概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | イソプレンゴム |
| 略記号 | IR |
| IUPAC | poly(2-methylbuta-1,3-diene)、主としてcis-1,4-polyisoprene |
| 英語名 | Isoprene Rubber、Synthetic Polyisoprene Rubber、Polyisoprene |
| 日本語名 | イソプレンゴム、合成ポリイソプレンゴム、合成天然ゴム |
| 分類 | ジエン系合成ゴム、非極性エラストマー、加硫ゴム原料 |
| プラスチック分類 | ゴム・エラストマー。一般的なプラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックには分類しない。 |
| 化学式又は代表構造 | (C5H8)n、-CH2-C(CH3)=CH-CH2- |
| CAS No. | 9003-31-0 |
| 構造・主成分 | イソプレンを主としてcis-1,4付加重合した高分子である。触媒、重合条件、グレードによりcis-1,4結合、trans-1,4結合、3,4結合、分子量及び分子量分布が異なる。 |
| 主な用途 | タイヤ、工業用ゴム、防振材、ロール、ベルト、履物、ゴム糸、粘着剤、医療・衛生用品、乳首、栓体、弾性膜など |
イソプレンゴムは、イソプレンを重合して得られる合成ジエンゴムであり、一般に高cis-1,4-ポリイソプレンを主体とする。分子構造が天然ゴムの主成分に近いため、良好なゴム弾性、反発弾性、破断伸び、低温柔軟性及び動的疲労特性を示しやすい。
天然ゴムと比較すると、天然由来の蛋白質、非ゴム成分及び不純物が少なく、品質の均一性、淡色性、臭気、電気特性及び医療・衛生用途での配合設計に利点がある。一方、グリーンストレングス、自己補強性、引裂強さ及び耐亀裂成長性は、天然ゴムに及ばない場合がある。
主鎖に炭素-炭素二重結合を持つため、耐オゾン性、耐候性、耐熱酸化性、耐油性及び耐炭化水素溶剤性は高くない。実使用では、ポリマーグレードだけでなく、加硫系、架橋密度、充填材、可塑剤、老化防止剤、温度、濃度、荷重、応力、湿度及び接触時間を確認する必要がある。
特徴
長所
- 高い弾性、反発性、柔軟性及び破断伸びを得やすい。
- ガラス転移温度が低く、低温で柔軟性を維持しやすい。
- 繰返し変形、屈曲疲労、防振及び衝撃吸収用途に適する。
- 天然ゴムと比較して品質、色調、純度及び臭気を管理しやすい。
- 高純度グレードでは医療・衛生用途に使用される。
短所
- オゾン、紫外線、酸素及び熱による劣化を受けやすい。
- 鉱油、燃料、脂肪族・芳香族炭化水素及び塩素系溶剤で膨潤しやすい。
- 天然ゴムよりグリーン強度、粘着性及び引裂強さが低い場合がある。
- 高温長期、屋外無保護及び燃料シール用途には適しにくい。
- 未加硫原料と加硫成形品では、物性及び耐薬品性が大きく異なる。
| 項目 | 一般的傾向 | 技術上の注意点 |
|---|---|---|
| 外観 | 淡黄色、乳白色又は半透明のベール、クラム、ラテックス | 酸化防止剤、触媒残渣、保管条件及び配合剤により色調が変化する。 |
| 耐熱性 | 一般的な有機ゴムとしては低い | 一般配合の連続使用温度は概ね60~90℃が目安であり、高温では酸化硬化しやすい。 |
| 耐薬品性 | 水、希薄酸、希薄アルカリ及び低級アルコールには比較的良好 | 油、燃料及び炭化水素系溶剤では著しく膨潤しやすい。 |
| 加工性 | 混練、押出、カレンダー、圧縮、トランスファー及びゴム射出成形に対応 | スコーチ、加硫速度、ロール巻付き、ダイスウェル及びグリーン強度を管理する。 |
| 分類上の注意 | 最終製品は一般に架橋ゴムである | 未架橋IRは高分子原料であるが、加硫後は再溶融成形できない。SIS等の熱可塑性エラストマーとは区別する。 |
構造式
イソプレンゴムは、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)を重合したポリイソプレンである。
高cis化により天然ゴムに近い低温柔軟性、反発弾性 及び伸長結晶化性を得やすい。
天然ゴム(NR)はシス-1,4-ポリイソプレンで構成されている。
イソプレンゴムは、主構造はシス-1,4-ポリイソプレンであるが、トランス-1,4-ポリイソプレン、3,4-ポリイソプレンなどの異性体が混合された状態である。

基本特性は天然ゴムと同等となり、タイヤや各種ゴム製品の主原料として利用されている。
| 構造単位 | 構造又は構成 | 材料特性への影響 |
|---|---|---|
| cis-1,4単位 | -CH2-C(CH3)=CH-CH2- | 低いTg、高弾性、反発性及び伸長結晶化に寄与する。 |
| trans-1,4単位 | 同一結合位置でtrans配置 | 含有率が増えると結晶性及び硬さが増加する場合がある。 |
| 3,4単位 | 側鎖にビニル基を持つ構造 | Tg、架橋反応性及び粘弾性に影響する。 |
種類
| 種類 | 主成分又は特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 高cis標準IR | cis-1,4含有率が高い汎用IR | 高弾性、低温柔軟性、反発性 | 耐油・耐候・耐オゾン性が低い | タイヤ、防振材、履物、工業用ゴム |
| 低ムーニーIR | 加工粘度を低く調整 | 混練、押出、成形流動性が良い | グリーン強度が低下する場合がある | 押出品、複雑形状、淡色成形品 |
| 高純度・淡色IR | 灰分、ゲル、色、臭気等を管理 | 淡色性、低不純物、衛生用途への適性 | 価格が高く、配合管理が厳しい | 医療、衛生、食品接触、透明・淡色用品 |
| ポリイソプレンラテックス | 水分散型の合成ポリイソプレン | 薄膜成形、浸漬成形に適する | 凝集、安定性、乾燥及び残留物管理が必要 | 医療手袋、コンドーム、バルーン、弾性膜 |
| 液状ポリイソプレン | 低分子量又は反応性末端を持つ | 粘着、可塑化、反応性改質に利用できる | 単独強度が低く、移行・ブリードに注意 | 接着剤、シーラント、ゴム改質 |
| 補強加硫IR | カーボンブラック又はシリカを配合し架橋 | 引張、耐摩耗、疲労及び耐裂性を改善 | 密度増加、発熱、色及び電気特性が変化 | タイヤ、ロール、防振、ベルト |
