブレーキ液 グリコール系 100% 100℃ 1000 h 膨潤、加水分解 専用グレードと実液試験が必要。
塩水 NaCl 3.5% 23℃ 1000 h 吸水 温度上昇で加水分解に注意。
次亜塩素酸塩 NaOCl 200~1000 ppm 23℃ 反復 酸化、加水分解、変色 pH及び有効塩素濃度を管理する。
過酸化物 H2O2 3% 23℃ 24~168 h 酸化、変色 高濃度・高温は不適。
食品油 植物油 100% 23~80℃ 長期 膨潤は小さい傾向 食品接触適合を別途確認する。
洗浄剤 界面活性剤水溶液 1~3% 40~80℃ 反復 ESC、加水分解 実洗浄液と応力下で試験する。
SP値(溶解度パラメータ)

TPCは共重合組成が一定でないため、単一のSP値で表すことは難しい。代表的な見掛けのSP値はおおむね19~23 MPa1/2程度が目安である。硬質セグメント、軟質セグメント及び結晶化度により変化する。

SP値差は膨潤傾向の一次スクリーニングには有用であるが、結晶性、拡散速度、加水分解、酸化、応力割れ及び添加剤抽出を表さない。

溶解性の目安
SP値差 Δδ 溶解・膨潤の目安 判定
0~2 膨潤・軟化しやすい ×
2~5 条件により膨潤する
5~8 短時間接触では比較的安定
8以上 溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤 SP値 MPa1/2 TPCとの差の目安 SP値による一次評価 実用上の補足
n-ヘキサン 14.9 4~8 脂肪族炭化水素には比較的良好。
トルエン 18.2 1~5 膨潤に注意。
酢酸エチル 18.6 0~4 軟化及び応力割れに注意。
アセトン 20.0 0~3 × グレードにより膨潤が大きい。
ジクロロメタン 20.2 0~3 × 著しい膨潤又は溶解の可能性。
IPA 23.5 0.5~4.5 実際には短時間接触で良好な場合もある。
エタノール 26.0 3~7 温度及び応力で評価が変わる。
47.9 25以上 SP値上は良好でも高温では加水分解する。

製法

代表的には、芳香族ジカルボン酸又はそのジメチルエステル、短鎖ジオール及び長鎖ジオールをエステル化又はエステル交換し、続いて減圧下で溶融重縮合する。組成と反応条件によりブロック長、結晶性、分子量及び末端基濃度を制御する。

熱可塑性コポリエステルの代表的製造工程

工程 主な内容 管理ポイント
原料調製 テレフタル酸又はDMT、1,4-ブタンジオール、PTMG等を配合する。 水分、純度、官能基当量及び触媒濃度を管理する。
エステル化・交換 水又はメタノールを除去しながらオリゴマー化する。 副生物除去、反応温度及び過剰ジオール量を管理する。
溶融重縮合 高温・減圧下で分子量を上げる。 真空度、滞留時間、熱劣化及び末端基濃度を管理する。
ペレット化 ストランド又は水中カットでペレット化する。 冷却、切断、乾燥及び異物管理を行う。
コンパウンド 安定剤、難燃剤、GF、摺動剤、着色剤等を配合する。 分散、熱履歴、繊維長、揮発分及び法規制を管理する。
品質管理 粘度、融点、硬度、含水率、機械特性を検査する。 ロット間ばらつきと用途別規格を管理する。

