| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | パラキシリレン |
| 略記号 | PPX、Parylene N、Poly-p-xylylene |
| IUPAC | poly(1,4-phenyleneethylene)、poly(p-xylylene) |
| 英語名 | Poly-p-xylylene / Poly(para-xylylene) / Parylene N |
| 日本語名 | ポリパラキシリレン、ポリ-p-キシリレン、パリレンN、パリレン |
| 分類 | 高機能コーティング用熱可塑性樹脂、気相重合型コンフォーマルコーティング樹脂 |
| プラスチック分類 | エンジニアリング・プラスチック相当。耐熱・耐薬品グレードはスーパーエンプラ相当の用途で扱われることがある。 |
| 化学式または代表構造 | 繰り返し単位:[-CH2-C6H4-CH2-]n、単位組成:C8H8 |
| CAS No. | ポリ(p-キシリレン):25722-33-2、原料二量体の[2.2]パラシクロファン:1633-22-3が知られている。 |
| 構造・主成分 | p-フェニレン環とメチレン基が交互に連結した直鎖状芳香族ポリマーである。 |
| 主な用途 | 電子基板の防湿絶縁膜、MEMS、医療機器部品、センサー、磁石、航空宇宙部品、耐薬品保護膜 |
概要
パラキシリレンは、一般にパリレンと呼ばれるポリパラキシリレン系樹脂の基本構造を指す名称である。代表的な無置換タイプはParylene Nであり、クロロ置換タイプのParylene C、ジクロロ置換タイプのParylene D、フッ素置換タイプのParylene HTまたはAF系などを含めて、パリレン系コーティング材料として扱われる。
通常の射出成形や押出成形で使うペレット状樹脂とは異なり、パラキシリレン系樹脂は主に真空中で原料二量体を気化・熱分解し、基材表面でモノマーを重合させて薄膜を形成する。液状塗料を塗布する方式ではないため、複雑形状、微細隙間、実装基板、MEMS構造などにも比較的均一な膜厚で成膜しやすい。
膜は透明から半透明の薄膜で、電気絶縁性、防湿性、ガスバリア性、耐薬品性に優れる。一方で、厚肉の成形品として使う材料ではなく、再溶融成形や溶剤キャストは一般に困難である。実使用では、グレード、膜厚、下地材、前処理、温度、湿度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 薄膜でも電気絶縁性が高く、防湿性、耐薬品性、ガスバリア性、耐摩耗性、低摩擦性に優れる。真空蒸着により複雑形状へ均一に成膜しやすい。 |
| 短所 | 一般的な溶融成形ができず、原料、専用成膜装置、マスキング、前処理が必要である。膜の除去やリワークは容易ではない。 |
| 外観 | 無色透明から半透明の薄膜である。膜厚、結晶性、下地表面状態により光沢や白濁感が変わる。 |
| 耐熱性 | Parylene NやCは連続使用温度の目安が60〜80℃程度、Dは100℃程度、HT系は300℃以上の高温用途に使われることがある。酸素雰囲気、紫外線、膜厚により寿命は変わる。 |
| 耐薬品性 | 多くの酸、アルカリ、アルコール、油、一般溶剤に対して良好である。ただし芳香族系溶剤、塩素系溶剤、高温溶剤、強酸化性薬品では膨潤、軟化、劣化を確認する必要がある。 |
| 加工性 | 成膜は真空蒸着重合が基本である。レーザー加工、酸素プラズマエッチング、マスキングによる選択成膜は可能だが、射出成形や押出成形には通常適さない。 |
| 分類上の注意 | 化学的には熱可塑性ポリマーに分類できるが、実務上は成形材料ではなく、薄膜コーティング材料として扱うのが一般的である。 |
構造式
化学式の画像化に用いる表記
画像タグは使用せず、白黒の構造式画像を作成する場合の表記例を以下に示す。フォントをMS Pゴシック相当にする場合は、構造単位を「[-CH2-C6H4-CH2-]n」として配置すると読みやすい。
| 項目 | 構造表記 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | [-CH2-C6H4-CH2-]n |
| 単位組成 | C8H8 |
| モノマーまたは構成単位 | p-キシリレン、p-キノジメタン型の反応性モノマーとして扱われる。 |
| 原料二量体 | [2.2]パラシクロファン、または置換[2.2]パラシクロファン |
| 塩素置換品 | Parylene C:[-CH2-C6H3Cl-CH2-]n |
| ジクロロ置換品 | Parylene D:[-CH2-C6H2Cl2-CH2-]n |
| フッ素置換品 | Parylene HT、AF系:フッ素置換により耐熱性、紫外線安定性、低誘電率を高めたグレードである。 |
パラキシリレン系には、無置換のParylene N、塩素置換のParylene C、ジクロロ置換のParylene D、フッ素置換のParylene HTまたはAF系、反応性官能基を導入した変性パリレンなどがある。置換基の種類により、バリア性、耐熱性、誘電特性、密着性、成膜性が変わる。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| Parylene N | 無置換のポリ(p-キシリレン) | 誘電率が低く、微細隙間への浸透性に優れる。 | 防湿バリア性はCタイプより劣ることがある。連続使用温度は高くない。 | 高周波部品、MEMS、微細構造、電気絶縁膜 |