代表グレード区分
| グレード区分 | 主な改質方法 | 物性への影響 | 主用途・注意点 |
|---|---|---|---|
| 非強化・標準グレード | 高cis IR原料 | 配合自由度が高いが、未加硫状態では最終強度を示さない | ゴムコンパウンド原料。最終物性は加硫配合物で評価する。 |
| 押出成形グレード | ムーニー粘度及び分子量分布を調整 | 押出肌及び流動性を改善 | ホース、チューブ、ゴム糸、プロファイル |
| 耐熱グレード | 耐熱老化防止剤、過酸化物架橋等 | 熱老化及び圧縮永久ひずみを改善 | IR骨格自体の耐熱限界があるため高温長期は他材と比較する。 |
| 難燃グレード | 無機難燃剤、リン系等 | 難燃性向上と引換えに伸び、反発及び強度が低下しやすい | UL 94は厚さ、色及び配合ごとに確認する。 |
| 無機フィラー充填 | シリカ、炭酸カルシウム、クレー等 | 硬さ、寸法安定性及びコストを調整 | 分散、吸湿、発熱及び加硫阻害に注意する。 |
| 導電・帯電防止 | 導電性カーボン、導電フィラー | 体積抵抗率を低下させる | 柔軟導電部品、除電用途。絶縁用途と混同しない。 |
| 食品接触用途向け | 適合添加剤、低抽出配合 | 溶出及び臭気を抑制 | 個別グレードの適合証明書を確認する。 |
| 医療用途向け | 高純度、低抽出、管理された架橋系 | 生物学的安全性及び抽出物管理に対応可能 | USP Class VI、ISO 10993及び滅菌適合は個別確認する。 |
成形加工
IRは一般的な熱可塑性樹脂のように溶融成形する材料ではなく、未加硫コンパウンドを賦形した後、硫黄、過酸化物等で架橋する。成形適性はポリマー粘度、配合、スコーチ安全性、加硫速度及び製品形状により変化する。
| 加工方法 | 適性 | 評価理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ゴム射出成形 | ○ | ゴム射出成形機を用いた加硫成形に対応する。 | スコーチ、滞留、金型温度、加硫時間、ガス抜きを管理する。 |
| 押出成形 | ◎ | ホース、チューブ、プロファイル及びゴム糸に適する。 | ダイスウェル、押出肌、寸法及び連続加硫条件を確認する。 |
| インフレーション成形 | × | 一般的な熱可塑性フィルム成形には適さない。 | 薄膜はラテックス浸漬又はカレンダー法を検討する。 |
| Tダイフィルム成形 | △ | 未架橋シートの連続賦形は可能であるが、通常の熱可塑性フィルムとは異なる。 | 粘着、支持フィルム、加硫及び巻取りを管理する。 |
| ブロー成形 | × | 一般的なブロー成形には不適である。 | 中空ゴム製品は別工程を用いる。 |
| 圧縮成形 | ◎ | 厚物、パッキン、防振材及び一般成形品に適する。 | 仕込み量、流動、バリ、加硫均一性及び離型を管理する。 |
| トランスファー成形 | ○ | インサート及び複雑形状に対応しやすい。 | ランナー内スコーチ及び圧力損失に注意する。 |
| 真空成形・圧空成形 | × | 一般的な熱可塑性シート成形には不適である。 | 未加硫シートの予備賦形は条件により可能である。 |
| 回転成形 | × | 粉末熱可塑性樹脂の回転成形には適さない。 | ラテックス回転塗布等は特殊工程である。 |
| 発泡成形 | ○ | 発泡剤と加硫系を組み合わせてスポンジ化できる。 | 発泡と加硫の同期、セル構造及び収縮を管理する。 |
| 3Dプリント | △ | 一般フィラメント方式には不適であるが、ペースト又は液状系で特殊対応可能である。 | 架橋、寸法精度及び装置適合を確認する。 |
| 切削加工 | △ | 加硫後は柔軟で変形しやすい。 | 冷却、治具、研削、打抜き又はウォータージェットを検討する。 |
| 接着 | ○ | 表面処理及びゴム用接着剤により接着可能である。 | 離型剤、ブルーム、酸化膜及び加硫状態を管理する。 |
| 塗装・印刷 | △ | 表面処理及び柔軟塗膜により対応可能である。 | 伸長追従性、可塑剤移行及び密着耐久性を確認する。 |
| めっき・蒸着 | △ | 特殊表面処理及び中間層により可能な場合がある。 | 柔軟変形による割れ及び剥離に注意する。 |
| レーザーマーキング | △ | 配合顔料及びレーザー波長により対応可能である。 | 発煙、表面損傷及びコントラストを確認する。 |
| インサート成形 | ○ | 金属又は樹脂インサートとの加硫接着が可能である。 | プライマー、熱膨張差、応力集中及び接着耐久性を管理する。 |
一般的な加硫成形条件
| 項目 | 単位 | 一般的目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 予備乾燥 | - | 通常不要 | IR自体は低吸水であるが、シリカ、吸湿性薬品及び保管結露を管理する。 |
| 推奨乾燥温度 | ℃ | 該当なし | 熱可塑性樹脂用ペレット乾燥条件は通常適用しない。 |
| 許容含水率 | % | グレード依存 | ラテックスと固形ゴムでは管理方法が異なる。 |
| シリンダー温度・供給部 | ℃ | 40~60 | ゴム射出・押出の一般的目安。 |
| シリンダー温度・計量部 | ℃ | 60~90 | スコーチ安全性を優先する。 |
| ノズル又はヘッド温度 | ℃ | 60~90 | 配合粘度及び成形速度で調整する。 |
| 金型温度 | ℃ | 140~180 | 硫黄加硫、過酸化物加硫及び製品厚みで異なる。 |
| 加硫時間 | min | 2~30 | レオメータt90と実製品中心温度を基準に決定する。 |
| 成形収縮率 | % | 1.0~3.0 | 架橋密度、充填材、金型温度及び離型後収縮で変化する。 |
| アニール | - | 通常不要 | 過酸化物架橋又は低揮発用途ではポストキュアを行う場合がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表は高cis IRを主ポリマーとする一般的な加硫配合物又は未加硫ポリマーの代表値である。未加硫原料、未補強加硫物、補強加硫物、ラテックス製品及び特定メーカーグレードを混同しないことが重要である。
