| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ウレタンアクリレート |
| 略記号 | UA、PUA、UV-UA |
| IUPAC | 単一構造の高分子ではないため、厳密なIUPAC名は一般に定まらない。代表的には acrylate-terminated polyurethane oligomer、polyurethane acrylate oligomer と表記される。 |
| 英語名 | Urethane Acrylate、Polyurethane Acrylate、Acrylated Urethane Oligomer、UV Curable Urethane Acrylate |
| 日本語名 | ウレタンアクリレート、ポリウレタンアクリレート、アクリル変性ウレタン、UV硬化型ウレタン樹脂、光硬化型ウレタンアクリレート |
| 分類 | 光硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、EB硬化性樹脂、反応性オリゴマー、熱硬化性樹脂系材料 |
| プラスチック分類 | 一般の熱可塑性プラスチック、エンプラ、スーパーエンプラとは分類が異なり、硬化前は反応性オリゴマー、硬化後は架橋樹脂として扱われる。 |
| 化学式または代表構造 | CH2=CH-COO-R1-O-CO-NH-R2-NH-CO-O-R3-OCO-CH=CH2 |
| CAS No. | 単一物質ではなく、ポリオール、イソシアネート、アクリレート成分により異なるため、一般的な統一CAS No.はない。 |
| 構造・主成分 | ポリオール由来のソフトセグメント、ジイソシアネート由来のウレタン結合、末端または側鎖のアクリレート基から構成される。 |
| 主な用途 | UV硬化塗料、ハードコート、UVインキ、粘接着剤、光学フィルム、3Dプリンター用光硬化樹脂、電子部品保護材、建材コーティングなどである。 |
概要
ウレタンアクリレートは、ウレタン結合を有するオリゴマーまたはポリマーにアクリレート基を導入した光硬化性材料である。一般には液状または高粘度の反応性オリゴマーとして供給され、反応性希釈剤、光重合開始剤、添加剤、顔料、フィラーなどと配合して使用される。
紫外線、可視光、電子線などによりアクリレート基がラジカル重合し、短時間で三次元架橋構造を形成する。硬化物は、ウレタン結合に由来する強靭性、柔軟性、密着性、耐摩耗性を示しやすく、エポキシアクリレートやポリエステルアクリレートと比較して、伸び、耐衝撃性、耐屈曲性を付与しやすい材料である。
一方で、ウレタンアクリレートは単一の材料ではなく、骨格、官能基数、分子量、希釈モノマー、硬化条件により物性が大きく変化する材料群である。実使用では、グレード、膜厚、硬化度、温度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間を確認し、必要に応じて実液浸漬試験、耐候試験、湿熱試験、アウトガス評価を行う必要がある。
特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 速硬化性、柔軟性、強靭性、密着性、耐摩耗性、耐擦傷性に優れる。脂肪族系では透明性、低黄変性、耐候性を得やすい。 |
| 短所 | 硬化収縮、酸素阻害、未反応モノマー、皮膚刺激性、黄変、加水分解、アウトガスに注意が必要である。厚膜や着色系では硬化不良が起こる場合がある。 |
| 外観 | 硬化前は無色から淡黄色の液体または粘稠液であることが多い。硬化後は透明から半透明、配合により着色または不透明となる。 |
| 耐熱性 | 連続使用温度は一般に60〜120℃程度が目安である。高Tg・高架橋グレードではより高温側に設計できるが、黄変、脆化、密着低下を確認する必要がある。 |
| 耐薬品性 | 油、脂肪族炭化水素、水への短時間接触には比較的安定なグレードがある。一方、ケトン、エステル、芳香族溶剤、塩素系溶剤では膨潤・軟化しやすい場合がある。 |
| 加工性 | 塗布、印刷、注型、ディスペンス、スピンコート、インクジェット、光造形などに適する。熱可塑性樹脂の射出成形、押出成形とは加工方法が異なる。 |
| 分類上の注意 | 硬化前のウレタンアクリレートオリゴマーと、硬化後の架橋体では性質が大きく異なる。ポリウレタンや熱可塑性ポリウレタンエラストマーとは区別して扱う必要がある。 |
代表グレード