| Parylene C | モノクロロ置換ポリ(p-キシリレン) | 防湿性、ガスバリア性、電気絶縁性、成膜性のバランスが良い。 | Nタイプより誘電率が高く、微細隙間への入り込みはやや劣る。 | 電子基板、センサー、医療機器、磁石、一般防湿絶縁膜 |
| Parylene D | ジクロロ置換ポリ(p-キシリレン) | Cタイプより耐熱性、耐ガス性を高めやすい。 | 成膜条件や膜応力の管理が必要で、用途はCタイプより限定される。 | 高温寄りの電子部品、腐食性ガス雰囲気、特殊保護膜 |
| Parylene HT / AF系 | フッ素置換パラキシリレン系 | 高耐熱、低誘電率、低摩擦、紫外線安定性に優れる。 | 原料コスト、成膜条件、供給性の確認が必要である。 | 航空宇宙、光学・高周波部品、高温電子部品 |
| ハロゲンフリー系パリレン | 塩素を含まない置換パラキシリレン系 | ハロゲンフリー要求に対応しやすく、電気特性とバリア性の両立を狙える。 | 標準Cタイプと比較して実績、入手性、膜厚条件を確認する必要がある。 | 電子機器、環境規制対応部品、モバイル機器 |
| 反応性パリレン | アミノ基、カルボキシル基、アルキン基などを導入した変性タイプ | 接着、表面改質、生体分子固定化などに利用しやすい。 | 標準グレードより材料設計が限定され、評価項目が多い。 | バイオMEMS、医療研究用途、表面機能化膜 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 |
|---|---|---|
| 真空蒸着重合 | ◎ | 最も一般的な加工方法である。原料二量体を気化、熱分解し、常温付近の基材表面で重合させる。 |
| 射出成形 | × | 高分子量、結晶性、溶融加工性の制約により、通常の射出成形には適さない。 |
| 押出成形 | × | 一般的なペレット押出成形材料としては扱いにくい。 |
| ブロー成形 | × | 中空成形材料ではなく、薄膜コーティング材料として使われる。 |
| 圧縮成形 | × | 粉末やペレットを加熱圧縮して成形する用途には通常適さない。 |
| 真空成形 | × | シート成形用材料ではないため、真空成形には適さない。 |
| 切削加工 | △ | 厚膜や自立膜では限定的に加工できる場合があるが、薄膜では剥離、割れ、バリに注意が必要である。 |
| レーザー加工 | ○ | 微細パターン形成や開口加工に使われることがある。基材への熱影響を確認する必要がある。 |
| 酸素プラズマエッチング | ○ | MEMSや半導体プロセスで薄膜パターン加工に利用されることがある。 |
| 接着・二次加工 | △ | 表面エネルギーが低く接着しにくい場合があるため、プラズマ処理、シラン処理、反応性グレードの検討が必要である。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下は代表値であり、膜厚、成膜条件、アニール、基材、測定方法により変わる。特に薄膜材料では、バルク成形品の物性値と同じ考え方で扱わないことが重要である。
| 項目 | 単位 | Parylene N | Parylene C | Parylene D | Parylene HT / AF系 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.10〜1.12 | 約1.29 | 約1.42 | 約1.32 | 置換基により密度が変わる。 |
| 引張強さ | MPa | 約48 | 約69 | 約76 | 約52 | 薄膜測定値の代表値である。 |
| 伸び | % | 2〜200 | 2〜200 | 2〜200 | 2〜200 | 膜厚、成膜条件、アニールにより幅がある。 |
| 曲げ弾性率又はヤング率 | MPa | 約2,400 | 約2,800 | 約2,600 | 約2,550 | フィルムの引張弾性率を目安として記載する。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | データ少 | データ少 | データ少 | データ少 | 薄膜コーティング材料のため、一般成形材料のアイゾット値とは比較しにくい。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 一般値なし | 一般値なし | 一般値なし | 一般値なし | 薄膜材料のため、代替指標として連続使用温度や弾性率低下温度を確認する。 |
| 融点又は熱転移温度 | ℃ | 約420 | 約290 | 約380 | 500超 | 分解や酸化劣化を伴うため、溶融加工温度としては扱わない。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 約60 | 約80 | 約100 | 約350 | 空気中の長期使用目安であり、膜厚、酸素、紫外線、応力で変わる。 |