物理的・機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 材料状態・条件 | 試験規格 | 出典区分 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 0.92 | 0.91 | 0.93 | 未加硫高cis IR、23℃ | 代表値、規格不明 | 公開技術資料 | B |
| 比重 | 無次元 | 0.92 | 0.91 | 0.93 | 未加硫高cis IR、23℃ | 代表値、規格不明 | 公開技術資料 | B |
| 硬度 | Shore A | 55 | 30 | 80 | 補強加硫配合、23℃ | ISO 48-4又はASTM D2240相当 | 配合物代表範囲 | B |
| 引張強さ・破断 | MPa | 20 | 10 | 30 | 補強加硫配合、23℃ | ISO 37又はASTM D412相当 | 配合物代表範囲 | B |
| 引張破断伸び | % | 600 | 300 | 900 | 補強加硫配合、23℃ | ISO 37又はASTM D412相当 | 配合物代表範囲 | B |
| 100%引張応力 | MPa | 1.5 | 0.8 | 3.0 | 加硫配合、23℃ | ISO 37又はASTM D412相当 | 配合物代表範囲 | C |
| 300%引張応力 | MPa | 6 | 3 | 12 | 加硫配合、23℃ | ISO 37又はASTM D412相当 | 配合物代表範囲 | C |
| 引裂強さ | kN/m | 35 | 20 | 60 | 補強加硫配合、23℃ | ISO 34-1又はASTM D624相当 | 配合物代表範囲 | C |
| 反発弾性 | % | 65 | 50 | 80 | 加硫配合、23℃ | ISO 4662相当 | 配合物代表範囲 | C |
| 圧縮永久ひずみ | % | 25 | 10 | 50 | 70℃、22~24 h、加硫配合 | ISO 815-1又はASTM D395相当 | 配合物代表範囲 | C |
| 吸水率・24時間 | % | 0.2 | 0.1 | 0.5 | 23℃水、加硫配合 | 代表値、規格不明 | 二次資料 | C |
| 成形収縮率 | % | 2.0 | 1.0 | 3.0 | 加硫成形品 | グレード依存 | 加工目安 | C |
| 曲げ弾性率 | GPa | 一般化困難 | データなし | データなし | 軟質加硫ゴム | 該当なし | - | 0 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m² | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 軟質加硫ゴム | 該当なし | - | 0 |
熱的・電気的・燃焼特性
| 項目 | 単位 | 代表値 | 下限値 | 上限値 | 条件 | 備考 | 信頼度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | ℃ | -70 | -75 | -60 | 高cis IR、DSC又はDMA | cis含有率、3,4結合及び可塑剤で変化する。 | B |
| 融点 | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 高cis IR | 明確な実用融点を持たない。伸長結晶化及び低温結晶化は別途起こり得る。 | B |
| 荷重たわみ温度・0.45 MPa | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 軟質加硫ゴム | 硬質プラスチック用HDTは通常適用しない。 | 0 |
| 荷重たわみ温度・1.80 MPa | ℃ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 軟質加硫ゴム | 硬質プラスチック用HDTは通常適用しない。 | 0 |
| 連続使用温度 | ℃ | 80 | 60 | 90 | 空気中、一般配合 | 寿命、応力、酸素及び配合により変化する目安である。 | C |
| 短時間耐熱温度 | ℃ | 110 | 100 | 120 | 短時間、低負荷 | 高温では酸化硬化が進むため時間を必ず規定する。 | C |
| 低温使用限界 | ℃ | -50 | -60 | -40 | 一般配合 | Tg、結晶化、圧縮条件及び可塑剤に依存する。 | C |
| 熱伝導率 | W/(m・K) | 0.14 | 0.12 | 0.20 | 未充填~一般配合、23℃ | 充填材で増加する。 | C |
| 比熱 | J/(g・K) | 1.6 | 1.4 | 1.8 | 23℃付近 | 温度及び配合に依存する。 | C |
| 線膨張係数 | 10⁻⁵/K | 20 | 15 | 30 | 未充填~低充填加硫物 | フィラー及び拘束条件で変化する。 | C |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1×1014 | 1×1012 | 1×1016 | 非導電配合、23℃、乾燥 | 導電性カーボン配合では大幅に低下する。 | C |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 20 | 15 | 30 | 非導電配合 | 厚さ、電極及び気泡に依存する。 | C |
| 比誘電率・1 kHz | 無次元 | 2.4 | 2.2 | 2.8 | 非導電配合、23℃ | 配合及び周波数依存。 | C |
| 比誘電率・1 MHz | 無次元 | 2.3 | 2.1 | 2.7 | 非導電配合、23℃ | 代表範囲であり、個別配合で確認する。 | D |
| 限界酸素指数・LOI | % | 18 | 17 | 20 | 一般配合 | 可燃性であり、難燃配合を除き自己消火性は期待しにくい。 | C |
| UL 94 | 等級 | グレード依存 | データなし | データなし | 厚さ、色及び配合ごと | 材料群全体の等級として断定しない。 | 0 |
比較用評価スコア
| 評価項目 | スコア | 評価理由 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 4 | 補強加硫により高強度を得られるが、天然ゴムの最高性能には及ばない場合がある。 |
| 剛性 | 1 | 軟質エラストマーであり、構造剛性用途には適さない。 |
