ポリプロピレン

概要

材料名ポリプロピレン
略記号PP, i-PP, s-PP, a-PP
英語名Polypropylene, isotactic polypropylene, syndiotactic polypropylene, atactic polypropylene
IUPAC名poly(propene)
分類汎用プラスチック、熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、ポリオレフィン系樹脂
化学式(C3H6)n
構成単位−CH2−CH(CH3)−
主な種類アイソタクチックポリプロピレンシンジオタクチックポリプロピレンアタクチックポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、GF強化ポリプロピレン

構造式

シス-1,4-ポリイソプレン
シス-1,4-ポリイソプレン

ポリプロピレン(PP)は、プロピレンを重合して得られる代表的な汎用プラスチックです。 軽量で耐薬品性、耐熱性、成形加工性に優れ、食品容器、自動車部品、家電部品、医療部材、包装材、繊維、日用品など幅広い用途に使用されています。

ポリエチレン(PE)と同じポリオレフィン系樹脂ですが、ポリプロピレンはポリエチレンよりも剛性、耐熱性、機械的強度に優れる傾向があります。 一方で、低温衝撃性や耐候性ではポリエチレンより劣る場合があります。

ポリプロピレンの種類・構造

ポリプロピレンには、メチル基の立体配置による分類と、共重合・改質による実用グレード分類があります。 一般的な成形材料として使用されるポリプロピレンは、主に結晶性の高いアイソタクチックポリプロピレン(i-PP)です。

  • 平均分子量:4万~30万
  • メルトインデックス:0.2~30
アイソタクチックポリプロピレン(結晶性)

気相法にてMgCl2担持型Ti触媒を利用した重合により製造され、不純物となる脱触媒残渣や脱アタクチックポリプロピレン(a-PP)を除去する工程が不要なため高収率化が可能となっている。

また、メタロセン触媒を用いて共重合にしたものは、ポリマー分子量や組成が均一の透明性の高いメタロセンi-PPが得られる。

アイソタクチックポリプロピレン
シンジオタクチックポリプロピレン(結晶性)

ミンスキー系(メタロセン)触媒と呼ばれるトリメチルアルミニウムの加水分解から得られるメチルアルミナキサンと4族遷移金属のメタロセン化合物を組み合わせた触媒を使用した重合で得られる。

シンジオタクチックポリプロピレン
アタクチックポリプロピレン(非結晶性)

ラジカル重合によりメチル基がランダムに配向した非晶性のアタクチックポリプロピレンが得られる。

アタクチックポリプロピレン

立体規則性による分類

種類略記号構造上の特徴特徴主な用途
アイソタクチックポリプロピレンi-PPメチル基が同じ側に規則的に配列結晶性が高く、剛性・耐熱性・機械強度に優れる一般成形材料、容器、自動車部品、日用品
シンジオタクチックポリプロピレンs-PPメチル基が交互に配列柔軟性、透明性、低温特性に特徴がある特殊フィルム、柔軟材料、特殊用途
アタクチックポリプロピレンa-PPメチル基が不規則に配列非晶性で軟らかく、粘着性を持つ場合がある接着剤、改質材、アスファルト改質材

実用グレードによる分類

種類構成・特徴長所短所主な用途
ホモPPプロピレン単独重合体剛性、耐熱性、耐薬品性が高い低温衝撃性が低い食品容器、日用品、家電部品、シート
ランダムPPプロピレンに少量のエチレンなどをランダム共重合透明性、柔軟性、ヒートシール性が良いホモPPより剛性・耐熱性はやや低い透明容器、医療容器、フィルム、包装材
ブロックPPPP相とエチレン-プロピレンゴム相を組み合わせた耐衝撃グレード耐衝撃性、低温衝撃性に優れる透明性は低い自動車部品、コンテナ、バンパー、工業部品
GF強化PPガラス繊維を配合した強化グレード剛性、寸法安定性、耐熱性が向上比重が上がり、成形収縮の異方性が出やすい自動車部品、構造部品、電装部品
タルク充填PPタルクを配合した充填グレード剛性、寸法安定性、耐熱性が向上衝撃性が低下する場合がある自動車内装部品、家電部品、ケース類
難燃PP難燃剤を添加したグレード難燃性を付与できる機械特性や耐候性が低下する場合がある電気・電子部品、筐体、コネクタ周辺部品