| 短時間使用温度 | ℃ | 約80 | 約100 | 約120 | 約450 | 短時間評価の目安である。 |
| 吸水率 | 24h、% | 0.1未満 | 0.1未満 | 0.1未満 | 0.01未満 | 吸水は小さいが、水蒸気透過性は膜厚と欠陥管理の影響を受ける。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 約1.4×1017 | 約8.8×1016 | 約1.2×1017 | 約2.0×1017 | 23℃、50%RH付近の代表値である。 |
| 誘電率 | 1kHz | 約2.65 | 約3.10 | 約2.82 | 約2.20 | 高周波用途では膜厚、周波数、吸湿条件を確認する。 |
| 動摩擦係数 | 約0.25 | 約0.29 | 約0.31 | 約0.13 | 相手材、荷重、表面粗さにより変わる。 |
複合材・比較材料の目安
| 材料 | 密度 (g/cm3) | 引張強さ (MPa) | 弾性率 (MPa) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| パラキシリレン系薄膜 | 1.10〜1.42 | 約48〜76 | 約2,400〜2,800 | 薄膜絶縁、防湿、耐薬品コーティングに適する。 |
| パラキシリレン充填材複合 | 用途により異なる | 用途により異なる | 用途により異なる | 一般的なGF、CF強化成形材料としては流通しにくい。 |
| GF強化PPS | 約1.55〜1.70 | 約120〜180 | 約8,000〜14,000 | 構造部品向けの耐熱成形材料である。 |
| GF強化PEI | 約1.45〜1.60 | 約130〜180 | 約7,000〜12,000 | 射出成形可能な耐熱透明系スーパーエンプラである。 |
| CF強化PEEK | 約1.35〜1.45 | 約180〜260 | 約15,000〜30,000 | 高強度・高耐熱の構造材料であり、パラキシリレンとは用途が大きく異なる。 |
耐薬品性
評価は常温、短時間から中時間接触を想定した目安である。パラキシリレン系樹脂は一般に耐薬品性に優れるが、薄膜であるため、膜厚、ピンホール、端面、基材との密着、温度、濃度、浸漬時間により実用結果が変わる。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、希硫酸、リン酸 | ◎〜○ | 一般に良好である。高温、長時間、濃酸では確認が必要である。 |
| 酸類 | 濃硫酸、硝酸、混酸 | △ | 強酸化性条件では樹脂膜、基材、密着界面の劣化に注意する。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液 | ◎〜○ | 常温では良好な場合が多い。高温高濃度では実液評価が必要である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎ | 一般に膨潤しにくい。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ブタノール、MMB | ◎〜○ | 多くの場合良好である。添加剤を含む実液では確認する。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、ベンゼン | ○〜△ | 常温では比較的良好であるが、SP値が近く、高温や長時間では膨潤に注意する。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン | ◎ | 一般に良好である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合が多いが、長時間浸漬では確認が必要である。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル | ○〜△ | SP値が近いものがあり、膜厚、温度、時間の影響を確認する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン | △ | 常温短時間では大きな変化がない場合もあるが、膨潤、密着低下、高温溶解に注意する。 |
| 特殊高温溶剤 | クロロナフタレン、ベンジルベンゾエート | ×〜△ | 高温では軟化、膨潤、溶解が問題となることがある。 |
| 水・温水 | 水、純水、温水 | ◎〜○ | 防湿膜として使われる。温水、加圧水蒸気、端面からの浸入は別途評価する。 |
| 油 | 鉱物油、シリコーン油、潤滑油 | ◎〜○ | 一般に良好である。添加剤、硫黄分、極圧剤を含む油では確認する。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| パラキシリレン系樹脂の代表SP値 δ(MPa1/2) | 約20〜21 | Parylene Cでは約21 MPa1/2が目安として扱われる。Parylene Nは置換基がないため18〜20 MPa1/2程度で見る場合がある。 |