詳細な利用用途

用途分野 適性 代表用途 採用理由 主な注意点
自動車 CVJブーツ、ラックブーツ、エアダクト、ホース、クリップ 耐屈曲疲労、耐油、低温柔軟性 熱水、冷却液、燃料、長期疲労を確認する。
電気・電子 ケーブル被覆、コネクタ、グロメット 柔軟性、電気絶縁性、耐摩耗性 難燃、CTI、湿熱及びアウトガスを確認する。
機械部品 ギア、ローラー、ベルト、カップリング 反発弾性、消音、耐油、耐疲労 発熱、クリープ、相手材摩耗を確認する。
医療 チューブ、カテーテル部材、柔軟部品 柔軟性、押出性、耐屈曲性 ISO 10993、USP、滅菌及び溶出をグレードごとに確認する。
食品機械 搬送ベルト、ホース、柔軟カバー 耐油、耐摩耗、成形性 食品接触証明、熱水及びアルカリ洗浄を確認する。
建築・設備 シール、ガスケット、ホース 耐候グレード、柔軟性 紫外線、湿熱、圧縮永久ひずみを確認する。
ギア 低騒音ギア、弾性歯車 消音、耐衝撃 設計トルク、歯面温度及び摩耗を確認する。
軸受・ブッシュ 軽荷重摺動部品 摺動改質が可能 PV条件、相手材、潤滑及び摩耗粉を確認する。
チューブ・ホース 空圧、油圧、医療、工業チューブ 押出性、耐屈曲、耐油 薬液透過、加水分解、継手保持を確認する。
フィルム 透湿膜、ラミネート、保護膜 柔軟性、耐屈曲 透過性、ブロッキング、接着を確認する。
透明カバー・レンズ × 一般に光学透明性が不足 光学グレード以外は不適。
エンジンルーム ブーツ、ダクト、クリップ 耐熱、耐油 熱酸化、冷却液及び高温水を確認する。
燃料系 チューブ、シール補助部品 燃料耐性が比較的良い アルコール混合燃料、透過及び膨潤を確認する。
半導体・真空 柔軟治具、保護部品 柔軟性、耐摩耗 アウトガス、清浄度及び粒子を確認する。
塗料・コーティング 粉体、ホットメルト、改質材の一部 熱可塑性及び接着改質 溶剤溶解性及び塗膜耐久性を確認する。

寸法精度・設計特性

設計項目 一般傾向 設計上の注意
成形収縮 硬度及び結晶化度により比較的大きい。 流動方向・直角方向、肉厚及び金型温度を揃えて試作する。
異方性 非強化材は中程度、繊維強化材は大きい。 ゲート位置と繊維配向を考慮する。
クリープ 硬質エンプラより大きい。 長期荷重では温度別クリープ曲線を使用し、安全率を設定する。
ウェルド強度 外観及び疲労強度が低下する場合がある。 ウェルド位置を高応力部から外す。
ノッチ感受性 靭性は高いが、疲労及び薬品下では影響を受ける。 角Rを確保し、鋭い切欠きを避ける。
インサート・ねじ 柔軟性により緩みや応力集中が生じる。 圧入量、締付トルク及びボス肉厚を実測で決める。
設計許容応力 短時間引張強さより大幅に低く設定する。 温度、時間、繰返し、薬品及び湿度を含めて評価する。

品質・成形不良

不良 材料側の要因 成形条件側の要因 主な対策
シルバーストリーク 吸湿、揮発分 乾燥不足、過熱 除湿乾燥、含水率測定、温度低減。
加水分解・強度低下 高い末端基、水分 高温、長時間滞留 乾燥、滞留短縮、パージ。
ガス焼け・変色 熱安定性不足 高速射出、局所過熱、ベント不足 温度・速度低減、ベント改善。
黒点 劣化樹脂、異物 デッドスポット、長時間停止 清掃、パージ、停止時排出。
ウェルドライン 低い融着性 低樹脂温度、低金型温度 温度・速度・ゲート位置を最適化。
ヒケ・ボイド 高収縮、厚肉 保圧不足、冷却不足 均一肉厚、保圧・冷却最適化。
反り 結晶化差、繊維配向 金型温度差、ゲート偏り 冷却均一化、ゲート・肉厚修正。
離型不良 柔軟性、粘着 抜き勾配不足、冷却不足 抜き勾配、表面仕上げ、冷却調整。
バリ 低粘度、柔軟性 高圧、型締不足 圧力低減、金型精度及び型締確認。
繊維浮き GF配合 高せん断、低金型温度 温度・速度・ゲートを調整。
ダイスウェル 弾性回復 高せん断、ダイ設計不適 せん断低減、ランド長及び引取比調整。

