エチレンプロピレンゴム

概要

材料名エチレンプロピレンゴム
略記号EPR、EPM
英語名Ethylene Propylene Rubber、Ethylene Propylene Copolymer Rubber
日本語名エチレンプロピレンゴム、エチレン・プロピレン共重合ゴム
分類合成ゴム、非ジエン系ゴム、非耐油性ゴム、耐候性ゴム
構造・主成分エチレンとプロピレンの共重合体を主成分とする飽和炭化水素系ゴム
IUPACethene;prop-1-ene;tricyclo[5.2.1.02,6]deca-3,8-diene
CAS9010-79-1
主な用途自動車部品、ホース、パッキン、シール材、防振ゴム、電線被覆、建材、屋外用ゴム部品

エチレンプロピレンゴム(EPR、EPM)は、エチレンとプロピレンを共重合した非ジエン系の合成ゴムである。 主鎖に二重結合をほとんど持たない飽和炭化水素系構造であるため、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、耐水性、電気絶縁性に優れる。

一方で、鉱物油、燃料油、芳香族溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤に対しては膨潤しやすく、耐油用途には適さない。 耐油性が必要な場合は、NBRクロロプレンゴム、フッ素ゴムなどとの比較が必要である。

特徴

  • 耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性が良い。
  • 水、温水、蒸気、酸、アルカリ、アルコールに比較的安定である。
  • 電気絶縁性が良く、電線被覆や絶縁部品に使用される。
  • 低温柔軟性が良く、屋外用シール材や自動車部品に適する。
  • 耐油性、耐燃料性、耐芳香族溶剤性は低い。
  • 硫黄加硫しにくいため、過酸化物加硫が多く用いられる。
  • ジエン成分を含むEPDMとは近い材料であるが、EPRは基本的にエチレン・プロピレン二元共重合体である。
長所
  • 耐候性、耐オゾン性が非常に良い。
  • 耐熱老化性、耐水性、耐薬品性に優れる。
  • 電気絶縁性が良く、屋外電気部品に使用しやすい。
  • 低温でも柔軟性を維持しやすい。
  • 充填材、可塑剤を多く配合しやすく、配合設計の自由度が高い。
短所
  • 鉱物油、ガソリン、軽油、潤滑油には弱い。
  • トルエン、キシレン、ヘキサンなどの非極性溶剤で膨潤しやすい。
  • 接着性が低く、金属や樹脂との接着には表面処理や接着剤選定が必要である。
  • 未加硫状態では粘着性や加工性が配合により変動しやすい。
成形加工

エチレンプロピレンゴムは熱可塑性樹脂のように単純な溶融成形を行う材料ではなく、混練、予備成形、加硫によりゴム弾性を発現させる材料である。 EPMでは過酸化物加硫が多く用いられ、EPDMより硫黄加硫の自由度は低い。

加工方法適正主な製品例
圧縮成形パッキン、ガスケット、シール材、防振ゴム
トランスファー成形複雑形状ゴム部品、金具接着品
射出成形自動車用シール、工業用ゴム部品
押出成形ホース、チューブ、ウェザーストリップ、電線被覆
カレンダー加工ゴムシート、防水シート、ライニング材

構造式

エチレンプロピレンゴムは、エチレン単位とプロピレン単位からなる飽和炭化水素系の共重合体である。

構造単位:

−[CH2−CH2]m−[CH2−CH(CH3)]n

基本反応式:

m CH2=CH2 + n CH2=CH−CH3 → −[CH2−CH2]m−[CH2−CH(CH3)]n

主鎖が飽和構造であるため、天然ゴムや イソプレンゴムよりも耐オゾン性、耐候性、耐熱老化性に優れる。

種類

標準EPR・EPM
名称標準エチレンプロピレンゴム
構成エチレンとプロピレンの二元共重合体
特徴耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、電気絶縁性に優れる
主な用途シール材、ホース、電線被覆、防振ゴム、屋外部品
高エチレンタイプ
名称高エチレンEPR
構成エチレン含有量を高めたEPR
特徴強度、耐熱性、押出加工性に優れる傾向がある
主な用途押出品、ホース、電線被覆、工業用ゴム部品
低エチレンタイプ
名称低エチレンEPR
構成プロピレン比率を高め、低温柔軟性を重視したEPR
特徴柔軟性、低温特性、シール性に優れる
主な用途低温用シール材、パッキン、防振部品
過酸化物加硫タイプ
名称過酸化物加硫EPR
構成過酸化物架橋により加硫したEPR
特徴耐熱性、圧縮永久ひずみ、電気特性に優れる
主な用途耐熱シール、電線被覆、工業用パッキン