| 衝撃強度 | 5 | 高伸び及び高弾性により衝撃吸収性に優れる。 |
| 耐熱性 | 2 | 主鎖二重結合により熱酸化劣化しやすい。 |
| 低温特性 | 5 | Tgが低く、低温柔軟性に優れる。 |
| 耐薬品性 | 2 | 水系には比較的良好であるが、油、燃料及び炭化水素溶剤に弱い。 |
| 耐候性 | 1 | オゾン、紫外線及び酸素に弱い。 |
| 耐加水分解性 | 5 | 加水分解性結合を主鎖に持たない。 |
| 寸法安定性 | 2 | 弾性変形、クリープ、熱膨張及び永久ひずみの影響が大きい。 |
| 低吸水性 | 5 | 非極性骨格で吸水しにくい。 |
| 摺動性 | 2 | ゴム摩擦が大きく、相手材及び潤滑条件への依存性が高い。 |
| 耐摩耗性 | 4 | 補強配合で良好な耐摩耗性を得られる。 |
| 電気絶縁性 | 4 | 非極性で絶縁性が良い。 |
| 難燃性 | 1 | 一般配合は可燃性である。 |
| 透明性 | 3 | 高純度・未充填配合では半透明又は透明性を得られるが、一般補強配合では不透明である。 |
| 成形加工性 | 4 | ゴム加工法に広く対応するが、加硫工程が必要である。 |
| 切削加工性 | 2 | 柔軟変形により精密切削が難しい。 |
| 接着性 | 3 | 表面処理及び専用接着剤により接合可能である。 |
| リサイクル性 | 2 | 架橋後は再溶融できない。 |
| 価格優位性 | 3 | 中価格帯であるが、天然ゴム、SBR及びBRとの市況比較が必要である。 |
耐薬品性
以下は一般的な加硫IR配合物の代表評価である。濃度、温度、接触時間、応力、液更新、架橋密度、充填材及び可塑剤により結果が変化する。
| 薬品・分類 | 濃度 | 温度 | 接触条件 | 評価 | 主な劣化形態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水 | - | 23℃ | 長期浸漬、無応力 | ◎ | 僅かな吸水、配合剤抽出 | 一般に良好である。 |
| 温水 | - | 60~80℃ | 長期浸漬 | ○ | 熱老化、抽出、永久ひずみ | 高温長期では配合確認が必要である。 |
| 熱水・水蒸気 | - | 100℃以上 | 連続 | △ | 熱酸化、硬化、圧縮永久ひずみ | 蒸気用途ではEPDM等を優先検討する。 |
| 塩酸 | 10% | 23℃ | 168 h浸漬、無応力 | ○ | 表面変化、添加剤抽出 | 濃酸又は高温では再評価する。 |
| 硫酸 | 10% | 23℃ | 168 h浸漬、無応力 | ○ | 表面劣化 | 濃硫酸及び高温条件には不適となりやすい。 |
| 硝酸 | 10% | 23℃ | 168 h浸漬、無応力 | △ | 酸化、硬化、亀裂 | 酸化性酸であり濃度上昇により悪化する。 |
| 酢酸 | 10% | 23℃ | 168 h浸漬 | ○ | 僅かな膨潤、抽出 | 高濃度及び高温で確認する。 |
| 水酸化ナトリウム | 10% | 23℃ | 168 h浸漬 | ◎ | 配合剤抽出 | IR骨格は加水分解しにくい。 |
| 水酸化カリウム | 10% | 23℃ | 168 h浸漬 | ◎ | 配合剤抽出 | 高温高濃度では実試験する。 |
| アンモニア水 | 10% | 23℃ | 168 h浸漬 | ○ | 配合剤抽出、臭気 | 高濃度及び高温では確認する。 |
| エタノール | 99% | 23℃ | 168 h浸漬 | ○ | 僅かな膨潤、抽出 | 一般に比較的良好である。 |
| IPA | 99% | 23℃ | 168 h浸漬 | ○ | 僅かな膨潤、抽出 | 長期及び高温で確認する。 |
| グリセリン | 100% | 23℃ | 168 h浸漬 | ◎ | 影響小 | 多価アルコールには一般に良好である。 |
| MMB | 100% | 23℃ | 168 h浸漬 | △ | 膨潤、軟化、抽出 | 実配合試験が必要である。 |
| アセトン | 100% | 23℃ | 168 h浸漬 | △ | 膨潤、抽出 | 配合剤及び架橋密度により評価差が生じる。 |
| MEK | 100% | 23℃ | 168 h浸漬 | △ | 膨潤、軟化、抽出 | 長期浸漬は推奨しにくい。 |
| 酢酸エチル | 100% | 23℃ | 168 h浸漬 | × | 膨潤、軟化 | IRと親和性が比較的高い。 |
| ジエチルエーテル | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 非極性溶剤として不適である。 |
| n-ヘキサン | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤、強度低下 | IRとの親和性が高い。 |
| ヘプタン | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 燃料及び油用途には不適である。 |
| トルエン | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤、軟化 | IRの代表的良溶媒である。 |
| キシレン | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤 | 芳香族炭化水素には不適である。 |
| ジクロロメタン | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤、抽出 | 塩素系溶剤には原則不適である。 |
| トリクロロエチレン | 100% | 23℃ | 浸漬 | × | 膨潤、強度低下 | 脱脂洗浄用途では接触を避ける。 |
| 鉱物油 | - | 23~100℃ | 長期浸漬 | × | 膨潤、軟化、物性低下 | NBR、HNBR又はFKM等を比較する。 |
| ガソリン | - | 23℃ | 浸漬 | × | 著しい膨潤、抽出 | 燃料系シールには不適である。 |
| ブレーキ液・グリコール系 | - | 23~100℃ | 浸漬 | △ | 抽出、膨潤、熱老化 | 液種及び添加剤により差が大きい。 |
| エンジン冷却液 | 50%グリコール水 | 80~120℃ | 循環 | △ | 熱老化、抽出、永久ひずみ | 高温長期ではEPDMと比較する。 |