| グレード分類 | 主な設計内容 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 汎用グレード | 脂肪族または芳香族ウレタンアクリレートを基本とする2官能〜多官能品 | UV塗料、UVインキ、一般コーティング | 硬度、柔軟性、粘度、硬化収縮は配合により変化する。 |
| 耐熱グレード | 高Tg骨格、高官能化、芳香族骨格、ポリカーボネート骨格などを用いる。 | 電子部品保護、ハードコート、光学部材 | 硬く脆くなりやすく、クラックやカールに注意する。 |
| 難燃グレード | リン系難燃剤、無機フィラー、難燃性モノマーなどを配合する。 | 電子材料、絶縁コート、基板周辺材料 | 透明性、粘度、硬化性、アウトガスが変化する。 |
| GF・フィラー強化グレード | ガラス粉、シリカ、アルミナ、セラミック粉、短繊維などを配合する。 | 3Dプリント、耐摩耗コート、寸法安定用途 | 沈降、硬化深度低下、表面粗さ、ノズル摩耗に注意する。 |
| 摺動グレード | シリコーン、フッ素系添加剤、ワックス、固体潤滑材などを配合する。 | 保護フィルム、摺動面コート、タッチパネル表面 | 密着性、再塗装性、印刷性が低下する場合がある。 |
| 食品接触対応グレード | 食品接触用途向けに原料、残留モノマー、開始剤、抽出物を管理した配合である。 | 包装印刷、OPニス、食品機械周辺コート | 食品衛生法、FDA、EU規制などは配合物と硬化条件で確認する。 |
構造式
ウレタンアクリレートは単一の繰り返し構造を持つ樹脂ではなく、ポリウレタン鎖の末端または側鎖にアクリロイル基を導入した材料である。化学式の画像は不要であるため、以下ではHTML内で読みやすい形の代表構造式として示す。
| 項目 | 代表表記 |
|---|---|
| 代表的な構造単位 | CH2=CH-COO-R1-O-CO-NH-R2-NH-CO-O-R3-OCO-CH=CH2 |
| ウレタン結合 | -NH-CO-O- |
| アクリレート基 | CH2=CH-COO- |
| モノマーまたは構成単位 | ポリオール、ジイソシアネート、ヒドロキシアルキルアクリレート、反応性希釈剤などで構成される。 |
| 代表的なポリオール成分 | ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどである。 |
| 代表的なイソシアネート成分 | HDI、IPDI、HMDI、TDI、MDIなどである。耐候性や低黄変性を重視する場合は脂肪族系が選ばれやすい。 |
| 代表的なアクリレート成分 | 2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどである。 |
共重合体・変性グレード
ポリエーテル系ウレタンアクリレートは柔軟性、低温特性、耐加水分解性を得やすい。ポリエステル系は機械強度、密着性、耐摩耗性を設計しやすいが、アルカリや高温高湿条件では加水分解に注意が必要である。ポリカーボネート系は耐候性、耐熱性、耐加水分解性のバランスを取りやすいが、一般に高価になりやすい。
官能基数は2官能、3官能、6官能、多官能などがあり、官能基数が高いほど硬化速度、硬度、耐溶剤性が向上しやすい。一方で、硬化収縮、脆化、カール、内部応力が大きくなる場合がある。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 脂肪族ウレタンアクリレート | HDI、IPDI、HMDIなどの脂肪族イソシアネート骨格を持つ。 | 透明性、低黄変性、耐候性に優れる。 | 芳香族系より高価になりやすい。 | 光学フィルム、ハードコート、屋外コーティング、ディスプレイ材料 |
| 芳香族ウレタンアクリレート | TDI、MDIなどの芳香族イソシアネート骨格を持つ。 | 硬度、機械強度、反応性、コストのバランスが良い。 | 黄変しやすく、屋外や光学透明用途では制限がある。 | インキ、木工塗料、工業用コーティング、接着剤 |
| ポリエーテル系ウレタンアクリレート | ポリエーテルポリオールを主骨格とする。 | 柔軟性、低温特性、耐加水分解性を得やすい。 | 耐溶剤性、耐熱性、耐汚染性は不足する場合がある。 | 柔軟コート、粘接着剤、シーリング材、エラストマー系硬化樹脂 |
| ポリエステル系ウレタンアクリレート | ポリエステルポリオールを主骨格とする。 | 密着性、引張強さ、耐摩耗性を設計しやすい。 | 高温高湿、強アルカリ条件では加水分解に注意する。 | 塗料、インキ、フィルムコート、建材コーティング |
| ポリカーボネート系ウレタンアクリレート | ポリカーボネートポリオールを主骨格とする。 | 耐候性、耐熱性、耐加水分解性、機械特性のバランスが良い。 | 一般にコストが高い。 | 高耐久コーティング、車載部材、電子材料、光学部材 |