長所

  • 比重が約0.90〜0.91と小さく、汎用プラスチックの中でも非常に軽い
  • ポリエチレンより耐熱性・剛性・機械的強度に優れる
  • 酸・アルカリ・塩類に対する耐薬品性が高い
  • 吸水率が非常に低く、寸法安定性に優れる
  • 電気絶縁性が良い
  • ヒンジ特性に優れ、繰り返し曲げに強い
  • 射出成形、押出成形、ブロー成形などに対応しやすい
  • コストが低く、大量生産に適している

短所

  • 低温衝撃性が低く、特にホモPPでは低温割れに注意が必要
  • 紫外線や酸化劣化に弱く、屋外用途では耐候安定剤が必要
  • 接着、印刷、塗装が難しい
  • 表面エネルギーが低く、表面処理が必要になることが多い
  • トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族溶剤では高温時に膨潤・溶解する場合がある
  • 銅や銅合金と接触した状態で高温になると劣化が促進されることがある
  • 可燃性で燃焼カロリーが高い

成形加工

ポリプロピレンは流動性が良く、薄肉品や複雑形状品の成形に適しています。 射出成形温度は一般に200〜280℃程度で、通常は230〜260℃付近で加工されます。 金型温度が高いほど結晶化が進み、成形収縮率が大きくなる傾向があります。

加工方法適性主な製品例
射出成形自動車部品、家電部品、容器、キャップ、日用品
押出成形シート、フィルム、パイプ、板材
ブロー成形ボトル、タンク、容器
インフレーション成形包装フィルム、袋
真空成形トレー、食品容器、包装材
繊維化不織布、ロープ、カーペット、衛生材料
切削加工治具、タンク、ライニング、機械部品

代表的な物性値

項目ホモPP共重合PP備考
密度0.90〜0.91 g/cm³0.89〜0.91 g/cm³汎用プラスチックの中でも軽い
融点約160〜170℃約140〜165℃共重合成分により低下する場合がある
荷重たわみ温度約100〜120℃約80〜110℃荷重・グレードに依存
連続使用温度約80〜110℃約80〜100℃長期使用では酸化劣化に注意
引張強度約30〜40 MPa約20〜35 MPaホモPPは剛性・強度が高い
曲げ弾性率約1200〜1800 MPa約800〜1500 MPaGF・タルク充填で向上
吸水率極めて小さい極めて小さい寸法安定性に優れる
成形収縮率約1.0〜2.5%約1.0〜2.0%金型温度・結晶化度に依存
体積抵抗率高い高い電気絶縁性に優れる

耐薬品性

ポリプロピレンは非極性のポリオレフィン系樹脂であり、水、酸、アルカリ、塩類、アルコールに対して非常に安定です。 常温では多くの薬品に対して良好な耐性を示し、ソルベントクラックは比較的起こりにくい材料です。

ただし、80℃以上の高温条件では、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、四塩化炭素などの塩素系溶剤により膨潤・溶解する場合があります。

薬品・溶剤耐性備考
吸水性が極めて低く安定
○〜◎多くの酸に安定。ただし硝酸など強酸化性酸は注意
アルカリNaOH、KOHなどに強い
アルコールエタノール、IPAに安定
ケトン△〜×アセトン、MEKでは条件により膨潤の可能性
芳香族溶剤トルエン、キシレンでは高温時に膨潤・溶解しやすい
塩素系溶剤△〜×長時間接触や高温では不適
鉱物油△〜○常温では使用可能な場合が多いが、温度上昇で影響を受ける場合がある
次亜塩素酸ナトリウム◎〜○一般濃度では比較的安定。ただし高濃度・高温・長期では劣化に注意