注意点・劣化及び故障モード

劣化現象 主な原因 発生しやすい条件 影響 予防策 推奨確認試験
加水分解 エステル結合の切断 高温高湿、熱水、蒸気、酸・アルカリ 分子量、強度、伸び低下 低含水成形、耐加水分解グレード、温度低減 85℃/85%RH、熱水浸漬、粘度及び引張保持率
熱酸化劣化 酸素と熱 高温長期、銅等の触媒金属 硬化、脆化、変色 熱安定剤、遮熱、温度低減 熱老化後の伸び及び屈曲疲労
紫外線劣化 UVによる鎖切断 屋外、薄肉、無着色 退色、亀裂、強度低下 耐候グレード、黒色化、UV安定剤 キセノンアーク、色差、強度保持率
膨潤・溶解 溶剤吸収 芳香族、ケトン、エステル、塩素系溶剤 寸法増加、軟化、割れ 薬品選定、バリア、応力低減 実薬品浸漬、質量・体積変化
環境応力割れ 薬品と残留応力 溶剤、界面活性剤、締結部 クラック、破断 アニール、R付与、応力低減 定ひずみESC試験
クリープ破壊 長期荷重 高温、締結、薄肉 永久変形、漏れ 応力低減、硬質化、金属補強 温度別クリープ試験
疲労破壊 繰返し変形 ブーツ、ヒンジ、ベルト 亀裂、破断 形状最適化、適正硬度、ノッチ除去 実変位・温度での屈曲疲労
添加剤移行・抽出 低分子添加剤 油、洗剤、高温 表面変化、接着不良、溶出 低移行グレード、抽出管理 溶出、GC-MS、表面分析
アウトガス 残留モノマー、添加剤、分解物 真空、高温、電子用途 汚染、曇り、接点不良 低アウトガスグレード、乾燥、後処理 TML/CVCM又は用途別アウトガス試験
滅菌劣化 蒸気、放射線、薬剤 オートクレーブ、γ線、EtO 脆化、変色、加水分解 適合グレード、滅菌法選定 滅菌サイクル後の物性・溶出試験

法規制・認証

項目 一般的な位置付け 確認事項
RoHS・REACH・SVHC 対応可能なグレードが一般に存在する。 メーカー、グレード、色、添加剤及び製造拠点ごとの証明書を確認する。
PFAS関連規制 TPC主鎖自体は通常フッ素系ではないが、加工助剤等は個別確認が必要である。 摺動剤、難燃助剤及び意図せぬ含有を確認する。
FDA・EU食品接触 食品接触適合グレードが存在する。 接触食品、温度、時間及び使用条件を含む適合宣言を確認する。
日本の食品衛生法 ポジティブリスト対応グレードを選定する。 基ポリマー、添加剤、用途区分及び溶出条件を確認する。
医療・USP Class VI・ISO 10993 特定医療グレードで対応例がある。 材料名だけで適合とせず、最終製品、滅菌及び生体接触条件で評価する。
UL認証 難燃、RTI、電気特性の認証グレードが存在する。 UL Yellow Card、厚さ、色及び製造拠点を確認する。
自動車規格 OEM又は部品規格に適合するグレードがある。 熱老化、燃料、冷却液、VOC、臭気及び耐候要求を確認する。
ハロゲンフリー ハロゲンフリー難燃グレードが存在する場合がある。 判定基準及び分析証明を確認する。

環境・リサイクル性

項目 評価・説明
熱可塑性/熱硬化性 熱可塑性であり、再溶融加工が可能である。
マテリアルリサイクル 清浄な単一材端材は再利用を検討できるが、熱履歴、吸湿及び分子量低下を管理する。
ケミカルリサイクル 加水分解又は解重合の研究・技術はあるが、一般的な回収インフラは限定的である。
再生材使用 再生材又はマスバランス原料を用いた製品が存在する場合がある。
バイオベース バイオ由来ジオール等を用いたグレードが存在し得るが、バイオベースと生分解性は別概念である。
生分解性 一般的な工業用TPCは生分解性材料として扱わない。
焼却 一般にポリエステル系であり、適切な設備で処理する。添加剤由来ガスは個別確認する。
価格・供給性 比較的高価格。世界的な主要メーカーからペレット、チューブ、フィルム等が供給されるが、特殊グレードは最小購入量に注意する。