| 界面活性剤水溶液 | 1~5% | 23~60℃ | 浸漬 | ○ | 添加剤抽出、表面変化 | 界面活性剤種及び高温で確認する。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 200~1000 ppm | 23℃ | 短時間 | △ | 酸化、表面亀裂、変色 | 濃度、pH、温度及び液更新で劣化が進む。 |
| 過酸化水素 | 3% | 23℃ | 短時間 | △ | 酸化、硬化 | 高濃度又は高温では不適となりやすい。 |
| 塩水・海水 | 3.5% NaCl相当 | 23℃ | 長期浸漬 | ◎ | 配合剤抽出、金属部腐食 | ゴム自体は比較的安定である。 |
| 植物油・食品油 | - | 23~80℃ | 浸漬 | × | 膨潤、軟化、酸化 | 油種、温度及び酸化状態で変化する。 |
| 家庭用洗浄剤 | 使用濃度 | 23~60℃ | 短時間~反復 | ○ | 抽出、変色、表面変化 | 溶剤、漂白剤、香料及び界面活性剤組成を確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 対象 | SP値 δ MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| イソプレンゴム | 16.6 | 8.13 (cal/cm³)1/2を換算した代表値である。 |
| 代表範囲 | 16.3~17.2 | 立体規則性、温度、測定法及び資料により差がある。 |
SP値が近い溶剤ほどIRへ浸透しやすく、未架橋IRでは溶解、架橋IRでは膨潤しやすい。ただし、SP値だけでは耐薬品性を判断できない。Hansen溶解度パラメータ、モル体積、架橋密度、酸化反応、配合剤抽出、温度、時間及び応力を併せて評価する必要がある。
溶解性の目安
| SP値差 |Δδ| | 溶解・膨潤の目安 | 判定 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 0~2 | 未架橋では溶解しやすく、架橋物では著しく膨潤・軟化しやすい。 | × | 長期接触を避ける。 |
| 2~5 | 条件により膨潤、軟化又は添加剤抽出が起こる。 | △ | 実試験が必要である。 |
| 5~8 | 短時間接触では比較的安定な場合がある。 | ○ | 長期及び高温では確認する。 |
| 8以上 | 物理的な溶解・膨潤は起こりにくい傾向である。 | ◎ | 酸化及び抽出は別評価する。 |
SP値から見た耐溶剤性
| 薬品・溶剤 | SP値 δ MPa1/2 | IRとの差 | 評価 | 実務上の解釈 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 31.3 | ◎ | 膨潤しにくいが、温水では熱老化及び抽出を確認する。 |
| メタノール | 29.6 | 13.0 | ◎ | ポリマー膨潤は小さい傾向である。 |
| エタノール | 26.0 | 9.4 | ◎ | 概ね良好である。 |
| IPA | 23.5 | 6.9 | ○ | 短時間では比較的良好である。 |
| アセトン | 20.0 | 3.4 | △ | 配合剤抽出及び膨潤に注意する。 |
| MEK | 19.0 | 2.4 | △ | 長時間では膨潤しやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 2.0 | × | 境界域であるが、実用上は膨潤リスクが高い。 |
| トルエン | 18.2 | 1.6 | × | 著しい膨潤を起こしやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 1.4 | × | 芳香族炭化水素で不適である。 |
| シクロヘキサン | 16.8 | 0.2 | × | SP値が極めて近く、著しく膨潤しやすい。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 1.7 | × | 非極性炭化水素で大きく膨潤しやすい。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 3.6 | × | 単純SP差以上に強い膨潤及び抽出が起こり得る。 |
評価基準:◎ 非常に良好、○ 概ね良好、△ 注意が必要、× 不適。SP値による評価はスクリーニングであり、最終判断には実配合加硫試験片による体積変化、質量変化、硬さ変化、引張保持率及び外観評価が必要である。
製法
IRは高純度イソプレンを炭化水素系溶媒中で立体規則性触媒により重合して製造する。触媒にはチーグラー・ナッタ系、リチウム系、希土類系等が用いられ、触媒種、助触媒、溶媒、温度及びモノマー濃度により立体規則性、分子量及び分子量分布を制御する。

不飽和炭化水素からなるゴムであり、イソプレン(IUPAC: 2-メチル-1,3-ブタジエン)の重合によって製造される。
イソプレンの重合では4 つの異なる異性体が生成され、ポリマー中の各異性体の相対量は、重合反応のメカニズムに依存している。
n-ブチルリチウムによって開始されるアニオン連鎖重合によるポリイソプレンゴムは、 90 ~ 92% が シス-1,4-ポリイソプレン、2 ~ 3% が トランス-1,4-ポリイソプレン、6 ~ 7% が 3,4-ポリイソプレンとなる。
チーグラー・ナッタ触媒 TiCl4/Al(i-C4H9)3 を使用した配位連鎖重合では、天然ゴムに似たより純粋な シス-1,4-ポリイソプレンが形成される。
リン配位子とAl(OPhCH3)(i-Bu)2 助触媒によって担持された MoO2Cl2 触媒を使用した場合では、 1,2 および 3,4 が支配的なポリイソプレンが生成される。
- 原料:高純度イソプレン、炭化水素系溶媒、触媒、助触媒、重合停止剤及び酸化防止剤を用いる。
- 重合:一般に溶液重合であり、高cis構造を得る触媒系を選定する。
- 後処理:重合停止、触媒失活、凝固、脱溶媒、洗浄、乾燥及びベール化を行う。
- コンパウンド:カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、プロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、加硫促進剤、過酸化物、老化防止剤及びワックス等を用途別に配合する。