※耐薬品性は、温度、濃度、接触時間、応力状態、グレードにより変動します。 薬液タンク、配管、洗浄治具などでは実使用条件で確認する必要があります。

製法

ポリプロピレンは、プロピレンを重合して製造されます。 代表的にはチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた配位重合により製造されます。 立体規則性の制御が重要であり、工業的には結晶性と機械特性に優れるアイソタクチックPPが主に使用されます。

種類製法・構造特徴
ホモPPプロピレン単独重合剛性、耐熱性、耐薬品性に優れる
ランダムPPプロピレンと少量エチレンなどのランダム共重合透明性、柔軟性、低温特性が向上
ブロックPPホモPP相とエチレン-プロピレンゴム相を組み合わせた共重合耐衝撃性が高い
メタロセンPPメタロセン触媒による重合分子量分布や立体規則性の制御性が高い

詳細な利用用途

自動車用途

  • バンパー
  • インストルメントパネル
  • ドアトリム
  • 内装部品
  • エンジンルーム周辺部品
  • バッテリーケース

包装・容器用途

  • 食品容器
  • 電子レンジ対応容器
  • キャップ
  • 透明容器
  • フィルム
  • ラミネート材

医療・衛生用途

  • 注射器
  • 医療容器
  • 不織布
  • マスク材料
  • 衛生材料

家電・日用品用途

  • 洗濯機部品
  • 掃除機部品
  • 収納ケース
  • ヒンジ付き容器
  • キッチン用品

工業用途

  • 薬液タンク
  • 配管
  • ダクト
  • ライニング材
  • 治具
  • 搬送部品

関連材料との比較

比較材料PPとの違い選定ポイント
PEPEはPPより柔軟で低温衝撃性に優れる。PPはPEより剛性・耐熱性が高い耐熱性重視ならPP、柔軟性・低温性重視ならPE
PVCPVCは難燃性や透明性を付与しやすいが、PPは軽量で耐薬品性に優れる難燃性・透明性ならPVC、軽量・耐薬品性ならPP
ABSABSは外観性、塗装性、剛性に優れるが、耐薬品性はPPが有利外観部品ならABS、薬品接触用途ならPP
PCPCは透明性と耐衝撃性に優れるが、アルカリや溶剤に弱い。PPは透明性では劣るが耐薬品性に優れる透明・高衝撃ならPC、耐薬品性ならPP
POMPOMは機械強度と摺動性に優れるが、酸には注意。PPは耐酸・耐アルカリ性に優れる精密機械部品ならPOM、薬液用途ならPP
PETPETは剛性、透明性、ガスバリア性に優れるが、アルカリに弱い透明ボトルならPET、アルカリ耐性ならPP

代表的なメーカー・商品名

メーカー代表的な商品名・グレード例備考
プライムポリマープライムポリプロ自動車、包装、射出、押出用途
日本ポリプロノバテックPP、ウィンテック汎用PP、透明PP、特殊PP
住友化学住友ノーブレン射出、フィルム、繊維用途
サンアロマーポリプロピレン各種グレード自動車、工業、包装用途
LyondellBasellMoplen、Hostacom汎用、自動車、コンパウンド用途
SABICSABIC PP射出、押出、包装用途
BorealisBorPure、Daplen包装、自動車、配管用途
ExxonMobilExxonMobil PPフィルム、成形、繊維用途

まとめ

ポリプロピレンは、軽量性、耐薬品性、耐熱性、成形加工性、コストバランスに優れた代表的な汎用プラスチックです。 一般的な成形材料としては、結晶性が高く剛性・耐熱性に優れるアイソタクチックPPが中心です。

用途に応じて、剛性と耐熱性に優れるホモPP、透明性と柔軟性に優れるランダムPP、耐衝撃性に優れるブロックPP、剛性・寸法安定性を高めたGF強化PPやタルク充填PPを使い分けることが重要です。

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