概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリテトラフルオロエチレン |
| 略記号 | PTFE |
| IUPAC | poly(difluoromethylene) |
| 英語名 | Polytetrafluoroethylene |
| 日本語名 | ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン重合体、テトラフルオロエチレン樹脂 |
| 分類 | フッ素樹脂、熱可塑性樹脂、結晶性樹脂 |
| プラスチック分類 | スーパーエンジニアリング・プラスチック |
| 化学式または代表構造 | (C2F4)n、構造単位:−CF2−CF2− |
| CAS No. | 9002-84-0 |
| 構造・主成分 | テトラフルオロエチレンを重合した完全フッ素化炭素骨格を持つ高分子である。 |
| 主な用途 | シール材、パッキン、ガスケット、ライニング、摺動部材、チューブ、電線被覆、半導体装置部品、食品機械部品、非粘着コーティング |
| 代表的商品名 | 代表例としてTeflon、Fluon、POLYFLON、Algoflonなどがある。 |
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、テトラフルオロエチレンを重合して得られる代表的なフッ素樹脂である。炭素主鎖がフッ素原子に覆われた安定な分子構造を持ち、一般に耐薬品性、耐熱性、耐寒性、非粘着性、低摩擦性、電気絶縁性に優れる。
PTFEは多くの酸、アルカリ、有機溶剤、油、燃料に対して高い耐性を示すため、腐食性流体を扱う配管部品、シール、ライニング、半導体製造装置部品などに使用される。また、摩擦係数が小さいため、無給油摺動部材、軸受、スライド部品にも用いられる。
一方で、溶融粘度が極めて高く、一般的な射出成形や通常の溶融押出成形には適さない。粉末を圧縮成形して焼成する方法、ペースト押出、ラム押出、切削加工などが中心である。実使用では、グレード、充填材、温度、薬品濃度、荷重、応力、使用時間を確認する必要がある。
特徴
長所
- 耐薬品性が非常に高く、一般に酸、アルカリ、多くの溶剤、油、燃料に侵されにくい。
- 連続使用温度は代表値で約260℃までとされ、耐寒性も高い。
- 摩擦係数が小さく、非粘着性、離型性に優れる。
- 吸水率が極めて小さく、電気絶縁性が高い。
- 耐候性、耐紫外線性に優れ、屋外環境でも劣化しにくい。
- 難燃性が高く、酸素指数は非常に高い値を示す。
短所
- 機械的強度、剛性、耐クリープ性は高剛性エンプラと比べて低い。
- 荷重下ではコールドフロー、クリープ変形が起こりやすい。
- 通常の射出成形には適さず、加工方法が限定される。
- 表面エネルギーが低いため、接着、塗装、印刷には表面処理が必要になる。
- 成形収縮率が大きく、寸法精度には注意が必要である。
- 高温での分解生成物や焼成時の管理には注意が必要である。
外観
標準的なPTFEは白色から乳白色の不透明材料である。粉末、成形粉、ファインパウダー、ディスパージョン、シート、丸棒、チューブ、フィルム、成形品、切削加工品などの形態で供給される。充填材入りでは、ガラス繊維入りは灰白色、カーボン入りは黒色、ブロンズ入りは褐色から金属色を示すことが多い。
耐熱性
融点は代表値で約327℃であり、連続使用温度は低荷重条件で約260℃が目安である。低温側では−180℃程度から−200℃程度まで使用される例があり、低温でも脆化しにくい。ただし、荷重、応力、部品形状、接触薬品、使用時間により許容温度は変化する。
耐薬品性
PTFEはフッ素樹脂の中でも耐薬品性が非常に高い材料である。一般に強酸、強アルカリ、アルコール、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素系溶剤、油、燃料に対して安定である。ただし、高温高圧条件、溶融アルカリ金属、フッ素ガス、三フッ化塩素などの特殊な反応性薬品では使用できない場合がある。
加工性