| 注意点 | SP値は目安 | パラキシリレン系は結晶性、気相重合膜、架橋的な密な膜構造、膜厚、温度の影響が大きく、SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。 |
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下はパラキシリレン系樹脂の代表SP値を21 MPa1/2として計算した目安である。実際にはParylene N、C、D、HTで異なり、温度、濃度、接触時間、膜厚、結晶性、成膜条件、基材密着により結果が変わる。
| 薬品名 | 薬品SP値 δ(MPa1/2) | SP値差 | SP値上の評価 | 実用上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 26.9 | ◎ | 水そのものへの耐性は良好だが、水蒸気透過、端面、ピンホールを確認する。 |
| エタノール | 26.5 | 5.5 | ○ | 常温では良好な場合が多い。 |
| IPA | 23.5 | 2.5 | △ | SP値上は近いが、実用上は比較的安定な場合が多い。長時間浸漬は確認する。 |
| グリセリン | 33.8 | 12.8 | ◎ | 一般に良好である。 |
| トルエン | 18.2 | 2.8 | △ | 芳香族系は膨潤に注意する。常温短時間と高温長時間で評価が変わる。 |
| キシレン | 18.0 | 3.0 | △ | SP値が近いため、膜厚と時間を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 6.1 | ○ | 一般に良好である。 |
| アセトン | 19.9 | 1.1 | × | SP値上は近いが、パラキシリレン膜は常温で直ちに溶解しにくい。長時間浸漬、応力下、密着低下を確認する。 |
| MEK | 19.0 | 2.0 | △ | 条件により膨潤の確認が必要である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 2.4 | △ | 短時間接触では使える場合があるが、長期浸漬は避けて評価する。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 0.8 | × | SP値が近い。常温での外観変化だけで判断せず、膨潤、密着、絶縁抵抗を確認する。 |
| クロロホルム | 18.7 | 2.3 | △ | 塩素系溶剤では注意が必要である。 |
| DMF | 24.8 | 3.8 | △ | 高極性溶剤であり、温度と時間を確認する。 |
| 鉱物油 | 15〜17 | 4〜6 | △〜○ | 実用上は良好なことが多いが、添加剤を含む油では試験が必要である。 |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。ただし、パラキシリレン系は通常の溶剤可溶型樹脂ではないため、SP値差が小さい薬品でも常温では直ちに溶解しない場合がある。最終判断では、重量変化、膜厚変化、外観、密着性、絶縁抵抗、基材腐食の有無を確認する必要がある。
製法
原料
パラキシリレン系コーティングの原料は、一般に[2.2]パラシクロファン系二量体である。Parylene Nでは無置換の[2.2]パラシクロファン、Parylene Cではクロロ置換二量体、Parylene Dではジクロロ置換二量体、HT系ではフッ素置換二量体が用いられる。
重合方法
原料二量体を真空中で昇華または気化し、高温熱分解により反応性のp-キシリレンモノマーを発生させる。その後、常温付近の基材表面でモノマーが重合し、ポリパラキシリレン膜を形成する。液状塗料のような溶媒、硬化剤、乾燥工程を必要としない点が特徴である。
代表的な反応式
| 工程 | 反応式又は内容 |
|---|---|
| 気化 | [2.2]パラシクロファン C16H16 → 気相二量体 |
| 熱分解 | C16H16 → 2 C8H8(p-キシリレンモノマー) |
| 表面重合 | n C8H8 → [-CH2-C6H4-CH2-]n |
| 塩素置換タイプ | n C8H7Cl → [-CH2-C6H3Cl-CH2-]n |
ペレット化やコンパウンド
パラキシリレン系樹脂は、通常の射出成形用ペレットとしてコンパウンド化する材料ではない。実務上は、原料二量体を成膜装置に投入し、基材表面でポリマー薄膜を形成する。したがって、樹脂メーカー、原料メーカー、成膜加工会社の役割を分けて確認する必要がある。
添加剤、充填材、強化材
一般的なコーティング膜では、可塑剤、溶剤、顔料、ガラス繊維、炭素繊維などを配合しない。用途により、下地処理剤、密着促進剤、プラズマ処理、マスキング材、金属や酸化膜との多層構成が使われることがある。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 採用理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | センサー、ECU基板、モーター部品、磁石、沿岸部や融雪塩環境の電子部品 | 防湿、耐塩害、絶縁、防錆、薄膜保護 | 温度サイクル、油、塩水、振動、端面からの浸入を評価する。 |