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位標準EPR補強配合品過酸化物加硫品
比重0.86 ~ 0.901.05 ~ 1.250.90 ~ 1.20
硬さショアA40 ~ 8050 ~ 9050 ~ 85
引張強さMPa7 ~ 1810 ~ 228 ~ 20
引張伸び300 ~ 700200 ~ 600250 ~ 600
引裂強さkN/m15 ~ 5020 ~ 7015 ~ 60
耐熱性約120約120 ~ 130約130 ~ 150
耐寒性約-40 ~ -55約-35 ~ -50約-40 ~ -55
耐候性
耐オゾン性
耐油性×× ~ △× ~ △
体積固有抵抗Ω・cm1013 ~ 1016108 ~ 10141013 ~ 1016

耐薬品性

エチレンプロピレンゴムは、水、温水、蒸気、低濃度酸、低濃度アルカリ、アルコール類には比較的安定である。 一方、鉱物油、ガソリン、軽油、芳香族溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤では膨潤しやすい。

薬品・溶剤耐性備考
常温では非常に安定である。
温水・蒸気○ ~ ◎配合、加硫系、温度により差がある。
低濃度酸○ ~ ◎無機酸の低濃度では比較的使用しやすい。
高濃度酸酸化性酸、高温、長時間では劣化に注意する。
低濃度アルカリ常温低濃度では安定である。
高濃度アルカリ高温では配合剤や加硫系の影響を受ける。
アルコールメタノール、エタノール、IPAには比較的良好である。
ケトン○ ~ △アセトン、MEKは短時間では耐える場合があるが、長時間接触では膨潤に注意する。
芳香族溶剤×トルエン、キシレンで膨潤しやすい。
油・燃料×鉱物油、ガソリン、軽油には不適である。

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

エチレンプロピレンゴムのSP値は、エチレン含有量、プロピレン含有量、加硫系、カーボンブラック、可塑剤、オイル配合により変動する。 代表的なEPRのSP値はおおむね16.0 ~ 17.5 MPa1/2付近であり、非極性炭化水素系溶剤に近いため、油や芳香族溶剤で膨潤しやすい。

項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
エチレンプロピレンゴム(EPR・EPM標準)16.0 ~ 17.0非極性溶剤、鉱物油、燃料油で膨潤しやすい。
高エチレンEPR16.2 ~ 17.2標準品よりやや結晶性・強度が高くなる場合がある。
低エチレンEPR15.8 ~ 16.8柔軟性に優れるが、非極性溶剤には注意が必要である。
EPR 加硫品16.3 ~ 17.3架橋により溶解はしにくくなるが、膨潤は起こる。
EPR カーボンブラック補強品16.8 ~ 17.8補強により強度は向上するが、耐油性の本質的改善は限定的である。
EPDM16.0 ~ 17.5EPDMはジエン成分を含む近縁材料であり、加硫設計の自由度が高い。
溶解性の目安