PTFEは熱可塑性樹脂に分類されるが、融点以上でも溶融流動性が極めて低い。そのため、汎用樹脂のような射出成形やスクリュー押出成形ではなく、圧縮成形、焼成、ラム押出、ペースト押出、ディスパージョン塗工、切削加工が中心となる。PFA、FEP、ETFEなどの溶融成形可能なフッ素樹脂とは加工性が大きく異なる。
分類上の注意
PTFEは熱可塑性樹脂であるが、一般的な溶融成形材料とは扱いが異なる。 C-F結合は非常に強く、炭素主鎖がフッ素原子に保護されているため、フッ素樹脂の中では耐薬品性と耐熱性に優れる一方、射出成形性、溶着性、透明性、機械強度ではPFA、FEP、ETFE、PVDFなどと選定基準が異なる。
構造式

| 項目 | 表記 |
|---|---|
| 重合反応 | n CF2=CF2 → −(CF2−CF2)n− |
| 繰り返し単位 | −CF2−CF2− |
| 分子式 | (C2F4)n |
| モノマー | テトラフルオロエチレン、TFE、CF2=CF2 |
PTFEは、炭素−炭素結合からなる主鎖の周囲をフッ素原子が覆う構造である。C−F結合の結合エネルギーが大きく、分子表面の極性が小さいため、化学的安定性、非粘着性、低摩擦性、低吸水性を示す。
この構造により、PTFEは極めて低い表面エネルギー、非粘着性、低摩擦性、耐薬品性、電気絶縁性を示す。 一方で、表面が不活性であるため、接着や塗装にはナトリウム処理、プラズマ処理、エッチング処理などの表面改質が必要となる。
標準PTFEのほか、少量の変性モノマーを導入して成形性、粒子形状、クリープ特性、溶着性などを調整した変性PTFEがある。また、ガラス繊維、カーボン、グラファイト、ブロンズ、二硫化モリブデンなどを配合した充填材入りグレードが摺動部材やシール部材に使用される。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準PTFE成形粉 | 圧縮成形、ラム押出用のPTFE粉末 | 耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性に優れる | 通常の射出成形に適さず、成形サイクルが長い | シート、丸棒、パイプ、ガスケット、ライニング材 |
| ファインパウダーPTFE | ペースト押出用の微粉末 | 細径チューブ、被覆、テープ、延伸品に適する | せん断履歴や潤滑剤管理が必要である | チューブ、電線被覆、シールテープ、ePTFE膜 |
| ディスパージョンPTFE | 水分散液タイプ | 塗工、含浸、薄膜形成に適する | 焼成条件、基材密着、表面処理が重要である | 非粘着コーティング、ガラスクロス含浸、フィルター材 |
| 変性PTFE | 微量共重合成分を含むPTFE | 標準PTFEよりクリープ、溶着性、表面平滑性が改善される場合がある | グレードにより標準PTFEと加工条件が異なる | ライニング、薬液部品、ダイヤフラム、ベローズ |
| GF充填PTFE | ガラス繊維を配合したPTFE | 剛性、寸法安定性、耐クリープ性が向上する | 相手材を摩耗させる場合があり、耐アルカリ性は充填材影響を受ける | シールリング、軸受、バルブシート、機械部品 |
| CF・グラファイト充填PTFE | カーボン繊維、カーボン粉、グラファイトを配合 | 耐摩耗性、熱伝導性、帯電防止性が向上する | 黒色となり、絶縁性は低下する | 摺動部品、軸受、ピストンリング、シール材 |
| ブロンズ充填PTFE | 青銅粉を配合した高比重グレード | 耐摩耗性、圧縮強さ、熱伝導性が高い | 耐薬品性は金属充填材の影響を受ける | 高荷重軸受、摺動パッド、ウェアリング |
| 食品接触・医療関連グレード | 規格適合を考慮したPTFE | 低溶出性、耐薬品性、清浄性に優れる | 用途ごとにFDA、食品衛生、USP、ISO 10993などの確認が必要である | 食品機械部品、医療機器部材、分析機器部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 内容 | 主な製品例 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | × | 溶融粘度が極めて高く、標準PTFEでは通常の射出成形は困難である。 | 標準PTFEでは一般的でない。射出成形が必要な場合はPFA、FEP、ETFEを検討する。 |