| 高官能ウレタンアクリレート | 3官能以上の多官能アクリレート基を持つ。 | 硬化速度、硬度、耐溶剤性、耐擦傷性を高めやすい。 | 硬化収縮、脆化、カール、密着低下が発生する場合がある。 | ハードコート、耐擦傷コート、インキ、光学フィルム |
| 低弾性・高伸長ウレタンアクリレート | 高分子量ソフトセグメントを多く含む柔軟設計品である。 | 伸び、追従性、耐屈曲性、形状回復性に優れる。 | 表面硬度、耐熱性、耐溶剤性は低下する場合がある。 | OCA、OCR、フレキシブルデバイス、粘接着剤、保護膜 |
| 水系ウレタンアクリレート | 水分散性またはエマルジョン型のウレタンアクリレートである。 | 低VOC化しやすく、作業環境面で有利である。 | 乾燥工程、水分管理、耐水性設計が必要である。 | 水系UV塗料、木工塗料、紙コート、環境対応コーティング |
成形加工
ウレタンアクリレートは、一般的な熱可塑性樹脂のようにペレットを溶融して成形する材料ではない。主に液状樹脂を塗布、印刷、注型、ディスペンス、露光、電子線照射により硬化させる。以下の適性は、硬化前液状グレードおよび硬化後架橋体としての一般的な目安である。
| 加工方法 | 適性 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | × | 通常の熱可塑性射出成形には適さない。 | 光硬化性液状樹脂として使用するのが一般的である。 |
| 押出成形 | × | 単独で熱可塑性押出する材料ではない。 | フィルムやシートへの塗工後硬化は可能である。 |
| ブロー成形 | × | 中空成形用の熱可塑性樹脂ではない。 | 容器表面のUVコートとして使うことはある。 |
| 圧縮成形 | △ | フィラー入り光硬化樹脂の型内硬化、注型硬化で使用される場合がある。 | 光到達性、硬化深度、発熱、離型性を確認する。 |
| 真空成形 | △ | 硬化膜付きフィルムの二次成形、成形用ハードコートで使用される場合がある。 | 伸び、クラック、白化、密着性が重要である。 |
| 切削加工 | △ | 硬化後の厚物樹脂や3Dプリント品では切削可能な場合がある。 | 脆性、発熱、割れ、欠けに注意する。 |
| 塗工・コーティング | ◎ | バーコート、ロールコート、スプレー、スピンコート、ディップコートに適する。 | 粘度、膜厚、酸素阻害、基材密着を管理する。 |
| 印刷 | ◎ | スクリーン、フレキソ、グラビア、オフセット、インクジェットに使用される。 | 顔料分散、硬化深度、表面硬化性を確認する。 |
| 注型・ポッティング | ○ | 透明封止、接着、保護材に使用できる。 | 厚膜硬化では内部硬化、発熱、収縮応力を確認する。 |
| 光造形・3Dプリント | ◎ | SLA、DLP、LCD方式の光硬化樹脂に使用される。 | 硬化収縮、反り、残留モノマー、後硬化条件を確認する。 |
代表的な成形・硬化条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常は加熱乾燥不要、必要に応じて40〜60℃ | 水系品や吸湿した配合では水分管理が必要である。 |
| 樹脂温度 | 20〜40℃ | 高粘度品では40〜60℃程度に温調して塗工する場合がある。 |
| シリンダー温度 | 該当なし | 熱可塑性射出成形材料ではない。 |
| 金型温度 | 20〜80℃ | 注型、光造形、型内硬化では温度により粘度、硬化収縮、反応速度が変化する。 |
| UV波長 | 365、385、395、405nmなど | 光開始剤、膜厚、顔料、基材透過性に合わせて選定する。 |
| UV照射量 | 300〜2,000mJ/cm2程度 | 薄膜では低照射量でも硬化する場合があるが、厚膜や着色品では増加する。 |
| 膜厚 | 数μm〜数mm | ハードコートは数μm〜数十μm、3Dプリントや注型では厚膜になる。 |
| 成形収縮率・硬化収縮率 | 2〜8%程度 | 官能基数、希釈モノマー量、フィラー量により大きく変化する。 |
| 後硬化 | UV後硬化、60〜120℃加熱処理など | 残留二重結合、表面硬化、耐薬品性、アウトガス低減を目的に行う場合がある。 |
代表的な物性値又は機械的性質
以下はウレタンアクリレート硬化物の代表値である。実際の値は、オリゴマー骨格、官能基数、反応性希釈剤、フィラー、光開始剤、照射条件、後硬化条件により大きく変化する。設計時にはメーカーの技術資料、SDS、実測試験を確認する必要がある。
