概略
略記号:PP, s-PP, i-PP, a-PP
英語名:polypropylene, syndiotactic polypropylene, isotactic polypropylene, atactic polypropylene
IUPAC: poly(propene)
日本名:ポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン
化学式:(C3H6)n
- 当サイトでは、アイソタクチックポリプロピレン(i-PP)をポリプロピレンとして説明をする。
- プロピレンの重合体で非結晶性のアタクチックポリプロピレン(a-PP)や結晶性のシンジオタクチックポリプロピレン(s-PP), アイソタクチックポリプロピレン(i-PP)があり、一般的には結晶性のアイソタクチックポリプロピレン(i-PP)をポリプロピレンとして利用している。
- アイソタクチックポリプロピレン(i-PP)は、メチル基の配列が同じ絶対配置になっている。
- シンジオタクチックポリプロピレン(s-PP)は、メチル基の絶対配置が交互に並んでいる。
- アタクチックポリプロピレン(a-PP)は、メチル基が不規則に並んでいる。
- 基本的に成形材料には剛性が高く、融点の高くなる高結晶化度成分が重要。
- ポリプロピレンは、高密度ポリエチレン (HDPE)と比較して耐熱性・強度・剛性は大きいが耐衝撃性は小さい。
特性
- 高密度ポリエチレン(HDPE)と似た性質を持っている。
- 分子量、分子量分布、立体規則性、添加剤によって性質が変化する。
- 比重が0.90~0.91と汎用プラスチックではもっとも軽い分類となる。
- 機械的強度が大きく、耐熱性にすぐれており荷重たわみ温度が高い。
- 結晶性樹脂であり、ホモポリマーは、半透明ないし不透明である。
- 薄肉成形品を急冷したり、核剤を添加することで透明成形品を製造することが可能。またランタムコポリマーは透明。
- ポリエチレンと比較して、耐ストレスクラッキング性が良い。
- 流動性が良好で、薄物や複雑形状物が成形できる。
- 成形収縮率はポリエチレンより小さく、また、縦、横の成形収縮率の差が小さくバランスが良好。
- 荷重たわみ温度(0.45MPa)は約120℃であるが、低荷重の場合は100℃以上でも使用できる。
- 常温では硝酸、鉱物油を除き有機溶剤等の耐薬品性は良好な耐性があり、ソルベントクラック現象はほとんどない。
- 80℃以上では、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素及び四塩化炭素などの塩素化水素には溶解する。
- 融点が165℃で、蒸気消毒をする衛生器具に適しており、沸騰水中での使用も可能。
- 銅およびその合金に接触した状態で高温になると劣化が促進される(銅害)ので、このような用途には対応する添加剤が配合される。
- 耐候性・耐酸化劣化性が悪い。
- 耐候性は高密度ポリエチレン(HDPE)に比較してよくない。屋外用途の場合には光安定剤、紫外線吸収剤を配合したものを使用して、一般グレードには、成形時の安定性保持のために抗酸化剤が配合されている。
- 低温特性が悪い(特にホモポリマー)
- 低温衝撃強さが高密度ポリエチレン(HDPE)と比較して弱いため、改良した共重合体がある。
- 成形収縮率が大きい。
- 射出成形温度は200~280℃(通常230~260℃)で行い、流れは射出圧力によって大きく変化するため圧力を高くする。(70MPa)
- 金型温度が高いほど成形収縮が大きくなり、60℃で1.8%となる。
- 可燃性で燃焼カロリーが高い
- 電気絶縁性が良い。
- 誘電率や力率が低い。
性質 | 単位 | ポリプロピレン | 共重合体 | 複合材 (タルク40%) | 複合材 (ガラス繊維40%) |
---|---|---|---|---|---|
比重 | g/cm3 | 0.902~0.906 | 0.89~0.905 | 1.22 | 1.23 |
吸水率 | % | <0.01~0.02 | <0.01~0.03 | 0.9 | 0.4 |
引張強さ | MPa | 30~39 | 20~30 | 34 | 70 |
引張伸び | % | 200~700 | 200~700 | 5 | 3 |
圧縮強さ | MPa | 38~56 | 26~56 | 52 | 45~58 |
曲げ強さ | MPa | 42~56 | 35~50 | 48~64 | 48~96 |
アイゾット衝撃強さ (ノッチ付) | J/m | 30~110 | 60~1100 | 22~75 | 53~107 |
ロックウェル硬さ | R | 85~110 | 50~96 | 100 | 107 |
熱伝導率(x10) | J/Mm・s・k) | 1.0 | ー | 2.8 | 3.0 |
融点 | ℃ | 170 | ー | 167 | 168 |
連続耐熱温度 | ℃ | 121~160 | 88~116 | ー | ー |
荷重たわみ温度 (0.45MPa) | ℃ | 93~110 | 85~110 | 146 | 166 |
体積固有抵抗 | Ω・cm | >10^16 | 10^17 | ー | ー |
誘電率 | 1MHz | 2.2 | 2.24~2.3 | ー | ー |
絶縁破壊強さ | kV/mm | 19.7~26.0 | 19.7~26.0 | 20 | ー |
透明度 | 透明~不透明 | 透明~不透明 | 不透明 | 不透明 |
耐薬品性
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製造・構造
- 平均分子量:4万~30万
- メルトインデックス:0.2~30
アイソタクチックポリプロピレン(結晶性)
気相法にてMgCl2担持型Ti触媒を利用した重合により製造され、不純物となる脱触媒残渣や脱アタクチックポリプロピレン(a-PP)を除去する工程が不要なため高収率化が可能となっている。
また、メタロセン触媒を用いて共重合にしたものは、ポリマー分子量や組成が均一の透明性の高いメタロセンi-PPが得られる。
シンジオタクチックポリプロピレン(結晶性)
ミンスキー系(メタロセン)触媒と呼ばれるトリメチルアルミニウムの加水分解から得られるメチルアルミナキサンと4族遷移金属のメタロセン化合物を組み合わせた触媒を使用した重合で得られる。
アタクチックポリプロピレン(非結晶性)
ラジカル重合によりメチル基がランダムに配向した非晶性のアタクチックポリプロピレンが得られる。
利用用途
- 軽量カップ、給食用食器
- 不織布マスク
- ペットボトルのキャップ
- 収納ボックス
- PPバンド、電線結束バンド
- 化学品・哺乳瓶等の容器
- 農産物の収穫コンテナ
- 医療用のディスポーザル器具
- 自動車分野(バンパー、インストルメントパネル、ラジエータファン、ラジエータグリル、フロントグリル、ジャンクション・ブロックケース)
- 各種家電の部品
- 高電圧の絶縁材料
- 電話・通信用線の被覆(コポリマー)
- 食品用フィルム(メタロセンi-PP)