| 押出成形 | △ | 通常のスクリュー押出は困難である。ラム押出、ペースト押出が用いられる。 | 丸棒、パイプ、チューブ、電線被覆、シールテープ |
| ブロー成形 | × | 溶融流動性が低く、標準PTFEでは一般的でない。 | 中空成形品にはPFA、FEP、ETFEなどを検討する。 |
| 圧縮成形 | ◎ | 粉末を加圧成形し、焼成して成形体を得る代表的な加工法である。 | シート、丸棒、ブロック、ガスケット素材、切削母材 |
| 等方圧成形 | ○ | 肉厚品、大型品、寸法安定性を求める成形品に使われる。 | 大型ブロック、ライニング素材、特殊形状素材 |
| 真空成形 | × | シートの熱軟化による通常の真空成形には適さない。 | 一般的でない |
| ディスパージョン塗工 | ◎ | 水分散液を基材に塗布し、乾燥・焼成して皮膜を形成する。 | 非粘着コーティング、含浸クロス、摺動表面 |
| 切削加工 | ◎ | 丸棒、板、パイプから旋削、フライス、穴あけ加工を行う。 | シール、パッキン、絶縁部品、半導体装置部品 |
| 溶着・接着 | △ | 表面エネルギーが低く、そのままでは接着しにくい。薬品処理、プラズマ処理などが必要である。 | ライニング、複合部材、表面処理部品 |
代表的な成形条件
| 項目 | 代表値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 乾燥温度 | 通常は不要、必要に応じて80〜120℃ | 吸水は少ないが、粉末や充填材、保管状態により乾燥する場合がある。 |
| シリンダー温度 | 標準PTFEでは該当しない | 射出成形用の一般的な温度条件は設定しにくい。 |
| 圧縮成形圧力 | 10〜50MPa程度 | 粉末粒子、成形品厚み、金型、充填材により異なる。 |
| 焼成温度 | 360〜380℃程度 | 融点以上で焼成する。昇温・保持・冷却条件が寸法と物性に影響する。 |
| 金型温度 | 常温〜加温 | 圧縮成形、プリフォーム条件、粉末流動性により異なる。 |
| 成形収縮率 | 約2〜5%、充填材入りで約0.5〜3% | 方向性、焼成条件、冷却速度、結晶化度により変化する。 |
| 二次加工 | 切削、研削、打抜き、溶着、表面処理 | 寸法公差、バリ、クリープ、応力緩和を考慮する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
下表は代表値であり、測定規格、成形方法、結晶化度、充填材、試験温度、湿度、試験片厚みにより変化する。設計に使用する場合は、必ず対象グレードのメーカー物性表と実使用条件で確認する必要がある。
| 項目 | 単位 | PTFE標準 | PTFE GF25% | PTFE CF15% | PTFE ブロンズ充填 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 比重・密度 | g/cm3 | 2.13〜2.20 | 2.20〜2.30 | 2.05〜2.20 | 3.0〜4.0 | 充填材の種類と量で大きく変化する。 |
| 引張強さ | MPa | 20〜35 | 15〜30 | 15〜30 | 10〜25 | 成形方向、焼成条件により変化する。 |
| 伸び | % | 200〜500 | 100〜300 | 50〜250 | 20〜150 | 充填材入りでは低下する傾向がある。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 0.4〜0.7 | 1.0〜2.5 | 1.0〜2.5 | 1.5〜3.5 | 剛性は充填材で改善される。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 破壊せず、または高い | 10〜30 | 5〜25 | 3〜20 | 試験片形状、ノッチ条件により差が大きい。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 約55〜120 | 約120〜260 | 約120〜260 | 約150〜260 | 荷重条件により値が大きく異なる。クリープも考慮する。 |
