ポリブチレンテレフタレート

概要

略記号:PBT

英語名:polybutyleneterephthalate

化学式:

 

  • ポリエチレンテレフタレート(PET)のエチレン(CH2)2の代わりに(CH2)4が入ったもの
  • 汎用エンプラの中でもっとも歴史の浅い樹脂。
  • エンプラとしての熱可塑性飽和ポリエステルの中ではPBTが成形性、物性、価格などのバランスが取れており、もっとも需要量が多い。
  • PBTは、全使用量のうち過半数以上が複合系グレードであることも特徴である。

特性

  • 常温の特性は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と同様である。
  • 耐熱性能が良い。
  • 衝撃強さは、ノッチ付きで50J/mとなりエンジニアリング・プラスチックとして用いられる。
  • ガラス繊維を充填すると、非常に強靭なプラスチックとなり、摩擦特性が良い。
  • 非強化グレードの成形品の表面光沢は良好であり、ばね特性を持つ。
  • 吸水率が極めて小さいので、力学的性質などの変化が少なく、寸法安定性も良好。
  • ガスバリア性はポリエチレンテレフタレート(PET)と同様である。
  • 延伸したもののガスバリア性は、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)に次ぐ性能を示す。
  • 材料は、無毒である。
  • ガラス転移温度(Tg)が40~60℃であるため実用使用温度範囲ではゴム状態である。
  • このため非強化グレードの荷重たわみ温度の応力依存性が大きい。また、強さ、弾性率もこの付近で大きく変る。
  • 結晶化速度が速いので成形サイクルが短い。
  • 熱劣化特性にすぐれており、UL温度レーティングは力学的性質(衝撃なし)が140℃、電気的性質が130℃である。
  • 結晶性であるので、有機溶剤、潤滑油、ガソリンなどには充分な耐性がある。
  • 強アルカリ、フェノール類、塩素系炭化水素に侵される。
  • エステル基があるので加水分解により劣化する。
  • 結晶性樹脂の中では耐候性が比較的良好である。人工光源による暴露試験では、紫外線暴露と加水分解が共存することもあり、屋外暴露と相関性がよくない場合がある。
  • 電気的性質がすぐれている。温度による電気抵抗、誘電率の変化も小さい。
  • 酸素指数は、徐燃グレードで約21%、難燃グレードで約29%である。
  • 結晶化特性が優れており、成形時に金型温度が低くても良い。
  • 成形前に予備乾燥が必要となり、130℃で3時間以上行う。
  • 結晶性で、融点が225~228℃、結晶化度は35~45%である。
  • 成形条件は、樹脂温度240~250℃、金型温度40℃、射出圧力85MPaである。
性質単位標準ガラス繊維強化
比重1.311.52
吸水率%0.080.07
引張強さMPa56140
引張伸び%3004
曲げ弾性率GPa2.59.1
アイゾット衝撃強さ
(ノッチ付き)
J/m5080
ロックウェル硬さR118R121
荷重たわみ温度
(1.82MPa)
58212
誘電率1063.33.8
成形収縮3.33.8

製法

  • テレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチルと1,4-ブチレングリコールを重縮合して得られる熱可塑性ポリエステルである。

構造

利用用途

  • コネクタ
  • コイルボビン
  • スイッチ
  • リレーケース
  • モータ部品
  • カバー類
  • チューナ部品
  • 抵抗器
  • 蛍光灯口金
  • ドライヤーの吹き出し口
  • 冷却ファン
  • スピードメーター部品
  • バルブ類
  • スイッチ類
  • イグニッションコイル
  • キャブレータ
  • 外板部品
  • ワイヤーハーネスコネクタ
  • ドアハンドル
  • ランプリフレクター
  • 時計部品
  • カメラ部品
  • 事務機器部品
  • 自転車駆動部品
  • キートップ
  • フィルム(多層フィルムのバリア層、PET系シュリンクフィルムの補助材)

エンジニアリング・プラスチック