| 項目 | 単位 | 柔軟グレード | 汎用グレード | 高硬度・高架橋グレード | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.02〜1.12 | 1.05〜1.20 | 1.10〜1.30 | 液状樹脂、硬化物ともに配合で変わる。 |
| 比重 | − | 1.02〜1.12 | 1.05〜1.20 | 1.10〜1.30 | シリカ、ガラス、難燃剤配合で高くなる。 |
| 引張強さ | MPa | 2〜20 | 10〜50 | 30〜80 | 柔軟タイプでは伸び重視、高硬度タイプでは強度重視となる。 |
| 伸び | % | 50〜300 | 10〜100 | 1〜20 | 低弾性グレードでは300%以上となる場合もある。 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 10〜500 | 300〜2,000 | 1,500〜4,000 | 3Dプリント材ではフィラー配合により上昇する。 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 破壊せず〜100 | 20〜100 | 5〜40 | 試験片作製条件によりばらつきが大きい。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 40〜80 | 60〜120 | 100〜180 | 高Tg・高架橋・フィラー配合で高くなる。 |
| 融点 | ℃ | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 明確な融点なし | 硬化後は架橋体であり、熱可塑性樹脂のような融点は示さない。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | -40〜30 | 20〜90 | 80〜160 | 骨格と官能基数により広範囲に設計される。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60〜90 | 80〜120 | 100〜140 | 長期使用では黄変、脆化、密着低下を確認する。 |
| 吸水率 | % | 0.5〜2.0 | 0.3〜1.5 | 0.2〜1.0 | 親水性ポリエーテル系や水系品では高くなる場合がある。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1012〜1015 | 1013〜1016 | 1013〜1016 | 導電フィラー、帯電防止剤、水分で低下する。 |
| 鉛筆硬度 | − | 6B〜B | HB〜3H | 3H〜6H以上 | ハードコートでは重要な評価項目である。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当 | HB〜V-2相当 | V-2〜V-0設計可能 | 難燃剤、フィラー、膜厚により変化する。規格適合はグレード別確認が必要である。 |
| 酸素指数 | % | 18〜23 | 20〜25 | 25以上に設計可能 | 一般グレードは自己消火性を期待しにくい。 |
| 硬化収縮率 | % | 2〜5 | 3〜7 | 5〜10 | 反応性希釈剤量、官能基数、フィラー量により大きく変わる。 |
| ヘイズ | % | 0.5〜5 | 0.2〜3 | 0.2〜2 | 透明グレードの場合の目安であり、顔料・フィラー配合品では高くなる。 |
複合材・フィラー配合品の代表物性
| 材料形態 | 単位 | 比重 | 曲げ弾性率 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 未充填ウレタンアクリレート硬化物 | − / MPa | 1.05〜1.25 | 10〜4,000 | 透明性、柔軟性、密着性を設計しやすい。 | 硬化収縮、耐溶剤性、耐熱性は配合依存である。 |
| シリカ充填ウレタンアクリレート | − / MPa | 1.20〜1.60 | 1,000〜6,000 | 硬度、耐摩耗性、低収縮、寸法安定性を向上しやすい。 | 透明性、粘度、硬化深度が低下する場合がある。 |
| GF配合ウレタンアクリレート | − / MPa | 1.30〜1.80 | 2,000〜8,000 | 剛性、耐熱性、寸法安定性を高めやすい。 | 沈降、表面粗さ、光透過不足に注意する。 |