| 融点 | ℃ | 約327 | 約327 | 約327 | 約327 | PTFEの代表的な結晶融点である。 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 約115 | 約115 | 約115 | 約115 | 文献、測定方法により扱いが異なる。 |
| 連続使用温度 | ℃ | −180〜260 | −180〜260 | −180〜260 | −180〜260 | 荷重、応力、薬品、使用時間により低く見積もる必要がある。 |
| 吸水率 | % | 0.01以下 | 0.01以下 | 0.01以下 | 0.01以下 | 吸水による寸法変化は非常に小さい。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1018以上 | 1016〜1018 | 102〜1010 | 103〜1010 | カーボン、金属充填材では導電性が増す。 |
| 摩擦係数 | − | 0.04〜0.10程度 | 0.08〜0.20程度 | 0.08〜0.20程度 | 0.08〜0.25程度 | 相手材、面圧、速度、温度により変化する。 |
| 酸素指数 | % | 90以上 | 90以上 | グレードによる | グレードによる | 一般に難燃性が非常に高い。 |
| UL94 | − | V-0相当のグレードが多い | グレードによる | グレードによる | グレードによる | 認定は厚み、色、メーカーグレードごとに確認する。 |
耐薬品性
PTFEは非常に広い薬品に対して安定であるが、耐薬品性は薬品濃度、温度、圧力、応力、シール面圧、浸漬時間、充填材の種類により変化する。特に充填材入りPTFEでは、母材PTFEではなく充填材が侵される場合がある。
| 薬品分類 | 代表的な薬品 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸類 | 塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸 | ◎ | 多くの無機酸、有機酸に安定である。高温濃硝酸などでは条件確認が必要である。 |
| アルカリ類 | 水酸化ナトリウム、NaOH、水酸化カリウム、KOH、アンモニア水 | ◎ | 強アルカリにも一般に安定である。ただし溶融アルカリ金属は不可である。 |
| 低級アルコール類 | メタノール、エタノール、IPA | ◎ | 常温から中温域では安定である。 |
| 高級アルコール類 | グリセリン、ブタノール、MMB | ◎ | 膨潤や溶解は一般に起こりにくい。 |
| 芳香族炭化水素類 | ベンゼン、トルエン、キシレン | ◎ | 多くの芳香族溶剤に安定である。 |
| 脂肪族炭化水素類 | ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット、ガソリン | ◎ | 燃料、油類に対して安定である。 |
| ケトン | アセトン、MEK、MIBK | ◎ | 多くのケトンに安定である。 |
| エステル | 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エステル | ◎ | 一般に安定である。 |
| 塩素系溶剤 | 塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン | ◎ | 常温では安定である。高温密閉環境では透過や応力を確認する。 |
| 水・温水 | 水、温水、蒸気 | ◎ | 吸水は極めて少ない。高温蒸気下では形状、荷重、クリープを確認する。 |
| 油 | 鉱物油、潤滑油、作動油、シリコーン油 | ◎ | 膨潤しにくく、シール材や摺動材に使用される。 |