- GF又はCF強化はIRの一般的グレード区分ではない。短繊維、織布、コード又は金属補強材は、ゴム複合体として別管理する。
接合・表面処理適性
| 方法 | 適性 | 一般的傾向 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 熱板・超音波・振動溶着 | × | 架橋後は再溶融しない。 | 未加硫接合、加硫接着又は接着剤接合を用いる。 |
| レーザー・高周波・熱風溶着 | × | 一般的な熱可塑性溶着には適さない。 | 特殊中間層又は複合構造を検討する。 |
| 未加硫ゴム同士の加硫接着 | ◎ | 共加硫により一体化できる。 | 界面汚染、スコーチ差及び加硫速度差を管理する。 |
| 接着剤接合 | ○ | ゴム用接着剤及びプライマーで対応可能である。 | 離型剤除去、研磨及びブルーム除去が重要である。 |
| 金属との加硫接着 | ◎ | 専用プライマー及び加硫接着剤で強固に接着できる。 | 脱脂、ブラスト、表面処理及び焼付条件を管理する。 |
| 機械締結・インサート | ○ | 金属又は樹脂骨格との複合化が可能である。 | 局部応力、ゴムのはみ出し、応力緩和及び界面剥離に注意する。 |
| コロナ・プラズマ処理 | ○ | 表面エネルギーを高められる。 | 処理効果の経時低下及び過処理による表面損傷に注意する。 |
| フレーム処理 | △ | 表面改質できる場合がある。 | 熱劣化、変形及び発火リスクを管理する。 |
寸法精度・設計特性
- 成形収縮、離型後収縮及びポストキュア収縮を考慮する。
- 弾性変形、クリープ、応力緩和及び圧縮永久ひずみを設計に含める。
- 熱膨張係数が大きく剛性が低いため、精密部品では金属又は樹脂骨格との複合化を検討する。
- ノッチ、鋭角、表面傷、ウェルド及びフィラー凝集は疲労亀裂の起点となる。
- 短時間の引張強さをそのまま設計許容応力として使用しない。寿命、温度、周波数及び変形量を考慮して安全率を設定する。
品質・成形不良
| 不良 | 材料側の主因 | 成形条件側の主因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| スコーチ | 促進剤過多、保管劣化、分散不良 | 混練又は押出温度過高、滞留過長 | ムーニースコーチ確認、温度低減、加硫系見直し及び先入先出を行う。 |
| 加硫不足 | 加硫剤不足、阻害物質、分散不良 | 金型温度又は時間不足 | 加硫曲線、t90及び製品中心温度を確認する。 |
| 過加硫・リバージョン | 加硫系不適合 | 高温又は長時間 | 耐リバージョン配合及び成形条件を最適化する。 |
| ガス焼け・ボイド | 水分、揮発分、低沸点成分 | ベント不足、加熱急速、圧力不足 | 保管、真空、ベント及び加硫昇温を管理する。 |
| フローマーク・肌荒れ | 粘度不適、フィラー分散不良 | 速度、ダイ温度及びせん断過大 | 粘度、ダイ設計、温度及び分散を改善する。 |
| ダイスウェル | 高弾性、高分子量、分子配向 | 高せん断速度、ダイ形状不適 | 速度低減、ダイ補正及び粘度調整を行う。 |
| ブルーム・プレートアウト | 硫黄、促進剤、老化防止剤等の過飽和 | 加硫不足、金型温度及び保管変動 | 配合溶解性、添加量、加硫状態及び保管条件を見直す。 |
| 接着不良 | 離型剤、ブルーム、汚染、配合不適 | 表面処理不足、乾燥不足、加硫条件不適 | 洗浄、研磨、プライマー及び接着条件を管理する。 |
注意点・劣化・故障モード
| 劣化現象 | 主な原因 | 発生しやすい条件 | 外観又は性能への影響 | 予防策 | 推奨確認試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱酸化劣化 | 主鎖二重結合の酸化 | 高温、酸素、金属触媒、長時間 | 硬化、亀裂、伸び低下、粘着化 | 老化防止剤、温度低減、遮気、材料変更 | 熱老化後の硬さ、引張及び伸び |
| オゾン劣化 | オゾンによる二重結合切断 | 伸長状態、屋外、電気設備周辺 | 応力方向と直角の亀裂 | ワックス、老化防止剤、遮蔽又はEPDMへ変更 | 静的・動的オゾン試験 |
| 紫外線劣化 | 光酸化 | 屋外、淡色配合 | 変色、表面亀裂、強度低下 | カーボンブラック、UV安定剤及び遮光 | キセノンアーク促進耐候試験 |
| 膨潤・溶解 | 油及び溶剤の浸透 | 燃料、鉱油、トルエン、ヘキサン | 体積増加、軟化、強度低下、シール破損 | NBR、HNBR又はFKM等へ変更 | 実薬品浸漬試験 |
| 添加剤抽出 | 水、アルコール、洗浄剤等 | 高温長期、液更新、薄肉 | 硬化、臭気、色移り、媒体汚染 | 低抽出配合、架橋最適化 | 溶出試験、GC-MS等 |
| 疲労破壊 | 繰返しひずみ、ノッチ、分散不良 | 防振、ベローズ、屈曲部 | 亀裂成長及び破断 | 形状改善、ひずみ低減、分散改善 | 屈曲疲労及び実部品耐久 |
| クリープ・応力緩和 | 粘弾性変形 | 長時間荷重、高温 | 締結力及びシール圧低下 | 締め代、硬さ、架橋及び形状最適化 | 長時間圧縮・応力緩和試験 |
| 圧縮永久ひずみ | 熱劣化及び架橋網目の緩和 | 高温圧縮、長時間シール | 復元不足、漏れ | 架橋系、温度及び圧縮率を最適化 | ISO 815-1又はASTM D395相当 |
| アウトガス | 残留溶媒、低分子、可塑剤及び加硫副生成物 | 真空、高温、クリーン用途 | 曇り、汚染、接点不良 | 低揮発配合、ポストキュア及び洗浄 | TML/CVCM、GC-MS |
| 滅菌劣化 | 熱、蒸気、放射線及び酸化剤 | オートクレーブ、ガンマ線、過酸化水素 | 硬化、変色、亀裂及び抽出物変化 | 滅菌適合グレード及び回数制限 | 滅菌繰返し後の物性・溶出試験 |
推奨確認試験
- 実薬品浸漬試験:実濃度、使用温度及び実使用時間以上で、体積、質量、硬さ、引張強さ、伸び及び外観を確認する。
- 応力負荷下試験:シール締め代、伸長率又は圧縮率を再現し、薬品、熱又はオゾンに暴露する。
- 熱老化試験:想定最高温度に応じて70℃、85℃、100℃等で性能保持率を評価する。
- 紫外線・オゾン試験:実使用ひずみを模擬し、亀裂発生時間及び物性保持率を確認する。
- 疲労試験:屈曲、圧縮、引張又は振動の実波形、周波数及び繰返し回数を再現する。
- 摩耗・摩擦試験:相手材、表面粗さ、荷重、速度、温度、湿度及び潤滑条件を規定する。
