概要
略記号:PE
英語名:polyethylene
化学式:
- エチレンを重合して得られる結晶性樹脂。
- 圧力、触媒などの重合条件により高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE) 、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)に分類される。
- 密度、分子量、分子量分布、分子構造(分岐の種類、分岐度分布など)によって成形性や製品物性に特徴が現れる。
特性
- 軽くて柔らかいために傷かつきやすく、機械的性質は常温では軟質塩化ビニルと同等の特性を持っている。
- 低温では、軟質塩化ビニルでは-20℃位までが使用限界温度だが、低密度ポリエチレンで-60℃、高密度ポリエチレンで-80位まで使用が可能である。
- 非極性構造であるため、電気的性質は非常に優れており、高周波領域の誘電率及び力率が極めて小さい。
- 吸水率が小さいため湿度環境に影響されにくい。
- 化学的性質が非常に安定しており、室温では全ての酸、アルカリ、塩類に対して安定している。
- 有機溶剤に対しては、60℃以下の環境下ではほとんどの種類に対して不溶で安定している。
- 80℃以上の芳香族炭化水素及び塩素化炭化水素などには溶解する。
- 結晶/非晶性:結晶性(Tm:低密度PE:108~122℃、高密度PE:127~134℃)
- 外観は結晶化度と関係しており、高密度ポリエチレンでは結晶サイズも大きく、半透明となる。
- 結晶化度の小さい低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンでは透明性が高くなる。
- 化学的特性は、比重が大きくなるほど良好になる。
- ポリエチレンの比重と分子量によって特性が異なる。
- 比重が増加すると、硬度、耐熱性、機械的性質、ガス及び水蒸気の不透過性が向上
- 比重が増加すると、耐衝撃性、耐ストレスクラッキング性が低下
- 分子量が増加すると、低温脆化性、耐ストレスクラッキング性が向上
- 分子量が増加すると、加工性が低下
- PPと比較して成形収縮率は大きくなる。
- 表面張力は極めて低く、接着・印刷がしにくい。
- 接着・印刷を行うためには、コロナ処理や火炎処理等で表面改質を行う必要がある。
- 超高分子量ポリエチレン(粘度法による平均分子量:100万~500万)は、他のポリエチレンに比べて耐摩耗性、耐衝撃性、自己潤滑性が優れている。
性質 | 単位 | 高密度 (HDPE) | 低密度 (LDPE) | 直鎖状低密度 (LLDPE) | 超高分子量 (UHMW-PE) |
---|---|---|---|---|---|
比重 | 0.94~0.97 | 0.91~0.93 | 0.92~0.94 | 0.97 (Spectra fiber) | |
吸水率 | % | <0.01 | <0.01 | <0.01 | <0.01 |
引張強さ | MPa 超高分子量はGPa | 20~33 | 10~23 | 10~20 | 2.91~3.68 GPa (Spectra fiber) |
引張伸び | % | 8~10 | 20 | 20 | 2.8~3.5 (Spectra fiber) |
曲げ強さ | MPa | 38~60 | |||
圧縮強さ | MPa | 19~25 | |||
アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き) | J/m | 5~200 | 破壊せず | 破壊せず | 破壊せず |
シェア硬さ | D60~70 | D41~50 | D45~50 | D60~70 | |
荷重たわみ温度 (0.45MPa) | ℃ | 60~82 | 38~74 | 46~66 | 68~82 |
体積固有抵抗 | Ω・cm | >1016 | >1016 | >1016 | >1016 |
誘電率 | 106Hz | 2.30~2.35 | 2.25~2.35 | 2.25~2.35 | 2.3 |
絶縁破壊強さ | kV/mm | 18~20 | 18~40 | 18~ | 28 |
耐薬品性
- 耐薬品性一覧はこちら
製法
- 原料のエチレンの製法には多くの方法があるが、一般的には石油の熱分解によって製造される。
- 製造方法は、大きく分けて高圧法、中圧法及び低圧法の3種類で製造される。
- 高圧法は99.9%に精製したエチレンに酸素や過酸化物を添加し、200~300℃環境下で1,000~3,000気圧をかけてラジカル重合によって製造する。
- 高圧法で製造されたポリエチレンは、長鎖分岐のある低密度ポリエチレン(LDPE)が得られる。
- 遷移金属触媒の下、α-オレフィンを添加して、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)を製造する事も可能となる。
- 中・低圧法は、チーグラー触媒(チタン系)又はフィリップス触媒(クロム系)などを用いて、50~250℃の環境下で50~200気圧をかけてエチレン重合をさせる方法で製造される。
- 中・低圧法で製造されたポリエチレンは、直鎖状の高密度ポリエチレン(HDPE)が得られる。
- 上記の方法にエチレンに少量のα-オレフィンを共重合することで、生成ポリエチレンの比重をコントロールすることが可能となる。
- 高活性のチーグラー触媒が開発されており、マグネシウム化合物にTi+3を担持した触媒は、Tiの1モル当りポリエチレン収量が30~50kgと4倍程活性が向上する。
構造
- ポリエチレンは、エチレンの重合体でもっとも簡単な直鎖状高分子であり、下記のような化学構造となる。
- 実際には、製法や製造条件によってかなり異なってくる。
- 高圧法が均一相で起こるラジカル重合であるが、中・低圧法は液中に分散(不均一相)した触媒の表面で起こるイオン重合であり、重合度や分岐度、二重結合数、結晶化度などがラジカル重合と異なる。
- 一般に二重結合、分岐度(側鎖数)、カルボニル基の大きいものほど結晶化度は小さくなり、比重も小さくなる。(下表参照)
各種ポリエチレンの分子構造比較
項目 低密度ポリエチレン 高密度ポリエチレン 高密度ポリエチレン 高圧法
(ICI)中圧法
(フィリップス法)低圧法
(チーグラー法)比重 0.91~0.93 0.96 0.94~0.95 二重結合数/1,000 炭素数 0.6 1.5 0.7 側鎖数総計/1,000 炭素数 21.5 1.5以下 3 結晶化度(%) 64 93 87 カルボニル基 C=O 0.12 0.02 0.02
利用用途
高密度ポリエチレン(HDPE)
- 買い物袋
- バケツ、たらいなどの日用品
- 電線ケーブルなどの保護管
- パイプライン用パイプ
- ビールケース・ビン運搬用ケース
- 荷物運搬用コンテナパレット
低密度ポリエチレン(LDPE)
- 電線の被覆
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)
- 機械部品(歯車、パッキン)
- スキー板(裏面)、スノーモービル
- 船舶用ロープ及び登山用ザイル
- 防刃製品
- 車部品、車用燃料タンク
中・低圧法