| 酸化性薬品 | 過酸化水素、次亜塩素酸塩、オゾン | ○〜◎ | 条件により安定であるが、濃度、温度、金属充填材の影響を確認する。 |
| 特殊反応性薬品 | 溶融アルカリ金属、フッ素ガス、三フッ化塩素 | × | PTFEでも使用に適さない代表例である。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 項目 | SP値 δ [MPa1/2] | 備考 |
|---|---|---|
| PTFE | 約12.2 | 代表値であり、文献、結晶化度、測定・推算方法により差がある。 |
| PTFE GF25% | 約12.3 | 母材PTFEの耐溶剤性はほぼ維持されるが、充填材の耐薬品性確認が必要である。 |
| PTFE CF15% | 約12.4 | 導電性、耐摩耗性を付与するグレードである。 |
SP値は溶解性や膨潤性を推定するための目安であるが、PTFEの耐薬品性はC−F結合、結晶性、分子運動性、表面エネルギー、温度、応力、薬品透過性にも強く支配される。SP値だけで耐薬品性を判断してはならない。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
PTFEはSP値差だけでなく、分子構造上の化学的不活性により、多くの溶剤に対して高い耐性を示す。下表の評価は代表的な目安であり、実使用では温度、濃度、浸漬時間、応力、充填材、溶剤混合系を確認する必要がある。
| 溶剤・薬品名 | SP値 δ [MPa1/2] | PTFEとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | 35.7 | ◎ | 吸水率は極めて小さい。 |
| メタノール | 29.7 | 17.5 | ◎ | 低級アルコールに安定である。 |
| エタノール | 26.0 | 13.8 | ◎ | 洗浄溶剤として接触する用途がある。 |
| IPA | 23.5 | 11.3 | ◎ | 半導体、医療、分析機器部品で接触する場合がある。 |
| アセトン | 20.3 | 8.1 | ◎ | 一般に安定である。 |
| MEK | 19.0 | 6.8 | ◎ | SP値差だけでは○相当だが、PTFEは一般に安定である。 |
| 酢酸エチル | 18.6 | 6.4 | ◎ | 一般に膨潤しにくい。 |
| トルエン | 18.2 | 6.0 | ◎ | 芳香族炭化水素に安定である。 |
| キシレン | 18.0 | 5.8 | ◎ | 高温長期では透過や応力を確認する。 |
| ヘキサン | 14.9 | 2.7 | ◎ | SP値差は小さいが、PTFEは一般に溶解しない。 |
| クロロホルム | 18.7 | 6.5 | ◎ | 塩素系溶剤に安定である。 |
| NMP | 23.1 | 10.9 | ◎ | 高温条件では実液評価が必要である。 |
| DMF | 24.8 | 12.6 | ◎ | 一般に安定である。 |
| DMSO | 26.7 | 14.5 | ◎ | 極性溶剤に対しても安定である。 |
評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適である。PTFEではSP値差が小さい脂肪族炭化水素に対しても、実際には化学的に安定な場合が多い。このため、SP値は補助的な選定指標として用いる。
製法
原料
PTFEの主原料はテトラフルオロエチレン(TFE)である。TFEは反応性が高く、取り扱いには重合暴走、圧力、酸素、水分、安定剤などの管理が必要である。工業的には、フッ素化原料からTFEを製造し、乳化重合または懸濁重合によりPTFEを得る。
重合方法
PTFEは主に水系での懸濁重合または乳化重合により製造される。懸濁重合では圧縮成形、ラム押出に適した成形粉が得られる。乳化重合ではファインパウダーやディスパージョン用途に適した粒子が得られる。重合後、凝析、洗浄、乾燥、粉砕、分級などを行い、用途に応じた粉末に調整する。
代表的な反応式
n CF2=CF2 → −(CF2−CF2)n−
ペレット化やコンパウンド