| 電気・電子 | プリント基板、LED基板、小型電子部品、コイル、リード部品 | 高い絶縁性、防湿性、複雑形状への均一成膜 | コネクタ、接点、放熱面はマスキングが必要である。 |
| 機械部品 | 小型摺動部品、ばね、金属部品、精密部品 | 低摩擦、防錆、耐摩耗、薄膜で寸法変化が小さい | 高荷重摺動では膜摩耗と基材硬度を確認する。 |
| 医療 | カテーテル部品、センサー、インプラント周辺部材、医療用電子部品 | 生体適合性、電気絶縁、防湿、低摩擦 | 医療用途ではUSP、ISO 10993、滅菌条件、抽出物評価などを個別に確認する。 |
| 食品機械 | センサー、計測部品、電子部品保護、金属部品の防錆 | 薄膜保護、耐水、耐薬品、洗浄環境への対応 | 食品接触用途では法規制、洗浄剤、熱水、剥離片リスクを確認する。 |
| 建築・設備 | 屋外センサー、監視機器、照明部品、海岸地域の電子部品 | 防湿、耐候補助、防錆、絶縁 | 紫外線、結露、塩害、温度変化を長期評価する。 |
| 航空・宇宙 | 軽量電子部品、センサー、真空環境部品、衛星搭載部品 | 薄膜、低アウトガス、絶縁、耐薬品 | 真空、放射線、熱サイクル、アウトガス規格を確認する。 |
| MEMS・半導体 | 犠牲層、絶縁膜、微細流路、バイオMEMS、薄膜構造材 | 低温成膜、コンフォーマル性、微細加工性 | プラズマ加工条件、膜応力、密着、膜厚均一性を確認する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| PTFE | 耐薬品性、低摩擦性、非粘着性に優れるフッ素樹脂である。 | PTFEは成形品、シート、チューブとして使いやすい。パラキシリレンは薄膜蒸着コーティングに強い。 |
| ETFE | フッ素樹脂の中では機械強度と加工性のバランスが良い。 | ETFEはフィルム、チューブ、ライニングに使える。パラキシリレンは微細形状への均一薄膜が特徴である。 |
| PFA | 高耐熱・高耐薬品の溶融加工可能なフッ素樹脂である。 | PFAは厚肉ライニングや配管に適する。パラキシリレンは数µm〜数十µmの保護膜に適する。 |
| ポリイミド | 耐熱性、寸法安定性、電気絶縁性に優れる。 | ポリイミドはフィルム、ワニス、成形品がある。パラキシリレンは低温CVDによるコンフォーマル膜が特徴である。 |
| PPS | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる結晶性エンプラである。 | PPSは射出成形構造部品に向く。パラキシリレンは構造材ではなく表面保護膜である。 |
| LCP | 低吸水、高流動、耐熱性を持つ高機能樹脂である。 | LCPはコネクタや電子部品成形に向く。パラキシリレンは成形後部品の絶縁・防湿膜として使われる。 |
| エポキシ樹脂 | 接着性、硬化物強度、電気絶縁性に優れる熱硬化性樹脂である。 | エポキシは液状塗布や封止に向くが、厚みムラや硬化収縮が出る場合がある。パラキシリレンは薄膜均一性に優れる。 |
| シリコーン | 柔軟性、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れる。 | シリコーンは柔軟な封止材に適する。パラキシリレンは薄膜、低透湿、寸法変化の小さい保護膜に適する。 |
代表的なメーカー
パラキシリレン系材料は、原料二量体の供給、成膜装置、受託コーティングサービスが分かれることが多い。以下は代表例であり、取扱グレード、対応地域、医療・航空宇宙規格への対応は個別に確認する必要がある。
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| Specialty Coating Systems, Inc.(SCS) / 日本パリレン合同会社 | SCS Parylene N、C、D、HT、ParyFreeなど | パリレン系コンフォーマルコーティングの代表的企業である。日本法人もあり、電子、医療、航空宇宙、自動車用途向けに展開している。 |
| KISCOグループ / 第三化成株式会社 | diX | 高純度パリレン材料およびdiXコーティングを展開する日本企業グループである。防水、絶縁、生体適合性、耐薬品用途に使われる。 |
| Para Tech Coating, Inc. | Parylene coating services | 米国のパリレンコーティングサービス会社であり、電子部品、医療機器、工業部品向けの受託加工を行う代表例である。 |
| Parylene Engineering | Parylene N、C、D coating services | パリレンコーティングの受託加工会社であり、用途に応じた膜厚、マスキング、前処理の検討が必要である。 |
| HZO, Inc. | Parylene and protective coating services | 電子機器向け防水・保護コーティングサービスを展開する企業である。パリレンを含む保護膜技術の適用例がある。 |