概要
略記号:PVC
英語名:polyvinyl chloride
- 結晶/非晶性:非晶性
 - 塩化ビニルを原料とし、有機過酸化物触媒存在下、懸濁重合・乳化重合で生産される。
 - 異なるビニルモノマーとの共重合により品質改善した架橋タイプなどの共重合体も含まれる。
 - また、ポリ塩化ビニル樹脂に可塑剤その他を配合した成形用材料は、ポリ塩化ビニルコンパウンドとして市販されている。
 
特性
- ポリ塩化ビニルは比較的硬い樹脂であり、硬質塩化ビニルとして使用される。
 - 可塑剤を加えると軟化して弾性を示すようになり、軟質塩化ビニルとなる。
 - 硬質塩化ビニルと軟質塩化ビニルでは、かなり異なった特性を示し、引張強さ、伸び、圧縮強さ、曲げ強さ、衝撃強さ、硬度などが大きく異なる。
 - 硬質塩化ビニルは、剛性が高く、引張り強さ、曲げ強さ、クリープ強さなどと衝撃強度の優れている。
 - 電気的性質にすぐれている。
 - 光、熱によって容易に分解されてしまい、物理的性質の劣化及び黄色褐色に変色してしまう。
 - 高衝撃強度用には、メタクリル酸メチル(MBS)やアクリル系モデイファイヤーの添加によって大幅に強度を改善できる。
 - 多くのモノマーと共重合しやすく、多くのコポリマー(共重合体)を作り出すことが出来る。(e.g.酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリルニトリル等)
 - 重合度は、約1,300~1,500、1,000、800程度の3段階に大別できる。
 - 約1,300~1,500は、軟質製品、1,000、800程度のものは硬質製品に成形される。
 - 成形時には、安定化剤を配合することが必要となる。
 - 非晶性であり、樹脂自体の透明性は高い。
 - 結晶性が、高密度ポリエチレンやポリプロピレンなどと比べて悪い。
 - 成形収縮率が小さく、成形加工性にすぐれている。
 - 表面光沢にすぐれ、任意な着色も可能なため、外観部品としてデザインの多様性を与える。
 
| 性質 | 単位 | 硬質 | 軟質 | 硬質PVC/ABS | PVC/PP | 
|---|---|---|---|---|---|
| 比重 | 1.35~1.45 | 1.16~1.35 | 1.10~1.21 | 1.28~1.58 | |
| 吸水率 | % | 0.07~0.4 | 0.15~0.75 | 0.2 | 0.07~0.4 | 
| 引張強さ | MPa | 35~63 | 10~24 | 37 | 35~56 | 
| 圧縮強さ | MPa | 56~91 | 6~12 | 54~82 | |
| 曲げ強さ | MPa | 70~112 | 52 | 70~100 | |
| アイゾット衝撃強さ (ノッチ付き)  | J/m | 20~1,100 | 550 | 20~1,800 | |
| 硬さ | 70~90 (シェア)  | 70~90 (シェア)  | R102 (ロックウェル)  | R107~119 (ロックウェル)  | 
|
| 連続耐熱温度 | ℃ | 66~79 | 66~79 | 66~79 | |
| 荷重たわみ温度 (1.82MPa)  | ℃ | 54~74 | 68~82 | ||
| 体積固有抵抗 | Ω・cm | 1016 | 1011~1013 | 1015 | |
| 誘電率 | 106Hz | 2.8~3.1 | 3.3~4.5 | 2.8~3.3 | |
| 絶縁破壊強さ | kV/mm | 16.7~51.5 | 11.8~39.3 | 16.6 | |
| 透明度 | 透明~不透明 | 透明~不透明 | 透明~不透明 | 
耐薬品性
- 耐薬品性一覧はこちら
 
製法
- ポリ塩化ビニルは、沸点-13.9℃、融点-157.7℃であり、常温では気体である。
 - 工業的製法は、アセチレンを原料とする方法とエチレンを原料にする方法の2通りある。
 - アセチレンを原料とする場合、150~200℃に加熱したアセチレンと塩化水素の混合気体を触媒(塩化水銀(Ⅱ)を吸収させた活性炭)に接触させると反応してポリ塩化ビニルが生成する。

 - エチレンを原料とする場合、エチレンを塩素化して二酸化エタンを作り、この二酸化エタンを熱分解することでポリ塩化ビニルを生成する。

 
- 副生する塩化水素は、アセチレンと反応させて塩化ビニルにするか、オキシクロリネーションに用いる。
 - オキシクロリネーション法は、塩化水素と酸素で塩素化を行う反応であり、これをエチレンに適用すると二酸化エタンが生成する。
 
構造
- ポリ塩化ビニルはラジカル重合しやすく、光や放射線によっても重合するが、工業的重合方法としては、過酸化物などを用いた乳化重合や懸濁重合が行われている。
 - 化学構造は、モノマー分子の頭尾結合からなる直鎖状分子で、塩素分子は1つおきに炭素に規則正しく結合している。
 - 結晶性が、高密度ポリエチレンやポリプロピレンなどと比べて悪い理由は、主鎖を軸として塩素原子が各方向に不規則に分布しているためであり(アタクチックポリマー)、また重合時に生成する分岐、二重結合などの化学構造の不均一な部分を含んでいるためである。

 
利用用途
硬質ポリ塩化ビニル
- 水道管
 - 機械部品
 - プラスチックボルトナット
 - 軽量カップ
 軟質ポリ塩化ビニル
- 壁紙
 - ビニール袋
 - ビニールハウスのビニール
 - インテリア(クッション材、断熱材、防音材等)
 - 防虫網
 - ロープ
 - ビニールテープ
 - 繊維製品
 - バッグ
 - インテリア(クッション材、断熱材、防音材、保護材)
 
  
  
  
  