PTFEは通常の溶融混練によるペレット化には適さない。成形粉、ファインパウダー、ディスパージョン、マイクロパウダーとして扱われることが多い。充填材入りPTFEでは、PTFE粉末にガラス繊維、カーボン、グラファイト、ブロンズ、二硫化モリブデン、顔料などを混合し、圧縮成形と焼成に適したコンパウンド粉末として供給される。
添加剤、充填材、強化材
- ガラス繊維:圧縮強さ、寸法安定性、耐クリープ性を改善する。
- カーボン・グラファイト:耐摩耗性、熱伝導性、帯電防止性を付与する。
- ブロンズ:高荷重摺動、圧縮強さ、熱伝導性を高める。
- 二硫化モリブデン:摺動性、初期なじみ性を改善する場合がある。
- 顔料:識別用に使用されるが、耐薬品性、食品接触適合、電気特性への影響確認が必要である。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 主な製品例 | 要求特性 | 選定上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | シールリング、ブッシュ、摺動パッド、燃料系部品、センサー周辺部品 | 耐熱性、耐燃料性、低摩擦、耐摩耗性 | 面圧、速度、相手材、燃料成分、温度サイクルを確認する。 |
| 電気・電子 | 高周波絶縁材、コネクタ絶縁部品、電線被覆、絶縁スペーサ | 低誘電率、低誘電正接、絶縁性、耐熱性 | カーボン充填材では絶縁性が低下する。 |
| 機械部品 | 軸受、スライド部品、ピストンリング、パッキン、ガイドレール | 低摩擦、無給油性、耐摩耗性、耐薬品性 | 標準PTFEは摩耗やクリープが大きい場合があり、充填材入りを検討する。 |
| 半導体・化学装置 | 薬液配管、継手、バルブシート、ライニング、ウェハ搬送部品 | 耐薬品性、低溶出性、清浄性、耐熱性 | 高純度グレード、PFAとの使い分け、アウトガス、パーティクルを確認する。 |
| 医療・分析 | チューブ、シール、カテーテル部材、分析機器流路、フィルター膜 | 耐薬品性、低吸着性、生体適合性、清浄性 | 医療用途ではグレード別の規格適合、滅菌条件、抽出物評価が必要である。 |
| 食品機械 | コンベヤ部品、シール、スクレーパー、非粘着ライニング、パッキン | 非粘着性、耐熱性、耐洗浄薬品性、食品接触適合 | 食品衛生法、FDA、EU食品接触規則など、用途地域の適合確認が必要である。 |
| 建築・設備 | 摺動支承、パッキン、耐薬品シート、配管ライニング | 耐候性、耐薬品性、低摩擦、長期安定性 | 長期荷重下のクリープ、屋外固定方法、熱膨張を確認する。 |
| フィルム・膜 | ePTFE膜、通気膜、防水透湿膜、フィルター、シールテープ | 撥水性、通気性、耐薬品性、耐熱性 | 孔径、膜厚、機械強度、ラミネート基材との密着性を確認する。 |
用途別選定の目安
- ギア:標準PTFEより、充填材入りPTFE、POM、PA、PEEKなどとの比較が必要である。
- 軸受:低面圧では標準PTFE、高面圧ではガラス繊維、カーボン、ブロンズ充填PTFEを検討する。
- チューブ:柔軟性、耐薬品性、曲げ半径、透明性が必要な場合はPTFE、PFA、FEPを比較する。
- 筐体:PTFEは剛性と成形性の点で一般筐体には不向きで、PBT、PC、PPS、PEEKなどを検討する。
- フィルム:非粘着、耐薬品、耐熱が必要な場合に有効である。透明性が必要な場合はFEP、PFAも比較する。
- コネクタ:高周波絶縁用途では有効であるが、寸法精度、切削性、固定方法に注意する。
法規制・規格上の注意
- RoHS、REACH、PFAS関連規制は国・地域により扱いが変化しているため、最新の法規制とメーカー証明書を確認する必要がある。
- 食品接触用途では、食品衛生法、FDA、EU 10/2011などの対象範囲をグレードごとに確認する必要がある。
- 医療用途では、USP Class VI、ISO 10993、滅菌方法、抽出物、トレーサビリティを確認する必要がある。
- 難燃性はUL94の認定厚み、色、グレード名で確認する必要がある。
注意点
- 加水分解は一般に問題になりにくいが、高温水蒸気、荷重、形状による変形は確認する。