| CF・カーボン系フィラー配合品 | − / MPa | 1.10〜1.50 | 1,000〜7,000 | 導電性、帯電防止性、黒色化、補強性を付与できる。 | UV硬化性が大きく低下しやすく、厚膜硬化に注意する。 |
| セラミックフィラー配合品 | − / MPa | 1.50〜2.50 | 2,000〜10,000 | 低収縮、熱伝導性、耐摩耗性、寸法安定性を付与しやすい。 | 高粘度化、沈降、光透過低下、脆化に注意する。 |
耐薬品性
ウレタンアクリレート硬化物の耐薬品性は、ポリオール骨格、架橋密度、残留モノマー、硬化度、膜厚、温度、浸漬時間、応力状態により変化する。以下は一般的な目安であり、実使用ではグレード、薬品濃度、温度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
| 薬品分類 | 代表薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 希塩酸、希硫酸、酢酸 | ○〜△ | 短時間接触では使用できる場合があるが、強酸、高温、長時間浸漬では劣化に注意する。 |
| アルカリ類 | NaOH、KOH、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水 | △〜× | エステル結合、ウレタン結合、ポリエステル骨格が加水分解する場合がある。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ○〜△ | 短時間接触では比較的安定な場合があるが、膨潤、白化、密着低下に注意する。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ベンジルアルコール、MMB | ○〜△ | 薬品の極性や温度により膨潤が起こる場合がある。 |
| 芳香族炭化水素類 | トルエン、キシレン、エチルベンゼン | △〜× | 膨潤、軟化、光沢低下、密着低下を起こしやすい。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット | ○ | 比較的安定な場合が多いが、低架橋・柔軟グレードでは膨潤する場合がある。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | × | SP値が近く、膨潤・軟化・溶出が起こりやすい。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、PGMEA | △〜× | 塗膜膨潤、白化、密着低下に注意する。 |
| 塩素系溶剤 | ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン | × | 膨潤・軟化しやすく、一般に不適である。 |
| 水・温水 | 水、温水、湿熱環境 | ○〜△ | ポリエーテル系、ポリカーボネート系では比較的有利である。高温高湿では加水分解や白化に注意する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、植物油 | ○ | 一般に比較的安定であるが、添加剤、可塑剤、長時間浸漬で膨潤する場合がある。 |
| 燃料 | ガソリン、軽油、灯油、アルコール混合燃料 | △ | 燃料組成により差が大きい。芳香族分、アルコール分により膨潤しやすい。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | 代表値 | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ウレタンアクリレート硬化物のSP値 | 18〜23 | MPa1/2 | 骨格、架橋密度、反応性希釈剤、硬化度により変化する。 |
| 代表値としてのδ | 20.5 | MPa1/2 | 溶剤膨潤性を概算するための目安である。 |
SP値は溶解・膨潤の傾向を推定するための目安であり、耐薬品性を単独で判断する値ではない。架橋密度、結晶性、極性相互作用、水素結合、温度、接触時間、内部応力、薬品濃度、硬化不良の有無により実際の耐性は変化する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
以下はウレタンアクリレート硬化物の代表SP値を20.5MPa1/2として計算した目安である。実際には、硬化物が三次元架橋しているため、SP値が近くても完全に溶解せず、膨潤、白化、軟化、クラック、密着低下として現れることが多い。