SP値差が小さいほど、溶解又は膨潤しやすい傾向がある。 ただし、加硫ゴムでは完全に溶解せず、膨潤、軟化、寸法変化、強度低下として現れることが多い。

  • SP値差 0 ~ 2:膨潤・軟化しやすい。
  • SP値差 2 ~ 4:条件により膨潤する。
  • SP値差 4 ~ 7:比較的影響は小さいが、長時間接触では確認が必要である。
  • SP値差 7以上:SP値上は膨潤しにくい傾向である。
SP値から見た耐溶剤性
SP値から見た耐溶剤性
薬品・溶剤SP値(δ)MPa1/2SP値差評価備考
47.931.4SP値差が大きく、常温では膨潤しにくい。
メタノール29.713.2極性が高く、EPRとは相溶しにくい。
エタノール26.09.5短時間から中期接触では比較的良好である。
IPA23.57.0一般に良好だが、高温・長時間では確認が必要である。
アセトン20.33.8○ ~ △SP値差は中程度であり、長時間接触では膨潤に注意する。
MEK19.02.5配合により膨潤、軟化が生じる場合がある。
酢酸エチル18.62.1長時間接触では膨潤に注意する。
トルエン18.21.7×SP値が近く、大きく膨潤しやすい。
キシレン18.01.5×芳香族溶剤であり、EPRには不適である。
n-ヘキサン14.91.6×非極性炭化水素であり、膨潤しやすい。
ガソリン約14 ~ 16約0.5 ~ 2.5×燃料油用途には不適である。
鉱物油約15 ~ 17約0 ~ 1.5×潤滑油、作動油では膨潤しやすい。

※SP値差は、EPRのSP値中央値を16.5 MPa1/2として算出した目安である。

評価基準:◎:非常に良好  ○:概ね良好  △:注意が必要  ×:不適

特にトルエン、キシレン、ヘキサン、ガソリン、鉱物油、潤滑油、燃料油では膨潤・軟化・寸法変化が起こりやすいため、EPRの使用は避けることが望ましい。 耐油用途ではNBRクロロプレンゴム、フッ素ゴムなどを検討する。

製法

エチレンプロピレンゴムは、エチレンとプロピレンをチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒などにより共重合して製造される。 分子量、エチレン含有量、プロピレン含有量、分子量分布を調整することで、加工性、機械的性質、低温特性、押出性を制御する。

基本反応式:

m CH2=CH2 + n CH2=CH−CH3 → −[CH2−CH2]m−[CH2−CH(CH3)]n

EPRは二元共重合体であるため、ジエン成分を含むEPDMに比べると硫黄加硫の自由度は低い。 そのため、実用配合では過酸化物加硫が多く用いられる。

詳細な利用用途

用途分野主な製品例採用理由
自動車ホース、シール材、ウェザーストリップ、防振部品耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性が良い。
電気・電子電線被覆、絶縁部品、ケーブルシース電気絶縁性、耐水性、耐候性が良い。
建築・土木防水シート、シール材、ガスケット、屋外パッキン屋外耐久性、耐オゾン性、耐水性に優れる。
工業用品パッキン、ガスケット、ホース、ロール、ライニング材酸、アルカリ、水系薬品に比較的安定である。
生活用品ゴムシート、マット、各種成形ゴム部品柔軟性、耐候性、配合自由度に優れる。

関連材料との比較

比較材料特徴エチレンプロピレンゴムとの違い
EPDMエチレン、プロピレン、ジエン成分からなる三元共重合ゴムEPRより加硫設計の自由度が高く、実用上はEPDMの方が広く使われる。
天然ゴムシス-1,4-ポリイソプレンを主成分とする天然系ゴム天然ゴムは強度と反発弾性に優れるが、耐候性、耐オゾン性はEPRが優れる。
イソプレンゴム天然ゴムに近い合成ポリイソプレンゴムIRは弾性、加工性に優れるが、耐候性、耐オゾン性はEPRが優れる。
NBRアクリロニトリル・ブタジエンゴムNBRは耐油性に優れるが、耐候性、耐オゾン性はEPRが優れる。
クロロプレンゴム耐候性、耐油性、難燃性のバランスが良いゴムCRは耐油性と難燃性に優れるが、耐水性や電気特性ではEPRが有利な場合がある。
[[シリコーンゴム]]耐熱性、耐寒性に優れる特殊ゴムシリコーンゴムは温度範囲が広いが、機械強度や耐摩耗性ではEPRが有利な場合がある。

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・グレード例備考
三井化学EPT系グレードEPDM、EPR系材料を含むエチレンプロピレンゴムの代表的メーカーである。
住友化学エチレン・プロピレン系ゴム材料自動車、工業用品、電線用途などで使用される。
ENEOSマテリアルEPDM・EPR系ゴム材料合成ゴム材料の国内メーカーである。
DowNORDEL系エチレンプロピレン系ゴムの海外メーカーである。
ExxonMobil ChemicalVistalon系自動車、建材、電線用途などで使用される。
ARLANXEOKeltan系EPDMを中心としたエチレンプロピレン系ゴムを展開する。
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