- 応力割れは起こりにくいが、クリープ、コールドフロー、シール面圧低下には注意する。
- 吸湿は非常に少ないが、粉末保管時の水分、異物、充填材の状態は成形品質に影響する。
- 熱劣化を避けるため、焼成温度、滞留時間、換気、分解ガス管理が必要である。
- 真空、半導体、分析用途ではアウトガス、溶出、パーティクル、洗浄履歴を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| PFA | PTFEに近い耐薬品性を持ち、溶融成形が可能なフッ素樹脂である。 | PTFEは耐熱性、低摩擦性に優れるが、PFAは射出成形、押出成形、溶着に適する。 |
| FEP | 透明性、耐薬品性、溶融成形性に優れるフッ素樹脂である。 | FEPはPTFEより耐熱上限が低いが、フィルム、チューブ、電線被覆では加工しやすい。 |
| ETFE | フッ素樹脂の中では機械強度、耐衝撃性、成形性に優れる。 | ETFEは強度と成形性が高いが、耐薬品性と非粘着性はPTFEが優位である。 |
| PVDF | 耐薬品性、機械強度、成形性のバランスに優れるフッ素樹脂である。 | PVDFは射出成形しやすく強度も高いが、強極性溶剤や高温薬品ではPTFEが有利である。 |
| PVF | 耐候性フィルム、表面保護材として使用されるフッ素樹脂である。 | PVFはフィルム用途が中心で、PTFEはシール、摺動、耐薬品ライニング用途に強い。 |
| PEEK | 高強度、高耐熱、高耐薬品の結晶性スーパーエンプラである。 | PEEKは機械強度と射出成形性に優れるが、低摩擦性、非粘着性、耐薬品範囲ではPTFEが有利な場合がある。 |
| POM | 寸法安定性、耐摩耗性、低摩擦性に優れるエンジニアリングプラスチックである。 | POMはギアや精密部品に適するが、耐熱性、耐薬品性、低吸水性ではPTFEが優位である。 |
| PEI | 高耐熱、難燃、透明性を持つ非晶性スーパーエンプラである。 | PEIは射出成形性と剛性に優れるが、強薬品や非粘着用途ではPTFEが適する場合がある。 |
代替材料比較
| 比較 | 選定の考え方 |
|---|---|
| PTFE vs PFA | 最高レベルの低摩擦、非粘着、耐熱を重視する場合はPTFE、溶融成形性、透明性、溶着性を重視する場合はPFAを検討する。 |
| PTFE vs FEP | 連続使用温度と摺動性ではPTFE、フィルム・チューブの溶融成形性と透明性ではFEPが候補となる。 |
| PTFE vs PEEK | 耐薬品性、低摩擦、非粘着ではPTFE、構造強度、寸法精度、射出成形部品ではPEEKが有利である。 |
| PTFE vs POM | 低荷重摺動や薬品環境ではPTFE、高剛性の量産ギアや精密機構部品ではPOMが使いやすい。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| AGC | Fluon PTFE | 成形粉、ファインパウダー、ディスパージョン、マイクロパウダーなどを展開する代表的なフッ素樹脂メーカーである。 |
| ダイキン工業 | POLYFLON PTFE | 成形用、ペースト押出用、充填材入りなどのPTFEを展開する国内主要メーカーである。 |
| Chemours | Teflon PTFE | Teflonブランドのフッ素樹脂を展開する主要メーカーである。用途別に各種PTFE樹脂がある。 |
| Syensqo | Algoflon、Polymist | PTFE粉末、マイクロパウダー、添加剤用途のフッ素系材料を展開するメーカーである。 |
| Gujarat Fluorochemicals | INOLUB、INOTEFLONなど | フッ素ポリマーを展開するメーカーであり、PTFE樹脂、マイクロパウダーなどを扱う。 |
| 3M | Dyneon PTFE | 代表例として知られるブランドであるが、供給状況や事業方針は時期により変わるため、採用時には最新のメーカー情報を確認する必要がある。 |
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