| 薬品名 | SP値 | SP値差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 27.4 | ◎ | SP値差は大きいが、親水性成分が多い場合は吸水、白化に注意する。 |
| メタノール | 29.7 | 9.2 | ○ | 短時間接触は可能な場合があるが、膨潤や表面白化に注意する。 |
| エタノール | 26.0 | 5.5 | ○ | 消毒用途では繰り返し接触と応力を確認する。 |
| IPA | 23.5 | 3.0 | △ | 柔軟グレードや低硬化膜では膨潤する場合がある。 |
| アセトン | 20.3 | 0.2 | × | 膨潤・軟化しやすく、一般に不適である。 |
| MEK | 19.0 | 1.5 | × | 塗膜溶剤として作用しやすい。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 1.9 | × | 膨潤、白化、密着低下に注意する。 |
| 酢酸ブチル | 17.4 | 3.1 | △〜× | 条件により膨潤しやすい。 |
| トルエン | 18.2 | 2.3 | △〜× | 芳香族溶剤で膨潤しやすい。 |
| キシレン | 18.0 | 2.5 | △〜× | 長時間接触では軟化に注意する。 |
| n-ヘキサン | 14.9 | 5.6 | ○ | 短時間では比較的安定な場合が多い。 |
| ヘプタン | 15.3 | 5.2 | ○ | 低架橋グレードでは膨潤確認が必要である。 |
| ジクロロメタン | 20.2 | 0.3 | × | 膨潤・軟化が大きく、一般に不適である。 |
| クロロホルム | 18.9 | 1.6 | × | 塩素系溶剤は避けるのが望ましい。 |
| DMF | 24.8 | 4.3 | △〜× | 強い溶解力を持つため、SP値差以上に注意が必要である。 |
| NMP | 23.0 | 2.5 | △〜× | 高温では膨潤、軟化しやすい。 |
| DMSO | 26.7 | 6.2 | △ | 極性が高く、吸水や膨潤を伴う場合がある。 |
製法
原料
| 原料分類 | 代表例 | 役割 |
|---|---|---|
| ポリオール | ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール | 柔軟性、弾性、耐熱性、耐加水分解性、密着性を決める主骨格である。 |
| ジイソシアネート | HDI、IPDI、HMDI、TDI、MDI | ウレタン結合を形成し、硬度、強靭性、耐候性、黄変性に影響する。 |
| ヒドロキシアクリレート | 2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート | 末端または側鎖に光硬化可能なアクリレート基を導入する。 |
| 反応性希釈剤 | IBOA、HDDA、TPGDA、TMPTA、PETA、DPHAなど | 粘度調整、硬化速度、硬度、収縮率、耐薬品性を調整する。 |
| 光重合開始剤 | アシルホスフィンオキサイド系、ヒドロキシケトン系、ベンゾフェノン系など | UV、LED、可視光によりラジカルを発生させる。 |
| 添加剤・充填材 | レベリング剤、消泡剤、重合禁止剤、シリカ、アルミナ、難燃剤、顔料、紫外線吸収剤 | 塗工性、保存安定性、耐摩耗性、難燃性、外観、耐候性を調整する。 |
重合方法
一般的な製法では、ポリオールと過剰量のジイソシアネートを反応させてイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを作り、その末端NCO基にヒドロキシアクリレートを反応させてアクリレート末端化する。必要に応じて、触媒、重合禁止剤、溶剤、反応性希釈剤を使用する。
| 工程 | 代表反応式・内容 |
|---|---|
| ウレタンプレポリマー化 | HO-R-OH + 2 OCN-R’-NCO → OCN-R’-NH-CO-O-R-O-CO-NH-R’-NCO |
| アクリレート末端化 | OCN-Prepolymer-NCO + 2 HO-R”-OCO-CH=CH2 → CH2=CH-COO-R”-O-CO-NH-Prepolymer-NH-CO-O-R”-OCO-CH=CH2 |
| 光硬化 | n CH2=CH-COO-R → -[CH2-CH(COOR)]n– |
ペレット化やコンパウンド
ウレタンアクリレートは通常、ペレット化して射出成形する材料ではなく、液状オリゴマー、反応性希釈剤溶液、水分散体、または高粘度樹脂として供給される。配合工程では、粘度、顔料分散、フィラー沈降、光開始剤溶解性、保存安定性、ゲル化防止を管理する。