関連材料との比較

比較材料 特徴 TPCとの違い
熱可塑性ポリウレタン 耐摩耗性、弾性及び接着性に優れる。 TPCは一般に耐熱性、反発弾性及び耐油性で有利な場合がある。TPUは耐摩耗性と接着性で有利な場合が多い。
熱可塑性加硫ゴム EPDM系ゴム相を動的架橋したTPEである。 TPVは耐候性、シール性及び低硬度で有利、TPCは耐油性、剛性及び屈曲疲労で有利な場合がある。
水添スチレン系熱可塑性エラストマー 低比重、低硬度及び触感に優れる。 SEBSは低温柔軟性と価格で有利、TPCは耐熱性、耐油性及び機械強度で有利である。
熱可塑性ポリアミドエラストマー 低温柔軟性、耐薬品性及び軽量性に優れる。 TPAEは低比重と低温特性、TPCは高温機械特性と吸水による寸法変化の小ささで有利な場合がある。
ポリブチレンテレフタレート 結晶性ポリエステル系エンプラである。 PBTは高剛性、TPCは軟質セグメントによる柔軟性、弾性及び耐屈曲性を持つ。
ポリエチレンテレフタレート 剛性、透明性及びバリア性に優れる。 PETは繊維、フィルム、ボトルに多く、TPCは弾性部品及び柔軟チューブに向く。
ポリアセタール 摺動性、疲労性及び寸法安定性に優れる。 POMは精密硬質部品、TPCは消音、衝撃吸収及び柔軟部品に有利である。
ポリアミド12 低吸水性、耐薬品性及びチューブ適性に優れる。 PA12は燃料バリアと耐圧性、TPCは反発弾性と屈曲疲労で有利な場合がある。

代表的なメーカー

メーカー 代表製品・ブランド 概要
Celanese Hytrel、Riteflex 自動車、工業、電気・電子用途に広く展開される代表的TPCブランドである。
東洋紡エムシー PELPRENE 耐熱性、耐屈曲疲労性及び成形用途を持つポリエステル系TPEである。
Envalior Arnitel 自動車、フィルム、電気・電子、スポーツ等に展開されるTPCブランドである。
三菱ケミカルグループ PRIMALLOY、TEFABLOC ポリエステル系熱可塑性エラストマー及び軟質TPCの製品群がある。
Kolon Plastics KOPEL 自動車及び工業用途向けのポリエステルエラストマーである。
LG Chem KEYFLEX 自動車、電気・電子及び工業部品向けのTPEE製品群である。

関連キーワード

熱可塑性コポリエステル熱可塑性ポリエステルエラストマーTPUTPVSEBSTPAEPBTPETPA12プラスチックエンジニアリング・プラスチック耐薬品性SP値射出成形押出成形加水分解環境応力割れ

推奨確認試験

  • 実薬品浸漬試験:実液、実濃度、最低・最高温度、24時間から1000時間以上で質量、寸法、硬度及び引張保持率を測定する。
  • 環境応力割れ試験:実部品又は定ひずみ試験片に使用応力を負荷し、洗浄剤、燃料、油及び溶剤への接触を再現する。
  • 高温高湿・加水分解試験:85℃・85%RH、温水又は冷却液中で、粘度、伸び及び屈曲疲労寿命を確認する。
  • 熱老化・ヒートサイクル試験:使用温度上限と低温を往復し、硬度、圧縮永久ひずみ及び亀裂を確認する。
  • 屈曲疲労・クリープ試験:実変位、周波数、荷重、温度及び繰返し回数で評価する。
  • 溶着・接着試験:初期強度だけでなく、湿熱、薬品及び熱老化後の保持率を確認する。
  • 食品・医療・電子用途では、溶出、滅菌耐久、アウトガス、イオン性不純物及び規制適合を最終部品で確認する。

本ページの評価は材料群としての一般的傾向である。最終選定では、メーカーの最新データシート及び個別証明書を確認し、実グレード、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状及び成形条件を再現した試験を行う必要がある。

タイトルとURLをコピーしました