- 溶出・滅菌・アウトガス試験:食品、医療、電子及び真空用途では、実媒体及び老化後を含めて評価する。
- 実成形・実部品耐久試験:量産条件で混練、押出、加硫、接着、寸法、外観及び寿命を確認する。
法規制・認証
| 規制・認証 | 一般的な位置付け | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | 適合可能な配合が存在する | 加硫剤、顔料、可塑剤及び金属化合物を含む最終配合の証明書を確認する。 |
| REACH・SVHC | 適合可能 | 添加剤、残留モノマー、PAH及び加硫促進剤由来物質を確認する。 |
| ELV | 自動車用適合配合が存在する | 重金属、PAH、VOC及びOEM規格を確認する。 |
| PFAS関連規制 | IR骨格は通常フッ素を含まない | 加工助剤、離型剤、表面処理及び複合部材を個別確認する。 |
| TSCA・Proposition 65 | 個別配合で確認 | 添加剤、残留物及び対象物質リストを最新証明書で確認する。 |
| 日本の食品衛生法・ポジティブリスト | 適合配合が存在する | 用途、接触食品、温度、時間、溶出条件及び添加剤を確認する。 |
| FDA食品接触 | 適合グレード・配合が存在する | 適用条項、食品種、温度、時間及び繰返し使用条件を確認する。 |
| EU食品接触規則 | 個別確認が必要 | ゴム製品に適用される国内法、欧州評議会文書及び顧客規格を確認する。 |
| USP Class VI・ISO 10993 | 医療用コンパウンド又は最終製品で取得例がある | 材料群全体の認証ではなく、色、添加剤、滅菌法及び最終製品で確認する。 |
| UL認証・IEC | 個別グレード依存 | 難燃性、電気特性、厚さ、色及び認証番号を確認する。 |
| ISCC PLUS | 認証原料の供給例がある | マスバランス認証範囲、製造拠点及び証明書有効性を確認する。 |
環境・リサイクル性
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 熱可塑性又は熱硬化性 | 未架橋IRは熱可塑的に軟化するが、一般的最終製品は架橋ゴムであり熱硬化性材料として扱う。 |
| マテリアルリサイクル | 架橋後は再溶融できず、粉砕ゴム、再生ゴム、脱硫ゴム又はフィラー代替として限定利用される。 |
| ケミカルリサイクル | 熱分解油又は化学原料回収の技術があるが、配合剤分離及び品質安定が課題である。 |
| サーマルリサイクル | 炭化水素系で発熱量は高いが、すす、NOx及び配合由来成分を管理する。 |
| 再生材利用 | 一部配合可能であるが、引張、伸び、疲労、接着、外観及び臭気が低下しやすい。 |
| バイオベース材 | バイオ由来イソプレン又はマスバランス原料の供給例がある。通常品の由来は個別確認する。 |
| 生分解性 | 一般的な工業用IR加硫物を生分解性又はコンポスト適合材料として扱わない。 |
| ハロゲン含有 | IR主鎖自体はハロゲンを含まない。難燃剤、添加剤及び複合部材は個別確認する。 |
| 識別表示 | ISO 1629等の略号IRを用いる。一般プラスチックの樹脂識別コードとは異なる。 |
価格・供給性
| 項目 | 一般的評価 |
|---|---|
| 相対価格 | 中価格から比較的高価格。天然ゴム、SBR、BR、市況、純度、医療グレード及び購入量により変動する。 |
| 流通性 | 汎用合成ゴムとして流通するが、SBR及び天然ゴムより供給メーカー及びグレードが限定される場合がある。 |
| 国内入手性 | 合成ゴムメーカー、商社及びコンパウンドメーカー経由で入手可能である。 |
| 少量購入 | 原料ベールは最小購入量が大きい傾向があり、試作ではコンパウンド品又は加工会社経由が現実的である。 |
| 供給形態 | ベール、クラム、ラテックス、液状ポリマー、コンパウンド及び加硫成形品として供給される。 |
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車・タイヤ | タイヤ部材、マウント、防振材、ダイヤフラム | 高弾性、低温特性、疲労特性及び他ゴムとのブレンド性 | オゾン、熱、油及び燃料への暴露を管理する。 |
| 機械部品 | ロール、カップリング、防振ゴム、ベローズ | 反発性、耐屈曲及び衝撃吸収性 | 油潤滑環境には不適となりやすい。 |
| 医療 | 手袋、栓体、シール、バルーン、チューブ部品及び弾性膜 | 高純度、低蛋白及び良好な弾性 | 生物学的安全性、抽出物、滅菌及び粒子を確認する。 |
| 食品・衛生 | 乳首、シール、弾性部品及び衛生用品 | 淡色、高純度、柔軟性及び低臭気 | 食品油、洗浄剤、殺菌及び法規制を確認する。 |
| 履物・スポーツ | 靴底、ゴム糸、弾性バンド及びボール部材 | 反発性、伸び、柔軟性及び疲労特性 | 耐候性、摩耗、汚染性及び色移りを確認する。 |
| 接着剤・粘着剤 | 感圧接着剤、ゴム系接着剤及び改質剤 | 粘着付与樹脂との相溶性、低温タック及び柔軟性 | 酸化安定性、残留溶剤及び耐熱保持力を確認する。 |
| 電気・電子 | 絶縁部品、柔軟部材及び特殊シール | 低吸水、非極性及び絶縁性 | 耐熱、耐候、難燃及びアウトガス要求を確認する。 |
| 建築・設備 | 限定的な防振材及び緩衝材 | 柔軟性及び衝撃吸収性 | 屋外ではEPDM又はCRを優先検討する。 |
用途別選定
| 用途 | 適性 | 評価理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ギア・軸受・ブッシュ | × | 低剛性で精密摺動部品には不適である。 | 弾性ローラー又は防振支持材としては利用できる。 |
| ローラー | ◎ | 弾性、反発及びグリップを得やすい。 | 油、溶剤、発熱及び永久ひずみを確認する。 |
| ポンプ・バルブ部品 | △ | 水系及び低温用途では使用可能な場合がある。 | 媒体、圧力、摩耗、蒸気及び薬品を確認する。 |
| シール・ガスケット | ○ | 水系及び低温の柔軟シールに使用可能である。 | 油、燃料、高温及びオゾン用途では他材を検討する。 |
| Oリング | △ | 水系又は低温用途では候補となる。 | 標準Oリング材としてはNBR、EPDM及びFKM等が一般的である。 |
