概要
略記号:PS
英語名:polystyrene
- スチレンの重合により非晶性で透明性の一般用ポリスチレン(GPPS)が得られる。
- 重合時に少量のポリブタジエン等を加えて重合すると高衝撃ポリスチレン(HIPS)が得られる。
- メタロセン触媒により製造されるシンジオタクチックポリスチレン(SPS)は、耐熱性・耐薬品性にすぐれている。
特性
- ポリ塩化ビニル等と異なり、熱に対して安定性がある。
- 高い屈折率(1.59)がある。
- 硬質で透明性にすぐれる。一般用ポリスチレン(GPPS) の透明性はアクリル樹脂には及ばないが、良好な光線透過率を示す。
- 酸、アルカリ、塩類などの無機薬品に対する耐薬品性は良好。
- ケトン、エステル、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素などに対しては溶解する。
- 耐熱性、耐衝撃性、耐摩耗性などは低い。
- 一般用ポリスチレン(GPPS) は衝撃強度が低い。
- ゴムを加えれば衝撃強度が向上して耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)となるが透明性に欠け、硬度や機械的性質は若干低下する。
- 比較的日光に弱く、紫外線劣化がある。
- 耐熱性、耐薬品性、耐候性を改良したスチレンアクリロニトリル共重合体がある。
- 耐候性、透明性を改良したスチレンメタクリル酸メチル共重合体がある。
- 無味、無臭、無毒である。
- 軟化温度が比較的低く、ポリスチレン のガラス転移温度(Tg)は約110℃であり、荷重たわみ温度(1.8MPa)は一般用ポリスチレン(GPPS) が82℃で、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は75℃前後である。
- 流動性、成形時の熱安定性は良好で、成形性にすぐれ、ポリマーの中でもっとも加工しやすいもののひとつとされている。また、二次加工性も良好である。
- 広い温度範囲・周波数領域で電気的性質にすぐれる。
- すすを出して燃え、独特な臭気を発生する。
- ゴム系、ドープ系の接着剤でよく接着する。
- 熱可塑性樹脂の中でもっとも成形しやすい樹脂である。
性質 | 単位 | 一般用 (GPPS) | 耐衝撃性 (HIPS) | ASコポリマー |
---|---|---|---|---|
比重 | 1.04~1.09 | 1.04~1.10 | 1.075~1.10 | |
吸水率 | % | 0.03~0.1 | 0.05~0.6 | 0.2~0.3 |
引張強さ | MPa | 35~84 | 10~49 | 69~84 |
引張伸び | % | 1.0~2.5 | 2~80 | 1.5~3.5 |
圧縮強さ | MPa | 580~112 | 28~63 | 98~120 |
曲げ強さ | MPa | 61~98 | 35~70 | 98~130 |
アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 14~22 | 28~600 | 20~28 |
ロックウェル硬さ | M65~80 | M35~70 | M80~90 | |
連続耐熱温度 | ℃ | 60~77 | 60~79 | 60~90 |
荷重たわみ温度 | ℃ | 96 > | 96 > | 88~102 |
体積固有抵抗 | Ω・cm | > 1016 | > 1016 | > 1016 |
誘電率 | 106Hz | 2.4~2.65 | 2.4~3.8 | 2.75~3.1 |
絶縁破壊強さ | kV/mm | 20~28 | 12~24 | 16~20 |
透明度 | 透明 | 半透明~不透明 | 透明 |
製法
- スチレンの工業生産方法は、ベンゼンとエチレンを無水塩化アルミニウム触媒でエチルベンゼンを生成してから、約600℃の環境下で触媒により脱水素を行う。
- は融点145.2℃の芳香を有する無色のスチレン液体が生成される。
耐薬品性
- 耐薬品性一覧はこちら
構造
- わずかに不規則性があるが、ほとんどの大部分が頭尾結合となっている。
- 分岐は比較的多く、完全に無定形の樹脂である。
- 市販スチレン樹脂の平均分子量は5万~25万である。
- チーグラー系の触媒を用いることで結晶性ポリスチレンが開発されている。
- 結晶性ポリスチレンは、非晶質ポリスチレンと比べて、耐熱性及び機械的強度が優れている。
利用用途
- 二軸延伸フィルム
- 食品用容器
- 乳酸菌飲料用容器
- ディスポーザルカップ
- 電子レンジ用トレイ
- PETボトルシュリンクラベル
- エアコン・テレビ・CD・MDプレーヤー・OA機器のハウジング
- 各種カセットテープのケース
- 照明機器
- 冷蔵庫内透明部品
- レンズ付きフィルムの部品など
- ボールペン
- 家庭用品
- 台所用品
- 家具
- 玩具
- 文具・事務用品
- 食品包装用トレイ
- カップ
- どんぶり
- 魚箱
- 断熱建材
- パネル
- 合成木材