フィラー強化品、難燃品、導電品、3Dプリント用樹脂では、シリカ、ガラス粉、セラミック粉、カーボンブラック、グラファイト、短繊維などを分散したコンパウンド形態で使用されることがある。ただし、フィラーにより光透過性が低下し、硬化深度や表面硬化性が悪化する場合がある。
詳細な利用用途
| 分野 | 用途例 | 求められる特性 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装加飾フィルム、ハードコート、ヘッドランプ周辺コート、車載ディスプレイ接着材 | 耐擦傷性、耐候性、密着性、低黄変性、耐熱性 | 耐候試験、耐湿熱、熱サイクル、アウトガス評価が必要である。 |
| 電気・電子 | 電子部品保護コート、プリント基板保護、絶縁コート、タッチパネル、光学粘着材 | 絶縁性、低アウトガス、透明性、柔軟性、耐湿性 | イオン性不純物、残留モノマー、リワーク性を確認する。 |
| 機械部品 | 耐摩耗コート、摺動保護膜、表面改質、3Dプリント治具 | 耐摩耗性、低摩擦性、密着性、寸法安定性 | 摩耗粉、荷重、温度、油剤との相性を確認する。 |
| 医療 | 医療機器部材の接着、透明部品、歯科材料、光硬化型樹脂 | 生体適合性、低抽出物、透明性、硬化性 | 医療用途ではISO 10993、滅菌、抽出物、残留開始剤を個別確認する。 |
| 食品機械・包装 | 食品包装印刷、OPニス、保護コート、ラベル、フィルムコーティング | 速硬化性、耐摩耗性、低臭気、低移行性 | 食品接触法規は配合、硬化条件、移行試験で確認する。 |
| 建築・設備 | 床材コート、木工塗料、化粧シート、建材フィルム、補修材 | 耐擦傷性、耐汚染性、密着性、耐薬品性、外観 | 屋外では脂肪族系、紫外線吸収剤、耐候設計が重要である。 |
| 印刷・インキ | UVインキ、スクリーンインキ、フレキソインキ、インクジェットインキ | 顔料濡れ性、硬化性、密着性、柔軟性、耐ブロッキング性 | 顔料濃度が高い場合、内部硬化と表面硬化のバランスを確認する。 |
| 光学・ディスプレイ | OCA、OCR、反射防止コート、防汚コート、ハードコート | 透明性、低黄変、低ヘイズ、柔軟性、屈折率制御 | 複屈折、ヘイズ、耐湿熱、剥離、アウトガスに注意する。 |
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| エポキシアクリレート | 硬化速度、硬度、耐薬品性に優れる。 | ウレタンアクリレートの方が柔軟性、耐衝撃性、伸びを付与しやすい。 |
| ポリエステルアクリレート | 比較的低粘度で、硬化性や塗工性を調整しやすい。 | ウレタンアクリレートの方が強靭性、弾性、耐摩耗性を設計しやすい。 |
| アクリル樹脂 | 透明性、耐候性、硬度に優れる材料である。 | ウレタンアクリレートはウレタン結合により密着性と柔軟性を付与しやすい。 |
| シリコーン | 耐熱性、撥水性、低表面張力、離型性に優れる。 | ウレタンアクリレートは機械強度、密着性、UV硬化性を重視する場合に使いやすい。 |
| ポリウレタン | 熱硬化型、二液型、熱可塑型など幅広い材料群である。 | ウレタンアクリレートはアクリレート基を持ち、UV・EBで高速硬化できる点が異なる。 |
| 熱可塑性ポリウレタンエラストマー | 溶融成形できる熱可塑性エラストマーである。 | ウレタンアクリレートは硬化後に架橋体となり、再溶融成形は一般にできない。 |
| エポキシ樹脂 | 接着性、耐薬品性、電気絶縁性に優れる熱硬化性樹脂である。 | ウレタンアクリレートはUV短時間硬化に適し、薄膜や高速ラインで使いやすい。 |
| 不飽和ポリエステル樹脂 | 大型成形、FRP、注型に使われる熱硬化性樹脂である。 | ウレタンアクリレートは薄膜コーティング、インキ、光造形、光学用途に適用しやすい。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| 新中村化学工業株式会社 | NKオリゴ UAシリーズ | ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの光硬化型オリゴマーを展開する。柔軟タイプからハードタイプまで複数の設計がある。 |
| 根上工業株式会社 | ART RESIN | ウレタンアクリレート系ポリマー・オリゴマーを展開する。分子量、硬度、官能基、無溶剤・溶液形態などを設計する材料群である。 |
| AGC株式会社 | ウレタンアクリレート系材料 | 透明性、柔軟性、低Tg、形状回復性などを付与するウレタンアクリレート系材料を展開する。 |