| チューブ・ホース | ○ | 柔軟性及び低温特性に優れる。 | 油、燃料、屋外及び蒸気には不適となりやすい。 |
| 配管・タンク | × | 構造剛性及び長期寸法安定性が不足する。 | ライニング又は柔軟継手としての使用を検討する。 |
| フィルム・シート | ◎ | 高伸び及び柔軟性を活かせる。 | 酸化、ピンホール、滅菌及び抽出物を確認する。 |
| ボトル・容器 | × | 剛性及び形状保持性が不足する。 | 柔軟膜又は栓体用途に限定する。 |
| 電気コネクタ・ソケット | × | 端子保持剛性及び寸法精度が不足する。 | 防水シール及びグロメットとしては使用可能である。 |
| 絶縁部品 | ○ | 非極性で絶縁性が良い。 | 耐熱、耐候及び難燃要求では他材と比較する。 |
| 電子部品筐体・一般筐体 | × | 剛性及び寸法保持性が不足する。 | 緩衝材、シール又は防振材に限定する。 |
| 透明カバー・レンズ | × | 光学品質及び剛性が不足する。 | PC、PMMA又はCOC等を検討する。 |
| 自動車内装 | △ | 防振及び柔軟部材として使用可能である。 | VOC、臭気、熱老化及び難燃を確認する。 |
| 自動車外装・屋外部品 | × | 耐候及び耐オゾン性が不足する。 | EPDM又はCR等を検討する。 |
| エンジンルーム部品 | × | 熱、油及びオゾンへの耐性が不足する。 | HNBR、FKM、EPDM等と比較する。 |
| 燃料系部品 | × | 燃料で著しく膨潤しやすい。 | NBR、HNBR又はFKM等を検討する。 |
| 食品機械部品 | △ | 水系及び淡色用途では使用可能な場合がある。 | 食品油、蒸気、洗浄剤及び規制を確認する。 |
| 医療機器部品 | ○ | 高純度医療グレードで有力候補となる。 | 滅菌、生物学的安全性、抽出物及び規制を個別確認する。 |
| 半導体・真空装置部品 | × | アウトガス、耐熱及び薬品耐性が不足しやすい。 | FKM、FFKM又は低アウトガスシリコーン等を検討する。 |
| 接着剤 | ◎ | タック、柔軟性及び粘着付与樹脂との相溶性を利用できる。 | 酸化、残留溶剤及び耐熱保持力を設計する。 |
| 塗料・コーティング | △ | 柔軟バインダー又は改質材として使用可能である。 | 耐候、耐溶剤、粘着及び硬化性を補う必要がある。 |
| 複合材料マトリックス | △ | 繊維、コード及び布とのゴム複合材に利用できる。 | 界面接着、疲労、熱及び寸法安定性を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | イソプレンゴムとの違い | 主な選定基準 |
|---|---|---|---|
| 天然ゴム(NR) | 高いグリーン強度、引張、引裂及び耐亀裂成長性を持つ。 | IRは品質均一性、純度及び淡色性で有利であり、NRは機械強度で有利な場合が多い。 | 高強度・低コストはNR、高純度・医療・均一性はIRを検討する。 |
| スチレンブタジエンゴム(SBR) | 耐摩耗性、加工性及び価格バランスに優れる。 | IRは低温特性、反発性及び伸びに優れ、SBRは価格と耐摩耗性で有利な場合がある。 | 動的損失、摩耗、価格及びブレンド設計を比較する。 |
| ブタジエンゴム(BR) | 低Tg、高反発、耐摩耗及び低発熱に優れる。 | BRは低発熱性に優れ、IRは加工性、グリーン強度及び引張特性を得やすい。 | 低発熱・耐摩耗はBR、加工性・引張はIRを比較する。 |
| エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM) | 耐候、耐オゾン、耐水及び耐蒸気性に優れる。 | IRは弾性及び反発性に優れるが、耐候及び耐熱性はEPDMが優れる。 | 屋外・水・蒸気はEPDM、動的弾性・高伸びはIRを検討する。 |
| ニトリルゴム(NBR) | 耐油、耐燃料及び耐摩耗性に優れる。 | IRは低温弾性及び伸びに優れるが、油及び燃料ではNBRが優れる。 | 油シールはNBR、非油系の高弾性用途はIRを検討する。 |
| クロロプレンゴム(CR) | 耐候、難燃、接着及び耐油性のバランスが良い。 | IRは低温柔軟性及び反発性、CRは耐候性及び難燃性で有利である。 | 屋外・接着・難燃はCR、動的弾性はIRを比較する。 |
| シリコーンゴム(VMQ) | 広い使用温度範囲、耐候性及び電気特性に優れる。 | IRは耐摩耗性及び価格で有利な場合があるが、高低温及び耐候性はシリコーンが優れる。 | 高温・低温・医療はシリコーン、機械強度・コストはIRを比較する。 |
| スチレンイソプレンスチレン(SIS) | 加硫不要の熱可塑性エラストマーである。 | IRは架橋により弾性回復及び耐熱性を得る。SISは再溶融加工性に優れる。 | 熱可塑加工・ホットメルトはSIS、加硫ゴム性能はIRを選ぶ。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 日本ゼオン株式会社 | Nipol IR2200、Nipol IR2200L | 高cisイソプレンゴムを展開する。一般工業用品、タイヤ、ベルト、履物、ゴム糸、押出・成形品等に使用される。 |
| Cariflex Pte. Ltd. | Cariflex Isoprene Rubber、Cariflex Polyisoprene Latex | 医療、衛生及び高付加価値用途向けの高純度IR及びポリイソプレンラテックスを展開する。 |
メーカー、ブランド、供給拠点、認証及び販売体制は変更される場合がある。採用時には最新の技術資料、SDS、規制証明、供給可否及び最小購入量を確認する必要がある。
関連キーワード
イソプレンゴム / IR / Synthetic Polyisoprene Rubber / ポリイソプレン / 合成天然ゴム / イソプレン / cis-1,4-ポリイソプレン / 天然ゴム / SBR / BR / EPDM / NBR / CR / シリコーンゴム / SIS / 硫黄加硫 / 過酸化物加硫 / オゾン劣化 / エラストマーの耐薬品性 / SP値 / ISO 1629
本ページの数値及び評価は、材料群としての代表値又は目安である。実使用では、メーカー、グレード、cis含有率、分子量、配合、充填材、加硫系、硬さ、試験規格、温度、濃度、荷重、応力、湿度、時間、試験片形状、成形条件、滅菌条件及び法規制を確認する必要がある。