| 東亞合成株式会社 | アロニックス | アクリル系特殊モノマー・オリゴマーを展開する。光硬化型樹脂、ハードコート、接着、インキ用途に用いられる。 |
| Arkema | Sartomer | 脂肪族、芳香族、多官能、ポリエーテル系、ポリエステル系などのウレタンアクリレートオリゴマーを展開する。 |
| allnex | EBECRYL | エネルギー硬化型樹脂向けに、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどを展開する。 |
| BASF | Laromer | UV・EB硬化用アクリレート樹脂を展開する。塗料、印刷、木工、工業コーティング用途で使われる。 |
| Miwon Specialty Chemical | MIRAMER PUシリーズ | 脂肪族・芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを展開する。柔軟性、耐摩耗性、低黄変性、反応性を調整したグレードがある。 |
| IGM Resins | Photomer | UV、LED、EB硬化材料向けに、光重合開始剤、オリゴマー、添加剤を展開する。 |
法規制・安全性・設計上の注意点
| 項目 | 内容 | 確認事項 |
|---|---|---|
| RoHS | ウレタンアクリレート単体ではなく、配合物として制限物質の含有を確認する。 | 顔料、触媒、難燃剤、安定剤、金属不純物を確認する。 |
| REACH | 欧州向けでは登録状況、SVHC、残留モノマー、光開始剤を確認する。 | SDS、適合証明、用途制限を確認する。 |
| 食品衛生・FDA | 食品接触用途では専用グレードと硬化後抽出試験が必要である。 | 未反応モノマー、開始剤分解物、移行量を確認する。 |
| 医療用途 | 医療機器や歯科用途では生体適合性を個別評価する。 | ISO 10993、細胞毒性、感作性、滅菌耐性を確認する。 |
| 皮膚刺激性 | 硬化前のアクリレートモノマー、オリゴマーは皮膚感作性を示す場合がある。 | 手袋、保護眼鏡、局所排気、SDSに従った取り扱いが必要である。 |
| 加水分解 | ポリエステル系や高温高湿環境では加水分解に注意する。 | 湿熱試験、温水浸漬、アルカリ接触を確認する。 |
| 応力割れ・クラック | 高官能・高硬度グレードでは硬化収縮応力によりクラックが発生する場合がある。 | 膜厚、照射条件、希釈剤、基材膨張差を確認する。 |
| 吸湿 | 親水性骨格、水系品、残留イオンがある場合は吸水しやすい。 | 吸水率、絶縁性、白化、寸法変化を確認する。 |
| 熱劣化・黄変 | 芳香族系、アミン系添加剤、特定の光開始剤では黄変しやすい。 | 耐熱、耐候、UV照射、LED波長との相性を確認する。 |
| アウトガス | 残留モノマー、光開始剤、溶剤、低分子成分がアウトガス源となる。 | 真空用途、光学用途、電子用途ではTGA、GC-MS、フォギング評価を確認する。 |
用途別選定
| 用途 | 推奨される材料設計 | 重視する物性 | 避けたい不具合 |
|---|---|---|---|
| ギア・摺動面コート | 高耐摩耗ウレタンアクリレート、シリカまたは低摩擦添加剤配合 | 耐摩耗性、密着性、低摩擦、耐油性 | 剥離、摩耗粉、摩擦熱による軟化 |
| 軸受周辺部材 | 低摩擦添加剤配合、耐油性グレード | 摺動性、耐油性、耐熱性 | 膨潤、摩耗、潤滑油添加剤との反応 |
| チューブ・柔軟部材 | 低弾性・高伸長ポリエーテル系ウレタンアクリレート | 柔軟性、耐屈曲性、追従性 | クラック、白化、残留モノマー |
| 筐体・外装コート | 脂肪族高硬度ウレタンアクリレート | 耐擦傷性、耐候性、低黄変性、密着性 | 黄変、剥離、指紋汚れ、耐薬品不足 |
| フィルムコーティング | 柔軟性と硬度を両立した脂肪族ウレタンアクリレート | 透明性、耐擦傷性、耐屈曲性、低カール | カール、クラック、ヘイズ増加、ブロッキング |
| コネクタ・電子部品保護 | 低アウトガス、低イオン性、高絶縁グレード | 絶縁性、耐湿性、密着性、耐熱性 | 腐食、イオンマイグレーション、未硬化残渣 |
| 3Dプリント | 高強靭ウレタンアクリレート、反応性希釈剤、必要に応じてフィラー配合 | 曲げ強度、靭性、寸法精度、後硬化性 | 反り、脆化、硬化収縮、表面べたつき |
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